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第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(11)
全裸のまま天井に張り付いている松島楓をみて、狩野香也は言葉を失った。
『……そういや、この子、ニンジャだったっけ……』
そして、次の瞬間には、画家の眼で観察をし始める。とはいっても香也は、デッサンをする時に見た羽生譲のものしか、女性の裸を見たことがない。
比較の対象は、当然、羽生譲の裸体になる。
『譲さんよりは、全体に丸っこい体しているな。譲さんの体はシャープな印象があるけど、この子のは、豊満な印象。でも、太っている、というほどでもない』
『うん。おっぱいも、譲さんのが、上部が少し窪んだ半球状で上向き、だとすると、この子のは、上のほうも下の方も膨れている球状で、しかも、全体が前のほうにピンと張っている……』
『……体全体の色が、微かに血色を帯びていて、淡いピンク色になっている……』
『股間の茂みは……』
香也がそこまで考えた時、
「そんなにジロジロ見ないでください!」
と、楓が小さく叫んで、なにか細長い銀色の物をはき出した。
しゅ、と鋭い音を立ててこちらに向かってきたそれは、深々と香也の喉元に、刺さる。
『……あれ?』
「心配しないでください」
った、と、一瞬で浴槽の脇に位置を変えた楓が、香也の耳元に口を寄せて、囁く。
「声を封じただけです。それ以外の害も、後遺症もありません。騒がれるとこまりますので」
そういって、横から、香也の首を抱きしめる。
ぎゅう、っと、楓の乳房が、香也の側頭部に押しつけられる感覚。
「さっき、『仕えないでいい。単なる同居人でいい』って、いっていただいた時、本当に嬉しかったです。そういうことをいってくださる方になら、喜んで、誠心誠意お仕えしたいと思いました……」
抱きすくめられながら香也は、楓に何事かいおうとしたが、ぱくぱくと金魚のように口を動かすだけで、声が一向にでない。喉元に深々と刺さった針が、「声を封じている」というのは本当のようだ。深々と刺さっているわりには、痛みは、まるで感じない。
しかたなく、自由になる手で、ポンポンと、自分の首を抱いている楓の腕を、軽く叩く。抗議しているのではなく、好意を伝えたかった。
「……わたし、孤児ですし、なにも持っていません。だから、……」
楓は、香也の首に絡めていた腕を、胸のあたりに移し、軽く力を込めて体を引き上げ、香也を立たせた。
そして香也と間近に向き合うようにして、顔を見合わせる。
「……わたしがだた一つだけ持っているものを、こうや様にあげたいと思います」
真剣な眼をして、香也の眼を見据えて、いった。
百七十センチの香也よりも、目線が低い。ということは、身長は百五十台くらいだろうか、と、香也は見当をつける。
香也がジェスチャーで喉に刺さった針を抜くように伝えると、「大声をだしませんか?」と確認して、香也がわりと真面目な顔をしてコクコクと頭を振ると、針を抜いてくれた。
「あ。あ。あー……」
声が出ることを確認してから、香也は楓の両肩の上に掌を置き、
「そんなにかしこまらなくていいよ。ぼくも同じ。なにもない。なにも持たない。 だってぼく、君と同じ、孤児だから。
ぼく、この家の養子」
楓は、しばらく虚を突かれたような表情をして、まじまじと香也の顔を見つめていたが、その両目がじわじわと潤ってきて、……
『……泣かれるかな、これは……』
と、香也が思った頃、がばり、と、抱きすくめられた。
正面からこうして体を密着させられると、楓の体はとても柔らかくて、でも、適度な弾力があって、それにすっごくいい匂いがして……。
『……あああ。やべ……』
「……こうや様の……」
すん、と鼻を鳴らして、楓が、香也の体に起こった変化を指摘した。
「……すっごく、元気になってます」
そして、抱きついたまま香也の顔を見上げ、眼を閉じて、顔を近づけてきた。
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第一章 「行為と好意」(4)
まだスーパーが開く時間まで少し間があったので、コンビニでケーキをいくつか買ってマンションに帰る。荒野は実は、甘い物に目がない。
相変わらずソファの上で寝息をたてている茅を起こさないように足音を忍ばせて自室に戻り、買ってきたケーキの半分を冷蔵庫に入れ、残りを自室に運ぶ。コーヒーをいれる。「自室」とはいっても2LDKのうちの一部屋を荒野が、もう一部屋を茅が使う、という取り決めをしている程度のことで、普段からドアも開けたままにしている。
買ったばかりのノートパソコンを立ち上げ、ケーキをコーヒーで流し込みながら、一族が管理するサーバに接続し、必要な情報を検索する。
荒野が襲撃した事務所が所属する組の組織系統と、そこのVIPのリスト、ならびに、その系列の組に資金提供している人物一覧。
それに、それらの主要な人物たちの、公になると致命傷になるようなスキャンダラスな情報。より具体的にいうと、裏帳簿のコピーだったり、敵対している組織の重要人物との密会写真だったり、堅気のはずの人間が組関係の人間と密接な関わりがあることを明示する写真だったり、目下の所、マイナーで白眼視される類の性的嗜好をもつことを証明するプレイ最中の写真だったりする。
一族は普段から、行政機関、組関係、ある程度の規模や影響力をもつ企業のVIPについてのその手の情報を、継続的かつ熱心に収集している。もちろん、なにかあったときに脅したり圧力をかけたりするための材料として、だ。
少なからぬ人手と資金の成果であるそれらの情報を、荒野は熱心に吟味してふるいにかけ、公開された際の影響力を考慮しながら「これは」というもののみを選択して自分のマシンにダウンロード、個人的に確保しているダミーサーバを幾つか経由させて、一つ一つを別個に、メールで送付する。
組なら敵対組織の事務所に、代議士なら同じ選挙区の対立候補者に、といった具合に、一番知られたくはない相手に。
