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2005-12

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(19)

第一章 「行為と好意」(19)

「……おれも、未樹さんのを舐めてみたい……」
 いうが早いが、荒野は、ひざまずくような姿勢で荒野のものを咥えていた未樹の体を軽々と持ち上げ、ベッドの上に置き、膝を割ってその間に頭を入れた。
「え? ……ちょっ、ちょっと! 恥ずかしいし、汚いよ、それ! 洗ってないし!」
 荒野の動きが素早かったので、未樹は、抵抗する間もなかった。
『汚いっていうのなら……』
 荒野は思った。
『……未樹さんだって、洗ってないおれの、舐めているじゃん』
 未樹の股間に顔を突っ込み、荒野は、未樹の襞をかき分けて、内部の壁面に舌を這わせはじめた。そこはじっとりと濡れていて、微かに未樹の体臭がする。鼻につんとつくようなアンモニア臭ではなく、汗の臭いを少し濃くしたような臭いだった。少しむっとしているように感じたが、決して、不快な感じではない。
 荒野が夢中になってそこに舌を這わせていると、最初のうちこそ、荒野の動きに対抗して、未樹も必死に荒野の男根を咥えていたが、段々と受ける感覚が増してきたのか、次第に未樹は、荒野のそこから口を放すことが多くなった。
 そして、荒い息をついて眉をひそめ、なにかに耐えるような表情をつくっているか、小さな喘ぎ声を出すような事が多くなっていく。
「……はぁ……ん……ん……はぁ」
 終いには、未樹は荒野の腰にしがみつき、ただただ喘いで快楽を受け止めているだけになった。
 そうなる頃には、荒野が舐めている未樹の部分の奥から、汗や尿とは全然違う透明な液体が夥しく沁みだしてくるようになって、荒野は、その透明な液体を、じゅるじゅると音をたてて啜りはじめた。
「いやぁ。駄目ぇ。やめてぇ」
 と、未樹は、切なげな声で懇願しはじめる。
 そして背を反らせ、痙攣したかと思うと、ぱたりと全身から力を抜いて、ぐったりとベッドの上に寝そべった。
「……もう……荒野君の、意地悪……」
 しばらく休んでから、荒い息の下、薄めを開けて、未樹はそう囁く。
「それに、巧すぎ……もう……こっちがリードするつもりだったのに……」
『先にいっちゃったじゃない』という部分は、恥ずかしくて言語化できない。

「……おれ、そろそろ、未樹さんの中に入れたい……」
「……いいよ……来て……待ってね。今……ゴム、着けてあげる……」
 未樹はそういって、避妊具を手に、力なく手招きをした。
 寄ってきた荒野の腰に顔を近づけて、逞しく起立した荒野の男性に、封を開けたコンドームをかぶせはじめる。
『……うまくできるかなぁ……今までは、男に着けさせてたもんなぁ……』
 そんな事を思いながらも、見よう見まねでやってみると、サイズ的にかなりキツそうだったが、なんとか、装着することができた。
「……大きいよねぇ、荒野君の……」
「……そう……なのかな? でかくなっている所、他人と比べたことがないから、なんとも……」
 それはそうか、と、未樹は納得する。でも、未樹が今までに体験してきた男性器の中では、ダントツに大きい気がした。
『……こんな大きいのが、今から……』
 そう思うと、期待よりも不安のほうを、より多く、感じる。
 でも、動揺しているのは、荒野には、悟られたくはなかった。

「……来て……」
 あえて大胆に、荒野に見せつけるように腿を開き、自分の肝心な部分を指で押し広げ、中身の粘膜が見えるようにする。
「……ここ、だから……入れるの……」
 近づいてきた荒野自身を手で掴み、先端を、自分の入り口に押し当てる。
 荒野が腰を落とすと、するん、という感じで、スムースに、全部、飲み込んでしまった。
「……はぁん!」
 全部呑み込んだ瞬間、反射的に小さな叫びを上げて、荒野の肩にしがみつく。
「だ、大丈夫? 未樹さん?」
 その時未樹が上げた声をどう誤解したのか、荒野が尋ねてくる。
「……いいから……動いて……荒野君、気持ちいい?」
 未樹は、薄目を開け、とろんとした目つきで、荒野にいう。もうそろそろ、自分でもなにをいっているのか分からなくなってきている。
「うん。気持ちいい。暖かくて、ぬるぬると包み込んでいて……動きます」
 まだ要領のわかっていない荒野が、乱雑かつ大ざっぱな動きをしはじめる。すでにかなり敏感になっていた未樹は、たびたび予測してない部分を擦られ、刺激されて、また、荒野の動き自体にも手加減がなく、ダイナミックなものだったので、たちまち上り詰める。
 上から、未樹に覆い被さるような姿勢で腰を使い始めた荒野の体に手足を絡め、口唇をきつく結んで、こみ上げてくる歓喜の声を必死の思いでかみ殺していた。
『このままの状態がずっと続けばいい』という陶酔と、『早く、もっと早く動いて、終わらせて。家の中なのに、大きな声がでちゃう』という切実な、相反した思いとが、未樹の中でせめぎ合ううちに、時間の感覚がなくなっていく。
 だから、
「未樹さん、もう駄目。気持ちよすぎ!」
 という荒野の声が聞こえた時も、未樹は『ようやく解放される』という思いと、『もう終わっちゃうの』という正反対の感慨を持った。挿入からその時まで、どれほどの時間が経過したのか、まったく分からない。すぐに、だったような気もするし、長時間、突かれていたような気もする。
「来て! このまま、来て!」
 未樹が、必死の思いで声を抑えて、荒野の耳元でそう囁くのと、荒野が、うっ、と呻くのとは、ほとんど同時だった。
 未樹の中で荒野はうちふるえ、ゴム越しでもそれと分かるほど、大量の、熱い精液を、長々と未樹の中にぶちまけた。

 白々とした、空白があった。
「どう? ご感想は?」
 空白の中から、未樹の声が聞こえる。前髪を、優しく嬲られる、感触。
「いやぁ……もう、……最高! っす」
 荒野は目を開けて、間近にある未樹の顔を、目をみて、にんまりと笑って答える。
「……このぅ……」
 未樹は、荒野の頬の肉を、両手でむにっ、と、掴んだ。
「スケベ! いやらしー笑い方、しちゃって……」
 そして、ケラケラと笑い声をあげた。
 そうした未樹の様子は性交中の女性を感じさせる姿態とは全然違う雰囲気で、その普通さに、荒野は何故か救われたような気分になり、屈託なく笑った、自分の胸元に未樹の頭を抱き込んで、抱きしめた。
「……ありがとうございます。未樹さん」
「……馬鹿……」
 そして、小声で、そんなことをいいあった。

 いそいそと服を着て、すでに就寝している様子の、未樹の家の人々を起こさないようにして、外に出る。幸い、そうした隠密行動は、荒野の最も得意とする所だった。
 外に出てから携帯の液晶で時刻を確認すると、すでに日付が変わっていた。
 そんなに長く未樹と睦み合っていたのか、と愕然とし、少しして、自分が体験したことを思い起こし、人気のない路上で一人赤面する。
 荒野は、ゆっくりとあるいて、未樹の家から徒歩で五分ほどの自分のマンションへ帰っていった。

 そして、マンションのドアを開けた瞬間、荒野は、ひっ、と小さく息を吸い込んだ。
 証明も着けず、そこに茅が立ちすくんでいた。ただ立っているだけでも、その時の茅からは、得体の知れない気配が立ち上がっているような気がした。
 幾多の修羅場をくぐり抜け、百戦錬磨といってもいい、荒野を戦慄させるような気配が、その時の茅にはあった。
 立ちすくんでいる荒野を一瞥し、茅は、ぽつりと、いった。
「……荒野から、あの女の臭いがするの……」
 そしてぷい、と荒野に背を向けて、すたすたと自室に入って、荒野を拒絶するように、ドアを閉めた。

『加納茅は、勘がいい』
『加納茅は、鼻が効く』
『加納茅は、嫉妬深い』
 その茅の行動から得られた所見を機械的に脳裏にかき込みながら、荒野は、背筋を這いのぼる悪寒をどうしようもなく感じつつ、「なんでこんなに罪悪感を感じなければならないのだ」という理不尽さも、同時に、感じていた。

 加納茅はそれから数日間、加納荒野と口をきこうとはしなかった。

   [第一章・了]

[つづき]
目次

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彼女はくノ一! 第二話 (4)

第二話 ライバルはゴスロリ・スナイパー!?(4)

『…………ううっ……こいつら……』
 今や抱擁し合って熱いベーゼを交わしてはじめた狩野香也と松島楓を目の当たりにしながら、それでも才賀孫子は彼らから目を反らすことも、目を瞑ることもできないでいる。
 なぜなら、加納荒野に針をうたれ、自分の意志で体を動かすことを封じられているからだ。今の才賀孫子が自由にできるのは、わずかに眼球を動かすことのみで、瞼の開閉すら、自分の意志ではできない。眼球の表面が渇きはじめ、とどめなく涙が分泌される。一時的な現象とはいえ、こうした視覚系の異常を強制されることは、スナイパーにとってはそれだけでも屈辱的だった。
 加えて、……。
「……はっ……ふっ……うっ……やっと……やっと触ってくれましたぁ……」
 狩野香也の顔からようやく少し離れた松島楓は、上気した顔で、狩野香也を見上げている。狩野香也の口と松島楓の口の間によだれが糸を引いて連絡している。
 明らかに興奮して上気している松島楓の顔は、輝いていて……。
「……わ、わたし、養成所でもミソッカスだったし、一緒だったみんながどんどんお仕事を紹介されていく中、最後まで取り残されて……それで、それでですね!
 やっとお仕事貰えたと思ったら、初っぱなから致命的な勘違いしちゃって、すっごく不安になって、でもここの皆さんはみんな楽しくていい人たちばかりで、ここから離れたくなくって……」
「いいから!」
 狩野香也は松島楓の言葉を遮って、再度、楓を抱く腕に力を込める。
「もうそういう心配しなくて、いいから! 無理しなくていいから! 荒野さんだって認めてくれているし……」
「……香也様は?」
 ぽつり、と、楓が呟く。
「……香也様ご自身は、どうなんですか? わたしのこと、どう思っているんですか?」
「いてよ! ここに居てよ! このままずっと側に居てくれよ!」
 楓は、しばらく目をパチクリしていたが、すぐになにか気づいたような顔をして、
「……えへ。えへへへ……」
 と、照れたような笑いを顔に浮かべはじめた。

『…………馬鹿らし……』
 強制的に一部始終を見せつけられた才賀孫子は、呆れるよりほかしようがなかった。

 またまた、狩野家の居間。
「そうそう。もうすぐクリスマスでしょ? パーティー・グッズの売り場でね、茅ちゃんが物欲しそーにみていたから、こういうの買ってみたの!」
 ぽん、と手を叩いてそういった狩野真理は、買い物袋の中からあるアイテムを取り出す。
 カチューシャ……なわけだが、かなり特殊な装飾がなされている。
「……ね、ね、ね……」
 狩野真理が取り出したアイテムの正体を察知した三島百合香と羽生譲の間に戦慄が走る。
「……猫耳装備だとぉ!」
「隊長、凶悪です! これはかなりキます! キすぎます!」
「餅つけ! じゃなかった落ち着け! こうなればもはや吶喊あるのみである!

 ……さー、茅ちゃん、今度はこの可愛いのをつけて、食べてみよう」
 この時、ピンポーン、と、インターホンが鳴り響いた。
「ごめんください。
 こちらにお世話になっている、松島楓の縁者ですが」
 どうもどうも。初めまして。お世話になっております。などの社交辞令大会を玄関先で真理と開催しはじめる。
 一通りに挨拶が終わると、
「つまらないものですが」
 といって、加納涼治は菓子折を差し出す。
 この近辺では一番の味、という定評のある洋菓子屋「マンドゴドラ」の、ケーキの詰め合わせだった。

『……それ以上はいくなよ……いくんじゃないぞ……』
 という才賀孫子の願いも虚しく……。
「……香也様の、大きくなってる……」
 松島楓は、密着している加納香也の股間をなでさすりはじめた。
「……香也様のここ、きつそう……今、楽にしてあげますからねー……」
 じじじ、と、ことさらゆっくりと、香也のジッパーをおろしはじめる。
「っちょ、っちょっと、楓ちゃん……こんな所で……」
 香也も口では一応そういうが、楓の行動を本気で阻止しようとはしない。
「いいじゃないですかぁ。結局、あれから全然触ってくれませんしぃ、わたし、こんなことくらいしか香也様にできることありませんしぃ……」
 楓は鼻にかかった声でそういって、開けたジッパーの中に指をいれ、下着越しに香也の膨らんだ部分を刺激しはじめる。
「……それとも、こういうことする女の子、香也様はお嫌いですかぁ……」
 強制的に見せつけられている形の才賀孫子は、楓の媚態に眉をひそめたくなった。同性として、『そこまで媚びへつらわなくていいだろ』とさえ、思う。
 楓がいよいよ下着をかきわけて香也の男根を外に出しはじめたため、才賀孫子は、できるだけその辺を見ないように眼球を動かした。今の才賀孫子には、目を反らすことさえ、許されていない。
 他人のこういうシーンを目の当たりにし、しかもそこから逃げられない、という、この屈辱。なるべく見ないようにしていても、ぴちゃぴちゃという水音が聞こえはじめれば、二人がなにをしはじめたのかは判然としているわけで……。
 屈辱ではあったが、それ以上に、いたたまれないような気持ちになった。
 そのうち水音や押し殺したあえぎ声の中に、「衣擦れの音」までが混じりはじめる。をいをいをい、と、賀孫子は思う。やるのか。本当にここではじめるのか。
 なるべくそちらのほうから目を反らそうと努力しても、目を閉じられない以上、そんな努力に限界があることなど自明のことなわけで。視界の隅にはそれなりの映像が入るわけで、二人がお互いの服を脱がしあいはじめた、ということは、やはり判然としている。
『…………お前ら、わたしのこと、すっかり忘れているだろ……』

 もちろん、加納香也と松島楓は、才賀孫子の存在など脳裏からすっかり押しやって、二人だけの世界に没頭しはじめていた。
 いや、おぼえたてだし。

[つづき]
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髪長姫は最後に笑う。 第一章(18)

第一章 「行為と好意」(18)

「あはは。荒野君の、すっごく元気ー」
 避妊具の包みを片手に帰ってきた未樹は、そのまま荒野の目に跪き、股間に顔を近づける。照れ隠し半分、おどけた調子で、そういう。
 片手でそっとつかみ、先端に口づけをすると、荒野は「うっ」とうめいた。
 敏感だ、と、未樹は思った。

 未樹はよく遊んでいるようにみられるが、その実、本人もいうように男性には奥手のほうで、援助の経験もないし、「経験した人数」と「つき合った男性の数」がぴったっり一致する。自分から迫ったのは荒野が初めてだし、迫られても、気に入らない、つまり、長くつき合えそうにない男とは、絶対に、関係しない。
 だから、男を喜ばせるテクも、実はあまりよく知らない。

『……でも……』
 未樹は思う。
『今日は、初めての子を教えるおねーさんだからなー』
 多少、無理をして背伸びしても、荒野のいい思い出になりたい、とは、思っている。

 できればこのまま荒野とつき合いたいのだが、茅と荒野の間に割り込んでうまくやっていく自信は、なかった。
 自信、といっても容姿などの表層的なことではなく、あの二人の間だけに漂う、濃厚な空気の中に、自分が入り込む隙はないように思えたのだ。
 未樹は、ことあるごとに「自分はバカだから」という意味のことを、いう。口癖のようなもものだ。弟の大樹も、ここ数年はその口癖を受け継いでいる。未樹の、学校時代の成績がわるかったのは事実だ。が、それ以上に、未樹は、物事を論理的に解析する習慣がなかった。ほとんど、必要なかったからだ。
 未樹は人の表情を読むのがうまく、対人関係での悩みを抱えることがほとんどなかった。誰に、どのように接すればうまくいくのか、ほとんど直感的に「わかる」。だから、理屈をこねて物事を考える習慣も、自然、身に付かなかった。
 学校の勉強だけではなく、ニュースや新聞で取り上げるような政治や経済などの話題にも、未樹は全然興味がわかなかったし、顔見知りの友人や知人たちの間だけで完結している「未樹の世界」では、正確に相手の望むことを察することができる感受性と観察力、それに洞察力があれば、たとえ「バカ」であっても、全然不自由することはなかった。
 だから、未樹は、物事を理屈で考えることをやめ、自分の勘と感受性のみを指針に生き続け、「わたし、バカだから」と口癖のようにいう。その口癖のままに、自己認識をしている。
 しかし、それは別に卑下しているわけではなく、「わたし、バカ」なままでも、未樹は、容易に、ほぼ「正解」に近い選択をし続けていることも、自覚している。
 そんなようなわけで、未樹は、今までの経験から、「わたし、バカ」のままでいいと、思っている。

 その、だいたいにおいて、的確な選択を告げる未樹の本能が、荒野に男性を感じている未樹の好意を押しのけて、「荒野たちにはあまり深入りするな」と、告げていた。警鐘、といってもいい。
 だから、たぶん、荒野とは、これっきりの関係だろう、と、未樹は思っている。

 同時に、「荒野には、いい女として記憶されたい」という欲も、ある。女としての見栄、なのかも、知れない。
 そんな理由で、未樹は、普段つき合っている同年代の同性の友人たちよりは、格段に少ない性体験の記憶を総動員して、荒野を喜ばせようとしている。

 もっとも未樹自身は、以上のようなロジックを明確に意識化することはなく、ぼんやりと、いつも通りに「すべきだと思うこと」を行っているだけなのだが。

 そうした、「表面的なシンプルさ」を持ち、半ば本能的に自分の行動を選択する未樹のような人間は、今まで荒野の周りにはいないタイプだった。
 だから荒野は、異性として、という以前に、人間として未樹に興味を持っている。
 で、ありながらも、肌を密着させ、愛撫し、こうして自分の性器がなま暖かい口の粘膜に包まれれば、荒野の男性の部分は否応もなく反応すし、未樹を「女性」としか認識しようとしない。
 荒野の男性器に対する、未樹の口による愛撫は、正直、特に気持ちが良いというわけではなかった。
 が、未樹が荒野に一方的に奉仕する格好をとることで、荒野の中に休眠していた征服欲が、満足する。荒野を喜ばせようと懸命になっている未樹の姿をみて、荒野は、初めて自分にも「他人を服従させようという倒錯的な欲望」があることを、認めた。
『なるほど……』
 荒野は思った。
『単純に、皮膚同士を刺激しあうだけの動物的な行為、なのではなく、もっと複合的な、心理ゲーム的な要素も含んでいるわけか……』
 それなら、世の大人たちが、性行為にあれほどの時間と労力を裂くのも、わかるような気がする……。

