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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(399)

第六章 「血と技」(399)

 ジュリエッタはしばらく「……うぅ~……」と低くうなっていたが、ほどなくして拗ねたような表情で、
「いい。やるね」
 とつぶやく。
「その代わり、静流が怪我をしても知らんね」
「そ、その心配は、いらないのです」
 静流は、そっけない態度で受け流す。
「ジュ、ジュリエッタさんは、わ、わたしに触れることは、できないのです」
 ジュリエッタと静流が低い含み笑いを合唱したところで、荒野は背を向けて徳川の携帯にかけた。メールでもいいようなもんだが、自分が興味を持てないことにはとことん無視する傾向がある徳川だと、すぐに返事が来る確率はかなり少ない。
『……あれ?
 かのうこうや?』
 五回ほど呼び出し音を鳴らした末、転送された先に出たのは、おなじみの声だった。
「……ノリか?
 徳川の携帯にかけたんだけど……」
『徳川さん、邪魔されるの、極端にいやがるからね。
 これ、工場の代表番号。私用の電話は、転送にしてたんでしょ。
 徳川さん、商用には別の回線使っているから……』
「……別に、いいけどな」
 荒野は、少ししらけた気分になりながら、用件を切り出す。
「その、工場の使用許可をとりたいんだが、おまえにでもいいのか?」
 ノリが工場の代表電話に出ている、ということは、ある程度の裁量権を与えられている可能性もある。
『工場を使いたいの? また、誰かの決闘?』
「ジュリエッタさんと静流さん。
 ってか、また、って……まるで、しょっちゅう同じようなこと、やっているような口振りじゃないか?」
『しょっちゅうかどうかわからないけど、この間の日曜の夜、やっぱりジュリエッタさんと楓おねーちゃんがやったんだけど……最強の肝いりで。
 何? かのうこうや、そのことまるで聞いていないの?』
「聞いていない」
 そのときの荒野の声は、かなり憮然としたものになった。
「まあ、そっちの件は、後で楓にしっかり聞くよ。
 で、工場は、使えるかな? できるだけ早い方がいいんだけど……」
『あ。いいと思うよ。
 そういうのみんな、待ち望んでいると思うし。
 そっかぁ……今度は、ジュリエッタさんと静流さんかぁ……。
 テンとノリが悔しがるかな……』
「あの二人は現象のところか?」
『うん。
 テンさえ出席すれば三人全員いくのは無駄だし、こっちも少しは進めておきたいし……で、ボクだけこっちに残っている』
「じゃあ、今からでもいいんだな?」
『いいよ。
 みんなで準備して待っているから。
 そっかぁ……ジュリエッタさんと静流さんかぁ……。
 今夜は、評が割れるなぁ……野呂系の人たちは、だいたい静流さんに賭けるだろうし……』
 とかいいつつ、通話が切れる。
 今……賭ける、とかいってなかったか?
 とか、首を傾げつつ、荒野は振り返って静流とジュリエッタに声をかけた。
「……えー。
 会場を押さえることができましたー。
 これから、徳川の工場に移動します」
「お、お店を閉めます……」
「剣、剣。
 剣を持ってくるよー……」
 荒野がそういうと、睨みあっていた静流とジュリエッタはばっと一足に後退し、それぞれに準備をはじめた。
「……ふぅ……」
 なんだかよくわからないノリだ、と思いつつ、荒野は小さくため息をつく。
「……あのぉ……」
「うわぁっ!」
 そこに、いきなり背後から声をかけられ、荒野は飛び上がった。
「え? あっ……。
 ジュリエッタさんの……」
「左様。
 執事にて、ございます。
 このたびは、お嬢様のお仕事を斡旋してくださったそうで……」
 やたら血色の悪いおっさんが、ぬぼぉーっと立っていた。蝶ネクタイにタキシード、という、日本の町では浮いている正装が、妙に板についている。
『……いつの間に……』
 荒野とて、別に油断をしていたわけではないのだが……。
「え、えと。
 こちらに、なります……」
 内心の動揺を隠しつつ、荒野は持参したプリントアウトを「執事の人」に差し出す。
「では、失礼して……」
 「執事の人」はうやうやしく荒野からプリントアウトを受け取り、中身を検分しはじめる。
「これはこれは……。
 どれもこれも、お嬢様のご気性に沿った、すばらしい内容でございますな」
「あー。
 その中で気に入ったのがあったら、印刷された連絡先に直接、申し入れてください。なんなら、おれの名前を出してもいいし……」
「ご配慮、痛みいります」
 「執事の人」は、深々と荒野に向かって頭をさげた。
「お嬢様ともども、ご期待にそえますよう、砕身させていただきます」
「……用意できたよー!
 お? セバスチャンがいるよ?」
 コートを着た上に細長いケースを肩に担いだジュリエッタが、店の前に出てくる。
「今、自分が電話で呼んだんでしょうに。マネージャー」
 荒野は、とりあえずつっこんでおいた。
「……ん……」
 外出の支度を整えた静流が、がらがらとシャッターを降ろす。
「こ、これで、準備はできましたけど……」
「それじゃあ、行きますか……」
 荒野はそういって歩き出す。
「わ、若っ」
 そんな荒野の背中に、静流が声をかけた。
「タ、タクシー、呼んであるのですっ!
 あ、歩くと、三十分以上かかるのですっ!」
 荒野がぴたりと足を止める。
 もちろん、三十分以上、というのは「一般人の速度で」ということになるわけだが……。
「……うす……」
 荒野は、そう答えて振り返る。
 単独行動が長いので、ついつい、「自分の速度」が判断基準になってしまう。荒野一人の移動なら、ここから徳川の工場までは、それこそあっという間なのだが……この人数だと、どこでどう人目につくのかわからないから、車両で移動する、という静流の判断は、正しい。

「……ちょっと、ご主人様、借りるぞぉ……」
 タクシーが来るまでの間、荒野は、静流の犬の首周りあたりをもモフモフして時間を潰した。ただでさえ、それなりの人数だし、タクシーだと流石にこの犬までは乗せることができない。従って、お留守番をしてもらうことになる。
 目こそ不自由なものの、他の知覚はむしろ常人以上である静流は、そもそも、普段でも犬抜きで不自由なくやっていける。半ば世間的なカモフラージュとして連れているようなものだ……と、荒野は思っている。

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彼女はくノ一! 第六話 (140)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(140)

 食事を終えた香也は、荒野たちの住むマンションへと向かう。出迎えた人たちの中に、おそらく香也にとっては初対面になる、精悍な表情の老人がいたことには少なからず驚かされたわけだが、すぐにサクマセンパイのおじいさんだと聞かれて、なんとなく納得をしてしまった。
 冷静に考えれば、何故そのサクマセンパイのおじいさんが荒野たちのマンションに来ているのか、とか、つっこみどころは多いはずではあったが、香也は、そういうこと舞子とはあまり気にしない性格だった。
 それと、そのサクマセンパイのことを、荒野や茅がサオリセンパイと呼んでいることにも、違和感を持った。学校では、サクマセンパイと呼んでいたのに……。
 この違いには、なにか意味があるのだろうか?

 そのサクマ=サオリ先輩は優雅な手つきで茅がいれた紅茶を持ち上げながら、口頭で香也と荒野に質問をぶつけるところから、勉強を開始した。
 実質、香也や荒野がどれだけの知識を身につけているか、ということを試す、小テストなわけだが、問題が口頭で出されると、聞きのがしたり聞き間違えたりすることを警戒して、神経を集中さえなければならない。
 まず最初にこれをやられたことで、香也の緊張は一気に増した。
 サオリセンパイの出題に答える形で、香也と荒野は紙の上に数式やら英単語やら年号やら漢字やらを書き込んでいいく。サオリセンパイは、科目にこだわらず、ランダムに出題してくるので、余計に気が抜けなかった。
 一時間以上、そうして質問責めになった後、
「だいたいのところは、わかった」
 といって、サオリセンパイは小休止をいれてくれた。「香也と荒野がどの程度理解しているのか」ということなのだろう。
 茅の紅茶を啜りながらの雑談になり、その内容からサオリセンパイが前期までの生徒会長をつとめていた、つまり、校内ではそれなりに名の知れた人だったと気づいたのだが、香也はもともとそういうことにもまるで興味を持たなかったので顔も名前も知らなかった。
 サオリセンパイの方は香也のことを、例によって「絵」を通して知っていたわけだが……最近、校内のそこここには、節操なく香也の絵が飾られているので、別に不思議でもなんでもない。
 今では、香也の名前や顔を知らない生徒はいても、香也の絵を知らない生徒はいないありさまだった。
 また、その雑談の中で、サオリセンパイは、荒野よりも茅の方と仲がいい……ということにも、気づいた。
 雰囲気と話しの流れから、おじいさんは荒野の仲間、みたいなことも感じられるのだが、荒野の方は、なんか、サオリセンパイと自分たちの側とは、少し距離を置こうとしていることも、荒野の態度からありありと感じ取ることができた。そういうことには鈍い方である、香也が感じ取れたくらいだから……荒野にしてみれば多少大げさになっても、自分の意志を表明しておく必要があったのだろう……と、香也は思った。そして、サオリセンパイとおじいさんには、どうやら、背後にそれなりに複雑な事情があるらしい……とも、思ったが、もとより香也はそこまで他人の事情にくちばしをつっこむつもりはないのであった。

 さて、そのサオリセンパイに、香也は「基本はかなりできている」みたいなことをいわれたわけだが、これもやはり香也自身の、というよりは、香也を教えた人々への評価だろう……と、香也は思う。香也自身、最近はなんとなく授業でやっている内容が理解できるところでもあり、自分の学力がそことはなく上昇していることも実感できている。いいことなのかわるいことなのか、といったら、常識的に考えて、断然、いいことなのではあろう。だけど、結局、香也は常時受け身でいただけである、という自覚もあるので、素直に喜べない部分もあった。もっとぶっちゃけていうと、「自分は何にもしていない」という気持ちも、香也は根強く持っている。
 香也のそんな気持ちには関係なく、サオリセンパイは、香也が憶えていないところやあやしい部分を的確に指摘して、反復させる。その後、確実に憶えたのかどうか確認し、問題がないと判断すれば、次のあやしい部分に移る……という一連のタスクを、すべて口頭で、行っていった。
 それも、香也と荒野の分、二人の分を、メモをとることすらせず、紅茶を飲みながら行っているわけで……。
『……この人も……』
 ただ者ではないよなぁ……と、香也は思う。
 いい加減、そういう「常人以上」の人が身近にいっぱいいすぎて、そのあたりの感覚が麻痺している傾向はあるのだが……いまさらながらに、香也は、サオリセンパイの凄さを認識する。

 そんな感じで、最初から最後までサオリセンパイに軽くあしらわれるままに時間が過ぎ、夕方のいい時間になる。途中、小休止を頻繁にいれていたこともあり、長時間取り組んでいた割には実感できる疲労が少ないような気がした。
 おじいさんと一緒にここで夕食も食べていく、というサオリセンパイを残して、香也は自宅に帰ることにした。
 ひとり、エレベーターで地上階に降りながら、香也は、
『あっ。あんまり疲れていないのは、勉強以外の余計な部分に気を使わなかったからだ』
 と、今更のことに思い当たる。
 同居人の少女たちに、始終つきまとわれている現在の状況は、普段、あまり意識していないにせよ、確実に香也の心理的負担を増やしていた。
 そういうことをいっさい考えないでいい、さっきのような環境が、今の香也にとっていかに居心地が良かったか……。
 などと考えながら、マンションを出たところで、
「……香也様ぁ」
 と、誰かにいきなり背中から抱きつかれた。
「ん? ん?」
 抱きついてきた人の姿を認めようと、香也は首を巡らせるのだが、その人は香也の背中に密着して抱きついているので、なかなか視界の中に入ってこない。
 それでも、抱きついてきた人の感触、というか、脂肪の付き具合や声から、おおよその特定はできるのであるが……自分がそういう特定ができる、という事実が、香也をまた少し落ち込ませたりする。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(398)

第六章 「血と技」(398)

「……うわっ……」
 静流の家の前に異様な一団が車座になって座っていたので、荒野は軽くのけぞった。
「って……。
 なにやってんすか、ジュリエッタさん!」
 この寒い中、ジュリエッタは、あきらかにホームレスとわかる人たちと一緒になって店の前に座り込み、酒盛りをやっている。
 いくらなんでも商売をしているうちの前でこれはないだろう……と、荒野は思った。
 昼間も相談されたばかりだったが……これは、早急に手を打たなくてはならないらしい。
「……はーい!
 わかー!」
 一升瓶をラッパ飲みしていたジュリエッタが、荒野に屈託のない挨拶を送る。ジュリエッタは、日本酒がお気に召したらしい。
「って、そんな場合じゃない!」
 荒野は座り込んでいたジュリエッタの両脇に手を突っ込んで強引にたたせ、そのまま背中を押して静流の店の中にジュリエッタを押していく。
「ちょっ。
 なんなんですか、ジュリエッタさん。
 表の人たちはっ!」
 荒野は、ジュリエッタを問いつめた。
「ほい!
 ジュリエッタのお友達だよー!」
 ジュリエッタの返答は見事に緊張感を欠いていた。
「みんななかよしー!
 若もいっぱいどうか?
 かけつけさんばいー!」
 なんか着眼点からして、違う。
「おれは未成年だし、日本では未成年はお酒飲めないんです。ジュリエッタさんのところではどうだったか知りませんけど……」
「ほい。そいつは残念。
 それは、若の神様が禁じているのかー?」
「いや、日本の法律で……。
 おれ、一応洗礼名はあるけど、真面目に信仰している神様はいません」
 荒野自身、物心つくはるか前の幼少時に、当時の養子に出されている先で洗礼を受けたそうだ……と聞かされているだけだった。
「法律なんて、破るためにあるものよー」
 ジュリエッタは朗らかに物騒なことをいう。
「もしくは、お金で目こぼししてもらうものー」
「いや、ジュリエッタさんがいたところでは、そうだったのかも知れないけど……」
 ジュリエッタみたいな、素で非常識な認識を保持しているタイプは、荒野にしてみれば苦手なタイプなのだった。
 説得や交渉のとっかかりだ、なかなか掴めない……。
「そうだ。
 ジュリエッタさん!」
 荒野は、持参したプリントアウトの束を、ジュリエッタの目の前でひらひらとかざして見せた。
「ジュリエッタさん、日本に、お金稼ぎに来たんでしょ?
 ほら。お仕事お仕事……」
 まるで幼児にでも言い聞かせるかのような口調で、荒野はジュリエッタをさとし始める。
「ほっ。
 お仕事ぉ……」
 ジュリエッタが、とろんとした目で荒野を見上げる。
「お仕事。ビジネス。お金になります」
 荒野は、ジュリエッタの目を見据えて、真面目な口調を作る。
「今、そういう話し、できる状態ですか?」
「そーゆーお話しならぁ……」
 ジュリエッタはごそごそとポケットの中に手を突っ込み、小さな携帯電話を取り出す。
 最小限の機能しか搭載していない、お年寄り向けの商品だった。
「……マネージャーを、通すのです……」
「……わ、若なのですか?」
 そのとき、店の奥から、静流が出てきた。

 その後、ジュリエッタが飲みかけていた一升瓶を渡し、代わりに店の前にたむろしていたホームレスの人たちにはお引き取り願い(ジュリエッタは「また遊びにいくねー」と手を振っていた)、店の奥に入った。
「お金を稼ぎに来て、散財ばかりしているじゃないですか。ジュリエッタさん……」
 昼間の話しでは、ジュリエッタは毎日のように飲み歩いている、ということだった。ホームレスと飲んでいるくらいだから、あまり料金がかさむ飲み方をしているとは思わないが、初対面の人でも片っ端から話しかけて仲間に誘っている可能性は、ある。
「おかねーはてんかーのまわりもっのー……」
 突如、奇妙な節回しをつけて、ジュリエッタが歌い出す。
「……いつもこんな感じなんですか?」
「こ、こんな感じ、なのです」
 静流が、なにか悟ったような口調で、答えた。
「確かに……一度、お灸を据えた方がいいですね……」
「な、なのです……」
 荒野と静流は、顔を見合わせてそんな風に囁きあう。
 おそらく、ジュリエッタに、悪気はない。
だからこそ、なおさらたちが悪い……ということも、いえるのだが……。
「……あー。
 ジュリエッタさん。ジュリエッタさんは、強い人とやり合いたいんですよね?」
「若が相手をしてくれるのかっ!」
 昼間の相談通り、荒野が水を向けると、ジュリエッタは即座に食いついてくる。
「いや、おれは、そういうのは出来るだけやらないようにしているんですけど……」
 荒野は、少し押され気味になりながらも受け流す。
「そっか。そだな。
 二番弟子にやられたから、一番弟子には挑戦できないんだったな……」
 ジュリエッタが、ひとりでつぶやきはじめた。
 ……いったい、なんのことか……とか疑問に思いつつ、荒野は、聞き返さずに先を続ける。
「……えー。
 それなら、喜んでください。
 こちらの静流さんが、お相手をしてくださるそうです……」
「……静流が?」
 ジュリエッタが、意表をつかれた顔になる。
「だって、静流、目が……」
 ジュリエッタは、静流と荒野の顔を、交互に見る。
「あんまり舐めない方がいいと思うけどな」
 荒野は、一応、警告しておいた。
「静流さん、仮にも、野呂の本家なわけだし……」
「静流はいいのか?
 それで……」
 きょとんとした表情で、ジュリエッタが静流に確認をする。
「む、むしろ、わたしが望んだことなのです……」
 静流が、静かな口調で告げる。
「そ、そのかわり……わ、わたしが勝ったら、いろいろと、いうことを聞いて欲しいのです……」
 いわれたジュリエッタは、相変わらずきょとんとした表情をしている。スレンダーな体型で目に障害がある静流は、ジュリエッタの認識によれば「論外」であるらしかった。
「返答は、イエスかノウか。
 やるかやらないかで」
 なにかいいかけたジュリエッタを、荒野が手で制する。
「仮にジュリエッタさんがやりたくない、というのなら……不戦勝ということで、今後は、静流さんのいうことを無条件に聞くこと」

