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彼女はくノ一! 第五話 (219)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(219)

「……おう、来た来た……」
 湯上がりの三人がパジャマに着替えて帰ってくると、三島はそういって出迎えた。
「もう遅いし、何にもないから茶漬けでいいな……」
 そういいながら、返事を待たずにいそいそと立ち上がり、台所に向かう。
「それで、だな。
 お前ら……結局の所……これから、どうするつもりなんだ……」
 余り物の冷凍ご飯をレンジにほうり込んだ三島は、首だけを出して三人に尋ねた。
「当人が納得しているんなら、文句をいう筋合いじゃないんだが……。
 お前ら、本当に納得しているのか?
 そこの糸目は同時に複数と付き合えるほど器用なたちにも見えないし……三人、というのは、何かと不安定だぞ……」
 ……この人も……なかなか、食えない人だな……と、羽生は思った。
 変に寛容な所を見せるかと思えば、こうして不意にずばりと本質を突いてくる……。
 面と向かってそういわれた香也、楓、孫子は、微妙に三島から視線をそらせてしばらくもじもじと居心地が悪そうに身じろぎしていた。
 が、結局、年長者である孫子が、
「それは……香也様に、聞いてくださらないと……」
 と、曖昧に語尾を濁した。
 自分の気持ちは変わらないけど……あとは、香也次第……というわけだ。楓も、孫子の言葉に頷いている。
「……と、女子の方はそういっているが……どうする?
 糸目の色男は?」
 三島は、今度は面白がるような視線を香也に向ける。
 話しを振られた香也は、いつものように「……んー……」とうなって間を持たそうとしたが、楓と孫子に左右から見つめられて流石に居心地が悪くなったのか、語尾を延ばすのを急にやめ、ぼそぼそと語り出した。
「……ぼ、ぼくは……」
 性急に言葉を出そうとして呂律が回り切らず、一旦言葉をきり、深呼吸をする。
「ぼくは……その、ようやく……二人と、他の人と、まともに向き合うこと、はじめたばかりだから……」
 結論を出すのは、もう少し、待ってほしい……と、香也はぼそぼそと不明瞭な口ぶりで断言した。
 そもそも、香也は……意識的に二股をかける、とかいう器用なことができる性格であるわけもなく……不器用なりに、真剣に考えていることが伝わってくる口調だった。
 楓や孫子も、香也の言葉に頷いている。
「……ま、当事者が納得しているんなら、それでいいがな……」
 三島も、そういいながらも、満足そうに目を細めている。
「どういう結論を出すにせよ……。
 後で後悔するような真似だけは、するなよ……」
 そう、念を押した。
「さ。
 そんじゃあ後は、食うもの食ってさっさと寝ちまえ!
 重労働の後だし、明日も学校はあるんだし、休養と栄養はしっかりとっとけってぇの!」
 そういって、レンジで暖めた冷凍ご飯の上に、お茶をかけはじめた。
 重労働の後だったからか、三人の食欲は普段よりも増しており、三人の食っぷりを確認した羽生と三島は、すぐに立ち上がってありあわせの食材で適当な総菜をでっちあげなければならなかった。

 食べるだけ食べると、香也はすぐに立ち上がり、自分の部屋に向かう。足元がふらついていたが、楓と孫子が自然に左右から支えてそのまま一緒に居間を出て行く。
「……明日も学校があるんだから、それ以上やりすぎないようにしろよ!」
 と、三島は三人の背中に声をかけた。
 三人の足音が完全に遠ざかったのを確認して、三島がいった。
「……あの分だと……風呂場でもいちゃついていたな、あれは……。
 男の願望を具現化したようなシュチュエーションではあるが、糸目の体力が心配だ……」
「……いや……」
 なんとコメントしていいの判断に迷い、羽生は視線を空中にさ迷わせ、こめかみをこりこりと指で掻いた。
「……とりあえずは……あれがデフォにはならないかと……。
 今日はたまたまチビちゃんたちがいなかったし……それに、真理さんが帰ってくれば、あそこまで大っぴらには……」
「……そうかぁ?
 真理さんも、変に寛大な所があるからなぁ……」
 三島が、羽生の予測に意義を挟む。
「あの人……にこにこしながら、妊娠だけは気をつけてね。まだおばあちゃんにはなりたくないからっていって……後は放置とか、平気でしそうじゃないか?」
 三島がいう通りの光景が、羽生にもありありと想像できた。
「……確かに……」
 羽生はため息をついた。
「真理さんも……興味本位とか、そういう軽い気持ちなら、確実に反対するだろうけど……楓ちゃんも孫子ちゃんも、真剣だからなぁ……」
「まあ……避妊に関しては、流石にやばいから、周りの大人がしっかり手綱をとらなけりゃならないけど……。
 後は、当人同士の問題だからなぁ……」
 三島は、澄ました顔をしてお茶を啜った。
「……まあ、あの糸目も……。
 ようやく逃げ腰でなくなったのは、いい変化だ……」
「……へ?」
 羽生の目が、点になる。
「そうなんすか?」
「……なんだ? お前さん、気づかなかったのか?」
 三島はまじまじと羽生の顔をみつめた。
「途中から、あの糸目……自分から腰、振ってたろ?
 それまでは、される一方の受け身だったのに……」
「……え? あっ……。
 そう……でしたっけ?」
 同じ光景を見ていたはずなのに……羽生は、自分の観測に自信が持てなくなって来た。
「お前さんには刺激が強すぎたのか……すっかり見入っていたからな……」
 三島は苦笑いをした。
「……まあ……あの糸目が……あの二人とちゃんと向き合う覚悟を決めたのは、いい傾向なんだろうが……。
 ……んー……。
 あの糸目、トロそうだからなぁ……。
 これから真剣に考えはじめたとして……ちゃんとした結論がでるまでには、かなり時間がかかりそうだし……」
 いいたい放題、であった。
「……真理さんは、ともかく……」
 羽生は、何度目かのため息をついた。
「……テンちゃんやガクちゃん、ノリちゃんも……まだまだ波乱を起こしそうだし……」
「まあ……生身の人間がやることだから……」
 あっけらかんとした口調で、三島が断言する。
「現実に、家庭内ハーレムなんてものがあったら……よっぽどうまくやらない限り、どうしたって、ギスギスした所はでるだろう……。
 ましてや……あの糸目は、どっからどうみても、器用に立ち回れる性格にはみえないし……」
「……そうっすねぇ……」
 羽生も、その意見には素直に頷く。
「本当に……こーちゃんは、不器用だから……」

 二人で食器を片付けてから三島も帰って行き、羽生はそっと香也の部屋を覗いた。
 二組の布団が敷かれ、その中で、三人が一塊になって静かに寝息をたてている。
 布団が乱れていないし、それらしい物音もしなかったから、あれからすぐに寝たのだろう。香也はこの間風を引いたばかりだし、楓と孫子が添い寝をするといってどちらも譲らず、香也が押し切られたのだろう……。
 羽生は、その時を容易に想像することができた。
 ……素直な、いい子たちなんだがなぁ……とか思いながら、音を立てないように静かに襖を閉じ、風呂に向かう。
 そこで服を脱いで確認すると……案の定、下着がぐっしょりと濡れていた。



[つづき]
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