 一見、いつも無邪気な笑顔を浮かべている荒野という少年には、そうした分析的な思考を弄ぶ面も、多分にあった。未樹の「表面的なシンプルさ」とは対局にある資質で、茅の存在さえなかったら、いや、茅よりも前に荒野と未樹が知り合っていたら、案外いいカップルになっていたかも知れない。

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彼女はくノ一! 第二話 (3)

第二話 ライバルはゴスロリ・スナイパー!?(3)

 狩野香也はキャンバスに向かい、高速度で筆を動かしている。香也の脳裏には、配色や筆遣いなどの細かい部分まで、今描いている絵の完成図がくっきりとイメージできていて、それを現実に出現させるための最速、最短の手順を踏んでいる。香也自身の感覚としては、「創作」というよりは、「リピート」に近い。香也の頭は、漠然とした予想図ではなく、完成した絵と、それを完成するためにの具体的な手順が微細に「見えて」いて、その手順を身体的に再現しているだけだからだ。
 だから、今の香也の筆捌きには迷いはない。端から見れば大胆にもぞんざいにも見えるダイナミックな動作で絵の具をキャンバスになすりつけている。
 こういう時の香也の集中力は半端なものではなく、完全に自分の世界に没頭している。宗教的な「無我の境地」の感覚に近いものが、あるのかもしれない。こうした、自分自身の存在さえ意識の外に置くまでの極端な集中が、香也は嫌いではない。いや、こういう時間があるから、今まで絵を描いていられたのだとさえ、思う。こういう、「自分を忘れられる時間」があれば、こそ……。

 狩野香也は、自分なんかいなくなってしまえばいい、と思うほどには、自分が嫌いだった……。

「香也様!」
 そうした、香也にとっては貴重な無我の時間を破る、乱入者があった。
 みれば、入り口から、なにか「人らしきもの」を抱えた松島楓が、入っていくる。楓は香也にいった。
「ここに香也様を狙撃しようとした不逞の輩がいます! この女、いかように始末をつけてやりましょうか!」
 この少女らしくもなく、可愛い顔に、怒気と殺気をありありとうかべ、凶悪な表情を形作っていた。

 当然のことながら、突然楓にそういわれても、子細がよく理解できない香也は、しばらく手を止めて、ぽかんと口を開いていた。

「まあまあ。楓ちゃん、ちょっと落ち着いて。深呼吸。
 あ。今お茶でも淹れるから……」
 お茶といっても、安物のティーバックをマグカップに放り込み、ガスストーブの上に置きっぱなしにしている薬罐のお湯を注ぐだけの代物なのだが。
「あ。それ、わたしがやりますぅ」
 香也が椅子から立とうとすると、楓は香也を手で制して、「持参」してきた才賀孫子の体を空いた椅子の上に座らせる。さすがに学校まではついていかないが、楓は、香也が家にいる時間のほとんど、香也にくっついてまっわっていたので、香也が居ることの多いこのプレパブの中の物の配置も、ほぼ把握しつつある。
 慌ててマグカップを二つ取りだし、お茶の準備をはじめた楓に、香也が声をかける。
「カップ、もう一つ。この子の分も。で、この子が、どうしたって?」
 なにやら「狙撃」とかいうような不穏な単語を聞いたような気がするが、きっと香也の気のせいだろう……。なにせ香也は、財政界の重鎮でもなんでもない、一介の青二才、平凡な学生である。
 そんな自分をわざわざ亡き者にしようとする者がいる、という非現実的な現象を、すんなり事実として受け入れられるわけがない。
「そうそう。大変なんです、香也様! この女が、お隣りのマンションから香也様を狙撃しようとしていたんです! 加納様が未然に防いでくださったからいいようなものの……」
「加納様、というと、もう一人の荒野さんね……うーん……。彼がそういったんなら、ガセではないんだろうなぁ……でもなあ……ぼく、わざわざそんな狙撃をされるような、大物じゃないぞ?
 ね。どうしてそんなことをしたのか、その辺の事情をこの子に直接聞いてみない?」
「甘いです! 甘過ぎます! この女、香也様を亡き者にしようとしていたんですよ! 今は自由にするべきではありません! そんなにこの女と話したいんですか? わたしのことは避けているのに! 香也様、冷たいです! 冷たすぎます!」
 興奮した楓に詰め寄られ、香也は内心でけっこう取り乱した。楓の剣幕も、前半と後半とでは微妙に趣旨が違っている。後半の部分は、下手に突くと香也自身の身に火の粉が降りかかってきそうな気がした。
「まままま。落ち着いて落ち着いて。楓ちゃん」
 内心の動揺を隠しながら、それでも香也は楓を制しようとする。もともと、絵を描くこと以外には、とても不器用な少年なのである。
「とにかく、もっと詳しい事情、聞かせてよ」
「知りません!」
 楓は、ぷいっと横を向いてしまう。
「あー。楓ちゃんが詳しいこと知らないんなら、この子に聞こうよ……」
「そんなにこの女と話しがしたいんですか? 香也様!」
 楓は、泣きそうな顔をして、傍らに座らせた才賀孫子を指さす。
 その楓の動作をたどって、初めて、香也は身動きできない才賀孫子をまじまじとみる。
『人形みたいな子だな』
 というのが、香也の第一印象だった。加納茅が日本人形なら、この子は西洋風のアンティーク・ドールだ。

 その頃、狩野家の内部では……。
「いやー、こいつ。甘いもんを食べるときは、顔が変わるんですよ……」
 荒野のその言葉が発端となり、ケーキを前にした加納茅を取り囲み、その他の面々が固唾を呑んで見守っていた。
 自分の表情が激変する、という自覚を持たない加納茅は、しばらく周囲を不思議そうに見渡していたが、目前に置かれたケーキの誘惑には対抗できなかったらしく、ケーキをフォークで切り分け、その欠片を口のなかに入れた。
 途端、茅の顔が、蕩けるように笑み崩れる。
「萌えだ! これこそ萌えだ!」
「写メ、いや、デジカメ、いや、ビデオを持ってこい!」
「茅ちゃん今日からうちの子になっちゃいなさい是非そうしなさい!」
 一斉に歓声をあげる女性陣を、茅は、再びきょとんとした顔をして見渡していた。

 再び、プレハブ内。
「どうせ香也様はわたしのことなんてなんとも思ってないし、どうでもいいんですよね!」
 いつの間にか、加納香也は松島楓に詰め寄られている。
『……なんでそうなるのか……』
 と、このような立場に置かれた男性が一様に感じる理不尽さを、この時の加納香也も感じていた。
「……いや、だから、あの、それはねえ……」
 香也は、しどろもどろになりながらも、それでも懸命に抗弁しようとする。
「別に楓ちゃんのことが嫌いだとかそういうことではなくてだね、ああいう始まり方ってすっごく不自然でしょ? だからね、ちょっと距離を置いて……」
「そうです。わたしが半ば無理矢理香也様を誘惑したんですでもだからといってそんなに露骨に嫌わなくても……」
「だから!」
 温厚……というより、普段、あまり感情を表に出さない香也も、楓のききわけのなさに、半ばキレかかっている。
「好きか嫌いかっていったら、好きだって! 嫌う要素ないし! どんな形であれ、楓ちゃんみたいに可愛い子に言い寄られたら、そりゃ悪い気しないよ! でもね……」
「じゃあ!」
 香也の言葉を強引に中断させ、楓は香也ににじり寄った。
「じゃあ、そのことをちゃんと、証明してください。信じさせてください!」
 楓は、香也との距離を詰めていく。

『……なんなの……こいつら……』
 荒野に針をうたれ、身動きできないまま放置され、強制的に痴話喧嘩を見せつけられた才賀孫子は、ただひさすら呆れかえっていた。

[つづき]
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髪長姫は最後に笑う。 第一章(17)

第一章 「行為と好意」(17)

 生まれたままの姿になった荒野と未樹は、もつれ合うようにして、ベッドの上に倒れ込んだ。未樹の体は熱く、あくまで柔らかく、本能に任せただけの、荒野の乱暴な愛撫を受け入れる。未樹が「荒野を受け入れる」と宣言をしたことで、荒野に火が着いたようだ。荒野は、普段は理性で封じている自分の牡の部分を解放し、欲望をたたきつけるように、未樹の体をまさぐり、もみしだき、舌をはわせ、噛む。
 荒野は。自分でも、自分がなにをしているのか、よく自覚していなかった。
「好きにしていい、っていったけど……」
 荒野の愛撫を受け入れている未樹は、最初痛がっていたが、すぐに甘い喘ぎを漏らしてはじめた。
「……ん……できれば、もうちょっと優しくしてほしい……」
「ごめん、未樹さん」
 荒野の息も、荒い。
「おれ、とまんない」

 裸になって抱き合ってみると、一見して細い荒野の体はしなやかな、弾力のある筋肉の塊で、今まで未樹が知ってきた男たちの、無駄に脂肪がついた体とはまるで違っていた。未樹は弟の大樹から聞いた荒野についての噂には、あまり信憑性を感じていなかったが、長い年月に渡り、かなり鍛え込んだ体だということは、納得できる。
 そのしなやかな体が、未樹の上に乗りかかって、鼻息を荒くして、未樹の体を蹂躙しようとしている……。
 普段の荒野からはあまり感じられない荒々しさに、未樹は期待と不安を感じ、打ちふるえた。
 荒野が指や口や舌で触れる箇所が、まるで火がついたかのように熱を持っていくのを感じる。
 気づくと、「あ」とか「ん」とか、自分が鼻にかかった声を出しているのを、聞いてしまう。
 ……声を出している自覚はないのに……。
 そう思いながらも、未樹は、荒野の体に腕をまわして、自分の体を押しつけるように抱きしめてしまう。そうして密着すると、股間にいきりたった荒野自身を感じる。
『……わたし、はしたない……。』
 そう思いながらも、未樹は、荒野の膨らみに自分の女性器をすりつけるようにして、腰を動かしてしまう。「ん、ん、ん」という、自分の声が聞こえる。
『……いやらしい声。わたし、欲しがっている……。』
 どんどん乱れていく自分をごまかすように、未樹は荒野の首筋に食らいつく。歯こそたてなかたが、強めに口唇を押しつけて、口と舌を這わせて、荒野の肌に唾液をすりつける。荒野の体に回した腕に力を込め、荒野の胸板に、自分の乳房を押しつけ、上下に擦りつける。さらに、密着している腰の動きを早める。ちゃ、ちゃ、ちゃ、と濡れた音がする。上から擦りつけているだけなのに、未樹のものはすっかり濡れている。未樹の分泌した液に濡れた荒野の硬いものが、未樹の茂みをかき分けながら、動く。そうして腰を密着して動かすと、時折、荒野の熱い先端が自分の敏感に触れて、悲鳴のような声を上げて体を震わせてしまう。
「……いやぁ。……はぁ。……ふぁ」
 知らずに、声をあげている。
 あああ。わたし、どんどんいやらしくなっている……。未樹の中の、まだしも冷静な部分が、そう思う。
 上に乗っていた荒野が、なにか堪えきれなくなったのか、密着していた未樹の体から上体を引き剥がし、未樹の乳房を両手で鷲掴みにして、ベッド押しつけ、揉みしだく。揉む力が強すぎて、痛い。それ以上に、体が離れたことにより、せっかく高まりつつあった一体感が無理に中断されたような気がして、未樹は、かなり不満を覚えた。
 しかし、荒野が激しく腰を大きくグラインドさせはじめると、そうした不満はこみ上げてくる快楽に押しやられて、霧散してしまう。逞しい荒野のものが、未樹の裂け目の襞を左右に押し分け、激しく動くと、未樹は堪えようもなく声を漏らしてしまう。
 そんな自分の反応がいやで、はずかしくて、首を左右にふる。
「いやぁ。いやぁ。いやぁ」
 と、自分が上げているいやらしい声を、他人のもののように聞く。
 ふと気づくと、荒野が、じっと自分の顔を見ていることに気づく。
 いたたまれなさに近い羞恥を感じて、激しく動いて自分をこんなに感じさせながらも、余裕があるように見える荒野のことが憎くなる。頬を叩きたい、噛みついてやりたい、という衝動に駆られる。
 そうするかわりに、未樹は、荒野の背中に爪をたてた。
 下になっている未樹の体重をかけ、爪先に体重をかけるようにして、ぎ、ぎ、ぎ、と動かしてやる。荒野の背中には、数条のミミズ腫れができているはずだ。
「……うっ」
 と顔を顰めて、荒野は、一瞬、動きを止める。
「荒野君、うますぎ」
 その機を逃さず、未樹は、吐き捨てるように、いう。
「……本当に初めて? 本当はぶいぶいいわせているんじゃないの?」
「本当、これが初めて」
 荒野は苦笑いをしていた。
「……未樹さん、背中痛いよ……」
「我慢しなさい、それくらい。こんないい女とやれるんだから」
 未樹がそういうと、荒野が、ぷっ、と吹き出す。
『……むっ……』
「なんでそこで笑うかな……。
 ……ここでやめちゃって、いい?」
「あ、ごめん! 嘘、これ、嘘! 本当は未樹さん、さいこー! お願いだからもっとやらせて!」
 二人で顔を見合わせて、次の瞬間、二人でけたけた笑い出す。
「もー。笑わせないでよ。せっかく盛り上がってきたのにぃ」
 未樹の本音をいえば、このまま継続すると、挿入前に荒野より自分のほうが先に達してしまうそうだった。だから、ここいらでちょっと息継ぎができたことは、かえって都合がよい。
 が、もちろん、そんな未樹の本音は、荒野には悟らせない。
 やはり、年上の大人の女としては、初めての男の子をリードして上げねばならない、と、未樹は思っている。
「本当、ごめん、未樹さん。なんか、リラックスしちゃって」
「んー……いや、いいんだけどね。やるんなら、もうちょっと真剣にやってほしいかなーって……。ん。そうだ。荒野君、初めてならお口でされたことないでしょ? おねーさんがやってあげようかー」
『……そう。いろいろ教えて上げるから……』
 そう思いながら、未樹は、一旦ベッドから離れて、バッグの中に常備している避妊具を取りに向かった。

[つづき]
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彼女はくノ一! 第二話 (2)

第二話 ライバルはゴスロリ・スナイパー!?(2)

「……あ、……ああ……」
 仁王立ちになっている松島楓に半ば気圧されながら、加納荒野は、屋上からこの家を望んだときの情景と、今や才賀の者を判明した少女をとらえた時点で、この家にいた人々の配置を思い返す。
 狩野真理、松島楓……不在。
 羽生譲、三島百合香……この居間。ただし、マンション側には窓がないため、狙撃は不可能。
 狩野香也……庭にある、アトリエ代わりのプレハブに。
 どう考えてみても、事実上、あの時点で狙撃の対象となりうるのは、「狩野香也」しか該当しない。
「やっぱ、他には考えられないな……絵を描くほうの、香也君だ」
 音だけとはいえ、自分と同名の他人が身近にいる、ということは、これではなにかと面倒くさい。

 そのことを確認すると、楓は膝をついて、荒野に向かって平伏した。
「なにとぞ……」
 平伏しながら、楓はいった。やるかたのない憤懣が、声から滲みでている。
「……この女の身柄を、こちらに引き渡して頂きたく。
 香也様を害しようとする者は、この楓が許しません!」

『……うわぁあ……怒っているよ、くノ一ちゃん、ガチでめっちゃ怒ってるよ!……』
『……愛だな、これは……しかし、くノ一ちゃん、本気で怒るとすっげぇー迫力あんのな……今度から、あまりからかわないようにしよう……』
 羽生譲と三島百合香の外野コンビは、急激に緊迫したその場の空気に耐えきれなくなったのか、こそこそと内緒話しをしはじめる。

「……うーん……」
 一人、相変わらずくつろいだ様子の香也は、少し考え込んだ。
「才賀のおっさんも、こっちでお仕置きしてやれ、とかいってたからなあ……。
 狙撃、というのはやはりちょっとしゃれにならんから、楓に任せてもいいかなぁ……。
 あ。でも、痛いの禁止な。暴力、駄目。いじめかっこわるい。
 あとは……そうそう。もう一人の香也君の監督を仰いで、彼がいい、という範囲内で、行いなさい」
 荒野は、もう一人の香也の、ぽややーんとした緊張感のかけらもない顔を思い浮かべる。彼なら、そんな酷いことはさせないだろうし、楓も、彼のいうことは聞くだろう。
 ……と、その時は、そう判断した。そう判断したことを、荒野は後になって後悔することになる。

「はっ! では、失礼します!」
 いうが早いか、楓は、畳の上に転がったままの才賀孫子の体を軽々と抱えて、玄関のほうに遁走した。狩野香也がいるプレハブへ、と、向かったのだろう。

「あれ、楓ちゃん?」
 入れ違いに、狩野真理と加納茅が入ってきた。
「ね、今、すっごい勢いで出ていったの、楓ちゃんじゃなかった? なんか、大きな黒い物体を抱えていたようだけど……」
 羽生譲と三島百合香は、真理の質問に答える気力がなかった。それ以前に、「ゴシックロリータ・ファッションのスナイパー」の正体についてよくわかっていないので、説明のしようがなかった。
 全ての事情に通じている荒野は、素知らぬ顔で自分でいれたお茶を飲んでいる。
「それよりも奥さん。
 なんか、うちのじじいの知り合いが、こちらに来るって」
「加納君のお爺さま……の、お知り合い?」
 当然のことながら、真理は、首を傾げた。
「家なんかになにのご用なのかしら?」
「……うーん。
 実は、そのじじいの知り合い……才賀のじっちゃんの姪御さん、ってのが、その……今、楓が抱えていった、黒い塊なんだ」
 真理の目が、点になった。

