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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(133)

第六章 「血と技」(133)

「……という感じだったわけです……」
 休み時間、荒野は早速保健室に駆けつけ、三島百合香に昨夜の茅の様子を報告しておいた。三島は性格と挙動に問題があるとはいえ、料理のことと人間関係については「それなりに」頼りに「なることもある」大人である。
 荒野としては、正直な所、あまり当てにはしていなかったが、一応念のために話しだけはしておく……という程度の心積もりだった。
「……隣の三人といい、お前さんたちといい……」
 荒野の話しを一通り聞いた三島は、にやにやと笑っていた。
「これで、それぞれなにくれと問題を抱え込んでいるんだな……」
「……そう。
 それだ……」
 三島の言葉に、荒野は頷いた。
「楓のことも、ある。
 楓、今朝はだいぶ落ち着いていましたけど……昨日、帰ってからどうでした?」
「……ああ。
 才賀とあの家の糸目と三人でしばらくファックりこんでいたら、じきにおとなしくなったぞ……。
 やっぱ、あの手のヒステリーに効果があるのは、ファックだな……」
「……ええっと……」
 それを聞いた荒野の目が、点になった。
「まるで、その……見てきたように、断言されても……」
 荒野は所在なげに視線をさまよわせる。
「いや、見てきたように、ではなく、実際に見てたんだけど……」
 三島が、荒野の言葉を訂正する。
「見てた……って、楓が落ち着く様子を、って……」
「ああ。だから、才賀と楓が、だな。
 どさぐさにまぎれてその場であの糸目を押し倒してしばらくいちゃいちゃする所を、だな、一部始終じっくりと堪能させていただいたんだ……」
 しばしの間。
「あいつら……まだ初心者で動きはぎこちなかったけど、ぼちぼちコツを呑み込んできた時期で、やりはじめると夢中になって、周囲に人がいても気にする余裕がないのな。
 特に糸目は一人で二人を相手にしなくてはならなかったから、わたしらのことなんか気にする余裕はなかったな……」
 荒野がしばらく何もいわないので、三島が平然と説明を続ける。
「……ちょ……ちょっと待て!
 先生!」
 荒野は、三島に掌をかざして、説明を中断させた。
「あの三人がそういう風な関係になった……というのは、まあ、いいとして……。
 先生。
 あんた、三人がやっているところ、ぽかんと口を開けて見てたのか?」
「ぽかんと口を開けて、ではなく、炬燵に入ってお茶を啜りながら、だけどな。
 正確には……」
 三島が荒野の言葉を訂正すると、荒野は落ち着かない様子でぼりぼりと頭を掻きはじめる。
「……えーと、その……」
 荒野はしばらく三島に言うべきを言葉を捜した。
「三人がそうしている所を、わざわざ見ていたのは……何故?」
「わたしがわざわざみてた、というより、あの三人が人前であるにもかかわらず、いきなりおっぱじめたんだ。おかげでこっちは寒い中、一旦マンションに帰ってゴム取ってこなけりゃならなかったんだぞ。
 これでも保健室の先生とやらだからな。最低限、生ハメ禁止令くらいは徹底させて置かないと……」
 その返答を聞いた荒野は、軽いめまいを感じた。
 ということは、つまり……三島は、マンションに一旦帰るほど冷静だったわけで……だったら、何故……三人を止めなかったのだろう?
「ゴム取りにいく前に、三人を止めようと思わなかったんですか?」
 深呼吸して息を整えてから、荒野が三島に聞いた。
「あのな。無茶いうなよ。
 相手は楓と才賀だぞ。
 その気になったあいつらを止められるのは、お前くらいなもんだろうが……」
 三島の返答は、極めて明瞭だった。
 確かに……あの二人が暴走しはじめたら……一般人では、手に余るだろう……。
 しかし、三島の方も……それをいいことに、面白がって、あえて傍観していたに違いない……と、荒野は予測した。
「……ま。
 なんだな。
 ヒステリーには、場合によりファックが効果的、ってのは、部分的に本当のことなんだが、昨日の茅の話しでは、楓のアレは、自分の居場所がないって脅迫観念が元だってこったろ?
 だからな、無理やりにでも、あの糸目が楓の存在理由になっちまえば、そのヒステリーも治るんじゃないかと思って放って置いたんだがな……。
 いきなりおぱじめたのには実を言うとこっちも驚いたんだが、まあ、実際にアレしちまえば、否が応でも、自分のことを必要とする……自分がいることで、誰かが喜んでくれる……という実感が得られるわけだから、楓のパターンにはそれなりに効果があると踏んで放置していたんだけど……」
 三島は、少し表情を引き締めて説明を続ける。
「……楓の方は、アレだ。
 少し時間をかけて楓の居場所を確固としてものにしていけば、いずれ完全に落ち着く日もくる。そういう問題だから、いいとして……。
 この先、問題になるのは……茅の方だな。
 こっちは、楓とは逆に、時間が経てば経つほど、問題が深刻化する。その上、あの三人とかにも波及する可能性があり……さらに、現在の所、この問題に関する専門家は、世界中探してもどこにも存在しない……。
 まあ、ぶっちゃけ、お前さんがしっかりなけりゃどうにもならない類の問題なんだわ……」
 三島は、一番の問題点を的確に指摘してきた。
 何より、茅たちには、「前例」が存在しない。
 だから、エキスパートなども、どこにもいない。
 この先、茅たちが身体心理両面において、どんな風に変化していくのか、まるで予測がつかない。
 つまり……将来、茅たちの体質が原因となって何か問題が発生したとしても……荒野たちが、自分の手で、解決策を模索し、見出さなくてはならない……。
「ま……なんとかしますよ……」
 荒野としては、そう答えるよりほか、なかった。
「……荒野……」
 三島は、そう答えた荒野をみて、ひっそりと笑った。
「茅も楓も、才賀もお前さんも、糸目も……。
 わたしに言わせりゃ、みんな一律、どこか足元があぶなっかしい問題児の集まりなんだがな……」
 ……あまり深刻に思いつめるな……ということを、いいたいらしかった。






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