そして、その後に、「あの件がアイツに知られたらしい」という匿名密告メールを出す。
ようするに手の込んだ嫌がらせだが、これで、うまくすれば組内部での権力抗争が激化し、同時にスポンサーとの関係もギクシャクし、しばらくは荒野への報復など準備する余裕もなくなるはずだった。
念のため、近郊の日帰りできる位置にある事務所に「危険資料」のハードコピーを置いてくる準備も、はじめる。厳重な警戒の中を忍び込むのは、一族の最も得意とするところで、荒野の手にかかれば、その程度のことは朝飯前なのである。
「危険資料」と忍び込む先の情報をあらかた洗い直すと、そろそろ近所のスーパーが開く時間になっていた。忍び込みは昼をすませてからにしよう、と、そう思い、二人分の食材を買いに、やはり足音を忍ばせて、外に出る。
『──茅の好き嫌いとか、好物とか、よく聞いておけば良かったな……。』
とか、思いながら。
茅はどちらかというと小食のほうだが、荒野は普段から食事ごとに三人前ぐらいの量を消費するので、こまめに食材を買い足さないと、冷蔵庫がすぐに空っぽになる。
スーパーのビニール袋を抱えて帰ってきても、茅はまだ寝ていた。
『これじゃあ、髪長姫というより眠り姫だ』
そう思いながら、比較的音を立てない煮込み料理の準備をし、鍋を火にかけた所で、携帯に、荒野が「じじい」と呼ぶ涼治から、着信があった。
自室に入り、ドアを閉めてから、出る。
『なんであんな情報をコピーしたのか?』
という問い合わせの電話だった。一族のサーバに接続したことが伝わったらしい。
荒野が経緯を説明すると、
『あの情報を集めるのにどれぐらいの資金が必要だのったか』ということを滔々と説明される。
だが荒野も、『今回のミッションは茅の救済が最優先事項であり、採算性はそもそも重視されていない。また、なにが必要なかを判断するのは、裁量権を撒かされた自分である』といった意味のことをいって反論する。『茅の安全を確保するためにも、必要な措置である』と。
短いやりとりの末、結局、涼治のほうが折れた。肝心のメールが送付されている以上、今更とやかくいってもはじまらない、と、思ったのかも知れないが。
『お前は一番穏当な手段を選んだつもりかも知れないがな……』
最後に、涼治はいった。
『……お前のやったことは、必要のない波紋を作り出しただけだ。
お前のおかげで、何人か死ぬことになるぞ』
涼治の予想は的中した。
たしかに、荒野や荒野の身辺にいる者への襲撃や介入は、それ以降なかった。が、そのかわりに、後日、組関係の人間が内輪揉めで何人か死傷、前後して、某代議士秘書が自殺が何件か、報道されることになる。それらは別個に報道され、関連性のある事件としては扱われなかった。
だがそれは、まだ先の話しだ。
この日の荒野は、できあがった鍋いっぱいのビーフ・シチュウのほとんどを自分で平らげ、残りを皿に盛ってラップをかけ、メモといっしょに残し、「危険資料」の入った封筒を持って、意気揚々と出かけた。
夕方遅くまでの時間を使って、近郊の何軒かの目的地に忍び込んだ。荒野は、「忍び込み先」のどこででも、誰にも見つかることなく、極めて安全に仕事を済ますことができた。
あっけないほど、簡単だった。
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第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(10)
「いやぁ……たんのーしたぁー」
羽生譲がお腹のあたりを撫でながら、いった。
「やっぱ、炬燵に鍋物は冬の醍醐味だよねー」
「ご馳走様でした。本当、おいしかったです」
「すごく、おいしかったです。ありがとうございました」
樋口明日樹と松島楓も口々にいって、狩野真理に頭を下げる。
「はい。ごちそうさま。香也。もう遅いんだから、後でちゃんと明日樹ちゃん、送っていってよ」
「んー……」
狩野香也の普段から細い目をますます細めて、背を丸めて炬燵のぬくもりと楽しんでいる。
「……いいけど。でも、今日の味付けは、いつもと少し違ってたね」
「ああ。今日は三島先生も手伝ってくださったのよ」
「ええ!」
「あうっ!」
真理のその言葉を聞いた途端、香也と明日樹は上体をのけぞらせ、
「みにら先生が!」
「料理できたんですか!」
と、口々にいいあった。学校での三島百合香養護教諭の武勇伝は、いろいろと耳に入ってきている。
「なんだよー。わたしが料理できるのがそんなに意外かよー」
当の「みにら先生」は半眼になって生徒たちを見つめた。
「ふん。いいもんねー。ちゃんと料理の腕ほめてくれる男いるもんねー」
と、拗ねたような表情をしてそっぽを向き、立ち上がる。
「さてっと。ママさん。もうぼちぼちいい時間なんで、お暇させてもらいます。今日はどうもごちそうさまでした」
と一礼して、上着を着はじめた。
「あ。じゃあ、わたしも帰ります」
樋口明日樹も帰り支度をし始め、
「ん。送ってく」
香也も外出の準備をし始める。
真理とともに洗い物の片づけを手伝っていた松島楓も、
「あ。わたしもお見送りを……」
と、いいかけたが、「その服装で外出したら、いくらなんでも目立ちすぎ」と、その他の全員に押しとどめられた。
「んー。じゃあ、わたしは寝ますのだー。おやすみー」
と、かなり御神酒が入った羽生譲も早々に自室に引き上げ、狩野真理に「こっちはもういいのよ。長旅で疲れているでしょ。先にお風呂入っちゃって」といわれ、松島楓は恐縮しながらも、その言葉に甘えることにした。
『……お仕えする方が、優しそうな人でよかった……』
楓は、脱衣所で服を脱ぎながら、今日一日の出来事を振り返った。あわただしいようでいて、その実なにもやっていないような、騒がしい、奇妙な一日だった。
ただ一つ確実にいえることは、今日のような他愛もない馬鹿騒ぎは、やってみると実は楽しい、ということだ。
『……世の中には、こんな平和な毎日を送っている人たちもいるんだな……』