 荒野が真理に経緯を説明しようと口を開きかけた、ちょうどその時、……。
 荒野の携帯が、鳴った。
「げっ。じじい!」
 携帯の液晶を確認した荒野が叫ぶ。
「なんだってこのタイミングで……」
 ぶつくさいいながらも、出る。
「はい。こちら加納荒野。狩野さん宅でくつろがせていただいている最中であります!」
『こちら加納涼治。くつろぎ中悪いな。今才賀から連絡があった。あそこの娘がなんか粗相をしたそうじゃないか。奴も今からそちらに謝りにいくと息巻いていたぞ』
「……そうっすけど……」
 荒野の目つきがうろんなものになる。なにを言い出しているのか、このじじいは。
 第一、「謝りにいく」と「息巻く」が同じ文章内に混在しているのは、おかしくね?
『わしもな、今ちょうど税務関係の処理をしにこっちの市に出ていた所でな。
 もともとそちらの加納家には一度ご挨拶に伺おうと思っていた所だし、久々に才賀の顔や茅の顔もみてみたいし……』
 ……をいをいをい……。
 荒野は、その場で頭を抱え込みたくなった。
 ……なんで、あんたらみたいなVIPが、こんな平々凡々たる民家で顔をつつきあわせなけりゃならんのか……。
『そういうわけだから、今からわしもそちらに向かう。
 そう、真理さんにお伝えしておいてくれ。
 それから、荒野。逃げるなよ。あと、寿司くらいとっておけ』
 涼治はいいたいことだけをいうと、一方的に通話を切った。
 荒野は、二、三秒手元の携帯電話を見つめてから、
「……真理さん、うちのじじいも、これからこっち来るって……挨拶がしたいし、才賀のじっちゃんにも会いたいって……」
 その時の荒野の声は、見事に棒読みだった。
「加納涼治」は、荒野が苦手意識を持つ、例外的な存在だった。
「え? 荒野君のおじいさんが? いけない! なにか準備しないと!」
 荒野は、はははは、と、乾いた笑い声を上げた。
「えー。うちのじじいからの伝言です。『寿司でもとっとけ』って。
 どうせじじいの払いですから、ぱーっと特上、気前良く頼んじゃいましょう」
「……そ、そう? ……今、ケーキ買ってきたし、みんな揃っているからお茶にしようかと思ってたんだけど……え。なに? 茅ちゃん?」
「……ケーキ、食べるの」
 それまで我関せず、という感じでぼうっと突っ立ていた加納茅が、狩野真理の服を引っ張って、珍しく自己主張をしていた。
「ケーキと他の食べ物は、別なの……」

[つづく]
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髪長姫は最後に笑う。 第一章(16)

第一章 「行為と好意」(16)

 口唇が、重なった。
 荒野はキスが挨拶代わりの文化圏にも何年か滞在したことがある。そのため、口唇の感触よりも、体全体を荒野に預けるようにしてしなだれかかってくる、未樹の感触のほうに、心を奪われた。
 表層の部分はあくまで柔らかく、それでいて、芯になにかどっしりとしたものが詰まっているような、未樹の体。押しつけられる乳房と、少し固く感じる、乳房を包む下着の感触。未樹の体臭……。
 そういった雑多な情報が荒野の脳裏でスパークし、荒野の身動きを封じる。

 荒野のものか、未樹のものなのか、心音だけが、やけにうるさく聞こえた。

 無反応の荒野には構わず、未樹は腕を荒野の首に回し、荒野の口を割って舌を差し込みながら、さらに体重をかけて、荒野の体をベッドの上に押し倒す。押し倒した荒野の体をまさぐりながら、荒野の舌を、自分の舌で弄ぶ。
 顔に感じる、未樹の吐息が、熱い。

「……もう……」
 しばらく荒野の口の中を舌でかき回した後、未樹は少し顔を離し、荒野の首に抱きつくような姿勢で、上目遣いに荒野を見上げた。
「わたしだって、恥ずかしいんだぞ……荒野君も、なにかやってよ……」
 未樹の声には、甘えるような響きが籠もっている。
「……な、なにかって、……その……」
 荒野の声は、うわずっていた。
「だって、おれ、……こういうの初めてで、その……」
「嘘ぉ!」
 未樹は少し上体を上げ、目を見開いて驚いた。
「え? 本当なの? 荒野君、落ち着いて見えるし、そのルックスだから、てっきりもうやりたい放題だったかと……」
 といって、自分の掌で口をふさぐ。
「い、いや……」
 荒野は、苦笑するしかなかった。
「……おれ、今まで、そんなことしている暇なんか、なかったっすよ……」
 荒野は、今まで荒野が関わってきた「仕事」の数々をサーチする。
 それらは大抵の場合、人を騙し、陥れ、場合によっては、間接的直接的に死に至らしめる……「ダーティ・ワーク」、だった。
 今、荒野に抱きついている未樹と自分とでは、所詮別世界の人間なんだな、と、改めて、荒野は感じ、泣きたいような気分になった。
 これだけ近くにいて、密着していても……住んでいる世界は、こんなに違う……。
「だから、ほら、そんな寂しそうな笑い方しないの」
 未樹は、荒野の頬の両側を、むにっ、と掴む。
「君が今までどういう生活送ってきたか、わたしは知らないし、詮索するつもりもない。
 わたしの知っている荒野君は、わたしより少し背が高くて、綺麗な銀髪で、ちょっとワイルドな感じのするかっこいい男の子。
 あと、そうね、君……茅ちゃんと一緒に居るときが、一番、活き活きしてた……」
 未樹は目を伏せて、荒野の上に仰向けに寝そべったまま、もぞもぞと身動きした。
「……そう、なんだよね……。
 君、荒野君さ、わたしが好きなのは、茅ちゃんの隣で屈託なく笑っている荒野君で、でも、荒野君は、わたしと一緒にいるときはそういう顔全然見せてくれなくて……。
 ……でもでも、それだけで引き下がるのは悔しいから、荒野君がまだだったら……荒野君の初めて、わたしが奪っちゃおう……うん」
 未樹は荒野のベルトに手をのばし、バックルをはずしはじめた。
「勘違いしないでね。わたし、誰にでもこういうことするわけではないし、一回したからって、付きまとったりもしないから。
 うん。荒野君の一番にはなれなくても、初めてには、なれる、か……」
「……未樹さん、おれには、そんな資格……」
 人に好かれるような資格……。
「だから、そういう面倒なこと、いわない!」
 未樹は、少し怒った顔をして、荒野に顔を近づけて、睨む。
「わたし、バカだから、そういう難しいことごちゃごちゃ言われてもよくわからない! わたしが君のこと好きで、やりたいからやるの! こっちから誘っているの! 君がいやなら拒絶すればいいし、拒絶しないのなら一緒に楽しめばいい。荒野君、難しく考えすぎ! それともなに? わたしって、そんな魅力ない? 一回だけの相手でも、駄目なの?」
 荒野は、言葉を失った。
「それに、ほら、君のここは、こんなにやりたがっているし……」
 そういって、未樹は、ジーンズの布越しに荒野の硬直を、挑発するように、まさぐる。
「……もう……。
 荒野君の体に、肌全体に、おねーさんの感触刻み込んで、一生忘れられないようにしてやるんだからぁ……」
 抵抗しない荒野をみて、受け入れられた、と判断したのか、未樹は大胆に荒野の着衣をはぎ取っていく。
「うん。
 わたしだって、遊んでいるように見えるかもしれないけど、そんなに経験豊富ってわけではないから。
 でも、それなりに頑張ってみる。
 わたし、バカだけど、今だけは、君の、荒野君の初めての相手としてふさわしい女になる。そう、努力する」
 そういって、手早く自分の服も脱ぎはじめた。

[つづき]
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彼女はくノ一! 第二話 (1)

第二話 ライバルはゴスロリ・スナイパー!?(1)

 だいたい同時刻。
「んでな、くノ一ちゃんが、こう、あたりに響きわたるような大声でな、
『ええええー?』
 とか叫んでな……」
 加納家の居間では、加納家の居候、羽生譲が、炬燵に差し向かいになって座っている三島百合香に、身振り手振りで『くノ一ちゃん、自分の勘違いを悟る、の場』を熱演つきで説明していた。
「……ほう……。それは惜しい場面を見逃した……」
「……っていうか、センセ。
 あんた、くノ一ちゃんがそういう勘違いしてたって気づいていて、わざと放っておいただろ?
 聞けば、カッコいいほうの荒野君の関係者だっていうじゃないか」
 羽生譲は「加納荒野」のことを「狩野香也」と区別するため、「カッコいいほうの荒野君」と呼ぶ。「狩野香也」のことは、単なる「こうやくん」ないしは「うちのこーちゃん」である。
「いや、それは、ほれ、アレだろ……。
 ……だってそのほうが、面白いじゃないか」
 三島百合香の返答は、聞いてみれば呆れかえる類のものだったが、実に明晰だった。
「みてて面白かったろ? ん?」

 ……そういい切られてしまえば、羽生譲のほうも、反論はできない……。

「くノ一ちゃん」こと松島楓が「加納荒野の元に赴き、従え」という指示の元、この家にたどり着き、たまたまそこにいた、音だけは同名の「狩野香也」のことを、「加納荒野」だと勘違いしていた。
 それだけならまだしも、どうやら香也と楓は、その日のうちに抜き差しならない関係になってしまった……らしい。
「らしい」、というのは、本人たちが固く口を閉ざし、詳細については誰にも話そうとしないからだが……あの夜以来、楓がぴったりと香也に張り付いて離れようとしないことから考えても、かなり正確に予測がつく。

 松島楓が狩野香也の元を離れたくない、という意志を、加納荒野に伝える場面も、羽生譲は目撃していた。なんのことはない。楓の勘違いが発覚した直後、この炬燵で行われた会談なのだ。

「うん。いいよ」
 一応、松島楓の主筋にあたる加納荒野は炬燵の中に手足をいれ、背を丸めた姿勢で、楓の要望を気軽に、あっさりと受けいれた。
「……ってえか、おれ、今、手の掛かるお子さま一人抱えているから、正直そっちの面倒までみてらんねーや。
 じじいが金だしてお膳立てしくれる、っていうんなら、素直にそれにのっちまえば。
 あ。でも、茅と同じ年頃の女の子の助けは、やはり借りたいときあるから、そういうときだけは手を貸してくれ。そんときは、声かけるから」
 という次第で、あれ以来、松島楓は、狩野家に同居している。

「……まあ、その『カッコいい』のほうも、それなりにイロイロ苦労してるからなぁ……」
 なぜか、三島百合香はしみじみと実感のこもった口調で呟き、ため息をついた。
「たしかにアレも、今はこっちのほうまで面倒みている余裕ないだろ。精神的に……」
「それって、あのお人形ちゃんな妹さんのことっすか? センセ」
「まあ、なあ……。
 こっちもアレ、いろいろと事情があるんだよ。詳しくはいえないけど……」

 あの晩から何日かすぎて、週末を迎えた今日。
 狩野真理は、朝から、「くノ一ちゃん」の松島楓、「あのお人形ちゃんな妹」の加納茅の二人を連れて、彼女たちの服を買いに行っている。
 狩野家の主婦、狩野真理は、
「前から女の子が欲しかったのよー。それも、こんな可愛い子が一遍に二人もなんて夢みたいー」
 と、朝から浮かれ気味に張り切っていた。必要経費は加納家持ち、ということも「浮かれ気味」になる原因になっているのだろうが。

 そんなわけで、留守を守る女二人が、週末の昼下がり、炬燵でお茶をすすっている。この二人に限り、「行くところないのか」ないしは「会いに行く男いないのか」ないしは「……寂しい」、という感想は、禁句である。
「ちわーっす」
 噂をすれば影。うわさ話の俎上にのっている一人でもある「カッコいいほうの」の声が、玄関のほうからした。
「おー。鍵あいているから、勝手にはいっちゃって。でも今、真理さんたち、留守。うちのこーちゃんに用事なら、プレハブのほうにいる」
「んじゃ、遠慮なくお邪魔します。
 ……って、なんだ。先生もいたのか」
 肩に担いでいた大きな荷物を、どさり、と無造作に畳の上に置き、加納荒野は炬燵に手足を押し込んで背を丸めた。
「いやー。やっぱ炬燵、いいっすねー。うちでも買おうかなー」
「『なんだ』で悪かったな……って、それよりも……」
 瞬時にくつろぎモードに移行した荒野に、三島百合香は、無造作に畳の上に放り出された「荷物」を指さしながら、質問した。
「……それよりも、一体なんなんだ、『コレ』は?」
「なんなんだって……スナイパー」
 淡々と答える荒野の声と、
「……ゴスロリ……」
 呆然と呟く羽生譲の声が重なった。

「いや、ついさっき、うちのマンションの屋上で捕まえたんだけどさ、この家を狙撃しようとしていたので、針うって身動き封じてこっちにあやまらせに来た」
 炬燵にあたって蜜柑の皮を剥きながら、加納荒野はことなげに事情を説明する。
「……狙撃……この恰好でかぁ!」
 身動きを封じられたスナイパー、才賀孫子は、目だけを動かして、叫び声を上げた三島百合香を睨んだ。『この恰好はわたくしの勝負服ですのよ!』と言いたいのだが、眼球以外の動きは封じられていて、当然、声も出ない。
「まあ、ファッションは個人の趣味だし。ちょっと待ってね、心当たりにこの子のこと確認してみるわ」
 加納荒野はジャケットのポケットから携帯電話を取り出し、どこかにかけ始めた。
「あー。どうも。そちらの会長さんに繋いで貰えます? いや、アポはありませんが、加納荒野が緊急の用件だと伝えていただければ……はい、はい。あ。どうもご無沙汰しております。加納家の荒野のです。用件はですね、うちの地所内で、どうもそちらでしか誂えないような特別製のライフル持った不審者を捕獲したのですが、ひょっとしてそちらの関係者ではないかと推察いたしまして、確認させていただきたく……。ええ。そっち方面のお仕事はもう何十年もなさっていらっしゃらない、というのは重々承知しております。でも、どうもみても彼女は、仕事ではないような……。ええ。そう。『彼女』、です。年齢はハイティーン、たぶん、十代半ば。身長は百六十強。体重は……ええと、推定はできるけど、今いっちゃっていいのかな? なんかゴテゴテとやたらに凝った髪型。アクセサリー類を多数装備。白と黒を基調とした、リボンとフリルをふんだんにあしらったフレアスカート。すっごく底の厚い、レーザーブーツ。基本的にメイクはしていないようですが、紫のルージュだけはひいています……。なんなら、写メ、送りましょうか? 必要ない? そうですか。姪御さんで……。ええ。そうでしょうねぇ……。こんな恰好で、特殊な高性能ライフルをもってて、VIPでもなんでもない一般人を狙撃しようとする人は、まあ、確かにそんなには、いないでしょうねぇ……。ええ? 今からこっちに来るんすか? いや、それは、今、姪御さんはこっちで拘束したんで身動きの取れない状態ですけど……それでいい? こっちでも仕置きしてやれ、って、そんな……いや、たしかに堅気の衆に銃口を向けるのはちょっとアレだと思いますけど……。
 って……切れた……」
 呆然と携帯電話を見つめる加納荒野に、
「加納様!」
 両手に大きな紙風呂を抱えた松島楓が、声をかけた。
 彼女は、まぎわらしいので「加納荒野」のことは「加納様」、「加納香也」のことは「香也様」と呼び分けている。
 通話に夢中になっている間に入ってきた、にしても、荒野に気取られずに近づく事ができる者は、そう多くはない。
「その女が、香也様を狙撃しようとした、というのは、本当でしょうか!」
 松島楓の表情は、この少女には似つかわしくなく、かなり殺気立った表情をしている。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(15)

第一章 「行為と好意」(15)

 日本の住宅事情に準じて狭い一軒家の二階部分を、兄弟の数に合わせて無理に三部屋に分けている、という観があり、その未樹の部屋も、当然のように狭い。お茶と急須が用意されたお盆は窓際のライティングデスクの上に置かれ、荒野と未樹は肩を並べるようにして、ベッドの上に腰掛けている。というより、ほかに身の置き所がない。
「ね、荒野君さ」
 荒野の動揺を知って知らずか、未樹は弄ぶように指先で軽く荒野の頬をなぞりながら、息がかかるほど、荒野の横に密着して、もたれかかるような姿勢で、荒野の耳元に囁く。
「いい機会だから、さ……。
 荒野君が今悩んでいることとか、おねーさんに話してみない?
 っていうか、君、茅ちゃんとは、ほんとに兄弟なの?
 全然似てないし、そんな雰囲気でもないし。無理に、とは言わないし、悩みを聞いたからっていっても、わたし、バカだから、あまり頼りにならないかも知れないけど……それでも……」
 ……それでも、話しを聞くことぐらいはできるんだよ。誰かに話すだけでも、気持ちが楽になること、あるよ……。
 と、未樹は続けた。

 ヤバイ、と、荒野は思った。

 荒野は早熟で、なおかつ、大抵の事は普通の大人よりも巧妙にやってのける器用さがあって、だから、早くから一族の者からも「一人前」として扱われ、仕事も任されてきた。
 こうして、無条件に好意を寄せられ、しかも、援助や助言の申し出を受けることには、全然、慣れていなかった。
 荒野は「常に頼りにされる側」、「誰かを助ける側」の人間であり……「自分から誰かに助けを求める」とか「誰かに心配される」という立場にたった経験が、ほんの子供の頃をのぞけば、ほとんどない。
 荒野は、誰かに気遣いをされる、ということに対して、まるで免疫がなかった。

