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彼女はくノ一! 第五話 (202)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(202)

 そのあたりから楓は荒野たちがたむろしている場所から離れ、三島や羽生たちとともに料理を用意するグループに合流する。一度工場の外に出た者たちが、各々持ち寄った食材が揃いつつあり、買って来たり配送された飲み物も回りはじめている。
 刺身など、切り口が味を変えるものに関しては三島が包丁を握った。楓は、キロ単位で購入してきた肉や野菜を適当な大きさに切り、塩胡や椒串を振って串に刺し、という単調な仕事を手早く行った。人数が多い分、食材の量も半端ではなく、忙しく手を動かさないといつまで立っても終わらない、という気がして来た。
 幸い、陸続と増援が駆けつけてきたので、用意された食材は、あっと言う間に
「後は火にくべるだけ」、という形になった。
 楓の学校の生徒も、女生徒はほぼ全員駆けつけたが、それ以上に多かったのは一族の関係者であった。
 一応、術者の端くれとはいえ、養成所育ちの楓は、実は、それまで六主家の血に連なる人間と接触する機会をあまり持たなかったのた。しかし、ここに来てわっと、それも、好奇心を剥き出しにした、自分とあまり年齢が変わらない少女たちに、取り囲まれることになった。
「……あの……間違っていたら、ごめんなさい……。
 あの、あなたが、松島さん? 松島、楓さん?」
 おずおずと、持参のくないを包丁代わりに使いながら、楓と肩を並べた女性が、声をかけてくる。
 楓にしてもその女性にしても、しゃべりながらでも、手の動きは、早い。
「ええ。そうですけど……」
 この場で素性を隠す理由も思い当たらなかったので、楓は、何げなく素直に頷く。
 すると、途端に、楓の周囲を取り囲んだ女性たちが、
「……きゃーっ!」
 と歓声をあげた。
「……加納様のそばにいるから、やはりって思ったけど……」
「あの……長老が秘蔵していたっていう……」
「噂の……最強の……二番弟子……」
「……見えないなぁ……」
「いかにも強そう、なんて外見をしているもんですか……」
「やっぱ、本物は、そうよねー……」
「一見そうみえなくても、いざとなると、強いのが本物で……」
「さっき、わたしたちなんて、あの才賀とたった二人にいいようにあしらわれちゃったしさ……」
 当人である楓をよそに、いっせいにがやがやとおしゃべりをはじめる少女たち。
 顔写真や回状が出回っている訳でもないが、口コミ、という原始的な情報伝播で、楓のことはそれなりに広く広まっているらしい……。
「……はい。手を休めない……」
 あまりのことに呆然としかけた楓に、最初に声をかけて来た少女が、注意をする。
 楓は、いそいそと作業を再開した。
「……あの……」
「……ねーねー。松島さん、楓ちゃん、って呼んでもいいかしら……」
「え……ええ。
 どう、ぞ……」
 自分が注目される、という状況に慣れていない楓は、若干引き気味になっている。
「じゃあ、楓ちゃん……。
 加納の直系……荒野様とは、どういう関係?」
 単刀直入に聞かれた楓は、思わず「ひっ」という声を上げる。
 一つは、楓自身の感覚からしても、自分が荒野とどうこう、というのはありえない組み合わせであるからだし、もう一つは……。
『……茅様とのことは……どこまでオープンにしちゃっていいんだろう……』
 というあたりの判断が、楓にはつきかねたからだ。
 このような時、臨機応変に機転を利かせる、という器用な真似ができる楓では、ない。
「……わ、わたしは……」
 結局、所在なげに視線をそらして、しどろもどろな答え方をするのであった。
「ここ、こ、こ……荒野様は、指示を仰ぐ方であって……個人的にどうこう、というは、あり得ないっていうか、考えられないっていうか……。
 そそそ、それに、わたし、別に、好きな方、いますし……」
 自分自身のことに関してなら、自分の裁量で話しても構わないだろう……と、楓は判断する。
「つまり……楓ちゃんと荒野様とは、そういう関係ではない……」
「もう長いことおそば仕えしているから、何かあったとか思ったけど……」
「結構多いもんね、そういう、一緒に長期間、任務にあたってて、そのままくっついちゃうってパターン……」
 楓の周辺に集まってきた一族の少女たちは、ひそひそ声でそんなことを話し合いはじめる。
『……こ、これは……』
 ここまでくると、楓にも少女たちが、本当は一体何を知りたがっているのか……段々、予想がつくようになって来ていたのだが……。
『この人たちは、つまり……』
「この分だと、楓ちゃんのは方はそういう感じでもなさそうだし……」
「あとは、才賀の……でも、あの子、とっつき悪そうだからどうやって切り出すか……」
「それに、あの二人も……まだ小さいけど、意外にルックスはいいし……」
「加納の因子が入っていれば、すぐに育つかも……」
 ごそごそと、荒野の周囲にいる女性たちを品定めしはじめていたり……。
『……加納、様の……』
 少女たちは、小声でひとしきりそんなことを囁きあうと、お互いの顔を見合わせて、うんうんと頷き合う。
「……加納様の……玉の輿……」
『……ああ。……やっぱり……』
 そうした思考法は、楓にとっては異質なものではあったが……客観的に考えれば、荒野の配偶者になる……というのは、一族の女性にとって、それなりに魅力的な地位をゲットする……ということを、意味する……。
 野呂であれ二宮であれ、六主家の中で、それなりの血筋に生まれてた、年齢の近い女性ならば……チャンスはある……と考えるのも、無理からぬ所で……。
『……加納様ぁ……』
 荒野は、自分がこういう目で見られる、という可能性を想定しているだろうか? いや、今は、そんなことを考えている余裕はないだろうな……とか思いつつ、楓は心中で、思わず、悲鳴を上げそうになった。
「……ちょっとぉっ!」
 突如、楓たちが集まっている場所に、別の女性が飛び込んできた。
「強敵、出現!
 今ついたばかりの野呂の姫様が……」
 静流が、周囲の注目を集めている……と、その女性は、告げた。




[つづき]
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