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2006-07

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(7)

第六章 「血と技」(7)

「なにせ、ネットで世界中に配信されちゃうんだから……」
 とっいって玉木珠美が手渡してくれたスパッツを、テンとガクはいそいそと履いた。
「世界中、といえば、英語とかその他の言語で、『これはなんのイベントか?』という問い合わせのメールが幾つか届いているのだ。
 英語の説明ページをつくっておいた方がいいのだ……」
 パーテーション越しに、徳川篤朗がそう声をかけてきた。
 玉木珠美は、今回のイベント映像が、事情を知らない外国人によってどのように鑑賞されるのか、想像してみようとした。
「……町おこし……って、英語で、どういうんだろう?」
「ぼくは、英語は、日常会話と技術用語くらいしか分からないのだ」
 玉木珠美の徳川篤朗がそんな会話をしていると、玉木が招集をかけた放送部有志たちが、どやどやと電気屋さんの事務所に入ってきた。ご隠居の仕事をサポートしたり、人員整理を手伝ったりと、商店街の周囲で雑用をこなしてくれた。昼食ぐらいは近場の大人が手配してくれたが、基本的に全員無料奉仕の完全ボランティアだった。
 いきなり玉木に招集を食らって当座の仕事を放り出してきた放送部員有志は、揃って、
「いったい何が起こっているんだ?」
 と招集をかけた玉木に詰め寄った。
「わはははは。
 何だか分からない敵が攻めてきたんで、この子たちがそれを迎撃するんだよ!」
 玉木が、身支度を追えたテンとガクを指さして答えると、放送部有志は、一斉に首を傾げる。テンとガクは、ゴスロリドレスの上に、銀ぴかのヘルメットとプロテクターをつけた姿だった。
「玉木……その子たちの恰好の、モトネタなんだ?」
 アニメがゲームのコスプレかなんかだと思っているらしかった。
「この子たちは、オリジナルなのだ……」
 それまで向かっていたパソコンから顔を上げ、徳川篤朗が説明を加える。
「……自分たちの存在証明をするために、この子たちは戦おうとしているのだ」
 集まった放送部有志は、ますます困惑顔になって顔を見合わせる。
「ええい! 詳しい説明は後だ!
 要するに、もうすぐ突拍子もない、空前絶後のイベントが起こるから、それをカメラに収めるんだよ! 全世界に発信するんだよ!」
 一向に動こうとしない放送部有志たちの態度に業を煮やした玉木が、喚きはじめる。
「中継の準備だ!
 説明してないからわけが分からないのも無理ないけど、絶対後悔させないから、さっさとカメラの準備をしる!」
「そ、そりゃあ……別に、構わないけどよ……。
 雨が激しくなったんで、ステージの方のイベントは、今日はもう中止だっていうし、そっちの固定カメラ引っぺがし来ればいいわけだし……」
 ある放送部員が、こめかみのあたりを人差し指でコリコリ掻きながら、おずおずとそう答える。
 放送部員たちも、いい加減玉木の「臨機応変」には慣れているので、そのこと自体にはもはや驚かなくなっている。
「……で、その、空前絶後ってのは……確実に、このすぐ近くで起きるの?」
「起こるよ、確実に!」
 いきなり、ガクが、大声で答える。
「あんなにいっぱい……攻撃的な汗の臭い、させて……」
 心なしか、ガクの顔色が青ざめている。
「安心しろ、ガク。ボクも一緒だ……」
 テンが頭を寄せて、こつん、とガクのヘルメットと自分のヘルメットをぶつけた。
「いい。ここのスイッチをいれると……遠くにいても、ボクの声が聞こえる……。
 ちゃんと無線を組み込んでおいたから、離れることがあっても話しはできる……」
 何かというと猪突猛進する性向があるガクのために、テンが組み込んでおいたものだった。島で動物を相手にするのとは違って、力任せなだけでは通用しない……ということは、この町に来てからのガクの実績が物語っている。
 ガク自身が常に冷静な判断力を保持することができるようになるのが一番いいのだが、今まで培ってきた性格が、そう、早急に改善されるわけでもない。
 だから、それをフォローするために、テンは、ガクとの通信を保持することを重視した。
「ガクは、強いよ……。
 強すぎるくらいだ……。ボクの指示に従えば、その強さを完全に引き出してみせる……」
 マンガみたいな恰好をした二人の様子が、かなり真剣に見えたので、その場にいた放送部員たちは今までとは別の意味で、顔を見合わせる。
 彼らは、思った……。
 今、ここで……一体、何が、起きようとしているのか……。
「あっ!」
 いきなり、玉木が大声を上げる。
「あっ、あっ、あっ!
 でも、駄目! ここじゃあ、駄目! ここじゃあ……」
 お客さんや、商店街に、被害がでる……という可能性に、玉木ははじめて思い当たった。
 玉木とて、荒野やテンとガクの敵が、こんなに早くに来襲してくるとは、予測していたわけではない。
「じゃあ……ここいらで、戦っても大丈夫そうな場所、教えて!」
 玉木が何を心配しているのか察したテンが、真剣な顔になって、聞き返す。
 テンは、玉木と有働が提示し、荒野がしぶしぶ受け入れた「地元を味方につける」という戦略を理解している。
「ここらへんで……人がいなくて……開けた場所……」
 額に掌を当てて、玉木が考え込む。駅前に、そんな都合のいい場所が……。
「あるではないか。この、すぐ上に……」
 徳川が、掌を上にくけて、人差し指をちょいちょいと上に向ける。
「……幅、約二十メートル、長さ約三百メートルの、細長い、人が入り込まない場所が……」
 玉川は、徳川の顔を数十秒、まじまじと見つめる。
 それから、唐突に理解の声を上げた。
「……アーケード! の、上!」
「……問題は、どうやって、その敵とやらをそこまで誘い出すか、なのだ……」
「そんなの、簡単だよ!」
 冷静になったガクが、あっけらかんと答える。
「敵の目的は、ボクたちだもん!
 ボクたちと戦うために、ここまで来たんだもん!
 ボクたちと戦いたかったら、ここまでおいでっていえばいいんだよ!
 でないと、ボクたち、絶対に戦いません! って……」
「……出来れば……一緒に、周りの建物やなんかも、壊さないように、頼んでも貰える……」
 玉木が、小声でテンとガクに頼み込みはじめた。
「それさえ約束してくれたら……どんなに派手にやってくれても、いいから……」
 その時の玉木の表情を擬音で表現するなら、
「……あうぅー……」
 って感じだった。

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彼女はくノ一! 第五話 (90)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(90)

 コート姿の才賀孫子がやってきたのは、ちょうど雨が本降りになり始めた頃で、才賀孫子は傘を差していた。まだ人通りの少ないアーケードの中に入って、傘を畳み、すぐに玉木珠美の姿をみつけて、真っ直ぐに歩いてくる。コートの裾からスカートのひらひらがはみ出ていて、帽子もきっちりがぶっている。メイクもばっちりと決めている。どうやら、盛装の上にコートを羽織って家を出てきたらしい。
 玉木珠美の周囲には、徳川篤朗や放送部員の有志もいて、才賀孫子が近づいてくるのに気づくと、徳川と玉木を除いた全員が小さくどよめいた。シュルエットだけをみればフォーマルなものに近い今日のファッションを、孫子がしっかりと着こなしていることは、コートを羽織っていてさえ、容易に予測できた。背筋をしゃんと伸ばし、堂々とした姿勢を崩さないのはいつものことだが、そういう恰好をしてメイクをしている孫子はかなり大人びて見えて、、学校での孫子とはまた違った魅力を放っていた。もともと孫子は、黙って立っていても自然にひと目を引きつけるような所があった。こうして盛装すると、孫子が本来持っているそうしたカリスマ性が、一層際だつような気がした。
 コートを羽織っていて、中の服がほとんど見えない状態であってさえ、ともすれば道化じみた印象を与えがちなゴシック・ロリータ・ファッションを、孫子なら、しっかりと、様になるように着こなしているのだろう……と、玉木は容易に想像できた。

 孫子に声をかけられた玉木は、今回のコンテスト関係者の控え室として使用している、近くの不動産屋の二階へと、孫子を案内する。そのビルのオーナーは、一階に店を開いている不動産屋なのだが、たまたまそのビルの二階が丸々位置フロア空いていたので、格安の使用料で提供して貰っている。
 エントリーを受け付けてからいくらも立っていないのに、コンテストの参加者は既に三十名を超えており、その中にはかなり遠くから泊まり込みで出場してくれる人もいる。商店街としても、そうした人々に対しては、極力便宜を払う体勢を取っていた。希望者には近場の宿を割安で利用できるように手配しているし、出場者の休憩所も、出来るだけゆったりとくつろげるスペースを確保するようにしている。もう少しエントリーしてくる人数が増えたら、別の休憩所も確保する予定だった。もちろん、そした手配には、コンテストの出場者から徴収する参加費以上の予算を必要とするわけだが、そのあたりは必要不可欠な経費として、商店街側もかなり余裕をみて予算を組んでいる。
 彼女たちは、商店街側からは、これといって人を集める施設を周辺に持たない商店街に客足を呼ぶ、大事な観光資源として位置づけられており、従って、かなり丁重に扱われるし、できるだけ快適に過ごして貰うよう、配慮していて、休憩所には珈琲と紅茶が入ったポットや、マンドゴドラから提供されたケーキなどが用意されており、セルフサービスで自由に飲食することができるようになっていた。

 商店街のシャッターが開きはじはじめると同調するようにして、駅から人が吐き出されはじめる。普段、この駅を使用しないような人たちが続々と降りてくる。朝から降り始めた雨が徐々に激しくなってきたが、それでも電車が到着する都度に駅から出てくる人の数が衰えることはなかった。
 そのうち、年末のイベントと同じように、駅前広場に急遽しつらえられたセコいステージで、羽生譲の司会のもと、名誉実行委員長、ということになっている孫子により、開会が宣言され、商店街主催の「ゴシック・ロリータ・ファッションコンテスト」が正式に開始される。昨年末と違うのは、天気予報で「大雨の恐れがあり」とあったので、ステージ周りの雨よけをかなり大きめに張ったことくらいだった。と、いっても、鉄パイプの骨組みに業務用の青いビニールシートを張っただけの簡単なものだったが。
 羽生譲の司会は昨年末のイベントでの実績が買われての登用で、ちゃんとギャラも支払われる。舞台度胸があり、機転が効く羽生譲は、こういう役は打てつけうってつけだった。
 オープニングセレモニーが終わり、ステージから降りた孫子は、早々に帰り支度をはじめた。
 その後、ステージは、コンテストにエントリーした中から、希望者に、自己アピールをする場として使用される。その様子は、オープニング・セレモニーに引き続き、ネットでもストリーミングで配信されていた。専属のカメラマンを手配する人手もないので、幾つかの固定カメラからの送られてくる映像をそのまま配信しているだけだったが、その割には、時間がたつにつれ、ステージ中継ストリーミングのアクセス数は増え続けた。
 その「出場者の自己アピール」が、予想以上にバラエティに富んだものになったからだ。

 コンテストの対象はあくまで「ファッション」であるが、出場者の中にはプロの、あるいはプロの卵の、モデルや芸能人がプロモーション活動の一環として参加してきている例も少なからずあり、そうした人々に一定の時間ステージを開放して何事かやらせる、というのは、そうした出場者にとってもメリットになり、商店街にとってもいい賑やかしになった。
 そうしたプロやセミプロは、コンテストの結果は二の次で、自分の本業のアピールをしていった。
 それ以外の出場者は、たいがいはマイクを片手ににこやかに挨拶や当たり障りのないことを述べるだけだったが、中には少数ながら、持ち込んだ楽器を演奏する者、楽器をかき鳴らしながら歌を歌う者、踊る者、マジックショーをはじめる者、出場者二人組でステージにたって漫才をはじめる、とか、芸を披露する者がぼちぼちと出はじめて、その度にステージ・ストリーミングへのアクセス数が増加し、当然のことながら、会場周囲も盛り上がった。なにしろ、そうした芸達者も全員ゴスロリ、である。ゴスロリがサキソフォンを吹き鳴らしたり、フォークソングの引き語りをしたり、レゲエを踊りはじめたり、カードマジックをしたり、ぼけたり突っ込んだりしているわけで、なにをやらせてもミスマッチに見え、しかし、そのうちに目が慣れて、芸そのものとか、容姿とか着こなしとかの方に目がいくようになる。いや、最後のはファッション・コンテストとしては順当なのか。
 そんなことをしている間にコンテスト出場者やその取り巻き以外のゴスロリ娘たちの姿もかなり増えてきて、雨にもかかわらず、商店街の周囲はかなり賑やかなことになった。
 羽生譲は、途中から貸衣装屋さん提供のお仕着せを着てやってきたテンとガクと交代で司会をこなすようになる。
 司会、とはいっても、ステージ上の出場者が交代する合間に簡単な紹介をするだけ、だから、休憩時間のほうがよっぽど長いのだが、拘束される時間も長いので、テンとガクという交代要員を確保できたのは、羽生譲にとってもありがたかった。テンは完璧な記憶力を持っているし、テンもガクも、大勢の前に出ても物怖じしない性格なので、大きな問題が起こることなく、予定されていたプログラムは、着実に消化されていった。

 羽生譲に司会を返し、休憩に入ったテンとガクが商店街に出て行った時……。 二人は、多数の人間から浴びせられる敵意に満ちた視線をほぼ同時に感じとり、自分たちの詰め所も兼ねている、電気屋さんの事務所に飛び込んでいった。
 ガクは、敵意の主たちと交戦するつもりで、その準備をするつもりだった。
 テンは、自分たちの置かれた状況の微妙さを理解していたので、とりあえず荒野たちに連絡を取って、指示を仰ぐつもりだった。

 結局、二人は、連絡がついた茅に「正義の味方のように戦えるのなら、正々堂々、せいぜい派手にやれ」という指示を受け、たまたま徳川篤朗が持ち込んでいた、開発中の装備試作品を身につけることになる。
 それが、その装備の実地試験にもなり、同時に、結果として、二人の初めての実戦……初陣、にもなった。

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髪長姫は最後に笑う。第六章(6)

第五章 「血と技」(6)

「……なぁ、荒野……」
 すかさず、二宮舎人がつっこんだ。
「……ついさっき、おにぎり食ったばかりだから満腹だ、って……いってなかったか……」
 しかし、二宮舎人は相変わらず自分より一回り体が小さい荒野の肩に担がれたままだったので、そのツッコミのあまり様にはならない。
「流石に、あれだけ動くとねえ……。ああいうの、久々だったし……」
 二宮舎人を担いだまま、荒野は窓枠から、たん、と実習室に床に降り立つ。
 そして、二宮舎人を降ろそうとして、中腰のまま凍りついた。
「舎人さん……学校内、土足厳禁。
 降ろすから、靴、脱いで……」
 その場にいた中で、茅と荒野自身以外の全員が「……どこまで本気でいっているのだろうか……」と、思った。
 とりあえず、二宮舎人は憮然とした表情をして素直にスニーカーを脱ぎ、大きな背中を丸めるようにして、床に降りたつ。
「はい。結構……」
 荒野は実習室の後ろに縛って転がしている侵入者を指さした。
「……それから、舎人さん、あの連中の回収とか、校庭の証拠隠滅なんかの手配もお願い。
 それ頼むために、ここまで抱えてきたんだから……」
「……人使いが荒いなあ、お前……」
 といって頭をポリポリ掻きながら、二宮舎人は自分の携帯を取り出す。

