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2006-08

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彼女はくノ一! 第五話 (108)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(108)

 目覚ましの設定を解除して寝たのだが、翌日、日曜日であるのにも関わらず、香也はいつも通りの時刻に目覚めた。目覚めてすぐさま、自分がとんでもない苦境に陥っていることをしる……。
『……まずい……』
 自分の両脇に、暖かい固まりが二つ、寄り添っていた。
 何故か……パジャマ姿の楓と孫子が、自分に密着して、寝息を立てていた。
 幸い、三人とも服を着ているが……。
『こんな所、他人に見られたら……』
 いつぞやの、ガクとの一件の二の舞いである。
 当然、香也はそっと二人の間から抜け出ようとしたが……楓は香也の襟首を、孫子はパジャマの太もものあたりの布をしっかりと握って離さない。
『……本当に、寝ているのかな……』
 香也は二人の指を一本一本丁寧に離そうとするが……一旦、指を延ばすことができても、すぐに、元通りに香也のパジャマの布地を握る。
『……この間みたいに、抱きつかれるよりは、ましだけど……』
 二人を起こして離してもらうよう説得するのは可能だったが……どちらを先に起こしても、自分以外の人間が香也と一緒に寝ている……ということをあげつらって、騒ぎそうな気がする……。
 しかたがなく……香也は、そろりそろりとパジャマの上着を脱いだ。これで、襟首の部分を握っている楓からは、離脱。
 それから、意を決して、パジャマのズボンも脱ぐ。
 朝っぱらから何故に下着だけにならねばならんのか、という疑問はさておき、これで、孫子からも、離脱。
『……後は……』
 無事布団からの脱出に成功した香也は、そろりそろりと足音を潜ませて、廊下へと向かう。
 迅速に離脱するのみ……と、思った、ちょうどその時……。

「……Go! Go! ご奉仕!
 Hey! Hey! 変身!
 みんなのアイドル! メイドール!……」

 などという妙にハイテンションな音楽が居間から聞こえてきた。
「……なんだ、なんだ!」
 眠たそうな顔をした羽生譲が、どかどかと足音も荒く居間の方に向かう。通りがかりに、何故か下着姿で廊下に突っ立っている香也に気づき、怪訝な顔をして襖の向こうの香也の部屋を覗き込む。
 そして、香也の布団で寝ている楓と孫子をみつけ、納得のいった顔をして、ぽん、と柏手をうつ。
「……こーちゃん、こーちゃん……」
 羽生譲は香也を手招きして、その耳元に囁いた。
「……真理さんには、内緒にしておくからな……。
 うまくやれよ……」
 だからそれ、違います誤解してます……と、香也が弁明しようとした時、居間から大音量で流れてくる「奉仕戦隊メイドール3」のテーマソング、「戦え! ご奉仕! メイドール3!」によって目を覚ました楓と孫子が、目をこすりながら香也の布団から起き上がってきた。

 こうして、その日の朝、朝食の前に、香也はぐったりと疲れる経験をした。

「……あは。あははは……」
 台所で朝食を用意しながら、楓は笑った。楓はなにかごまかしたいことがあると、から笑いをする癖がある。楓のほかに、孫子と羽生譲もいる。
「……最初は、二人とも、汗をふいたりとか、普通に看病していたんですけど……」
「……そのうち……何故か、我慢大会か耐久レースのような具合になってきまして……」
 そう弁明する孫子の頬も、妙に赤い。
「あー……二人とも、普段、規則正しい生活してるから……」
「ええ……どちらが先にその場を離れるか、競いあうような具合になりまして……明け方まで頑張ったんですが……どちらともなく、添い寝、ということに……」
 恐らく……寝不足で、よく回らない頭で、どちらかが頓狂なことをいいだし……引っ込みが、つかなくなったのだろう。この二人の場合……どちらか片方やがやれば、もう片方も、やる。香也に関連する事柄になると、その対抗意識は、さらに倍増する傾向がある……。
「……事情は、分かったけど……」
 羽生譲はみそを溶きながら、頷いた。
「そんじゃあ、ゆうべは、なんもなかったんか……」
「ええ。ゆうべは……」
 孫子は、にっこりと笑った。
「ゆうべは」ではなく、「昨日は」と尋ねられたら、返答に詰まるところだったが……確かに「ゆうべは」添い寝していただけだ。
「まあ……いっか……」
 羽生譲は詮索を中断して、鍋の火をとめて鍋つかみを手にはめ、出来上がったみそ汁を鍋ごと居間に運ぶ。
「まずは、朝食。
 今日も一日頑張っていきましょー!」
 居間では、パジャマ姿の茅と浅黄が、メイドール3のエンディング・テーマソングに合わせて歌って踊っている所だった。
 香也は、なんともいえない疲労した顔で、炬燵の天板に突っ伏している。おそらくその疲労は……風邪に由来するものばかりでは、ないだろう。