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彼女はくノ一! 第六話 (139)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(139)

 休み時間になるたびい、茅は廊下に出ていった。別に香也が茅のことをことさらに注視していたわけではなく、この頃になると、特に、試験が近づくにつてれ、茅の周辺には常に何人かの生徒たちがたむろしている状態だったので、茅の動向は自然と人目にたつようになっていた。
 一つの試験が終わるたびに、茅は、自分の問題用紙に赤ペンで模範解答をざっと書きつけ、周囲に集まる生徒の誰かに適当に押しつける。そして、その茅の模範解答が回覧されている間に廊下に出て、ある三年生と落ち合う。もともと他人の顔などろくに記憶していない香也は、その三年生についてもまるで知らなかったわけが、同じクラスの生徒たちがサクマセンパイとか囁きあっていたので、なんらかの理由で有名な人なのかも知れない。ネクタイの色から判断すると、そのサクマセンパイは三年生の女生徒なわけで、卒業間際のセンパイと茅とがどういう経緯で知り合いになり、試験が終わるたび落ち合っているのか……香也には想像がつかない。
 廊下でそのサクマセンパイと合流した茅は、その場で携帯を取り出して、サクマセンパイが持参した紙の写真を撮る。すると、サクマセンパイは、そのままきびすを返して一年の廊下から去っていく。その間、ほとんど会話らしい会話もない。二、三、軽い挨拶や必要最低限のやりとりがあるくらいだった。二人が一年の教室の前で合流することは、事前に詳しく打ち合わせしてあった……としか、思えないこうけいだった。
 そのサクマセンパイが去った後、教室に戻ってきた茅は、先ほどから回覧されていた自分の「模範解答」を取り返し、これも、携帯に付属しているカメラで撮影。その後、携帯を操作して……どうやら、メールを発送しているらしかった。
 茅の一連の行動が、どういう意味を持つのかは、完全に香也の想像の外になる。
 香也にもわかることといえば……。
『……茅ちゃん、みんなに囲まれている……』
 ということだった。
 メールを送信し終えた茅は、周囲に集まってきた生徒たちに乞われるままに、先ほどの試験の解説をしたり、次の試験の予想をしたりしている。
 以前、茅が学校に通う前、荒野は、「茅が学校生活に適応できるか」と、傍目にもわかるほど気を揉んでいたものだったが……今の茅は、香也などよりは、よっぽど、学校生活に適応しているように思えた。

 業者が実施する偏差値を測定するための試験も含め、その日の試験がすべて終わると、香也はそそくさと帰り支度をする。試験期間中は課外活動はすべて禁止されているので、いつもなら楓と一緒に帰宅するところだが、その楓は掃除当番に当たっていて、少し遅くなる、ということだった。
 香也は二年の孫子が合流してこないうちに、と、帰りを急いだ。別に孫子のことを嫌っている……ということもないのだが、孫子のような自分とは不釣り合いな少女と二人っきりで歩く……ということに、香也は気恥ずかしさを感じてしまう。楓やテン、ガク、ノリのような親しみやすさがあるタイプだと抵抗感もかなり薄れるのだが、どこか凛と張りつめた雰囲気を漂わせている孫子と香也のようなぼーっとしたのが並んでいると、ミスマッチさで余計に目立つような気がした。
 そんなわけで少し早足で昇降口までいく途中、階段のころでその孫子からのメールが着信する。楓と同じく、掃除当番に当たっているので、先に帰ってもいい、という内容だった。終わるまで待っていてくれるとありがたい、ということも丁寧な文面で書かれていたが、香也は当然、その部分は無視する。
 先週の経験から想像をたくましくすると、どのみち帰宅したら午後の半日をべったりとひっつかれて過ごすことになるのだ。帰り道くらい、ひとりでゆっくりと歩きたかった。

 試験期間中は全学年が一斉に下校するので、昇降口付近はそれなりに混雑をしていた。その雑踏の中に、香也もよく知っている顔が集まってなにやら話し込んでいた。
 荒野と茅、それに、サクマセンパイとかいう人の三人だった。
 荒野はすぐに近くを通りかかった香也に気がつき、声をかけてくる。しばらく四人でいろいろと話し込んで、香也が適当にあいづちをうっているうちに、何故か知らないが、香也はこれか試験期間中、放課後、荒野のマンションに集まって勉強をする……ということになってしまった。どうやらこのサクマセンパイという人は、希代の「教えたがり」らしい。
 荒野のついでに、香也の勉強も見てくれる……と、いう。
 仮にその約束がなくても香也は同居人の少女たちから入れ替わり立ち替わり面倒を見られている立場であり……それよりは、荒野たちの中に入って勉強する方が、いくらかでも気分が楽、ではある。よくよく考えてみれば、香也にとっても、決して悪い話しではないのであった。

 荒野たちとはマンションの前で分かれ、いったん自宅に戻った香也は、着替えた後、真理がつくってくれた簡単な昼食を食べる。その途中で楓と孫子が前後して帰宅し、一緒に昼食をとる形となった。
 そこで香也は、午後いっぱい、荒野のマンションで一緒に勉強をすることになった……という件を、二人に話す。
 楓と孫子は、唐突な話しにかなり驚いていた様子だったが、荒野と茅、それにサクマセンパイという人が一緒だからというと、不承不承、といった態で納得をしてくれた。
「本当は、一緒にいきたいところですけれども……」
 孫子は、そういう。
「あんまり大勢で押しかけても、迷惑ですものね……」
 一部屋がかなり広めの間取りではあったが、荒野のマンションは、二LDKでしかない。特に必要もないのに多人数が詰めかければ、確かに、迷惑にはなるだろう。
「茅様が一緒なら、間違いはないですね……」
 そういいながらも、楓は、露骨に残念そうな顔をしている。
「わたしなんかが教えるより、よっぽど確実ですし……」
 どのみち、楓にしろ孫子にしろ、香也がいなければいないで、やることはいくらでもある身だった。二人とも、香也と同じ学生でもあるわけで……自分の時間があれば、自分自身の勉強にあてることになるのだろう。
 また、そうしてくれたほうが、香也自身の気持ち的にも、かなり楽でもあった。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(397)

第六章 「血と技」(397)

「先輩は、別に、一般人として後輩の相談に乗るだけだから、心配はいらないと思うの」
 荒野の、内心の狼狽を見透かしたように、茅が横合いから口をはさんだ。
「仮に、なにかの間違えで巻き込まれたとして……先輩には、源吉がついているし……万が一の時は、そこの酒見姉妹を護衛につけてもいいし……」
 茅の言葉に、源吉が重々しく、酒見姉妹は、少々戸惑った様子で、それぞれに頷く。
 困ったことに、というべきか、それとも、重畳なことにいうべきか……今度の春から、沙織と酒見姉妹とは、新入生として同じ学校に通いはじめる予定になっていた。
 護衛としてみると……これほど、便利な人材はいない……ということになる。少なくとも、荒野が沙織の介入を……沙織がこおさらに深入りしてくるのを禁止する……という口実を、無効にする理由には、なった。
「ま、いいけど……」
 茅に凝っと見つめられて、荒野は、結局、折れることにした。
 本音をいうならば……ただでさえ、十分にややこしいことになっている現在の状況下に加え、さらに沙織のような一般人にまで、こちら側の領域に、あまり深く入り込んで欲しくはないのだが……。
「イザベラの連絡先は、さっきシルヴィに教えてもらっていたから……あと、現象とかは、昼間工場にいけば、会える確率が高い……か……」
 荒野は、そんなことを小さくつぶやき始める。
 仲介の労をとろうにも、どうやら、荒野が出来ることは少ないらしい。
「別に、いいから。
 そんな細かいことは、こっちで考えるから……」
 沙織が、苦笑いを浮かべながら、荒野に告げる。
「荒野君は荒野君で、いろいろと大変なんでしょ?」
「大変っていうか、気苦労だけは多いっていうか……」
 今度は荒野が、苦笑いをする。
「……実際のまとめ役みたな人たちが、以前に比べると増えて来ているんで、実務的な部分ではそれなりに楽をさせてもらっていますけど……まあ、気楽、では、ないですね……」
 荒野の口調は、あまり歯切れがいいものではない。
 実際のところは、各々勝手に動き始めた末端の様子を、荒野があまりよく把握できていない……という側面もある。
 試験休みに入ったら……と、荒野は思った……少し、自分の足を使って、いろいろと見て回らなければな……と、荒野は思った。
 なにかしらトラブルがあったら、荒野の耳には入ってくる筈であるから……最近、荒野の周辺が静かである、ということは、言い換えれば、どこかで多少ごたごたがあっても、その場で解決して周囲に延焼していない、ということなのだろう……と、荒野は楽観的に考えることにしている。頻繁に視察みたいなことをして、この土地に自分の意志で流れてきた一族の者たちを、必要以上に萎縮させたくなかった。
 仮に、「加納荒野が、頻繁に見回りをしている」ということにでもなれば、一族の者たちは、「それだけ不安定な状況になっているのか」と不必要な緊張をする。それが容易に想像できたので、荒野は、特に学校に通っている間は、できるだけ「普通の学生」の域を出ないよう、自分の行動を制限しているつもりだった。荒野自身の自覚や「つもり」としてはともかく、「一族の中」では、「加納荒野」の名は、幾分の畏怖を発生させる固有名詞なのである。
 だが……長期休みに入ったら、ぶらりと散歩にいきがてら、あたりを見回ったとしても……さほど、警戒されることもないだろう。
「……荒野君は、心配しすぎよ。
 わたしは、なんか面白そうな人たちがいるみたいだから、勝手にかぎまわるだけ。
 本当に、ただそれだけなんだから……」
 荒野が少し思案顔になったのを誤解したのか、沙織がそんなことをいい添える。
「いや……もう、それは止めやしませんけど……。
 その、こういってはなんですけど、うちのやうらって、本当、変わっているのが多いですよ」
 しぶしぶ、といった感ではあるが、荒野は、沙織がこちら側に近づいてくることを認めてしまっている。正確に言うのなら、積極的に反対すべき理由がないから、反対できない。
「期末試験が終わったら……」
 荒野の気持ちはおそらく推察しているのだろうが、表面にはそんなそぶりを感じさせない茅が、沙織にいう。
「……先輩を、徳川の工場に案内するの。
 あそこは、今、一族の溜まり場になっているから……」

 夕食が終わり、沙織と源吉が帰る。
 残った酒見姉妹と茅とが夕食の後かたづけを行い、その後、連れだってマンションを出ていった。今夜は、週に何度かある「佐久間の技」の講習がある日だった。
 これは別に何曜日、とか固定して決まっているわけではなく、メールなどで連絡を取り合って、集まる日を決めているらしい。今ではテン、ガク、ノリの三人もそれなりに多忙であり、毎日夕食の時間にはお隣の狩野家に帰っているらしい。が、そこにまで仕事を持ち帰ることも、少なくはないらしかった。
 また、この日はテン、ガク、ノリの三人と一緒に行動するわけであり、荒野も、茅のことを心配することなく、安心して送り出すことができる。
 茅と酒見姉妹を送り出し、久々にひとりになった荒野は、早速ノートパソコンを立ち上げ、一族が管理するサイトにアクセスする。昼間約束した、「ジュリエッタを暇にしないため」、斡旋する仕事を見繕うつもりだった。
 ハイリターンではあるが、同時に、ハイリスクでもあり、結果、供給過多になっているたぐいの「仕事」は、常時それなりの数、存在する。その中からジュリエッタ向けの……言い換えれば、荒事、それも、繊細な判断能力はさほど必要とはせず、力技のごり押しでなんとかなるたぐいの荒技だけを選別して、ピックアップしていく。
 必然的に血なまぐさいものが多くなったが、ジュリエッタあら、その辺のことはあまり気にはしないだろう。
 いくつか見繕った候補をプリントアウトして外出の支度をした荒野は、そのままマンションを出て静流の家に向かう。茅はまだまだ帰ってはこない筈だし、なにかの用事が出来て荒野が遅くなるようだったら、メールででも連絡すればいい……と、荒野は思った。

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彼女はくノ一! 第六話 (138)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(138)

「……んー……」
 香也は、一目見るなり樋口明日樹の顔色が優れないことに、いち早く気づいた。
「大丈夫?」
「ん。大丈夫。たいしたことない」
 その朝は、孫子の顔色もあまり芳しいものではなかったが、孫子の場合はどちらかというと精神面に原因が求められるものであり、明日樹の場合は……。
「ちょっと……緊張して、あまり眠れなかっただけで……」
 今回の試験の結果で、ある程度、進路が絞られてしまう……というほど大げさなものでもなかったが、基本的に真面目で小さなことも気になってしまう気質の明日樹は、いよいよ「受験」が近づいてきた、という実感を得て、少し神経過敏になっていた。
「どうせ眠れないのなら、あきらめて、徹夜でお勉強でもしておけばいいのに……」
 からかうような口調で半畳を入れるのは、明日樹の弟の大樹である。
「……ヘンなところで小心なんだよな、姉貴は……」
 明日樹は、言葉ではそれに答えず、代わりに無言のまま、大樹の頭を平手で軽く叩いた。
「……んー……」
 香也は、軽く顔を上に向ける。
「……そう……」
 妙に言葉が少ないのは、香也が受験とか進路のこととかを、まだ一度も真剣に検討したことがなく、全然実感も沸かなければ、深刻さも理解できないためであった。香也にとってそうした将来の事柄は、対岸の火事以上の、それこそ、遠い異国の戦争のように、他人事に思えている……。
 そこまで実感が沸かない以上、下手な慰めの言葉をかけるのも、おかしい……と、香也は思う。第一、もともと香也は弁が立つほどでもないので、このような際、どういっていいのかよくわからない。
「才賀さんは、大丈夫なの?」
 明日樹は、同級生である孫子に声をかけてみた。
 荒野や舞花も同級だったが、二人は向こうで栗田も交えて、なにらやらじゃれ合いまじりの雑談を交わしている。特に珍しい光景ではなく、むしろいつも通りの様子、ともいえるのだが……明日樹にしてみれば、あそこまでマイペースを保てる人たちが、うらやましい。
「普段から、やるべきことをやっておりますので……」
 孫子は、どちらかというと素っ気のない返答をした後、明日樹に聞き返す。
「学校の勉強なら、あなたも、普段からしっかりやっているのではありませんか?」
 なにしろ、同じクラスなのだ。
 通常の授業態度などから、おおよよその成績は想像がつく。
 孫子にいわせれば、努力に応じた成績がとれるのは当たり前のことであって……普段、真面目にやっていない連中が土壇場になって騒ぐのは、まだしも理解できるのだが……明日樹のように、ちゃんとやっている者までが、不必要に神経質になる……という心理が、理解できない。
 孫子の推測するところによれば、明日樹の成績は、そんなにおびえるほど悪いとは思えなかった。
「理屈では……そう、なんだけれどもね……」
 明日樹は、少しうなだれる。
「それでも、緊張するよう……」
 そういうもんなのか……と、一連の会話をみていた香也は納得することにした。
「……よう」
 大樹が、今度は、香也に話しかけてくる。
「お前は、自信ないだろ?」
 もともと、「一年生の不登校気味生徒」として香也と並んでいた、ということもあり、香也を自分と同じ劣等生である、と断定してきていた。
「……んー……」
 香也は、少し首を傾げるながら答える。
「自信は、ないけど……やれることは、やった……」
「……なっ!
 おま……」
 香也の静かな口調の中に、確固としたものを感じた大樹は、上体をのけぞっらせて驚いた後、
「このぉ、裏切りものっ!」
 香也に、詰め寄った。
「……あほ……」
 すぱぁーん、と、小気味のよい音をたてて、明日樹が大樹の後頭部をはたいた。