 ずいぶんと長く感じたが、時計を確認してみると、荒野が窓から出て行って再び窓に飛び込んでくるまで、三、四分くらいしか経過していない。そのうち、二宮舎人とのやりとりに半分前後費やしていた。残りは、校庭中をかけずり回りながら、人を放り投げたり、槍の穂先を踏み砕いたりしていた、という計算になる。
 五分にも満たない外出で、荒野はずぶ濡れになっていた。茅から手渡されたハンカチで簡単に顔周りを拭いただけで、荒野は実習室のパソコンに向かう。
 制服の上着はたっぷりと水を含んでおり、荒野がキーボードを叩くと、その上にぽたぽたと水滴が落ちた。
「……おっと……」
 あわてて、荒野はキーボードの上から身を遠ざけるように軽くのけぞり、マウス操作に切り替える。
 運良く、荒野が取りついた末端は、ブラウザが立ち上がっていて、商店街のサイトを表示していた。
 荒野は、マウスを操作して「イベント情報」のページを表示し、そこからさらに、「ストリーミング」のページへと移動する。
「おお……やってるやってる……」
 荒野が呟く。
 いつの間にか、荒野の周りを取り囲むように、生徒たちが集まっている。
「……なんだこれ? ゴスロリ集団?」
「っていうか、ナイフとか斧とかもっているよ……。
 ゴスロリ集団っていうより……ゴスロリ軍団?」
「なんか、それと、この二人が戦っている……のか?
 って、この二人、子供じゃないか……」
「なにこれ、スプラッシュスター?」
「おい! みろよ! このゴスロリ軍団!
 よく見るとみんな同じ顔をしている!」
『……なんてこった……』
 荒野はこめかみを軽く揉んだ。
『佐久間……女の秦野、なんて……どうやって、ここまで引っ張り出してきたんだ……』
 秦野は、世界中にコロニーを作り、女子供はそこから一歩も外に出さない。『女の秦野』の目撃例は、荒野が知る限り皆無である。秦野は、自分たちのコロニーの中で、性別によって徹底的に仕事を分化する社会を独自に築いているらしいのだが……秦野のコロニー内に潜入した記録はほとんどのないので、実際の所はよく分からない。
 これは、秦野が佐久間並の秘密主義である……わけではなく、秦野が、密林
中とか砂漠の真ん中とか、とにかく人里離れた過酷な自然環境の地にコロニーを築くのを常とするので、そんな辺鄙な場所までわざわざ出向いていくほど無駄に好奇心が強い人間は、一族の中では少数派であるから、に過ぎない。

 二人と秦野ゴスロリ軍団……が、戦っているのは、どうやら、商店街アーケードの上、らしい。
 どうやって秦野ゴスロリ軍団をそこまで誘導したのかは知らないが……確かに、建物が密集している駅前付近で、二人と秦野ゴスロリ軍団が戦うことができ……しかも、被害を最小限に止められそうな場所は、そんな所しかないだろう……。
 銀色に輝く奇妙なプロテクターとヘルメット、モノトーンのフリルとリボンをたっぷりとあしらったテンとガクが、画面狭しと飛び回っている。
 秦野ゴスロリ軍団は、秦野の兄さん方と同じで綿密……というか、それ以上に息のあった、一糸も乱れぬ連携動作で、二人を追いつめかけては突破されている。
 一見して動きがいいテンとノリの方が優勢にみえるが、テンとノリに吹き飛ばされたり武器を取り上げられたりしている秦野ゴスロリ軍団も、すぐに新しい武器を構えて戦線に復帰している。
 だから、時間が経てば経つほど、疲弊しにくい秦野ゴスロリ軍団のほうが優勢になるだろう……。
 数と連携、それに、仲間が何人倒されようが表情一つ変えずに任務を全うする非情さ……が、秦野の武器だった。どうやって戦闘ルールを承諾させたのか知らないが、秦野ゴスロリ軍団が、銃器を使用していないことだけが救いだった。
 秦野の兄さんたちは……実戦の際、大抵、軽機関銃と十分な弾薬を携帯して戦闘を行う。
 周囲の被害もさることながら、それをやられていたら……二人は、あっという間に潰されていただろう。
 テンとガクが身に付けているプロテクターが、ある程度の防弾性能を持っていることを、荒野は知らない。

「……っと、だいたいの状況は、わかった……。
 茅は、ここに残ってて。こっちのほうが安全みたいだ。
 おれは、ちょっと向こうにいって様子を……」
「……先輩!」
 荒野の言葉を遮るように、柏あんなが叫んだ。
「いい加減、説明!」
 柏あんなが今にも荒野の鼻に噛みついてきそうな顔をしていたので、荒野は心持ち後ずさった。
「あ。いや。誤魔化すつもりは……。
 っていうか、今、ちょっと、急ぎの用事があるから……。
 そ、それにだな、一連の事情なら、茅や有働君もだいたいの所を知っているから、先にそっちに説明をしてもらって……」
『……こいつ……』
 荒野がしどろもどろになるのを、二宮舎人は興味深い表情で見ていた。
『こんな表情も、出来たのか……』
 こんな小娘相手にビビリが入っている今の荒野は、当然のことながら、パイロン、の呼び名は、まるで似つかわしくない。
 しかし、こっちの荒野のほうが、二宮舎人にも、好ましく思えた……。
『さっきの、剣呑、よりは……』
 年齢相応だ、と、思う。
「……その説明は、わたしにも是非聞かせて貰いたいものだな、加納君……」
 いきなり渋いおっさんの声が聞こえてきたので、荒野と自分のスニーカーを抱えた二宮舎人が、ぎくり、とした表情で、その声が聞こえてきたほうに振り返る。
「一体……先ほどの、校庭でのあれは……なんなのだね?」
 加納荒野の担任、大清水潔先生が、そこに立っていた。
「わたしは、たまたま宿直だったわけだが……公務員の直さんは、現実逃避して、いつも以上に熱心に競馬の予想をしはじめていたぞ……。
 それから、そちらの靴を抱えている方は、一体、どこの方かね……」
 間の悪いことに、その時、数人の人影が実習室に入ってくる。
 槍使いの少年たちの顔も混ざっていたから、二宮舎人の手配で、気を失って実習室内に転がっているヤツラを回収に来た連中だろう。
 さらに悪いことには……そいつらは全員、土足のままだった。

『……万事、休す』
 荒野は、冷や汗をかく。
 荒野が、今日で一番……スリルを感じた、瞬間だった。

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彼女はくノ一! 第五話 (89)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(89)

 茅と楓の通話を聞いていた孫子も跳ね起きて、そこいらに散らばってた下着とゴシック・ロリータ・ドレスを身につけはじめる。
 できれば新しい衣装を身につけたいところだが……今は、一刻を争う事態のようで、時間をかけて選んでいる暇はなさそうだ。
「茅……わたくしは、何をすればいいかしら……」
 孫子は、自分の携帯で茅に電話をかけて、指示を乞う。
「わたくし、今、とっても気分がよろしいの……。
 今なら、どんなことでも、できそうな気がしますわ……」
 そんなことをいって、くすくすと笑いながら、ゴルフバッグを肩にかける。
 ゴルフバッグの中には……昼前、商店街で徳川篤朗から手渡されたばかりの、ライフルが入っている。徳川曰く、「新品同様。ないしは、それ以上」とのことだったが……その言葉をどの程度信用できるのか試してみる、いい機会だろう……。

 忍装束の楓とゴスロリファッションの孫子が慌ただしく身支度をして外に出て行くと、心情的にはカラカラの干物になって廊下に転がっていた香也は、ようやくのろのろと起きあがった。いや、一度起きあがろうとして、がくりと膝を落とした。
 ……足腰に来ている、らしい……。
 喉もカラカラだったし、お腹も空いてきた……。
 楓とそうなりかけたのは、お昼を食べたすぐ後だというのに……その後、延々と激しい運動をし続けていたから、そのツケで、体のあちこちにダメージが蓄積しているらしい……。
 香也は「……んー……」と唸りながら、廊下に散らばっていた自分の衣服をのろのろと身につけ、ずるずると這うようにして、台所に向かう。
「足腰が立たない」とは、こういう状態を指すのか、と、思う。
 シンクに半身を預けるようにして蛇口の下に顔をつけ、ごくごくと喉を鳴らして水道水を直接大量に飲む。
 渇きが何とか収まったところで、冷蔵庫を開き、調理をせずにすぐに食べられそうな果物や菓子類などを引っ張り出し、片っ端から食い散らかす。
 ある程度満腹感を感じるようになると、今度は瞼が重くなってくる。食い散らかした後を片付けなくては……とか思いながらも、香也は、その場で瞼を閉じはじめる。真冬の台所、というのは、かなり寒いのだが……そんなことは些事に思えるほど、全身の細胞が休養を欲していた。
 居間の炬燵まで、せいぜい数歩という距離で、ここからいくらもないのだが、今の香也には、その数歩の移動が、ひどく大儀に思える……。
 ……そんなわけで、先ほどの情事を思い出して、香也が激しい自己嫌悪に陥るようになるのは、まだ数時間後、香也が目覚めてからのことになる……。

 時間を少し遡り、場所も移す。
 その日の朝、玉木珠美は母親が呼ぶ声で起こされた。朝、とはいえ、平日ならとっくに学校で授業を受けている時間なのだが、休日の玉木は、特に用事がなければ昼まで寝ていることが多い。その日、昼までかなり間があるのに母親に起こされたのは、徳川篤朗が姪を連れて訪ねて来たからで、そう聞いた玉木は、寝ぼけ眼をこすりながら勝手口のほうに向かった。寝間着代わりにしているジャージ姿のまま、頭も寝癖が四方八方に飛び出ている状態だったが、徳川相手では身繕いする気にもならない。そもそも、徳川は他人という者に対する興味を、極端に欠いている……と、玉木は思う。

 徳川篤朗のことを玉川珠美の意識したのは、今の学校に入学するのと、ほぼ同時期だった。徳川の会社は、その頃には軌道に乗っていたし、何分、噂が広まるのが早い田舎町のことだから、自分と同じ学年にそういうのが入学してくるのは、早いうちから広い範囲に囁かれていた。
 実際に同じ学校に通うようになって、玉川の方は、徳川篤朗本人の異質さと、その異質さを隠そうともしない野放図さを目の当たりにすると……呆れたり感心したりするようになった。
 玉川自身も、普通の学生に比べればかなり異質な性格であり、しかし、徳川は、その頃の玉木とは違い周囲から孤立することを全く恐れていなかった。
 同じ学校、同じ学年に「徳川篤朗」という「異分子」が存在し、平然としていること……で、玉木珠美は、今まで随分勇気づけられている。
 もちろん、そんな恥ずかしいことを、徳川本人の目の前で言ったことはないのだが……。
 そんなわけで、徳川篤朗の隠れウォッチャーである玉木珠美は、徳川が自分の寝起きの顔を見ても、なんら関心をしめさないことを知っていたので、躊躇なく勝手口に出ることができた。

 徳川の用件というのは、商店街のストリーミングシステムの様子をみたいので、しばらく姪の浅黄を預かってくれ、ということで、もちろん、玉木は快諾した。
 玉木が快諾すると同時に、例によって、徳川の頭の上で丸くなっていた黒猫が、太った体に似合わぬ身軽な動作で徳川の肩を伝って降りて来て、玉木の家のダイニングにどっしりと居座る。
 どうやら、匂いにつられて、ここに居座ればおいしいいものが食べられる、と、判断したらしい。玉木の家は「うおたま」という魚屋を営んでいた。

 今回、徳川は玉木の依頼で、ストリーミング回りのシステムの運用全般を引き受けてくれた形で、その対価としてみると、子守をするくらいのことは、むしろ安すぎるくらいだ。徳川は、徳川の会社のCMを、商店街のストリーミング映像に時折割り込ませる、という条件だけで、今回の商店街の仕事を引き受けてくれた。徳川のシステムの堅固さは、そのあたりのことに詳しい楓の折り紙付きで、そうした性能の価格も含めて考慮すれば、徳川はほとんどただ働きしてくれているようなものだった。
 玉木が弟と妹に浅黄を引き合わせると、年齢が近いということもあって、三人はすぐに打ち解けて、全国ネットで放映している毒にも薬にもならないような子供向けテレビアニメを一緒にみはじめた。
 それを横目に玉木は手早く朝食を済ませ、身支度を整えた終えた時、放送部の有志が訪ねて来てくれた。その有志一同を率いてまだほとんどの店のシャッターが降りているアーケードに出ると、つなぎの作業服の上にジャンバーを引っ掻けた電気屋の親父さんと白衣姿の徳川篤朗、それにバイトらしい軽作業派遣業者のロゴが入ったポロシャツを来た人達が手分けして脚立を使って液晶ディスプレイを支柱にビス止めする作業をやっていいる最中だった。
 玉木と放送部有志もそれに合流する。
 液晶ディスプレイの梱包を解き、ビスであらかじめ設置されていた土台に固定する、というだけの仕事だから、特に難しいこともない。梱包を解いて段ボールから液晶ディスプレイを出すもの、それを、脚立の上にいる者に手渡す者、液晶ディスプレイを土台に乗せて支える者、ビス止めをするもの……など、四、五人のチームを組んで、何班かに別れて作業を行う。電気屋の親父さんと徳川篤朗とが、ビス止めの完了したディスプレイから、配線作業を行った。商店街のアーケード内にしか設置しないので、電気屋さんから直接ケーブルを敷設して繋いでいる。
 大勢で取り組んだため、商店街のシャッターが次々に開き出す前に作業は終わり、臨時雇いのバイト君たちは、電気屋さんにサインを貰って去っていった。
 液晶ディスプレイやネットによる情報発信、それに、今回のようなイベントに必要な費用は、年末のイベントとマンドゴドラの成功例を考慮し、商店街全体で負担することになっている。直接利潤を生む投資ではないが、長い目で見れば十分に元が取れる、という意見が多く、また、このままなにもやらなかったら、寂れていくばかりだ、という認識が共通していたため、商店街内におけるこのあたりの合意形成は、比較的スムーズだった。
 そして、液晶ディスプレイの設置作業が終わった頃に、才賀孫子が到着した。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(5)

第六章 「血と技」(5)

 荒野は、穂先を失った鑓の柄を束にして持ち直し、それで周囲を薙ぎ払った。一瞬早く、鑓から手を離すことで、荒野に空中にほうり出されずすんだ少年たちが、まとめて横方向に吹っ飛ばされて行く。