 そんな荒野が、いきなり未樹に「心配」され……つまりそれは、未樹が、現在の荒野の状態をみて、「助けがいる」と判断したわけで……。

 荒野は、自分の顔に血がのぼり、頬が熱くなるのを、感じた。
 羞恥のためなのか、それとも他の原因なのかは、荒野自身もわからない。

「……お、おれ……」
 荒野は、この少年にしては珍しく、たどたどしい口調で、現在の自分の境遇をしゃべり出す。もちろん、一族のこととか、茅が育った特殊な境遇とかを除いた、未樹に話しても差し障りのない範囲内の情報を選択した上で、だが。
「……少し前、何ヶ月か前に、初めて茅にあって、茅のことは前から聞かされたけど、茅、おれの親父が育てた娘で、おれの親父、おれがお袋の腹の中にいるときに行方不明になってて……」
 未樹に話しても良い範囲、を頭の中で整理しながら、荒野自身と茅のことを、未樹に話していく。
 未樹はときどき質問を挟みながらも、基本的には辛抱強く、時に話題が前後し、混乱しがちな荒野の話しを、聞き続けた。たしかに、「未樹に話すことでなにかが解決する」、ということはなかったが、幾分か、荒野の心が軽くなったような気がした。心が軽くなったような気分を味わったことで、荒野は、自分がいかに現在の生活で心理的なストレスを感じているのか、というプレッシャーを、初めて身近に感じた。
 未樹に話せることを一通り話し終えると、小一時間ほど、時間が経過していた。口をつけてない急須の中身は、当然、冷め切っているだろう。

「なるほどねぇ……」
 一通り聞き終わった未樹は、荒野の肩に寄り添うようにして、ため息をついた。
「……君たち、嘘みたいにドラマチックな存在なんだね……。
 いや、荒野君が嘘いっているとは思わないけど……。でも、正直、にわかには信じがたいところも、若干あり。
 お兄さんも大変だぁ……って、あ!」
 顔を伏せて聞き入っていた未樹が、不意に顔を上げる。わずか数センチの間隔しか置かない、至近距離に未樹の顔を認め、荒野はどぎまぎして、慌てて顔をそらした。
「すると、なに? やっぱり君と茅ちゃんって、血は繋がってないわけ?」
「……そうっすね……。最初は親父の子かも、って疑惑もあったんでDNA鑑定もしたんですけど、おれともじじいとも近親者ではないそうです……」
「……ふーん……。
 それでいて、一緒に住んでいて、お風呂で髪を洗ったり、寝床に潜り込んできたりするんだぁ……。
 ……やるなぁ、茅ちゃん……」
「っちょ! 茶化さないでくださいよ! こっちは真面目なんですから!」
「はいはい。怒らない怒らない、青少年。
 そーねー、君の年頃だとかなりきつい環境だよねー。うちの大樹みててもわかるけど、あの年頃の男の子なんてほとんどヤルことしか考えてないお猿よお猿。よく我慢できたねー、荒野君。偉い偉い」
 未樹はそういいながら、さらに体を荒野のほうに密着させて、荒野の肩を抱きすくめる。
「……ね。
 そんな偉いお兄さんにご褒美。

 …………えっちしよっか?」

 いつの間にか未樹の顔も真っ赤になっていて、目を閉じて、顔を荒野の顔のほうに近づけてきて……。

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彼女はくノ一! 第二話 (0)

第二話 ライバルはゴスロリ・スナイパー!?(0)

「あのさぁ」
 不意に背後から聞こえた声に、当然、才賀孫子は振り返って対処しようとした。
 が、どうしたことか、体は孫子の意志に逆らい、ピクリとも動かない。
 孫子は、眼下の狩野家に標準をつけた姿勢のままで、凍り付いていた。
「ここ、加納所有のマンションなんだよね。当然、それなりのセキュリティがあるって、少しでも考えなかった? あと、今、君、全然動けないでしょ? それ、背中から針打ったためだから。同じスナイパーでも、君がデューク東郷だったら、もう少し背後に気が配っていたと思うけどね。それでなくても狙撃するときは神経を集中させるんだから、事前にもう少し入念に下準備しないと。それから、ここ、日本。その改造ライフル、明白に銃刀法違反だから、おまわりさんに見つからないうちにおれが没収しとくね」
 加納荒野は、瞼一つ動かせない孫子の手から、ひょいとライフルをもぎ取った。
「うわ! 改造かと思ったら、これ、カスタム・メイドじゃん! すっげぇな、こりゃ。造りが凝っていて、高性能。その分、メンテナンスに手間がかかりすぎる気がするけど……条件がよくて腕がいい人なら、二キロ以上先の的にでも当てれるじゃないのか、これ?」
『……わたしなら三キロ以上先でも当てられるのですわ……』
 フリーズしたままの孫子は、心中で呟いた。こうして完全に荒野に制圧されている身であれば、はっきりいって負け惜しみ以外のなにものでもない。

 遠慮なしにライフルの弾倉から弾丸を抜き、あちこちを弄っていた荒野は、狙撃をする姿勢のまま固まっている孫子の隣で、子供のような歓声をあげている。
「……なるほどねー。
 コストパフォーマンス無視して性能追求一直線、って設計思想かぁ……。メンテナンスも面倒くさそうだし、実用的ではないけど、面白い銃だね。
 これだけの代物だと、使う人間もかなり絞られるなぁ……。
 今の日本で、ここまで凝ったライフルの使い手っていうと……ひょっとして、才賀?」
身動きできないまま、孫子のこめかみに、たらり、と一筋の冷や汗が流れる。
「まあいいや。後で才賀のじっちゃんに直接確認してみよう。
 一応、おれも加納の直系だからさ、才賀のじっちゃんとは顔見知りなんだわ」
 そういって初めて、孫子の視界の中に、気配を感じる隙もなく孫子を拘束した男……いや、少年が、姿を現した。
「おれ、加納荒野。
 おれの名前を知らなくても、こういう特殊なライフルもっているくらいなら、加納の名前くらいは聞いたことがあるでしょ? 君自身にも、もちろんそれなりに興味はあるわけだけど、その前に、君が狙撃しようとしていた人の家に一緒にあやまりにいこうね」
 プラチナ・ブロンドの少年は、才賀孫子の目をまともにのぞき込んで、笑顔を作った。しかし、その目は、笑っていなかった。

 加納荒野と名乗った少年は、無造作に才賀孫子の襟首に手を伸ばし、軽々と持ち上げて、相変わらず自分の意志では動けない才賀孫子の体を片手で軽々と持ち上げ、肩に担いだ。
 そして、普段は閉鎖されているマンションの屋上から階下に降る階段のほうへと、歩いていく。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(14)

第一章 「行為と好意」(14)

「ごめんねー。うちのバカ弟が迷惑かけちゃって」
 拾ったタクシーの中で、樋口未樹が荒野にそういった。
 樋口兄弟の家は駅からかなり離れた場所にあり、その割には路線バスもない、不便な地域にあった。荒野が現在住んでいるマンションも、その「不便な地域」にある。
 方向が一緒だし、場所的にも近所といっっていい場所にあったので、荒野は大樹に肩を貸しながら、タクシーに同乗した。
「タクシー代、わたしが出すから。あ。まだ時間早いし、なんなら家でお茶くらい飲んでいく?」
 それから未樹は、自分の家族のことを話し始める。

 わたしと大樹はバカだけど、真ん中の明日樹は真面目っ子。両親は放任主義。というか、子供にも「自分の行動の責任は自分でとれ」と突き放してくるタイプ。だから、学校の成績にも無関心で、子供が外泊や派手なファッションをしても一切お咎めなし。でも、誰か他人に迷惑をかけるようなことをすると、こっぴどく怒られる……などなど。

 そうこうするうちにタクシーが着き、しつこく誘われた荒野は、樋口家にお邪魔することになった。
 兄弟と荒野を迎えた樋口家のご両親は、割合平凡な風貌の中年夫婦で、母親の目鼻立ちが兄弟との血縁関係を連想させた。がっちりとした体つきの赤ら顔の父親のほうは家で酒を飲んでいたらしく、大樹を担いできた荒野に丁寧に礼を述べた後、「きみも一緒に飲もう」としきりにすすめてきては、母親に制止されていた。
 銀髪の荒野が娘とともにこの時間に帰宅してもあまり騒がないあたり、平凡な風貌に似ず、非凡な夫婦なのかもしれない、と、荒野は思った。

 荒野は未樹に案内され、大樹を抱えて二階にある大樹の部屋まで運び込む。
 大樹を布団に寝かしつけて廊下に出ると、母親がお茶を入れた盆もってたっていて、「せっかくだから、ゆっくり休んでいってね」と、未樹の部屋に案内される。
「今、一階は散らかっているし、お父さんは誰にでもお酒をすすめる人だから」ということだが、未樹がお盆ひったくるようにして二人で部屋に入った際、意味ありげな流し目をもらった。
「もー。お母さん、気、回しすぎ」
 と、扉を閉じた未樹が、何故か怒った口調でいったことで、荒野は、『ああ。今、二人きりなんだな』とようやく気づいた。
 しかしこの状況は、ご両親にしてみれば放任主義を少し越えすぎているのではないだろうか?
「お父さんはお父さんでなんかいきなり荒野君のこと気に入っているし。お父さん、気にいった人しかお酒に誘わないの。一目で誘われたの、きみで二人目かな? 妹の友達でもう一人の香也君っていう子がいるんだけど、その子もなんか一度目から気に入られて、家に来るたびに誘われてる。いや、妹はわたしや大樹とは違ってバカじゃないし、真面目ないい子なんだけどね」
 未樹はお茶の用意をしながら、多弁になっている。酒が残っているのか、頬に朱がさしていた。
「はい、お茶。でね、荒野君、きみにはいろいろと聞きたいことあるわけよ、わたしとしては。差し出がましいようだけどさ、妹さんのこととかさ。
 きみ、いろいろな所で、不思議すぎ。
 それに、いつもそうやってにこにこ笑っているけど、その笑顔……」
 荒野に用意したマグカップを渡した未樹は、自然な動作で手をあげ、荒野の頬に、指で触れた。
「……その笑顔、すっごく寂しそうに見える……」

「わたし、大樹と一緒でバカだけどさ、なにかきみにできることがあったら、遠慮なくいってね」
 と、未樹は、そう続けた。

 不意打ちだ、と、荒野は、思った。

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彼女はくノ一! 第一話 登場人物紹介

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。
 登場人物紹介

狩野香也
 主人公の一人(のはず)。影が薄い。

松島楓
 主人公の一人(のはず)。影が薄い。
 この連載を開始してから、「松島かえで」という芸名のAV女優が実在することを知る。
 後の祭りである。

狩野真理
 狩野家の主婦。
 細かいことにこだわらない性格。

狩野順也
 狩野家の大黒柱。職業は画家。不在。

羽生譲
 狩野家の居候。狩野順也の押し掛け弟子。

樋口明日樹
 狩野香也の学校の先輩。
 この話に登場する人の中では、一番の常識人かも。

三島百合香
 でしゃばりでノリが良い、狩野香也の学校の保健医。
 初登場時はここまで使い勝手の良いキャラに育つとは想像だにしなかった……。

加納涼治
 スポンサー。
 電話の向こうにいる、という微妙な登場のしかた。

加納荒野
 チョイ役。
 その割には、冒頭とオチにおいて重要な役割を果たす。

{第二話 ライバルはゴスロリ・スナイパー!?}
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彼女はくノ一! 第一話 (20)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(20)

 羽生譲は喉の乾きを覚えて目を醒ました。
『……うーん……ひさびさに飲み過ぎたかなー』
 などと思いつつ、ノロノロと起きあがり、どてらを羽織って台所へと向かう。
『お?』
 途中の廊下で、寄り添うように仲良く肩を並べている二人の背中に遭遇した。
 香也と楓。
『ありゃー。今日会ったばかりなのに……こりゃ、あすきーちゃんピンチかなー』
 とか、思う。
「夜分おそれいりまーす!」
 そんなことを思っているうちに、玄関のほうで誰かが訊ねてきた気配があった。

「夜分おそれいりまーす!」
 という張りのある声で、狩野真理は目を覚ました。
 炬燵でうとうとしているうちに、本格的に寝入ってしまったらしい。
 こんな時間に誰だろ、といぶかしみながら、狩野真理は、玄関に向かい、鍵を開ける。
「あらあら。加納君じゃないの。どうしたの、こんな時間に」
 数年前、某国の内乱騒ぎに巻き込まれそうになった夫を、助けてくれた人々の一員で、数日前にお隣りにマンションに越してきた、加納荒野クンだった。
「いやなんか、うちのじじ……祖父から言付かりまして、本日からうちの手の者がこちらでお世話になるそうで、その、ご挨拶です」
 といって、持参の菓子折を差し出す。
 うちの香也より一つ上だというが、随分しっかりした子だ……と思った狩野真理は、ようやく、あることに気づいた。
「……えっと……その、加納君って、今朝うちに電話してくださった、あの加納さんのお孫さん……?」
 三島先生で接触してきて、過分な謝礼を条件にくノ一ちゃん……松島楓をこの家に住まわせることを打診してきた渋い声の持ち主と、目の前の少年とが、なかなか結びつかなかった。
『あの電話の方は、ニンジャのずっうっーと、偉い人で、この荒野クンは、その人のお孫さんで……。
 ……っていうことは、この子……ニンジャさんたちの、次期首領?』
 のろのろと真理がそんなことを考えていると、どやどやと他の同居人たちも、玄関に集まってくる。

「改めまして。
 おれ、加納荒野といいます」
 身長は百七十ほど。細身でありながら、どこか精悍な雰囲気も放射している、プラチナ・ブロンドの少年はいった。
「え?」
 と声を上げたのは、狩野香也のおさがりのパジャマを着たくノ一ちゃん、松島楓だった。困惑した表情をありありと浮かべて、隣りに立っている『この家の』コウヤの顔を見上げる。

「ぼく、狩野香也」
 かろうじて身長は加納荒野と同じくらいで、同じように細身だが、こちらの少年には「精悍さ」の欠片もなく、全体に柔和……を通り越して、ぬぼーっとした得体の知れない雰囲気を放射している。
「ええ?」

「おれ、かのうこうや」
「ぼく、かのうこうや」
「えええ?」
 おろおろと狼狽しまくって、松島楓は二人の少年の顔を、交互に見比べるため、顔をふり続ける。そして、自分の頭を抱え、
「……えええええ……?!」
 と、叫んだ。

「ここぞというところでポカをする」天然ドジっ娘体質故に「仕える相手」を勘違いしたまま処女まで散らしてしまった彼女の受難は、まだまだ始まったばかりだった。

   [第一話・完]

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(13)

第一章 「行為と好意」(13)

 樋口大樹がいちはやく反応し、友人たちに「写真を撮ること」を指示したことで、荒野は、「白柊高」と呼ばれた男たちの襲撃が偶然ではなく、あらかじめ仕組まれたものであることを確信した。
 クスリを扱っている「組」の事務所がこの地域から撤退した今、その組がバッグにあることで大きな顔をしていた「白柊高」の権勢が目減りしていたであろうことは、十分に予測できた。その事務所を潰した男、という噂が飛び交っている(らしい)荒野を不意打ちにでもできれば、たしかにそれなりに面目を施すこともできただろう。
 だから、彼らの襲撃が、彼ら自身からでた動機に基づくものである、ということ自体は、否定しない。
 が、現在、荒野が「しかじかのカラオケ店内のしかじかの室内にいる」という、より具体的な情報を間接的に彼らに提供したのは、おそらく大樹なのだろう。
 たぶん、大樹は、白柊高の面々と繋がりがありそうな共通の知人、それも、できるだけ多い人数に「今、ここに荒野がいる」という情報を故意にばらまいた。
 大樹が頻繁にトイレに立ったり携帯の画面をチェックしたりしていたのは、流した情報がどこまで浸透し、本来の目標である、白柊高の連中にちゃんと伝わっているのか、探りをいれていたのに違いない。

 襲撃した側は、室内でくつろいでいるところを急襲すれば、それに、いざとなれば同席した女性たちを人質に取れば、どうにでもなる、と高をくくっていたのだろうし、襲撃されるように仕組んだ大樹は、初めてであった時の荒野の落ち着き払った言動から「荒野は、かなり強い」と判断した。
 万が一、見こみ違いで荒野が遅れをとるような事があったら、友人たちとともに加勢して、逆襲でもするつもりだったのだろう。「高い可能性で、このタイミングで奇襲がありうる」と身構えているだけでも、襲撃される側は、なにがしかのアドバンテージを得るものだ。
 そして、返り討ちにした白柊高のヤツラの醜態をカメラに収め、付近の不良仲間に流すことで、彼らの面子を潰す、という算段だったに違いない。

 襲撃した側、襲撃させた側、双方にとって誤算だったのは、彼らの予測をこえて、荒野が「襲われること」に対して、免疫があったことだった。

 強いか弱いか、といえば、もちろん、ほとんど生まれた時から修練を積まされている荒野は、滅法強い。
 だが、それは、武道家やスポーツ選手のように、外部に自分の長所を誇示するための強さではなく、自分や自分の身の回りの者たちを最小限の犠牲で守るための強さだった。だから、間違っても、自分から目立つような真似は、しない。今回のように不意の襲撃に際しても、できるだけ自分が目立たないような、可能なら「荒野がなにかをした」ということさえ悟られないような方法を、採用する。
 たぶん、樋口大樹が一番期待していたのは、荒野一人(それが無理なら、荒野と大樹の友人たちの連合軍)に襲撃者側がぼこぼこにされているシーンだったはずで、でも実際にあったのは、「どこかの酔っぱらいが、部屋を間違えて入ろうとして、勝手に尻餅をついて、荒野が助け起こそうとすると、なぜか悲鳴をあげて揃って逃げだした」という図である。
 少なくとも、背後の事情を知らない傍目には、そう見えたはずだった。
 これはこれで情けのない場面ではあっただろうが、周囲に「白柊高のヤツラのへたれっぷり」をアピールし、同時に、「荒野の強さ」と、「荒野が大樹たちの背後にいる」ということを印象づける、という大樹の一番の目的は、達せられていないことになる。
 第一、出鼻を挫かれた連中は、自分らが白柊高の人間であることさえ、名乗る間もなく退散したから、大樹の目論見は、根幹の所で、成就しなかった、ということになる。

 やはり、「加納荒野」という人材は、「不良学生同士の喧嘩」みたいなrチンケな舞台で活躍するのには、役者の格が違いすぎた。

「大樹君」
 襲撃者たちが逃げ去った後、席に戻る際に、荒野はは、大樹の耳元で、大樹にしか聞こえないような小声で、囁いた。
「こういうこと、おれ、今後、協力しないから」
 ひっそりと目立たず、これからこの土地で「一学生」として暮らしていく……つもりの荒野は、地元不良少年たちの勢力争いに荷担するつもりは、さらさらないのである。
 その時の荒野は、依然としてにこやかな愛想笑いを顔に張り付けていたが、耳元で囁かれたほうの大樹は、逃げ去った襲撃者たち以上に蒼白な顔をして、コクコクと忙しない動作で頭を何度も縦にふった。