と、鍛錬また鍛錬の、自分の過去を思い出して、ちょっとブルーになったりもした。
『……今日のような日が、いつまでも続くといいな……』
そして楓は、ある決心をした。
自宅から歩いて五分ほどの樋口家まで明日樹を送っていき、「晩酌につき合え」という、顔なじみなった明日樹の父親の誘いを断って、香也はそうそうに帰宅した。
いろいろと珍しい事にばかり遭遇し続けたおかげで、妙に気怠い。今日は朝以外、ほとんど絵をかけなかったので、少しは手を動かしたい、という気持ちも強かったが、今の香也のコンディションでは、まともな線一つ引けやしない、ということも、経験上、わかっていた。
こういう日は、風呂にでも入って早めに寝るに限る。
帰宅すると、母親の真理は炬燵の卓上に突っ伏して寝息をたてていた。
もともと酒に強い方ではないし、今日はなにかとはしゃいでいたから、疲れがたまっているのだろう。香也は脱いだ上着を母親の背中にかけ、風呂へと向かう。
風呂場の電気が消えていたので誰も入っていないと判断し、さっさと服を脱いで、ざっと体を流し、湯船に入る。
ふぅー、と、息を吐いて、ふと天井を見上げると、そこに全裸の松島楓が、張り付いていた。
……ということで、みなさま長らくお待たせいたしました(書いているほうも、長かった)。
次回更新分から、しばらく待望のえろえろシーンが続きます。
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第一章 「行為と好意」(3)
「ええと……会ったこと、あったっけ?」
鼻を押さえている少年を助け起こし、ポケットからテッシュを取り出して、わたす。少年は荒野に差し出されたティッシュをちぎって出血している鼻の穴に詰めながら、
「いえ、直接の面識はないんですがね。なにしろ、あにさんは目立ちますから……」
とかいいながら、平手で自分の首のつけねを叩いている。
……やはり、目立つか……。
荒野は苦々しく思った。
なにしろ日本は、住民のほとんどがモンゴロイド的な特徴をもった人々で占められている土地である。自分のような白髪のガイジンが連日町中を目的もなくぶらぶらしていれば、それなりに顔も覚えられるだろう……。
「この間、白柊高のやつら返り討ちにして、後ろ盾になっている事務所までのりこんでいったの、あにさんでしょ? あれ、けっこう、噂になってますよ」
「うん。ヤクは嫌いだから」
……おっと。そっちか。
目立っていたのは、荒野の外見ではなく、行動の方だった。「自業自得だな」、と心中で苦笑いする。
そう思いつつも、荒野は少年が言及した一件については、反省していない。
ドラッグが嫌いなのは本当のことだし、荒野が一族の指示を離れて独断専行を許されたのも、子供の頃を除けば、この土地に来てからが、初めてのことなのだ。「少しハメを外しすぎたかな」、くらいのことは思ったが。
「でもあれ、どうやってやったんです? 事務所には拳銃も何丁かあって話しですけど」
「企業秘密」
隠すつもりもないのに詳細に説明しないのは、説明したところで信じて貰えない、と思ったからだ。荒野でなければ実行できない方法なのだ。
確かに、トカレフの粗悪なコピーが何丁か、あるにはあったが、ハンドガンなんてものは、ろくに訓練も受けていない人間が撃っても、そうそう当たるものではない。
一方の荒野はといえば、離れた場所から礫打ちを行えば、相手が素人なら、一度に十人以上を相手にしても負ける気はしなかった。
荒野が扱えば、一粒のパチンコ玉、一枚のコインにでも、十分な殺傷能力を持たせることができる。
その時、荒野が実際に行った手順は、以下のようなものである。
まず、事務所近くの公衆電話から警察に「組織同士抗争が起こった」という旨の通報をする。それから、事務所の一番大きな窓近くにある電信柱にへばりつき、窓越しに、室内にいる一人一人をパチンコ玉で狙撃した。荒野には信じられなかったが、プロの犯罪組織を自認していながら、その事務所の窓ガラスは防弾仕様でもなんでもないごく普通の板ガラスで、荒野の指に弾かれたパチンコ玉は、易々とガラスを貫通し、中にいる人間の手足に食い込んだ。
わざと間隔をおいて、敵対組織の攻撃と勘違いをして、しまい込んでいた武器を取り出す時間を与え、トカレフを構えた所で、ねらい撃ちにする。
中にいた大方の人間を無力化したところで、ちょうど警察のサイレンが聞こてきたので、そのまま、電柱や屋根づたいに遁走……。
後で聞いたところによると、警察が踏み込んだことで銃とクスリの不法所持が明るみになり、主要な構成員が引っ張られたその事務所は、事実上閉鎖に追い込まれたらしい。
そのことを電話でじじいに事後報告すると、
「どうせすぐに後釜が居座る。無駄なタダ働きは大概にしておけ」
と、窘められた。
たしかに、「自己満足でしかないだろうな」、とは、自分でも思う。
『……でも、そうか、噂になっているのか……』
と、荒野は内心で苦々しく思った。
特に確証のない噂だろうが、「あの件を荒野がやった」という風評が流れているのを、放置することはできなかった。相手は証拠の有無によらず、「面子」とか「筋」を重んじる人種だ。遠からず、なにがしかの報復に出てくる事は、容易に想像できた。
『……相手が動く前に、手を打った方がいいな……』
荒野は頭の中で、具体的なプランを何通りか思い浮かべていた。
「でも、本当に強いんすね。後ろから声をかけただけでぶん殴るなんて、ゴルゴみたいだ」
意味もなく殴られて関心する少年のメンタリティは荒野には理解しがたいが、少年の表情を見る限り、荒野への悪感情はないようだ。
むしろ、その表情には、荒野に対する崇拝の念すら読み取れる。
少年の言葉の中にあった『ゴルゴ』という固有名詞は荒野の記憶になかったので、後で先生に聞いてみよう、と、荒野は記憶にとどめる。荒野は日本語は堪能だが、ポップカルチャーやサブカルチャーに関する知識は、かなり乏しい。「帰国子女」というふれこみで、ある程度ごまかせるにしても、フォローしておくに越したことはないだろう。
「でも、あれはおれが勝手にやったことだから.
