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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(116)

第六章 「血と技」(116)

 その後は、大変な騒ぎになった。
 まず、茅や香也、三島百合香、飯島舞花、柏あんな、佐久間沙織が、酒見姉妹を引き連れて工場にくる。前後して、楓と孫子を襲った連中も、工場に合流してくる。元からいた放送部員と合わせると、かなりの人数に達した。
 荒野は、徳川と相談してピザのデリバリを注文していたが、それでは全然間に合いそうにない。
「……ピザ屋の他に、出前が効くところは……」
 荒野は、徳川とそんな相談をしはじめる。
「昼間なら、蕎麦屋が一軒あるのだが、この時間では……基本的に、ここいらは住宅地ではないから、飲食店も極端に少ないのだ……」
 徳川は、そういって肩をすくめる。
 その時、折よく、荒野の耳が、
「……餌、足りるのか?」
 とかいう、聞き覚えのある声を拾った。
 振り返ると、三島百合香が、楓たちとなにやら話し込んでいる。
「一応、ピザのデリバリ、頼みましたけど……」
 どうやら三島は、自分と同じことを懸念しているらしい、と、読んだ荒野が、声をかける。
「この分じゃあ……全然、足りませんね……」
「……よっしゃあ!
 玉木、それに、手の空いているの何人か!
 商店街に買い出しに行くから、手伝え!
 玉木は家に連絡して、刺し身用の魚、適当に押さえろ! 捌くのはわたしがやってやる!」
 三島は、元気よく、宣言した。
 三島を中心として、玉木や他の何人かが、バラバラと出口に向かう。
「徳川……ここ、火とか、使える?」
「調理に使える火元は、事務所の給湯設備くらい、なのだ。
 プロパンとか金属加工用のバーナーは、あるが……」
「……んー……」
 香也が、思いがけず、助け舟を出してくれる。
「……うちに行けば、キャンプ用の煮炊きの道具くらいなら、あるけど……」
「……ああ。
 そういや、前に、バーベキューとかやったっけ……」
 香也にそういわれ、荒野は以前のことを思い出す。
「……炭火で焼くだけなら……調理も簡単だし、ちょうどいいか……」
「……羽生さん、もうじき仕事終わるから、メール入れておく……」
 いそいそと携帯を取り出す香也。
「……おーい、誰か! 車、出せる人、居る!」
 荒野が、大声で周囲に呼びかけた。
「……今使うんすか?
 ボロいのでよければ、工場の前に停めてますが……」
 佐藤君が、そんなことをいいながら、荒野の近くに寄ってくる。
「……ちょうどいいや。
 狩野君の家、知っているな。そこの玄関前につけてくれ。
 それで、羽生さんとも合流して、荷物も、拾って来てくれ……」
「……一緒にいくの」
 茅が、荒野の袖をひいて、そんなことをいいだす。
「一度帰って、着替えて、ご奉仕なの……」
「……と、いうことだ。
 佐藤君、茅を乗せて、狩野家に向かってくれ……」
「……了解っす……」
 佐藤君が、上機嫌で答える。
「……なんだか……楽しくなって来ましたねぇ、荒野さん!」
 佐藤君は、出口に向かいながら、そういって荒野の背後を示した。

 テンとガク、それに、二人とやり合った連中も息を吹き返して、他の一族の者とか制服姿の学生とか入り交じって、談笑していた。
 放送部の誰かが気を効かせたのか、事務所からモニターを引っ張って来て、今までに記録されて来た、戦いの数々を映し出し、それを肴にわいのわいの話し合っている。
 香也たち、後から来た制服組もそこに混ざっていた。
「……これ……本当に、合成じゃないの?」
 飯島舞花が、目を丸くしながら、玉木に尋ねる。
「うん。
 これは、まだ加工する前の素材。
 まだなんも手をつけていない……」
 玉木は、何故か誇らしげに胸を張った。
「……どうだ。凄いだろう……」
「玉木が凄い訳じゃないだろ……。
 凄いのは、テンちゃんやガクちゃんで……」
 舞花は、すかさず玉木に突っ込みをいれた。
 樋口明日樹とか柏あんなとかは、驚き過ぎて硬直してしまっている。
 彼らのほとんどが、テンやガクの勇姿を見るのは初めてだった。香也は、例によって、「……んー……」唸っているだけなので、どれほど感銘を受けているのか、外からは判断できない。
 舞花のように、フランクに受け止められる方が、どちらかといえば例外だろう。
「……そっか……。
 昼休みに頼まれたの……これのデザインだったのか……」
 香也が、しばらくしてから、ぽつりといった。
 どうやら、この時になるまで、自分の仕事がどのように使用されるのか、まるで想像していないまま、玉木に乞われるままに、細々としたものを描いて来たらしい。
「……そういや、堺君や栗田君は?」
 舞花やあんなが来ている、ということは、あの二人も来るのではないか……と思った荒野が、尋ねる。
「自転車で後から追いかけて来るから、そのうちつくと思うけど……。
 先生の車、中が狭いのな……」
 荒野は、頭の中で人数を数える。
 酒見姉妹、茅、香也、樋口、柏、飯島、沙織……それに、三島。これでもう九人。タクシーと三島に分乗したとしても、確かに後二人はきつそうだった。
「……噂をすれば……。
 おーい! セイッチ! こっちこっち!」
 舞花が、工場に入って来てきょときょと周囲を見回している栗田精一に、呼びかける。傍らには、堺雅史の姿もあった。
「……そういや……学校で、誰があの凶暴な双子を抑えたんだ?」
 荒野は、話題を変える。
 少し前から、気になっていた所ではある。
「……タイミングからしても……こいつら、おれたちがいなくなってからすぐに動き出す筈だから…….
 迎撃準備とかしている暇、ほとんどなかったと思うんだけど……」
 荒野がそういうと、柏あんなは露骨に視線をそらし、飯島舞花は、こめかみのあたりをコリコリと掻きだした。
「……あー……あれ、ねー……」
 舞花にしては珍しく、言葉を濁した。
「……実は、茅ちゃんが、大活躍で……」
 代わりに、説明を引き取ったのは、佐久間沙織だった。

「……という、具合だったのよ……」
 数分後、沙織からおおよその経緯を聞いた荒野は、その場で頭を抱えたくなった。
「……んー……。
 それ、本当。
 だいたい、そんな感じだった……」
 事件当時、美術室にいた香也も、沙織の言葉を裏付ける。
「……その時の、茅ちゃん……正直、ちょっと、怖かった……」
 樋口明日樹も、少し沈んだ表情で、そう答える。
「いくら、必要で……それが一番いい方法だった、っていわれても……わたし、同じことをやれっていわれたら、できないと思う……」
「……いや、それが普通、だと思う……」
 荒野は、呻くようにそう答える。
「茅は……丸っきり平気、っていうのとは、ちょっと違うけど……それが一番いい方法だと判断すれば、迷う事なく、それを実行するんだ……」
「……みたい、ね……」
 佐久間沙織も、そっとため息をつく。
「テンちゃんやガクちゃん……それに、才賀さんや楓ちゃんも、それぞれに強いけど……茅ちゃんが、一番、何をやり出すのか、想像つかないわ……。
 それに、後になって思い返して見ると……茅ちゃんの方法が、一番合理的な解決法方だったりするのよね……」
 今回の件が、そうだったように……と、沙織はつけ加える。




[つづき]
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