「……ちょ、ちょっと待ってっ! 見捨てないでっ!
 まぁーくん!……」
 教室にはいると、柏あんなが違うクラスの堺雅史の腕を引っ張って、自分の席から離すまいとしているところだった。
 二人を指さして、香也は、先に来ていた矢島と牧田に向かって、小さく首を傾げてみせる。
「これはこれで、腹が立つ光景ですわよね……」
「……やってらんないっつうか……」
 と前置きして、二人は香也に、「試験に自信のない柏あんなが、ぎりぎりまで堺雅史を拘束して教えを乞うている」といった意味の説明をしてくれる。
「……そんな、寸前にあわてるくらいなら、もっと前からしっかりやっておけばいいのに……」
 ぶつくさ小声で文句をいいながらも、律儀にあんなにピンポイントで出題されそうな問題を教えている、堺雅史だった。
「なんだかんだいって、仲がいいからねー……」
「だからこそ、より一層腹がたつっていうのはあるけど……」
 柏あんなに聞こえる音量で、矢島と牧田がそんなことをしゃべっている。柏あんなの方は、そんな二人に構っている余裕はないようだった。
「は、は、は……」
 なんとリアクションしていいのかわからず呆然と見守るだけだった香也の代わりに、楓が乾いた笑い声を、お義理で、といった態であげていた。

 各人各様の反応をみせて始まった期末試験も、実際に実施されてみるといつもの授業風景とあまり変わらない。強いていえば、教室内がいつもよりもずっと静まり返っていることくらい、相違点ではあった。
 香也は、他の同級生たちと同様、答案用紙を埋めるのに余念がない。以前と比べて特に手応えがある……とも思わなかったが、以前よりは、解答を書き込める問題が、着実に増えている。前は、そもそもなにかしらの答えを書き込める問題自体が、かなり少なかった。
 やはり……やればやっただけ、身につくんだな……と、香也は、他人事のような感慨を覚える。特に、充実感などは、感じなかったのだが。むしろ、あれだけの時間を費やしたのだから……あれだけ大勢の人たちが自分のために時間を割いてくれたのだから、この程度は出来ないと申し訳が立たない……とさえ、思う。
 仮に、今回、香也の成績が上がっていたとしても……この文だと、ほぼ確実にそうなりそうなのだが……それは、香也一人の努力の成果、というよりも、香也のために頑張ってくれた人たちのおかげだ……と、香也は、本気で思っていた。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(396)

第六章 「血と技」(396)

 初っぱなにシルヴィと静流という予想外の来訪者はあったものの、その日の午後も平穏無事に過ぎていく。夕方頃、食材を抱えた酒見姉妹が転がり込んできて、入れ替わりに香也が隣の家に帰っていくのも、昨日と同じだった。まだ二日目ではあったが、試験時の生活パターンというものがすでに出来てしまっている。
「お前ら、向こうの家は留守にしていいのか?」
 茅と一緒に夕食の支度をしている酒見姉妹に、荒野は尋ねてみる。
 ようは、向こうの家……つまり、現象とその監視人たちの様子が知りたかったわけだが……。
「……問題、ありません……」
「……あのへっぽこ佐久間めは、最近ではめっきりおとなしいもんでございます……」
「……おとなしい、というか……」
「……朝から遅くまで、あちこちに飛び回っている有様でして……」
 荒野自身も何度か顔を合わせたりしているので、最近の現象が、独自の路線を目指して動き出している……ということは、知ってはいる。
 ただ、今の時点では、この土地に流れてきた一族の者たちと普通に接している、ということ、それに、昼間は徳川の工場に出入りして、テン、ガク、ノリたちの活動を子細に見学はじめたことなどは、荒野も掴んではいるのだが……。
「……舎人さんたちがあれだけべったりくっついていれば、間違いは起こらないだろうけどさ……」
 荒野が聞きたいことは、そういうことではない。
「あいつ……こっちで……つまり、春から通いはじめる学校で、うまくやれそうか?」
 それなりに非常識な面を持つ酒見姉妹にこういうことを聞くのもなんなのだが……参考意見は、今のうちに聞いおいた方がいい。
 何しろ、今度の春から、現象たちは荒野と同じ学校に通うことになる。現象がなにかしでかせば、荒野たちにも少なからず影響が及んでくる可能性が大きいわけで……だから、荒野は、現象についての情報が欲しかった。
 ようは……現象は、普通の日常生活がおくれるくらいには、常識的な振る舞いをすることが出来るのか……ということを、確認しておきたかった。
「「……その点は……」」
 荒野の意図をようやく察して、酒見姉妹は顔を見合わせる。
「……おそらく、心配はないかと……」
「現象は、どうも、本気で……」
「「一般人の中にとけ込もうとしているようです……」」
 二人の見解は、荒野が断片的に集めてきた情報から推察できる結論と一致する。
 もちろん、現象なりの目算なりがあっての選択なのだろうが……。
『たとえ当面のことであっても……おとなしくしてくれるのであれば、歓迎すべきか……』
 荒野は、そう思う。少なくとものべつなく問題を起こされるよりは、いくらかマシというものだ。
「ねぇねぇ……」
 沙織が、荒野に予想外の興味を示してきた。
「……さっきからぽんこつとかへっぽことかいわれている、その、現象って人? その子、佐久間ってことだけど……その佐久間って、おじいさんと同じ佐久間ってこと?
 そんな人がここに来ている……来年から、うちの学校に通うっていうこと?」
 沙織の目が、輝いている。
『……そういえば、この人……』
 荒野は、昼間、沙織がイザベラの話しにくいついてきたことを思い出す。その後沙織は、シルヴィから強引にイザベラの居場所を聞き出してもいた。
 荒野も、今日まで知らなかったのだが……どうも沙織には、「ヘンな人間マニア」という側面があるらしかった。
 荒野はちらりと源吉に視線を走らせ、源吉が軽く頷くのを確認してから、沙織に現象のことを話しはじめる。
「……現象は、佐久間っていっても、かなりイレギュラーな存在で……。
 純粋な佐久間というより、茅たちに近い。
 オーソドックスな佐久間は、どちらかというと現象本人よりも、現象の監視役としてついてきている梢の方で……」
 そもそもの最初……現象が、学校を襲ってきた前後のことから、生い立ちから最近の様子まで……荒野は、簡単に説明しはじめる。行きがかり上、茅やテン、ガク、ノリの出自にも触れないわけにいかなかったわけが……その段になってアイコンタクトをとると、茅ははっきりと大きく頷いたので、荒野は下手な省略やごまかしをせず、正直に説明することにする。つい先頃、真理に対して行った説明と重複する部分が多かったせいもあって、荒野の口はなめらかだった。沙織に以外の、この場にいる全員にとっては既知の情報だったが、荒野の説明を遮る者はいなかった。茅などは時折、荒野の説明でわかりにくかったりしたところを、補足説明したりする。

「ぽんこつでへっぽこの佐久間、現象君、かぁ……」
 準備を含めた夕食の時間を半ば費やし、長々とした説明を終えると、沙織は軽くため息をついた。
「……昼間いってた、放蕩娘のイザベラさんといい……荒野君も、大変ねぇ……」
「ええ。まぁ」
 荒野は、頷く。
「問題児の抑制が、ここでのおれの仕事……みたいなもんだと、思っていますから……」
 当然のことながら、荒野は……それでも、現象の背後にいた謎の襲撃者、悪餓鬼どもについては、沙織には、伏せたままにしておいた。
 一般人である沙織を、これ以上、危ない方面に巻き込むわけには、いかない。
 荒野や香也の勉強をみてやるのとは、リスクが違いすぎる以上……こっち方面の情報を下手にちらつかせて、沙織に興味を持ってもらっては、困るのだった。
「イザベラさんには、近いうちに……そうね。
 試験休みでも、ご挨拶に伺うこととして……」
 沙織は、不穏なことをさらりと口にした。
「……その、現象という子にも、そのうち会う機会はあると思うの……」
「……って、先輩っ!」
 荒野は、すかさずつっこむ。
「先輩……今年で、卒業でしょう?」
「もちろん、卒業はするけどぉ……」
 沙織は、ことさらゆっくりとした口調で、荒野に答える。
「……ボランティアとかの活動も、あるからぁ……。
 茅ちゃんとはこれからもおつき合いさせていただくわけだし、特に春休みとか試験休みとかの長期休暇の時は、徳川君の工場にお邪魔することもありえるしぃ……。
 そこでばったっり現象君と梢さんに出会って、仲良くなることは、十分にありえるわよねぇ……」
 荒野の額に、たらりと汗が滲む。
 案外……沙織先輩は、荒野が考えていた以上に、一筋縄ではいかない人……なのかも知れない……。

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彼女はくノ一! 第六話 (137)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(137)

 普段し慣れない勉強を長時間したせいか、自室に戻るなり香也は、軽い眠気に襲われた。このまま寝てもいいかな……と思いつつ、香也は布団を敷きはじめる。ここ数日誰かしらが香也にひっついて世話を焼いていたおかげで、自分自身で夜具の支度をするのもひどく久しぶりなような気がする。
 ちらりと時計を確認すると、いつも寝る時間よりも二時間以上早い。
 少し考えて、「今日はもう、勉強はいいや」と早々に見切りをつけて、スケッチブックと鉛筆を手に、下半身だけ布団の中に入る。
 特に何を考える、ということなく、香也は、ごく自然な所作でスケッチブックを開いてさらさらと鉛筆を走らせる。
 時間が余った時、頭を出来るだけ空っぽにして移動筆記的に絵を描いてく……というのは、香也は、よくする。所詮、クロッキー的な走り書きにすぎなのだが、すでに基本が出来ているから可能なことでもあった。絵を描くことにかなりの時間を費やしている香也は、少なくとも技術的な面に関しては、それなりの水準に達している。
 無意識に任せて鉛筆を動かしても、それなりに絵が完成してしまうくらいには。

「……んー……」
 しばらく無心に鉛筆を走らせていた香也は、少し腕を伸ばしてスケッチブックとの距離を空け、自分が描いていたのが何なのか、改めて見直してみた。紙の上には足や肩、顔、手……などの人体のパーツが散らばっている。人体のスケッチは基本的な事項だし、香也も時間がある時にはこうして適当に行うことがあるので、それ自体は、なんら不自然ではないのだが……改めて見返してみると、なにか、違和感を感じる……。
「……あっ!」
 しばらく考え込んだ後、あることに思い当たり、香也は小さな叫び声を発した。
 適当に、思い浮かんだものを描いているつもりではあったが……実際に描きあがったのは……どれも楓のパーツだった。
 普段見慣れない角度や距離からみた光景として描いているから、なかなか気がつきにくかったわけだが……至近距離で、例えば、密着して抱き合っているところからの視線だと、楓の各部はこのように見える……。
 そのことに思い当たった時、香也は少し怖くなった。
 今日の、昼間のことがあったばかりだとはいえ……香也は、自分の中での楓の比重が、自覚している以上に大きくなっていることに気づき、愕然とする。
 香也とそういう関係になっているのは、別に楓だけではない。その筈なのに、スケッチブックの上には、楓のパーツのみが並んでいる……というのは、やはり、普通ではない。
 香也自身の感覚では、自分に接してくれる少女たちの扱いには、差をつけないように気をつけていた「つもり」だったが……。
 いくら昼間の体験が強烈だったとはいえ……香也が意識していないところで、楓の存在が大きくなっている……ということは、確実なようだった。
 その、「香也の自覚していないところで」という部分が、香也には、特に恐ろしく思えた。いつの間にか、他の少女たちとの扱いに差をつけている……ということも……そのため、現在保たれている微妙なバランスが崩れる……ということも、十分に、考えられる。
 それ以前に……自分自身の気持ちを、自覚もコントロールも出来ていない……という事実に、香也は、衝撃を受けている。
 自分の気持ちとは……ここまで得体の知れない、制御不能のものだったのか……。
 それは……それまで、自他を問わず「人間の内面」というものにろくに注意を払ってこなかった香也にとって、青天の霹靂といっても過言ではない衝撃となった。
 あるいは……それは、香也が「自我」というものを明確に意識した、最初の瞬間だったのかもしれない。

「今日は、わたくしがお世話をさせていただきます……」
 翌朝、顔を合わせるなり、挨拶もそこそこに孫子がそう話しかけてくる。
 ぐっすりと快適な睡眠をとることが出来た香也とは対照的に、孫子には、若干の疲れがみえているようだった。顔色が優れないし、肌にいつもの張りが見えないとか……。
 おそらく、香也の知らないところでまた何か暗闘みたいなことがあったような気もするのだが……深く追求するのは怖かったので、香也はあえて何も聞かない。
「……んー……」
 香也は、例によって曖昧な生返事をする。
 先週に引き続き、へたに逆らっても、より一層面倒なことになりそうな気がしたからだ。
「……いいけど……」
 あえて「よろしく」とか「お願い」みたいなことをいわないのは、香也なりのせめてもの抵抗だった。
 香也の態度や反応が淡泊なのは今に始まったことではないので、孫子は特に不審に思うこともなく、洗面所に向かう香也の後についていく。トイレや洗面所を使った後にいちいちタオルを差し出してくれるのは、甲斐甲斐しいともいえるのだが、見方によっては煩わしくもある。少なくとも香也は、こうしてうやうやしく扱われることには慣れていない。いつまでも慣れることはないだろう。
 なんだかなぁ……と思いつつも、先週に引き続きはっきりと「やめてくれ」とはいわないのが、香也でもあった。
少なくとも孫子は、いや、ほかの少女たちにしても、香也に悪意があってやっているわけではない。むしろその逆で、だからこそ、かえって扱いが難しい。

 みんなで朝食を囲みながら、香也は、
「ああ。今日から期末試験だったな」
 と改めて思い直す。別に忘れていたわけではなかったが、香也にしては珍しく真面目に勉強をしはじめて最初の定期試験でもあり、香也は香也に、自分がどれだけの成績を取ることが出来るのか、ということについて、多少の興味は抱いている。
 香也の勉強を見てきた人たちの意見を総合すると、「以前とは比べものにならないくらいに向上している」という見解になるわけだが……比較の対象となる「以前の香也の成績」というのがお話しにならないくらいに低レベルだったため、「そこから多少上がった」といわれても素直に安心できないのであった。
 具体的にどれぐらいの点数がとれるものなのか……特に本人にとっては、判断が難しいところだった。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(395)

第六章 「血と技」(395)

 沙織は他人の内面を推測するのが好きだった。たいていのことは分析・記憶・解析……なのの「理解」ができる沙織にとって、身近でかつ「理解しづらい」ものだったからだ。
 それでも、「人間の行動原理」というものは、一般にいわれているほどバリエーションがあるわけではない。人間も動物の一種であり、いくつかの欲望にとって支配されている。
 それは、食欲や性欲など、動物的な情動であったり、知性を前提とする社会的な承認要求だったりするわけだが……ようは、数種類の欲望ベクトルの総和として一人の行動が決定されるわけであり……その基本原則さえ理解してしまえば、多くの人が驚くほど単純な原理で自分の行動を決定してしまっている……と、沙織は、自分の経験から、そう結論している。
 日常生活を送るのに必要なのはそうした単純さであり、事実、比較的大勢の人たちが、「複雑な内面」を持たずに、普通に生活を送っている。
 そして、沙織が興味を引かれるのは、そうした「大多数の普通の人々」ではなく、どちらかといえば少数派に属する「多少なりとも複雑な内面」を持ってしまった人たち、だった。
 沙織の経験によれば、その「複雑な内面」の持ち主は、割合にすれば数十人のうち数人……つまり、だいたい一クラスに一人か二人にくらいの割合であり、普通に学生生活を送っていたのでは、あまり多くの「サンプル」に巡り会うことはできない……というのが、沙織が生徒会長に立候補した本当の動機であった。生徒会長という地位を確保すれば、接することのできる生徒の数は、飛躍的に増える。多くの生徒たちの興味を持ってかぎ動き回っていても、周囲に奇異に思われることもない。
『……茅ちゃんと荒野君のおかげで……』
 そうした面倒なサンプル探しも、今後はかなりお手軽になりそうな気がした。
 沙織が茅に声をかけた時は、そうした「サンプル探し」的な興味からではなかったが、現在、そしてこれからは、なんだかんだで観察対象サンプルには事欠かないようだった。
『……こんなにそばに……』
 面白そうなサンプルが、いたなんて……と、沙織は、紅茶のカップを掌で包みながら、目の前でノートと格闘している香也をみた。
『……案外、見落としているものね……』
 沙織は、こうして引き合わされる前から「概要」としては香也のことを知っていた。まず、一学期中、あまりに出席率が悪い一年生として教師たちが話題にしているのを、職員室に出入りしていた時に耳にし、その一年生の出席状況が、その後、美術部の二年生にひっぱられる形で劇的に改善した時の様子も、伝聞ではあるが、リアルタイムに接している。
 その前後、こっそり美術部に様子をこっそりと見に行ったりもしているのだが……不登校気味の一年生をひっぱってきた樋口明日樹も、今、目の前にいる狩野香也も、その当時の沙織には、さして気が引かれる相手には思えなかった。
 いいかえれば、多少変わっているにせよ、「ごく普通の人々」の一人にしか見えず、観察対象としては、あまり魅力的には見えなかった、ということなのだが……。
『……実際に、話してみると……』
 いろいろなところが、見えてくる。
 狩野香也は、まず、絵を描くことに強いモチベーションを感じている。しかし、「描きたい絵がある」から、絵を描いているわけではない。
 では、何のために?
 狩野香也は、素直である。従順すぎる、と、言い直してもいい。沙織の知る限り、香也は、他人の頼みやお願いを、断った試しがない。現在も、こうして周囲にいわれるままに、それまではろくに手をつけなかった勉強に、いそしんでいる。
 今まで他人とつき合う機会が限られていたらしいこと、それに、「絵が描ける」というスキルがあるために、かえって目立っていない特性だと思うのだが……香也には、
よくも悪くも、ある種の社会性が欠如してるように見える。
 よほどのことがない限り、他人の頼みを断らない。反発をすることもない。だいたいにおいて、イエスマン。他人との摩擦を回避する、という点では平和的な人物像になるわけだが……ここまで、本人の主体性がない、という例も……沙織にとっては、珍しい。
 要するに、沙織が観察した限りにおいて、香也は……絵を描こうとする心性以外には、あまりにも特徴がなさ過ぎなさすぎる、という意味で、あまりにも希薄なパーソナリティの持ち主だった。
 このような希薄な人格が、どのように、形成されたのか……形成されることが、可能だったのか……沙織には、なかなか想像できない。
 ようするに……香也からは、他の人からはごく普通に観測できる「欲望」という要素がほとんど感じられず、ほぼ唯一の嗜好である絵にしても……よくよく聞いてみると、はっきりとした目的があって描いているわけではない……ということになる。
 一種の強迫観念的なものであれば、まだしも理解しやすいのだが……香也は、こうして絵から遠ざけられていても、特に苦痛としている様子はない。だから、そうした病的な執着に尽き動かされているわけでは、なさそうだ……。
 今、この子に……「絵を描くのが好きなのか?」と聞いたら、いったいなんと答えるのだろう?
 おそらく、しばらく考え込んだ末、「よくわからない」とでも、答えるのではないか?
 少なくとも、「絵を描くのが、好きだから」と即答することだけは、ないのではないか……。
 あくまで沙織の予測にすぎないのだが……何故か、そんな反応をする香也が、沙織にはありありと想像することができた。
 香也が絵を描く……という光景があまりにも見慣れたものになっているため、周囲の人々は、疑問にも思わないようだが……。
「香也が絵を描く理由」は、香也自身も含めて、確かなことは誰も知らない……知ろうとは、していないのではないか……。
『……そう考えると……』
 この子は……狩野香也は、面白い。
 そういって悪ければ、興味深い観察対象だ……と、佐久間沙織は結論した。