君がお礼をいう筋合いのものではないよ」
「いや、でも、あそこが潰れたおかげで、流通量が減って値段が高くなって、おかげで、うちのねーちゃんがヤクに手を出さないですみましたから」
要するに、荒野の行動が、少年にとって、とてもタイミングが良かった、ということらしい。
少年の話しによると、少年には姉が二人おり、年長のほうの姉は「バカなヤツ」で、「ダイエットのために」ドラッグに手を出そうとしていたらしい。
……ダイエットのために……。
この辺の感覚は、荒野には理解不能だ。
いつだったか、一面のケシ畑を火炎放射器で焼き払ったとき、為す術もなく、荒野たちの行動を見守っていた農夫たちの悲しそうな瞳を思い出す。貴重な外貨を得るための換金作物を一方的に焼かれても、抵抗する術を持たない、無力な彼らの瞳を……。
まったく、世界は矛盾と不調和でできている。
「事情はわかったけど、君、学校の方はいいの?」
もう、授業が開始されている時刻だった。
「いや、もう面倒になったから、今日はさぼります」
たしかに少年は、鼻につけているピアスといい、半端なドレッドヘアといい、ベルトを緩めて制服のスラックスがずり落ちんばかりにしている着こなしといい、あまり熱心に授業を受けたがるタイプには見えなかった。
「じゃあ、今度、君ぐらいの人がよく行きそうな遊び場所、案内してよ。今日はこれからちょっと用事あるから、いっしょにいけないけどさ。
三学期からおれも、君と同じ学校に通うことになっているから。
日本に帰ってきてから間もないから、こっちの遊び、よくわかんないんだよね」
「って、あにさん……そんな年齢なんですか!」
と大仰に驚かれた。
荒野が自分の年齢を告げると、「うわぁ。あすねーとタメかよ」とかぶつくさ言いはじめる。
もっとずっと上に見られていたらしい。
……この時ばかりは荒野にも、様々な「公称年齢」を用意して、時と場合に応じて使い分けている、じじいの気持ちがよく分かるような気がした。
その鼻ピアスの少年と携帯の番号を交換して別れ、荒野は一旦、マンションに帰ることにした。
身の安全を確保するための、早急に手をうつ必要があった。
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第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(9)
狩野香也は首を傾げた。
「お側仕え……って、なに?」
松島楓のほうも、考え考え答える。
「……えっとぉ……たぶん、身の回りのお世話とか、お仕事のお手伝いとか……」
「身の回りのほうは別にいいや。間に合ってるし。
ところで君、絵、描ける?」
「絵? 絵ですかぁ……地図とか見取り図なら得意ですけど……」
「……うーん……。
具体的にいうと、曲線で囲われた部分を塗りつぶしたりとか、そういう細かい作業、延々と何十時間も続けるのとか、大丈夫?」
「あ! はい!」
訳も分からず、「それなら自分でもできそうだ」と予測して、楓は、元気に返事をした。
「手先は器用な方ですし、体力にも自信があります!」
「うん。それじゃあ、ね。
ぼくのほうは間に合っているから、この人のお仕事手伝ってあげて。毎年、お盆とか年末の前になると、すっごい大騒ぎになるんだ。人手は、いくらあっても足りなくなるから。
ということで、譲さん、アシさん一人ゲットね」
「よっしゃぁ!」
香也がのんびりとした口調で羽生譲を指し示すと、松島楓はとたんに落ち着かない様子で、わたわたと香也と譲の間に視線を往復させる。
「そんなに心配そうな顔するなよ、くノ一ちゃん。なに、本当に地獄を見るのは、入稿前のほんの一週間前程度のこったから……」
羽生譲が楓の背中をポンポンと叩きながらそう請け合うと、楓は「あうぅー」と心配そうな声をだした。
「ちょっと待てぃ!」
目の間を指で揉みながら、三島百合香が問いただす。
「さっきから聞いていると、その『盆暮れ前』とか『入稿』って……」
「うん。コミケ」
「なんですとぉ!」
三島百合香は叫んだ。
「あんたらはせっかくのくノ一ちゃんをエロ同人誌のベタ塗り要員にしか使わないのかよ!」
子細に説明されていないはずなのに、「エロ同人誌」と断定してかかる辺り、微妙に鋭い。
「いいじゃん。平和利用。それに、やらせてみて大丈夫そうだったら、ベタだけでなくトーンも削って貰うし……」
「どっちでも同じじゃん、そんなの! 宝の持ち腐れだよ! 日本の伝統文化への冒涜だよ!」
「そんなこといわれてもなぁ……。
んじゃあ、三島先生は、くノ一ちゃんのもっと有効な活用方法、思いつくのんか?」
「う……そ、それは……」
「ねぇ、狩野くん」
三島百合香と羽生譲が言い争っている後で、樋口明日樹が、香也に話しかけてきた。
「その、羽生さんのお仕事って、絵に関係しているの? わたしにも手伝える?」
狩野香也は、この少年には珍しく即答を避け、腕を組んで、「うーん」、と考え込んでしまった。
「樋口先輩は、関わらない方が身のためだと思うなぁ……。
技術的には充分可能だと思うけど……」
と、「羽生さんのお仕事」の内容を、具体的、かつ、詳細に説明し始める。なにをやらされるのかと不安になっていた松島楓も寄ってきて、樋口明日樹といっしょに狩野香也の説明に、しばし聞き入る。
狩野香也の説明を聞いていた女の子二人は、最初、赤くなり、次いで、青くなり、最後には、
「狩野くん! 女の子にそんなことやらせようとしたの!」
「不潔ですぅ! あんまりですぅ!」
とか大声を出して、香也に詰めよりはじめる。
「駄目?」
淡々と問い返す香也。
「当たり前でしょ! 未成年になにやらせるのよ!」
「お嫁に行けなくなりますぅ!」
「んじゃあ、さ」
香也はすっかり冷たくなったお茶を、音をたてて啜った。
「お仕えするとか、そういうことはやめようよ。面倒だし。
譲さんみたいに、単なる同居人、ってだけじゃあ、駄目なのかなあ?」
と、松島楓のほうに向き直って、首を傾げてみせた。
「……うっ……」
問いかけられた松島楓は、二の句が継げなくなる。
「はいはい。お鍋がいい具合に煮えてきましたよー。早く取らないと、具が煮え過ぎちゃいますよー。早くとって、食べて。ほらほら。香也も樋口さんも、若いんだから、どんどん食べてね。
楓ちゃんも、夕べからなにも食べてないっていってたでしょ?