「……で、皆様……今日のご予定は?」
 朝食の席で、羽生譲が同居人たちに尋ねた。昨日と同じく、真理が不在の間だけでも、年長者としてそれらしいことをしよう、というつもりなのだろう。
「ぼくは……まだ、本調子じゃないから、寝てる……」
 香也が、ぼそぼそと呟く。
「えっとぉ……とりあえず、ご飯食べたら、家のお片付けして……ガクちゃんのお見舞いに、行こうかと思います。入院先、ここからいくらもない所だそうですし……。
 昼過ぎからは、学校ですね……」
 とは、楓。孫子も、だいたい同じスケジュールになる。
「……ガクが動けるようなら……それから、みんなで服を買いに行くの」
 茅が、補足説明をする。
「服? なんの?」
 羽生は尋ね返した。
「今日の夜、一族の偉い人たちに、食事を招待されているの。
 足元を見られないように、正装してこい、って、荒野が孫子に、みんなの分の見立てを頼んだの……」
 それを聞いた香也は、
『今日は一日、ゆっくりできそうだ……』と、思った。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(24)

第六章 「血と技」(24)

「……悪いが人生相談を受けるためにお前を起こした訳ではないし、お前個人の事情を詮索するつもりもない……」
 荒野は佐久間現象に語りかけ、さらに問いかける。
「ここでは、おれたちが聞いたことにだけ、答えてくれればいい。
 まず……さっき、茅がいった事は、本当なのか?」
「概ね……正確だ。
 ぼくは、佐久間に仕込まれた……君たちは、姫、と呼んでいるらしいが……そういう、存在だ……」
「佐久間では……お前や、茅のような存在については、オープンな情報として扱われているのか?」
「判断できない……。
 ぼくは、佐久間の、ごく一部しか知らない……」
「少なくとも……お前に技を仕込んだ人達の間では、既定の事実だった、と……」
 荒野はその情報を脳裏に刻む。
 佐久間の組織形態について予備知識を持たない荒野にとっては貴重な情報であったが……同時に、今の時点では、あまり活用のしようがない情報でもある。
「お前に技を仕込んだ連中と、今回の襲撃を企画し、お前に実行させた連中とは……別口、なんだな?」
 先程の茅の言葉を素直に解釈すれば……そうなる。
「ぼくを! これからぼくを! どうするつもりだ!」
 それまでおとなしくしていた佐久間現象が、いきなり取り乱す。
「まだ、決めていない……」
 荒野は首を振った。
「佐久間の長が、お前の身柄を要求しているが……それに応じるかどうかは、今の時点では未定だ……」
 口ではそういったが、荒野は実は、既に半ば以上、佐久間現象を佐久間の長に引き渡すことを決めている。聞くべきことを聞いてしまえば、手元に置いていても、活用のしようがないのだ。
 後顧の憂いを断つためにも、引き取ってくれる先がありさえすれば、熨斗をつけて差し出したい気分だった。
「……佐久間に……引き渡す……だと……」
 荒野の返答を聞くと、現象は、途端に震え出した。
 そして、不意に立ち上がり、荒野の横を通って逃げようとする。
 が……。
「手間を、かけさせるな……」
 荒野は、現象がすり抜けるのとタイミングを図って、無造作に足を横に旋回させる。
 荒野の膝が、現象の腹に、深く潜り込んだ。
 悶絶して白目をむいている現象の体を、荒野は足の力でソファに押し戻す。
「いいか。
 お前は、とりあえず、おれたちが聞くことにだけ答えていればいいんだ……。
 あまり聞き分けのよくないことばかりやっていると……茅に、お前の深い部分までを……読ませるぞ……。
 できるな? 茅?」
「難しいし、時間はかかるけど……おそらく、可能なの」
 茅は、荒野の問いかけに、頷く。
「それより……現象を、素直になるように書き換える方が……簡単なの……」
「……やめてくれ!」
 ソファの上で、佐久間現象が体を丸め、荒野たちに背を向ける。
「書き換えるのだけは……やめてくれ!
 これ以上、ぼくがぼくでなくなるのは……いやだぁ! 佐久間に帰ったら、ぼくは、間違えなく……今のぼくでは、無くなる! ぼくが消える!」
『……そういうことか……』
 荒野は漠然と、理解した。