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彼女はくノ一! 第六話 (136)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(136)

「……それで、人混みに紛れて近づいた楓おねーちゃんが、ぱっとジュリさんの胸元に飛び込んでて……それで、どがどがどがどがって、ジュリさんがずっぱーんってふっとんでいって……」
「そーか、そーか……」
 ガクが、無邪気に昼間の楓の奮闘ぶりを説明し、羽生がそれとなく相づちをうっている平和な夕食の光景だった。
 もっともガクは、風呂場での一件を意識しないために、無理に明るく振る舞っている……という側面もあるようだが。
 何せ、今も、孫子は機嫌悪そうにむっつりと黙り込んでいる。対して、楓の方は、思い出し笑いをしそうになって、慌てて顔を引き締めている……ということを繰り返している。
 ガクにしてみれば、二人の対比がひたすら怖かった。風呂場での件があるだけに。
 だからガクは、無邪気を装って、必死に明るくはしゃいでいる。この場だけでも雰囲気をよくしようとしている。
『……どうしゃちゃったの、ガク?』
『お風呂で、なんかあったみたい』
 ガクの様子をいぶかしがって、ノリとテンとが、小声で囁き合っている。
 そうした異様な雰囲気に気づいているのかいないのか、普段通りの真理と、真理に輪をかかけてマイペースな香也。
「……それ、なんか面白そうだな。
 夕べの二刀流のおねーさんと楓ちゃんの決闘」
「映像は、徳川さんが、例によって撮影していると思うけど……。
 まだ未処理未編集だから、量的に膨大で、今見るのはかえって大変だと思う……」
「そんなにいっぱい撮影しているのか?」
「時間的にはほんの数分の出来事だったけど、あの工場、今では遠隔操作のカメラだらけだからね。
 いろいろな角度から、こう」
「そうかそうか。
 でも、速度的に写っているの? あの二人だと……」
「そう。
 シャッタースピード的にもつらいんだけどねぇ……。
 今のあそこのカメラ、全部、高感度に対応しているものに変わっているんだけど、それで、もまともに撮影すると残像しか残らないから、専用ソフトのでバッチ処理して……」
「専用、って……」
「うん。ニーズがありすぎるから、ざっと組んでみた。
 静止画と残像を照合して人間の目にも見やすくてわからりやすい動画に直すやつ。
 二十分くらいでインスタントに作ってみたんだけでど、結構使えるんだよねぇ……」
「さらっと凄いこというな、この子は……。
 いろいろと……」
 羽生は少し複雑な顔をしたが、すぐに蓮華で水餃子をすくう。
「ん。
 真理さんの水餃子、最高だな。いつものことながら……。
 こう、皮がつるっともちっとしていて……」
「今日は誰もいなかったから、こーちゃんがこねてくれたんですよ、皮……」
 真理が何気なく答えると、香也と真理を除いた全員の間に、静かな衝撃が走る。
「……こーちゃんもやっぱり男のよねー。
 こう、生地をこねるの、わたしがやるよりよっぽどしっかりと……」
「……香也様の……」
「……おにーちゃんの……」
 もはや真理の言葉に耳を傾ける者もなく、ほぼ全員が、手元の取り皿に取った水餃子を見つめている。
 香也と羽生だけが、黙々と食事を続けていた。
「……いっぱいつくったから、どんどん食べてね……」
 雰囲気の変化に気づいているのかいないのか、真理が快活な口調でいいながら、土鍋の中に新しい餃子をどさどさと入れはじめる。
「……具もね、この間、舎人さんにいろいろ教わったんで、いろいろと変化をつけてみたのよ……。
 ……って、なに?
 いきなり。
 みんな、そんな、急がなくても……まだ、いっぱいあるから……」
 真理のせりふは、後半、狼狽で声が震えてしまっている。
 そんな真理には構わず、楓、孫子、テン、ガク、ノリたちは、次々にと水餃子を自分の口に放り込んでいく。
 もっとも、水餃子は早食いできるような食材ではないし、真理がたったいま鍋に放り込んだ分は、まだ煮えてもいない。
 それでも、はふはふいいながら、少女たちは熱くて食べにくい水餃子を喉の奥に押し込み続ける。
「真理さん。
 餃子、まだ台所にありますよね?」
 すっ、と、羽生が立ち上がる。
「……え。ええ。
 作りおきにしようと思っていたのが、まだ……」
「取ってきますよ。
 この分だと、今出しているのも、すぐになくなっちゃいそうだから……」
「……んー……」
 マイペースで十分な量を摂った香也が、箸を置いた。
「……ごちそうさま……」
 香也そういうとごく自然な動作で立ち上がり、居間を後にする。
「こーちゃん。
 ご飯終わったんなら、先にお風呂はいっちゃいな……」
「……んー……」
 羽生が声をかけると、香也は、例によって生返事を返す。
「じゃあ、先に入る……」
 この二人は、なんだかんだいって多少は騒がしい同居人たちとの生活に適応しているのであった。

「……ふぅ……」
 風呂から上がった香也が居間を覗くと、同居人の少女たちはすでに食事を終えていたようだった。その割には、まだ解散もせずに、炬燵の天版の上に額を寄せあうようにしてなにやら話し合っている。
「あれ、明日っからのこーちゃん当番の、順番決めているんだって。
 ……あみだくじで」
 香也が何かをいう前に、羽生が解説してくれる。
「……いやー。
 もてもてだなー、こーちゃん。
 真理さん公認だし、よりどりもどりだし……」
 その口調にどこか抑揚がないのは、この状況を好んで受け入れているわけではないからだった。
 それから、香也の首をがっと腕で引き寄せ、香也の耳元に小声でつぶやく。
「……こういうこというのもなんだけどさ……。
 こういう微妙なのって、そんな長続きしないと思うからさ……。
 みんないい子なんだから、なるべく早く誰かにひとりに絞るよーに……」
 香也は、風呂上がりだというのに若干、血の気が引いた顔でこくこくと頷く。
 香也とて、現在の状況が永遠に続くとは思っていない。たまたま少女たちがお互いに牽制しあっているので、奇妙に均衡がとれている形になっているわけだが……。
 こんな微妙な均衡は、何か、ちょっとした刺激でもあれば、簡単に崩れてしまうだろう。
 例えば逆に……今、羽生に、「今の状態をいつまでも保つように」などといわれたとしたら、香也は簡単に絶望していたことだろう。
 香也も羽生も、今の状況については、せいぜい「しぶしぶ認めている」といったところであり……決して、いい状況だとは思っていない……という認識は、共通して持っていた。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(394)

第六章 「血と技」(394)

「はいはい。
 お食事をいただきながらいろいろと興味深いお話しも聞いたけど、狩野君も荒野君は、今はお勉強の方に専念しましょうねー……」
 沙織先輩は、妙に機嫌がよかった。
「先輩。
 実は、人に教えるのが好きだったりします?」
「もちろん」
 沙織は荒野の問いかけに、胸を張って答える。
「モノを憶えられない、って感覚が、実はわたしにはよく理解できないんだけど……。
 だからこそ、個人差を観察するのが楽しいの」
「……そんなもんすか……」
 ……先輩……結構、Sっ気があるのかも知れない……とか思いつつ、荒野は低い声でつぶやく。

 香也は、昨日に引き続いて、素直に勉強にいそしんでいる。
 茅と源吉は……二機のノートパソコン以外にもハードコピーの各種資料をテーブルの上に広げ、昨日よりも本格的な打ち合わせに入っている。
 荒野と香也、それに沙織の勉強グループがテーブルの半分を占めておとなしく勉強にいそしんでおり、茅と源吉とが残りのスペースを占拠している。
 それで、時折、茅か沙織が紅茶を入れ直す……というパターンが、この日も午後いっぱい続く。

「……昨日も思ったけど、狩野君、集中力があるね」
 三時頃に「休憩」を宣言した沙織が、香也に話しかける。
 根が素直で真面目、ということもあるのだろうが……沙織が休憩を宣言しない限りは、延々といわれた通りのことを飽きもせずやり続ける。
「……んー……」
 そういわれた香也の方は……あまり、集中力うんうんという自覚がないのであった。
「……よく、わかんない」
「自分じゃ、よくわかんないかもねー……」
 沙織は、香也の言葉にうんうんと頷く。
「やっぱあれかあな?
 絵を描いていることも、関係してくるのかな?
 狩野君、かなり描いているんでしょ?」
「……んー……」
 香也は紅茶をずずずと音をたてて啜ってから、考え考え、答える。
「よく、わかんない……。
 描いていることは描いているけど……どの程度で、かなり描いている……ということになるのか……」
 香也は、自分の絵を客観的に評価することに、全くといっていいほど、興味を持っていない。
 香也にとっては、「描いている最中、課程」こそがすべてなのであった。
「あれ、彼、隣の物置が絵で軽くいっぱいになるくらいは、描いていますよ」
 荒野が、助け船を出す。
「先輩……見たことありませんでしたっけ?
 彼の絵……」
「見たことないかっていえば……見たことは、あるんだけど?
 最近、学校のあちこちに飾られているの、狩野君が描いているんでしょ?」
 沙織が香也に問いかけると、香也は、無言のままこくこくと頷く。
「でも、あれ、狩野君が描きたくて描いた絵ではないでしょ? 放送部の人たちに頼まれて……」
 これにも、香也は黙って頷いた。
「その、学校に飾っている絵が、狩野君が描きたい絵ではないと、ということになると……狩野君は、本当は、どういう絵が描きたいの?
 というか……狩野君は、普段、どういう絵を描いているの?」
 思わぬ沙織の問いかけに、香也と荒野とは、しばらく無言で顔を見合わせた。

「……んー……」
 しばらく考え込んだ後、香也は、ようやく重い口を開いた。
「気が向けば、なんでも描くけど……。
 強いていえば、なんとなく、人物画は、苦手……かな?

「……そう。
 なんでも描くの……」
 沙織は柔らかく微笑んで、さらに香也に問いかける。
「……それで……。
 狩野君が一番描きたいのは、どんな絵なの?」
 今度の問いには、香也は考え込むばかりだった。
 結局、休憩時間が終わるまで、香也の答えは出なかった。

「……はいはい。
 また、お勉強の再開ねー……」
 休憩時間を取り初めてからきっかり十五分後に、また沙織がぱんぱんと手を叩いて合図をし、荒野と香也をそくす。
 それから荒野と香也に、順番に口頭でいくつかの質問し、今までやってきたことがどこまで頭に入っているのか、進行状態を確認。それから、二人の弱点を重点的に復習させる。
「二人とも熱心にやってくれるから、教えがいがあるなー……」
 とかいいつつ、沙織本人は自分で持ち込んだファッション雑誌を悠然と読んでいたりする。というか、沙織は、基本的に、時折、進行状況をチェックし、勉強すべき範囲を指示する以外の手助けは、していない。
 荒野は時々、わからない部分の説明を求めたりするのだが、香也は、黙々といわれたことをするだけであり、自分から何かを問いかける、ということはなかった。結果、沙織から香也に話しかける機会が増えることになる。
 とはいえ、沙織が香也に話すことといえば、結局は、ほとんど勉強のこと、になってしまうのだが……。
 一連の香也とのやりとりを通して、沙織は、「面白い子、ではあるかな」という感触を得る。
 香也の答え方というのは、たいてい「……んー……」という前置きをしてからのことになる。だから、聞いている側としては、かなり間延びした印象を受けるのだが……そのかわり、香也の言葉には、嘘や「てらい」というものがない。
 よくよく質問の意味を考えて吟味し、できるだけしっかりとした回答をしよう、という意志のために、返答が遅れている……ような、気がする。
 素直、ではあるだろう。
 答えが分からないからといって適当にごまかしたり、何でもいいから回答しておけばいい……という発想がまるでないあたり、木訥……というか、あまり人づき合いには慣れていないようだな……ということも、容易に推察できる。
 学習する速度などをみてみても、決して、知能面などで、同年輩の生徒たちと劣っているとも思わないのだが……荒野や茅から、それとなく漏れ聞いた印象通り、自分で自分の才覚を、特定方面に特化して狭めている……という印象が、あった。
 つまりは、「おおよそ、前評判通り」というのが、沙織の香也に対する評価なのだが……。 
『……その割には……』
 沙織は……その実、香也は……絵を描くこと自体は、あまり好きではないのではないか……と、思いはじめている。
『だって……描きたい絵がない、ってねぇ……』
 荒野から、それ以外の人から聞かされてきた香也の印象は、とにかく、「絵を描く子」の一言に尽きる。
 だが、香也本人に聞くと、「特に描きたいものはない」という。
 このギャップは……いったい、どういうことなのだろうか?