三島先生と譲ちゃんのペースに乗せられて、今までだってろくに箸をつけていないんだから、遠慮なく食べてね」
まるで機を見計らっていたかのように、狩野真理の声が全員の耳に届く。
一同はなにか救われたような気持ちになって、再びがやがやと炬燵を囲みはじめた。
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第一章 「行為と好意」(2)
三島百合香の出勤を見送った後、同じマンション内にある、加納荒野は自分たちに宛われた部屋に戻った。三島百合香の部屋が三階で、表向きは帰国子女の兄弟ということになっている加納荒野と茅の部屋は、最上階の七階になる。
「……こうや……どこいってたの……」
七階の自室に戻ると、玄関先に、寝間着代わりにしている白無地の浴衣を乱雑に羽織った茅が待ちかまえていた。寝乱れ、でたらめな方向に跳ねていたりする長い髪の間から、半分とろけたようないかにも眠そうな顔で、荒野を見上げる。
どうやら、起きたら添い寝していたはずの荒野がいなくなっていたので、起きてきたらしい。
「せ、先生のところ。毎朝、先生が出勤する前に、連絡とか報告とかしにいくことになっているんだ」
荒野と茅の間で「先生」といえば、ただ一人を指す。
得体の知れないプレッシャーを感じて、その時の荒野の声は震えていた。もともと色白の茅の顔は、寝起きのためなおさら血の気が引いて青白く、照明もつけていない、薄暗い玄関先で、さながら幽鬼ののように見えた。顔の造作が整っている分、なおさら鬼気迫るものを感じた。
「か、茅は、朝はなにが食べたい? 今すぐ、用意するよ」
「……ごはんはいらないの。こうやが帰ってきたから、また寝るの……」
そうして、よろよろとした足取りで、まとめていない髪を床に引きずりながらリビングまで歩いていき、そこのソファの上に、どさり、と身を投げ出して、そのまま寝息をたてはじめる。
「……おーい。茅さーん。そんなところに寝ていると風引くよー……」
軽く肩を揺すってみるが、返事がない。まるで屍のように、熟睡している。
しょうがないから、毛布を持ってきて茅の体の上に掛け、「外出する」という旨のメッセージと自分の携帯の番号をメモして置き手紙として残しておく。
『加納茅は、朝に弱い』
同居人に関する新鮮な情報を脳裏に書き込み、加納荒野は朝の町に出ていく。
駐輪場から買ったばかりのママチャリを引っぱり出し、掃除に出ていたマンションお隣りの家の奥さん(このお隣りの「狩野家」とも、荒野は浅からぬ因縁がある)ににこやかに挨拶をし、とりあえず、駅前のほうにいってみる。
ここ数日の探索で、駅前には、朝からやっている牛丼屋、ファーストフード、全国チェーンのカフェなどがあるということを、荒野はしっていた。
茅が起きていれば軽く近郊の案内をするつもりだったが、あの様子だと当分起きてきそうもないので、いきなり暇ができた。時間があっても特にやりたいこともなかったので、今朝は牛丼屋で軽く腹拵えをして、何件かあるカフェで時間を潰すつもりだった。
荒野が長期間に渡って一カ所に滞在するとき、まずするのは、周辺地域を自分の足でくまなく歩いて、物価とか人々の気質とか雰囲気とかを身を持って知り、それに同化しようとすることだった。荒野は割と日本人離れした風貌をしていたので、一族の本拠地である日本に長期滞在したことは、幼少期を除いてほとんどない。幼い頃は東欧、少し成長してからは南米、ここ数年は東南アジア方面に行くことが多かった。混血が進んでいるそれらの地域は、西洋人にも東洋人にも見える風貌の荒野が紛れ込みやすく、また、政情が不安定なこともあって、一族が請け負う仕事にも事欠かなかった。
幼い頃は一族が「埋伏」と呼ぶ、「一般人に偽装して、長期にわたり情報を偽装する」任につき、少し成長してからは、「荒事」と呼ばれる、実戦部隊の一員として働くことが多かった。その職務の性質上、前者「埋伏」は年単位の任であり、後者の「荒事」は、数日から早ければ数時間で終了する。
今回、荒野に下された、「加納茅を笑わせる」というミッションは、一族の仕事としてはかなり特殊だが、「長い時間をかけて成果をだす」という事でいえば、「荒事」よりは「埋伏」に近い。
今まで、荒野が「埋伏」の任につくときは、当然、「荒野の家族役」の一族が、広野の家族を演じていたわけで、今度は荒野が茅の家族を演じることになる。
例えそれが仮初めの存在であったとしても、荒野が今まで両親ともに不在だったことに何にも負い目を感じないで済んでいるのは、幼少時、親身になって肉親を演じてくれた一族の者の存在があったからだ、と、荒野は、思っている。
今度は、『おれが茅の家族になって、茅を安心させてやるんだ』、とも。
荒野が感心したジャパニーズ・ファーストフード、牛丼(ビーフにこんな食べ方があったなんて!)の大盛りを平らげた後、荒野は食後のお茶を飲み行こうと、牛丼屋の三軒離れた所にあるカフェに足を向ける。
「にいさん!」
その荒野の背中を、叩く者がいた。
殺気はなかったが、その声に切実な、剣呑ともいえる鋭さを感じた荒野は、振り向きざまに裏拳を声の主にたたきつけて、相手を無力化した。とっさに、半ば無意識的に出た、それまで荒野が生きていた世界では、ごく当たり前の行動だった。
「……ただ、この前のお礼をいいたかっただけなのに……」
道路にうずくまっている痩せこけた少年は、出血している鼻を自分の手で押さえながら、うめくようにいった。