 傀儡操りの佐久間の社会では……「他の術者を書き換える」というのは、教育であると同時に懲罰……と、して機能している……らしい。
 なまじ、三島のいう「ブレイン・ハッキング」についての知識を持つ者にとって……より高度な技の使い手に無理に「自分」を書き換えられることは、屈辱であるのと同時に恐怖、でもあるのだろう。
 経験や知識があった方が……自分に施された術、つまり、それまでの自分が、別の存在に、強引書き換えられて行く……様子を、観察することになる……。
「でも、さ……」
 荒野は、現象に、いつになく優しい声をかける。
「お前……そうやって書き換えられて、自分が一般人だと思っていた時期もあったんだろう?
 その時、いやだったか?」
 荒野にしてみれば、一族関係の記憶を強引に封じられて、一般人として生活する……なんて、かなり理想的な境遇だ、とさえ、思ってしまう。茅と知り合う以前なら、羨望さえ、覚えただろう。
「お前は……知らないんだ!」
 現象は、自分の肩を抱くようにして、荒野たちに背を向けている。
「……一族としての知識や技、能力のすべてを封じられて……無力な一般人として暮らすことが、どんなに心細いものか……お前らは、知らない!」
「あー……」
 荒野は、こめかみの辺りを指先で掻き始めた。
「お前、ひょっとして……一般人やってた時……いじめられっ子、だったのか?」
 佐久間現象の背中が、びくり、と大きく震える。
 ……分かりやすいやつだ……と、荒野は思った。
「……段々、読めてきた……。
 佐久間現象・
 お前は、一旦、能力や知識や技、つまり一族としての特徴を一切封じられて、一般人社会にほうり込まれた。
 佐久間は、多分、念には念を入れて、お前のすべての能力を……一般人平均値から、さらに下回る程度にしか発揮できないよう、暗示をかけられた。
 で、その先で……なんかのきっかけがあって……お前は、学校とか家族とかから、疎んじられるようになった。孤立した。
 ……そんな時に……」
 ガス弾を使用した連中が、接触してきたのだろう……。
「……自分たちに協力すれば……お前の、秘められた力を解放してやる……とでも、持ちかけられたんだろう……。
 そして、お前は、そいつらとの取引に応じて……喜々として、おれたちを襲撃する準備をはじめた。
 いや……。
 その前に、取り戻した能力を使って、お前をいじめてきた奴らに復讐する、程度のことは、したのかも知れないな……」
「……荒野……それ、全部、正解……図星なの」
 現象の背中を眺めていた茅が、荒野にいった。
「イエス、ノーのニ択程度なら……深く読まなくても、判読できるの……」
 荒野は、頷く。
 茅に保証されずとも……正解であることは、現象の反応から、容易に推察できた。
「おれ……お前を、佐久間が何故放逐しのか、わかるような気がする……」
 現象がそう信じているように、期待していた能力を開花させなかったため……では、ない。
「性格とか、適性の問題だな……。
 佐久間までそうなのかどうか、詳しくは知らないけど……おれが知る限り、一族の中では、一族としての能力を、たいした理由もなく一般人に向ける行為は……タブー視されている。
 何故だか、わかるか?
 頻繁にそんなことをしていれば……おれたち一族の存在が一般人に知れ渡る可能性が、それだけ大きくなるからだ……。
 一族の中にも、エゴイスティックなサディストは結構いる。所詮、汚れ仕事を請け負って一般人社会に寄生している身だからな。
 けど……そういうアブないやつらも、それでも最低限、そうした嗜好を満足させる時と場合を選ぶだけの分別は、持ち合わせている……。
 お前は、どうも……その分別を、どこかで学び忘れたようだな……」
 荒野は少し間を置いて、いった。
「聞くだけのことを聞いたら……やはりお前は、佐久間の長の元に返そう……」
 佐久間の長が現象の身柄を要求したのは……このような者を出した不始末に対して、責任を感じているから……であるように、荒野には思える。
 で、なければ……涼治を通しての、例外的な直接交渉……それも、一晩、という時間的余裕をこちらに与える形で……を申し出てくる理由が、説明できない……。