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彼女はくノ一! 第六話 (135)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(135)

「……え……」
 孫子にいわれて……楓の中に、不意に、今日の香也との情事の記憶が蘇ってくる。
 あの香也との一体感。何度も何度も求められ、一秒も惜しんで肌を密着させて求め合った至福の時間。
「えへ。
 ……えへへへへ……」
 自然と、楓の頬が緩んでしまう。
「そこっ!
 いやらしい笑い方しないっ!」
 孫子が、ざばっ!、とお湯をまき散らして立ち上がり、
「ちょっ!
 孫子おねーちゃんっ!
 駄目っ! 話しを聞くだけなんだからっ!」
 即座に、ガクが孫子を羽交い締めにする。
「……自重してっ!
 じちょーっ! じちょーっ!」
 ガクは、楓や孫子が香也のこととなると目の色が変わる。それに、一度交戦状態に入ると、際限なくヒートアップする……ということを、経験から学んでいる。
 この二人に本格的な喧嘩をさせると、とにかく、周囲の人たちにかかる迷惑が、とんでもないことになるのだ。
 だから、そうなる前に、取り押さえる。
 そうでないと、「周囲の人たち」の一部である自分の、身が持たない。
 ガクに羽交い締めにされていた孫子は、しばらく、「ふーっ! ふーっ!」と荒い息をついていたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「……もう、いいですわ……」
 何度も深呼吸をしてから、孫子はゆっくりとした動作で自分の肩を戒めているガクの腕をはずす。
「……そうですわね。ええ。
 取り決めで、日曜日は、香也様の意志に任せる、ということにしておいたのですわよね。ええ。
 香也様が自分の意志で、か、楓と………」
 またそぞろ、ヒートアップしそうになった孫子を、ガクが慌てて「どう、どう」と落ち着かせる。
 孫子は、また深呼吸を繰り返して、自分の気を落ち着かせる。
「……一応、確認しておきます。
 まさか、貴女……無理矢理香也様を手込めに……」
「……手込め、って……。
 それ、普通、男が女にする言葉なんじゃぁ……」
 ガクが、つっこみを入れた。
「無理矢理、なんてこと、ないですよぅ。
 絶対……」
 楓の方はというと、気色ばんでいる孫子の様子に影響される、ということもなく……先ほどと同様に思い出し笑いをしながら、
「……最初は、ですね。
 ずっと真面目にお勉強をしていたから、ですね。
 二人でちょっと休憩しよう、ってことになって、あの、それで、真面目にやっているご褒美っていうか、ほんと、最初は、ほんのちょっとの息抜きのつもり、だったんですよ? なのに、その、いったんはじめるともう、二人とも夢中になっちゃって、止めるタイミングが……」
 いったんしゃべりはじめると、楓の口は止まらなかった。というか、すでに「説明」ではなく単なる「のろけ」になってしまっている。
 孫子はというと、怒りと嫉妬で全身をぶるぶると震わせている。が、再度ガクに制止されているからか、理性を総動員して楓に襲いかかることを自制しているようだった。
 そんな二人の様子をみて……ガクは、もはや苦笑いをしはじめている。
 ……なんでこのおねーさんたちは……香也のこととなると、とことん素直に自分の感情を露わにするのか……。
「……も、いいです」
 長々とのろけとも説明ともつかない楓の長弁舌を、孫子は遮る。
「……その分だと、事細かに、その……やっている時の様子とか説明されたら、こちらがたまりませんから……。
 ただ、もうひとつだけ、確認しておきます。
 本当に、香也様も、求めたのですね?」
「……ええ」
 楓は一瞬きょとんとした表情をした後、
「ええ。はい。
 香也様は、ですね。
 それはもう、何度も何度も、お求めになって……」
 今度こそ、孫子はお湯を跳ね上げて楓に踊りかかった。

「……真理さんからでんごーん。
 長風呂もいいけど、もお晩ご飯だから……って、なにやってるの?」
 真理にいいつけられて風呂場に入ったテンは、疲労困憊な様子でそれぞれにへたっている三人をみて、首を傾げた。
「……何やってんの?」
 お風呂で疲れをとる、ではなくて、お風呂で疲れる、っていうのは……いったいどういう状況なのだろう? と、テンは疑問を抱いた。
「……こ、これはね……」
 二人を……というか、主として、楓を襲うとした孫子を取り押さえることで精魂が尽き果てたガクは、きれぎれに、テンに説明をする。
「触らぬ神に祟りなし、の筈なのに、うっかり触っちゃった祟りを鎮めようとして、消耗戦に突入した後の風景……」
「……なに、それ……」
 要領を得ないガクの説明に、テンは目を白黒させている。
「……いやぁ。
 他人が先に感情的になると、自分は冷静になるもんだね、かえって……」
 テンの疑問には答えず、ガクは、何故か遠い目をして天井の方に顔を向ける。
「……やっぱ、仲裁するより、仲裁されるくらいの方が、性に合っているや……。
 ボクは……」
 テンは、「ますます、わからない」といった面もちで、首を左右に振る。
「……なんでもいいけど、みんな待っているんだから、早めにご飯に来てねー……」
 理解することをあきらめたテンは、そう言い残して風呂場から出ていく。
 しばらくたってから、ガクは、誰にともなくぽつりとつぶやく。
「……仲裁、って、疲れるもんなんだな……。
 かのうこうや、いつもこんなことやっていたのか……」
 ……いろいろと身の覚えのありすぎる楓と孫子は、ガクの言葉にはなんとも答えられず、気まずく黙り込むしかなかった。

「……ありゃ?」
 バイト先から帰ってきて食卓につくなり、羽生は違和感を感じ、そのことについて言及した。
「今夜はまた……うちのお嬢さんの半分くらいが、なんだか元気がないなー……。
 なに?
 また喧嘩でもした?」
 羽生にとって、楓と孫子の衝突は珍しいことではない。歓迎するわけではないが、二人とも根に持つ性格ではないから、無理に止めようともしない。
 それにしては……今夜は、いつもの楓と孫子以外に、ガクまでもが……むしろ、ガクが一番疲れているようにみえるのが、羽生には不思議だったが。
「……喧嘩は未然に防ぎましたぁ……」
 ガクが、ひどく疲れた声をだした。
「平和がこれだけ尊いものだと実感できた日は、ありません……」
 見事に棒読み気味、だった。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(393)

第六章 「血と技」(393)

 そうなると……イザベラが周囲に侍らせている屈強の男たち、というのも……イザベラ個人が、対実家対策に雇っている可能性が、強い。
「とりあえず、ややこしそうだから……あいつの家の問題には、不干渉でいこう……」
 荒野は、淡々とした口調で、そういう。
 好んで、今以上に問題を抱えなければならない理由は、荒野にはなかった。
「そうね。
 こちらから連絡した時も、こちらが情報を得ようとしているよりも、向こうがこちらの情報を欲しがっているような有様で、ほとんど進展がなかったし……」
 シルヴィは、荒野の言葉に肯く。
 ということは……以上の事柄は、シルヴィがイザベラの実家とは別ルートで、独自に調査したことなのだろう。
 イザベラの背景が意外に複雑であることは、理解できたが……。
「……それは……ホン・ファやユイ・リィとは、合わないだろうなぁ……」
 とりあえず、荒野は、当たり障りのない内容をコメントしておく。
 続いて、
「でも、そんなの相談されても……悪いけど、おれには、対応策、思いつかない」
 とも、いっておく。
「おれに人生相談されてもな」と、荒野は思っている。
 はっきりいって、柄ではないし、適任とも思わない。同じ年頃の少女たちが相手ということなら、なおさらだ。
「だよねー……」
 シルヴィも、ため息混じりにそう応じる。
「ま、いいわ。
 どうせ、一石一夕に解決する問題でもないし……。
 今の時点では、とりあえずそーゆーことって情報さえ、コウの頭の中に入れてもらえれば……」
 まあ、そんなところだろうな、と、荒野は思う。
「イザベラの実家の人たちが、あいつを連れ戻してくれるのが、一番楽な展開なんだけどな……」
 荒野の、本音だった。
 荒野にとってイザベラは、予測不明なファクターでしかない。イザベラが原因でなんらかのトラブルを起こす前に、このまま静かに退場……してもらう、という展開が、荒野にとって一番好ましいものだった。
「……それも、望み薄ねー……」
 シルヴィの返答は素っ気ないものだった。
「それとなく探ってみたけど……あの子の両親、どちらもあの子にあまり関心を持っていないみたいだし……。
 少なくとも、今すぐ連れ戻そうって動きはないみたい……」
「無関心、か……」
 荒野は、親子関係とか、そっち方面の感覚がイマイチ、よくわからない。
「実の親子だろうに……」
「あの……ちょっと、いいかな?」
 それまで黙って荒野たちのやりとりを聞いていた沙織が、ここで控えめに口を挟んでくる。
「よかったら……なんだけど……わたしに、その子、紹介してくれないかな?」
「……え?」
 荒野の目が、点になった。
「あ。いや……もちろん、悪いってことではないですけど……その……なんで、先輩が……まったく関係ないのに……」
 荒野にしてみれば、とにかく「意外」、であった。
「家庭環境が悪くて、っていうあたり、なんか、他人事とは思えないし……。
 その子、日本語での会話は大丈夫なんでしょ?」
「会話は、問題ないと思うけど……」
 珍しく狼狽して、荒野はあたふたと左右を見回す。
「か、茅……どう思う?」
 結局、茅に振った。
「構わないと思うの」
 茅は、即答する。
「護衛が必要と思うのなら、双子あたりを命じればいいだけだし」
「そのおりには、わたしもそれとなく見張っておきましょう」
 源吉も、澄ました顔でいい添える。
「コウも心配性ねぇ……」
 シルヴィは、ため息混じりに感想を漏らした。
「速攻性の解決策がない以上、こっちとしては、あの赤毛に同年輩の話し相手が出来ることは、歓迎なんだけど……」
 シルヴィは、沙織の申し出を、その程度のものだと思っている。
「ま、いいんじゃないの?
 こっちでオトモダチでも出来れば、あの子ももう少し落ち着くでしょうし……」
「……そういう問題、なのかなぁ……」
 荒野は、シルヴィのコメントに軽く首を傾げた。
「そういう問題よ」
 シルヴィは即答する。
「周りは無関心。お金や人を雇う知恵はある。身体能力その他は、一般人を軽く上回っている。
 だけど……自由と、対等な話し相手がいない。オトモダチがいない。
 だから、ここに逃げてきた。
 でも、こっちでもなかなかきっかけがなくて、周囲ととけ込めていない。
 だから、当たりやすいところにストレスをぶつけている」
 ……あの子の問題は、その程度のことよ……と、シルヴィはつぶやく。
「……有り余る資質を持ちながら、それをどう使っていいのかわからない、っていう悩み……コウにも心当たりあるでしょ?」
 最後にそう、付け加えもした。

 自宅で昼食を摂った香也は、勉強道具を携えて、荒野のマンションへと向かう。エントランスの解除番号は教えられているので、そのまま中に入り、エレベーターに乗る。共用廊下を歩いていくと、荒野たちの部屋の前に、でん、と白い犬が座り込んでいた。
「……んー……」
 あ。あの人、来ているのか。
 と、香也は静流の顔を思い浮かべ、白い犬がおとなしいのをいいことに、かがみ込んでもふもふとその毛皮を触りまくる。白い犬は、はっ、はっ、はっ、と息をつくだけで、大きな反応は示さなかったが、なんとなく、そうやって構われることを、喜んでいるような気がした。
 ひとしきりもふもふして満足した後、香也はインターフォンを押す。
 がちゃり、と、扉が開くと、静流とシルヴィの二人が、靴を履いて出てくるところだった。
「……んー……」
 香也は軽く頭を下げて会釈する。
 香也にとってこの二人は、それなりに面識はあるけど、親しい間柄、というわけでもない。
「ど、どうも……」
「おベンキョ、がんばってねー」
 二人の方も、香也に軽く声をかける程度で、さっさと退出していってしまう。
 二人が廊下に出てから、入れ違いに、香也は荒野のマンションに入った。
「あ。いらっしゃい」
 さっそく、荒野が香也に声をかけてくる。
 室内にいるのは、荒野、茅、沙織、源吉、という、昨日と同じ面子だった。食事が終わったばかりなのか、茅は、テーブルの上に残っていた食器類を、キッチンシンクの方に片づけている最中だった。
「……さあ、それでは、はじめましょうか……」
 香也がテーブルにつくなり、沙織がいう。
「まずは、今日のテストの答え合わせから。
 点数の確認と、間違ったところの復習ね……」

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彼女はくノ一! 第六話 (134)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(134)

 ともすれば、がっくりと力が抜けて、その場に崩れそうな楓の体を、前後左右から同時に差し出された手が、支える。
 見物に回っていた、一族の者たち、だった。彼らの間には、実力によって序列をつける気風が残っている。ジュリエッタとの勝負でその実力をみせつけた形になる楓は、彼らから尊敬の目で見られる資格は、十分にあった。
 疲労で意志がはっきりとしていない楓の耳に、楓を賞賛する大勢の人の声が入る。が、体内に酸素を取り込むのに忙しい楓は、その声が耳に入っていても、その意味するところを、実感を持って理解してはいない。
 言葉の意味は、わかるのだが……そこまで大仰に誉めたたえられる、といった経験が皆無であった楓には、自分が賞賛されている、という実感が、いつまでもわかなかった。
「はいはい、どいてねー」
「楓おねーちゃん、こっちで休ませるからー……」
 テン、ガク、ノリの三人が、人混みをかき分けて、楓に近づき、楓の体を抱えるようにして、どこかに運んでいくのにも……楓は抵抗せず、されるがままになった。
 とにかく、全身が重く……なにも、する気力が起きない。
 三人は、楓の体を抱えて、工場内のプレハブに入る。
 そこで、例によって一連の動きをすべてビデオに撮影してモニターしていた徳川に声をかけ、さらに奥へと進んだ。
 楓は、ここまで奥に入ったことはないのだが、毎日のように工場に通っている三人にとっては、お馴染み場所だ。
「楓おねーちゃん、シャワーで汗流したい?」
「その前に、マッサージしようか?
 全身に乳酸、溜まっているだろうし……」
「すぐスポーツドリンク持ってくるから……」
 楓の体を、とりあえず、応接セットのソファの上に下ろし、三人はかいがいしく楓の世話をはじめる。
「……なんだったら、このまま寝ちゃっていいよ……」
「着替えとか家まで運ぶの、ボクたちでやるし……」
「ほら、たっぷり汗かいているんだから、これ飲んで……」
 楓がぐったりしているのをいいことに、三人は、手際よく服を脱がしてタオルで汗を拭っていく。もちろん、徳川はその前に室外に追い出されている。
「……あっ」
 楓の服を脱がせて汗を拭っている途中で、ガクは、あることに気づいた。
「この匂い……」

 次に楓が目を覚ましたのは、タクシーの中だった。いつの間にか寝てしまったらしい。三人が着替えさせたのか、忍装束ではなく普段着になっていた。
「あ。目が醒めた?」
 テンが、いち早く楓が目醒めたことに気づく。
「徳川さんがタクシー呼んでくれた。
 もうすぐ、家につくから……」
「ん」
 楓は、言葉少なく返事をする。
 とりあえず、体中から「だるさ」が抜けきっていなかった。
「帰ったら、すぐに夕食だって。真理さんが……」
 ということは……時間的には、いくらも眠ってはいなかったらしい。
 ぼんやりと聞き流しながら、楓はそんなことを思っている。

 タクシーが家に着く頃には、多少のだるさが残っているものの、楓の体調はほぼ回復していた。
 居間で炬燵にあたっていた香也と台所の真理に挨拶するのもそこそこに、みなに勧められるままに風呂に入る。楓が一番風呂を貰う、というのも珍しいことだったが。
 殊勝なことに香也は、あれからずっと自習をしていたらしく、炬燵の上に教科書やノートを広げていた。香也の勉強を見るようになってから気づいたことだが、香也は一度手をつけると、それなりの集中力を発揮するタイプだった。これまで、絵を描く課程で培った集中力、ではあろうが……一度、「入る」と、そのことにのめり込む……という性質は、学習する際には有利に働く……。
 そんなことを考えながら、楓はゆっくりと湯船につかる。先ほどのジュリエッタとの対戦やその前後のことは、この時の楓の意識から、きれいに抜けきっていた。
 楓は……良くも悪くも、自分自身のことを、あまり重要視しない気質の持ち主だった。
「……楓おねーちゃん、入るよー……」
 脱衣所の方で、ガクの声がする。先に誰かが入っていても、時間が空いている人から順に入る……ということは、香也以外全員女性であるこの家では珍しくはない。脱衣所の様子を伺うと、声をかけてきたガク以外にも、何人かの気配がした。複数名での入浴もいつものことなので、楓は生返事をしただけで聞き流す。
 しばらくして、裸になったガクと孫子が、入ってきた。テンとノリは、真理の手伝いでもしているのだろう。
「……聞きましたわ。
 今日のこと……」
 かかり湯をして湯船に入ってきた孫子が、前置きも抜きして楓に話しかける。
「今日のは……なんていうか、成り行きで……」
 てっきり先ほどのジュリエッタとの一件のことだろう……と思いこんだ楓は、不明瞭な答え方をする。自分自身のことを誇らしげに語るのは、楓の性格では難しい。
「成り行って、あなた……」
 孫子の眉が、ピクリ、と跳ねる。
「……そんなに軽々しい言い方は、なさらないで欲しいものですわ……」
「あの……」
 妙に不機嫌な声で孫子にいわれ、楓の声がますます小さくなる。
「……すいません……」
 ……何か、孫子の機嫌を損ねるようなことを、最近、しただろうか……と、楓は自分の記憶の中をほじくり返しはじめる。
「……今日は日曜だから、楓おねーちゃんが何をしようと自由なんだけどさ……」
 今度はガクが、どこかふてくされた風の声を出す。
「もう少し、その……加減、ってものを考えても、いいんじゃないかなー、って……。
 あんなに、思いっきりやってくれちゃってさぁ……」
 ……え? え? え?
 と、ここで、楓はかなり戸惑いはじめる。
 ジュリエッタさんの時……もう少し、遠慮した方が、良かったんだろうか……とか、楓は思いはじめていた。
 でも……下手に手を抜ける相手でもなかったし……そのことは、実際にその場で見ていたガクにも、分かることだと思うのだが……。
「まったく……」
 孫子が、ぎり、と、奥歯を噛みしめた。
「……他の子たちが忙しいのをいいことに、何度も何度も……」
「……忙しい?」
 楓は、気の抜けた声を出す。
「何度も……何度も?」
 これまでに感じていた違和感が、明瞭になった気がした。
 この会話は、どこか決定的なところで、噛み合っていない……。
「何度も何度も何度もっ!」
 孫子が、大きな声をあげた。
「したんでしょう! 香也様と! 今日!」
 ああ……そっちのことかぁ……と、楓は、どこか他人事のような心境で、納得していた。



