2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(113)

第六章 「血と技」(113)

「……よろしいのですか?
 ご老体……」
 仁木田直人が、いつの間にか自分のすぐ脇に移動していた刀根畝傍に問いかける。
「お主とて、動いておらんではないか……。
 なに……後の四人に勝ち抜けたら、いただく……」
 刀根畝傍は肉の薄い皺顔をゆがめて、そう答える。

「……あはぁ、あはぁ、あはぁ……」
 睦美左近は、大柄な割には、痩せている。そのせいで、体全体が骨ばってみえ、ジャケットがぶかぶかに見えるほどだが……それでも、両腕を広げ、焦点の合わない目をテンとガクにに向け、口の端からよだれを垂れ流しながら歩み寄ってくる様子には、鬼気迫るものがある。
 表情が陶然としていて、二人に対する害意がまったく読み取れないのが……かえって、気味が悪かった。
「……お兄さん……」
 ガクが、睦美左近の方に、一歩踏み出す。
「それじゃあ……勝負だ。
 お兄さんがボク抱きつくのが早いか……それとも、ボクが捕まって、感電するのが早いか……」
「……そういうのは、勝手だけど……」
 すぐそばに立っている駿河早瀬が、大きく裂けた口を開いて、発達した八重歯……と、いっても、形状と大きさは、「歯」というよりは「牙」に近い……を覗かせた。
「おれははじめとして、他の四人も、勝負がつくのを待っているほど人は良くないから……」
「……いいさ!」
 ガクは、六節棍を取り出して、構える。
「全員……同時に、相手にしてやる!」
「……それでは……」
 駿河早瀬は、自分の口の周りを、長い舌で舐めまわす。
「……いただきっ……」
 次の瞬間……大口を開けて、ガクに食らいつこうとしていた駿河早瀬は、息を詰めて横に吹き飛んだ。
 そのわき腹に、半ばのめりこみながらも、いまだ回転を止めない六角が、のめりこんでいる。
「……甘いって……」
 六角を投じたテンが、呟く。
「なるほど……。
 投擲武器が使えると、戦い方が広がるな……」
「……犬のお兄さん、タフそうだから、大丈夫だろ……」
 ガクは、白目を剥き、口から泡を出して地面に横たわっている駿河早瀬を見ながら、独り言をいった。
「テンの六角……この間、五ミリ厚の鉄板、ぶち抜いていたけど……」
 肋骨の下……内臓を守る器官がない部分に、まともに六角を受けた駿河早瀬は、もはや、テンやガクの言葉を聴くだけの余裕はない。
「……これで、一人……そんで……」
 ガクが、呟く。
「……二人目!」
 次の瞬間、ガクは、丸居遠野の背後に出現した。
「おじさん……特異体質はいいけど……動きは、鈍い!」
 ガクの動きに対応しきれず、おたおたと床に消えようとした丸居遠野の体の一部を、ガクは鷲掴みにした。
「……テンは、襦袢の人の居場所、特定して!」
 一声叫ぶと、ガクは、「丸居遠野のどこか」を掴んだまま、自分の体を回転させはじめる。
「……や、やめろっ……」
 ガクに振り回された丸居遠野は、もがもがとそんな声を出しながらも、ガクに振り回されるままになっている。
 ぶるぶると震えながら、ガクに振り回されることにより発生した遠心力により、丸居遠野の体は、細長く伸びていく。
「……やっぱり!
 おじさん……形を変えている時は……動きがかなり不自由なんだ!」
 少し考えれば、わかる。
 人間は、人間の形状をしている時、もっとも効率よく運動できるように、できている。
 丸居遠野が自分の体を変形させるのは……潜入任務には、適しているかもしれないが、代わりに、その間、戦闘能力は、大幅に、低下する。
「……隠し芸は、所詮、隠し芸!」
 ガクは、丸居遠野を振り回しながら、睦美左近の方に向う。
「皮ジャンのお兄さん……あげる!」
 そう叫んで、腕を大きく開きながら近づいてきた睦美左近の胸元に、丸居遠野の不定形の体をぶつけた。
 丸居遠野の体は、睦美左近の胸板にぐんにゃりと弾んだだけで、どちらにも、特にダメージがあるわけではなかったが……睦美左近は、反射的に丸居遠野の体を受け止めて、怪訝な顔つきで、腕の中のぶるぶる震える物体を、凝視している。
「皮ジャンのお兄さん!
 ……その、ゴムみたいなおじさん……お兄さんと、愛し合いたいって!」
「……あ……愛?」
 睦美左近が、ガクの言葉をぼんやりと反芻する。
「そう! 愛だよ、愛!
 ぎゅっとして、ビビビッてすると、そのおじさんも喜ぶよ!
 変態さん同士、仲良くね!」
 睦美左近に抱きしめられた丸居遠野が、「ひいっ!」とか、「やめろっ!」とか、「離せっ!」などと叫んでいるが、「……あい……あい……あい……」と、なにやら考え事に忙しい睦美左近の耳には、入っていない。
「……愛し合ってるかぁーい! ベィビィ!」
 一向に反応しようとしない睦美左近に業を煮やし、、ガクが、囁きかける。
「……あい……愛し合っているぜぃ! ベイビィ!」
 睦美左近が、ようやくガクの言葉に反応する。
 と、同時に、睦美左近の腕の中の丸居遠野が、「……がぁ、がぁ、がぁ……」と震えた声で悲鳴をあげ、静かになった。
「……いえぇいっ!」
 ガクは、睦美左近に向けて、親指を上に突き出す。
「……いえー!」
 睦美左近も、ガクの真似をして、両腕の親指を上の方に突き出した。
 なんだか理由が理解できないなりにも、ガクにほめられている、ということだけは理解できたらしい。にたにたと、得意そうに笑っている。
 当然、睦美左近に抱えられていた丸居遠野は、腕を離されて、どさりと音をたてて地面に落下する。
「……あっ! UFO!」
 睦美左近とまともに向かいあったガクは、睦美左近から目をそらさず、腕だけを上に向け、天井を指差す。
 ぼんやりとした動作で、睦美左近は、顔を上に向ける……のと同時に、ガクは、棒状に伸ばした六節棍を、素早く跳ね上げた。
 股間でまともにガクの六節棍を受け止めた睦美左近は、「うはぁ!」とうめいて二メートルばかり飛び上がり、そのまま地響きを立てて、地面に転がり、ピクリとも動かなくなった。
「これで、三人……。
 ……頭の弱い人で、助かった……」
 と、ガクが感想を述べる。





[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking HONなび



↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのさん]
アダルトランキング エロブロ・センター 夜のおかずドットコム アダルトブログいいよ☆いいなランキング 教えてエロい人! SWSアダルトサーチ エログ ホット ランキング MEGURI-NET 官能小説ネット ねこさ~ち




Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