「あら……今度は逃げませんの?
 わたくし、話しを聞いているうちに、この方の膝頭を粉砕したくなったのですけど……」
 孫子が、明らかに現象を揶揄する口調で、いった。
「ここでは、やめとけ。床が血で汚れる……」
 当の現象は、ソファの上に丸まって、ガタガタ震えている。荒野たちが怖いのではない。現象が盛大に震えはじめたのは、荒野が「佐久間に引き渡す」と明言してからだった。
 現象は……「佐久間」に対して、隠しようもない恐怖心を抱いているらしい……。
『これでは……まともな尋問は無理だな……』
 そう判断した荒野は、震える現象の背中に、「イエス・ノー」で答えられる質問を浴びせることにした。

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彼女はくノ一! 第五話 (107)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(107)

 打ち合わせを兼ねた夕食がなんだか分からないうちに宴会になだれ込んだあたりで、風邪をひいていた香也はにぎやかな居間を出て自室に戻った。どうせ寝るだけ、ではあるが、ひきはじめの症状が軽いうちに直しておきたい。今日の午前中で、香也は様々なモチーフを拾っており、早く回復して、それを紙に定着しておきたかった。
『……ゴミ、かぁ……』
 打ち捨てられ、誰にも顧みられなくなった生活必需品が堆積すると……そことはない、迫力を産む……ということを、楓に傘を差しかけられてスケッチをした香也は、今日、初めて知った。
『あの時に……感じたことは……』
 写真やビデオでは、表現できないだろう……とも、思う。
 香也は寝る前に、午前中に書いたスケッチを見ておこうと思い立ち、今日、使用していたスケッチブックを手にとって、布団の中に足を突っ込み、ぱらぱらとページをめくる。
『こう……じゃあ、ないんだよなぁ……』
 自分のスケッチをみて、そんな印象を持つ。
 あの時は、雨が降ってきたし、時間もおしていたし……たまたま目についたところをざっざと描いてみせただけで……。
 このスケッチを元にして、絵を描いても……香也自身を満足させる完成品には、どうもなりそうもない……。
『もっと……』
 香也はスケッチブックを枕元にほうり出し、布団に寝そべって、目を閉じる。
 描く対象をしっかり見据えて、何でそんなゴミの山に、自分がひっかかりを覚えるのか……よくよく、考えてみなければならない。
『……そのためには……』
 早く元気になって、有働さんに、もっといろいろな場所を教えてもらわなければならない……。そして、自分の足で存分に歩き回って……それから、キャンパスに、向かおう。
 香也の場合……実際に指を動かして描いてみないことには、思考がまとまらない……という面がある。

 香也は一度起き上がって電灯を消し、布団の中に潜り込んだ。昼間から寝ているから、眠気は全然なかったが……それでも、目を瞑って、休養に努めた。

「明日の説明会で使用する資料を整理する」
 といって、まず最初に玉木と有働が腰を上げた。
 すると、斎藤遥かも、
「あ。わたしも……あんまり遅くなるとやばいから……。
 今日はどうも御馳走様でした。楽しかったです。また明日……」
 と、腰をあげ、一礼する。
 斎藤遥は、一度商店街の近くまで玉木を送った後、有働が家まで送って行くことになった。有働の家と斎藤の家は、近所、というわけではなかっらが、ここからだと方向的には一緒らしい。

 三人が帰ったのを期に、後片付けの雰囲気になり、今日は準備を手伝わなかった楓と孫子、茅の三人が、食器を集め、台所に持っていく。
 飯島舞花と栗田精一、柏あんなと堺雅史も、それに、三島百合香も、前後して帰って行った。

