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彼女はくノ一! 第五話 (237)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(237)

 やがて、調理実習室での用事を終え、荒野がパソコン実習室に姿を表した。
 荒野は、楓たちの予測どおり、「シルバーガールズ」の公式サイトをみるなり、周囲の者に二、三の質問をし、なんとも複雑な表情を浮かべた。
 ……自分たちの、ここでの在り方を巡る、一族内部の様々な思惑や葛藤が、表面化しようとしている現在の状況を……荒野は、本心をいえば、面白がっているのだろう……と、これまでの付き合いから、楓は予想する。
 荒野は……ひょっとしたら、自分では気づいていないかもしれないけど……実は、困難な局面に立てば立つほど、生き生きとした表情を見せる。
 身体能力や状況を見極め、即座に解決策を選択、実行できる判断能力や果断さ、比較的安定した精神、等……荒野は、客観的にみても、高い能力を持っているといえる。
 そんな荒野は……その荒野にしてみても、対処可能かどうかわからない難題、というものに直面することを、実は、楽しみにしているのではないか……と、これまでの付き合いから、楓は思いはじめていた。
 と、いうのは、これまで楓がみてきたところ、荒野は、難しい局面になればなるほど……生き生きとした表情になってくるのだ。
 しかし……実際に、面白がっている、ということをこの場で露骨に現すのも不謹慎に思えるから、あわてて表情を引き締めた……ように、楓には、みえた。

 そうした荒野の反応は、ある意味では楓の予測の範囲内だったが、飯島舞花や柏あんなら、周囲にいた普通の生徒たちまでもが、荒野に、一族についての情報を求めてはじめたことは、楓にとっては予想外の出来事だった。
 そして、荒野の方も、そうした要請に応じて、一族の内情などについて、ごく簡単に説明する。
 以前の荒野なら、決してありえないことだが……ここまで巻き込んでいる以上、下手に情報を伏せるよりは、あくまで差し障りのない範囲で、多少なりとも説明をしておいた方がいい……と、そう、判断したのだろう。
 荒野と直接話しているのは、舞花やあんなら、比較的親しい生徒たちだったが、その他の居合わせた生徒たちも、遠巻きにしながらもこちらに注目し、質疑応答に耳を傾けている。
 荒野や楓らが感じている具体的な危機感こそ感じてはいないものの、それらの生徒たちも、はやり興味は持っているようだった。
「……加納様は……」
 楓は、そうした聴衆の存在を意識しながら、回答が十分に予測できる質問を、あえて荒野にしてみる。
「……これから、一族の人たちは……今まで以上に、こちらに介入してくると……そう、お思いですか?」
「……介入して……くるんだろうな……」
 荒野はあっさりと頷いて、「シルバーガールズ」の動画を指さす。
「……こいつが……今まで、おれたちのことをあまり念頭に置いていなかった奴らの注意まで引き付けたってことは……まず、確実だ……」
 荒野の後ろで、酒見姉妹が何度も大きく頷いていた。
「……今までここに来ていた奴らを分類すると、大きく分けて二つ。
 テンやガクたちがどれほどのもんか、って、新種そのものに、興味を持っていたやつ。
 それに……行きがかり上ではじめちまった、正体をカミングアウトした上での、一般人社会での生活とか、そういう状況に、興味を持っていた奴……。
 こいつを公開したおかげで……今度は、それ以外に、腕自慢の奴らが、こぞって挑戦してくる……ってのは、まず、確実だ……」
 それは、楓が予測していた通りの回答だった。
「……何を他人事のように頷いている、楓……」
 荒野は、続けて、呟く。
「その……挑戦をする対象は……あいつら、新種だけではないぞ。
 おれや、お前……おれたちも、一緒くたに狙われるってことなんだぞ……あれだけ大勢の一族の前で、図らずも、最強の弟子という肩書に遜色のない実力を、証明してしまったんだから……」
 荒野にそう指摘されるまで……楓は、自分のことなど、まるで考えたことがなかったい。
「……ほらな……。
 お前、今まで、そういうこと、一度も考えたことなかった、って顔してやがる……」
 荒野は、楓の目をみながら、困惑した表情を浮かべた。
「お前が、自分のことを後回しにする性格だということは、理解している。
 でもな。
 お前……最強の弟子、というレッテルに恥じない能力を持っているってこと、あれだけ大勢の目の前で晒しちまったんだから……。
 お前目当ての刺客がいつ現れても、不思議ではないんだぞ……」
 楓は目を見開いて、きょとんとした表情をした。
 荒野のいうことは、楓にも理解できる。
 しかし、いっかな、実感がわかないのだった。
「……まー……」
 荒野は、楓から目をそらして、視線を上に向けた。
「……いざ、そういうやつが現れたとしても、慌てないで冷静に対処しろ、って話しだ……。
 今のお前といい勝負が出来る奴なんて、そうそういないと思うし……」
「……おにーさん、おにーさん……」
 飯島舞花が、荒野の肩をとんとん、と、指で叩く。
「その、最強の弟子っての……おにーさんたちにとっては、ブランドなんだな……」
「……ブランド……」
 荒野は、虚を突かれた表情になった。
「そういう言い方も……できるのか?
 うちんところは、未だに弱肉強食とか、原始的な価値観で動いている所があるから……。
 いい例が、それ、そこの二人。
 自分たち以上に強いのがごろごろいるってことが分かった途端、すっかり大人しくなったろ?」
 そういって、荒野は、酒見姉妹を指さす。
 酒見姉妹は、「「なんなりと、ご命令を」」と声を揃えて、頭を下げた。
「……こんな具合に、腕試しに勝てば、打ち負かした相手は、かなりこっちのいうことを聞く体制になる。もっと関心すれば、進んで麾下に入ってくれることもある。実際、実際にやりあう、というのは、短時間でお互いの力量を見極めるのには、合理的な手段なんだ。
 だから、出会い頭の腕試しは、なかなかなくらならい……」
 短期間で相手の実力や器量を推し量るには、実際に対戦してみればいい……という思想が、一族の中の、コンセンサスとなっている……。と、荒野は説明した。
「……でも、それだと……」
 有働勇作が片手をあげて荒野に質問する。
「やっぱり、今まで通り、その、節度の決闘が続く……ということになるのではないでしょうか?」
「普通の、未知の相手に対する時は、そうなんだけど……。
 今後、おれや楓に突っかかってくるようなのは……自己の力量一つ、客観的に計れない甘ちゃんか、それとも、どんな汚い手を使ってでも名をあげたいと思っている野心家、そのどちらかだと、思うから……」
 荒野は、大きく延びをしながら、窓の方に近寄る。
「……前者は、いくらでもいいようにあしらえるけど、後者の場合、どんな手を使ってくるのか、予測がつかない。
 場合によっては、明確に、一般人を巻き込むことを忌諱していない、あの悪餓鬼ども以上に汚い手を使ってくることも、あり得る。
 ……今にも降りそうな空模様だな……。
 降る前に、早めに帰るか……冷蔵庫も、空っぽだし……」
 荒野は、窓の外をみて、そんなことをいった。




[つづき]
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