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2006-05

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髪長姫は最後に笑う。第五章(56)

第五章 「友と敵」(56)

 ノリとテンは、わざと孫子の前に自分たちの姿を見せつけた後、楓の背後に回りってしばらく楓を追尾してから、今度は楓の左右に張りつく。
 同時に、左右から六関棍で楓を攻撃し、楓の姿勢がぐらついたところで、今度は棍の関節を伸ばして楓の背後のわたし、楓の背を押すようにして、それまで以上の速度で前進をはじめる。
 孫子の着弾は、面白いように中央にいた楓に集中した。
 左右をぴったりとノリとテンに挟まれた楓は、辛うじて持っていた鞄を盾にして、孫子のスタン弾を防ぐ。

 孫子との距離が縮まり、孫子の攻撃が一端やんだところで、二人は楓に「孫子から頼まれてやった」ということを吹き込みながら、楓の側から立ち去った。
 楓がどこまで二人の言葉を信じたのか、確認することはできなかったわけだが……孫子が、先ほど楓に標準を集中させたことから判断して、二人の確執は、表面から見て取れる以上に根深いのではないのか……と、二人は予測した。

『……外見はガキなのに、えげつない真似するなぁ……』
 荒野は二人のやり口をみて、そう評価した。
 えげつないことはたしかだが……孫子と楓の二人の関係を考慮すれば、実に効果的な作戦ではあったのだ。
 楓と孫子を噛み合わせる、という手は……。
『……最初に突出したガクは、あんまり物事を深く考えない性質らしいけど……』
 少なくとも、この二人は違うようだ……と、荒野は思った。

 二人が楓から離れると、楓は遮蔽物の多い地上に出て、鞄から多種多様な投擲武器を取り出し、いつでも使えるように準備しはじめた。
『……おいおい……むざむざあいつらの見え透いた手口に乗るのかよ、お前……』
 荒野は、そう思いながらも、楓にはなにも助言しない。
 孫子や他の二人同様、楓についても「どこまで独自の判断で動けるのか」ということを、荒野は見極めたかった。
 楓の当座の立ち回り方を確認した荒野は、他の奴らの手口を観察するため、その場を去る。

「もしもし? ……」
 テンは、見覚えのある携帯電話を使って、どこかに電話をかけていた。
 ただし、荒野からは距離がありすぎて、通話内容は切れ切れにしか聞き取れない。
「……こんな時……楓……ねー昨日……帰りに……絵描き……合っていたんだ……と時間?……のうの、ゆう……の二人もみ……」
 途中から荒野の接近に気づいたテンは、荒野の顔をまともにみて、にやりと笑う。
 通話を切ったテンは、荒野に向かって、
「……あそこのビル、もうすぐ、面白い物がみえるから……」
 と、近くにある八階建ての細長い雑居ビルを指さした。

 ノリほどではないにしても、それなりに遠目の効く荒野は、見た。
 屋上の手摺りに取り付いたノリが、下の方に小さくて白い塊を投げ降ろしているのを。重力の助けもあり、ノリが投げ降ろした白いものには、かなりの加速度がついていた。目測では、並のハンドガンの初速以上に、速くみえる。
 ノリが投げている物がなになのか、というところまでは確認出来ないが……ある程度以上に硬いものだったら、直撃すればかなりのダメージになるだろう。
「……ノリの標的は、孫子、か?」
「うん。他に、いないじゃん」
 テンは荒野の問いにつまらなそうに答える。
『分かりきったことを訊くな』という表情をしていた。

 荒野は、今度は孫子の様子を確かめるために、そのビルのほうに向かった。走りながら、荒野は、二人の手口について考えを巡らす。
 先ほど、テンが電話をしていた相手は、多分、孫子だ。
 孫子への電話の目的は、二つ。
 孫子に、心理的な揺さぶりをかけること。それに、孫子の気をそらして、ノリに有利なポジションを取ることを邪魔されないようにする……。
『……絶妙の、コンビネーションじゃないか……』
 荒野は、舌を巻いた。
 たった二人で、これである。
 これで、三人が勢揃いして、本気でかかってきたら……。
 まず間違いなく……それぞれ単独で動く時に数倍する働きを見せることだろう……。

