2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼女はくノ一! 第五話 (222)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(222)

 昼休み、柏あんなは茅や楓とともにパソコン実習室に向かう。もともとは、そこに入り浸っている堺雅史目当てに足を運びはじめたのだが、今ではそこの常連ともすっかり顔見知りになり、半ば日課となっていた。柏あんなはパソコンとかプログラムなどにはどちらかというと疎い方だが、プリントアウトしたものをページ順にまとめてホッチキスで止めたり、単純な入力作業など、それなりに手伝えることも多く、出入りするうちに知り合った先輩から半ば無理無理、勉強を教えられることもある。
 パソコン自習室は、今や、ボランティア活動と自主勉強会の中心拠点と化しており、全学年の生徒はおろか、先生方までもが頻繁に出入りするようになっていた。
 一部の勉強熱心な……というより、受験に備えることに熱心な生徒は利己的な利用のし方をしていたし、大部分のそうでない生徒も、部活や同じクラスの友人に連れられて顔を出し、それがきっかけで通うようになる……というパターンができつつある。
 社会の役にたちたいとか、勉強が好きだから……という正当派な動機はどちらかというと少数派で、多くは「他のみんなもやっているから」とか「なんだか分からないけど、面白そうだから」という浅薄な動機で集まってきているような気がする……と、あんなはみている。
 例えば、ここ数日、茅や楓は携帯でも表示できる単語帳を開発し、試験がてらに公開しているのだが……これについての生徒の食いつきは、かなり良好だった。
 というのは、この電子単語帳、正解率や回答を打ち込んだ時間で点数を出し、ランキングを表示する仕様になっていたのだが……定額制でパケット代に不安のない生徒たちは、こぞってハイスコアを出そうとやっきになっり、寸暇を惜しんでこのシステムを利用するのが軽い流行になっている。多くの生徒は、単語を覚えるのが目的なのではなく、友人たちよりにせんじて高いスコアを出すのが目的、なのである。事実、関係の無い教科の授業中にまで、目立たないように携帯を取り出し、この「ゲーム」に勤しんでいるのを教師に見つかった……などという笑えない話しも、ぼちぼち出始めている。
 まだ試用段階であるのにもかかわらず、口コミで他校の生徒にまでユーザー層が広がっていた。このシステムは無償で公開しているので、アドレスさえ知っていれば、誰でもエントリーできるのだった。
 また、このシステムは問題さえ用意すれば、暗記が必要となる科目には大体転用できる。現在、茅と佐久間沙織を中心とした有志生徒達と先生方が共同で数科目分の「問題」を作成し、順次公開している段階である。目下のところ、さほど火急の問題でもないのだが、もう少し時間が経つと、新しいゲームを待ち構えているユーザーもぼちぼちではじめることが予想されている。
 旧来からのパソコン部の生徒たちは、次々と楓や茅が立ち上げるシステムのサポートとデバック、それに改良などを主に担当していたのだが、堺雅史によると、わずか数日前と比較しても、飛躍的に知識が充実してきている……という。
 必要に迫られて、既存のコードを目で追う機会が格段に増えたこと、それに、際限なく寄せられる「初歩的な質問」に答えるためにはシステム全般についてについてそれなりに理解していなければならず、手を加えるにしても、無知なままでは手のつけようがない。加えて、参考書類も数多く寄贈されたばかりだし、調べても分からなければ、茅や楓に直接聞くことも可能……と、短期間で知識を身につけ、実践的な技能を習得するのに最適に近い環境が整備されていた。
 モチベーションを保つ、という意味では、「不特定多数に感謝され、頼りにされる」という実感は、何物にも代え難い。
「この学校発」のシステムにアクセスし、使用する者たちは、そうした電子的な情報支援がどんなに便利なものであるのか、実感しはじめている。
「……もし、同じくらいの規模と機能を持つシステムを、外部の業者に発注して作らせようとしたら……」
 少し前、堺雅史は、柏あんなにそう説明した。