「この子たち……熟睡しているね……」
 羽生譲が、炬燵に入って毛布を被ったまま、寄り添うようにして寝息を立てている徳川浅黄と黒猫をみて、いった。
「おい、トクツーくん……。
 起こすのも可愛そうだから、このまま泊めても、うちの方はかまわないけど……」
「……荒野。浅黄、うちに……」
 すかさず、荒野に何事か訴えようとする茅の言葉を、荒野は制した。
「いつもなら問題ないんだけど……今日は、招かれざる客がいるからなぁ……。
 あいつと浅黄ちゃんを一緒に泊めるのは……ちょっと、あれだろ……」
「……なんだ、カッコいいこーや君ところ、お客さん連れてきているのか……。一緒に連れてきたらよかったのに……」
「いやいや。お客さん、なんて上等な者ではありません。
 それに、最低限の餌は置いてきてますので、お気になさらず……。
 っていうか、こっちに連れてきたらまたなにかやらかさないか心配だったから、向こうに置いてきた訳で……」
「なんだかよく分からないけど……躾のできてないペットでも、預かっているんか?」
「似たようなもんですね……。
 で、茅。
 浅黄ちゃんと一緒にいたかったら、今日はこっちに泊まらせてもらうんだな……」
 と、荒野は、炬燵を指す。
「羽生さん、別に構いませんよね……」
「ああ……別に、いいけど……。
 ってことは、カッコいいこーや君は、向こうに帰るのか?」
「ええ。
 今夜一晩、躾のできてない獰猛なのを預かっているもんで……あまり長いこと、目を離す訳にはないんです……」
 そういって、荒野も茅を置いて帰って行く。
 茅は、台所にいる楓に聞いて、自分用の布団を取りにいった。
 徳川篤朗も、白衣のポケットから取り出した猫缶を取り出して羽生譲に手渡し、
「明日の午前中には、浅黄を取りにくるのだ……」
 といって帰って行く。

 ……なんだか個性的な子ばかり集まったなあ……と、羽生譲は思った。
 今夜は、真理とノリがいない。それに加えて、ガクとテンも、病院に泊まるという。代わりに、茅と徳川浅黄、それに、名前を知らない黒猫が、居間で丸くなっている……。
『さっきの話では、なんか、いろいろあったみたいだけど……みんな、いつもとあんま、様子が変わらなかったな……』
 と、羽生譲は思い、それから、
『いいや……みんな、必死で、なんでもないような振りをしている……だけ、か……』
 と、慌てて思い直す。
 荒野にしろ茅にしろ、あるいは、楓にしろ孫子にしろ……そんなに、鈍い子たちではない……。
 今日の出来事が、これまでの日常を問答無用で破砕するのに十分なものであったことを、十分に理解した上で……
 その上で、必死に……いつもの自分たち、を、演じているのだろう……。
『こうなると……こーちゃん……風邪をひいていて、よかったな……』
 程度の差はあるが……楓や孫子はいうに及ばず、荒野や、それに、茅も……香也のことを、それぞれのやり方で、気にかけている……と、羽生譲はみている。
 多分……香也が、ここでの平穏な日常、を、象徴しているようなところが、あるからだろう。
 今日、風邪で熱があるせいか、夕食の時も、香也はぼーっとしていた。香也はいつもぼーっとしているといえばそうなのだが、そのいつも以上に、ぼーっとしていた。
 香也だって、ああ見えて、けっして鈍い訳ではない。たまたま風邪で頭の働きが鈍くなっている時に、ああいった話をきいたから、あまり反応しなかったが……正常な時に、いきなり同じ話を聞かされたら……はたして、今日と同じく、平然としていられたかどうか……。
『こーちゃんも……』
 なんか……最近……前とは違って、他人に、興味を示すように、なってきているし……。

『ま……どのみち……』
 荒野たちが微妙な、綱渡りのような状況に置かれていることは、羽生譲も理解しているつもりだ。しかし、香也も……傍から見た時の危なっかしさ、という点でいえば、どっこいどっこいだ……と、羽生譲は思う。
『……なるようにしか、ならないか……』
 彼らに対して羽生譲ができることは、ほとんどない。せいぜい、見守って……いい結果になるように、と祈る程度のことくらいしか、できない。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(23)

第六章 「血と技」(23)