『孫子のヤツは……あの攻撃……凌げているかなぁ……』
 荒野がそう思った時、孫子の凌ぎ方、が視界に入ってきた。
 孫子は……どうやってノリの攻撃を察知したのか、真上から次々と降りてくる白い塊を、ゴム製のスタン弾で撃ち落としている。白い塊が、下から射撃によって空中ではじかれ、撃ち落とされる様子が、まず荒野の視界に入ってきた。
 さらに荒野が近づくと、アスファルトの上に寝そべった姿勢の孫子が、上のほうに銃口を向けている。
 どんな教本にも記載されていない、イレギュラーな射撃姿勢である。
 表情を消した孫子は、上から落ちてくる白い塊を全て、銃弾で迎撃してからも、射撃を止めなかった。
 攻撃の根本であるガクに向けて、躊躇することなくスタン弾を打ち込む。
 もともと、足の力だけで屋上の手摺りに取り付く、というかなり不自然な姿勢だったノリは、慌てて手摺りの内側に移動しようとする。
 その尻を押し上げるようにして、孫子のスタン弾が命中した。
 スタン弾が尻で十字型に避け、「バシンッ!」というかなり痛そうな音をたてて、ノリの体を押し上げる。
 ノリは、「ぎゃっ!」と呻いて、手摺りの内側に転げ落ちた。
『……リタイアだな……あれは……』
 その時のノリの様子をみて、荒野はそう思った。
 あれでは当分、身動きできないだろう、と……。

 ノリが手摺りの内側に姿を消すのを確認してから、孫子は警戒態勢を解き、字面から身を起こした。荒野は孫子に、
「どうやって……真上からの攻撃、察知したんだ?」
 と尋ねた。
「……影」
 孫子はライフルの銃口で地面を指さしながら答える。
「不自然な影が映ったので……咄嗟に転がって、射撃できる姿勢になったのですわ」
 孫子は地面の転がったせいで服についた塵芥を手で払いながら、素っ気なく答えた。
 その日は、晴天だった。
 確かに、孫子が示した場所には、ちょうど目前のビルの屋上部分の影が、手摺りの細かい部分まで克明に、映っている。
 あそこに体を乗り出せば……確かに、攻撃される前に、攻撃者の存在に気づくだろう……。
『……経験値の差……かな?』
 荒野は、そう思った。

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彼女はくノ一! 第五話 (14)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(14)

 簡単な打ち合わせを済ませると、ノリとテンは路上から塀、塀から屋根や電線の上へと移動しながら、楓のほうに走り寄っていく。楓もノリもテンも、気配を絶っていたが、孫子の標準はそれなりに的確だった。
 孫子は一族の関係者ではない、と荒野には聞いていたが……いかなる経緯でか、今では、孫子は「気配」がある程度読めるようになっているらしい……。
 にも関わらず、今のところ命中弾がないのは、標的が三人に分散していることと、標的の三人も孫子のライフル弾を視認し、避けるなりはじくなりの対応が可能な人間ばかりだった。
 だったら……その前提を、崩していけばいい……というのが、テンの発想である。

 テンとノリは、まず楓の背後にぴったりと着いた。孫子のいる方向に向かっている楓は、二人のいい盾になる恰好である。
 楓は、二人の挙動には気づいたが、二人の意図が掴めずにまごついた。
 とりあえず、二人を振り払おうと、速度を上げたり蛇行してみたりする。
 が、二人ぴったりと楓をマークし続ける。

 孫子までの距離は、すでに五百メートル以下になっている。孫子の技量とライフルの射程、それに、三人の移動速度を考慮すれば、至近距離といってもいい。
 それまで、一発撃っては狙撃場所を移動していた孫子は、三発から五発づつ撃ってからいどうするようになっている。孫子は孫子で、相手側にいっこうに被害を与えられないまま、距離が詰まってきていることに危惧を抱きはじめている。

 ノリとテンは、楓の左右から、同時に関節を連結していない六節棍を鞭のようにふるって、楓を攻撃し始める。
「……な……なにするですか!」
 合図らしい合図もなしにほぼ同時に動かれたため、楓も対応らしい対応ができず、辛うじて攻撃をかわしたが、足元がもつれて、速度が落ちた。
 楓の隙を逃さず、ノリとテンは自分たちの得物、鞭状の六節棍二本の端と端を持ち、左右から楓の背中に渡して、二本の六節棍で楓の背中を押すようにして、速度を上げ始める。
「……わひゃっ!」
 少し足元がもつれたところで、否応なく背中を押された楓は、二人の速度に合わせて走り続けるよりほか、なくなる。