その少年は、荒野と茅が三学期から通う手はずになっている、学校の制服を着ていた。
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第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(8)
放課後。
一日の授業をすべてつつがなくやり過ごした狩野香也は、ほぼ反射的に美術室へと足を向けていた。香也にとっては絵さえ描ければその場所はどこでもよく、一学期、樋口明日樹に誘われるままに美術部に入部。以後、放課後は遅くまで学校で気ままに絵を描く生活を送っている。自宅のプレハブだと、夏は暑いし冬は寒い、と、気温の変化をモロに受けるので、これはこれで良かったかな、と思う。学校の美術室だと、少なくとも、暖房だけは完備している。
毎日学校に来なくてはならないのが難点だが、正直にそういったら、「普通、学生は毎日学校に来るものなの!」と、樋口明日樹に窘められた過去があり。
「狩野君!」
その樋口明日樹が、美術室の前で怖い顔をして立っていた。
「な、ん、で、こんな所にきているのかなー!」
あああいけないこれはキレる直前の表情だ。
狩野香也は樋口明日樹に叱られ慣れているので、彼女がこういう表情をしたときにはとりあえず頭を下げる。ごめんなさい。といったら、樋口明日樹は、
「君は今朝のことが気にならないんですかあの珍しい恰好をした人のその後がみにら先生あれから結局学校に来ていないしだいたい君という人は一般常識に欠けたところがあってもう少し人並みの好奇心とか」以下略。
と、だいたいそんな感じで三分間に渡って延々としゃべりだす。
というわけで、狩野香也は樋口明日樹に引っ張られるようにして、真っ直ぐに帰宅した。
帰宅した彼らを待ち受けていたものは、ピンクレディの「UFO」の振り付けを習っている最中の、くノ一の姿だった。
「いや、だからさー。二人でやる派手な振り付けの曲、っていったら、やっぱ、ピンクレディだろう。伝統的に。いや、わたしもナマで活躍していた時代を知ってるわけではないけどな。たまたま三島先生もわたしもレパートリーとして知ってたんで、二人して飲めや歌えややっていたらくノ一ちゃんが興味をしめしてな。三島先生と二人で宴会芸を仕込んでいた最中だったのだ」
「どうしてこういう事態になっているのか」という問いに対して、羽生譲はこう答えた。
……いや、そうではなくて、もっと根本的なところを。
「くノ一ちゃんを家に寝かしつけて、三島先生がどっかのお偉いさんに電話して、電話、真理さんに変わって、いろいろ話していたら、なんか、くノ一ちゃんが家に同居することになっていた」
ドサリ、と、樋口明日樹の手から、鞄が落ちる。
「んー。ということは、あれか。くノ一ちゃんもわたしと同じで、この家の居候ということになるんだな……。
おい! くノ一ちゃん! わたしのほうが居候の先輩だからな。こっちが居候一号でそっちが居候二号だ。先輩はちゃんと敬う! 以後、わたしのことは居候の師匠と呼ぶように!」
と、そばにいる松島楓に訳の分からないことをいいつける。そういわれた松島楓は、ははーと、素直に平伏する。
一方、羽生譲は自分の言葉になにか感ずるところがあったのか、天井の方に顔を向けて、「いそーろーいそーろー」と呟いた。
「ニンジャのいそーろー……っていうと……」
「アレだよアレ!」
そばに立っていたほろ酔い加減の三島百合香が、身長差がある羽生譲の顔を、ちょいちょいと指を動かして呼びつけ、ごにょごにょと何事かを耳打ちにする。
羽生譲は、ポン、と、柏手をうち、「おー。それだー」と感嘆の声をあげ、三島百合香と二人で、律儀に正座をして待機していた松島楓に向き直り、
「ニンジャのいそーろーってーと、あれか!」
「語尾はゴザルか! ニンニンといってみろ!」
「書いた人は藤子のA先生か!」
「そのうちライバルとかおとーととか忍犬が出てくるんだろう!」
「映画化されたら主演は中居クンか!」
とかいいながら、二人で肩を組んで「わはははは」と笑いだした。
酔っぱらいの訳の分からないノリに加え、昔のマンガの知識なんてまるで持っていなかった松島楓は、怯えたような表情をして恐れおののいている。
そんな騒ぎをよそに、さっさと炬燵に入っていた狩野香也は、炬燵の側に常備されているお盆の湯飲みを使い、慣れた手つきで三人分のお茶を入れる。呆然と立ちつくしている樋口明日樹の脛をツンツンと指でつついて注意を促し、松島楓もいっしょに、炬燵のほうに手招きする。
炬燵に入った二人の前に湯飲みを置き、自分でも、ずずず、と音を立ててお茶を啜る。羽生譲と三島百合香は、すでに松島楓に興味を失ったのか、肩を組んだまま、「ぎんざのおんなはぁ、ぎりよりかぁーたいー」とコブシを効かせて歌いはじめている。
「香也も樋口さんもくノ一ちゃんも、いっぱい食べいってね。今日は、ノ一ちゃんの歓迎会なんだから」
台所に消えていた狩野真理が、食材を山盛りにした皿を持って帰ってきた。
具材を炬燵の中央に置いてある鍋の中にいれ、コンロに火をつける。
「……こうや……かのう、こうや……」
すっかり「ノ一ちゃん」の呼称が定着しつつある松島楓は、真理の言葉になにかを思い出したようにぶつぶついっていたが、いきなり炬燵から出て座り直し、
「お尋ね申す! こちらのお方は、もしや、『かのうこうや』とおっしゃるのでしょうか?」
と、炬燵に入ってくつろいでいる狩野香也を示す。