 利用しようとした荒野が、自分の手には余る存在だということを、肌で理解したのだろう。

 その後は、さすがに以前ほどに場が盛り上がる、ということもなく、小一時間ほどして、解散、ということになった。
 その間に大樹は、周囲の制止にも耳を貸さずガブガブ酒を飲み続けてすっかり悪酔いし、荒野が肩を貸して、未樹と一緒に家まで送る羽目になった。

[つづき]
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彼女はくノ一! 第一話 (19)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(19)

「……ああ……もう……もう……」
 結合部の潤滑上体が良好になると、香也のほうが保たなくなってきた。
 楓のそこはすっかり湿り、温かくて、強い力で、挿し込まれた香也のモノを締めつけている。もともと、堰を切って漏れようとする精をなんとか自制していたような所があって、楓が協力的になったことでその堰が決壊しようとしていた。
 むしろ、初めてにしては暴発もせずよく保った方、なのだろう。
「ごめん! でちゃう!」
 小さく叫ぶようにして、香也は楓に差し込んでいた分身を抜く。
 ぴゅる、という感じで、上を向いた香也の先端から、白い精が漏れた。
 一度漏れるとそれは、際限なく面白いように放出して、向かい合った香也と楓の体を濡らした。
 むっとした、動物性の臭いが、二人の鼻をついた。
『……これが……男の人の……温かい……』
 お腹と鼻に香也が放出したものを感じながら、楓は、奇妙に冷静になっていた。楓がようやく苦痛以外の感覚を得始めていた矢先に、香也が先に終わってしまった形だが、楓に不満があるはずもなく、むしろ、早めに行為が終わったことに軽い安堵を覚えていた。

 楓は、自分が打算から香也との関係を迫ったことを、自覚していた。
 香也は、楓の打算を見透かした上で、その誘惑を振り払うことができなかった。

 楓と香也は、お互いに引け目を感じながら、不器用ながらも最初の行為を終え、対面する相手に対して、好意しきもを持ちはじめていることを自覚し、それを伝えようとほぼ同時に口を開きかけた。
「……あの……」
「……あの……」
 声が重なり、二人とも困ったような顔をして、途中で言葉を閉じる。

「ごめん!」
 少し間をおいて、香也は叫ぶなり、頭を下げた。
「こんな始まり方で! でも、ぼく、君がどうしてこういうことしたのかわかるような気がするし……」
『……君は、昔のぼくみたいだったし……』
「正直、その、我慢できなかったし……」
『……ぼくはガキだ……』
「こういうことやっちゃってからこういうのもなんだけど、その、ぼくたち、多分、仲良くなれると思う!」

 いきなり頭を下げられた楓のほうが、面食らってしまった。
『……この人は……』
 香也の精液で汚れているのにもかかわらず、楓は、正面から向き合って、香也の体を抱きしめる。

「頭を下げないでください。迫ったこっちが恥ずかしくなります」
 非難する口調ではなく、笑いを含んでいる。楓の、自嘲かも知れないが。
「会ったばかりで、あなたのこと、よく知らないけど……」
 楓は、頬を香也の胸にすりつけるようにして、香也の体を抱きしめる。
「よく知らないまま、焦ってこんなことしちゃいましたけど……」
『……あなたは、思っていたよりもずっといい人で……』
 楓は、香也に抱きついたまま、顔をあげ、まともに香也と視線をあわせ、そして……。
「……なんだか、あなたのこと、好きになれそうです」

 笑った。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(12)

第一章 「行為と好意」(12)

 平日のまだ宵の口、ということもあって、チェーンのカラオケ店は、二十人くらい入れる大部屋に荒野たちを入れてくれた。
 交友関係が閉じがちな地方都市なので、集まった男女の半数ぐらいが直接的間接的に知り合いで、でも「某の後輩」とかその程度の「かろうじて名前は知っている」程度の浅い関係しかない者が大半であって、ちょうどいい具合にうち解け、ちょうどいい具合に緊張している。軽く自己紹介をしあいながらマイクが廻り、未成年者の集まりであるにもかかわらず、当然のようにアルコール飲料を含む飲食物が内線でオーダーされた。
 この中では新顔であり、日本人としてはかなり変わった風貌の荒野に興味を示す者は多く、最初の方は質問責めに近い状態になったが、荒野が一つ一つの質問に丁寧に答えているうちに座が盛り上がり、声が大きくなり、すぐに通常の会話があまり成立しないような状況になったこともあり、荒野はすぐにこの騒ぎの中の「その他大勢」として埋没することになった。

「未樹の友人たち」と「大樹の友人たち」との間では少し年齢差があったのが幸いしたな、と、荒野は思った。大樹の友人たちは、異性に接することに飢えている学生で、半ばおちゃらけた風を装い、はしゃぎながらも未樹の友人の若い女性たちになにくれと接触しようとする。しかし、女性陣はそれをあまり真剣に受け止めず、いいように受け流し、あしらっている。そうしながらも、この騒ぎ自体はしっかりと楽しんでいる……というふうに、荒野にはみえた。
 それだけの人数がいると、ことさらにはしゃいだりマイクを握ったりする者もそれなりにいて、観察モードに入って静かになった荒野が目立たない程度の喧噪が、室内に常時維持された。
 荒野は自分ではマイクを握らない分、「砕けた自分」を演出するため、あえてアルコールを口にしていた。荒野は、日本人の平均よりはよほどアルコールに強かったし、自分の適量も弁えていたが、念のために最初の一、二杯はビール、あとはサワーとか軽いものをオーダーしてちびちびと舐め、飲み過ぎないように注意した。
 むしろ心配になったのは、妙にはしゃいでいる未樹の弟の鼻ピアスの少年、大樹で、一行の中では年少に分類される年齢であるのにもかかわらず、がぶがぶと酒を飲み、頻繁にトイレにたったり自分の携帯の液晶を覗き込んだりしていた。
 顔を真っ赤にして、かなりハイテンションになっている大樹とは反対に、荒野はニコニコと愛想を振りまきながら、静かに周囲の様子を伺っていた。

 荒野にとってはあまり身近なものではない最近流行の日本のポップソングが延々と賑やかに歌われるているうちに時間はあっという間に過ぎ去り、一度内線で店の者から「延長しますか?」という電話がかかってきたようだが、幹事役の未樹は周囲の連中に意見を求めず、延長することに決めたようだった。たしかに、あまり度を越さない程度に、ではあるが、集まった連中はそれなりに盛り上がっていて、ここで中断しなければならない理由もなさそうだった。
 そんな感じで盛り上がっている最中、不意に、乱暴に外からドアを開ける音がした。柄の悪そうな、剣呑な表情をしている男たちで、年齢的にいえば、大樹たちよりも未樹たちに近かった。つまり、二十才前後にみえた。

 バタン、というドアを開ける大きな音がした途端、当然、中にいた者は反射的にそちらを向いた。
 その乱入者たちの中に、荒野にも身に覚えがある顔が紛れていたのを確認した荒野は、平静にテーブルの上に手を伸ばし、オーダーした飲食物の中にあった、「柿の種」をひとつかみ握り、中のアラレとかピーナッツとかの粒を、乱入してきた男たちに向かって、親指で弾きはじめた。
「……ゴゥラァ……」
 威嚇の罵声を発しようとしていた、先頭にいた男の額に、荒野が弾いたアラレが高速度でぶつかり、瞬時に砕け散った。間髪をいれず、第二弾、第三弾が、男の額に的中し、砕ける。
 男は、「自分の身になにが起きたのかわからない」といった怪訝な顔をして立ち止まり、すぐに、ぐらり、と上体を揺るがせて、膝をついた。
 後続の男たちが何事か、と、膝をついた先頭の男に駆け寄ろうとしたところで、荒野は、同じように、前から順番に、「柿の種」を額に打ち付ける。
 荒野は部屋の奥まった場所にいて、薄暗い中、親指だけで「柿の種」を打ち出していたため、男たちが次々に膝や尻餅をついている、という事と、荒野の存在を結びつけて考える者はいないようだった。

 十人くらいで部屋に乱入しようとしていた男たちは、部屋に入ろうとドアに近づいた途端、ぐらりとゆれて、頭を抑えて倒れた。荒野が、指弾を使って額越しに脳みそを揺さぶり、軽い脳震盪を発生させているせいだが、それを人垣の奥の、離れた場所にいる荒野のせいと思う者はなく、一様に「薄気味悪さ」を感じるばかりで、半分くらいの人数が床に座り込んだ所で、荒野たちがいる部屋の入り口に近寄る者がいなくなった。
 乱入しようとていた男たちは立ちすくみ、室内にいた男女もなにが起きたのかわからず、声を殺して事態の推移を見守っている。
 人の声は途絶え、カラオケのBGMだけが空々しく響いていた。

 大樹が「写真だよ、写真。写真とってメールでばらまけ!」と叫びながら、自分でも携帯のレンズを向けてフラッシュをたく。大樹の友人たちもそれに続き、フラッシュの閃光が連続しはじめたところで、立ち往生していた人相の悪い男たちの間に、明らかに狼狽が走った。
「誰か、内線で店の人に連絡して。なんか、酔っぱらって具合が悪い人たちがいるらしいから」
 ことさらのんびりとした口調で荒野がいい、人垣をかき分けて、座り込んで頭を振っている男に手を差し伸べた。
「大丈夫ですか、お兄さん。なんなら、救急車呼びますか」
 数日前、目立つ風貌の荒野を呼び止めて路地裏に連れ込み、因縁を吹きかけきて、そして、荒野に返り討ちにあった男の目をまともに覗き込んで、にっこりと笑った。

 彼らは、大樹が「白柊高の」といっていた連中のようだった。
 荒野の顔を認めた男は、ひっ、と、息を吸い込んで喉をならし、座り込んだまま、ばたばたと手足を振って後ずさった。

 先頭の男が逃げ腰になると、彼らはすぐに蒼白な顔をして、先を競うようにして、荒野から逃げはじめた。

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彼女はくノ一! 第一話 (18)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(18)

 楓の言葉に応えて、香也は、がばり、と、楓の肩をかき抱いて顔をつけ、長々と口をつける。舌で楓の口唇をこじ開け、侵入させ、掻き回す。
 香也は基本的に温厚……というよりは、ぬぼーっとしたつかみ所がない性格をしているが、何分、この年頃の少年ということで異性に対する欲望は人並みに持っているわけで、そこに、いきなり裸の楓が降ってきて「自分を抱いてくれ」と懇願してきたわけで……ありたいにいって、イッパイイッパイを通り越して、一種のパニック状態に陥っていた。
 なし崩し的に本能の軛を放ち、楓に挿入してしまったが、自身も女性経験が皆無な香也に、楓の身を案じるような精神的余裕があるわけもなく……そこに涙目になった楓から更に「キスをしてくれ」というリクエストまで頂いたことで、イッパイイッパイの香也の脳ミソは楓の「好きにしてくれ=本能に赴くままに」といわれたのだな判断し、かなり乱暴な動きで楓の身を蹂躙しはじめた。

 一軒おとなしそうにみえる香也が突如乱暴に自分を抱きしめたことで、初めて楓は「香也という男」を「自分を犯すことが可能な存在」として認識し、『駄目です、こんなの!』と言おうとしても、口は香也によって塞がれており、身をよじって香也の腕を振り払い、それでも楓の身を抱き寄せようとする香也の体を押して隙間をつくり、楓は、平手で、香也の頬をはたいた。

 パン、という小気味の良い音。

「駄目です……もう……こんな、乱暴なの……」
 頬を張り飛ばされたことで、はっと目を見開いて自分が理性を失いかけていた香也は、涙を流す楓に腕ごと抱きすくめられ、身動きを封じられる。
「……好きですから……好きにしていいですから……乱暴にはしないで下さい……」
 ひっく、ひっく、としゃくり上げながら、それでも香也を喜ばせようとして、楓は、身を割かれるような痛みを我慢して、香也との結合部を不器用に、動かしはじめる。
「……いっぱい感じさせて……気持ちよくさせますから……お願い……捨てないで……」
 ひっく、ひっく、と子供のように泣きながら、痛みを堪えつつ、切れ切れにそういって腰を動かそうとする楓をみて香也は、
「……ごめん……」
 といいつつ、若干力の緩んだ楓の腕を押しのけ、逆に、楓の体に自分の腕を回し、「ごめん、ごめん」と呟きながら、楓の中に入っている分身を膣壁にすりつけるように動かす。
 香也の腕の中で泣いている楓の体はとても熱くて柔らかくていい匂いがして、発狂しそうなほどに愛おしく思えて、その思いに比べれば、ぐちゅぐちゅと湿った音を立て始めた結合部の摩擦が生み出す快楽は、強烈である分、かえって刹那的で浅薄なものに思えはじめた。

 それでも、不器用に蠢き、動かしているうちに、若い楓の体は順応をしはじめ、時折、明らかに苦痛からくるものではない呻きを漏らすようになってくる。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(11)

第一章 「行為と好意」(11)

「切った髪、っすかぁ?」
 甘党だという荒野が買ってきたショコラケーキと茅が入れた紅茶をいただきながら、樋口未樹はキッチンテーブルについている。荒野と茅は、並んで未樹の対面に座っている。
『……ケーキも紅茶も、おいしい……。』
 とか思いつつ、荒野の言葉に耳を傾けていたら、フォークを口にいれた茅の顔がいきなり崩れたので思わず口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
 いや、普段の凛とした表情が一瞬にして蕩けそうな笑顔に激変したので、驚いただけですが。初めてみる茅の笑顔は屈託がなくて、一挙に年齢がさがったような印象を受ける。
『……やだ……この子、可愛い……お持ち帰りしたくなる……』
「うーん。考えてなかったなぁ……。そのまま捨てようと思っていたから……。
 未樹さん、それ、お金になるんなら、持っていきますか?」
「お金になるなる。じゃあ、遠慮なく髪はいただいてくねー。
 どう、茅ちゃん。しばらくぶりに髪を切った感想は? いつから切ってなかったの?」
「頭が軽くなったの。生まれてからずっとなの」
 生まれてからずっと……なにかの冗談なのだろうか? それとも宗教上の理由かなにかなのだろうか? ……そういや、さっき「もう伸ばす必要がない」とかいっていたしな……。
 未樹は、内心の混乱が表情にでないように努力した。後で荒野を問いつめることにしよう。
『……この兄弟、面白い……』
 未樹は今日の出来事で、二人に対する好奇心がかなり膨れ上がっていくのを自覚した。
 そして、何気ない顔をつくって、
「ねぇ、荒野くん。今日、これから、なにか用事ある?
 なかったらさ、何人か呼んでぱーっと騒ごう。前々から遊ぶ約束しているし」
 と誘った。
 荒野には、断る理由がなかった。もちろん、茅も誘ったが、茅は「人が多いのは好きじゃないの」と即座に断った。
 この好機を逃すまい、と、未樹はその場で心当たりにメールや電話で召集をかける。
 未樹の友人たちと、未樹の弟、大樹の友人たちの間に連絡がまわり、数分もせずに十人以上が名乗りをあげ、あっという間に「夕方六時から、某カラオケ店前集合」という日時の相談もまとまった。
 未樹は、「一旦帰って用意してくる」といって、道具を入れたバッグと切った茅の髪を入れた袋をもって、荒野と茅の部屋を辞した。

 そして、午後五時。
「じゃあ、茅ちゃん。おにいさん、借りるねー」
 再び荒野たちのマンションを訪れた未樹は、玄関先で荒野の腕を取り、犯罪者でも連行するような勢いで部屋を後にした。
 未樹の自宅がこのマンションからさほど遠くない場所に位置することと、それに、駅まで結構あるため、「どうせならここで合流して一緒に」という話しになったからで、荒野は用意した夕食を茅がちゃんと食べるかどうか心配だったりするのだが、未樹は半ば強引に、荒野を引きずるようにして、駅前の商店街にあるカラオケ店へ向かった。平日であるため、一応登校していた未樹の弟、大樹は、学校帰りに仲間たちを集めて直接集合場所に向かうという。
「おれ、日本のカラオケって初めてっすよ」
「あー。でもなんか荒野君、歌とか巧そうだよねえ。雰囲気的に」
「いや、おれ、やったことないからよくわかんないっす。第一、日本の歌全然知らないし」
「英語の歌なんかも結構はいっているよー。それにあんなの、雰囲気で押し通すもんだから、変に身構えない方がかえっていいかも」
「そんなもんすか。でもまあ、多分、聞くほうに回ると思いますが」
「駄目駄目。ちゃんと歌わないと」
 他愛もない、意味もさほどない会話を交わしながら、結構長い道のりを二人で歩いていく。寒さも本格的にこの頃、黙って歩いていたら冷気が肌にしみこんでくるような錯覚さえ、覚える。マンションから駅まで結構距離があり、歩くのが遅いものなら三十分くらいかかるのではないか、というくらいに、遠い。その割にバスも通っておらず、荒野が拠点としているマンションの周辺は、不便な分、閑静な場所でもある。マンションで未樹と合流してから駅に向かったのも、半分は人通りの少ない夜道を、未樹単独で歩かせたくないためでもあった。