 鑓の少年たちを一掃した荒野は、校庭の真ん中に立って、あたりを見渡す。まだ戦意を喪失していない者がいれば、相手をするつもりだった。
「……久しいな、パイロン……」
 無造作に荒野に近づいてきた男がいる。
 ジーンズに米空軍のフライト・ジャケットを着込み、片手に鉄扇を携え、それでトントンと自分の肩を軽く叩いている。
「二年……いや、もう三年になるか……。
 いずれにせよ、そんな顔をするのはやめろ……ここは、平和すぎて退屈で死にそうになる国だ……」
 太い眉に、いかつい輪郭。年齢は二十前後か。
 荒野は、「その呼び名は好きじゃあない」と言い返そうとして、自分がくないを咥えたままであることに気づいた。
 先程、落下中に受け止めたものだった。
「はっはっ……なんだ、そんな物騒なもん、咥えていることに気づかなかったのか?
 文字通り、剣呑、ってやつだ……」
 荒野は、咥えていたくないを手でとり、それを無造作にベルトに差し込む。
「その呼び方は、勘弁して欲しいなぁ……舎人さん」
 荒野は、その男……舎人にいった。
 荒野が荒事にまみれて過ごしていた時代に、知り合った男だ。正直、あの頃の知り合いには、あまり再会したくない。このタイミングで、ということになれば、なおさらだ。
「そういうなよ、パイロン……。
 今のお前さんは、その呼び名がよく似合うぜ……」
 パイロン……中国系の者が、時折、荒野をそう呼んた。漢字では「白狼」と書く。荒野は、なんだか恥ずかしいセンスを感じるので、そう呼ばれるのが好きではない。
「で……舎人さん。
 そっちの方は、どう? もう、二宮の名乗りは許された?」
 舎人は、二宮の傍流の出で、以前、荒野と別れた時は、二宮姓を名乗れるように、と、一族の仕事を手伝っていた。
 舎人には、血が薄い割りには、二宮の特性がよくでていた、と記憶している。
「ああ……おかげさんでな……。
 こうして、お前さんの足止め、って仕事まで、任されるようになった……」
「……いいのかい?
 ここで口を滑らせて……」
 荒野が、尋ね返す。
 荒野を商店街にいるガクとテンに合流させないための仕掛けだとは予測していたが……二宮舎人は、あえてそのことを荒野に伝えている。
「いいってことよ……。
 二宮にしても、佐久間には貸しを返したい、でも、お前さんの恨みは買いたくない、ってことで……おれみたいな半端者にお鉢を回してきたんだ……。
 佐久間に対して、一応の仕事はしたって事実さえ残れば、結果には期待していないってことさ……。
 でなけりゃあ……」
 おれみたいな半端者には、お鉢は回ってこないさ……と、二宮舎人は続けた。
 その顔には、苦笑いとも自嘲ともとれる薄笑いが、はりついている。二宮舎人自身、自分が、荒野に対抗できるとは、考えていないのだろう……。
 舎人の側から見れば、二宮がこれまでに作った貸しのカタとして、かなり分の悪い仕事を押し付けられている……ということになる。
 そして、術者として「二宮」の姓を名乗りことに魅力を感じている舎人は……分が悪い、と知った上でも、この仕事を断る訳にはいかない……。

 同情……というのは、荒野の立場上、できないが、それでも、正常な自己評価一つできず、増長し、佐久間の扇動に乗ってむざむざと佐久間の駒と化し、荒野に向かってきた軽率な若造どもよりは、よっぽど共感ができる。
 また、かつて肩を並べて仕事をした者と、後になって敵対する……というのは、一族の間では別段、珍しいことでもない。
 こうやって、長々と荒野と話しているのも……時間稼ぎのうち、なのだろう……。
 荒野は簡潔に、
「……仕事なら……是非もない……」
 とだけ、答えた。
「荒野……。
 おれだって、お前さんに勝てるとは思っちゃいないけどよ……。
 それでもせいぜい、足止めはさせてもらうぜ……」
 そういって、二宮舎人は、もう一本の鉄扇をジャケットの中から取り出す。舎人の鉄扇は、通常のものより肉が厚く、広げれば九ミリ弾程度は平気で遮る。攻防の両面で性能を発揮する得物だった。
 反面、リーチが短く、重たい……という欠点はあるものの、二宮のパワーと速度をもつ者が振り回す限り、その欠点はかなりカバーできる。
「……いくぜ……」
 二宮舎人が、短くいう。同時に、荒野の懐まで一足に距離を詰めている。
 荒野の掌底が、二宮舎人の正中線に沿って何十と連発される。
 二宮舎人にとって、荒野の行動は織り込み済みだったようで、あらかじめ鉄扇を開いて荒野の掌底を受け止める。「だん!」とか「だがん!」という重い打撃音が連なり、「だららったたたたっ!」と聞こえた。
 衝撃を逃がすため、二宮舎人は五メートルほど一足で後ずさる。自分で後退しなければ、惨めに吹っ飛ばされていただろう。
「……相変わらずの、馬鹿力め……」
 二宮舎人が、額に冷や汗を浮かべながら、つぶやく。
 鉄扇を重ねて受け止めても、衝撃を逃しきれていない。手が痺れて、感覚がなくなっている。防御用の鉄扇が、本来の役割を果たしていない。
「茅のおにぎりを食べたばかりでね……。
 今は、割りと満腹なんだ……」
 荒野は軽口を叩いて答えたが、目は笑っていなかった。

「だが……悪いな、荒野……」
 二宮舎人は、そううそぶいて、荒野に突進する。
「おれも、囮なんだ……」
 二宮舎人の突進と同時に、八方から荒野の手足めがけて、鎖分銅が投げ付けられる。本来は、鎖についた分銅を相手の頭部に当て、昏倒させる。あるいは、鎖を武器にからめ、使用不能にするための得物だ。
 何人か、荒野の動きを牽制できる位置に潜伏し、時期を伺っていたらしい。二宮舎人の役割は、本人が「囮」といったとおり、荒野への包囲網が完成するまで、荒野の気を引くこと……だったのだろう。
 包囲網が完成し、荒野への同時攻撃が可能な位置への人員の配置が終わった今、二宮舎人は、両手の鉄扇を振りかざして、荒野に襲いかかった。

「だけど……悪いな、舎人さん……」
 荒野は、手足に鎖が絡み付くままに任せ、二宮舎人の鉄扇だけを避けた。
「おれも……今回は、かなり本気で怒っているんだ……」
 二宮舎人の鉄扇を避けた荒野は、そのまま身を低くすると、その姿勢から、いきなりダッシュをし始めた。
 あまりにも素早い動きだったため、二宮舎人は避ける間もなく、みぞおちで、荒野の頭突きを受け止め、悶絶する。くの字型に折り曲げた二宮舎人の体に腕を回してホールドし、手足に鎖を絡み付かせたまま……荒野は、以前となんら遜色が無い速度で、校庭を疾走しはじめる。
 一瞬、後ろの方で悲鳴みたいな声が聞こえたが……すぐに、遠ざかった。

 荒野は、出て行った窓から、実習室に入ってきた。
 手足に鎖をからみつけ、肩に、青い顔をしている大男……二宮舎人を乗せて、校庭から一足で「飛び」込んでくる。
 窓に張り付いた生徒たちは、言葉もなく何に食わぬ顔をしている荒野のを見つめる。
 ……唖然、というか、呆然、っていうか……。
「……腹減った……」
 帰還した荒野の第一声がそれだったので、固唾を呑んで荒野を見つめていた生徒たちは、いっせいにこけそうになった。

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彼女はくノ一! 第五話 (88)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(88)

 かなり早い時期から、香也はなにがなんだか分からなくなっていた。
 まず、玄関先で楓とそういうことになりかけたちょうどその時、帰還した孫子とばったり出くわしたあたりで、すでに相当に混乱していたし、その後、孫子に口移しで飲まされた液体が胃の中に入っていくと、かっと体が熱くなって、誰彼かまわずむしゃぶりつきたい気分になって、さらにその後は、焼け付くような欲望に駆られるばかりで、いろいろなことがもうどうでもよくなった。そんな時に、楓が香也の上に馬乗りになって強引につながりを持ち、香也の上で踊りはじめ……後はもう、なにがなにやら、である。
 交互に二人と性交していた、という意識はある。しかも、孫子は出血していたし、痛がってもいた。多分、初めてだったのだろう。
 普段の香也なら、どさぐさ紛れにそんなことをしでかしてしまったことに激しい罪悪感を感じていただろうが……この時の香也は、頭がぼーっとして、誰かの中に自分自身を埋没させたい、という要求にしか、意識が向かなかった。

 幸い、ここには、喜んで香也を迎え入れてくれる女性が二人もいて、その二人ともが、香也に肉体をむさぼれるのを嫌がるどころか、競い合うようにして香也に身を捧げてくれる。
 それだけではなく、一人と交合している時にも待ちきれないか、他の一人が香也の背中に抱き着いて胸をすりつけてきたりする。
 二人が受け入れてくれるのをいいことに、香也は焼け付くような欲望に従って二人を順番に犯し続けた。香也の息がたえだえになって動けなくなった時も、寝そべった香也の上で二人のうちどちらかが蠢いた。

 そんなわけで、正常な理性を失った香也は、二人と交互に交わり、何度も中に射精した。どうしたわけか、何度射精しても香也の男性が力を失うことはなく、ただ、回数を重ねるにつれ、射精から射精までの間隔が長くなり、終いには全く射精しなくなる。それでも勃起はし続けているので、二人の相手をして喜ばすのに不都合はなかった。
 そのいつまでも持続して起立し続ける肉棒を、香也は何度も何度も二人の奥に突き入れて、かき回した。一人が悲鳴をあげてぐったりすれば、別の一人を犯す。そうしているうちに、一度ぐったりとした女性が回復して起き上がる……。
 そんなことを、何度か繰り返していていた。時間の感覚は、すでにない。
 香也の体力が尽きてぐったりと寝そべっているだけになると、女たちは最初、それでも起立し続ける香也の男性を巡って争い、それを過ぎると、今度は寝そべっているだけの香也に飽き足らなくなったのか、抱き合って長々と口づけを交わしはじめた。
 香也が動かなくなっても火照った体は静まらず、諍いを続け、揉み合ううちに、いつの間にかそういうふうになってしまった。美少女二人が抱き合いながら、お互いの胸とか腰に手を回して明らかに愛撫しあっている図は香也にとっても十分に扇情的であり、どれくらい扇情的であったかろいうと、それまで喉を鳴らして寝そべっていた香也がよろよろと起き上がり、二人の仲間にはいっていくくらいには扇情的だった。
 それまでは、香也を軸とし、二人が性交している場を残った一人がぽつねんと終わるのを待っている、という感じだったのが……後半は、三人で、相手の制約はなしに、目の前の相手の体を貪り合う、というプレイに変わった。
 そこでの香也は、行為の中心軸、というよりは、二人を喜ばせるパーツを持っているだけの人間になり、そのパーツを使って二人の快楽に奉仕した。
 三人は汗と体液にまみれてぬるぬるになりながら、一体の生物のように一塊になって絡み合い、お互いの肌を、舌を、精液を接触させて、快楽を貪りあう。香也と交合してる時に、別の女が、香也が深く刺さっている陰核に歯を立てたこともあったし、香也が絡み合う女達の重なった女陰に鼻面を突っ込んで、舌で奉仕したしたこともあった。
 そうなった三人には、もはや、理性も、時間が経過する感覚も、言葉も、意味がなかった。三人は、興奮を通じてどろどろに解け合い一体になったようなもので、三人の内部だけで完結しており、外の世界の出来事は完全に意味を失った。
 その時限定で、三人は三人だけの世界の住人だった。

「メリーさんの羊」のメロディで、香也は目を覚ました。目を覚ましたことで、自分がいつの間にか玄関前の廊下に寝ていたことに気づき、それから妙に肌寒いな……という感覚に襲われ、自分が全裸であることに気づいた。
「……はい、もしもし……」
 脱ぎ散らかした自分の服の中から携帯を探し、やっとのことで電話にでる。その途中で、楓や孫子も、そこいらに服を脱ぎ散らかして全裸で寝ているのを発見し……記憶が蘇ってきた香也は、一人で青ざめた。
「……え?
 はい。楓ちゃんも才賀さんも、こっちにいますけど……。
 ……んー……。
 今、ちょっといろいろあって、二人とも忙しかったから……」
 ……確かに、いろいろと有り過ぎた。
 香也が携帯に向かってしゃべり出したので、楓と孫子も目をこすりながら、のろのろと起き出す。
「……んー……。
 ちょっと、待ってね。
 今、楓ちゃんに、変わる……」
 香也は、持っていた自分の携帯を、楓に差し出した。
「……茅ちゃんから……。
 なんか、凄いことが、いろいろ起きているみたい……」
 ようやく目を覚した楓は、香也からひったくるようにして携帯を受け取った。
『……楓、力を貸して……』
 茅の声には、焦りに似た感情が染み出しているようだった。
『……ガクが、制御不能になっているの……』
「すぐに行きます!」
 反射的に答えてから、楓は茅に聞き返す。
「……でも……どこに?」
『商店街。そこに、荒野もいるの……』
 茅は簡潔に事態の推移を説明した。
『でも、荒野、別の敵と交戦中。
 もともと、テンとガクが相手をしていた敵だったのだけど……アクシデントがあって、ガクが一度気を失って……意識を取り戻したら、ガクはバーサク・モードに……。
 荒野は今、ガクが抜けた穴を埋めているの……
 楓……お願い。
 茅、ガクが暴れたら、止めるって約束したの……』
「商店街ですね、分かりました。あと五分、いや、十分、保たせてください……」
『荒野がいるから、時間はなんとか大丈夫。
 でも、急いで……それから、顔は隠して……』

 跳ね起きた楓は、風呂場に向かい、浴槽に溜まっていた水を手桶で掬い、ざっと頭から被るとすぐに脱衣所にでて、そこに置いてあったバスタオルで手早く体を拭き、自分の部屋に駆け込む。
『……顔を隠せるもの……っていったら……』
 楓の手持ちの衣装でいったら……あれ、しかない。
 楓は、この家に来た時に着ていた、忍装束を取り出した。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(4)

第六章 「血と技」(4)

「あ。玉木か? 徳川なのだ。
 今、テンとガクがお客さんの襲来を感知してな、出撃準備をしている所なのだ。加納も許可も得たのだ。放送部のほうも、スタンバっておいた方がいいのだ。
 これは、見物になるぞ……」
 徳川篤朗は、携帯電話に向かってしゃべっている。
「……It's Shawtime! なのだ……」