「うん。ぼく、狩野香也」
「こちらの住所は──で」
「それ、町名変更前の住所だけど、それだと、だいたいこの辺りねぇ」
それを聞いた松島楓は、畳に額をこすりつけるようにして平伏した。
「それがし、かのうこうや様にお仕えするためにここに参りました! お側仕えすることをお許しいただきたく。なにとぞ、なにとぞ!」
いきなり時代劇口調になって懇願する。
樋口明日樹が「ええーっ!」という悲鳴のような声をあげ、三島百合香と羽生譲は「おおーっ!」と、明らかに面白がっている声をあげた。
そして、何故かパチパチパチと拍手しはじめる。
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第一章 「行為と好意」(1)
黒髪の束が、少年の体に覆い被さっている。
「……こうや……」
否。
黒髪の束、に見えたものは、自分の身長以上に髪を伸ばした全裸の少女である。小柄な彼女が、体格において二回りほども大きい銀髪の少年の上に跨って、自由を奪っている。
少年は、成人男性と比較しても遜色ない体格と、常人に数倍する筋力を持っていたが、ひとふり身震いすればはじき飛ばせるような、軽い少女に跨られて、魅入られたように動けないでいる。
銀髪の少年の上に乗った黒髪の少女は、手を伸ばして、少年が纏っていた衣服を脱がしはじめた……。
「……んで、一体、それのどこが問題なんだ? のろけか?」
翌朝、加納荒野に相談を受けた三島百合香は、いささか疲れた声でそう答えた。
「そんなん、据え膳だ据え膳。
相手のほうから誘われたんだから、遠慮しないでイッパツやっちまえばいいのに……」
相談を持ちかけた加納荒野のほうも、憔悴した表情を浮かべていた。
荒野は、加納茅と名乗る少女との同居生活初夜、裸で茅に抱きつかれ、裸に剥かれ、抱きつかれたまま、一睡もせずに添い寝していたという……。
一方、抱きついた側の茅は、そのまま、幼子のようなあどけない寝顔をみせて、すぐに寝息をたてはじめた。
「……だってよう、先生……」
銀髪で彫りの深い顔立ちと、落ち着いた物腰。一見、二十歳前後に見える荒野は、その実、未成熟な内面しか持たないティーン・エイジャーにすぎない。
「……そこでほいほいやっちまったらさ、それはつまり、親父と同じ事をするってことで……」
三島百合香は深々とため息をついた。
特殊な生い立ちを持つ荒野は、外見だけではなく、身体能力的にも卓越した存在である。が、そうした能力も、日本で平凡な一学生として生活しようとする分には、むしろ邪魔な要素でしかない。加えて、海外を転々として過ごしてきた荒野は、言葉にこそ不自由はしないものの、日本での平均的な生活というものに対して、常識的な知識を欠いていた。
茅より一足先にこの土地に到着した荒野が起こした幾つかの騒動が、そこことを証明している……と、その後始末やらフォローやらに奔走してきた三島百合香は断言できる。
例えば、コンビニの支払いをアメックスのゴールドカードで済ませようとして、バイト店員に注目を浴びる(買ったのは、税込み百五円の食玩入りチョコレートだった)。当座の足として購入したママチャリで車道を飛ばしすぎて、白バイに補導される。繁華街で因縁をつけてきたドキュンを返り討ちにする(ここまでならまだよかったが、調子に乗って背後にいた「組」事務所にまで押しかけていって、事務所一つを壊滅してしまったのは、さすがに行きすぎだと思う。犯人が特定できる証拠は残していないそうだが)。等々。
三島百合香自は、自分身でフォローできる範囲を越えたと判断したら、即座にあらかじめ教えられていた緊急連絡先へと通達、「尻ぬぐい」を依頼した。その回数は、「緊急連絡先」で想定していたよりもどうも頻繁だったようで、三島百合香はすぐに、加納涼治御大の直通番号を教えられ、それを携帯に登録するはめになる。
おかげで三島百合香は、「謎のニンジャ集団の大頭領」と随分親しくなってしまった。
『……でも、こと、子供の教育に関しては、絶対に問題あるよな、あの集団……』
……荒野といい、荒野の父親にあたる男のことといい……。
「あのなぁ」
数秒、間を置いてから、三島百合香は顔をあげる。
「お前も男なら、女が本気で迫ってきてるのか、そうでないのかくらい、ちゃっちゃと見分けろってーの。そのナリで全く経験ないわけでもなかろう? ん?」
三島百合香は軽く尋ねたつもりだったが、荒野は一瞬、端正な顔にキョトンとした表情を浮かべ、一瞬後、顔中を真っ赤にして、目を反らした。
あら?
「……なんだぁ? お前……ひょっとして、どーてーかぁ?」
三島百合香は椅子から立ち上がり、背をのけぞらして「驚きのポーズ」を作る。普段、迷惑をかけられている、という意識があるので、こういう場面では意地の悪い対応をしたくなる。
「……そーかそーか。荒野君は女体未経験か。そうかぁ」
腕を組んで、うんうんと大仰に頷いてみせる。内心では『実年齢のことを考えれば、充分にありえるか』と納得しているのだが。
外見がアレなんで、荒野がまだほんの子供だということを、忘れそうになる。
「黙ってても女なんざナンボでも寄ってくるようないい男っぷりなのになぁ。
まぁ、なんだな。そういう相談は、わたしの職務外だな。
お前自身がどうしたいのか、という問題だからな。
茅とどうこうする、とかいうのを考えるより先に、お前が男性として、女性とどういうスタンスで向き合うのか?
……それを決めるのが、先決なんじゃないのか?