 だべりながら歩いていたためか、予定よりも時間を食い、荒野と未樹が集合場所に着いたときには、集合時間まで十分しか猶予がなかった。どうやら、荒野と未樹が最初に着いたらしいが、集合時間を一、二分過ぎた辺りから三々五々に人が集まりはじめる。未樹の友人は女性で、高卒だったり中退だったりするが、年齢は荒野が以前推測したとおり、十八才前後。次々と紹介された未樹の友人たちは、ショップ店員だったりバイトをしていたり専門学校に通っていたりして、現在の職種はまちまちだが、一様にメイクと衣装に気合いが入っていて、彼女らが集まって談笑しはじめると、「華やか」ではすまされないようなエネルギーを発散させているようで、そうした雰囲気に耐性のない荒野は若干気後れした。
 未樹の弟、大樹の友人たちもほぼ同時に集まってきていて、こちらは女性陣よりも多少平均年齢が下がる。いかにも大樹の知り合いらしく、どこか崩れたようなファッションをしていて、でも、そんな不良っぽさを意識したファッションがどこか幼さを残す顔とアンバランスで、かえって滑稽な印象を強めてもいた。
 彼らは、女性陣の賑やかさに、荒野と同じように気後れを感じているようだが、同時に憧憬とも飢餓感とも取れる表情を覗かせるところもあり、「あわよくば、お近づきに」という下心が丸見えだった。対する女性陣のほうは、年下の少年たちには、あまり「男性」を意識していないようだが……。
『……こういうところは、どこの国でも民族でも、変わらないか……』
 すっかり観察モードになっていた荒野は、そう思った。「カラオケ」とは、ようするに、この国における、健全と不健全の境目にある、この年頃の男女が集まるための口実、と、荒野は理解する。日本文化に疎い荒野は、「合コン」という語を知らなかった。
 未樹や大樹が荒野のことを改めて紹介すると、女性陣は荒野の整ってはいるがエキゾチックな風貌に最初引き気味になり、荒野が流暢な日本語でしゃべりはじめると、今度は途端に親しげに話しかけてきて、質問攻めにした。大樹の友人の少年たちは、あらかじめ大樹によっていろいろと色をつけた予備知識を植えつけられていたようで、恐れとも畏れともつかないような表情を浮かべていたが、しばらく会話を交わすうちに、荒野が気さくで人当たりのいい性格である、ということを理解すると、その後はすっかりタメ口になった。
 しばらくカラオケ店の前でしゃべり込んでいると、誰からともなく「そろそろ中に入ろう」といいだし、十数人ほどに膨れあがった若い男女の集団は、店内へと移動した。

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彼女はくノ一! 第一話 (17)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(17)

「一気に貫く」といっても、それは当事者の主観として、であり、実際には、楓の堅い肉に阻まれ、じりじりと侵入していった、ということになる。何者も受け入れたことがない楓のそこは頑なに侵入を拒もうとし、香也を受け入れようとした楓自身も、無意識に身をよじり、内部に入り込もうとする香也自身から身を逃そうとする。
 香也は、楓の体を上から抱きしめて固定し、
「痛い? 止める」
 と尋ねた。
「……続けてください……」
 目尻に涙を浮かべながら、それでも楓はそう答え、香也の体にしがみつき、腕に力を込めて、異物の侵入に、再度備えた。
「ん」
 その言葉を受けて、香也は、楓の肩を自分の腕で上から押さえ込むように抱きしめ、じりじりと腰を突き上げていく。
 いよいよ香也自身が楓の肉を割って入っていく。
 メキメキと音をたてているような異物感を股間に感じながら、楓は、知らず知らずに涙を流し、香也の体に巻き付けた腕に力を込める。その未知の異物感は、もちろん苦痛であったが、同時に、楓にとっては、縁が薄いはずの香也と自分を繋ぐためのイニシエーションでもあり、字義通り「身を割られるような痛み」を感じつつ、その「痛み」は破瓜の「痛み」であると同時に、これから始まるはずの香也と、香也の家族との新しい生活、新しい関係、の開始を告げ、また、今までとは違う、新しい自分へ生まれ変わるための「産み」の「痛み」でもあった。
 楓自身が、香也に、あるいは香也の家族に、楓として受け入れられる、ということは、それまで「その他大勢の一人」でしかなかった、場合によっては番号のみで管理される存在でしかなかった楓にとって、鮮烈な体験であり、今日一日の狩野家での経験は、楓に、「個人として楓自身」という、従来にはない、新しいパーソナリティを鮮烈に自覚をさせた。
 それまで、「使命を達成するための歯車」ないしは「捨て石」としか自身を認識できなかった楓は、狩野家で歓迎されることで、楓自身も「普通の人々」の一員になれる可能性があることを自覚させ、今、楓は、「組織の部品」ではない、「個人としての楓」になりたいと強く願い、その「個人としての楓」になるための産みの苦しみとして、香也を迎え、破瓜の衝撃に、耐えようとしていた。
「ふ。はぁ。はぁ」
 と、思わず声が漏れる。
 その時の痛みにはかなり個人差がある、という話しだったが、楓の場合は、かなり甚大な苦痛を感じた。
『……あんな、大きいのが……中に……』
 目を閉じ、香也にしがみつき、歯を食いしばって息を吐きながら、楓は、さきほど目の当たりにした香也の男性器を思い浮かべた。楓は、別の、生身の男性器を知っているわけではないが、膨張時の香也のそこは、教材として使用されたプラスチック製の模型よりも一回り大きい位で、その模型は「実物の平均よりも一回り大きい」と説明されたから、香也のモノは、平均よりもかなり大きいのではないか。
 楓は、痛みでぼーっとしている頭の中で、ぼんやりとそんなことを考えていた。

「入ったよ。全部」
 そういう香也の声が聞こえ、背中を優しく叩かれて、楓は我に返った。挿入前の高揚は消え、自分の顔から血の気が引いているのを、自覚する。その、蒼白になっているはずの顔を上に向け、
「……お願いです。キスしてください」
 と、いっていた。

 そこ言葉を他人の発言のような思いで聞きながら、楓は、本当は多分、
『……お願いです。受け入れてください。このわたしを……』
 といいたかったのだ、と、思った。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(10)

第一章 「行為と好意」(10)

 樋口未樹が茅の髪を切りに来る日の朝も、荒野は、いつものように、出勤前の三島百合香の部屋を訪れた。

「昨日、茅といろいろ話したけど、あれで確信した」
 三島百合香はいった。
「茅が隔離されて育てられたの、あれ、絶対、『ウラ』があるな」
 荒野も同じ印象を持っていた。不自然な点が、あまりにも多すぎるのだ。

 茅を発見した当時、警察は茅が衰弱していたこと、性交渉の痕跡があったこと、などの点から、「性的虐待を目的とした監禁事件」として捜査をはじめた。しかし、茅を発見した家から夥しい生活用品が発見されたことで、捜査の方向性は混乱することになる。
 状況証拠は、茅が、ほとんど生まれて間もないような頃から、その廃村で育てられたらしいことを物語っていた。

 玩具や絵本、子供服などの他に、数年分の、子供向けのテレビ番組を収録した、大量のビデオテープやDVD……それに、押入の奥には、おしゃぶりやほ乳瓶まで、残されていた。その家に残された物品は、要するに、茅の育児に必要とされた物がほとんどだった。
 いったい、「性的虐待を目的」に子供を誘拐するにしても、乳幼児から、十年以上の時間と膨大な手間暇をかけて育て上げる必要があるのだろうか?
 それも、電気、ガス、水道などの生活インフラも整備されておらず、道も通じていないような、不便きわまりない、山中の僻地、廃村で。

「『ストックホルム症候群』、という言葉がある」
 三島百合香は続けた。
「長時間に渡る籠城などを行った際、犯罪者と人質となった人間との間に、ある種のシンパシィ……一種の同胞意識が生じることを、そういう。
 最初は、それだと思ったんだ。長年ともに暮らした人間をかばって、茅が口を閉ざしていのだと。

 だけどな、少年。
 昨日、茅は、生まれた頃から知っているような親代わりの人間を『複雑な人』といいきった。
 ……一番身近にいた、たった一人の人間を、なんの愛憎の感情含ませることなく、客観的にそう言いきってしまう茅という少女は……。

 ──いったい、何者なんだ?」

「わからないよ、先生」
 荒野は簡潔に答えた。
「おれもたいがい、特殊な育ちかたしているもんでね。
 いわゆる、『普通の親子』とか『家族』とか、そういう人たちが抱く感情ってのが、全然ピンと来ないんだ」

「うわぁ! 長っ!」
 昼過ぎにマンションを訪れた樋口未樹は、床にひきづるほどの茅の髪をみて、まずそう叫んだ。
 ははは。と荒野はわざとらしい笑い声をあげ、
「すいませんねぇ。こいつ。ちょー箱入りでちょーひっきーだったもんだから」
 とかいいながら、平手でぽんぽんと茅の頭を軽く叩く。
「これじゃあ、切れませんか?」
「……いや……大丈夫。
 うーん。でも、こんだけ長いと、切るときに、荒野君に手伝ってもらわないとつらいかなー。
 ……たしかにこりゃ、切らなければどうしようもないや……ってか、今までそーとー、不便だったでしょう?」
 なにか事情があると察したのか、未樹は、深く詮索してはこなかった。

 未樹は少しかがんで、目線を茅の目の高さに合わせる。百五十に届かない茅とた未樹とは、十センチ以上の身長差がある。
 そのせいもあってか、未樹は、茅のことを「かなり年下の少女」として認識した。
「ごめんねー。初対面で驚いちゃって。はじめましてわたし、樋口未樹。
 聞いているかなぁ? あなたのお兄さんのお友達で、あなたの髪を切るために、呼ばれたの。
 今日はよろしくね」
「聞いているの。わたしは茅。加納、茅。こちらこそよろしくなの」
「そう、茅ちゃん。かわいいねー。お人形さんみたい。それに、この髪。この長さで手入れが行き届いていて……」
「お風呂で洗うときは荒野に手伝ってもらうの」
 突如、荒野が咳き込んだ。
「……ほーおぅ……荒野君がねー……ふーん」
 半眼になって、未樹は横目で荒野に視線を向けた。
「まあ、その辺の所は、後で問いつめるとして……。
 じゃあ、さっそく切っちゃいましょうか。
 ちゃんと道具も、お店から借りてきたから」
 そういって、持参したバッグから、ハサミと櫛を何種類か、それに、白いポンチョを取り出す。
「なにか適当な椅子、ない? あと、鏡とかあると、茅ちゃんが安心するかと」
 荒野は、スタンドミラーと手鏡、それに、キッチンから椅子を運んできた。

「ここぐらい? もうちょい上? 下?」
「そのぐらいでいいの」
 椅子に座らせた茅の正面にスタンドミラーを置き、荒野が、茅の背後がそのスタンドミラーに写るように、持っていた手鏡の角度を調整する。そうすることで、茅にも詳細な作業工程が確認できた。
「んー。正直、ここまで綺麗に伸ばした髪だと、鋏入れるの抵抗あるんだけどねー。
 茅ちゃん、本当にいいの? 後悔しない?」
「切っていいの。この髪はもう必要ないの」
「そっかー。じゃあ、いきまーす。
 荒野君はこっちの髪、手で持ってて。切るとばさりと落ちるよ。はい!」
 束にした茅の髪を荒野にもたせ、未樹は、思い切りよく、髪を切りはじめた。

 切った毛先を切りそろえたり、掃除機をかけたりなどの後始末も含めて、作業は一時間ほどですべて終了した。作業を終えた未樹は、
「いやー。切っちゃたねー」
 といいながら、煙草を持ってベランダへ向かう。
「うはー。緊張したー」
 そういいながら、ベランダの手すりにもたれかかり、煙草に火をつける。
 室内では、荒野と茅が後片付けをしたり、お茶の準備をしたりしている。
 その様子をみながら、
『かわった兄弟だなー』
 と、思う。
『荒野君のほうは、いろいろ混血しているらしいけど、茅ちゃんのほうは純和風って感じだもんなー。
 あんな見事な黒髪、しかもストレート、滅多にいないよ……』
 今日切っても、まだ十分に長い。あんな、腰まで届くストレート、滅多にいないだろう。
 ……っつうか、今までが、長すぎ。あれじゃあ、日常の用をたすのにもいちいち邪魔になったはず。茅が、それができる環境にいたということは……。
『この子たちって、結構いいところのボンボンなのかなー。
 ……実は、どっかの高貴なご令嬢とかご子息とか、財閥の跡取りだったりして……』
 ふとそんなことを思いついて、あわてて、
『どこのマンガの設定だよ!』
 あわてて、非現実的な自分の思いつきを否定する。現実の荒野と茅の生い立ちの方が、その思いつきよりももっとずっと「非現実的」だったりするのだが、もちろん、未樹はそんことは知るよしもない。
 そして、
「おーい。荒野君、切った髪、どうする?
 あれだけ見事なものなら、鬘屋さんでも人形屋さんでも、引く手あまただよー」
 と声をかけながら、煙草を持参した携帯灰皿の中に捨て、室内に戻っていく。

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彼女はくノ一! 第一話 (16)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(16)

 正面から抱き合って、香也が顔を埋めていると、当然、股間部も密着するわけで、すでにこれ以上はないくらいにいきり立っている香也の局部が楓の陰毛をかき分けるようにして敏感な部分に触れて、香也の体の動きに合わせて、そこが擦れる。
 吐息。体温、汗の匂いなどの香也の気配を間近に感じながら、楓は、自分の体温が高まり、鼓動が早くなっていくのを感じた。香也は今、楓の乳首を口に含みながら、空いた手を楓の腰に回し、楓の体を香也のほうに引き寄せて、腰部が密着するようにしている。
 香也の愛撫は、楓の目から見ても不器用だった、それでも香也が触れる場所全てが、自分でも驚くほど敏感になっていく気がした。
『もっともっと触って!』
 楓は、香也の存在をもっと確かめ、感じたくって、しがみつくようにして抱きつき、皮膚をすりつける。なんでこんな気持ちになるんだろう、と、自分でも不審に思いながら、香也の腰を引きつけて、密着している性器をすりつけるようにして、自分から腰を動かしている。
『……わたし……いやらしい……』
 楓は、自分の胸に埋めている香也の顔を引き離して自分から抱きつき、自分の舌で香也の口の中を蹂躙したい、という衝動を覚えていた。
『……どんどん、いやらしくなって……』
「……こうや様……」
 その衝動を行動に移すことはなく、代わりに、香也の体をそっと引き離し、香也の剛直を、そっと掴む。
「……もう、ください……」
 楓は、自分が擦れた声でそういっているのを、他人事のように、聞いていた。

 そして、掴んだ香也自身を、すっかり湿り気を帯びている楓自身へと、導いていく。

 楓のてに導かれた香也の先端が陰毛をかき分け、楓の濡れた粘膜に触れると、それだけで、香也は「うっ」と呻いて、少し、体を震わせた。
「は、はじめてだから……」
 香也は楓にそういった。
「うまくいかないかも。入れてすぐ、出ちゃったり」
 本音を言えば、今すぐ射精しかねないくらいに、香也は高まっていた。
「いいですよ。気にしなくて」
 香也が自信のなさを吐露したことで、かえって楓は、冷静さを取り戻す事ができた。不安を感じている、という点では、香也と大差ないはずだったが。
「好きなようになさって……わたしを……」
 それでも、頬が、熱くなる。
「……こうや様のモノに、してください……」

 口ではそういってみたものの、実際に侵入されてみると、無意識に腰を逃がすような動きをしてしまう。逃げようとする楓の体を、腰と肩に手を回し、香也が引き寄せようとする。香也の先端が楓を割って入ろうとする。ほんの少し入っただけでも、楓は自分が引き裂かれたような気分になって、「がぁ」とか「かはぁ」みたいな息を、喉から絞り出していた。
「……今日は、やめとく?」
 楓の取り乱しぶりに引き気味になった香也は、そういった。
「だめぇ。このまま、最後まで」
 涙目になりながらも、楓は懇願する。実は、針を自分に使えば一時的に痛覚を遮断することも可能なのだが、痛くても、自分で、香也を感じたい、と思った。
「一気に、入れちゃってください」
 軽く顔を左右に振って、息を整えつつ、楓はそういった。

 香也は、自分より一回り小さい楓を抱きかかえるようにして固定し、楓の要望通り、そのまま、一気に貫いた。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(9)

第一章 「行為と好意」(9)

「さて、と。
 これで一応義理は果たした訳だし、今晩の飯はわたしが作ってやろう。
 支度はまだだろう? ん?」
 茅への奇妙な問診を切り上げた三島百合香がそう宣言すると、
「えー! 先生、料理作れたんですか?」
 ほぼ反射的に、荒野は叫んだ。
「失礼な奴だな、お前は。
 まったく、なぜどいつもこいつも代わり映えのしない、同じような反応しかしないのか……」
 三島百合香はひとしきりそんなことをぶつくさ愚痴った後、
「少年。車に積んできた材料、降ろすの手伝え。
 これから長いつき合いになるし、今後、わたしが茅の面倒をみる機会もあるだろう。今のうちから一緒に飯ぐらいくって、親睦を深めておいてもいいだろ? ん?」
 と、荒野を引きずるようして、外に出ていく。

「さて、と」
 ほとんどの荷物を荒野に持たせて、自室からは作り置きの出汁汁が入ったペットボトル、調味料各種、「piyo-piyo」というロゴとディフォルメされたヒヨコが大きくプリントされたエプロン、等を持参した三島百合香は、持参したエプロンを身につけながら、荒野に訊ねた。
「普段はお前ら、どんなもん食ってるんだ?」
「あー。シチュウとかスープとか、煮込み系が多いっすね。おれ、大食らいだし、大量に作った方が旨くなるものが多いです」
「そうすると、洋食中心か……。
 わたしのレパートリーは和食中心だ。たまには目先が変わっていいだろ」
 いうが早いか、荒野が持ってきたスーパーの袋の中から大根を取り出し、輪切りにして皮を剥きいてからざく切りし、キッチンにあった鍋の中に放り込む。
「荒野、お前は炊飯器。米、研げ。そんくらいできるだろ」
「お、おう」
 荒野に指示する間も手を止めず、鰤の切り身をぶつ切りしてに、大根を入れた鍋にいれ、持参してきた出汁汁を加えて弱火にかる。味を見ながら酒、みりん、醤油、砂糖などの調味料を入れて味をととのえ、蓋をする。
 大根の残りと人参を短冊状に切り、サイコロ状に切った豆腐、タマネギを切ったものと一緒に別の鍋にいれ、出汁を入れて、火をかける。
 出汁汁を一合ほどボウルにいれ、そこに調味料を加えた「あわせ調味料」を用意し、鶏肉の切り身に塗りつけ、オーブンに放り込む。
「荒野は大食らいだったな。もう一品くらい作っておくか」
 豆腐を一口大に切り、皿に盛り、ラップをかけてレンジで温める。フライパンで挽肉を炒める。先ほどつくった「あわせ調味料」を半分ほど別の容器にわけ、その中に片栗粉を入れて素早くかき回す。いい具合に炒めあがった挽肉のフライパンを若干弱め、片栗粉入りのあわせ調味料をいれ、ゆっくりかき混ぜる。とろみがついたところで火をとめ、レンジから出した豆腐の上にのせる。
「ほい。一品目」
 そんな作業をしながら、時折、オーブンの中の鶏肉を取り出して焼き具合を確かめつつ、表面にあわせ調味料を塗りつけたり、鰤大根の煮え具合を確認したりしている。
 そぼろ餡を作った鍋を洗いながら、
「荒野、大皿用意しとけ。鰤大根、もう少しでいける」
 荒野に指示する。
 大根、人参、豆腐、タマネギを煮ていた鍋に味噌をときいれ、味をみて、火を止める。
「具だくさんの味噌汁、あがり。鍋敷、ないか?」
 荒野に準備させた鍋敷の上に、味噌汁の鍋を置き、自室から持参したビニール袋から、自分で漬けた漬けものを取り出す。手早く水洗いして、切って皿に盛る。
 焼き上がった鶏を切り分けて皿にもり、茗荷と芥子味噌を添えて、テーブルに置く。
 最後に鰤大根を大皿にあけたところで、ちょうど炊飯器から、炊きあがりを告げるアラームが聞こえた。
「ほい。ジャスト、っと。
 なにをぼさっと見ている。さっさと食卓につけ。熱いうちに食え」
 そういわれるまで、荒野も、普段、荒野の調理風景にあまり興味を示さない茅も、目を丸くして、三島百合香の無駄のない動きに見とれていた。

