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彼女はくノ一! 第五話 (231)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(231)

 朝食が済むと、香也は背を丸めて庭に出て、プレハブに向かう。それが学校がない日の、香也の行動パターンだった。
 羽生はバイト先のファミレスへ、孫子は孫子で「会社設立準備」のために外出し、「平日は、二人に家事を任せきりだから」という理由で、テンとガクを送り出して、楓一人が母屋に残った。その楓も、午後から学校に用事があるという。テンとガクは、最近、毎日のように徳川の工場に通っている。
『なんだかんだで、最近……みんな、それぞれに忙しくしているな……』
 と、香也は思った。
 みんな……この場所で、それぞれに居場所をみつけはじめている、と。
 そんなことを考えながら、香也はいつものように絵を描く準備をはじめる。何度も反復してきてもはや脊髄反射の域に達しているのではないか、と思われるほどスムーズな動作で灯油ストーブに点火し、イーゼルを立てかけ、その前の椅子に腰掛ける。さほど時間をおかず、目の前のイーゼルに神経を集中させていく。絵の具を搾り、筆を持つと、もはや香也は日常のことを考えない。こうして絵に向かい合っている時以外の自分、というものが、ひどく希薄な、頼りのない存在として感じられる……。

 数時間後、「昼食ができた」と楓が呼びに来たので、香也も再び外界への注意を取り戻した。
 香也は「……んー……」と大きく延びをして、筆を簡単に清めて、立ち上がる。もうそんな時間か、とか、思わないでもなかったが、香也が絵に没入するうちにいつの間にか時間が経過しているのはよくあることなので、別に驚きはしない。
「……もう、お昼か……」
 とか、ぶつくさ呟きながら、楓の後をついて母屋に向かう。
「楓ちゃん、午後は学校にいくとか……。
 また、パソコン部?」
 庭から玄関に向かう途中で、そんなことを聞いてみる。
「いえ。
 パソコン実習室にも顔を出しますが、今日のメインは、調理実習室の方です。
 料理研究部主催で、手作りチョコ講習、というのがあって……。
 わたし、お菓子なんて作ったことがないから、大助かりです……」
 ……香也は、すっごく嫌な予感がした。
「……そ、そんなの……あるんだ……」
「……あるんです。
 毎年恒例で、女子のほとんどが知っています。当日は持ち込み検査が厳しくなるので、近い日付の週末に作って、学校に忘れていくんですよ、みんな……」
 人付き合いが極端に悪い香也は、今までそうした噂を聞いたことはなかったが……女子の間では、案外「常識」に属すること、なのかも知れない……と、香也は思う。
「……おまけに、今年は、加納様が講師を務めるとかで、希望者が例年の二倍とか三倍殺到したそうで、今日と明日の二回にわけてやるんですよ……」
 香也の複雑な心中に気づかない風で、楓はそう続ける。
 ……あっちの荒野さんも、いろいろと大変だなぁ……と、香也は思った。

 そんなわけで、香也と昼食を摂った後、楓は制服に着替えて学校に向かった。食材は料理研がまとめ買いをして、後で実費を参加人数で割って請求してくる、という話しだったので、手ぶらである。
 学校に行く途中、楓は、ふと違和感を感じた。
『……あっ……』
 少し考えて、楓は、その「違和感」の正体に思い当たる。
『……そっか……。
 いつもは、みんなと一緒だから……』
 楓が……たった一人で登校するのは、ひどく珍しいのだった。
 そう気づくと、見慣れた道が、ひどく寂しい風景に見えはじめる。
『とても……寒い……』
 楓は、無意識に首に手をやり、マフラーを巻き直した。
 見上げると……今に一雨来そうな、暗雲だった。
『……今朝までは……あんなによく晴れていたのに……』
 傘を持ってきた方がよかったかな、と、楓は思った。

 学校に到着すると、校門から校庭にかけて、楓と同じように休日登校してきた女子の姿がちらりほらりと見えた。楓のように一人で来ている女子も少しはいたが、大多数の女子は、二人とか三人づつのグループで固まって歩いている。
『……あれ?』
 制服姿の女子の中に、制服を着ていない、小さな二人組の姿をみつけ、楓は驚く。
「……あー! 楓おねーっちゃーんっ!」
「こっちこっちー!」
 ガクとテンが、玄関前で手を振っていた。
「……ど、どーして、ここに……」
「どーしてって……ボクたち、チョコの作り方なんて、知らないもんっ!」
「玉木のおねーちゃんにそういったら、ここにいけばいいよっていってくれて……」
「玉木のおねーちゃん、料理研の人たちの弱み……じゃなかった、仲がよくって、電話一本で手配してくれたよ!」

「……えっと……中は、土足厳禁、だから……」
 楓は少し考えて、「休日だから、大丈夫だろう」と判断し、来賓用のスリッパをテンとガクに手渡す。
「……これに、履き替えて……」
 授業がない日、だし……テンとガクは、生徒の家族みたいなものだから、たぶん、咎められることはないだろう……と、楓は考えることにする。
 脇を通っていく生徒たちが、三人の姿を見ながら小声で囁きあったりクスクス笑ったりしている。
 回りに目立つ人たちが多いので、普段は改めて注目されることもないのだが、楓の名前と顔を知らない者は、校内にはいない。加えて、テンとガクの顔も、「シルバーガールズ」として急速に知られはじめていた。
「……楓ちゃん、その子たち……」
 背中から声をかけられて振り返ると、柏あんなが立っていた。
「あ。柏さん、おはようございます」
 楓は、振り返って一礼する。
「おはよう、は、いいけど……」
「あっ。はい……。
 チョコの作り方習いたいからってことで……玉木さんが、なんか手配したみたいで……」
「なる……玉木さん経由か……。
 ……まあ……徳川君のおねーさんとか姪御さんとかと、同じようなもんか……」
「そういう柏さんも、チョコ講習の方に……」
「うん。
 どのみち、まぁくん、登校しているから、そっちのついでっていうのもあるし……」
 そういわれてみれば、あんなは、授業がない日もパソコン実習室に入り浸っている堺雅史と一緒にいることが多かった。
「……あれ? みんな、来てたんだ……」
 そんな声がしたので振り返ると、今度は、飯島舞花が、立っている。
「楓ちゃんも来るなら……一緒に出てくればよかったな……」
「……なんだよ、お前ら……こんな所につっ立って……。
 って、テンやガクもいるし!」
 今度は、荒野の声がした。
 荒野の後ろには、茅と……少しはこざっぱりとした格好になった、甲府太介がいた。
「……おにーさんも、その子、連れてきているじゃないか……」
「……連れてきている、じゃない……。
 こいつが、離れようとしないんだ……」
 荒野は、憮然とした顔でそう答える。
 テンとガクが、甲府太介を指さして、「ヘタレだー!」と囃したてはじめたので、楓が「そういう悪い言葉、使うのは駄目ですぅ」とかいいながら、二人を追い回す。
「……えー!」
「……生徒以外も、参加していいんですかぁ?」
 何故か制服姿の酒見姉妹が、どこからともなく姿を現す。
「……なに? この騒がしさ……」
 最後に合流してきたのは、才賀孫子だった。
「結局……全員、集まっていますの?」
「おれも……いろいろ、いいたいことは、あるけど……」
 荒野は、どこか諦観の混じった苦笑いを見せながら、そんなことをいった。
「来ちまった者は、しょうがない……。
 誰かに見咎められたら即帰すけど……それまでは、穏便な方向でいこう……」
 この言葉により、テンやガク、甲府太介、酒見姉妹などの部外者は、「当面、黙認」ということになった。




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