「……軽く数千万円とか億単位の予算が、必要になっちゃうだろうね……」
 それだけのシステムの中枢部分を、楓と茅は、ほぼ二人だけで、ごく短期間のうちに構築してしまった……と、堺はいう。
「……実際のはなし……規模が大きすぎて、多人数でコードをおっていても、未だに全体像を把握できないくらいなんだけれども……」
 茅と楓は、昼休みや放課後に顔を見せるたびに、パソコン部員たちが処理し切れなかった部分にパッチをあてたり、何かしら新機能を実装させたりしていく。
 楓もたいがいに凄いと思うのだが……茅は、システム回りに加えて、学習に必要な資料の整理なども、平行して行っている。それも、全学年、全教科分を、だ。
 システムが大体安定してきた最近では、沙織と並んで放課後に居残っている生徒たちの指導に当たっている。一年生の茅が上級生の勉強をみるのも、不思議といえば不思議な光景だったが……特に最初のうち、沙織と一緒に行動することが多かったのと、それに、「茅だから」という理由で、なんとなく納得されてしまっていた。
 実際……茅が、全学年、全教科の教科書の内容を丸暗記していることは、すぐに全校生徒に知れ渡っていた。
 そうした「特別製」を、自分たち「普通の生徒」と引き比べることは、あまり意味があるとも思えない……という空気が、校内には、あった。
 あるいは……茅が単独でこの学校に転校してきていたのなら、いじめにあったり、誰にも相手にされず孤立する、という可能性も、十分にありえただろう……と、あんなは思う。
 異質な存在は、抑制し、排除する……という「空気」は、残念ながら、この学校にも存在する。有働裕作か大清水先生なら、
「……学校とは社会の縮図であり、もし学校にもそのような空気が存在するとするなら、それは、この世間全般が、もともとそういう性質を持ったものなのだ……」
 程度の「理屈」を捏ねてくれるのかも知れないが、あいにくとあんな自身は、そこまで屁理屈が好きではない。
 ただ……現在、茅や楓たちが孤立していないのは、自分や飯島舞花など、校内でそれなりに好意的なポジションについている生徒達と転校する前から知り合っていた……ということが、大きいのではないか……とは、直観的に、感じてはいた。
「友達の友達」は、多少、風変わりであっても、「変わった友達」として受け入れられることが可能かもしれない。
 しかし、突然やてきた未知の転校生が、茅や楓くらい風変わりだったとしたら……。
『……かなり、きついだろうな……』
 と、あんなは、なんとなく、そう思う。
 学校に溶け込むまでに……かなりの時間が、必要となるのではないか……。
 だが、現実には……茅も楓も、三学期も半ばにさしかかった今の時点で、多くの生徒と接し、知り合いが増えつづけている。顔見知りの人数、ということでいえば、例えば、美術室に引きこもりがちな香也よりは、よっぽど多くの友人知人を校内に作っている筈だ。
 それでも……。
『……綱渡り、だよな……』
 と、柏あんなは、楓と茅を取り巻く現状を、そう認識する。
 今のところ、かなりうまくいっているけど……何かの拍子にバランスが崩れれば……あっという間に、全てがおじゃんになりそうな……危うい均衡の上に、現在の状況は、ある……と。
 そして……その程度のことは……。
『……加納先輩も……』
 あんななどより、よっぽど強烈に感じてはいるのだろう……と、あんなは確信していた。




[つづき]
目次

有名ブログランキング

↓作品単位のランキングです。よろしければどうぞ。
newvel ranking  HONなび

アダルトアフィリエイト
Japanese refiend porn
↓このblogはこんなランキングにも参加しています。 [そのじゅうに]
Link-Q.com SPICY アダルトアクセスアップ アダルト探検隊 アダルトファイルナビ AdultMax  えっちなブログ検索 いいものみ~つけた 影検索 窓を開けば
無修正アダルトビデオ イッテル

Comments

Post your comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

このページのトップへ