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彼女はくノ一! 第五話 (230)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(230)

 翌日の土曜日、香也はいつもの時間に目覚めた。自然に目が覚めてから、「体が、自然に起きるようになっているなぁ……」と、そんなことを思う。
 少し遅れて目覚めしが鳴るのを、すぐに止め、伸びをしながら上体を起こす。
 楓たちと寝起きを共にするようになってから、健全というか健康的な生活には、なってきている。
 のろのろと起き上がって洗面所に向かい、顔を洗って廊下に出ると、シャワーを浴びたばかりの四人と出くわした。楓と孫子、それに、テンとガクは、最近、朝早くからジョギングにでも出ているらしい。
 香也は彼女たちが出掛けている時間帯はまだ寝ているので、詳しい事は知らないが、シャワーを使った後、上気した顔の彼女らと、この時間にこうして行きあうことが多かった。
 彼女たちが、香也までそのジョギングに連れ出そうとはしないことは、香也には有り難かった。
 朝の挨拶とか他愛のない雑談を交わしながら、香也は居間へ、他の四人は台所へと向かう。香也はそそくさと炬燵に手足を突っ込み、背を丸めた。この時期、朝の空気は冷たく、香也は寒いのが苦手だった。
 例によって、羽生が先に台所に入って支度をはじめていたので、朝食の準備が整うまでさほど待つ必要もなかった。ほどなくして、電子ジャーやみそ汁の入った鍋、それに、皿やどんぶりなどが次々と運ばれてくる。人数が多いということもあって、このところ、狩野家の食事は、香也、真理、羽生の三人で暮らしていた頃と比較して、多品目の総菜が並ぶようになってきている。昨晩の金平牛蒡と里芋の煮っころがしに加え、厚揚げの煮物と佃煮、ホウレン草の胡麻和えなどの副菜が増えていた。
 主菜は、ベーコンエッグと簡素な物だったが、ご飯を食べながらその辺の皿に持ってあるものを適当につまむだけでも、それなりに満腹してしまう。
 食事中、テンとガクが羽生に、香也の古着がどこかに残っていないかと尋ねていた。なんでも、
「……今朝、ボロっちぃ新手が来てさぁ……」
「どうも、それがこっちに居着くらしいんだよね……」
 とのことで、ガクたちのいう「それ」とは、どうやら、香也たちより少し小さい、テンやガクと同じ年格好の少年であるらしい。その場にいた楓や孫子も横から口を挟み、情報を補完したので、その少年が徳川の工場にいた、荒野の同類であるということが判明した……と、いう。
「って、ことは……やっぱ、ニンジャなん?」
 羽生がそういって首を傾げる。
「ええ。
 ……でも、名簿には記載されてないから、荒野様にとっても予想外の子だったみたいです……」
 と、楓は補足する。
「加納のこと……というより、この土地で今、進行している様々なことをひっくるめて……一族の中では、かなり注目をあびているようですわね……。
 今朝のその子は、小耳に挟んだ断片的な噂だけを頼りに、着の身着のままでここまでやってきたようですけど……」
 孫子も、「その、甲府太介という男の子は、楓と同じように、身寄りのない一族の子供をまとめて育てている施設から、考えなしに飛び出してきたらしい」という情報を付け加える。
「着のみ着のままで、か……」
 羽生も、頷く。
「そうか。だから、こーちゃんの古着か……。
 いや、探せばなんかしら、あると思うけど……ズボンやパンツなら、わたしのお古でもいいしな……。
 後で探してみるわ……」
「……お願いします」
 楓もそういって頭を下げた。
「今は、とりあえず、加納様がマンションに連れ帰って、シャワーとかお食事とかの世話をしていますけど……」
 その子は現在、保護者がいない状況で、元の施設に帰るつもりもないらしい。
「……加納の弟子、志望とかで……」
 孫子はそういって肩を竦める。
 荒野から引き離されても、すぐに戻ってくる……と息巻いている……。
「普通の子供なら、無理にでも連れ帰ればそれで終わりでしょうけど……」
「……まあ……現に、その施設ってところから、自力でここまで来ちゃっているわけだし……」
 羽生も、半ば呆れた様子で頷いた。
「いっそのこと、監禁とかしないかぎり……」
 その子の意志を阻止することは、できない……。
「……まったく……一族としての能力をそんな猛襲のために使うなんて……浪費以外の何物でもありませんわ……」
 孫子は、そう嘆いて見せた。
 結局……荒野は、その子については「しばらく手元に置いて、様子をみる」ことになりそうだ……と、困った顔をしながらも、そんな決断を下したようだった。

 楓や孫子の口ぶりから想像するに、予定にないその子の出現に、荒野もそれなりに戸惑ってとまどっていたのではないか……とか、香也は思ったが、そう推測するのと同時に、「荒野なら、多少とまどっていたとしても、臨機応変にどうにかしてして、首尾よく丸く収めたのだろうな」とも、思ってしまう。
 香也の知る荒野とは、突発的な出来事で平然と受け止めてしまえる、即時適応能力に優れた少年だった。優れた観察力と判断力を持ち、状況の変化に応じ、素早く現実的な対応をする柔軟さも持ち合わせている。
 いつも茫洋としている香也自身とは、対極にある資質の持ち主だ、といってもいい。
 現に、今朝現れたばかりの、その子の衣服の手配を、もう、している。この分だと、今日明日中には、その子の住居や書類上の身元偽装などの手配も、終えてしまうのだろう。
『……しっかりしている、というよりも……』
 包容力のある人だよな……と、荒野について、香也はそのように思う。
 なんだかんだいって荒野は、制約の多いこの状況下にあって、楓や孫子にも、できる限り自由に振る舞わせている……好きに、動きたいように動けるような状況を、可能な限り整えようとしている……ように、香也には、見受けられた。
 しばらく手元に置く、というその子にしても、なんだかんだいって荒野は、さりげなく便宜を図り、できるだけ自由に動けるように手配を進めるのだろう。
「……んー……」
 しかし、香也が実際に口に出したのは、まったく別のことだった。
「その子……何歳くらいなの? 学校は、どうするの?」
 話しを聞く限り、かなり年少のような気がする。
 テンとガクが、虚をつかれたような表情をして、お互いの顔を見合わせる。
「……ボクらと、同じくらい……。
 かのうこうやの話しでは、同じ学年だって……」
 珍しく憮然とした顔と声で、ガクが押し出すような声を出す。
「じゃあ……今度の春から、同級生か?」
 羽生が、何気ない口調で確認する。
「近くに住むとかいっているし……このままいくと、同じ学校に、通うことになるね……」
 テンが、羽生の言葉に頷く。
 何故だか……テンとガクは、その「甲府太介」という子の存在を、あまり歓迎していないようだ……と、香也は感じた。





[つづき]
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