「この期に及んで……戦うつもりは、ない。
 無駄だからな……」
 荒野の言葉と周囲の状況から、自分が置かれた立場を理解した佐久間現象は、構えを解き、自然体で立って、目を閉じた。
「戦わずに……逃げる!」
 佐久間現象の姿が、かき消える。
 以前、佐久間源吉や茅が、この部屋で使用した、他者の感覚系に干渉する術だ……と、悟った荒野は……。

「茅!」
 叫んだ。

 以前、茅は、荒野たちの目の前で、テーブルを消した。あの時は、三人組や三島百合香が同席していて、その場にいた全員に知覚を欺いたのだ。
 茅が複数の人間の知覚系に干渉することが可能であるならば……その逆も、出来る筈だ……。

「無駄……なの……」
 茅が、ぽつりといった。
 同時に、荒野の左脇をすり抜けようとしていた佐久間現象が、唐突に姿を現す。
 荒野が無造作に佐久間現象の足首を払うと、佐久間現象は前のめりに倒れた。
 佐久間現象は自分の姿は荒野たちには知覚できない……ということを前提とし、無防備に荒野の脇を通ろうとしていた所に、足を払われたので……完全に不意をつかれた形であり、その時の佐久間現象の転び方は、いかにも無様だった。
 腹ばいになった佐久間現象の背中に、荒野は足をのせて、動きを封じる。

「……な、な……なんだよ、これ!」
 佐久間現象は、自分の術が破られた、ということが、俄には信じられないようで、目に見えて動揺していた。
「お前らの中に……佐久間の術を修練したヤツ、いない筈じゃあないのかよ!」
「習っては、いないの……」
 佐久間現象の疑問に、茅は、気怠げに答える。
「佐久間源吉の技を一度見たことがあるので、真似をしてみただけなの……」
「なっ!
 ……はっ!」
 茅の答えが、佐久間現象にさらなる動揺をもたらす。
「一度……たった一度、見ただけ、だと?
 そんな……何年も修練してようやく使えるようになる技を……見よう見真似、だと……」
「荒野……」
 茅は、酷薄な声で荒野にある提案をした。
「こいつ……うるさい……。
 茅がこいつの頭の中を読むから、荒野、何でも質問して……」
「そ、そんなことまで……」
 屈辱的な扱いのせいなのか、それとも、恐怖のせいなのか……佐久間現象は、荒野に踏まれながら、ガタガタ震えだした。
「で、できるわけないだろう……。そんな、佐久間の中でも数えるほどしか使えない高等技術を……体系的な知識もなにも教えられていないのが使おうとしたって……」
「知識とは、教えられるものではなくて、自分で学ぶもの。
 体系とは、他者から供与されるものではなくて、自らの知で構築するもの。
 源吉の技を目撃できた、という契機さえあれば、後はその経験を何度も頭の中で繰り返し、観察し……法則性を見いだし、応用すればいいだけのこと……。
 その程度のこともまともに出来ないなんて……」
 ……佐久間は、たいしたことない……。
 そういって……うっそりと、茅が嘲う。

 佐久間現象が、何かに耐えきれなくなったように跳ね起き、叫び声を上げて玄関の方に突進する。
 しかし、その途上に……楓と、孫子がいた。
 楓は、紐で繋いだ六角で、すれ違いざまに、佐久間現象の顔を殴打する。
 鼻血を流しながら横に泳いだ佐久間現象のみぞおちに、孫子が、ライフルの銃床をしたたかに打ち付け、もといたソファの方に押し戻す。

 結局……佐久間現象は、もともと座っていたソファに、どっかりと腰を降ろした。
「……ありえねー……」
 だらだらと鼻血を流しながら、どこか放心した態の佐久間現象が、呟く。
 目から、生気が消えていた。

「……プロトタイプにして、失敗作……」
 茅が淡々とした口調でしゃべりはじめると、佐久間現象はぎょっとした顔をして、茅の顔に視線を固定する。
「他の一族に比べ、佐久間の身体能力は著しく劣る。
 その短所を改善し、なおかつ、佐久間の知力を保全する……そういうコンセプトで、合成された存在。
 しかし、身体能力は強化されたものの、肝心の知力が佐久間の水準に及ばなかったため……数年前から、一般人として育てられる……」
 茅の顔を見つめる佐久間現象の顔は、泣き笑いの表情で歪んでいる。
「自称、佐久間現象、とは、そういう存在……。
 おそらくは、佐久間の一員として認められる前に失敗作の烙印を押され、一部の記憶を封印され、一般人社会に放逐され……平和に、暮らしていた……。
 ……その現象の記憶を、わざわざ封印から解き放ち、もともとあったコンプレックスを刺激し、荒野を襲撃するよう、し向けた存在がいる。
 荒野は、手駒には用はない。
 佐久間現象と名乗る手駒よ。
 荒野に、お前の使用者についての情報を提供しなさい。
 さもなくば……」
 ……茅が、さらに深く、読むの……。
 茅は、能面のような顔で、そう締めくくった。