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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(392)

第六章 「血と技」(392)

「……いつも余分に作るし、ご飯もいっぱいあるの」
 途中でカレーのルゥを温め終わった茅が、シルヴィと静流にも、昼食を勧める。シルヴィと静流は、今更遠慮することもなく、みなで一緒に食卓を囲むことになった。
「それで、シルヴィアさん、なんか問題起こしたって?」
 昼食を食べながら、荒野が水を向ける。
「……も、問題っていうか……あ、あの人は、ほ、奔放すぎるのです……」
 静流が、シルヴィアのやったことを次々とあげはじめる。
 いわく、静流の家に転がり込んできたその日のうちに、商店街の人たちに声をかけて盛大な宴会を繰り広げて、その代金を静流のツケにする。静流の店で強引……というより、かなりいかがわしい客引きをして、店のイメージを大きく損なう。裏通りの酔っぱらいを力づくで排除しようとして、やりすぎる……などなど。
「わ、悪気がないので、よ、余計に……」
 始末に困る、ということらしかった。
「だって……あの人が静流さんのところに寝泊まりするようになって、まだ二、三日、ってところだろ?」
 荒野も、なんとコメントしていいのかわからなかった。「その短い間に、よくまあ……」
 バイタリティだけは、評価できるな……と、心中で付け加える。
「で、ですから、普段、ジュリエッタさんの身近にいるわ、わたしが、か、彼女を抑えられないと、意味がないのです……」
 それで、荒野に……静流がジュリエッタを「抑える」現場、つまり、他の一族の者たちに見せつけるパフォーマンスの場を、作って欲しい……ということ、だった。
 静流がこういう派手な方法を選択するのは、珍しいな……と思いつつ、荒野は了解する。
 徳川の工場をちょいと借りて、見物人を集めればいいだけのことで……物見高い一族の連中を集まることは、別に難しいことでもない。この組み合わせなら、放置していても人が集まりそうだし、荒野の名前で情報を流せば、なおのこと大勢が集まることだろう。
 静流自身がかなりやる気になっていたので、勝敗や結果に対しては、荒野は不安を抱いていない。静流の性格を考えると、自他の実力差を正確に把握せずに、相手を「やりこめる」と断言する筈もないのだった。
「どうも……ジュリエッタさん、暇にさせておくとロクなことにならないみたいだから、なるべく仕事、彼女に回すようにするよ……」
 もともと、ジュリエッタの目的は出稼ぎ……外貨を稼ぐことだったし、力づくで相手をぶっ潰す……といった態の仕事は、常に一定量存在するものだし、荒野が声をかければそれなりに紹介できると思う。
 そっちの仕事が多忙になれば、ジュリエッタがこの土地でトラブルを起こす頻度も自然と減る筈だった。
 静流は、「お、お願いします」と、荒野の申し出に同意した。
「まあ、そっちはそれでいいとして……」
 荒野は、今度は、シルヴィに水を向ける。
「どうもこうも……うちの若いの、あれ、水と油だわ。
 価値観が違うっていうか、文化が違うっていうか……」
 修行第一でやってきたストイックなホン・ファとユイ・リィの二人と、「世の中すべてが娯楽」、つまり、何事かを面白がることにしか興味を持たないイザベラとは、なにかにつけて衝突している……という話しだった。
「困ったことに……今は、三人とも暇を持て余しているから……」
 自然と、顔を合わせる機会が増えてしまっている……ということだった。
「春になって学校に通うようになれば、自然とそういう摩擦も、減るとは思うんだけどねー……」
 ホン・ファとユイ・リィは、暇な昼間の時間、テン、ガク、ノリの三人と行動をともにすることが多い。三人がしていることにかなり強い興味を持っている様子で、そのこと自体は別に問題はないのだが……。
「あの三人がたむろしている例の工場に、ね……時折、ふらりと顔をだすのよ……」
「イザベラが?」
 荒野は聞き返す。
「イザベラが。
 それと、現象も……だけど、こっちはお目付け役を引き連れているから、あまり衝突や摩擦は起きようもないし……」
 シルヴィが、答える。
「イザベラ……あの子も、どうも分からない子でねー……。
 捕らえどころがない、っていうか……とりあえず、近くのマンションをワンフロア借り切って、何人かごついボディーガードを侍らせて生活している、っていうのは、掴んでいるけど……」
 シルヴィはシルヴィで、いろいろと調査は進めているらしい。
「家出してきて、ボディガード、か……」
 荒野は肩をすくめた。
「……金持ちの考えることは、わからん……」
 どんなに訓練を積んだ、屈強なボディーガードであっても、一定以上の力量を持つ一族の前では無力であり……イザベラも、そのことをわきまえていない筈がない。
 だから、そのボディーガードとやらは、一般人相手の……例えば、営利誘拐犯やテロなどを想定した配備だろう。
 イザベラの実家のことを考えれば、別段不思議でもなかった。
 分からないのは……。
『そんなイザベラが……』
 何でこんな土地に来たのか、ってことだよな……と、荒野は思う。
 イザベラ自身の自己申告によれば、周囲の反対を押し切って飛び出してきた、そうであるが……本当のところは、よく分からない。
「イザベラの両親に連絡して、連れ戻して貰えば?」
 荒野が、やけに常識的なことを提案する。
 家出娘への対象法としては、妥当な線だろう。
「そんなの、とっくにやっているけど……」
 今度は、シルヴィが肩をすくめる。
「どうにも……話しが合わなくって……」
「話しが合わない?」
 荒野は、眉をひそめた。
「だって、あれの母親は……姉崎なんだろう?」
「姉崎にも、いろいろあってね……」
 シルヴィアは、いいにくそうに、報告する。
「イザベラの母親は、典型的な俗物でね……」
 姉崎のネットワークを、私腹を肥やすことにしか使ってない。もちろん、相応の報酬も用意しているから、総すかんを食らうことになっていないが……術者としも母親としても、落ちこぼれの部類だという。
「たまたまいい男を捕まえたから、今のところは安泰でいられるけど……」
 育児については、ワークホリックの父親ともども、放棄している状態に近いらしく、実際には、イザベラは、やはり姉崎であった母方の祖母に育てられたようなもの……らしかった。
「……ここ数年は、全寮制の学校に閉じこめられていたみたいだけど……周到に準備して……」
「逃げてきたのが、ここってわけか……」
 荒野は、頭を抱えたくなった。

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彼女はくノ一! 第六話 (133)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(133)

「……つぇー……」
「……すげぇー……」
 少し離れた場所で、高橋君と太介が、そんなことを言い合いながら頷きあっている。
 この二人が「楓の本気」を間近にみるのは、これが最初だったりする。
 この二人にとって、楓とは、毎朝のように顔を合わせているわけで、比較的身近な存在であったりもするのだが……その楓の印象はというと、荒野や孫子などの派手な印象を持つキャラクターの陰に隠れて、「比較的地味」、だったりする。
 もちろん、「最強の弟子」という情報は、これまでにも、直接的間接的に何度も知らされて来ているわけだが……そうした風評と、普段、現実に接している楓とでは、イメージ的なギャップが、かなりあった。
 そして……その、誰にでもにこやかで親しみの持てる、身近なおねーさん的存在であったところの楓が、風評の通りの活躍をするのを、目の当たりにすると……。
「あの人、楓さん……」
「本当は、すごい人だったんだな……」
 口にこそ出さなかったが、二人は心中で、「見かけによらず」と、付け加えていた。

「……おーい。
 無事かぁ……」
 舎人は、服のそこここにくっきりと足跡を刻印されたまま寝そべっていた現象の襟首を掴み、強引に直立させる。
 ざっと見た限り、生来の頑強さが幸いして、骨折などの負傷はしていないようだったが……現象は、ぼんやりと焦点のあっていない目で、舎人を見上げた。
「……ふざけるな……」
 しばらくして、ぼつり、と現象がつぶやく。
「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな……」
 ぼんやりとした口調で、現象は、しばらくつぶやき続ける。
 一瞬、舎人は「頭の打ち所が悪かったか?」と思いかけた時、現象は、襟首を掴んでいた舎人の手を払い、自分の足でしっかりと、立った。
「……ふざけるなっ!
 あんなことをやられたら……多少の努力や工夫でカバーできる程度の代物なら……。
 一族の能力なんて、たかがしれているってことじゃないか……」
 自分は特別な存在である……という思いこみをアイデンティティの拠り所にしている現象にしてみれば……本来、一族の出ではない楓に、一族以上の働きを見せつけられる、いうことは……現象自身では、とうてい敵わない、と思い知らされることは……屈辱を通り越して、しっかりしている筈の足下が、いきなりぐにゃぐにゃの不定形になったかのような不安をもたらすことだったらしい……と、現象の態度から、舎人は、そう認識する。
 舎人にしてみれば、半ば、予測していたことでもある。
「……で、どうするんだ?」
 舎人は、あえて現象を挑発するような物言いをした。
「どうする……って……」
 とたんに、現象は、声を低くする。
「お前にどう見えているかは知らないが、あの子があの域に達するまでは……相当の、血のにじむような修練が、あった筈だぜ……」
 舎人の声は、決して大きくなかったが、説得力があった。
 現在の楓の姿が、その証左である……とも、いえる。
「ま、お前に限らず、生粋の一族ってのは、だいたいにおいて自分の素質に溺れる傾向があるんだが……。
 現象。
 お前は……一体、どういう存在に、なりたいんだ?」
 舎人がそういうと、現象はしばし沈黙し……何事か、考える顔つきになる。
「……干渉しすぎです……」
 舎人の後ろで、舎人だけに聞こえる小声で、梢がつぶやいた。
 決して、舎人のやり方を非難をする口調ではなかったが。

「最強の、政治ショーじゃねーか……」
 茶番だな……と、一連のことを目撃していた仁木田は思う。
 自分の弟子の強さを、この土地の一族の者たちに周知する。
 同時に、もう一人の弟子、荒野の威信を強化する。一族的な視点でみれば、楓は、荒野の腹心だった。楓が一目置かれる存在になる、ということは、言い換えれば、この土地での荒野の存在感が増すことにも繋がる。
 それに……。
「引き締め、かな……」
 姉崎の中にも、ジュリエッタのような精強がいる……ということを見せつけ、この土地に集まってきた若い術者たちに、渇をいれる。
 最強が、どこまで計算してやっているのかは、仁木田などに想像できるところではないのだが……今回の件は、結果として、今後に大きく影響を与える、デモンストレーションになってしまっている。
「……そのとーり……」
 独り言のつもりが、いきなり、ぽん、と肩に掌を置かれ……仁木田の全身が、こわばる。
「……に、っき、ったくぅぅぅぅん……。
 正解のご褒美に、君に一つの使命を与えよう」
 振り返るまでもない。
 仁木田に気配を気取られずに、ここまで近づける人間……。
 そして、この声……。
「……君も認識している通り、最近の若い者は、ちょいと緩んでいるからさ……ここらで、この土地に集まってきている者だけでも、君が、引き締めてくれないかなぁ……。
 このぼく、直々のお願いだよ?
 それだけでも、君の箔になるし、君から教えを受けたやつらが現場にでるようになれば、君の威光と発言権は増すし……。
 非主流派で足場を欲しがっている君にしても、決して、悪い話しではないと思うけど……」
 荒神、だった。
「謹んで、お受けいたします……」
 仁木田は、震える声で短く返答するのが、精一杯だった。全身が震えだそうとするのを、やっとのことで抑えている有様だ。冷や汗を掻いていないのが、幸いだった。
 荒神の「頼み」を無下にできるほど、仁木田は、大物ではない。
「あ。そう。
 そんじゃあ、その件は、頼んだね」
 素っ気ない声とともに、背後の、荒神の気配は消える。
 出現した時と同様の、唐突さ、だった。
 仁木田は、大きく息を吐いて、自分の動揺を鎮めようとする。
「……貸しを作っておくのも、悪くはないか……」
 自分に言い聞かせるように、仁木田はつぶやく。

「……このまま、車に乗せるわよ」
 シルヴィは、ホン・ファとユイ・リィに指示して、気を失ったままのジュリエッタの体を運び出している。イザベラにも手伝わせるつもりだったが、あの要領のいい赤毛は、案の定、いつの間にか姿を消している。
 ホン・ファとユイ・リィは、比較的素直にシルヴィのいうことを聞いてくれるのだが、イザベラの方は、どうも一筋縄にはいかないようだった。
 それに……。
「……この子も、ねぇ……」
 シルヴィは、意識を失ったままのジュリエッタを見下ろして、つぶやく。
 イザベラとは別の意味で、ジュリエッタは、問題児になりそうだった。
 ジュリエッタは、静流と同居することになっていたが……おとなしい静流が、このじゃじゃ馬をうまく抑えることができるか、というと……シルヴィには、あまり自信が持てない。
『……結局……』
 すぐに、荒野に相談する羽目になるのではないか……と、シルヴィは、この時点で確信に近い予測をしている。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(391)

第六章 「血と技」(391)

 期末試験二日目も、特に異変が起こるということもなく、無事終了。部活などの課外活動が禁止されていることなども昨日と同じで、結果として、午前中のうちに全校生徒が一斉に学校を追い出されることになる。
 そうなると、当然……。
『……まあ、こういうことになるよな……』
 例によって、昇降口のところで沙織と茅が合流していて、立ったまま試験の問題用紙に赤ペンで解答を書き加えている。二人とも、その場でさらさらと遅滞なくペンを走らせている様は……。
『わかっては、いても……』
 異様、だよな……というのが、荒野の偽らざる感想である。むしろ、そんな二人に対し、とりたてて奇異の念を抱いた様子もなく挨拶していく(茅と沙織は、これまた当然のように、一人一人に対し、軽く手を振ったり声をかけたりして、律儀に挨拶を返している)生徒たちの方が、異常といえば異常な筈で……。
 ようするに、ここ数日の放課後の活動で、茅と沙織が一緒にいる、ということ、それに、この二人の人並みはずれた知的な能力とが、校内に知れ渡っているわけであり……つまり、「デフォルト」として認識されているらしかった。
 ……慣れって、怖い……と、荒野は思う。
「荒野」
 模範解答を書き加えた後の問題用紙を写メに撮ってから、茅は荒野に手を差し出す。
「今日の分の、試験」
「はいはい」
 荒野は、
『飯島……。
 本当に、今朝、茅の機嫌、良かったのか?』
 などと思いつつ、鞄の中から「今日の分」を茅に差し出す。
「今日の試験、どうだった?」
 挨拶もそこそこに、沙織が荒野に声をかけてくる。
「あー。
 まあまあ、いけたと思います。
 おかげさまで……」
 昨日のこともあるから、沙織が荒野の成績を気にするのは、よく理解することができた。それに、沙織にいった通り、当初予想していた以上の点数は、取れたと思う。昨日、勉強した範囲から出題されたパターンが、思いの外多かった。
 そのことを沙織に告げてから、荒野は、
「先輩。
 結構、ヤマ、教えてくれたでしょ?」
 と確認する。
「ヤマっていうか……」
 沙織に、柔らかく、微笑む。
「……先生方も、毎年、同じことを繰り返し教えているわけだから、出題傾向が偏ってくるのは、仕方がないでしょ?」
 といった後、続けて、
「それに、思う、ってだけじゃ、駄目。
 ちゃんと自己採点して、点を取れなかったところをはっきりさせて復習して、次につなげないと……」
 と、諭されてしまった。

「茅、昼の買い物とか必要か?」
「夕べのカレーが残っているから、いらないの」
「……またカレーか……」
「いいじゃない。
 昨日のカレーおいしかったし、カレーって一晩くらい置いた方がおいしくなるし……」
「おいしいのはいいんですけど……あんまり続くのもなぁ……」
「夕食の分は、また双子に買ってきてもらうの」
「……すっかり茅のぱしりになっているな、あの二人……」
「あの子たち、わたしと同じ年齢なんですってね……」
「学校も、先輩と同じです。
 春から、先輩と同級ってことになりますね、あの二人……」
 だらだらとそんな会話をしながら、三人でマンションへと歩いていく。
 こうしていると……。
『……あー……。
 おれ、普通の学生みてー……』
 と、荒野は思った。
 だが、その「普通」も、あまり長くは続かないのであった。