 篤朗の背中では、テンが、出来上がったばかりのプロテクターを、ガクに着付けしている。
 風防グラス付きのヘルメット、脛当て、手甲……。
 ガクの体の曲線に合わせて抜き出した合金板と緩衝材を幾重にも集積して作った、ガク専用の装甲だ。出来上がったばかりで、塗装もしていない。ので、装甲の表面が、合金の色そのまま、つまり、メタリックな疑似鏡面状になっている。
「いいかい、ガク……ライフル弾の直撃くらいは止めるようには出来てるけど、できるだけ、当てないように……。
 装甲自体は無事でも、当たると、ガクが痛いから……」
 テンは、それらの防具をベルトでガクの体につけながら、くどくどと「使用上の注意」を繰り返して言い聞かせる。
 ともすれば、猪突猛進しがちなガクの「性格」をフォローするため、最優先に開発した防具だった。だからといって、この防具を過信してさらに無茶をされても、困る。
「……さ。これで、拳をぐっと握ってみて……」
 テンにいわれた通り、ガクが拳に力を込めると、手甲から、半球形のカバーがせり出して、ガクの拳を包む。
 ガクは、「おおー」と歓声をあげた。
「これを使えば……ガクが全力でぶん殴っても、拳を痛める心配はない……。
 だけど……これは、出来る限り使わないでね……」
 テンは、ガクに言い含める。
 ガクが全力で殴ったら……相手が生物の場合、殴られた箇所はミンチになる。
「それと……拳は守れても、腕から肩にかけての負担が、この装備でどれくらい緩衝できるのか、まだ実験データ、とれていないから……」
 全力を出さないこと……は、相手だけではなく、ガク自身を守るために必要なことでもある、と、テンは説明した。
 ……いずれ、ガクが全力を出しても大丈夫な装備を開発出来るのかも知れないが……それには、まだ時間が必要だった。
 テンの説明を、ガクは素直に頷いて聞いていた。ガクも、決して理解力がないわけではない。
 ただ……。
『今日の相手……あまり強くない人たちばかりだといいな……』
 テンは、そんなことを願っている。
 ガクも、冷静な時は、テンのいうこうを聞いてくれる。しかし、一旦頭に血が昇ると……。
『……疲れて動けなくなるまで、見境なく、暴れ続ける……』
 そのことを話した時、荒野は、「……二宮の中に、時たまそういう気質の者がいるよ……。おれたちは、バーサーカー・タイプって呼んでいるけど……」とコメントしてくれた。そう教えてくれたはいいものの……荒野も、その「バーサーカー・タイプ」が見境なく暴れるのを防ぐ、有効な手だては知らないようだった。
 後は……。
『ガクがムキになる前に、どうにか出来る人たちばかりであることを……』
 テンは、祈った。
 殺気を放っていたのは、数十名以上の多人数、だった。
 島を出てきてから間もない二人は、「多人数の他人の悪意に晒される」ということ自体、初めての経験であり……実は二人とも、ひそかに動揺している。
 荒野たちやこの間の秦野三人衆は、向き合った時に「脅威だ」とは感じたが、相手の方に悪意はなかった。
「……ねーねー。ノリの分の棍も、使っちゃっていいかな?」
 内心の動揺を隠して、ガクは、ことさらに快活な声を出してテンに確認した。
「いいよ。使えるものは、すべて使い潰すつもりでやっても……」
 テンは、ガクの言葉に頷く。
「……その代わり、殺しちゃ、駄目。必要以上に傷つけるのも、駄目……」
「……ボクらが怪我をするのも、駄目、でしょ?
 もういいよ、それ。何度も聞いた……」
 ガクが、口唇を尖らせる。
「それ、本当に、重要なことだから……。
 ボクたちが……危険な存在じゃあない、ってこと、証明し続けること……」
 テンが、念を押した。
 荒野たちは、今、別の敵と交戦中で、動けない。楓と孫子には、何故か電話もメールも繋がらない……。
 よって、ガクとテンは、二人きりで、自分たちの身と商店街の人々を守りながら……圧倒的多数の敵を、公衆の面前で、制圧しなければならない……。
 ……テンは、緊張で震える手で、自分の為に用意した装備を身につけはじめる。ヘルメットと、肘当てと、膝当て。ガクと比べると格段に軽装だが、テンは、ガクとは違い、敵と正面からぶつかり合うつもりはない。打撃力は、ガクだけでも十分なほどなのだ。だからテンは、ガクへの指示と、敵の牽制に徹するつもりだった。
『こうなると……ノリがいないのが、痛いな……』
 ノリは、三人の中で一番機動力がある。三人の中で一番攪乱役に適しているのは、ノリ、だった。
 負けるつもりはないが……不安要素には事欠かないのも確か、だ……。

「……なんだなんだ! なにが起こっているんだ!」
 徳川から連絡を受けて駆けつけた玉木が、ゴスロリ・ドレスにメタリックなヘルメットと防具をつけたガクとテンの姿をみつけて、
「うおぉっ!」
 と、のけぞった。
「……かっこいいー……メイドール3みたい……」
「本当? この恰好、かっこいい? メイドール3みたい?」
 いきなり勢いづいたガクが、玉木の方に身を乗り出す。
「……調子に乗らない!」
 テンが、そのガクの襟首を掴んで、引き戻した。
「だ、だって……かのうこうやも、メイドール3みたいにしろって……」
「そういう意味じゃない!」
 弱々しく抗議するガクを、テンがぴしゃりと押さえ込む。
 二人がそんなことをいいあっている間に、玉木は、徳川から事情を聞く。
「……荒野君所にも来ているのか……」
「才賀や松島には、連絡がつかないのだ……」
「同時多発……これは、前にいってた、敵さんの襲撃が予定より早かったと考えるべきか……。
 ……よっしゃあ! 放送部は、全面的に君たちをバックアップして……この戦いを、楽しいイベントに作りかえる!」
 玉木珠美はそう宣言して、「イベントは、起きるのではない! 起こすものだ!」とか、喚きはじめる。
「でも……その前に、っと……。
 失礼……」
 玉木は、徳川から見えない位置で、二人のスカートをチラリとめくって中を覗き込んだ。
「ちょっと、後、五分ほど、出撃を待ってて! すぐ戻ってくるから!」
 玉木珠美は、慌てて二人分のスパッツを買いに出かけた。

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彼女はくノ一! 第五話 (87)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(87)

『……んあっ! んっ!』
『あっ! あっ!』
 百メートル以上の距離を置いて数カ所に設置された高性能集音マイクが拾って来た音声は、いったん電子データに変換され、フィルタリングソフトで余分なノイズをふるい落した後、かなりクリアに再現される。
 盗聴器、などという発見されやすい代物をわざわざあの家に設置しようという物好きは、少なくとも、一族の関係者にはいない。あの家は、今のところ中立を態度で表明しているとはいえ、気まぐれで行動の予測がつきがたい「最強」の仮の宿であり、それを除いたとしても、AAAクラスの最要注意監対象が五人も居住している、などという、かなりとんでもない「一般家庭」だった。
『……んっ! あっ!』
『んっ! 香也様ぁ……』
 監視員A(仮名)は、そうして再現された狩野家の音声をモニターして、げんなりとした気分になった。いくら仕事とはいえ、なんで、他人の睦言をえんえん何時間も聞かされねばならんのか。
 今日は「佐久間が仕掛ける」という噂が流れている日でもあり、監視人員はいつもの五割増しになっている。そのうち、半数ほどが、数カ所に分散して、この家をモニターしているわけで……。
『……他の奴らとは違って、こっちは平和だよな……』
 そう、思う。
 家の中で延々と交合をしているのは、この家に住むAAAクラスの最要注意監対象の内、二人。相手は、一般人であるあの家の息子、だった。
 やりたい盛りのあの年齢で、あの美少女二人を相手に乱交、というのもかなりうらやましい限りだが、二人を同時に相手にして、えんえん何時間も奮闘し続ける、とは、一般人にしては、たいした体力だ……と、素直に感心もした。

「……なに、にやにやしているんです?」
 シフトの関係で一緒にいる監視員B(仮名)が、監視員A(仮名)に声をかけた。
「まさか、これ聞いて、変な気、起こしたりしないでしょうね……」
 監視員A(仮名)は三十代の男性だったが、監視員B(仮名)は若い女性だ。
 ともに、一応一族の末席には引っ掛かっている、程度の者で、昔風の呼称を使うなら「下忍」ということになる。一般人よりはよほど丈夫にできているが、戦闘能力、ということでいうのなら、今回の監視対象者たちの足元にも及ばない。
 故に、交替での監視任務に係わるのが、能力的にもせいぜい、といった身分だった。
「いや、まあ……。
 かなり御無沙汰だから……あの若いのにあやかりたいとは思うけどね……」
 監視員A(仮名)はそう軽口を叩いて、
「へへへ……」
 と声を立てる。
 それを聞いた監視員(仮名)は、軽く眉を顰めた。

『……こいつも、まだ若いからな……』
 今の自分の処遇に、不満があるのかもしれないな……と、思った。
 学校の方では、あの加納の御曹司相手に、血の気の多い若いのが総出で、派手に稽古をつけてもらっているらしい……。
『若いっていうのは……身のほどっていうもんを、知らねぇから……』
 多少、腕におぼえがあるくらいでは……。
『……六主家の本家筋の相手は……』
 務まる、訳がない。
 本家筋の人間、などというのは……ほとんど人間じゃあない。
 束になってかかっていっても、せいぜい、けんもほろろとあしらわれるのがオチだろう……。
『まあ……それもいい経験だろう……』
 監視員A(仮名)は、二宮荒神や加納仁明とほぼ同じ世代。彼らと同じ任務についた経験もあり(とはいっても、向こうは黙っていても周囲が勝手にスポットライトを当ててくれる主役格、こちらはその他大勢の端役、だ)、彼ら、本家筋の「凄さ」を何度か目の当たりにしている。
 だから、彼らと自分の違いを、骨の髄から思い知らされている……。
『なるべく早いうちに……思い知っておいたほうが、身のためなんだがねー……』
 実際に現場の仕事に就いてから日が浅い監視員B(仮名)は、どうやら本家筋の連中の、化け物じみた部分を目撃する機会が、今までになかったらしい……。

 監視員A(仮名)の笑いをどう勘違いしたものか、眉を顰めた監視員B(仮名)は、
「……どうでもいいですけど、二人っきりだからといって襲ってきたら、本気で抵抗しますからね……」
 などと、殺気さえにじませて、凄む。
 監視員A(仮名)は肩をすくめた。
 監視員A(仮名)は、勤務時間中にそんなことをするほど飢えてはいないし、若い、というよりも、青い、といったほうがいい、監視員B(仮名)は、全然、監視員A(仮名)の好みではなかったし、昨日今日ようやく実務についた青二才とやり合っても負ける気はしなかったが……そんなことをいちいち説明するのも、面倒だった。
 そんなことを考えていると……監視員A(仮名)の首に、なにか紐状のものが絡まった。みると、監視員B(仮名)の首にも同じ……鞭が、巻き付いている。
 その鞭の行く先を辿って頭をめぐらせると……。
「……はぁーい……」
 金髪の女性が、両手に鞭を持って、立っていた。
「……あ、姉は、中立じゃあなかったのか!」
 監視員A(仮名)は、擦れた声でいった。今のところ、首に巻き付いた鞭は、声が出せる程度には緩められていたが……シルヴィ・姉が少し手首を返せば、軽く頸骨が折れる。声も擦れようというものだ。
「姉は、中立……姫の件には、ね。
 でもぉ……」
 シルヴィ・姉は、にっこりと邪気のない微笑みを浮かべる。
「……ヴィはぁ、恋する乙女の味方なの……」
 監視員B(仮名)の目が、点になった。
 監視員A(仮名)は、「やれやれ」という表情をしている。
 これだから、六主家の本家筋のやつらは……。
「……いわれなくても、手出しなんざしませんよ……。
 われわれの仕事は、監視です。それ以上のことは、おおせつかっていません……」
 あの家の中の監視対象者のいずれかが外に出て、別の監視対象者と合流するような動きがあったら、即刻、報告するように、とはいわれていたが……そのことは、シルヴィには黙っていた。
 ……第一、あの分だと、まだ当分、あの家の中にいる人間が動くことは、なさそうだ……。
「……わたしら、馬に蹴られて……なんて巫山戯た死因で、死にたくはないもんで……」
 若いやつらの情事を邪魔して、怒り狂った女のほうに瞬殺された……なんてことになったら、それこそ、末代までの恥さらしだ……と、監視員A(仮名)は、思った。
 あの家の中で延々と乳繰りあっている二人の監視対象者を、今、邪魔したら……ほぼ確実に、そんな目に遭いそうな気が、ひしひしとする。
 自分たちレベルの人間が……今、あの家の中でえんえんと乳繰りあっているAAAクラスの最要注意監対象者二人に立ち向かったとしても……あっという間に返り討ちにされるのがオチだ。
「……わかってれいば、いいのぉ……。
 くれぐれも、人の恋路を邪魔しちゃ駄目よぉ……」
 シルヴィの言葉に、鞭を首に巻き付けたまま、監視員A(仮名)ならびにB(仮名)はこくこくと頷く。
「……ソンシも……ファースト・タイムがオージーなんて、ヴィも、ちょっとだけ変わった趣味だとは思うけどぉ……あれでも、感じやすいオンナノコなんだからぁ、大事に扱ってあげてねぇん……」
 そういうとシルヴィは、二人の監視員の首に巻き付けていた鞭を緩め、手の中に戻す。
 そして、あっさりと二人に背を向け、
「Good-bye, Good-lack!」
 と言い残し、監視部屋として使用している安アパートから去っていく。

 完全にシルヴィの気配が消えたのを確認して、年配の監視員A(仮名)が、若い監視員B(仮名)にいった。
「いいか、この世界で長くやりたかったら、よく憶えておけ……。
 あれが、六主家の人間だ……」
 監視員B(仮名)は、返答に詰まった。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(3)

第六章 「血と技」(3)

「柏さん……。
 悪いけど、説明をするのはまだ先になりそうだ……」
 荒野は、佐久間現象が去った方向……校庭、を見ている。外は、大粒の雨が降りしきる土砂降り状態だった。
 脅威は……敵は、完全にいなくなった訳ではない。
「茅……このあたりに敵は、いないな?」
 質問の形をとった確認。荒野が気配をっても、特に怪しい人影はない。
 茅も頷く。
「……それじゃあ……。
 おれは、おれと対戦することを目的に来たヤツらの、相手をしてくる……。
 論より証拠……。
 おれたちが一体どういう存在なのか説明をするにしても、最初に実物を見せておいたほうがいいだろう……」
 言い終わると荒野は、軽やかに跳躍し、先程茅が開け、開いたままになっていた窓枠を踏み台にし、雨の降りしきる校庭へと飛び出して行く。
 実習室の中にいた生徒たちが、息を呑んだ。地上まではかなりの距離があり、普通に考えれば、自殺行為だった。
 しかし、荒野の動きは止める間もないほどに素早く、特に一度窓枠を踏んでからは……一瞬にして、視界から消えた。
 それを見た生徒たちが慌てて窓際にかけよると、荒野の姿は校庭の真ん中あたりに落下している最中だった。
 高度は、荒野が踏み台にした窓から、二十メートルくらい、上、で……荒野は、その高さまで自分の脚力のみで到達した、ということになる。
 校庭の真ん中に落下しながら、何故か、くるくると器用に体を回転させていた……。

「……索敵。
 それに、敵攻撃への対処……」
 他の生徒たちと一緒に、際にいた茅が、静かな声で解説をする。
「……自由落下時は、もっとも敵に狙われやすい、無防備な状態とされている。荒野は、それを逆手ととって、わざと隙を作ることで、敵の攻撃を誘発……同時に、上空という視界の開けた場所に身を置くことで、戦況を把握……」

