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彼女はくノ一! 第五話 (204)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(204)

「……おーい! 玉木、撮影の準備をしておけ!」
 どこか遠くで、荒野の声が聞こえる。
 あれ? ……と、楓は思った。
 あの子たちが、茅様の護衛をするということは……わたしは……これから、何をすれば……。
「……撮影?」
「これから、いい余興がはじまる!
 しばらくは公開できないだろうが……撮影するだけは、しておけ! それだけの、価値はあるから!」
 周囲が、ざわついているのを感じながら、楓は、自分がひどく動揺していることを自覚した。
 何故……ここまで……考えが、まとまらないのだろう?
 この戦いは、あの双子の実力をみるためのもの……って、加納様は、いっていて……その実力が確かめられたら、あの二人は晴れて、茅様の護衛役……。
 すると……。
『……わたし……自身は……どう、すれば……』
 楓は、一向に明瞭にならない思考をのろのろと働かせ、ようやく、たった一つの単語に思い当たる。
『……お払い箱……なの?』
 楓は、ゆっくりと周囲を見渡した。
 数十名の、見覚えのない顔がいて……その人たちは、一族の関係者だと、いう……。それも、楓のような雑種ではなく、ちゃんとした血筋の者ばかりが、何十人も……。
『……そっか……そう、だよな……』
 こんなにいっぱい……自分よりもしっかりといした人たちが、こんなにも来てくれたのなら……もう、自分なんかの、出る幕はないよな……と、楓は、ぼんやりと思った。
 ぼんやりと立ち尽くしている楓の目の前に、山刀を構えた双子が迫っていることに……はたして、気づいているのか……。

「……加納!」
 楓の様子に異変を認めた孫子は、荒野のそばに近寄り、強引に腕を掴んで、振り向かせた。
「あの子……様子がおかしいですわ!
 あなた……あの子に、何をしたの!」
「……おれも、さっきから楓の様子が変だとは思ったけど……」
 玉木に事の次第を手短に説明していた荒野は、孫子に向かって早口に述べた。
「おれは……あの二人と、腕試しをしてみろ、と……」
「……本当に、それだけ!」
 いつになく、孫子の顔つきが、険しい。
「心配することはないよ。
 あの二人と楓とでは、断然、楓の方が上で……」
「そんなわかりきったことは、誰も聞いていません!
 わたくしは、あなたが、楓に何をいったのかを糺しているのです!」
 斬りつけるような口調で、孫子はいった。
「そもそも……あの二人と楓が、なんで戦わなくてはならないのですか!」
「……一つは、楓の実力を、新参の連中にみせるため。」
 いつにない孫子の剣幕をいぶかしみながらも、荒野は、冷静に答える。
「……もう一つは、あの二人に、今度茅の護衛役をやって貰おうとして……そのために、楓にも、二人の実力を見て貰いたかったから……」
「……それ……楓には、どう伝えました……」
 孫子の目が、すぅっと細まった。
「加納……あなた……。
 これだけ付き合って来て……あの子の気性を、呑み込んでいませんの?
 まさか……あの子にいきなり、理由もつげず……茅の護衛役を解く……とだけ、告げたりは、していませんわよね……」
 怒りをぶちまけている……というより、対面している荒野の愚かさを哀れんでいるような表情になっている。
「……ええと……」
 そう詰め寄られると……荒野にしてみても、自信がなくなってくる……。
「それは……説明……して、いなかったかな?
 おれは、楓にも、普通の学生生活を送って貰いたかった、だけなんだけど……」
「……このっ!」
 孫子は、荒野の胸倉を掴んで、自分の方に、引き寄せる。
「鈍感!」
 あたりに響き渡るような大声で一括した。
「……あの子……下手すると、やりすぎるわよ!」
 そう叫んだかと思うと、孫子は、人込みをかき分けて、姿を消した。
「……なんだ、ありゃ……」
 解放された荒野は、呆然とつぶやきながら、乱れた胸元を手で整える。
「いや……孫子ちゃん……た、正しいかも……」
 震える声で、玉木が、いった。
「……あれ……みて……」

 勝敗自体は、一瞬でついた。
 楓が投じた六角が、酒見姉妹の銃弾すら跳ね返す山刀を、瞬時に粉砕したのだ。
 一発二発が命中した程度では、分厚い金属片がここまで粉みじんになることはない。数発から数十発もの六角が、ごく短時間のうちに、集中して命中しなければ……このようには、ならない。
 それも、一撃一撃に……かなり威力のあるがなければ……。
 と、酒見姉妹は、ここまで考えて、ほぼ同時に顔をあげ、柄だけになった山刀を放りだす。
 瞬時に、モーションさえ見せずに二人の山刀を砕いた化け物が……二人に迫っていた。

「……やべっ!」
 顔をあげた荒野は、尋常ならざる身のこなしで、楓が、酒見姉妹を追い詰めているのを認めた。
「楓!
 ……もう、いい!」
 反射的に叫びながら、荒野は、三人がもつれ合うようにしている場所に、飛び込む。
 酒見姉妹は、二人掛かりで、懸命に、楓を撹乱しようとしていたが……はた目には、楓が、酒見姉妹を嬲っているようにしか見えなかった。

『……なんて……』
 醜態だ……と、荒野は思う。
 実力差を見せつけるだけなら……楓は、酒見姉妹の戦意を喪失するだけでよかった。
 二人の山刀を砕いた時点で、その作業は終えている、ともいえる。
 しかし、楓は……さらに、二人を追い詰め、致命傷を与えずに、じわじわとダメージを与えて続けている。
 武器を取り出せば、手元に投擲武器をたたき込み、逃げようとすれば、先回りして足元を掬う。
 逃げるのも、立ち向かうのも無駄……と、さほど時間をおかずに悟った双子は、二人で連携して、楓の攻撃をかいくぐることに専念した。
 驚いたことに……楓の動きは、酒見姉妹が二人掛かりで行う撹乱にも勝って、俊敏であった。
 最初の数秒で武器を砕かれ、次の数秒で戦意を折られ、さらに次の数秒で、姉妹は、生き残るためには全知全能を尽くさねばならない相手と対峙していることに、気づいた……。
 酒見姉妹は……楓の姿をとった「絶望」と、攻撃をかいくぐり、逃げ切ることで、戦い続ける……。

「……楓! もういい!」
 一瞬で事態を把握した荒野は、楓と双子の間に体を割り込ませた。
 何がきっかけになって、楓をこのような行為に駆り立てるのか……それは、分からない。
 しかし……今の、じわじわと敵を嬲るような戦い方は……平素の楓からは、考えられない……。
 楓は……原因はよく分からないが……常軌を逸している……と、荒野は結論する。
 しかし……楓は、止めに入った荒野もろとも、攻撃を続行した。
「……なっ……なんで、お前!」
 予想外の楓の反応に、荒野は驚愕する。
「……わ、わたしなんて……」
 ようやく、返答らしい返答をした楓の声が、震えていたので、荒野はそれまでとは別の意味で、驚く。
「……どうせ……どうせ……」
 楓は……泣いていた。
「いらない子なんですぅ……」
 楓は、手にしたくないを、素手の荒野に向けてふりあげる。
 と……。
「……このっ!」
 その楓のくないが、何物かに吹き飛ばされた。
「お馬鹿くノ一と、そのお馬鹿な飼い主!」
 みれば……ライフルを構えた孫子が、吠えている。




[つづき]
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