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隣りの酔いどれおねぇさん (14)

隣りの酔いどれおねぇさん (14)

「あなたはとても都合のいい人でした」
 ともかくも、一度目の情交が終わった後、加々見さんは、ぼくの体の上に覆い被さってきて、首元に頭を寄せて、ぼそぼそと囁きはじめてた。
「信頼していた夫に裏切られ、女性として重要な機能に障害を起こし、仕事や人間関係も、大部分、刷新しなければならなかったわたしは、とてもとても疲れていて、今にもポキリと音を立てて折れてしまいそうになるほどに乾いていて、心がどんどん重くなって、でも、立ち止まることができない状態にありました。
 疲れていても、疲れた、と愚痴をこぼす相手にも事欠くわたしの前に、あなたが現れて、わたしがして欲しいと思ったことを次から次へとしてくれました。
 あなたが酔いつぶれたわたしを介抱してくれたとき、わたしは、自分がいかに甘える相手を欲していたのか、ということを自覚して、愕然としました。
 あなたがわたしの肩に触れたとき、わたしは、自分がいかに他人に触れられることに飢えていたのか、ということを自覚して、愕然としました。
 その後、お風呂に入りながら、今まで失ったもの、欲しかったもの、我慢していたものを思い起こしはじめ、すると、とても寂しくなって、一人で泣きました。
 お風呂から上がったわたしに、あなたは汗だくになってマッサージを施してくれました。技術的には拙い、といってもいい行為でしたが、わたしの頑なになっていた部分、凝り固まっていた部分を解きほぐしてくれました。
 実は、あなたの部屋に入るとき、酔っていたわたしは、半ば自暴自棄になっていました。あなたにいいようにされてもいいと、こんなわたしなんか、どういう目にあってもいいと、そんな風に思っていました。
 なのにあなたは、ほとんど面識もないようなわたしにとても優しくしてくれて、そのことがとても意外で、あなたがなにか気を遣ってくれるたびに、わたしになにかしてくるたびに、泣きたいような気分になりました。
 たぶん、あなたにとっては、目の前に困っている人がいたら、親切にするのは当たり前のことなので、あまり意味はないことなのでしょう。でもそんな、あなたにとっては当たり前の親切が、いちいち心に染みいりました。
 そしてあなたは、わたしを抱いてさえ、くれました。あなたが抱いてくれたことで、わたしは、男性とこうした行為をすることに、自分がどれほど飢えていたのか、自覚せずには居られませんでした。
 今夜、たまたまわたしと出会ったあなたという男は、とても優しくて、同時に、とても残酷な人です」
 それまでぼくの首に頭を接して、考え考え、断続的に言葉を紡いでいた加々見さんは、ここで初めて顔をあげて、まともに、ぼくの目を見据える。
「だから、あなたとこういう事をするのは、今夜だけにします。そうでないと、ずるずると甘えて、わたしは駄目になってしまいます。そのかわり、今夜は、……」
 ……もっと、ずっと、いっぱい、抱いていください。

 そういった加々見さんは、泣きながら、笑っていた。

[つづき]
目次

↓作品単位のランキングです。よろしかったらどうぞ。
NEWVEL ranking HONなび ranking


Comments

突然のコメント失礼します。

突然のコメント失礼します。
この度新規に大型エログランキングサイトを立ち上げました。
ブログを拝見させて頂き、
綺麗に作られていて、非常によく出来たブログであると感じました。
是非ともこちらにご参加頂ければと思いコメントしました。
本日オープンの為、上位確実で今が狙い目です。
宜しくお願い致します。

http://erogoo.souzer.com/


erogoo エログランキング-エログー

  • 2005/11/16(Wed) 05:38 
  • URL 
  • erogoo管理人 #-
  • [edit]

登録しました。

いやあ、ランキングとかアクセス数では、
画像とか動画とか、ヴィジュアル系のブログにはかなわないと思うんですけどねぇ。
お誘いいただいたので、登録しました。

  • 2005/11/16(Wed) 05:43 
  • URL 
  • 浦寧子 #-
  • [edit]

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