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彼女はくノ一! 第五話 (193)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(193)

『才賀さん……途中から、むっとしていたような……』
 孫子との通話を終えた楓は、しげしげと自分の手の中の携帯を見つめた。
 楓が途中からむっとしたのは、心配して楓が駆けつけようとしているこの時に、思いのほか孫子がのんびりとしていたからだったわけだが……楓にしてみれば……孫子が何故、途中から怒ったような声を出すのか……まるで、わからない。
 楓は釈然としなかったが、だからといって、いつまでもその場で突っ立っているわけにもいかず、あわてて狩野家へと向かった。

 まず最初に、タクシーで乗りつけた徳川篤朗が保育園で拾ってきた浅黄を伴って工場に到着した。それから、放送部員のバス組、自転車組、徒歩組などが時間差を置いて次々と到着する。
 放送部では、近隣のゴミ放置区域の調査がこの時点では一区切りしていたため、学校内には校内放送を担当するごく少数だけが残り、ほとんどの部員がこちらの工場に流れてきている。撮影や編集作業は、真剣にやるとすると思いの他、人手が必要だと判明したから、でもあるが、何より、ここに用意されたカメラもコンピュータも、学校の備品とは比較にならないほど高性能だったの、それをいじる機会を得たくて、率先してやってきている。
 テンとガクは、最初についた徳川に一通りの事情を説明している所に、どんどん人が増えてくる形になり、途中から話を聞いていた放送部員たちに向かって、何度か「後でまた最初から説明するから、今は質問をしないで」と注意しなければならなかった。

 バスを利用して、比較的最初の方に到着した玉木が、早速、工場内に多数設置したカメラを遠隔操作するための人員を適当に選抜し、その他に、手持ちのカメラ要員として、一族の末席に連なる佐藤、田中、高橋の三名に、改めて協力を要請した。
 おととい、テンと一戦交え、あっさりと返り討ちにあった後、四人とは友好的な雰囲気で歓談し、その場で協力を約束してもらっている。
 望遠で撮影した絵ばかりでは迫力に欠けるが、だからといって実際に戦闘行為が行われている現場の近くに、普通の放送部員を貼り付けるの、危険きまわりない……とかいう話をした時、四人の方から「時間がある時なら」という条件つきで、協力を申し出てきたのであった。
 もちろん、玉木は、四人に向かって、その場でカメラの操作方法を、一通りレクチャーしてみせた。一度実演してみただけでどの程度カメラを使いこなせるのか……といったら、これはかなり心もとないわけだが、それをいったら自分たち放送部員だって、素人の集まりである。
 玉木は自分を芸術家とは自認していなかったので、「ベスト」を求めることはあっても、大概の時は「ベター」で満足することを知っていた。
 その場その場で最善を尽くせば、後は別にいいや……という考え方である。
 そのくらい柔軟でなければ、予算的にも人材的にも制約がありすぎる中で、今まで自由すぎるくらい自由に活動して来れなかったし……それに、多少、映像が多少ブレたり見難い構図になったとしても、それはそれで臨場感は出る……か……という気持ちも、あった。

 玉木がテキパキと周囲の者に指示を飛ばしはじめると、テンとガクは装備一式を身につけるために、奥の事務所に引っ込み、徳川は荒野の携帯を呼び出して、一通り、こちらの状況を伝えた。
 驚いたことに、荒野の話しによると、徒歩で工場に向かっていた孫子も、多人数に囲まれている……ということだった。
 孫子は、そのまま工場に向かうのを取りやめ、一時、人目のある場所に退避している……という。
 電話の向こうで荒野は、荒野がこれから工場に駆けつけてくること、孫子の所には、孫子の装備を持たせて、楓を合流させること……などを早口で徳川に伝え、通話を切る。
 ヘルメットとプロテクタを身につけたテンとガクが事務所から出てきて、徳川の横をすり抜けて、出口の方へと向かった。
 徳川は、他の放送部員たちと同じく、比較的安全な事務所内へと退避する。

「……ざっと……二十人以上、いますね……」
 孫子に待ち合わせ場所として指定されたのは、ショッピング・センター内部にテナントとして入っている、上品な内装の洋菓子屋だった。中にいるのはほとんどが女性客で、紅茶一杯が千円近くする。孫子の奢りだというから遠慮なくいただいたが、楓の経済感覚に照らし合わせれば高価すぎた。それに、それなりに高価な茶葉をしようしているのだろうが、茅がいれてくれる紅茶の方が、おいしい気がする……。
 メニューしかみていないが、ケーキの値段も、マンドゴドラの相場の二倍から三倍の値段がついていた。
 こういう所は、必ずしも値段とおいしさが比例するものではないらしい……楓は、口にした紅茶の味からそう類推し、孫子が勧めるのにかかわらず、ケーキの方は辞退した。
「いくら人数がいても、この人ごみの中にいる限り、手は出せませんわ……」
 硬くなっている楓とは対照的に、孫子のほうはリラックスした様子で紅茶のカップを傾けている。孫子の横の椅子には、楓が持ってきた孫子のゴルフバッグが立てかけてあった。孫子は制服のままで、楓は、孫子の荷物を取りに帰ったついでに、動きやすいパンツ姿に着替えている。
 周囲の客たちは……楓と孫子がその気になれば、とんでもない破壊力を持つなんて、想像しないだろうな……とか、楓は思った。
「……外野の方々には好きに気張らせておいて、わたくしたちは、ゆっくりとしていましょう……」
 孫子は、悠然と、そういう。
 楓には……今この瞬間にも荒野やテン、ガクたちが苦境に陥っているのかも知れないというのに……そうしてリラックスした様子を見せる孫子の神経が、理解できないでいた。
「……何?
 あの方々のことを、心配していらっしゃるの?」
 楓の不満そうな表情を読んだのか、孫子も、軽く眉間に皺を寄せる。
 孫子は軽くため息をついてから、楓に解説した。
「……いい?
 万が一、本当に、誰かが苦戦したり、窮地に立っていたりしたら……絶対、わたくしかあなた、どちらかに、連絡が来る筈です」
 孫子は、ここで少し間を置いた。
「あの方々が……そう簡単に、いいようにやられるもんですか……。
 それに、ですわね……。
 わたくしたちがここにいる、ということで……敵も、割ける人員のうち、二十名以上を、ここに無駄にはりつけているわけです。
 例えば、わたくしたちが、徳川の工場に駆けつけたとしたら……わたしたちの総戦力も二人分、増大しますが……敵にも、二十人以上の増援を送ることになります……」
 また、孫子は少し間を置いた。
 どうやら、そうして、楓に考える時間を与えているらしい。
「……わたくしたちが、ここでこうして寛いでいるだけで、敵の兵力を無駄に分散し、引き付けておけるのなら……それはそれで、大変に効率が良いのではなくて?
 わたくしたちが分断されることよりも、わたくしたちがあえて合流しないことで、敵を分断することができる、という事実を、わたくしは重視しています……。
 楓。
 あなたは……どうも、目の前のことしか見ようとしない性分のようですね……。
 もっと大局をみる目を養うことも、時には必要なのではなくて?」





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