『……なに?』
 バラバラに動いていた標的三人が不意に重なり、もつれ合うようにして、こっちにむかってくる……。
 何故そんなことになっているのか、孫子の理解の他だが、好機であることには変わらない。
 孫子は、三人の真ん中でじたばたしている楓……という「いい標的」にむけ、しばらく攻撃を集中させることにした。

「わひゃっあぁー!」
 ずばずばずばっ、と大きな音を立てて、楓が掲げた鞄に孫子のスタン弾が集中した。左右からノリとテンの二人が隙間なくぴったりと楓の体に張りついているので、避けたりはじいたりといった動作も儘ならず、しかたなく楓は持っていた鞄を盾にして、孫子のスタン弾をしのいでいる。
『……ここまで、楓おねーちゃんに攻撃が集中するなんて……』
『……孫子おねーちゃん……よっぽど楓おねーちゃんのこと……』
 楓の左右で、ノリとテンは意味ありげにチラリと視線を交わしあった。
 そんなことを思いながらも、三人は刻一刻と孫子のほうに近づいていく。

 ひとかたまりとなった三人の距離が三百メートルを切った時点で、孫子はいったん三人への攻撃を中断し、階下に降りて近接戦闘の準備をはじめた。
 ロングレンジの射撃を想定した場合、高所の位置を保持するのがセオリーだが、近接戦闘の場合は、かならずしもそうではない。
 エネルギー収支的には、距離にかかわらず高い場所から低い場所への攻撃が有利なわけだが、敵が近場にいる場合、いざという時に逃げ場がなくなる高所にいつづける事は、往々にして、メリットよりもデメリットが多くなる。

「……ななな、なにするですか!
 あんたたち!」
 孫子の攻撃が一端やむと、楓は左右の二人に怒りをぶつけた。
「……ごめんごめん!」
「だってさ、孫子おねーちゃんがこうしろって!」
 そういいながら、二人は脱兎の如く楓の側から逃げだす。
「……協力してくれば、あとでおいしいもん奢ってくれるっていったんだよー!」
 逃げ出しながらも、二人は口々にそんなことを喚いていた。
『……そ……そういうことですか!……』
 楓のほうも、大概に頭に血が昇りはじめていたので、二人のいうことの不自然さには気づいていない。
 楓は、一端、見通しのきかない地上に降りてから、孫子のスタン弾を受けてぼろぼろになった鞄の中をごそごそと探り、次々と投擲武器を取り出しはじめた。

「もしもし? 孫子おねーちゃん?」
 テンは、先ほど楓に密着していた時、ドサグサに紛れて楓のポケットから失敬してきた携帯電話を使って、孫子を呼び出した。
「……こんな時になんだけど、楓おねーちゃんねー、昨日、学校の帰りに待ち合わせして、絵描きのおにーちゃんと抱き合っていたんだよー。
 場所と時間? うん。河原。昨日の、夕方。
 ボクだけではなく、他の二人もみているから……」
 それだけいって、通話を切る。

 その間にノリは、その近辺で比較的背が高い雑居ビルの屋上に着いていた。
 ロングレンジの射撃を想定した場合、高所の位置を保持するのがセオリーだ。『……あと、十発か……』
 ノリは屋上の手摺りに足を絡め、上体を水平面に対してほぼ垂直になるように保持し、ガクが入手したゴルフボールを、ベルトを抜いて作った即席のスリングに装填し、構える。
 このような田舎にも、駅の近辺ともなれば、それなりに背の高いビルもある。この雑居ビルは、八階建てと高さもそこそこで、周囲にあまり高い建物がなく、なおかつ、どうした加減が、周辺の道幅が狭く、周囲の人通りがやけに少ないのであった……。
 さっきまで孫子が陣取っていた場所だけあって、恰好の狙撃場所といえた。
『……じゃあ、孫子おねーちゃんには、五発ね……』
 ノリは、その無理な姿勢から、きっかり五発、エントランスから出てきた孫子の頭上に向けて、ゴルフボールの雨を降らせた。

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