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彼女はくノ一! 第五話 (194)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(194)

 楓と孫子が軽く睨み合っていると……楓の携帯が、呼び出し音を鳴らした。
「……茅様?」
 液晶を確認して、楓は首を捻る。
 工場に向かった荒野から……ということなら、まだわかるのだが、学校にいる茅から、このタイミングで……連絡をしてくるような事が、楓には思いつかなかった。
「……はい。楓、ですけど……」
 不審に思いながら、楓は携帯を手に取り、通話を開始する。
「……えっ!
 そんな……香也様が……ええ。ええ。無事……なら、いいんですけど……。
 あの双子の方が、首謀者ですか?」
 楓の言葉から不穏なものを嗅ぎ取った孫子は、軽く眉を顰めながら自分の携帯を取り出し、徳川の携帯にかける。
 こうして、楓と孫子は、今日の一件の全体像を、初めて把握した。
 大まかなシナリオを書いたの、昨夜、狩野家に一泊した双子。どうやら、この土地に流入してきた一族の者に片っ端から声をかけて、お膳立てを整えたらしい。
 シナリオ、というのは、荒野、楓、孫子を、学校外の離れた場所におびき出し、その隙に香也の身柄を押さえ、人質にする……というものだった。
 しかし双子は、そうした動きを予測していた茅に、逆に身柄を拘束された……。
「……あの方々……」
 徳川経由の情報で、そうした事実を把握した孫子は、こう所感を述べた。
「やられ役が板についているというか……負け癖が、つきつつあるのでは、ありませんこと……」
「そ、それよりも……香也様が、人質になるところだったって……」
 茅経由で同じような情報を聞いている楓は、孫子ほどは落ち着いてはいなかった。
「……あ。大丈夫ですか? 普通に部活を続けている……え? 双子の心配をしてた、ですか? 濡れたままでは、風邪を引くって……。
 茅様! あの子たちに何しましたですか?」
「……あの双子は……一時は、二人とも意識を失って、保健室に運び込まれたそうだけど……すぐに息を吹き返したそうよ……。
 なんでも、どこからか学校の制服を調達して、潜入してたとか……」
「……はぁ……。
 確かに、服さえなんとかすれば、生徒の中に紛れ込んでも違和感のない人たちでしたが……」
 楓と孫子は、携帯経由で得た情報が正確なものかどうか、そんな雑談を交わしながら、確認しあっている。
 十分ほどを費やして、現状を理解した楓と孫子は、一旦通話を切ってお互いの目を見つめ合い、期せずして同時にため息をついた。
「あの二人……後で、おしおきなのです……」
「それには、わたくしも、賛同も参加もいたしますけど……今は……」
「……はい。まだ、包囲網を解く気のない方々が、若干……」
「……どの世界にも、いるものですわね……。
 実際に手合わせをしてみなければ、身のほどを弁えられない方々がというのは……」
 楓と孫子……は、二人を取り巻いて監視する気配が、半減したことを、感じていた。
 しかし、全員が、撤退した訳ではない……。
 それどころか……残った者は、刺すような殺気さえ、放っている。
 二人とも、「その他大勢」が脱落して、少数精鋭が残った……という感触を、得ていた。
「……不本意、ですが……今回は、人数が多い、ということで……」
「ええ……。
 本当に、不本意、ですけど……今回はばかりは、あなたと組まなくてはならないようですわ……」
「……人数も……ですけど……あえて残るだけあって……手練ればかりなのです……」
「加納のいう、レッドというやつらかしら……。
 相手にして不足がない、ということは、まことに結構ですわ……」
「……とりあえず……」
「ええ。表に、出ましょう……」
 二人はそういって、席を立った。
 古来より、喧嘩は……表に出て、やるもの……なのだった。

 二人は混雑しているショッピング・センターを離れ、人気がない工場や倉庫が並ぶ一角へと歩いて行った。
 もともと、このショッピング・センターは、ここいら一帯に大型の生産拠点を持っていた某大手企業が、生産拠点を海外に移したことでぽっかりとゴーストタウン化した際に、土地の値段が急落し、それに当て込んで敷地を確保し、設立されたものだ。
 だから、意外と、徳川の工場から、近かったりする。
 孫子と楓が、灰色の、人気のない歩道を、徳川の工場の方に歩いて行くと、どこからともなく、声がした。
「……女の子だけで、こんな寂しいところをうろつくなんて……」
 また、別の声がした。
「……物騒だよ。
 ほら、日が、暮れかけているし……」
 さらにまた、別の声が続く。
「日が暮れると……暗くなる。
 暗くなれば、おれらの時間だぁ……」
「……そんな虚仮威しが通用する相手だと、思っているのですか?」
 良く通る、怜悧な声で、孫子が抗弁する。
「あの……無駄なことは……しない方が、いいと思いますけど……」
 楓が、妙におどおどした口調でいった。その割りには、声に恐怖の感情は籠もっていない。
「……相手を間違っているのでは、なくて?」
 孫子は、歩みを止めずに、続ける。
「ここにいるのは、才賀の縁者。それに、あなたがたの言う、最強の弟子とやらよ……」
「あの……テンちゃんやガクちゃん……それに、加納様に、挑もうとするのは、まだしも分かるんですが……」
 楓が、ここぞとばかりに、狼狽した声をだす。
「わたしたちと戦ったとしても……あまり、自慢にならないと思いますけど……」
 孫子と楓の諌めは、失笑と哄笑によって応えられた。
 建物ばかりが大きく、人気がまるでない路地に、「……ひゃ、ひゃ、ひゃ……」とかいう、人数も定かでない笑い声が、響く。
「……分かってねぇのは、あんた方だ、お嬢ちゃん……」
「……たった一人で酒見姉妹をぶちのめした才賀衆の小娘、それに、最強の弟子……」
「……どちらにしよ……倒せば、名が上がるって寸法だぁ……」
「しかも……あのガキどもや加納と直接やり合うよりは、よぽどたやすい……」
「……そう……」
 孫子が、すぅ、っと、目を細めた。
「聞いたわね、楓……。
 わたくしたち……加納や、あの子たちより……よっぽど、与し易いそうよ……」
「……はい。無知とは、恐ろしいのです。
 もはや同情の余地は、ないかと……」
 楓が、孫子の言葉に、大仰に、頷く。
「おしおき、なのです……」
 二人は、ぴたりと立ちどまり、背中合わせになった。
「楓……わたくしが背中を任せるということを、光栄に思いなさい……」
 そういう孫子は、いつの間にかゴルフバッグからライフルとライアットガンを取り出し、片手に一丁ずつ持っていた。
「……どちらが多く倒すのか、競争なのです……」
 楓は、孫子の言葉に頷くと……途端に、姿を消した。






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