「……あ、あの……」
「ハーイ」
 マンションに帰っていくらもしないうちに、静流とシルヴィとが荒野を訪ねてきた。
「……珍しい組み合わせだ……」
 つぶやきながら、荒野はとりあえず、室内に招き入れる。この二人が、何の用事もなく荒野を訪ねるわけが、ないのだった。
「……あー。
 お客さんが来ているけど、いいかな?」
 今日は、のっけから沙織目当ての源吉がマンション内に侵入していて、荒野たち三人を出迎えてくれたりしたのだが……少なくともシルヴィは、沙織と源吉とに面識があるし、事情も知っているので、大きな支障はない筈だった。
「……えー……と……」
 荒野は頭を掻きながら、静流を、源吉と沙織に紹介する。
 源吉は、「そうですか。野呂の……」と感慨深げにつぶやいて、静流の顔をまじまじと見つめる。
 学校に出入りしているシルヴィと沙織は、すでに面識があった。
 また、沙織の方が一方的にではあるが、「商店街で新しいお店をはじめた人」として、静流のことを知ってもいた。静流はそのハンディキャップもあって、それなりに目立つ存在であるらしい。
「……それで、二人して、なんの用?
 他に聞かれたくない用事なら、隣りの部屋に……」
「……べ、別に、秘密にすることでは、な、ないのです……」
 静流は、平坦な声で荒野に告げる。
「ジュ、ジュリエッタさんのこと、ですが……す、少し、お行儀が悪い時があるので、お、お灸を据えてもいいかな、と、お、お伺いに……」
「……こっちも、同じようなもんなんだけどねー……」
 そういうシルヴィの声は、ため息混じりだった。
「……チャイナな二人と赤毛の相性が悪くってさー。
 どうしたもんかと……」
「愚痴かよっ!」
 荒野は反射的に大声で叫びそうになるところを、慌てて自重して、若干、声を小さくした。
「しかも、どっちも姉崎がらみだし!」
「……ど、同居もしているわけですし、も、もう少し、じょ、常識的に振る舞ってくださらないと、せ、世間体というものが……」
 そんな荒野に構わず、とうとつとした口調で、静流が先を続ける。
 荒野は、慌てて、
「……ええと……。
 ジュリエッタさんのことでしたっけ?
 やるのは構いませんけど、静流さんだけで大丈夫ですか?
 なんなら、おれか楓あたりが手伝いますけど……」
 などと応じる。
「……ほ、他の方の手を借りても、ジュ、ジュリエッタさんに、舐められるだけなのです。
 わ、わたしがやらないと、い、意味がないのです……」
 珍しく、静流は「やる気」になっているらしい。
 まあ……静流がここまで「やる気」になっている以上、止める筋合いもないか……と思い、荒野は、
「安全のため、おれも立ち会います。どちらかが危なくなったら、即座に止めますから……」
 とだけ、いうんい止めた。
「そ、それはいいんですけど……できれば、他の方も、で、できるだけ、大勢……集めて欲しいのです……」

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彼女はくノ一! 第六話 (132)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(132)

 が……実際に飛んだのは、楓の体ではなく、ジュリエッタが振るっていた長剣だった。ジュリエッタは目を見開いて、自分の方に一歩、踏み込んでくる楓の姿を見る。楓は、手にしていたクナイを捨て、素手になっている。
 握力が、効かない。念のために空けておいた利き腕が、動かない。剣を掴んでいた左手も、動かない。まばたきも、できない。楓の動きを追うために、首を動かすことすらできない。
 かろうじて、眼球は、ジュリエッタの意のままに動いた。
 無防備になったジュリエッタが見守る中、楓の掌底が立て続けにジュリエッタの腹部に炸裂する。
 今や、楓はジュリエッタの懐に、完全に潜り込んでいて……体重の乗った打撃が、ジュリエッタの体を下方から上へと押し上げる。
 楓の打撃により体が完全に吹き飛ばされた時、内蔵に容赦のない衝撃を受けたジュリエッタの意識は、半ば混濁していた。
『……なんで……』
 体術や反応速度で楓に劣るとは、思わない。事実、ほんの数瞬前まで、ジュリエッタは自分の勝利を確信していた。
 だが……ジュリエッタは、もう少し懐疑的に振る舞うべきだった。
 何故、楓は、死角からではなく、正面からジュリエッタに肉薄したのか……ということを、もっと疑問に思うべきだった。
 そして、ジュリエッタやフー・メイとは違い、楓が「尋常な勝負」などを望んではいない……ということも、もう少し考えてみるべきだった。剣士でも拳士でもない楓にとって、公正な条件下でしか成立しえない「フェアプレイ精神」などというのは、とても贅沢な世迷事にすぎなかった、ということについても、もっと想像力を働かせるべきだった。
 体術や身体能力では、ジュリエッタには敵わない……という認識は、楓も持っていた。
 だから、周到に……ジュリエッタを、少しでも自分に有利な状況下に誘い込むことに、楓は専念していた。
 武器の威力を落とし、結果としてジュリエッタが「全力で」戦えないよう、しむける。混乱した状況を作り出して、ジュリエッタの注意力を攪乱する。
 そして……あえて、正面から迫ることで、ジュリエッタの慢心を誘い、運良く斬り裂くことに成功した服の合間から、露出した肌に向けて、針を打ち込む。
 楓は常時、喉の奥に微細な針を含んでおり、相手が至近距離にいれば、そして、ツボが露出している状態ならば、自在に吹き出して正確に打ち込むことができた。
 ジュリエッタのように、まともに相対をしても、ほぼ勝ち目がない相手に対しては……相手の能力を制限して、非力な楓でも対応できるレベルにまで落とすより他に、方法がない……というのが、楓の思考であり、そのために、自分の持てる力を出し尽くすのは、楓にとってはむしろ当然のことだった。

 そして……針により身動きを封じられ、打撃により吹き飛ばされたジュリエッタの体が、飛ぶ。

「……おい……」
「あれ……」
 あるいは、おもしろ半分で逃げまどっていた一族の者たちも、すぐに、ジュリエッタの体が「いつの間にか」吹き飛ばされていたことに気づき、すぐにその場でその場で足を止めていく。
「はい。
 お疲れ」
 宙に浮いたジュリエッタの体が地面につく前に意、いつの間にか姿を現した荒神が、両腕で抱きとめる。
「勝負、あったね……。
 もう少し、粘ってくれる面白かったのに……」
 荒神の言葉は、楓に向けられたものか、それとも、今では白目を剥いて意識を失っているジュリエッタに向けられたものなのかは……判然としない。
 そもそも、荒神の言葉や意図が、傍目には意味不明かつ理解不明なことは珍しくもないので、誰も気にはしていないのだが……。
 荒神の判定が下ったから……では、ないのだろうが……楓はがっくりと全身の力を抜き、その場で膝をついた。
 膝をついた姿勢で、勢いよく荒い息をつきはじめる。今になって、全身の肌という肌から、どっと汗が吹き出してきた。
 ジュリエッタは、楓にとっても、決して、楽な対戦相手ではなかった。ごくごく短時間の対戦ではあったが、精神的にも肉体的にもプレッシャーが大きく、その緊張から説き放たれた今になって、体重が何倍にも重くなったような錯覚を、覚える。

「あー。
 やっぱり……」
「予想通り、っていうか……」
「番狂わせは、なかったねー……」
 結果を見届けたテン、ガク、ノリの三人が、小声で話しはじめる。
「……あの……」
 そんな三人に向け、ホン・ファが話しかけてくる。ホン・ファのすぐ後ろには、ユイ・リィも控えていた。
「あの人……楓、さん……。
 いつも、あんな感じなのですか?」
 この二人にしてみれば……師父と互角だったジュリエッタが、楓に負けたことになる。興味を持つのも、当然といえた。
 三人は一度、顔を見合わせ……代表して、テンが、二人に答える。
「いつも、っていうか……楓おねーちゃん。
 能力的には、そんなに強くないから……。
 単純に、速度とか筋力で比べたら……ボクたちよりも……それどころか、この場にいる誰よりも、弱いんじゃないかな……」
 そこでテンは、一度言葉を切って、ホン・ファとユイ・リィに考える時間を数秒、与える。
 今度は、ホン・ファとユイ・リィが顔を見合わせる番だった。
 身体的な能力でいえば……楓は、一族の中でも平均値以下のパラメータしか持たない……ということは、今の戦い方をみても、納得がいく。その程度のことは、この二人にしてみても、「見れば」わかる。
 ホン・ファとユイ・リィは、テンの言葉に頷く。
「……で、楓おねーちゃんは、いろいろな技を駆使して、身体能力的な不利をうまくカバーしているわけだけど……。
 その意味で……先天的な能力よりも、技に頼る、という点で……ジュリさんと楓おねーちゃんは、結構似ているタイプだったりするんだけど……。
 ジュリさんと違って、楓おねーちゃんは……その技も、過信しないから……」
 技を使うが、技に頼らない……のが、楓の強みだ……という意味だった。
 テンの言葉が、ホン・ファとユイ・リィの脳裏に、ゆっくりと染みていく。
「……あの人が……楓さんが、何故、最強の弟子なのか……よく、理解できた気がします」
 ホン・ファは、そう結論した。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(390)

第六章 「血と技」(390)

「なぁなぁ、おにーさん……」
 朝イチに顔を合わせるなり、飯島舞花が荒野を手招きして、小声で聞いてきた。
「……なんか、茅ちゃんご機嫌のようだけど……。
 昨日、なにかあった?」
「……わかるのか?」
 荒野は、半ば本気で呆れた。
 茅は、表面上、表情の変化が乏しく、かなり慣れてきた荒野でさえ、読みとりづらい、と、思うことが多い。
『……本当に、一目見ただけで……』
 読みとったのかよ、と、心中で首を捻りながら、
「っていっても、特に変わったことは……。
 ああ。
 昨日は、沙織先輩……佐久間先輩が、うちに来ていたくらいかなぁ……。
 先輩と茅、仲がいいから……」
「それは、知っているけど……」
 舞花は、少し思案顔になる。
 特に最近、放課後に、茅と沙織が一緒にいることが多い。当然のことながら、舞花をはじめとする全校生徒たちにも、その様子は目撃されている。
「……あの二人が一緒にいるのって、いつものことじゃないか……。
 本当に、それだ……」
 と、いいかけたところで、舞花の表情が一変する。
「……そうかそうか。
 なんか今、唐突に納得した」
 舞花は、ぽんぽん、と荒野の肩を叩き、荒野の耳元に口を寄せて、小声で囁く。
「あれだ。
 充実していたわけだ、昨夜は……」
 荒野がその意味を飲み込むまで、数秒の時間を必要とした。
「いやっ! 違うっ! そういうんじゃないからっ!」
 荒野は、慌てて、舞花の想像を打ち消す。
 舞花は、荒野と茅の関係についても、かなり事実に近いところまで知っているわけだから、ムキになって否定する必要もないのだが……昨夜は、実際に「何にも」なかったのだ。試験期間中だし、それでなくとも平日は、そういうことを控えるよう、自粛している。
 荒野は知らず知らずのうちに、自分が大声を出していたことに気づいて、声をひそめる。
「……いや本当。
 昨日は、そういうこと、何もない。
 別に隠しているわけではなくてだな……ってか、お前、発想がおやじ化しているぞ……」
「……いいじゃないか、これくらい」
 舞花は、少し憮然とした表情になった。
「意外に大事なことだぞ、こういうのは……。
 ……本当に、昨日、何にもなかったの?」
「ないよ。本当に。
 嘘をつかなけりゃないらない理由も、ないし……」
 荒野も、微妙な表情を作って応じる。
『実に、学生らしくない会話だな』、という思いが、荒野の表情を苦いものにしている。
「……そっかぁ……」
 舞花は、一応、荒野のいうことに納得してくれたようだった。
「……その割には、茅ちゃん……その、まんぞくっーって顔していたから……」
「……ええっと……」
 ……どうやったら、茅からそんな表情が読みとれるのか……とか、疑問に思いながら、荒野は一応確認してみる。
「……そう、見えるのか?
 その、茅が満ち足りているように……」
「茅ちゃん、満ち足りている、満ち足りている……」
 荒野の言い方を反復しながら、舞花はうんうんと頷いてみせる。
「ちゃんと、いつもあの状態に持っていかないとだめだぞ、おにーさん……。
 それが男の甲斐性ってもんだ……」
 舞花はそういって、ばんばんと景気よく荒野の背中を叩く。
 それから二、三、他愛のないやりとりをして近くにたむろしていた他の連中と合流した。
 結局、これだけ話しをしても茅の「ご機嫌」の理由はわからなかったわけだが……。
『……ま、いいか……』
 理由はどうあれ……逆に、茅の機嫌が悪いよりは、機嫌がいい方が、いい……に、決まっているのだ。
 茅がご満悦なである限り、荒野にしても異存はない。
 ただ……。
『このご機嫌状態を、保っておくコツみたいのがあれば……』
 是非、誰かにご伝授願いたいものである……とは、思った。

 そして、登校してしまえば、荒野も茅も一生徒としてしか扱われなくなる。学校とは生徒を均質な社会的存在に仕立てあるのが主たる機能であり、荒野と茅はそういう場所であることを理解した上で、学生として籍を置いている。
 そして、一学生である荒野と茅にとって……いや、全校生徒にとって、本日は期末試験二日目、という、大方には受けの悪い日であった。
 茅たち一年生にとって、は、どうか知らないが、荒野たち二年生の教室内は、昨日と比較しても殺伐としていた。おそらく、昨日の点数に自信を持てない生徒たちが、その分、今日以降の試験で点数を取り返そうと必死になっているのだろう。
 特に玉木などは、昨日にもまして血の気が抜けた蒼白な顔で目の下に隈をつくり目も血走っている……。
「……って、おいっ!」
 荒野は、玉木のあまりにも憔悴した様子に驚き、思わず、といった感じで声を上げた。
「おま……大丈夫かっ?」
 どうみても、大丈夫な様子ではない。
 どうりで……登校中も、やけに静かだと思ったら……。
 玉木一人がしゃべらないだけで、登校中の騒音は当社比八割減くらいになっているような気がする……。
「……あんだよ……」
 玉木は上目遣いで荒野を見上げながら、物憂げな様子で答えた。目が座っているし、呂律も回っていない。
「……何って、おまえ……。
 って、それ、なんだよ?」
 荒野は、玉木が両手で包むようにして持ち、その中身をストローで啜っている茶色い小瓶を指さす。
「……もしかして、危ない薬じゃないだろうな?」
「んなわけないっしょっ……」
 ずずずっ、と最後の一滴まで瓶の中身を啜りきって、玉木は荒野に応じた。
「しっかり市販されている医薬外品。ドリンク剤。徹夜の友。
 第一、完徹も三日以上になればクスリなんざやらなくても脳内麻薬だけで立派にトリップできまっせぇー……」
 そう答えた後、玉木は「けけけけけけけけっ」と調子っぱずれな笑い声をあげた。
 目が、座っている。
「あー。
 たしかにトリップはしているようだな、お前……」
 トリップしていなくても常軌に逸しているところがある玉木ではあったが……おそらく、荒野にはよくわからない「ドリンク剤」とやらの薬効ではなく、純粋に、徹夜続きで頭がハイになっているだけだろう。常識的に考えてみても、危ないドラッグ類を教室内で公然と啜るわけがない。
「……チミも飲むかね?」
 玉木が未開封の同じ瓶を、荒野に向かって放り投げる。
 受け取って、ラベルに印刷してある成分表示を確認した荒野は……少し、いや、かなり、呆れた。
「刺激物ばかりじゃないか……」
 危ないドラッグでこそ、ないのかも知れないが……。
「……こんなの、若いうちからガブ飲みしていると、体壊すぞ……」
 そういって荒野が玉木をみると、玉木は椅子に座った格好のまま、「くかー」と寝息をたてていた。
 器用なことに、目を見開いたまま。



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彼女はくノ一! 第六話 (131)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(131)

「あっ!」
「いけねっ……」
「やばっ!」
 楓が何か予想外のことをしだしたら、とりあえず逃げる……という意識が身にしみているテン、ガク、ノリの三人は、楓の体が向こう側の人混みの中に放り込まれた時点でそれぞれに短い悲鳴をあげ、別個の方角に逃げにかかった。
 隣にいた太介と高橋君も、訳が分からないなりに、三人に習ってその場から退散する。
 少し距離があるところにいた佐久間梢も、めざとくその動きに応じて、逃げ出す。
 梢よりも場数を踏んでいる舎人は、梢よりも先に逃げている。 
 仁木田は、テン、ガク、ノリの三人とほぼ同時に姿を消している。
「……え? あ……れ?」
 いきなり周囲の人が激減したことに気づいた現象が、間の抜けた左右に首を振って間の抜けた声をあげた、その時……。
「……うわぁぁぁぁぁあっ!」
 という叫び声があがり、ほぼ同時に、雪崩を打つようにして、向こう側で見物を決め込んでいた一族の者たちが、どっとこちらに押し寄せてきた。
 仮にも、されなりに修練を積んできた者たちだけあって、その動きは素早く、力強い。
 すっかり油断しきっていた現象は……そのまま、踏まれた。

