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彼女はくノ一! 第五話 (236)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(236)

「「……えっ!」」
 その後、酒見姉妹は、空いていた末端にとりついて、この学校の生徒たちが管理するサイトを片っ端からチェックしはじめた。
 その過程で、ある映像をみつけたため、二人して同時に、思わず大声をあげる。
 実習室にいた生徒たちが、いっせいに手を停めて、椅子に座ったまま硬直している酒見姉妹の方に視線を集める。
「どう……しました?」
 楓が、双子に、そう声をかけた。
 別に監督責任があるわけではないが……今、実習室にいる中では、立場的にみれば、楓が、双子に一番近いポジションにいる。
「……これ……」
 双子は楓を手招きして、液晶画面を指さした。
 楓も立ち上がり、双子の背後までとことこと歩いていって、画面を覗き込む。
「……あっ!」
 一目見るなり、楓も、双子と同様に、息を飲んだ。
「……どうしたの?」
 楓に続いて、茅も双子がみていた末端を覗き込む。
「……これ……。
 一族の人たちが……顔出しで、出ちゃっています……」
 楓が指さした液晶の中では、徳川の工場内で行われた、「シルバーガールズ対六人」の場面を編集した動画が、再生されていた。
「……は、はやく、荒野様に……」
「待つの」
 慌てて立ち上がり、廊下に出ようとする楓の肩に、茅が手を置いて、引き留める。
「……これ、もう、あちこちの動画共有サイトにポストされているから……もう、手遅れなの……」
 そういって、動画が再生されている下にあるカウンターを指さす。
「もう……万単位の人が、みてる……」
 楓が、そういったっきり、絶句する。
「……とりあえず、玉木に確認して見る。
 楓は、テンかガクに、電話して……」
 実習室に居合わせた生徒たちも、楓と茅の会話を聞いて、手元の末端を操作し、シルバーガールズのサイトにアクセスして、内容を確認しはじめる。
「……これ、徳川の工場でやってたあれだろ?」
「何が問題なんだ?」
「馬鹿!
 あの人たち、正体を明かしちゃいけないことになっているだろっ!」
「……でも、あの、形変えられる人とか、犬みたいな顔をした人、確かに特撮怪人チックだよな……」
 そんなざわめきが起こる中、楓と茅は自分の携帯を取り出して、電話をかけはじめた。
 一般人である他の生徒たちはピンと来ないかもしれないが……こんな真似をすれば、本来なら買わなくてもいい筈の、一族内部からの強い反発を招いてしまうことは、容易に予測できるのだった。

 楓が登録してあるテンの携帯を呼び出すと、ちょうど手が空いていたのか、コール音一回ででた。
「……テンちゃん!」
 楓は、勢い込んで話し出す。
「今、ネットで、シルバーガールズの最新動画、見たんだけど!」
『……あ。あれ?
 よく撮れてたでしょ? 駿河さんとかも結構ノリノリで協力してくれたし……』
 それを聞いた楓は、軽い目眩を感じた。
「……その……。
 あの時のリーダー格、ええと、仁木田さんっていいましっけ?
 その人は、何も言わなかったんですか?」
『仁木田さん?
 今、ここにいるよ。
 ええと……あ。向こうでなんか、電話してる……』
「……楓」
 茅が、片手をあげて、楓に合図する。
「今、仁木田は、こっちに出ているの……」
 楓は、茅に近づいて、聞き耳をたてた。

