第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(200)
「金集めろ、金! 加納の若にばっかり出させるんじゃねーぞ!」
徳川が適当かつ大量に注文したピザのデリバリーが届くと、一族の者たちはそんなことを言い合いながらさっさと自分たちで会計を済ませ、息を吹き返したというガクやテンのもとに、真っ先にピザと飲み物を持っていく。
会計をした時、ついでに、追加の注文も、徳川がしたのと同じくらい大量にしていた。
「……なんか、あるんすかぁ?」
ピザ屋の配達員は新たな注文を受けながら、工場内が大人数でごった返している所を見て、首を捻っていた。
「なんかって、そりゃ……引越しとか……そうだな。とにかく、新たな門出の祝いだ。
とにかく、この調子で何往復かしてくれ……」
ピザ屋の配達員がかえって行くのと同時に、三島が玉木と数名の生徒を従えて食材を調達にいく。一族の関係者中から、「おい! 何人か、飲み物買って来い!」とか、声をかけあって、出て行くものがいた。
「はじめて食べたけど……これ、熱々で、おしいね……」
「へぇ……これが、ピザっていうのか……」
ガクとテンは、差し出されたピザをさっそく貪り、ソフトドリンクで流し込んでいる。
「気に入ったのなら、遠慮せずにどんどんやってください。
追加も注文しましたし、二宮の者は、強い方には恭順することになっているんで……。
お二方ともそのお年で……あの六人を相手にあそこまでやれる方は、滅多におりません……」
「何……それをいうのなら、野呂の者も、大方は、お二方の傾きぶりに心服いたしております。
おのれの力量でおのれの欲望を満たすことこそ野呂の心意気。
失礼ながら、その恰好から判断しても、お二方は野呂の様子を色濃く継いでおいでのようで……」
屈強な二十代の若者二人が、座り込んでピザを貪り食っているテンとガクを挟んで、そんな追従をいい合いはじめる。
「……あの、加納様……ひょっとして……」
「ああ……ここにいるの顔見知り意外、全部一族の者だ……」
そんな様子をみながら、楓は荒野に、おそるおそる確認した。
「お前や才賀とやりあった連中も、合流して来ていると思うけど……」
あまりにも予想通りの答えだったので、楓は軽くめまいを感じた。
「……で、でも……。
あの人たちって……敵対していたんじゃあ……」
「本気で敵対する理由も、別にありはしないだろう……」
荒野は、つまらなそうな顔をして、楓に頷く。
「ただ、こいつらは……自分たちの目で、テンやガクたち新種が、どんなもんか……確かめて見たかっただけだよ……」
見ると……楓だけではなく、そばで二人のやり取りを聞いていた樋口明日樹や佐久間沙織も、どことなく居心地の悪い表情をしていた。
「確かに……あのお爺さん……。
テンちゃんやガクちゃんの手当て、してたけど……」
佐久間沙織は、横目でそっと、今度は敷島丁児や丸居遠野の手当てをしている刀根畝傍老人の様子を伺う。
「身内や自分自身に危害を加えられた、というのなら、別だけど……。
なんの理由も無く、誰かをつけ狙う、ということをするのは……一族の中には、ほとんど、いないよ……」
荒野はそういって、大仰に方をすくめて見せる。
「一般人と同じで……ごく少数の病的な者を除いては、ってことだけど……」
ここで荒野は意味ありげに酒見姉妹の方を見た。
「おれたちは、一般人より大きな力を持っている分、その行使に関しては、慎重なんだ。能力の行使については、原則として、任務……つまり、金になる仕事が、優先される。
それ以外で……任務以外で、他人に対して自分の能力を開放するのが許されるのは……自分たちよりも強そうな相手にした時だけ……」
「……下克上、上等っていうわけ?」
飯島舞花が、興味深そうな顔をして、荒野に問い返す。
「……確かに、世代交代の時期を判断する材料にもなっているけど……。
新しい知り合いを作るプロセスとしても、初めて顔を合わせる人間同士が、手っ取り早くお互いの実力を測るためにも、この程度のじゃれあいは必要なんだ……。
特に、テンやガクについては、情報がまだまだ少なかったから……。
それに、ついこの間まで日本にいなかったおれだって、この間、同じような歓迎の挨拶されているし……」
「……この間の、あれ……そういうこと、だったの……」
柏あんなが、少し驚いたような顔をした。
「そう。
おれ、名前は知られていたけど、国内では、あんまり顔と実力、知られてなかったから……。
おれの腕を確かめたかった若いのを糾合した黒幕は別にいるんだけど……一族にそういう気風がなかったら、あそこまで多くの人は、集められなかったろうね……」
そう説明する荒野の口調は、どこか他人事のようだった。
「……よう」
顔色の悪い男が、テンとガクを取り囲む人垣を縫って、二人に声をかけた。
「そこに……座っても、いいか?」
テンやガクから数十分遅れで目を醒ました、仁木田直人だった。
「うん。座って座って……」
ガクが、即座に自分の横を指差す。
テンもガクも、リノリウムの上に直に腰を降ろしている。
「おじ……お兄さんも、強いね……」
テンも、さばさばした表情で、仁木田を歓迎した。
「おれは仁木田という名だが……。
おじさん、でも、いい」
仁木田は、むっつりと黙り込んだまま、ガクの隣に胡坐をかく。
「お前らからすれば、おじさん意外の何者でもないからな……」
「それじゃあ……仁木田のおじさんも、食べなよ。冷めないうちに……」
ガクは、梱包材の上に置かれたピザを指差す。
「おじさんも……あれだけ動けば、お腹すくでしょ?」
「いただくが、な……。
その前に……教えてもらおう。
お前ら、何故、敷島の幻術や、刀根の爺さんの居所が、わかったんだ?
お前らのその奇妙なヘルメットに、どんな仕掛けがしていあるんだ?」
「仕掛けは、仕掛けだけど……そんなに特別なことをやっていたわけではないよ……」
仁木田の質問に、あっけらかんとした口調で、テンが答える。
「この工場の中には、多数のビデオカメラとマイクが仕掛けられていて……その情報を摘出して、位置情報を割り出してだけ……」
「レーダー……みたいなもんか?」
「……うーん。
機能としては、似ているけど……もっとインスタントなもんだよ。
撮影に便利なように、工場内の様子を座標で示すシステムは、前から準備していたし、ビデオカメラやマイクを設置してあったのも、たまたまだったし、ボクらは、この工場内のことは、かなり良く知っている、っていう好条件もあったし……」
「……撮……影?」
当然のことながら、仁木田は怪訝な顔をする。
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つづき]
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