 校庭の真ん中、という開けた場所に落下しつつある荒野は、手足を振り回して、八方から同時に投擲された敵の武器を弾いたり受け止めたりしながら、校庭に散っている人数を確認する。
『……そんなにおれとやり合いたいというのなら……』
 やってやろうじゃないか……と、荒野は思う。
 どの道、もう後戻りはできないのだ。
 幾つかの投擲武器を手や歯で受け止め、校庭の真ん中に降り立った荒野は、即座に、着地点から一番近い敵に向かって走りだす。
 荒野の動きと、荒野の動きが周囲の大気に与える衝撃とが、激しく降りしきる雨を、跳ね上げる。疾走した軌跡が、水しぶきのカーテンとなって長い尾を引く。

 躊躇せずに最短距離を選択し突進したので、荒野が、着地点から最短の距離にいた敵に接触、瞬時に撃破するのに、二秒と要しなかった。荒野の突進に対応する間もなく、その敵は、真上に、三十メートル以上、無造作に放り投げられる。
 落下中に敵から奪った武器は所持していたが、荒野はあえてそれを使用しない。血を流せば、どうしても凄惨な印象を与える。今日は、実習室から成り行きを見守っている生徒たちがいた。ガクとノリに「正義の味方のように戦え」といった手前、荒野自身が「手段を選ばない」方法を選択する訳には、いかないのだった……。
 先程の佐久間の言葉を信じるのなら、この場にいる敵の目的は、「荒野への挑戦」。
 であるならば、それが、どれほど身の程知らずな挑戦であったのか、知らしめてやれば用件は事足りる。
 反撃する間もなく真上にほうり出される……などという醜態をさらせば……いくら荒野という「別格」が相手であっても、技自慢の職人気質が多い一族の中では、後々まで悪し様に言われ、さぞかし肩身が狭くなることだろう……。
 同じように荒野は、常に目標との最短距離を直線的に進んで、第二、第三の敵を撃破する。
 荒野が通った後には、高々と上がった水しぶきのカーテンが残り、時たま、水しぶきのカーテンが通った後には、黒い人影が高々と打ち上げられた。

「……あれが……加納先輩なの?」
 柏あんなが、いった。声が、震えている。
 答えるものは、誰もいない。答えが、分かりきっていたからだ。水しぶきのカーテンをあげ、校庭を縦横に高速で移動する物体は……移動速度から見ても、とても人間とは思えなかったが……確かに、よくみると、ヒトの形をしていた。それも、自分達と同じ制服を着、特徴のある、白っぽい髪をしている。
 第一、実習室にいた生徒たちは……荒野が、窓から校庭に飛び出すところから、目撃している。
 見まちがいようが、ないのだ……。
 その荒野の後を追うようにして、荒野と同じような水しぶきのカーテンを背負った移動体が、出現しはじめていた。
 荒野の攻撃を隠れて待ってばかりもいられない、ということらしい。
 それら、新たに出現した移動体は、長い棒状の物体を持っていて……その先には、荒野の頭髪と同じような色合いの金属片が、鈍い光を放っていた……。

 鑓……それも、もっとも実践的、といわれる、十字鑓、だった。宝蔵院流が始祖、とされる。
「鑓と長刀。 鑓の穂先は両刃、長刀は片刃で薙ぎ倒す」、つまり、長い柄の先に、両刃の穂先が、十字型にしつらえてある。斬る、突く、薙ぐ……加えて、両刃、であるが故に、「引いて」も、横に伸びた刃が対手の背後を襲う。
 リーチが長く、極めて殺傷能力が高い得物を持つ一団。
 鑓持ちの一団は、荒野とそう変わらない年頃の連中で、今の荒野についてこれる、ということは……いずれ、野呂の血に連なるものだろう。
 一族の中でも、野呂は荒事を好まない、とされているが……そうした風評は、あまりあてにはならない。実力を隠し、油断を誘うために、故意にそうした噂を流している……ということは、一族の中では、よくあることだ。
 十字槍の少年たちは、二手に分かれ、左右から同時に荒野を攻撃してきた。三メートルほどの長柄の槍だったので、同士討ちになる恐れはない。タイミングも、まあ、うまくいっているほうだろう。
 相手が荒野でなければ……十分に、左右から串刺しにできた筈だった……。

「あれが、荒野。加納、荒野。一族で、二番目くらいに強い、荒野。
 何でもできる加納本家の血を、最も濃く受け継ぐ者。
 その荒野が、茅のためにこの町にいる。この町で、茅に普通の生活をさせるために、懸命に、一般人の振りをしてくれているの……」

 自分を串刺しにする筈の穂先を、荒野は、速度に急制動をかけることで、あやうくかわす。
 反射神経には定評のある野呂の者たちが、荒野の動きを追えない。
 荒野は、彼らが穂先を突き出してから速度を緩め、荒野の胸先、数センチの所を十字型の穂先が、かすめる。左右から突き出され、衝突し合い、交錯する。十字型の穂先が重なった上に、荒野の踵が、体重と速度を乗せて、降りる。
 重なり合っていた穂先のほとんどが、澄んだ音をたてて、折れる。
 突き出した穂先に、いきなり下方向の力を加えられた槍の一団は、揃って前のめりにつんのめった。
 使い手の制動を失った槍の柄を、荒野が両手で掴む。一瞬、地面を強く踏んだかと思うと……。
 荒野は、両手に束にして持った槍の柄を、いっぺんに、真上に向けた。
 柄を手放すのが遅れた何人かの少年たちが、空中に放り出される。

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彼女はくノ一! 第五話 (86)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(86)

「……いつまでくっついているですか……」
 その休息を中断させたのは、楓だった。
 孫子の上に重なってあえいでいた香也を、ごろん、と横に転がして引きはがす。当然、孫子に刺さったままだった香也自身も、抜けた。一度射精した筈の香也のそれは、まだぜんぜん力を失っていなかった。相変らず硬直したままの香也は、孫子と愛液と破瓜の血、それに精液とにまみれ、起立したまま湯気をたてている。
 そうした香也自身をみて、楓が、ごくりと喉を鳴らす。
「……まだ……クスリの効果が……持続して……」
 クスリの効果がすっかり抜けるまで、香也の相手をしなければならない……と、楓は、自分自身を納得させる。
 楓自身も、さきほどひさしぶりに香也としたことで、かなり高ぶっていたのだが……そのことを、楓はあまり自覚していない……。
『……だけど……』
 楓は、満足した笑みを浮かべ、横になっている孫子を、横目で一瞥する。
『……この女のすぐ後……というは、なんかイヤ……』
 真っすぐに天を向いたままの香也は、孫子との行為の痕跡にまみれている。
 かといって……これを拭くためタオルなどを取りにいく隙に、また孫子と香也がはじまってしまうのは……さらに、イヤだった……。
 今の香也を女性と二人きりにするのは……危険、としかいいようがない……。
 しばらく考えた楓は、結局、自分の口で香也を清めることにする。
 香也と他の女との痕跡に口をつけるのは抵抗があったが……そのまま、楓が使用するよりは、はるかにマシに思えた。
 楓は、はいつくばって香也のものを、ピチャピチャ音をたててなめはじめる。その音の正体に気づいた孫子が、慌てて跳ね起きて、楓の反対側から荒野の陽物をなめはじめる。起立している香也の陽物を、音を立ててなめているうちに、楓と孫子は、恍惚とした表情を浮かべはじめる。なにしろ、先程まで自分自身を貫いていたものをなめまわしているわけで……。
 それでなくとも、十分に異常な状況だなのだ。怪しげなクスリとやらを服用していない楓までもが、ヘンな気分になってくる……。

 はいつくばって孫子と二人で香也に舌で奉仕しているうちに、下半身のある部分がむずむずうずくような錯覚を覚えた楓は、孫子を押しのけて、香也をつかみ、自分自身の中に導いた。
 すっかり濡れている楓の中に、にゅ、と、抵抗なく香也が滑り込んで来る感覚。そのまま、楓は上から覆いかぶさるように、香也に抱きつく。
 さっきは、香也の上で激しく動いていた。結合部に快楽はあったが、体のほとんどの部分が香也と離れていたので、一体感というものはなかった。
 その不足感を埋め合わせるように、楓はぴったりと香也と体を密着させ、香也と口唇を重ねる。
 しばらくそうしていた後、もぞもぞと体を動かして、繋がったまま、香也とともに、ごろん、と向きを変え、香也が上になるようにする。楓が、足を、香也の股にからませる。手を、汗に濡れた香也の背中を、なでる。
 回復して来た香也が、まず舌で楓に愛撫を返しはじめる。楓の腕が香也の首にまわり、楓は動き始めた香也の舌をむさぼりはじめた。
 次に、香也は床に手をつき、楓の体との間に、少し隙間を作る。
 香也との一体感が損なわれたことが不満なのか、楓が鼻を鳴らす。
 しかし、香也が楓の動き始めると、楓はすぐに余裕をなくした。
 一度射精した香也からは、孫子を犯した時のような性急さは影をひそめ、ことさらゆっくりと、楓の内壁を亀頭でまさぐるかのように、前後に動く。
 多少回復して来たとはいえ、息が切れていたこともあって、香也は無理をせずに、ゆっくりと、動き続ける。
 ゆっくりと中を往復されることで……刺激は与えられるものの、でも満足するまでには程遠い……という状態に長くおかれることになった楓は、いやいやをするように首を左右に振った。こうして、ゆうっくりとうごかれると……じれったさを感じるし、また、早く動いている時には気にする余裕もない、香也自身の形状や大きさを意識してしまって、頬が赤くなってしまう。
 激しく動いたり動かされたりすると、あまり意識する余裕もないのだが……こうしてゆっくりと動かされ、思考に余裕がでてきてみると……自分たちは、ひどく卑猥なことをしているのだ……と、改めて、思ってしまう……。

 そんな楓の思考を裏付けるように、孫子が横合いから交合している二人に抱きいきて、動いている香也のすがりつくようにして、体を擦り付け、香也の耳に舌をいれる。いつの間にか孫子は、着ていたゴシックロリータスタイルのドレスを脱いで、全裸になっていた。香也の耳の穴に舌の先をいれていた孫子は、その後耳たぶを噛んだり、香也の首筋に口唇を這わせたりしている。
 香也のほうは、一見、そうした孫子の愛撫に影響されることがなく、ストイックに腰を動かしているようにみえたが……ストロークの振幅が、次第に大きくなっていった。
 楓の中を、香也がゆっくりと後退していく。抜けるか抜けないか、といった境目、楓の入り口にまで香也の亀頭がさがる。
 そこで、楓をじらすかのように、数秒停止し……今度は、不意に、ずん、と、乱暴に、楓の、奥の奥にまで、突き入れられる。
 いきなり、最深部まで香也に侵入される衝撃に、楓は思わず、
「……あうぅっ!」
 という声をあげている。
 なんどもそうして単調に最深部まで犯されるうちに、楓は、意識が朦朧として来る。
 香也が往復している部分しか、意識できなくなる。
 意識が朦朧とした状態のまま、楓は、下から香也にしがみついている。楓の四肢を背中や腰に巻き付けながら、香也は、楓への挿出を繰り返している。
 楓は、ぼんやりとした意識の中で「……誰かが、うるさく喚いているなぁ……」と思った。その声にどうにも聞き覚えがある、と、しばらくその声をよく聞いてみると……それは、楓は自身の嬌声だった。自分でも気づかないうちに、楓は、香也にしがみつきながら、はしたない声を張り上げていた。
 単調な挿出を繰り返していた香也の背中が、楓の腕の中でぶるぶると震えている。香也の終わりが近いことを察知した楓は、目をつぶったまま、香也にしがみつく力をさらに強くした。
 楓は、今までに、香也を自分の中で受け止めたことがない。今度こそは、最後まで、香也を離すつもりは、ない。
 香也のほうも、孫子のクスリによって通常の判断力が失われ、楓の肉を味わうことに夢中になっているで、今までのように楓から離れようとはしない。
『……あの女は……』
 香也は、たった今、楓の前の前で孫子を抱いた。しかも、孫子の中にそのまま射精までしているのを、楓は確認している。
 ちらり、と、香也のことしか考えられなくなっている筈の楓の脳裏に、孫子の顔が浮かんだ瞬間……楓の中心が熱くはじけた。楓は、香也が楓の奥底に長々と射精したことを、感じる。
 楓は、一層の力を込めて香也にしがみつきながら、思った。
『……香也様の……熱い……』
 ドグドグと、楓の中の香也が脈打ち、震えている。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(2)

第六章 「血と技」(2)

 その日、徳川篤朗は、朝早くから徳川浅黄の手を引いて商店街にやって来た。

 今度のコンテストで使用したネット上での映像配信システムは、孫子との囲碁勝負の時に使用したシステムを流用している。あの時は、孫子の身元が身元なので、ストリーミング映像をローカルなディスク領域に容易にコピーできないよう、かなりタイトなセキュリティシステムを楓と共同で組んだわけだが、今回のコンテストについても、出場者のプライバシーを最大限に保護する、という商店街側の意向をアピールするために、そのシステムが採用された、というわけで、篤朗は、従来のシステムに若干のパッチを当てて改良することと、自分の会社のCM映像をストリーミング映像に混入させることを条件に、システム関係の整備と保守を商店街から請け負った。
 浅黄が着いて来ているのは、例によって篤朗の姉が仕事で何日間か留守にしているのと、浅黄自身がこのイベントを自分の目で見たがったからだ。浅黄については、適当なところで、玉木の弟か妹に預けるつもりでいる。もともと、徳川への依頼は玉木珠美経由で来た話しだし、あそこの家には玉木珠美の弟と妹もいるから、浅黄のいい遊び相手になる筈で、なにかと都合がよかった。

 徳川篤朗がついた時は、時間が早く、まだほとんどの店のシャッターが降りていた。そうした閑散とした商店街で、顔見知りの電気屋の親父さんが、脚立を使って、液晶ディスプレイをアーケードの支柱に取り付けていた。真新しいツナギを来たバイトらしい助手は、その脚立を支えている。
 電気屋の親父さんは、家電メーカーの直販店をやりながら、パソコン部品の通販バイヤーみたいなことにも手を出しているらしく、商店街のサーバーも、この電気屋さんが提供してくれた、と、玉木に聞いている。
 篤朗が声をかけると、電気屋の親父さんは、
「おお。来てくれたか……」
 と声をかけて、脚立から降りてくれた。親父さん、といってもまだ若い。二十代後半からせいぜい三十代前半、というところだろうか? 篤朗との付き合いが始まったのはこの仕事を引き受け立てからだ、両者とも技術屋気質を持った経営者、という部分で、話しが通じるところが多かった。
 しばらく立ち話をしていると浅黄が退屈そうにしだしたので、篤朗は、
「……浅黄を預けたら、手伝いに来てやるのだ……」
 と言い残して、一旦別れた。うお玉に向かった。
 玉木の自宅でもあるうお玉には何度か訪問しているので、勝手口に回って来意を告げると、玉木珠美の母親が出てきた。
 篤朗の顔を見ると、「今、珠美呼んできますから……」と奥に引っ込もうとする。それを呼び止めて、事情を話し、浅黄だけを預け、電気屋の親父さんの元にもどる。
 親父さんの話しによると、液晶デスプレイを固定する為の台は昨夜のうちに溶接で固定しているので、あとはその台にディスプレイをビスで据え付けていくだけ、ということで、その程度の簡単な作業なら、篤朗にも十分に手伝えるのだった。
 もうすぐ「ボランティアの若いの」とやらが大勢詰めかけてくる、ということだったが、手伝いは一人でも多いに決まっている……。

