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第六章 「血と技」(134)
昼休みを除いて、授業の合間の休み時間は短い。たった十分しかない。
三島との会談を手早く切り上げて保健室から教室に戻ると、教室につく前にチャイムが鳴った。
『……やべぇ!』
荒野はそう思いながら、周囲を見渡して誰もいないことを確認し、「気配を断って」教室に戻ろうとする。楓たちに「目立つことをするな」といっている手前、普段ならこんな真似は絶対にしないのだが、次の授業には、何が何でも遅れるわけにはいかないのだった。
何故なら……。
「……こぉぉおやぁくぅん……」
いきなり、襟首を掴まれて引き戻され、荒野はあやうくむちうちになりかける。
「……荒神!」
「ここでは、二宮先生。
それに、廊下を走ったら駄目。
さらにいうと、始業のチャイムがなっているのにこんな場所にいるのも、関心できない……」
ネクタイと首の隙間に指を入れて気道を確保しながら荒野が背後を振り返ると、二宮浩司先生その正体は二宮荒神がにやにや笑いを浮かべながら、荒野の襟首を凄い力で握り締めて持ち上げていた。
荒野は反論する余裕もなく、爪先立ちになったまま、ずるずると教室まで引きずられていく。
その直後の二宮浩司先生の授業を、荒野は教室の後ろで立ったまま受ける羽目になった。
「……おい。どこいってたんだよ……」
「授業に遅れるなんて、珍しいな……」
その授業が終わって二宮先生が教室を出て行くと、案の定わらわらとクラスメイトたちが荒野の周囲に群がってくる。
「……ああっ……うん。
ちょっと、その……保健室に用事があって……」
「……体調が悪いのか?」
そういって軽く眉を顰めたのは、嘉島だった。
クラス委員を勤めているだけあって、荒野だけではなく、クラス全体に気を配っている生徒で、荒野も何度か細かいことを相談したこともある。
「……あ、いや……。
体調は、なんでもないんだが、別の相談ごとがあって……」
「ミニラ……いや、三島先生にか?
それは……奇特というか、物好きというか……」
「かなり同意できる見解だが、あの先生も、分野を限定すればそれなりに頼りにはなる……」
「……じゃあ、その相談事は解決したのか?」
「いや……。
そう簡単に解決はしないだろうけど、気を長く持っていこう、ということになった……」
「……そうか。
加納君はいろいろ抱えこんでいるようだが、あまり深刻になるな……」
「……あ、ああ……」
嘉島に神妙な顔をして頷かれ、荒野はかなり複雑な心境になった。
『……おれ、そんなに悩んでいるようにみえるのかな……』
と、そう思った。
「……加納君、ちょっといいか?」
そんな嘉島が、昼休み、給食が終わると同時に声をかけてくる。
「……いいか、って……」
荒野は嘉島の意図を計りかねて、首を傾げて見せた。
「時間、あるかな?
今日、土井君が休みでな、面子が足らないんだ……」
「……面子って……何の?」
「バスケ」
荒野は嘉島といつの間にか集まったクラスメイトに取り囲まれて、半ば無理やり体育館まで引っ張られていった。
「……昼休みに、スリー・オン・スリーをしているんだけど……」
「いや……それは、いいんだけど……」
荒野は口ごもった。
「おれは……その、本気、だせないし……」
「そのあたりは、適当で……。
どうせ欠員埋めだし、ほら、体育の授業をやっている時のような感じでやってくれれば……」
そういわれても……荒野と嘉島の後ろについてくる人数をみてみると、どうみても「荒野が目当て」にしか、見えない。クラスのほとんど全員が、ぞろぞろとついて来ている。
「……これだけの人数いれば、おれを誘う必要ないじゃん……」
「そういうなよ。みんな加納君目当てで来ているんだから……」
……やっぱり、それか……と、荒野は思った。
「……才賀もいるし……」
「わたくしも、誘われましたの……」
体育館につくと、他のクラスや学年の生徒も大勢集まっていた。
「……なんだよ、この人数……」
「たまたま、みんな、遊びに来ていたんだろ……」
嘉島が目をそらす。
荒野は軽くため息をついて追求するのをあきらめ、ゲームを開始することにした。嘉島が荒野を含めた三人ともう三人の二チームを適当に指名する。
嘉島自身は入っていなかったが、全員運動部に所属している生徒たちばかりだった。
荒野もスリー・オン・スリーのルールくらい知っているが、一般人相手にまさか本気を出すわけにもいかず、適当に手を抜いた。
具体的にいうと、ボールに触ろうとせず、積極的にカッティングを行うわけでもなく、適当にボールを追って走り回っていた……というわけだが……こうした態度は、大いに不評だった。
すぐに観客からブーイングや野次が飛ぶ。
「もう少し、本気でいってもいいよ……」
嘉島も、荒野にそういい、荒野の相手チームのうち二人を、交代させた。
「……おいおい……」
荒野はぼやいた。
「まあ、こういうのも面白いじゃないか、おにーさん……」
「頼まれたら、いやとはいえませんから……」
新しく相手チームに入ったのは、飯島舞花と才賀孫子だった。
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