 その日三島百合香が用意した夕食は、驚くほどうまかった。

 そのせいかどうか、普段はあまりしゃべらない茅もいくらか多弁になり、料理のことをあれこれ三島百合香に訊ねた。それに、いつもより、食も進んでいるようだった。
「そんなに興味があるのなら、お前もやってみるか? ん?
 こんなもん、基本さえ覚えれば、あとはちょいとしたコツの積み重ね、それと、作業効率を考えたりする、要領の良さだ」
 三島百合香は自分で作った夕食を食べながら気楽にそういい放ち、何故か茅は、週末、三島百合香に料理を習いにいくことになってしまった。

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彼女はくノ一! 第一話 (15)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(15)

 楓の乳房は、香也の男根を挟み込むことが可能なほどには大きく、また、適度な弾力をもっていて、硬くそそりたつその部分を両側から刺激するのにも適していた。もちろん、楓自身は、乳房と香也の性器が接触する部分にごりごりする感触を感じるだけで、直接それが性格に繋がる、ということはまるでなく、だが、すぐ目の下に見慣れない、見方によってはグロテスクな形状の男性器が存在し、それに自分の意志で自分の一部分を押しつけている、という非日常的な行為自体には、それなりに感じる物があった。
『……こんなおっきいのが……これから、わたしのなかに……はいって……』
 鼻先に、香也の先端からあふれてくる匂いを感じながら、そのこわばりが自分を貫いている様を想像しようとして、でも、うまく想像できなくて、楓は、畏れつつ、期待し、一人で顔を赤らめた。

 一方、さきほどから乳房による奉仕を受け続けている香也のほうも、もちろん、女性にこのようなことをされるのは初めてなわけで、肌の接触から受ける感触、よりも、現在自分が置かれている異様なシュチュエーションのほうに、より、感じるところが多かった。
『楓に、積極的に刺激されている……』
 という事実から来る、最初の並が去ると、一度は高まった射精感が少し沈静し、自分の下半身に顔を近づけるようにして奉仕している楓を、冷静に見つめる精神的余裕も、若干はでてくる。
「……ねぇ、楓ちゃん」
 香也はいった。
「それ、楓ちゃんも感じるの?」
「……え?」
 一瞬、きょとんとした、虚を突かれたような顔をして、楓は、香也を見上げる。
「感じるとかそういうのではなくて……その、こうすると、男性が喜ぶ、と教えられました」
 教えられたときは、模型の張り型を使ったのだが。
「ぼく、楓ちゃん、触りたい。触って、感じて、感じさせたい」
 香也は、わりと真面目な表情をして、結構いやらしいことを言い出した。
「だからさ、ちょっと立って貰える。この姿勢だと、楓ちゃんの体と、距離がありすぎ」
「あ。はい」
 楓は、そういわれて初めて自分が全裸であることに気づいたかのように、急にもじもじと恥ずかしそうに体をくねらせ、局部と乳首を両腕で香也の視界から隠すようにしながら、それでも従順に、香也のその指示に従う。
 もちろん、楓の乳房は、腕一本で隠しきれないほどに発達していたし、楓が羞恥の感情を露わにする様子のほうが、平然としていられるよりは、香也の眼にはよほど扇情的に映った。

「触る」
 一言そういって、立ち上がった楓の豊満な胸に、香也は顔を埋めた。
「え? ……あっ!」
 その動きを予測していなかった楓は、あっけなく胸を隠していた腕を簡単に取り払われた。香也の顔が、乳房に押しつけられる。香也の頬が、熱くなっているのを、感じる。少し膝をかがめて、頭の高さを調節した香也は、楓の乳房に取り付いて、胸を揉みながら、乳首を舌で転がしたりし始めた。
 最初はくすぐったいような、変な感触しか受けなかったが、しばらく刺激をうけているうちに、段々と、
『……もっと、して欲しい……』
 と、そう思い始めている自分に気づいて、楓は愕然とする。

 楓は、自分でも気づかないうちに、香也の頭に腕を回して軽く抱き寄せ、「あっ。あっ。あっ」という断続的な、短い声をあげている。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(8)

第一章 「行為と好意」(8)

 茅にも了解を取り、長すぎる髪を樋口未樹に切ってもらうことになった。
 未樹にそう連絡すると、「二日後が非番の日だから、その日が都合よい」という。マンションの住所を伝えると、「なんだ。わたしん家からすぐそこじゃん」という答えが返ってきた。
「本当に、他人が来ても大丈夫か? 普通に会話できるか?」
 と、心配した荒野が尋ねると。
「大丈夫なの」
 と、茅は頷いた。
 荒野の心配も故のないことではなく、実は、茅はこれで、知られている限り、荒野としか会話していない。発見以来、他の誰とも、話していないのだ。
 樋口未樹との約束を取り付けた翌日、念のため、事情を知っている三島百合香に来て貰い、茅が実際に、あまり面識のない日常会話程度のコミュニケーションが取れるのかどうか、試してみることにした。

 三島百合香は、その日、当面の勤務先である学校から、荒野たちの部屋へと直行してくれた。
「さて、加納茅。わたしがわかるかな? 一度病院で会っているはずだが、あの時は挨拶もしなかった」
「憶えているの」
 三島百合香は挨拶もそこそこに本題を切り出し、茅は端的に返答した。
「茅が発見させる以前の事とか、いろいろ尋ねたいことはあるんだが、今まで荒野が聞いても答えてない、ということは、わたしにも答えられない、ということなのだろうな……」
「あ。先生」
 ここで、荒野が三島百合香の勘違いを訂正した。
「おれ、そのあたりのこと、全然茅に聞いてません。話したくなれば、勝手に話すだろうと思って……」
 この言葉を聞き、三島百合香は太いため息をついた。
「……まあ、たしかに、真相究明はお前の仕事じゃないからなぁ……。
 じゃあ、その真相に興味を持つわたしが、改めて聞こう。
 茅。お前が発見されるまで、お前はどういう状態にあったんだ?」
「ジンメイと暮らしていたの」
「それは、わかっている……」
 三島百合香は、なにをどう聞くべきなのか、しばらく考えた。
「その、一緒にいたジンメイは、お前にとって、どういう存在だった?」
「ジンメイはジンメイなの。わたしを育ててくれた人なの」
「つまり、茅、お前にとってジンメイとは、父親代わりみたいなものだったのか?」
「『父親』という言葉が、わからないの。昔から本でみるけど、茅は知らないの」
「では、家族……今の荒野みたいな存在だったのか?」
「今の荒野みたいな存在だったの」
「では、ジンメイを、茅、お前は、どういう人だったと思った? 怖い人だった? 優しい人だった?」
「怖いときも優しいときもあったの。茅が悪いことをすると怖くなるの」
「それは例えば、どんなときだ?」
「茅が危ないことをしそうになった時。小さいときは、刃物や火を勝手に扱おうとすると、すっごく怒られたの」
「大きくなってから、怒られたことは?」
「そんなことはないの」
 茅はかぶりを振った。
「大きくなってからは、怒られていないの。優しかったの」
「ジンメイは、今、どこにいると思う?」
「わからないの」
「ジンメイは、なぜ、姿を消したと思う?」
「わからないの」
「ジンメイが消えた後、どうしていた?」
「ずっと寝ていたの。あのまま死んでもいいと思ったの」
「食事は、ずっとジンメイが用意していたのか?」
「ずっとジンメイが持ってきてくれたの。ジンメイがいなくなってからは、なにも食べなかったの」
「ジンメイは、どういう人だと思う?」
「複雑な人なの」

 三島百合香が知りたいと思ったことは、全然、知ることはできなかった。が、茅が荒野以外の相手と、通常の日常会話程度なら支障なくできる、ということは、証明された形になった。
 そう判断した三島は、荒野に、
「これなら、問題ないんじゃないか?」
 とだけ、いった。
 もっとも、この程度の会話が不可能なのでは、三学期から始まる予定の「普通の学校生活」に適応できない、ということになるわけだが。

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彼女はくノ一! 第一話 (14)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(14)

 香也も楓も、他人の体温を自分の体内で感じることは初めての経験だった。当然、他人の体の一部が、口内という自分の体内に侵入してくるのも、差し込まれた舌を自分の舌と絡めるのも、唾液を交換するのも、初めてということになる。
 頬にかかる相手の吐息が荒く、熱いことを感じながら、二人は、目を閉じて、本能の赴くままに相手の存在を確認しようとした。
 そこにはもちろん、性的な欲求も根底にあったはずだが、それ以上に、切実に、相手の存在を五感で確認したい、という欲求が、存在した。
 あまり態度に表すことはないが、香也も楓も、孤児である自分、本来所属すべき場所をあらかじめ失っている自分、の、足下の不確かさを漠然と感じ続けており、その寄る辺なさを共有する相手を見つけ、お互い、相手との、なにかしらの関係を築きたくて、存在を確かめ合うように、必死に体をまさぐり合っていた。
 拙いながらも、愛撫と抱擁を繰り返し、長々と口唇を合わせた後、二人は、ようやく顔を離した。
 唾液が二人の口を繋ぎ、蕩けたような瞳でみつめあい、ほぼ同時に、はぁ、と満足げな吐息を対面する相手の首に吹きかける。そして、首や肩に回していた腕に力を込め、引き寄せ、正面から体を密着させた。
「……こうや様の、すごい元気……お腹に当たっています……熱くて、どくどく脈打っている……」
 楓は、香也の耳元に囁いた。
 香也も、性器で楓の腹部の感触を味わっていた。
 肌理の細かい、吸い付くような感触。体温。弾力があるのに、少し押しつけるとしなやかに押し戻す。
「……楓ちゃんの体、気持ちよすぎるから……」
 とくに愛撫をせずに、こうして抱き合って肌を合わせているだけでも、香也は結構満足していた。
「……でも……」
 濡れたような瞳で、楓は香也を見上げ、……。
「……こうや様との、絆が欲しいです……」
 擦れた声で、そういう言い方をした。

「……これでも、殿方を喜ばせる方法は、いろいろと教えられているんですよ……」
 楓は、浴槽の縁に香也を腰掛けさせ、自分は香也の前にひざまずくような体勢をとった。香也は、落ち着いて、正面間近から楓の体をみる。香也自身よりも一回り小さい体格。でも、全体に丸みを帯びた、曲線で構成された楓の体は、とても女らしいと思う。とくに、首から肩にかけての曲線が、香也にはとても美しく思えた。
『……今度、ヌード描かせてもらおうかな……』
 香也がそんな事を考えている間に、楓は、香也の男根を指でそっと摘み、角度を調整した上で、先端にかかるように、上から唾液を垂らす。唾液を擦りつけるようにして、男根全体を濡らすと、年齢の割には発育した双丘の間に香也自身を挟み込み、両側から押さえつけながら、ゆっくり揉みくしゃにしはじめる。
 まだまだあどけなさを充分に残した、年齢的に自分とそう変わらないように見える楓に、そういう行為をされているだけでも香也には充分刺激的だったが、くわえて、楓は、乳房の間から上に頭を出した亀頭に舌を延ばし、ちろちろと舐めはじめる。
 うっ。
 と、香也は低く呻いた。
 いつ射精しても、おかしくはなかった。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(7)

第一章 「行為と好意」(7)

 鼻ピアスの少年、大樹は姉に荒野のことを大げさに伝えたらしく、
「やっさんの事務所に殴り込んだっていってたから、なんかこう、もっとシュワちゃんにたいにマッチョでごつい子だと思ってたー。
 なに、実物は全然かわいーじゃない」
 とか、いわれた。
 荒野は、一見、痩せているように見え、愛想が良く細面であることも手伝って、初対面の人間には、良くいえば「細身の優男」、悪くいえば「青びょうたん」的な印象を与えるようだ。
 ただし、実態は、脂肪率が極端に少ない、しなやかな筋肉で構成された体の持ち主で、鍛えられた同族と比較しても「力持ち」のほうだった。荒野自身は、自分の体を「燃費の悪い体」と評している。確かに、性能的にすぐれてはいるが、その分、人一倍食べなくては性能を維持できないのだ。

 底の厚いブーツを履いた樋口未樹の目線は、身長百七十センチ強の荒野とほぼ同じ高さにあった。ので、未樹の身長は、百六十くらいと推測。
 その舌足らずな発音に、なにか外見から受けた印象よりも幼い印象を覚えたので、想定年齢を何歳か下方修正した話したほうが良さそうだ、と、荒野は思った。
 毛足の長いマスカラと濃いアイシャドウ、蛍光色に近い、光沢の入ったピンク色の口紅が、そんな感じの、全般に派手めのメイクが、冬だというのに一面小麦色に日焼けした顔にのっていたので、予測がぶれたらしい。
 推定十八歳、誤差プラスマイナス二歳。
 いずれにせよ、年上であることは確かなようなので、敬語を使わなくてはならない。ただし、あまり畏まらず、適度にフランクな感じも、だしながら。
 その辺の微妙なニュアンスの調整は、外国育ちの荒野は、あまり得意なほうではないのだが。

 鼻ピアスの少年の姉だと名乗る、樋口未樹は、荒野という少年に興味を抱いたようで、弟の大樹と同じように親しげに話しかけ、何分か立ち話をしているうちに、荒野は未樹が「これでも美容師の卵」だということを知り、ちょうどいい機会だから、茅の髪の問題を彼女に相談してみることにした。
「ちょっといろいろ事情があって、何年か髪を切っていない妹がいて……」
 というストーリーをでっち上げ、それとなく頼んでみると、
「うん。いいよ。聞いてると、難しいセットとかスタイリング無しでカットするだけなんでしょ? それなら、わたしでも大丈夫」
 と、快く即答してくれた。
「では、こっちも、その妹に確認してから、また連絡します」
 ということにして、荒野は、未樹と携帯の番号とメアドを交換した。
「すいません。これから家に帰って妹のメシ、作らなければならないので」
 というと、
「そっかぁ。今、妹さんと二人暮らしだったっけ? じゃあ、また今度。今度は妹さんも一緒に遊ぼう」
 といって、未樹と別れた。。

 例によって、スーパーに寄って山ほどの食材を買い込み帰宅すると、ネット書店のロゴが入った大きな段ボールがいくつも玄関近くの廊下に積んである。
 部屋の中に入ると、段ボールの一つを開けた茅がソファに座っていて、しかめつらしい顔をしてなにかを読んでいた。

 冷蔵庫に買ってきたばかりの食材を放り込んでから、茅になにを読んでいるのかと聞くと、「今日、送られてきたの」と、目の細い仏頂面の男が改造ライフルのスコープをのぞき込んでいる表紙を見せてくれた。
 表紙には「ゴルゴ13」と書いてあり、そのコミックブックは百数十余冊あった。
 荒野は、そのコミックが何十年も週刊発行のマンガ雑誌に連載されていた大作だとはしらなかったし、そもそも、「週刊発行のマンガ雑誌」などというものが存在することさえ、知らなかった。
『……日本文化は奥が深い……』
 荒野は、感慨を新たにした。

 その夜、茅が荒野のベッドに忍び込んできたのは送られてきた「ゴルゴ13」の既刊分すべてを読了した夜中になってからで、前日、前前日とほとんど眠れなかった荒野は、茅が来る頃には、すっかり熟睡していた。
 おかげで荒野は、久々に気持ちのよい睡眠を、たっぷりととることができた。

 そのかわり、翌朝になって、三島百合香が出勤する時間になっても起き出すことができず、後で、
「なんだ。ついに茅とやったか? で、一晩で何発やったんだ? ん?」
 などとからかわれた。

 荒野は、殺意を堪えるのに苦労した。

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彼女はくノ一! 第一話 (13)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(13)

 自分が香也に与えている混乱に自覚的な様子もみせず、楓は、愚直なまでに香也を喜ばせようとする。拙い動きで、奉仕をつづけた。
 香也の下半身に置いた掌をわさわさと蠢かしながら、自分の乳首を、香也の胸板に触れるか触れないかの微妙な位置で上下左右に揺らす。乳首が敏感なのか、動いている楓の口から「はうぅ」という可愛い吐息が漏れる。一方の掌で睾丸を包み、やんわりともみほぐしながら、もう一方の手の竿を握り、少しあまり気味の包皮を下に押しつけ、露出させた敏感な部分を、そっと、指先でたどる。
「うっ」っと、香也が小さく呻くと、
「痛かったですか?」と囁いて、自分の指を咥え、たっぷりと唾液で湿らせてから、再度香也の鈴口に指を這わせる。
「あっ。あ。あ。あ」
 若干腰を引き気味にして、香也が小さく声を漏らす。
「感じているこうや様、可愛いです」
 いいながら、楓は舌先を、香也の首筋に這わせる。
「もっと声、聞かせてください」
 そういいながら、楓は、香也の首から鎖骨にかけてまでの、広範囲な部分を、ぴちゃぴちゃと音を立てながら、舐めはじめる。肌に他人の舌の感触を感じた経験のない香也は、湿った生暖かいものが自分の肌を刺激する未知の感覚に鳥肌をたてた。
 自分の身を支えるために、軽く、楓の肩を抱き寄せる。すると、楓は豊満な乳房を香也の胸板にすりつけるようにして、自分の体を香也の体に密着させる。
「こうや様も、わたしのこと、触っていいんですよ」
 香也の耳元に顔を近づけ、耳に息を吹きかけるようにして、楓は囁く。
 ……できれば、優しく触ってくださると、嬉しいです……。
 そう、付け加える。