 商店街は、朝の十時前後から異装の人たちが増え続けた。白と黒の少女たち……中には、「少女」という呼称が似つかわしくない年齢の女性も若干名含まれていたが……たちは、朝から電車が駅に到着するするごとに増加し続けた。
「そうした恰好をしても、うろんな眼で見られない場所」、あるいは、「同じような趣味を持つ人たちが、期間限定で集まる場所」として認知されているらしく、コンテストにエントリーはしないまでも、ゴシック・ロリータ・スタイルに身を包んだ女性たちが続々と集まってくる。基本的に、ここいらは「情報発信地」とか「都会」からはほど遠い場所であり、まだまだそうしたファッションに対する偏見も強い。
 その反動か、マイナーな趣味の人たちから、自分たちの価値観が認められる場所として認められると、かなり遠くからでも足を運んでくる人たちがいた。
 加えて、そうした女性たちを目当てに来るカメラやビデオを抱えた男たち、それに、ネットでたまたまこのイベントの存在を知ったナンパ目的の勘違い野郎などなど……それに、ふだん、商店街を利用しているも常連客も当然いるので、時間が経つにつれて、人出はどんどん増えていった。
 商店街に据え付けられた何台かのカメラが、そうした様子をリアルタイムでネットに配信している。また、商店街のサイトで見ることができるその映像は、コンテストにエントリーしてきた人たちの写真や動画とともに、商店街の各所に配置された液晶ディスプレイにも映し出されていた。
 カメラのある位置は、かなり目立つように告知してあるので、遊びに来たゴスロリ少女たちが、カメラに向かってポーズを取ったりする光景も、よく見かけられた。
 普段、利用している人の年齢層が高めなこの商店街に、若い女性が大勢つめかける、ということは滅多にないことだったので、商店街全体がどことなく華やいだ雰囲気になった。
 また、コンテストの投票はポイント制で、ネット上や往来での投票ポイント比べ、かなり大目のポイントを各商店に振り分けられていたので、コンテストにエントリーしてきた出場者のうち、経済的に余裕のある者は、率先して商店街で買い物をした。
 メイド喫茶、ならびに、執事喫茶、も、まだこの地方には進出してきていなかったので、珍しがられたし、局地的に話題にもなっているようだった。コンテストやゴスロリには興味がなく、この臨時営業店舗目当てにやってくる客も多かった。
 そんな感じで、初日の午前中から、今回の企画に対する関係者各位の感触は、決めて良好なものといえた。
 不安材料といえば……この客足が、最後まで持続するか、という部分だが……もともと、商店街側は、孫子の発案によるこの企画へはあまり期待をしていなかったこともあり、「初日の午前中の分だけでも」十分に成功、という意見が多かった。
 大きく期待をしていなかった分だけ、初日から、思っていた以上の客足を喜ぶ声が多く、「これ以上は、おまけ」という余裕さえ、あった。商店街の中には、この客層とはあまり関係のない商品を扱っている店も多かったが、そうした商店も、直接利益には結びつかないにせよ、活気がでてきたこととネームバ\リューが若干あがったことを、素直に喜んでいた。

「名誉実行委員長」という、具体的な仕事の内容がよく分からない肩書きを持つ才賀孫子が(彼女なりの)盛装をして午前中いっぱい商店街各所を練り歩き、その場に居合わせた人々の耳目を集めた後、午後になって孫子と入れ替わるようにして出てきたのは、十才をいくらか越えたか、といった年頃の、二人の「ローリータな」ゴシック・ロリータだった。
 この二人は、いわずと知れたテンとガク、なわけだが、貸衣装屋が誂えてくれた衣装とは対照的に溌剌として元気な様子が、老若男女を問わず、居合わせた人々全てを魅了した。もともと、二人とも愛らしい顔立ちをしているし、澄まして立っていてもそれなりに絵にはなるのだが、くるくるとあっちこっちに休むことなく飛び回って、顔見知りのお店の人たちに挨拶して回る、など、全く持って他人の眼を意識していない、普段通りの、媚びをまるで含んでいない様子が、多いに受けていた。二人は、この日から据え付けられていたウェブ用のカメラをみつけると、いちいち足を止めてポーズをとったりピースサインをしたりしていたから、たまたまネットで二人のことをみつけた人々も、大方は魅了していた。
 無防備で計算のない子供、兼、女性。しかも、美形。
「一般受け」という意味において、無敵の組み合わせかも知れない。

 ガクとテンが、人混みの中に不穏な雰囲気を放つ者をみつけたのは、二人がその衣装に着替えて、商店街を飛び回りはじめてから、小一時間ほど立ってからだった。
 ガクとテンは、同時に顔を見合わせて頷きあい、一旦、二人の詰め所になっている、電気屋さんの事務所に向かう。
 二人が感じたのは、明らかに敵意……いや、それよりも強い、殺気、であり……これみよがしにそうした不穏な気配を放たれて、黙って我慢している二人では、ない。

 電気屋さんの事務所には徳川篤朗がポツンと一人だけ座っていて、パソコンをモニターしていた。商店街のサイトが置いてあるサーバは、電気屋さんが用意した物だが、ソフト的な面では、かなり徳川の手を借りている。そのためのモニター、だろう。
 テンが携帯を取り出して、茅に「交戦許可」を取っていると、篤朗はガクに、
「……前にいっていた、挑戦者とやらが現れたのか?」
 と尋ねた。
「トクツーさん、今度は本格的。
 学校にいるかのうこうやのところにも、別口が来ているって……」
 茅との通話を切ったテンが、篤朗に答える。
「で、その、かのうこうやから伝言。
 メイドール3のように……正々堂々戦うのなら……せいぜい、派手にやれって……。
 ……で、でも……大怪我させたり死なせちゃだめだぞ!」
 テンが慌ててそうつけ加えたのは、
「……そういっておかなければ、ガクなら、無邪気に相手を殺戮して回ることもありうる……」
 と思っているからで……テンには、荒野がいう「正義の味方のように戦え」という意図が、だいたいの所理解できるが……ガクには、あまりそういう想像力は期待できなかった。
 ついこの間まで狩猟生活を送っていたガクと、今、商店街に来ている人たちとでは……倫理観の格差が、ありすぎるのだった……。

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彼女はくノ一! 第五話 (85)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(85)

 香也の先端が孫子の入り口を探り当てたかと思うと、にゅるり、と亀頭が入り込んでくる感触があった。クスリの影響もあり、孫子のそこは十分に湿っている。とはいえ、今までに何物も侵入したことのない孫子の中はかなりきつく、入口に亀頭が入ってこられただけで、孫子は「うひっぃっ!」と声をあげてしまう。
 痛い。
 無理に、肉を割られて、侵入してくる感触がある。
『犯される』という表現を、孫子ははじめて身近に感じた。
「……うっ!
 はっ……はっ……」
 そんな孫子の様子に構わず、クスリによって普段の理性を失っている香也は、体重をかけて孫子の中に入っていく。、
 肉を割って香也が侵入してくる感触に、孫子は、あえぐ。
 もはや自分の欲望のままに動くことしか頭にない香也は、ともすればもがき、動いて香也から逃げようとする孫子を、上から体重をかけて押え付け、孫子の中を犯していく。
 当然のことながら、性行為はこれが初めてになる孫子に、快感は、ない。
 痺れるような痛みだけが、ある。
 孫子は堅い床の上に押えつられ、犬のように這い、上から押さつけられて、背後から、犯されている……。
 相手が香也でなかったら、孫子は、とても耐えられなかっただろう。
 痛みにあえぐ孫子には構わず、香也が、腰をグラインドしはじめる。
 香也の動きに合わせ、孫子は、
「……はっ! がっ!」
 と息を吐く。
 嬌声ではなく、痛みをこらえるためだった。
 孫子の冷静な部分が、そんな自分を冷笑している。
『……香也様に……犯されている……。
 犬みたいな、恥ずかしい格好で……』
 普段の自分からは、想像できない姿だ……。
『……しかもそれを……わたくしは、喜んでいる……』
 そんな自分を……クスリまで使って、強引にこうなるように仕向けたこと……今、お気に入りのドレスを着たまま、痛い思い強要されながらも、喜んでいる自分を……孫子は、浅ましい、と思う。
 痛みをこらえるために上げていた声に、いつの間にか、甘い響きが交じっている。
「……はうぅうっ……あうぅっ……」
 という鼻にかかった自分の声を、孫子は、他人事のような気持ちで聞いている。
 むずむずするような感覚は確かにあるのだが……それ以上に、香也に犯されている部分を中心にして、下半身全体に、痺れるような痛みがある。
 自慰の時に感じるような、快感ではない。
 それでも、孫子は、いつの間にか嬌声に似た声を上げている自分の反応こそが、自分の本心なのではないのか……と、思った。
 孫子は……誰かに……従いたい、征服されたい、という願望を、自分でも知らない間に育んできたようだ……と、そう思う。
 そして、今……孫子は、香也によって蹂躙され、香也の性欲を解消するための道具として、扱われている……。
『……いやらしい……』
 孫子は、今の自分のことを、そう思う。
 こんなことをされて、喜びの声を上げているなんて……自分が、こんなことを望んでいた、なんて……。
『……浅ましい……』
 屈辱的な体位で堅くて冷たい床の上に組み敷かれ、いいようにこづかれ、痛みしか感じていないのに、その実喜んでいる自分のことを……孫子は……。
『……犬です……わたくしは、牝犬です……』
 そう、思う。
 孫子は、多分に冷静な性格であり、だからなおのこと、事実を自分にとって都合よく解釈する、という自己陶酔癖とは無縁である。
 孫子は、楓や自分があれほど迫っても香也が応じようとしなかったことを、知っている。
 今のこの状況は……孫子が、自分で作ったものだった。
 孫子は、今の状況に、香也に自らの身を差し出し、屈服することで満足している自分の精神性を見いだした。
 孫子は、自分が、
「……あぅうぅ……あぁうぅん……はうぅ……」
 と、明らかに喜びを含んだ声を上げているのを、認めた。
 香也が蹂躙している部分の奥からとどめなく体液が分泌され、股にかけて滴り落ちているのを感じる。
 自分の体がすっかり反応しているのに気づいて、
『……はしたないいやらしい浅ましい……』
 と、孫子は、思う。
『……初めて、なのに……痛いだけ、なのに……』
 何故、自分の体は、こうまで反応してしまうのか……。
 孫子がそんなことを考える間に、香也の動きが止まり、孫子の奥に、じわりと生暖かいものが広がった。最初、ゆっくりと出て来たそれは、後になると激しい勢いで噴出しはじめ、孫子の奥を汚す。
 ……熱い……。
 と感じた時、ぐったりとした香也が、孫子の背中に覆いかぶさってくる。
 孫子の中で、硬直したままの香也の分身が、どくどくと脈打っていた。
『……終わっ……た?』
 どうやら、香也によって膣内に射精されたようだ……とようやく気づいた孫子は、不安になるよりも、終わってくれたことへの感謝と、それに暖かい気持ちになった。
 妊娠への不安は、孫子にはない。
 自分と子供、それに香也くらい、一生困らないで暮らせるほどの財力は、すでに持ち合わせている。むしろ、そうなれば、香也を取り巻く女性たちの中でも、自分の占める位置が確実に大きくなる……と、思ってしまう。
 だから、香也から放出されたものが自分の中に染み込んでいく感触を、
『……暖かい……』
 と思うことができる。
 経済的な不安、ということに無縁な孫子は、やはり、根本のところで浮世離れした感覚の持ち主だった。

 孫子の背中に倒れ込んだ香也は、初めての行為を終えた孫子にやさしく声をかけたり、体をやさしくなでさすってやったり、といった、並の優しさを示すほどの余裕を持っていなかった。
 汗まみれになって、ひたすら、ぜーはーぜーはー、と呼吸するのに忙しい。
 普段の運動不足が、祟っていた。性欲を異様に昂進させる薬物も、別に、香也の身体能力まで強化するわけではない。
 だから、射精した後も、香也は孫子と繋がったまま、ぐったりとしていた。クスリの効果か、射精しても香也は、孫子の中で硬度を保っていた。
 孫子はといえば、どのような理由であれ、香也が自分に密着してくれていることがありがたかった。孫子は、初めての行為を終えた余韻に浸っている。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(1)

第六章 「血と技」(1)

「茅……ごめん……」
 荒野は、躊躇せずに言い放った。
「おれたち……かなり高い確率で、この町にいられなくなる……」
「即答、かい……」
 佐久間現象、と名乗った少年は、うっそりと笑う。
「もう少し、悩むかと思っていたよ……。
 どうやら、君に対する評価を改めなくてはならないようだね……」
「……お前が本当の佐久間か、それとも、佐久間が操る傀儡なのかどうか知らないが……」
 荒野は、一歩前に出た。
「……これだけ大勢の前で、堂々と宣戦布告してきたんだ……。
 無事では、済まないものと思え……」
 静かな、口調だった。
 その時、緊迫した空気にそぐわない、軽妙なメロディが流れる。
 荒野は、そのメロディに聞き覚えがあった。
「荒野……テンから電話……」
 自分の携帯を耳に当てた茅が、荒野に伝える。
「あっちにも、敵多数。
 テン、倒しちゃっていいか、って聞いてきてるの……」
「……構わない」
 荒野は答えた。
「おれたち自体に向かってくる者は当然だが……この町の人たちに危害を加えようとするヤツらは、残らず、おれたちの敵だ……」
 茅は、静かな口調で淡々と話す荒野が、内心では怒り狂っているのを感じ取っていた。
 佐久間現象、と名乗る少年は「即答」といったが……判断に要した時間と、その判断を下す為に必要とした苦渋とは、必ずしも比例しない。
 茅は、その決断が、荒野にとってどれほど重いものであるのか、よく、知っている。
「わかった。テンには……メイドール3みたいに……正義の味方みたいに戦えって、いっておく……」
「……それでいい」
 荒野は、頷いた。
 茅の提案は、一見突飛なようでいて、実は的確だ。
「どうせ避けられないなら……せいぜい派手にやって、玉木や商店街の人たちを喜ばせてやれって……そういってくれ……」
 ガクとテンが、正義の味方のように戦うことができるのなら……地元の人たちを味方につけられる。前に、有働や玉木がいっていたことを、今、やるハメになったわけだった。
 予定より、かなり前倒しになった形だが……テンとガクがうまくやれば、いい、アトラクションにはなるだろう……。
 それが出来なかった場合は……。
『あいつらは、リタイアってことだな……』
 荒野は、そう考える。
 非情なようだが……どのみち、目の前に「佐久間」を名乗る者が来ている以上……むざむざ商店街にまで救援に行かせてはくれないだろう。
「そっちは……よほど人数が多いようだな……」
 荒野は佐久間と名乗った少年に、また一歩近づく。
「個別撃破は、基本中の基本だよ。
 君たちは、単体でさえ、呆れるほど高性能なんだ……。こっちは、数を頼むより他、ないじゃあないか……」
 荒野が近づいても、佐久間現象と名乗った少年は、特に身構えることはなかった。
『……やっぱり、傀儡かな……』
 荒野は、そう思う。
 その少年からは、熟練の術者特有の雰囲気を感じ取れなかったし……佐久間の能力を考えれば、「自分を佐久間だと信じ込んでいる分身」を作ることも、十分に可能なのだった。
「茅……」
 荒野は、茅のすぐ傍の窓を指さして、いった。
「そこの窓……全開」
 茅が即座に反応し、動いたのを確認して、荒野は一気に間合いを詰めた。
『反応が……鈍い……』
 顔がくっつくほど近づいても、少年の表情に変化はない。
「……荒神の真似……」
 少年が驚きの表情を浮かべる前に、荒野は、少年の体を窓の外にぶん投げた。
 少年の体は、軽々と窓の外に飛ぶ。