「……それなりに、素質はある。
 それに鼻息が荒いのも、若いうちはいいことだと思う。
 だが……」
 いつの間に登ったのか、工場の、天井部分の梁に片手をかけてぶら下がっている仁木田が、同様にぶら下がっている舎人に話しかける。
「……本人が自覚している以上に、腑抜けてるな。
 あれは……」
 現象への、論評だった。
「……おっしゃる通りで……」
 舎人は、指で自分の鼻の頭を掻きながら、何とも情けない表情になる。
「……なまじ、頑丈にできているから、イマイチ危機感が足りないっつうか……緊張感がないっつうか……」
 本人の、意識の持ちようの問題だ。
 とっさの時に、「とりあえず、逃げる」とか「遠くから、様子をみる」という発想をせず、下手すると何の工夫もなく正面から向かっていく……という傾向が、現象にはあり、そうした慢心が、緊張感の欠如としてこのような時に表面化する。
 その意味で、どんなに優れた身体能力を持ち、小手先の技術を磨こうとも、現象は、術者として、「いつまでも三流」の域を脱することができない……という現状が、あった。
 そしてその短所は……現象が、そうと自覚するまでは、改めることができない。また、舎人も、そこまで突っ込んだ意見を現象にするつもりも、ない。
「……お前は、あれをどうしたいんだ?」
 仁木田は、鋭い目線で舎人を見据えた。
 本来は監視役でしかない舎人が、本分である職務を逸脱して、何かと現象に干渉をしている……ということは、すでに周知の事実となっている。
「……まあ、その……」
 舎人は、露骨に舎人から視線を逸らす。
「……あいつに、少しでも広い、選択の余地を残しておきたい、っつうか……」
「……大概、報われねーぞ。
 そういうのは……」
 仁木田は、興がそがれた、といった態の表情を露骨に作って、呟く。

 地上では、ジュリエッタが突如来襲した人間の波濤を、器用にも、楓の服で包まれたままの長剣で、捌いている。未だ、「二本が一本も同然」の状態になっている剣を左手一本で扱っているため、フェッシングの構えに近い形になっていた。
 人が寄ってくる方向は決まっている以上、そちらに剣と体を向けて起きさえすれば、ジュリエッタの技能と身体能力なら、十分に対応できる。
 向かってくる者たちの肩や腰、足などをしたたかに叩いて、強引にでも方向を少し変えてやればいいだけの話し、だった。
 ジュリエッタの前方で、人が、きれいに左右に割れていく。
 不測の事態、であったが、ジュリエッタは慌てていない。
 むしろ……。
 この人ごみよりも、この混乱に乗じて、楓がなにか仕掛けてくる……ことの方を、警戒していた。利き腕をあけているのも、そのためだ。
 ジュリエッタは機械的に左手でこちらに向かってくる人を捌きながら、感覚をすまして、楓の気配を探ろうとしている。
 前後左右に人がいる現在の状況では、ノイズが多すぎて、どこにいるのかわからない、楓の居場所と気配を正確に把握するのは、現実問題として、不可能に近い。
 それでも……ジュリエッタには、「楓の出方を待つ」以外の選択肢は、なかった。
 このような、予想外の形で自分が守勢に立たされている……という事実は新鮮な経験でもあり、ジュリエッタは現在の自分の状況を、楽しんでいる。
 この場に何百人という人間がいるわけではない以上、この騒ぎは、すぐに収まる。だとすれば、楓は、この突発的な騒ぎが鎮静化する前に、「何か」をしかけてくるだろう。
 ジュリエッタはそのように予想し、油断することなく、周囲に、ごく些細なことであっても異変が発生していないかどうか、懸命に気を配っている。
 異変は、ジュリエッタの予測した通り、さほど待つ必要もなく、発生した。
 微かな、異音。こちらに向かってくる六角が、風を切る音。複数。連続。
 先ほどのような、多数の六角を一度に放つ、ということは、今回はしないらしい。
 楓が携帯できる数は限られているだろうから、もはや残数も限られているのかも知れない。
 一度に多数が押し寄せてくるのでないのなら……。
 ジュリエッタは、振り向きざまにつきだした利き手の指で、正確に、飛来する六角を弾く。
 音でだいたいの位置は把握できていたし、ジュリエッタの動態視力と反射神経をもつてすれば、爪先で弾いて六角の行き先をそらす……程度の芸当は、造作もなく実行できる。
 楓も、その程度のことは推測がついているはずであり……。
『……来た』
 足下から、くないを構えた楓が、ジュリエッタの懐めがけて飛び込んでくる。
 楓がジュリエッタに気取られずにここまで近寄れること、それに、ジュリエッタの注意を逸らす行動の後、すぐに攻撃を仕掛けてくること……も、ジュリエッタの想定の範囲内だった。
 ジュリエッタは数瞬の間に現在の体勢での楓の攻撃可能範囲を予測し、半歩分だけ上体を反らす。
 同時に、左手で持っていた長剣を振るう。
 ジュリエッタの脳裏には、横合いから長剣に弾かれて吹っ飛んでいく楓の姿が、ありありと浮かんでいた。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(389)

第六章 「血と技」(389)

 いつものように、全裸になって二人で抱き合って眠る。
 荒野と同年輩の日本人は、こんな状態で異性と抱き合って寝るものではない、という常識くらいは荒野にもあったが、今となってはこれこそが荒野の日常、なのであった。
 いつもと違うのは……。
『……なんだか……』
 荒野がいつもより、茅の心音と体温とを、強く意識してしまっている……ということだった。
 ただし、欲情……というのとは、少し、違うらしい。自分の体の状態を鑑みて、荒野はそう結論する。荒野のソコは、そこそこの充血をしていたが、完全に硬直しておらず、ぐんやりとしている。また、心理的にみても、茅や他の女性を欲する飢餓にも、覚えがない。どちらかというと、最近の荒野は性行為に食傷気味でさえある、
「……荒野……」
 めざとく、茅は、荒野の目が冴えていることを感じ取ったようだった。
「……眠れないの?」
「うん。ちょっと」
 荒野は、茅の言葉を素直に肯定する。
 ひときわ鋭敏な知覚を持つ茅に、こんなことで嘘をつくのが無駄なことは、荒野も重々わきまえている。
「なんだか……いろいろなことを考えちゃって……」
 荒野に考えごとが多いのは今にはじまったことでもないのだが、とりあえず、そういっておく。
 実のところ、荒野自身にも、何故今夜に限って目が冴えているのか、よくわかっていない。
 どちらかというと……。
『まだまだとっちらかってはいるけど……』
 問題児も含めて、だが、一族の関係者が多数、流入し、一般人社会との融和が、限定的にではあるが、始まってしまっている。また、荒神や静流など、六主家の本家筋の者もきているので、荒野以外に求心力となる人が来てくれている。などなど……。
 少し前と比較すれば……荒野自身の負担は、大幅に軽減しているのだ。
『……どちらかというと、楽をしているんだよなぁ……。
 おれ……』
 というのが、偽りない荒野の本心だったりする。
「……立場の割に……何にもしてないよな……」
 ぽつり、と、荒野が小声で呟く。
「今のこの状態を呼び込んだのは、荒野自身なの」
 茅は、もぞもぞと体を動かし、自分の胸に荒野の首を押しつけるようにして、抱く。
「子供の頃……」
 茅は、囁いた。
「……寝つけない時、仁明が、こうしてくれたの」
 この体勢だと、茅の心音が、やけに大きく聞こえた。
「茅の……鼓動が、聞こえる」
「そう」
 茅は、荒野の髪の毛を、指でやさしく梳く。
「この音を聞くと、ひどく落ち着くの」
 ……だから、荒野も……このまま寝ていいの……という茅の声を聞き終える前に、荒野はすとんと眠りに落ちている。
 思えば、前夜、荒野はろくに寝ていないのであった。

「……あれ?」
 目が覚めると、窓の外がいつもよりも明るくなっている。慌てて時刻を確認すると、普段の起床時間より一時間以上、遅い。学校へは余裕で間に合うけど、朝のランニングへは、いけない。
 上半身を起こしてベッドの上をみると、茅の姿はない。
 どうやら、先に起きているようだった。そもそも、荒野自身も、起きるべき時刻には自然に目が覚めるよう、体を作ってきているつもりだったのだが……。
『……それなら……』
 なんで、荒野も起こさないのか……と、疑問に思いながらも荒野は起き上がり、着替えてリビングにでる。
 リビングでは茅が、素知らぬ顔をして朝食を作っていた。お馴染みの、トーストと紅茶の香り。
「あー……茅」
 荒野は、挨拶もそこそこに、話しかける。
「その、ランニング、は?」
 何故か、及び腰になってしまう。
「試験期間中は、自粛なの」
 打てば響くようなタイミングで、茅は答えた。
「外聞……ご近所の目もあるから、試験期間中は休むの」
「まあ……ご近所の目は、大切だしな……」
 そういういわれ方をすると、荒野としても納得するより他ない。
 実際、大勢で毎朝走っている……それも、どうみても未成年者にしか見えない者も混ざっている荒野たちの一団は、目立つか目立たないかといえば、どう贔屓目にみても目立つのである。早朝の時間帯にしか団体で動かないのと、早々に河原という人目が極端に少ない場所に移動するから、まだしも話題性がないだけであり……それに、毎朝、顔を合わせる少数の人々には、愛想良く挨拶をしているから、変に噂にはなっていないのだが……。
 世間の評判は、大切にしなければならない……というのは、荒野たちが目指していることを考えれば、一番の大前提なのだった。
「それに……荒野。
 今朝はよく寝ていたの」
「それについては、わかったけど……」
 荒野は、軽く眉間を指でもんだ。
「……朝っぱらから裸エプロンはやめてくれ、茅……。 
 頼むから、普通に服を着て……」
 荒野は、今でも時折、茅の思考形態をトレースできなくなる。いや、荒野のキャパシティでは理解しきれない部分があるのは以前からだったが……最近では、それに拍車がかかってきているような……。
 そう。
 茅自身が自分の判断で動き出すようになって、事務的な作業や他人との共同作業にあてる時間が増えいた。学校にいる時間と、そうし作業にあてる時間は、流石に茅も奇行に走るわけにはいかないのだろうが……。
 逆にいうと、それ以外のプライベートな時間では、茅は、自分の奇行をセーブしようとはしない。
 で、その茅のプライベートな時間、というのは、だいたいのところ、荒野が一緒にいる時間……ということになるのだった。
『もうすぐ、試験休みと、春休み……なんだよなぁ……』
 今の期末試験が終われば、自動的に学校は休みに入る。そうすると、茅と一緒に過ごす時間は、格段に増えることになるだろう。
『それはそれで、嬉しいことなんだけど……』
 同時に、今よりも格段に気疲れをすることになるだろうな……おそらく、きっと……。
 などと、荒野はそんなことを考えている。
 何のことはない。
 荒野にとって、一番の関心事は、一族や新種、悪餓鬼たち……といった事柄よりも、茅のご機嫌をとること、なのであった。
 そして荒野自身は、そのことをあまり自覚していない。


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彼女はくノ一! 第六話 (130)

第六話 春、到来! 出会いと別れは、嵐の如く!!(130)

 剣ごとジュリエッタの体をロープでかんじがらめにした楓は、そのまますぐに紐で数珠繋ぎになった六角を取り出す。
 一連の六角を楓が一振りにすると、六角を繋いでいた紐が一気にばらけ、数十個の六角が回転しつついましめられたままのジュリエッタの方への飛んでいく。
 楓自身も、自らが放った六角の後を追うように、ジュリエッタへ向けて殺到する。
「焦ったな」
 仁木田が、ぽつりと呟いた。
 ジュリエッタは、両腕をいましめられたまま、足と腰のバネだけで助走もつけずその場でトンボを切る。
 ちょうど、楓が放ったばかりの六角を飛び越え、楓の頭上に勢いよく踵を振り落とすような形となった。
 楓は、慌てて横飛びに避ける。
 何の障害物にも当たらずにまっすぐに飛来する六角……の方向で見物していた一族の者たちが、慌てて飛びすさって周囲の者と衝突、ちょっとしたパニックとなった。
 不意打ちとはいえ、流石に流れ弾丸の六角を自分の体でまともに受けるほど鈍い者はおらず、楓の六角はそうとう離れた場所にある廃材につっこんでやかましい音をたてる。
 ジュリエッタは、一度着地してしゃがみ込むと、すぐに横に避けた楓を追うように再度、跳躍。
「とぉうっ!」
 とかいいながら、楓に向け、ドロップキックをかます。
 楓は、避ける隙もなかったので、とっさに両腕を立てて体重の乗ったジュリエッタの「足」を受け止め……切れずに、背後にごろごろと転がる。楓はそのまま、見物してた一族の者たち数人を巻き込んで転がった後、ようやく停止した。
 いかんせん、大柄なジュリエッタと楓とでは、体重差がありすぎ、このように「体全体」を武器にされると、防御としての行為が防御として機能しない状態だった。
 ジュリエッタの一連の動作は極めて俊敏であり、楓の予想を完全に越えてたものだった。楓でなくとも、両腕をかんじがらめにされた者がまるで戦意を喪失することもなく、平然と向かってくる……という自体は、想像の外にあろう。
「……わはははははっ……」
 ドロップキックで楓を吹き飛ばしたジュリエッタは、実に楽しそうな笑い声をあげながら、こきこきと首を左右に傾けて音を鳴らし、
「ほいっ!」
 と一声叫んで体全体を揺すった……かと思うと、ジュリエッタの両腕ごと体をいましめていた縄が、ばざっ、と、落ちる。続いて、乾いた音をたってて、楓の服に包まれた剣も、地面に落ちた。
 それからジュリエッタは、ぶらん、不自然にぶら下がった両腕を、遠心力を利用して振り回す。
「よっ!」
 ごき、という音とともに、一本が元通りに「つく」と、もう一本は、たった今、正常に「ついた」ばかりの手で肩間接を元に戻した。
 どうやら、ジュリエッタは、肩の間接くらいなら、ある程度自在に外したり継げたりできるらしい。

「お前ら。
 前言、撤回だ」
 仁木田が、もっともらしい顔をしていう。
「お前らは、こいつらの真似をしようと思うな」
「真似できるかっ! こんなのっ!」
 言葉尻をとらえるように、現象が叫び返す。

「……日本、本当にたのしーねー……」
 ジュリエッタは油断なく周囲を伺いながら、素早く楓の服に包まれた自分の剣を取り上げる。
 奇妙なのは……蹴りとばした楓の姿が、ジュリエッタの視界に入らないことだ。
 先ほど、ドロップキックを避け損ねた時の感触では……楓は、ほんの数分前に持っていた機敏さを、若干失っているように見受けられた。
 体力の限界か、負傷か、それとも……ジュリエッタを油断させるための、芝居か。
 いずれにせよ、ジュリエッタが気を抜いていい理由にはならない。楓の姿が見えない……ということは、まだ楓が、ギブアップしていない、ということを意味する。
 次の瞬間、
「……おぅっ!」
 珍しく、ジュリエッタは本気で、感嘆の声を上げることになる。
 どっと、見物していた一族の者たちが、ジュリエッタの方に殺到してきていた。

 実際のところ、ジュリエッタがドロップキックで楓をぶっ飛ばしてから、ジュリエッタが自分の剣を拾い上げるまでは、ほんの一、二秒の出来事だった。
 その間に、蹴りとばされた楓は、忙しく周囲の状況を確認し……そして、この場で一番使いようがある武器、をみつけた。
 考えてみれば、楓ほどではないが、そこそこの練度がある一族の者たちが、この場にはひしめきあっている。
 彼らを利用することに、楓は、なんらためらいを持たなかった……ので、首尾よく人垣の中につっこみ、何人かの体を吹き飛ばした末、抱きとめられた後、すぐ、楓はすばやく六角を繋いだ一連の紐(これが、現在、楓が所持している最後の武器だった)を振るい、周囲に居合わせた者どもの足下を掬う。
 なんだかわからないうちに足下に横合いからの力を素早く加えられた者たちが、楓を中心として半円状にバランスを崩し、思い思いの方向に倒れていく。
 そして、一度バランスを崩せば、後の首尾は、楓にとってはかなり容易なことだった。
 何度となく荒神に投げ飛ばされている楓は、ごく小さな力で人間を投げ飛ばす、という技を体得している。
 がっしりと両足を地面につけている人間をいきなり投げ飛ばすことは、楓にしてもかなり難しいのだが……すでにバランスを崩し、浮き足立っているところにちょいとした力を加えて大きく浮かせる……くらいのことは、今の楓にとっては容易に実行できた。
 結果。
 ジュリエッタがロープを解き、自分の剣を拾っている間に、楓を中心として、ばたばたと一族の者たちが外に向かって投げ飛ばされて、そばにいた一族の者たちにぶつかっていく……という連鎖が発生する。そして、巻き添えをくらった者たちも、何がなんだかわからないうちに、また楓に投げ飛ばされる。
 倒れていく者、倒れてきた者の巻き添えを食った者たちが、この事態の本質を理解する前に……それに、こちょいとしたパニックの中心にいるのが楓だと、ジュリエッタが気づく前に……。
「……うわぁぁぁぁぁぁあっ!」
 楓は、とんでもない大声を発した。
 何が何だかわからないながらも、あるいは、漠然と楓の意図を理解していた者も少なからず、いたのかもしれないが……とにかく、その大声から反射的に遠ざかろうとして、一族の者たちは、一斉に動く。
 その大声から遠ざかろうと……つまり、ジュリッタのいる方へと、殺到した。


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