「……こ、これが……」
 佐久間現象は、頭をのけぞらせて、笑う。
 おそらくは、自嘲。
「失敗作と、成功作の差かよ!
 おれは……おれは……一体、何の為に産まれてきたんだよぉ!」
 自嘲、ではあるが……同時に、悲痛な叫び、でもあった。

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彼女はくノ一! 第五話 (106)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(106)

「話を戻しますが……ぼくらが明日の説明会でアピールする層は、さっきいっていたうちの、二番目と三番目のグループになります……」
 有働勇作の言葉に、荒野は頷く。
 荒野たちの顔と名前はそれなりに知っているが、今までの時点で、あまり接触がなかった人たちに……というのは、納得ができる。
「……まあ……そういうのがどこまで効果あるのかわからないけど……やるだけ、やってみるか……」
 今の時点で荒野が考慮しなければならないのは、大きく分けて二点。一つは地元住民の反感を買わないようにすること。もう一つは、一族関係からの干渉を抑止すること。
 後者に関しては、涼治の仲介によって、荒野たちは佐久間の長と会食する予定になっている。そこには「他のゲスト」も居合わせるということだから、六主家の中枢に近い、影響力の大きい人物も何人か集まって来るのだろう。
 そこでの交渉次第では、今後の干渉をかなりセーブできる……筈だ……と、荒野は思っている。
「……ええ。
 ぼくも、楽観はしていませんが……やれるだけのことは、しておきたいと思います……」
 有働も、荒野にそう頷いた。
 有働は悲観していっているのではない。
「最善は尽くすが、結果は実際にやってみなければわからない」という慎重さを、持っているだけだ。
 以前、有働は「差別感情は、人間が人間であるかぎり、なくならない」といっていた。有働がどこでそういう発想を培ってきたのか荒野には不明だったが……そういう認識をもっているからこそ、有働は、今後増大すると予測される、有形無形の荒野たちへのプレッシャーを、軽減しようとしている……。
「有働君とかカッコいい荒野君は、シリアスに考え過ぎなんだよぉ……。
 今時、そんなシリアス一辺倒なのは、はやらないぞ!」
 玉木珠美は、笑い声を上げながら、荒野たちの不安を軽く一蹴する。
「……斎藤ちゃんもいってたけど、カッコいい荒野君、隠れファン多いし……ソンシちゃんや茅ちゃん、楓ちゃんも含めて、どちらかっていうと、好感度大なんだから……案ずるより産むが易し、さ!
 秘密のひとつや二つあったほうが、キャラもたつし……」
「……なんだよ、キャラって……」
 荒野は、情けない声をだしてぼやいた。
「加納先輩……このルックスで、謎の転校生、その実、ニンジャの子孫……。
 キャラ的には、無敵状態ですよね……」
 斎藤遥も、玉木に追従する。
「だから、キャラ的に無敵状態って、一体どういう状態だよ!」
 何故だか漠然とした不安に襲われた荒野が、小さく叫ぶ。
「まま……カッコいいこーや君……」
 羽生譲がそういって、荒野の肩をピタピタ叩く。
「今の世の中、どんな形であれ、受けないよりは受けた方がいいんだから……」
「なあ、おにーさん……カッコいいじゃないか、ニンジャ……」
 飯島舞花も箸を動かしながら無責任に言い放つ。
「だから……そう気軽に人のこと、ニンジャニンジャっていうなよ……」
 人前で気軽にそう連呼されると、その語感から連想する通俗的なイメージを押し付けられているようで、なんだか馬鹿にされているような気がしてくる……。
 いや、確実に、からかってはいるのだろうが……。