「茅、あと何人いる?」
 厳しい語調で、荒野が問いただす。
 荒野は、茅の「高感度センサー」としての性能を信頼している。
「今……見せる!」
 しかし、茅は、荒野が期待する以上のことをしてくれた。
 実習室内に、不意に十人ほどの人影が出現する。十代から二十代の男女が、なにが起こっているのか理解できずに、きょろきょろあたりを見渡している。
 荒野の感覚以上に、気配を絶つのが巧いヤツらを揃えたのか、佐久間の能力を使って姿を知覚できないように細工をしていたのかは知らないが……。
『ヤツらは……茅を過小評価している……』
 茅は、そうした細工を全て無効にした。
 前に、突然テーブルを消した時の応用だ。
「この人たち、今、何も見えないし聞こえていないの。完全な、闇しか感じられない……」
 こうなったら……どんなに優れた術者も、形無しだ……。
「うん。
 今、無力化する……」
 そういいながら、荒野は、近くに突っ立っている不審者から、順番に当て身を食らわせ、気絶させていく。
 それまで呆気にとられて事態の進行を見つめているだけだった、実習室に集まっていた生徒たちがようやく騒ぎ出すが、事情を知っている有働が率先して、「みんな、静かに。もうちょっと、静かに。後で加納君から説明してもらうから……」とか触れ回って、パニックになるのを防いでくれていた。

 荒野が次々に気絶させていった侵入者たちの手足を、茅が、本をまとめていたビニール紐で拘束していく。実習室内にいた侵入者全員を拘束した状態で実習室の後ろの床に、まとめて転がし終わると、
「加納先輩……説明、してくれますよね……」
 柏あんなが、仁王立ちになっていた。
 周囲に集まっていた生徒たちも、柏あんなの言葉に、「うんうん」と頷いている。

『……佐久間の野郎……』
 あっさり片付いた……ということは……目的は、宣戦布告や戦闘行為そのもの、よりも……。
『……こういう状況に、おれたちを追い込むこと……か……』
 これで……少なくとも、この場にいる生徒たちに対しては……荒野は、自分たちの正体を、かなりの部分、明かさなくてはならない羽目に陥った……。
 荒野は、あっさりと身の自由を奪われた侵入者たちに、視線を這わせる。
『こうなると……こいつらも、本当に術者だったかどうか……』
 佐久間、なら……一般人に暗示を与えて動かし……その姿を、荒野たちの眼から隠すことも可能なわけで……。
『初手は……すっかり、してやられたってわけか……』

 校庭を確認すると、「佐久間現象と名乗った少年」の姿は、消えていた。
 先ほど、「佐久間現象と名乗った少年」が侵入してきてから、まだ五分もたっていなかった。

[つづき]
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彼女はくノ一! 第五話 (84)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(84)

 香也の脳裏には、もはや正常な理性的判断力は欠片ほどしか残っていなかった。下から楓を乱雑に突き上げる感触が、ますます持っていて当然の思考力を香也から奪う。下から楓の肉をかき分けて突き上げる感触はなんとも甘美なもので、香也の思考力を奪うのに十分だった。突き上げられる側である楓のほうも、十分に感じるところがあるようで、愛液がまだ十分に分泌されていない状態で挿入し、無理矢理動かしはじめた最初のうちこそ内壁がひきつれる感触にかなり痛みを堪えながら自分で動いていたが、動きはじめてからいくらもしないうちに、香也が深く刺さっている奥のほうからねっとりとした粘液が降りてきて、香也との結合部分を湿らせていった。香也自身を楓の中から分泌されてきたねっとりとした体液がすっかり包み込むようになると、香也の上に乗った楓が動く、というよりは、香也の上に乗った楓を、下から香也が乱雑に突き上げ、それに合わせて、楓が「やっ!」とか「ひゃっ!」とか小さな可愛い悲鳴を上げて身を躍らせているような感じになる。
 その頃になると、主導権は完全に香也の方に移っており、楓は、香也の動きに翻弄されるばかりとなった。香也は、疲れを知らない気まぐれな動きで大きく、あるいは、小さく楓を下から突き上げ、結合部を中心にして、楓の体がその都度に飛び跳ねる。
 もはや、香也は本能のみに従って動いていた。

 そして、香也とだいだい同じ量のクスリを服用していた才賀孫子も、楓のように直接香也と交合しているわけではなかったが、ゆっくりと理性を融かしていった。孫子は、香也の利き腕を抱きしめながら、香也の口を貪りつつけている。外からみた限りでは、派手な動きがないように見えた。もはやほとんど衣服を身につけていない香也や楓とは違って、胸をはだけただけの孫子は、一見、正気のように見えるのだが……その頬は官能によって紅潮しているし、何より、かき抱いた香也の腕を、はだけた自分の胸にゆっくりとこすりつけている。また、香也の指先は孫子のスカートの中に消えており、濡れた孫子の恥部に押しつけられていた。

 香也の上で踊っている楓は、動的に香也に性感を強要されている形で、香也の腕を拘束して、自慰にも似た行為に使用すしている孫子は、静的に、自分の快楽に耽溺していった。
「……はぁっ! んっ! ふっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 楓は、香也の上で踊りながら小さな悲鳴を上げ続けている。クスリがもたらした高揚も手伝って、最初からトップにギアを入れて激しく動き続ける香也にいいように翻弄され、短期間に昇り詰めた形だった。
 しばらくして、
「……あっ!
 ……あ……あ……」
 楓は、がくん、と喉をのけぞらせ、眼を見開いてピクピクと全身を痙攣させた。
 そのまま、がっくりと全身の力を抜いて、背中の方にどさりと倒れ込む。
 どうやら、香也よりも先に、かなり深いところまで達してしまったようだ。そもそも、楓とて、それほど経験豊富、というわけでもなく、クスリを力で本能全開になった香也の動きに、楓の体の方がついて行けなかったようだった。
 床に寝そべった楓は、時折、そのままピクピクと動くだけで、愉悦の表情を浮かべて白目を剥いている。

 楓が香也の体から離れたのを確認した孫子は、てらてらと濡れて直立したままの香也の硬直を確認し、そのまま、楓と交代するようにして、香也の上に跨ろうとする。
 しかし、突如起きあがった香也が、孫子の体を廊下に押しつけた。
 香也が起きあがることを予測していなかった孫子は、不意をつかれた形で尻餅をつき、そのまま、香也にのし掛かられ、身動きを封じられる。
 普段の温厚な香也からは想像できない乱暴さに、一瞬、孫子は本能的な恐怖を感じた。
 そして、すぐに考え直す。
 いくら、クスリが回ってきたといっても、力では孫子のほうが香也よりもずっと強い。いざとなれば、香也の動きを止める術は、いくらでもあるのだった。
『……それよりも……』
 孫子は、あることに思い当たって、恐怖とは別の意味で、慄然とする。
『犯される……この恰好で……香也様に……無理に貞操を奪われる……』
 今、孫子は、商店街から帰ってきたばかりであり……つまり、「あの」衣装を纏っている。
 この恰好で、香也に無理矢理犯される……というのは、孫子の、潜在的な願望に合致していた。最近覚えた自慰をするときも、孫子は、数回に一回は、そんな妄想を弄びながら行為を行っている。
 孫子の想像を裏付けるように、香也がやはり普段からは想像できない俊敏さで、孫子のひらひらと装飾の多いスカートを跳ね上げ、孫子の股間に食らいついた。
「……やっ! やめっ! んっ……」
 そのまま直接的な行為を強要される、と予測していた孫子は、香也の思いがけない行動に抗議しようとして、はじめてそこに他人の舌が触れる感触に身を震わせる。
 香也は、孫子の尻を大きく持ち上げて、孫子の両脚の付け根に顔を埋め、びじゃびちゃと音を鳴らして下着の上から孫子の股間を舐め回しはじめる。
「……やっ……あ……あ……」
『……そんな……汚い所……』
 そこは、性器がある場所でもあったが、同時に排出器官がある場所でもある。プライドの高い孫子にとって、いきなりそんな場所に顔を突っ込まれる、というのはかなり恥ずかしい行為であり、抗議の声を上げようとしたが、何故か、甘い鼻息が漏れてしまう。
 もちろん、他人の舌がそんな場所に触れる、などということは、孫子は、今までに経験したことがない。
「……ああっ!」
 香也に高く尻持ち上げられたまま、孫子は、両脚を香也の肩に乗せ、硬直した。
 クスリの効果もあり敏感になっていたのか、一度、軽くいったらしい。

 しばらく硬直した後、くたりと全身から力が抜けた孫子の脇に手を入れて、香也は、孫子を俯けにうつぶせにした。まだ体に力が入らない孫子は、荒く行きをつきながら、ぼんやりと、
『……いよいよ……』
 ……香也のものになる……される……。
 と、考えていた。
 出来れば、二人っきりで、もっと雰囲気を出してこうなりたかったものだが……。
 うつぶせになった孫子のスカートを思いっきり上まで捲り上げ、孫子の下半身を露出させた香也は、孫子の腰に両手を添え、上に持ち上げる。
 孫子に、お尻を上に突き出した姿勢を取らせ、香也の唾液と孫子自身の体液とでぐじょぐじょに濡れている下着を、ひざまで降ろす。
『ああ……。
 本当に、いよいよ……』
 すっかり露出した孫子の秘部に、何か硬いものが押し当てられた感触があった。棒状のそれは、何かを探るように、先端で、孫子の濡れた部分をかき分けた。
 香也自身が、自分が潜り込む場所を探して周辺のあちこちをさまよううち、時折敏感な部分に触れ、孫子の体を震わせたりする。
 香也も、経験豊富というわけでもなく、かつての性交は、ドサグサ紛れのうちにはじまり、終わっていたから……女性の体について、詳しい、というわけではない。

 しばらく、孫子の陰毛の中をまさぐっていた香也自身は、ようやく孫子の未だ犯されたことがない場所を探し当て、その入り口に到達した。

[つづき]
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髪長姫は最後に笑う。 「第五章」登場人物一覧

第五章 「友と敵」 登場人物一覧

加納荒野
 主人公。

加納茅
 主人公。

狩野香也
 出番は減っているのに人気は衰えない不思議キャラ。

松島楓
 最近、人気が出てきた。
 一年生。香也、茅と同じクラス。

才賀孫子
 何気にキャラが立ち過ぎな娘。
 二年生。荒野、樋口明日樹と同じクラス。

玉木珠美
 二年生。放送部所属。
 お祭り騒ぎ大好き娘。

有働勇作
 二年生。放送部所属。玉木珠美の相棒格。
 地味ながら頼りになる男。着実に露出度が増えている。

徳川篤朗
 二年生。他称、マッドサイエンティスト。

徳川浅黄
 徳川篤朗の姪。茅の友人。

茨木岳(ガク)
 お子様三人組の一人。
 よく寝る子。
 気は優しくて力持ち。
 三人の中で、一番間が抜けている。

羅生門法(ノリ)
 お子様三人組の一人。
 最近、絵を描きはじめた。
 途中から眼鏡っ子になる。
 三人の中で、一番足が早く反射神経に秀でいている。

酒展天(テン)
 お子様三人組の一人。
 一見してぼーっとして反応が鈍いように見えるが、三人の中で一番冷静で思慮深い。
 徳川の工場に出入りして、いろいろ学習中。

三島百合香
 最近、出番が減ってきている。
 荒野たちのアドバイザー兼監視人。荒野たちの通う養護教諭をやっている。

羽生譲
 元気なアルバイターおねーさん。
 お金になりそうなことなら、割合、オールマイティーになんでもこなす。
 祖父の代からの地元住人で、幅広い年齢層にコネを持っていたり。

佐久間沙織
 三年生。
 茅と同じような体質の持ち主。
 茅を文芸部に誘う。

佐久間源吉
 沙織の祖父。
 荒野たちが初めて接触する「佐久間」。

樋口明日樹
 香也の美術部の先輩。
 荒野たちの存在に対して、激しい違和感を持ち始めている。

飯島舞花と栗田精一
 バカップルその一。
 舞花は二年、栗田は一年。ともに水泳部所属。

柏あんなと堺雅史
 バカップルその二。
 ともに一年。あんなは水泳部、堺はパソコン部に所属。

狩野真理
 狩野家の主婦。というより、現在の実質的な家長。

二宮浩司(荒神)
 気まぐれで享楽的な最強にして最凶。
 面白がって、荒野たちの様子を生暖かく見守っている。
 荒野たちへの基本的なスタンスは、不干渉。
 楓の師匠もしている。

大清水潔
 荒野、孫子、樋口明日樹のクラス担任。
 名前はよく出てくるけどこの章ではほとんど出番なし。

岩崎硝子
 香也、茅、楓のクラス担任。
 全校的に、男子生徒に人気がある。

シルヴィ・姉
 子供の頃。荒野の姉代わりをしていた人。
 現在は、一族の監視網を構成する一員として活躍中。
 孫子にいろいろいけないことを教えているらしい。

本田三枝
 荒野のクラスメイト。少し気が強い。

嘉島君
 荒野のクラスメイト。野球部所属。

樋口大樹
 樋口明日樹の弟。一年生。

樋口未樹
 樋口明日樹の姉。美容師見習い。

旺杜臨
 美術教師兼美術部顧問。


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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(125)

第五章 「友と敵」(125)