 楓の背中に手を回していた香也は、そこ言葉に勇気づけられたかのように、こわごわと、楓の肌に触れてみる。指先を、触れるか触れないか、という微妙な感じで接触させ、背筋を、上から下へ向かって、つ、つ、つ、と動かす。
 香也が触りはじめると、楓の背中が震えたような気がした。
「……感じた?」
「……聞かないでください」
 少し自信を持ち始めた香也は、上から腕を回し、掌で楓の臀部を包み込む。そのまま、その部分の肉の厚さを確かめるように、ゆっくりと指に力を込め、楓の体全体を、自分のほうに引き寄せる。
「……そんなにされると、わたしが、こうや様にご奉仕できません」
 引き寄せられ、楓と香也の体に挟まれて、香也の局部に這わせていた楓の手が邪魔になっていた。
「楓……ちゃんの体、全身で、感じたい」
 熱い息を吹きかけるようにして、香也のそういわれると、楓としても手を離すしかなかった。しぶしぶ、といった感じで香也の性器から手を離した楓は、自由になった腕を、香也の首に回す。
「顔、伏せてないで、ちゃんとこっち見て」
 香也にそういわれ、しかたなく、楓が香也の顔と、間近に向き合う。
 頬が熱いのが、自分でもわかる。
『……たぶん、わたし、真っ赤になっている……』
 楓がそんなことを思っていると、香也が、ゆっっくりと顔を近づけてきて……。
『わ。あわわわわ……』
 楓がパニックっているうちに、香也の口唇が、重なる。
 さっきのは、自分から求めて。今のは、自分が求められて。
 微妙に、「している感じ」が、異なる気がした。

 さっきのとは違い、今度のは、香也が楓の口唇を割って、舌を入れてきた。
 楓は、初めて、他人の舌を自分の舌に感じる。そのまま、絡ませ合う。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(6)

第一章 「行為と好意」(6)

「……面白いぐらいに見事に振り回されてるな、お前……」
 翌朝、いつものように三島百合香の部屋にいって、簡単に昨日の出来事をかいつまんで話すと、呆れたような、面白がっているような口調で、そう言われた。
「まあ、相手が『姫』ならそんなもんか。
 で、どうだ。お前の体調の方は? まだ我慢できそうか? ん?
 なんなら、今、わたしが抜いてやろうか? 本番がNGなら、手でも口でもサービスしてやっぞ」
 とかいって、手でなにかをしごく仕草をする。

 ……『この人は、どこまで本気で言っているのだろうか?』と、いつも、判断に困る。
 今まで荒野の周囲には、いなかったタイプだ。というか、こんなのがそこいらにゴロゴロいたら、それはそれで、困るか。
「……ソッチよりも睡眠不足のが堪えますよ」
 実際、こうしている今も、荒野は、眼がしょぼついているような気がしている。
「でもあれだろ。今日はこれから東京にいって、さっきいってたヤツの仕上げする予定なんだろ?」
「そうっす。ああいうのはタイミングが重要っすから」
「わたしがお前らやり方に口出すのも何だが、アレだな、相手方に忍び込んでいって『あんたの恥部を握っているんだぜ』という証拠をわざわざ土産に置いてくるってのも……やられた方にしてみりゃ、匕首喉元に突きつけられているようなもんだろ? それも正体不明の相手に。
 よくもまあ、そんなに陰険な手を考えつくもんだ」
「基本的におれらの仕事ってぇのはヨゴレで手段を選びませんから。
 結構よくやるやり方で、その分、実行するときの意識はルーチンっす」
「そんなもんかね。じゃあ、今日はこれから夜まで帰らないんだな?」
「そうっす。なるべく早く帰ってくるようにしますが、先生が学校から帰ってもおれがまだ帰ってないようだったら、茅のことよろしくっす」
 それから、茅の髪のことを相談したりするうちにすぐに三島の出勤時刻となった。
 別れ際に、
「そうだ、先生。
『ゴルゴ』ってなんのことか分かります?」
 と尋ねたら、
「……それ知らない日本人のほうが少数派だと思うがね……」
 と前置きしてから、「非常にポピュラーなコミックブックのヒーローだ」といい、それからなにか思いついたような顔をして、「そうだ、後で注文しておいてやろう。実物もみておいたほうがいいだろ。後学のために」とかいって、「にししし」と不吉な笑い方をした。

 三島百合香の部屋から自分たちの部屋に戻ると、昨日とは異なり茅は起きていて、自分で入れた紅茶を飲みながら、テレビをみていた。相変わらず、リモコンでチャンネルをシャフルしながら。
「茅、テレビ、好きなのか?」
「好き。ジンメイと住んでいたときはビデオだけだったし、病院の時はチャンネルが少なかった。ここはいっぱいチャンネルがあるから、面白い」
 マンションの共同アンテナで、地上波以外にUHFや専用チャンネルも入っていたから、たしかに閲覧可能なチャンネル数は多い。
 荒野自身はあまり興味がなかったが、茅が退屈せずに済むのなら、結構なことだ。
「甘い物は好きか?」
「好き」
 荒野が冷蔵庫から昨日買ったケーキの残りを出すと、寝起きだというのに、茅は躊躇せずそれに手を出した。茅がフォークで一口大にしたかけらを口の中に入れると、途端に普段のポーカーフェイスが崩れ、一瞬にして締まりのない顔になる。
 その様子を観察していた荒野自身、甘い物はかなり好きな方だが、茅がそこまで露骨に顔にだすとは思わなかったので、目を丸くした。
 最初、茅の急激な表情の変化に戸惑い、次に、
『……可愛い』
 と、思った。子供や小動物に感じる類の、愛らしさだったが。

「今日おれ、用事があって一日いないから。予定よりも遅くなるようだったら、先生が様子見に来てくれると思う。なるべく早く帰るようにするけど」
 二人で朝食代わりのケーキをパクつきながら、そういうと、
「わかった。でも、わたしのお昼は?」
 と聞き返された。
「……これ食べたら、コンビニでなにか買ってくる。レンジで温めるだけのヤツ」
 先生がいうように、おれは、「いいように振り回されている」のかも、知れない、と、荒野は思った。
 茅がまたチャンネルを変えると、地元地方局のローカルニュースを映し出し、暴力団員同士の喧嘩で死傷者が出た、ということを伝えていた。
 それが、荒野が初めて確認した、「昨日の働き」の成果だった。

 在来線と新幹線を乗り継いで東京まででる、という移動距離の違いはあったが、その日やったことも、つまりは昨日やったことの繰り返しで、違ったことといえば、相手が大物になった分、侵入する先の建物も大きくなり、警戒も厳重になった、ということぐらいだった。
『……やはりルーチンだよなあ、この手の仕事って……』
 そう思いながら荒野は、昨日と、そして、今までと同じように、その日の仕事も易々とこなした。ようするに、侵入先の「大物」の汚物を、鼻先に突きつけてきたわけだ。
 涼治のいうように、この影響でまた何人か死ぬかも知れないが、顔も知らない人間の生死よりも、荒野自身と茅の身の安全を確保するほうを、荒野は優先した。
 むざむざ誰かに潰されるのを待つほど、荒野は、善人でも無能でもなかった。

 てきぱきと効率よくルーチンな仕事を片づけたおかげで、予定よりも一時間ほど早く地元に帰ることができた。
 昨日と同じように夕食の準備をしようと駐輪場に向かうと、
「ね。君、ひょっとして荒野クン?」
 と声をかけられた。
「その髪で、わかった。大樹から聞いてないかな? わたし、未樹。樋口、未樹」
 その二十歳前後の女性は、鼻ピアスの少年、樋口大樹の、姉だと名乗った。

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彼女はくノ一! 第一話 (12)

第一話 ある日、くノ一が落ちてきて……。(12)

『……あー。これは、キスをしろということなんだろうなぁ……』
 と、眼を閉じて、自分のほうに顔を近づけてくる楓をみながら、香也は他人事のように思った。体の方はしっかりと反応していたが、意識の方がどうも状況の変化に追いついていない。それでなくても、今日はいろいろなことが起こりすぎたわけだし、楓にも今日あったばかりで、積極的に深い関係を持とうとするほどの思い入れも、当然、ない。
『……でも、この状態で拒んだら、彼女、傷つくだろうなぁ……』
 自他共に『鈍い』ということを認めている香也にも、さすがに、その程度のことは、わかる。極力、「誰も傷つけない」という選択をすることが、香也の基本的な方針であり、同時にそれは、狩野の家に拾われるまで孤児として育った香也の生存戦略でもあった。
「……やっぱり、わたしなんかじゃダメですかぁ……」
 わずかな時間、香也が躊躇していただけで、香也の顔の下から湿った声がした。見ると、楓が今にも泣きそうな顔をして香也を見上げている。
「……わたし、そんなにきれいでもないし、可愛くもないし……わかって、わかっているんですけど、他になにもこうや様にできそうなこと、思いつかないし……」

 本当に慌てると、『あわわわ』といいたくなるものだと、香也は初めて知った。
 どうしてそのような勘違いをしているのか、よく理解できないが、どうやら、楓は自分の容姿が男性に与える影響を過小評価しているらしい。実のところ、楓の呪縛にもにた吸引力から、いかに自分を引き離すか、と、香也は自制心を験されている気分になっていた。
 単純に、楓はタダ立っているだけでも充分に魅力的な外観をしていて、今は、それにプラスして、全裸で香也に抱きついている。どこか幼さ風貌を残し、それでいてセックスアピールも充分に持った美少女が裸になって自分に抱きついて、「自分に魅力がないから香也が抱いてくれない」と嘆いている図、なのだ。
 見下げれば、頬をバラ色に染めて潤んだ目で香也を見上げていて、肌が密着した箇所からは、蠱惑的な感触と体温が伝わってくる……。
 例えば、羽生譲あたりがこのシュチュエーションをみたら、思わず、『それどこのエロゲですか』程度のことはいったであろう、「おいしいすぎる」状況だった。
 その「おいしすぎる」状況にあって、香也が自制心を総動員して楓に手を出さないように努めていたのは、今までの人生で弱い立場にあることが多かった香也の、半ば習性と化した保身術のためであって……。

 決して、楓が異性として魅力的でないわけでも、香也が欲望を覚えていないわけでも、なかった。

『……駄目。限界』
 が、うるうるとした瞳で楓に見上げられているうちに、香也の自制心が決壊した。
 がばり、と、楓の肩を抱き返し、同時に、不器用に口唇を押しつける。
 一度、自身の欲望を認めると後は歯止めがきかず、香也は乱暴に楓の口唇を割って貪りながら、いきり立った下半身の欲望を柔らかくて熱い楓の肌に押しつけ、こすりつける。
「……はぁあ……あまり乱暴に……はじめてなので……」
 長々とした口唇の後、ふと口唇が離れた瞬間をみすまして、楓は香也の顔を少し離した。顔を背け気味にして、目を伏せる。
「……それに、わたしにも、やらせてください……」
 紅潮しながらも、湿った声でそういう楓の表情に、香也は女性を感じた。
 楓の小さな掌が下半身に伸びて、包み込む感触。
「……すごい……香也さんの、すっごい元気です……」
 ひとしきり、竿の形状を確認するように指を這わせた後、楓の指はさらに下に潜り込み、睾丸を包み込むような動きをする。それからその先の、肛門と睾丸の間の狭い部分を、指先で突くように、撫でる。
「……一応、男性の方を喜ばせる技術は習っていますが、本物の男性とするのは初めてですから、あまりうまくないかも知れないです……」

 恥ずかしそうに顔を伏せながら、それでも香也を喜ばせようとする楓の表情に、香也は背筋がゾクゾクするほど、「女性」を意識した。

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髪長姫は最後に笑う。 第一章(5)

第一章 「行為と好意」(5)

 近隣の「関係者たち」に死命を制する情報を保持する者が存在する証拠をばらまいて、茅と共に住むことになった町に帰ってきた頃にはすっかりく暗くなっていて、荒野は、家路を急ぐ人々に紛れて自宅最寄り駅を降りた。
 駅を出たところで、朝、出会った鼻ピアスの少年(樋口大樹と名乗った)とばったり出くわし、軽く会話を交わす。
「ミキねーちゃんに荒野さんのこと話したら、凄く会いたがっていたっすよ」
 といわれたので、「近いうちにいっしょに遊ぼう」ということになる。
 ただし、明日は東京まで遠征する予定だったので、具体的な日時は保留しておく。荒野は、茅にも早めに年齢の近い友人を早めに作って欲しいと思っていたので、帰ってみたら誘ってみるつもりだった。
 ……もっとも、鼻ピアスの少年と、日本人形のような風貌の茅と、銀髪の荒野が連んで町中を歩いている図は、荒野自身にも想像しにくかったが。

 駅の駐輪場に止めていたママチャリに乗り、スーパーによって食材を適当に買い足す。夕食は茅に食べ物の好みを尋ね、それに合わせて調理をするつもりだったので、できるだけ汎用的に使い回せる食材を選択した。
 マンションに帰ると、流石に茅は起きていて、テレビを観ていた。用意しておいたビーフ・シチュウも食べてくれたみたいで、皿は洗って流しに置いてあった。
 茅は、特定の番組にはあまり興味がないようで、リモコンで適当にシャフルしながらテレビを観ている。ただ単に、暇を持てあましているだけかも知れない。
「明日あたり、外に出てみる?」
 と荒野が尋ねてみると、茅は「その前に髪を切りたいの」と答えた。
 たしかに、地面に引きずるほど長い髪は、たとえ纏めたり編んだりしたとしても、外を出歩くときにはかなり邪魔になるだろう。
「でも、それ、ずっと伸ばしてたんでしょ?」
 荒野は、茅が保護されてからも一貫して髪を切られることを拒んだ、と聞いていた。
「もう伸ばす必要ないの。今は短い方がいいの。このくらいで切りたいの」
 と、茅は手を背中に回して、腰の上あたりを示す。
 突然の心変わりは不可解ではあったが、茅が外に出たがるのはいい変化だと思ったので、「出張できる美容師、探しておくよ」と荒野は答えた。
『そういうの、ネットで検索すれば分かるだろうか?
 その前に、明日の面会で先生に聞いてみるか』
 荒野自身は、あまり身なりに構わないほう……というよりは、今まで、生活環境的にそういうことに気を払うほど気持ちに余裕があったことが少なかったため、ファッションや髪型には無頓着なほうだが、茅にまでその無頓着さを押しつけるわけにもいかない。
「夕食になにが食べたい?」
 と聞くと、茅は「カレー」と答えた。
 シチュウに続けてカレーというのも何だが、リクエストを聞いた以上はそれに応えなくては、と思い、荒野はあわててルゥを買いに再び外出した。

 夕食の準備をしながら、食べ物の好き嫌いを茅に尋ねてみると、「好きな物も嫌いな物も特にない」という答えだった。夕食にカレーをリクエストしたのは、たまたまそういう気分だったから、らしい。献立を考える側としてはラクだが、張り合いがないといえばない。
 ついでに「料理はできるのか?」と聞いてみると、「ジンメイに禁止されたからわからないの」とのことだった。
 ……禁止……。
 ……先天的に不器用で、包丁の扱いが危なっかしくて観ていられないのか、それとも、味音痴でとても酷い味にしあがるのか……。
 非常に想像力を刺激する、返答だった。
『今度、地雷覚悟でやらせてみよう』、と、荒野は思った。

 夕食を食べ終え、交代で入浴することにする。茅に先に入れ、というと、「髪を洗うの手伝って欲しいの」といわれた。
「昨日は疲れていたのでシャワーしか浴びてないの。今夜はしっかり洗いたいの」
 たしかに、あの長すぎる髪を一人で洗うのは、かなり手間だろう、とは思う。茅の裸は昨日観ていたし、それ以上に抱き合って寝ていたので、今更抵抗してもはじまらない。
 一緒に服を脱いで浴室に入り、風邪を引かないように茅の体を温めのお湯を張った浴槽に浸した恰好で、荒野が茅の指示に従って、その長すぎる髪と格闘するハメになった。
 その結果、たかが洗髪も、ここまで伸ばした髪に丁寧に行うとなると、ものすごくい面倒な事になるのだ、ということを、荒野は学んだ。全裸で、長時間に渡り、慣れない、神経を使う作業を敢行した荒野は、「……早めに美容師を確保しよう」と、改めて決心した。
 茅の髪を丁寧にバスタオルで拭い取るところまで手伝って、荒野自身はシャワーをざっと浴びただけで済ませた。
 なにより、疲れていたので、一刻も早く横になりたかった。

 時間的には全然早かったが、荒野が自室に入ってベッドの上に横になると、当然のように茅も後についてきて、服を脱いで荒野の横に寝そべる。そして、荒野の服を脱がせて、自分の体を、一部の隙もないように、密着させる。
 茅の体温、茅の感触、茅の匂い……。
 茅はどちらかといえば小柄で痩せていて、荒野が実際の年齢以上に観られるのとは対照的に、幼く見えた。でも、やはり女性の体ではあって、出るところはしっかり出ている。それも、こう惜しげもなく密着されれば、胸も股間も、荒野の肌のどこかしらに触れているわけで、女を知らない荒野にとってこのような状態は、刺激的に過ぎて、精神衛生上劣悪、といってもいいような状態だった。
 数分もたたないうちに茅は寝息を立てて、そのことからも、昨夜と同様、誘っているわけではない、と、荒野は判断する。
 茅は、ただ単に抱きついてくるだけで、愛撫したり、キスをせがんできているわけではない。
『……ほとんどおれ、抱き枕扱いじゃないのか?』
 と、荒野は思った。
「生殺し」という意味を、現在進行形で体感しているような気分になった。

 昨夜に引き続き、荒野は、その夜もろくに眠れなかった。

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