「……そういや、こっちの狩野君は、このこと、知ってたの? 正体とかなんとか……」
 柏あんなは、加納荒野ではなく、狩野香也の方に話を振って来る。
「……んー……」
 香也はひとしきり唸ると、テォッシュの箱を引き寄せて盛大に鼻をかんだ。風邪を引いている以上、出るものは出る。
「……一応、聞いていることは聞いていたけど……。
 そんなに大したことだとは、思ってなかった……。
 正体がなんだろうと、加納君は加納君だし、楓ちゃんは楓ちゃんだし……」
「……あ。そ……」
 赤い鼻をしながらのほほんと答える香也を見て、柏あんなは、自分がひどくささいな事を上げつらって気にし過ぎているのではないか……と、馬鹿らしく思えてきた。
「あんなちゃん……狩野君のいう通り……気にし過ぎても、しょうがないよ……」
 あんなの隣に座る堺雅史も、そう耳打ちする。
「悪い人たちではないってことだけは、確かなんだし……」
 柏あんなは、周囲を見渡した。
 真面目な話をしていたのは最初のうちだけで、今では宴たけなわ。有働勇作と荒野だけが、明日の説明会の段取りについて真面目に語り合っているが、玉木と斎藤遥、それに飯島舞花の三人は、
「この中で一番の萌えキャラは誰か?」
 などというしょーもない議論に熱中している。
 狩野香也は左右に楓と孫子をはべらせて、羞恥ではなく風邪のせいで赤い顔をしている。
 三島百合香と徳川篤朗は、鍋の味付けについてディープな意見を交わしている。
 茅は、横になった徳川浅黄の体にかける毛布を持ってきた所だった。浅黄の横には、太った黒猫が体を丸めて寝息を立てている。
 今、羽生譲がやおら立ち上がって、
「一番! 羽生譲、脱ぎます!」
 と宣言する。顔が赤いのは、酒が入っているせいだろう。
「……おー!」
 と歓声をあげ、拍手する者、止めようとする者、反応はまちまちだった。一緒になって拍手していた栗田精一が、飯島舞花に耳を引っ張られている。
 羽生譲が「たんたらたんたんっ、たんたーん……」とタブーのテーマを口づさみながら踊りだすと、
「二番! 三島百合香、脱ぎます!」
 と挙手しながら、三島までもが羽生と一緒に踊りはじめた。
 こちらは、羽生譲の時よりは、反応が薄い。
 小学生体型の三島が脱いでも、毒にも薬にもならないとその場にいる全員が分かっているので、誰も本気で止めようとはしていなかった。
「三番! 松島楓! 脱ぎます!」
 この一言は、女性陣にさまざまな波紋を呼んだ。みれば、楓の顔が赤い。いつの間にか、誰かにアルコールを盛られたらしかった。
 真っ先に動いたのは、才賀孫子、柏あんな、そして、加納茅だった。
 孫子とあんなが楓を羽交い締めにする間に、いつの間にか、楓の背後に回っていた茅が、楓の首に、どこからか取り出した針を突き立てる。
 すると楓のもがいていた楓の体から、いきなり力が抜けてぐったりとなった。
「……あの胸を、こんなに大勢の前でみせつけられてたまるもんですか……」
 楓を羽交い締めしている最中、孫子が小さな声でそうつぶやくのを、あんなは聞き逃さなかった。あんなは、孫子の一言に深く共感した。
 目を丸くして見物していた人々が、あっという間に楓を制した三人の手際のよさに感嘆し、拍手を送る。

「……楓ちゃん、大丈夫?」
 斎藤遥だけが、いきなり動かなくなった楓の身を案じている。
「針が刺さっている間だけ、自分の意志でうごけないの。針を抜けば、もとどおりになるの」
 加納茅は平然とそう答えて、炬燵の中に足をいれた。

「まあ、確かに……。
 本当に悪いことを考えているようには……見えないけど……」
 同じように堺雅史の隣の席に戻ってきた柏あんなは、何事もなかったように、そう呟いた。
「……あ、あんなちゃん……」
 堺雅史は「さっきの行動が、一番邪悪に見えます」とは、口が避けてもいえなかった。なにしろ柏あんなは、幼少時から空手を習っている。加えて、あんなの幼なじみでもある雅史は、あんながキレた時の怖さも、十分に承知していた。
 世の中、言わぬが花、ということもあるのだった。

[つづき]
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