『……何、一般人があれを見たって、どうせ実写とは思わないって……』
 茅の手にした電話から、仁木田の声が聞こえる。
 気づくと、酒見姉妹も楓にならって、茅の背中に耳を寄せて、聞き耳をたてている。
「一般人よりは……むしろ、一族の反応の方が、気掛かりなの……」
 茅は諄々と語り、酒見姉妹は、茅の言葉に頷いている。
『……今更、何をおっしゃいますかね、加納の姫さん……』
 電話越しに、仁木田のうっそりとした口調が伝わって来た。
『あなた方は……すでに、十分に、従来の一族のあり方を揺るがしている。
 正体を明かしながら一般人に混じって暮らす……という選択をした時点で、旧来の一族の在り方を、否定する意図を、明らかにしたんだ……。
 保守的な連中の神経を逆なでしているのは、今更のことでございましょう……』
「……それでも……」
 茅は冷静な、事実を指摘する口調で、言い募った。
「むやみに、そうした保守層を刺激するような情報を発信するのは……足元を、突き崩すような行為だと思うの……」
『あなた方は……ソレを承知の上で、コレをおっぱじめたわけではないんですかい?』
 仁木田の口調も、少しも怯むところがなかった。
『……実際、若い連中を中心に、陸続とこの土地に一族の者が集まっているでしょう……。
 加納の姫さんよ。
 どうあがいても、時計の針が逆に回転することはありないんだ……。
 一度おっぱじめたんなら、後は行き着くところまで加速していくより他、道はなんじゃないですかい?』
「……わかったの……」
 茅は、相変わらず静かな口調を保っている。
「あなた方は……あなた方の狙いは、茅たちの存在と、この土地の状況を利用して、一族内の秩序を揺るがすこと……」
『……おっと……。
 どうか、起こらないでくださいよ、姫さん。
 おれたちはこれでも、加納の、荒野の敵ってわけではないんだ……。
 こうして、撮影にも積極的に協力している……』
「……怒っては、いないの。
 荒野や茅にそれなりの立場があるように、あなた方にも、立場や思惑が、ある……。
 少なくとも現在の時点では、正面切って敵対する意志はない……それが確認できただけでも、今の時点では、収穫なの……」
『……ご理解を頂いて、ありがたいこってす……』
 今度の仁木田の声は、笑いを含んでいる。
『姫さんがご指摘の通り、目下のところ、我々の利害は、さほどずれていません。
 だから、この状況が変化するまで、我々はあなた方に協力しますよ……』
「荒野に……そう、伝えるの」
 そういって、茅は通話を切った。
「……なあ……茅ちゃん。
 今の、どういうこと?」
 いつの間にか近くに来ていた飯島舞花が、茅に尋ねる。
「……彼らの狙いは、現在の一族の主流である、六主家の力を削ぎ、自分たちマイノリティの立場を、相対的に強化すること……。
 そのための道具として、現在、この土地で起こっている一連の出来事を利用し、六主家体制に揺さぶりをかけようとしているの……」
 茅は、そう解説した。
「……一族内部の勢力争いの道具として、この状況を、利用しようとしているの……」
「それでも……」
 楓は、茅の言葉に続けて、話し出す。
「彼らは、敵ではないんです……わたしたちにとっては。
 彼らにしてみれば……テンちゃんやガクちゃんの能力や有用性が証明されるほど、一族に動揺を与える訳ですから……」
「……それで、撮影に協力的だったり、あの二人と仲良さそうにしていたりするのか……」
 舞花も、頷く。
「あの二人が強くなればなるほど……あの人たちにとっては、都合がいい。だから、あの二人を、強くしようとしているし、協力もしている。
 それに、おにーさんたちにとっても、戦力が増強されるのは歓迎……。
 動機や目的には、不純なものがあるけど……確かに、完全に敵対しているわけではないな……」
「……テンちゃん……」
 楓は、自分の携帯に話しかけた。
「仁木田さんが考えていることは、当然、予測しているわけですね……」
「一族を越える」ということに拘り、常に大きな状況を見ようとするテンなら、その辺の見落としはない筈だ……と、楓は思っていた。
『当然だよ、楓おねーちゃん……。
 そもそも、仁木田さん、そういう動機、まるで隠そうとしてないし……。
 その動機についての倫理的な評価は差し控えるけど、少なくとも、フェアな協力者だと思うよ……』
 一族内部の勢力争いの道具として、「新種」の存在が、利用されはじめている……こうした状況を、荒野は想定しているのだろうか……と、楓は思った。
「……おそらく、荒野はこいうと思うの……」
 楓の疑念を見透かしたように、茅が話しはじめる。
「……あー。
 世の中、茅が好きな子供向けの番組みたいに、白黒がはっきりと分かれている訳じゃないから、ある程度は、仕方がないんじゃないかな?
 仁木田さんにしろ、テンやガクにしろ、完璧にコントロールして、こっちの意図どおりに動かそうとしても、実際問題として無理だし……成り行きにまかせて、しばらく様子をみる以外に、方法はないんじゃないかな……。
 もう、この映像……こうして世界中に発信されているわけだし……今更、それをなかったことにもできないし……」
 そういって茅は、動画が再生されている、液晶ディスプレイを指さす。
 口調やイントネーションまで含めて、完璧に、この場で「荒野がいいそうなこと」を真似ていた。




[つづき]
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