一穴主義で行くのなら、それを口実に、茅とはやらない。
そうでないのなら、フーゾクいくなり、ナンパしたり、ナンパされたりして、とっととキメちまえってぇの。
なんなら、……」
拗ねたような顔をしてそっぽを向いている荒野を、三島百合香は「可愛いな」と、思う。
「……わたしがお相手してやってもいいぞ。けけけ。
さて、そろそろ時間だから、今朝の会見はお終いだ。外に出た出た」
あっけにとられている荒野を部屋の外に追い出し、自分も外に出て、部屋の鍵をかける。
そして、荒野を残して、さっさと現在の勤務先である公立校に、赴く。
荒野がこの市に着いてからこっち、三島百合香は、毎朝の出勤前、二十分ほどの時間を、荒野との面会時間として設定していた。その時間で、カウンセリングの真似事をするときもあれば、日常生活の相談に乗ることもある。
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「序章」 登場人物一覧
加納茅
髪長姫。主人公の一人。身元、出生など一切不明。
「加納仁明」によって、外部との交渉がない環境で育てられた。
発見時、性交渉の痕跡が見られたことから、性的虐待を受けていたものと推測されているが、当人の加納茅が堅く口を閉ざしているため、真偽の程は不明。
加納荒野
主人公の一人。「加納仁明」の息子にして、「加納涼治」の曾孫。
プラチナ・ブロンドの髪をもつ、複雑な混血児。幼少時から鍛錬により、驚異的な身体能力を持つが、内面的にはけっこう実年齢そのまま。物心ついてからのほとんど期間を、海外で過ごしている。
加納涼治
一族の頭領兼加納本家当主。
物語開始時のお膳立てを全て整えた人物。
でも、なぜそこまで「加納茅」に拘るのか、など、その動機に不明な点も多い。
加納仁明
加納荒野の父。加納荒野出産間際に失踪。独力で「加納茅」を育てる。現在も継続して行き先は不明。
三島百合香
序章の語り手。
加納涼治の依頼により、加納荒野と加納茅の行動を監視、報告する任を請け負う。
二人が通う予定の学校に、養護教諭として潜伏中。
色々な意味でアンバランスな存在。第三者から見ると、奇矯な言動を弄し、かなり傍迷惑な人物。
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第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(7)
冒頭から昏倒したままで、まるっきり存在感のない我らがヒロイン、松島楓嬢が目を覚ましたのは、昼過ぎになってからだった。
気がつくと布団の中に寝かされており、なにやら賑やかな、というか、賑やかすぎる、「今や宴たけなわ」的な、ハイ・テンションの人声が聞こえてきて、それで目が覚めたわけだが……。
『……ええっとぉ……』
当然のことながら、松島楓は、今、自分が置かれている境遇、というものが理解できなかった。
『……たしか、わたし、ボールペンに足を取られて、落ちて、たぶん、そこで気を失って……布団に寝かされている……ということは、誰かに介抱されているということで……』
ここまで「これまでの経緯」を推測を交えて思い返したところで、跳ね起きたくなった。
任務遂行中の忍は、無関係の他者にその姿をみられてはいけないのだ。
が、すぐに、「ここに寝かされている」、という時点で、介抱してくださった人には忍装束の自分の姿を既に見られているわけで……。
今更跳ね起きたところで、現状に対処できるなにか有効な手だてが打てるわけでもなし……。
松島楓は、自分を介抱してくれた恩人を口封じしよう……と、即座に判断するほどには、非人道的にはできていない。そうした「甘さ」以前に、平然と「忍装束を人目にさらす」という失態を犯してしまうドジっ娘属性が「評価」されて、ほぼ同年代だという『加納茅』の世話役という、毒にも薬にもならないお役目を仰せつかったわけだが……。
松島楓自身はあまり自覚していなかったが、「忍としては役立たず」、「見ていて飽きない道化」、というのが、松島楓への周囲の評価であり、そうした、他の任務には圧倒的に向いていない人材も、「加納茅を笑わせる」というかなり特殊なミッションにおいては、なにかしらの一助になろう……そう判断されて、(もちろん、ぜんぜん期待されずに)その土地に派遣されたのだった。
ごく端的に一言でいうと、「やっかいばらい」。松島楓の忍としての無能さは、能力不足(彼女の身体能力的なスペックは、同年代の仲間と比較しても、決して劣るモノではなかった)というよりも、どこまでもお人好し、かつ、ここぞというときに派手な失敗をしでかす通称「ドジっ娘属性」、それに彼女の「天然」ぶりにあった。
素直で、明るくて、嘘をつくのが下手で、考えていることがすぐに顔に出る……という松島楓の性格は、この年頃の少女としてはともかく、忍としての適性的には、とことん問題がありすぎた。
加えて、彼女の、すさまじいまでの「天然」ぶり。
なんで今時、訓練地の村からこの市まで、何十キロもある道のりを、自分の足で走って行かなければならないのか。普通なら、例え一族の者でも、公共の交通機関を使うか、十八才以上であれば、自分で車を運転していく。
そうした、たかだか「普通の移動」をするだけのことでも、彼女は「公式な任務だから」と、古式ゆかしい装束に身を固め、徒歩でいく、という、百年以上昔と変わらない、つまり、現代では目立って目立ってしょうがないスタイルを、平気で採用する。
こういう判断をしてしまう、彼女の思考回路を「天然」と評するのは、かなり的確な評価である、とされた。少なくとも、彼女を使う側の人たちの間では、誰もその評価に異議を唱えなかった。
で、体よく厄介払いされ、しかもそのことをまるで自覚していない彼女は、空腹と闘いながら、今、自分が置かれた状況を把握しようと、無駄な思考を重ねていた。そうこうする間にも、どこからか、ものすごくおいしそうな、なにかを煮ている匂いが漂ってきて、昨夜からなにも食べていない彼女の胃袋を刺激する。きゅるるるる、という、可愛い音が、お腹の辺りでする。
『たんたかたんか、たんたーん』
アカペラで「タブーのテーマ」を歌う女の声が、二人分、聞こえる。
あれから、狩野真理と三島百合香の二名は食材その他の戦利品をどっさり持ち帰り、まだ日も高いというのに、そのまま鍋の用意をし、三島百合香がしこたま上等な酒類を持ち込んだこともあって、すぐに宴会になだれ込んだ。
加納真理は、思わぬ臨時収入があったので、かなりご機嫌だった。
三島百合香と羽生譲は、それぞれ性格は違うが、元々異様なまでにノリがいい。
酒が回り始めると、すぐに、
「一番! 三島百合香、脱ぎマース!」
「おー!」(拍手)
「二番! 羽生譲も、脱ぎマース!」
「おー!」(拍手)
という騒ぎに発展した。
女同士の気安さ、ということもあってか、普段なら止めに入るはずの狩野真理も、口笛をふいたりはやし立てたりしている。
自分で脱いだセーターで胸を隠しながら、流し目をして「ちょっとだけよん」といったところで、羽生譲がすぐそばで寝ている松島楓の変化に気づいた。
背中合わせに立っていた半裸の三島百合香の背中を肘でつつき、目配せをする。その動作に狩野真理もすぐに気づき、振り返って、松島楓の体に覆い被さるようにして、目を瞑ったままピクピク動かいている彼女の顔を、覗き込む。
それまで騒がしかったのが、不意に静まりかえったので、いぶかしく思った松島楓が薄目を開けると……。
そこには、お酒が入って赤くなった、ちょっと年齢がいったおねーさんたちの顔が三つ、どアップで待ちかまえていた。どれもニヤニヤ笑いを浮かべて、興味津々、という感じで、松島楓の表情の変化を生暖かく見守っている。
「し、しぇー!!!」
恐慌に駆られた松島楓の絶叫が、加納邸に谺した。
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