 茅に電話をかけて、「こっちに二十人くらいいる」と伝えようとすると、パソコンに向き合っていた斉藤遙が片手をあげて、「できれば十人分くらい、プラスしてください」と荒野に伝えた。
「……外回りにいっていた放送の人たち、この雨で取材にならないから、一旦、こっちに戻ってくるそうです……」
 斉藤遙はそう説明した後、
「……ったく、こんな身内の連絡、ブログでやるなっつーの……。
 身内の連絡用に、別に掲示板借りるかな……」
 とかなんとか、口の中でぶつぶつ呟きだしたので、荒野はそっと苦笑いしてから、
「……茅、ご飯、炊いただけ、全部おにぎりにしちゃっていいや……ひょっとすると、それでも足りないくらいの人数になりそうだ……」
 電話口には、そう告げる。
 かなり斉藤遙と荒野の間は、かなり距離があった。本来なら、荒野の耳には入らないくらいの独り言だったが……荒野の聴力は、一般人よりもよく音を拾うのだった。

 電話を切って、
「……じゃあ、第二弾の差し入れ、取ってくるから……」
 と荒野が告げると、柏あんなと堺雅史、それに何人かの生徒が、運び込むのを手伝いたい、と名乗り出てくれた。確かに、二十合炊いたご飯を全ておにぎりにするとなると、荒野と茅だけでは、作るのにも運ぶのにも手が足りない。
 かといって、名乗り出てきた生徒たち全員を連れて行くのには、マンションは狭すぎたので、荒野は、名乗り出てくれた中から五人ほどの生徒たちを適当に選び、一緒に学校を出て、マンションに向かった。

 マンションに向かう途中で、傘を差しながら茅に「五人、手伝いを連れて行く」とメールを入れる。
 マンションに着くと、玄関に出迎えた茅は全員にタオルと入れたばかりの紅茶を手渡してくれた。
 紅茶を飲みながら濡れた足元をタオルで拭って一息ついてから、全員で、茅が作ったおにぎりをラップに包み、出来た端からスーパーの白いビニール袋に放り込んでいく。柏あんなともう一人、荒野が名前を知らない一年生の女生徒が茅と一緒になっておにぎりを作りはじめ、荒野と堺雅史を含んだ四人の男子生徒は、ぱんぱんに膨らんだビニールを持てるだけ持って学校に向う。
 一旦、差し入れのおにぎりを実習室に置いてから再びマンションに戻ると、あれだけ炊いたご飯はきれいにおにぎりに化けていて、それを全員で手分けして学校に舞い戻ることになった。
 この雨の中、学校とマンションとを何往復もするのは、本来ならあまり愉快な経験ではない筈だが、何故か、荒野の気分は、そことはなしに高揚している。
「なんだか……こういうの、大変だけど、楽しいですね……」
 学校へ行く途中で堺雅史がそんなことを言い出し、
「……文化祭の時みたいだね……」
 そう答えた柏あんなを初めとして、周囲にいた生徒たちが揃って頷いていたから、荒野だけがそう感じていたのではないらしい。

 そして、全員でおにぎりの袋を抱えて実習室に戻ると、あちこちに散らばっていた放送部員が集まってきたらしく、人数が確かに増えていた。人数が増えた実習室内は、以前よりも賑やかになって、活気がでてきたように見える。斉藤遙の周りで、放送部員たちが作りかけのサイトをみながら、なにやら打ち合わせをしている。その中に、有働勇作の姿も見えた。
 パソコン部員たちも負けじと、末端にかじりついてタイピングをしていた。中には、おにぎりを咥えながら手を休めずに動かしている生徒もいる。
 フットワークのいい放送部への対抗意識や、それに、楓や茅の存在が、パソコン部にとって、いい刺激になっているのかも知れない……と、荒野は思った。
「有働君、こっちいたんだ……てっきり、商店街のほうにいっているのかと思った……」
 荒野が声をかけると、
「いやあ……あっちは、玉木さんが張り切って仕切ってますから……」
 有働はそう答えて頭を掻いた。
 有働は、商店街の様子をかいつまんで説明してくれた。
 コンテストの出場者の中には、ネームバリューのあるコスプレイヤーやプロのモデルさんなどもいて、そうした人たちの中には自分のファンを引き連れて来てくれるので、いい賑やかしになっている、という。
 電気屋さんがどっかの倉庫に眠っていた型遅れの液晶ディスプレイを三十台ほど買い叩いてきて、商店街のアーケードの支柱に固定し、そこにコンテスト出場者プロモーションビデオと、現在商店街に来ている出場者のライブ映像とを、交互に流しているらしい。同じ映像は、商店街のサイトでもリアルタイムで流されている。
 ネットでそうした映像をみた、その手のファッションの愛好家たちの間でも口コミは広がっていて……。
「……今日は朝から、駅前はあの手の恰好をした女性でいっぱいでしたよ……」
 とのことだった。
 そして、そうしたファッションを好むのは、若い女性が多く、若い女性が集まるところには、若い男性も集まる……。
「でも……そういう人たち、集まったはいいが……お金、落としてくれるの?」
 荒野はそう疑問をぶつけてみた。
「まあ……元が、ほとんど地元の人たちしか来ないような場所ですし……」
 有働は、直線的な荒野の疑問に、苦笑いしながら答えてくれる。
「……それに……出店、という形ででた飲食店のほとんどは……商店街のお店から、材料を仕入れてくれる手筈になっていますから……」
 料理を作る厨房は、商店街に古くからある飲食店……そこで出来た物を、急造の、「外見は、おしゃれなお店」で出す……というのが、期間限定の「メイド喫茶」とか「執事喫茶」の実態だそうだ。保健所とかの関係で、そのシステムが、一番効率的なのだという。
 荒野がそんな説明を聞いていると、
「……おー……こんな小さな子まで……」
 と、末端の画面をみながら歓声を上げている一団があった。
 荒野が覗き込むと、商店街のサイトのようで……しかし、そこの「ライブ映像」には……孫子の「あのファッション」の同類に身を包んだ、ガクとテンが、カメラに向かってVサインを出してにやけていた。
 その背後には、フリルやリボンの塊に身を包んだ女性たちが、見覚えある古びた商店街の中を闊歩している。
 普通の買い物客も当然いて、確かに、人出は、普段よりもよほど多かった。

 荒野が頭を抱えかけた時……。

 不意に……ガラリ、と、入り口の引き戸が開かれた。
 何事か、と、実習室内いた全員の視線が、入り口に集中する。

「……はじめまして、諸君……」
 皮のジャケットに身を包んだ……荒野たちとさほど変わらない年格好の少年が、そこに立っていた。
「……おれは、佐久間現象。
 そこの加納荒野君と、荒野君の姫に挑戦するために、わざわざここまで来たってわけだ。何日か観察してみて、荒野君がなにを重んじているのか見極めたからね。
 そこで、だ……おれは、今ここで、荒野君と荒野君の姫に挑戦してみようと思う。
 知っているかい? 荒野君。
 君に挑戦したいと思っている一族の関係者は、君が想像している以上に多いんだ。
 加納と二宮の、最も濃い血を受けつぐ者にして、最強の一番弟子……君は、姫の事がなくてもおれたちの間では有名なんだよ。おれたち若い一族の者のスターだね、ははは。
 ……うん。そう……。
 君のことを倒して名を上げたいっていうのが、いくらでも集まってくるくらいには、人気者だ。
 それに……ね……」
 佐久間現象と名乗った少年は、口の端を、片側だけを、きゅっ、と、吊り上げた。
「……加納と佐久間は、天敵同士なんだ……。
 どうする? 加納荒野君。
 君がここにいる全員を守ろうと思えば、君の正体は周知のものとなる。
 君が抵抗をしなければ、ここにいる全員が犠牲になる……」

 [第五章・完]

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彼女はくノ一! 第五話 (83)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(83)

 玄関先で孫子が硬直していた時間は、楓と香也にとってはかなり長く感じたが、せいぜい、数秒間のことたっだろう。
 孫子は、能面のような表情で後ろ手に玄関を閉め、傘立てに傘を差し込む。
 そして、やおらにコートの胸ポケットから小瓶を取り出し、蓋を開けて、口をつけて、大きく傾けた。

 楓と香也は、孫子の予期せぬ行動に、何事かと硬直したまま反応を伺っている。孫子が胸ポケットから取り出した瓶には、シルヴィ・姉崎からもたらされた「あのクスリ」が入っていたのだが、そもそも、楓も香也も、この時点では、そういうクスリは存在すること自体、知らない。

 口いっぱいにクスリを含んだ孫子は、一挙動で楓押しのけて香也に組みつき、強引に口唇を奪う。香也はもがいて孫子の抱擁をほどこうとするのだが、ごく普通の少年でしかない香也が鍛えられ上げた孫子の力に敵うわけもなく、容易にふりほどくことが出来ないまま、口移しに与えられたクスリを嚥下してしまう。楓も、当然のことながら、「なにするですかこの女は!」とか毒づきながら必死になって孫子を引きはがそうとするのだが、結局、孫子が香也から離れたのは、香也が、口移しに与えられたクスリの大半を嚥下したのを確認したからだった。
 強引に飲まされたクスリが、少し気管にも入ったため、孫子が離れると同時に、香也はけほけほと咳き込む。

「ななな、なにするですかこの女は!
 一体、香也様に何飲ませましたか!」
 楓が珍しく鋭い語調で、孫子に詰問をする。
「……知りたい?」
 この時の孫子は、何ともいえない妖艶な笑い方をした。
「……び、や、く。
 わたくしも飲みましたから……あと何時間かは、二人とも……異性なしではいられない状態になりますわ……」
 そう答えた孫子は、「うふっ。うふふふふぅ……」と鬼気迫る笑い声を上げ、香也にしなだれかかる。
「あなたこそ……人の留守中に、抜け駆けをなさった癖に……。
 あなたがそんな真似をしなければ、わたくしも、ここまで強引な手段は選択しませんでしたわ……」
「……な、な、な……」
 孫子の言葉の意味をゆっくりと理解した楓は、わなないた。
「よ……よりにもよって……。
 なんて真似しでかしますかこの女は!」
「自分で試したのは初めてですけど……」
 動揺しまくっている楓とは対照的に、孫子は、落ち着き払っている。
「そろそろ……効いてきたようですわ……。
 わたくし、こんなに体が火照って……香也様も……まあ大変!
 こんなになって……。
 そろそろ、我慢できなくなっているのでは?」
 何せ、直前まで楓といちゃついていて、いい感じにヒートアップしていた所に、そんなクスリを……しかも、かなり大量に体内に摂取したわけで……。
 心臓が飛び出そうなくらいに動悸は激しくなっているし、気のせいか、先ほどから視界がぐらぐら揺れているような気もしてきた。
 床に寝そべっていなかったら、その場に尻餅をついていただろう。
 孫子の言葉通り、香也はもう、イッパイイッパイだった。
 ゼハゼハ喘いで、必死になって気を静めようとしている。

「……さあ、ここまで来たら……欲望に素直になる以外に、元に戻る術はありませんわ……。
 わたくしのこと……滅茶苦茶にしてくださいまし……」
 そういって孫子は、自分で服のボタンを外し、胸をはだけて香也の手をそこに入れ、「うふふふっふっ」と笑いながら香也の首に抱きついて、体をすり寄らせた。
 この言葉のうち、前半部分は明白な嘘である。
 欲望を吐き出そうが吐き出すまいが、一定の時間が経過すれば、クスリの効果は自然に薄れる。ただし、効果の持続時間は、摂取したクスリの量に比例する。
 香也がさきほど嚥下した量の効果が薄れるのには……かなりの時間が必要な筈だった。その間、なにもなし、で一人で悶々とするのは……ほとんど拷問にも等しかったが、それに耐えることができさえすれば、実は無害だったりする。
 当初の予定では、香也と二人きりになる状況を作ってから、クスリを飲ませるつもりだったが……孫子は、負けず嫌いだった。
 正直、男性経験のない孫子は、そういう状況を作るのが怖くて先延ばしにしていた……という部分もあったのだが……これ以上、楓に差をつけられるよりは、これくらい強引な手段をとった方が、まだマシ……というのが、孫子の考え方である。
 そうしてドサグサ紛れに……破瓜、という、未知の体験に対する自分自身の恐怖心を麻痺させている、という側面もあったが。

「こ、こ、こ……」
 顔色を失った楓が、孫子に負けじと、香也の背中に抱きつく。
「香也様!
 こんな女より、わたしのほうを!」
 急いで自分の服を脱ぎ、香也の服を脱がせる。
 そして乱暴に、香也に抱きついている孫子を引きはがし、すっかりいきり立っている香也自身を握りしめ、先端を少ししか濡れていない自分の入り口にあて、一気に腰を沈めた。楓の方は、まだ十分に準備が整っていなかったので、腰を沈めた時、ひきつれるような痛みを感じたが、そのような些事には構っていられない。
 楓は、早く香也に放出させようとして、痛みを堪えて必死に腰を上下に振り始める。そのうち、楓自身も濡れてきて、クスリの効果に思考を支配されている香也も、本能と性衝動に従って下からガンガン乱雑に楓を突き上げる。
 根が素直な楓は、孫子の言葉を丸呑みにして、「早く性行為をしないと、香也の身に危険が迫る」と勘違いしている。

 あえてそういう勘違いを誘発したのは孫子だったわけだが、その孫子は、今まさにクスリが回りはじめた所で、まともな思考がそろそろ出来なくなりかけている。楓に引きはがされたことを悔しがるよりも、もはや欲望を貪り合う獣になりはてている楓と香也の姿を、とろん、とした眼で羨ましそうに見つめ、下になっている香也の脇に張りついて、香也の手をぐっしょりと濡れた自分の秘処に導く。
 そして、両手で香也の頬を包み込むように固定し、びちゃびちゃと音をたてて、香也の口の内外を舐め回しはじめる。

 香也は、下半身は楓に、顔をは孫子に、それぞれ蹂躙されている状態で……そのことを……理性とか知性とかで、ではなく……クスリに犯された香也の全身が、喜んでいた。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(124)

第五章 「友と敵」(124)

 傘を下駄箱前傘立てに差し込み、上履きに履き替えて、技術書の詰まった段ボールを抱え、コンピュータ実習室に向かう。
 薄暗く、誰もいない学校内はしんと静まり返っている。
 この雨だと、運動部の生徒も来ていないのではないのか……と、荒野は、ふと思った。

 実習室には、確かに、二十人程度の生徒たちがたむろしていた。
 パソコンを操作する斉藤遙を中心にしたグループと、一人で黙々とタイピングしている者、それから、、二人とか三人で一つの画面をみながらなにか話し合っている者など、実習室の生徒たちの態度は多様で、男子と女子が半々くらい、みんな学校の制服を着用している、という以外に、共通点はない。
 時期が時期だから、流石に三年生はいなくて、二年と一年が半々くらいだった。
 大半は、放送部だったりパソコン部だったりで、荒野が顔を覚えていた生徒たちだったが、ちらほらと初めてみるような顔も点在している。
 廊下の窓からそこまで観察し、荒野は、引き戸をガラリと開き、実習室の中に入っていった。

「っちーっす……」
 といって荒野が入っていくと、何人かの生徒たちが顔を上げ、軽い驚きの声をあげる。
「これ……茅からの差し入れ、第一弾。
 話しは聞いていると思うけど、コンピュータ関係の、本ね……」
 どかり、と、荒野が片手で抱えてきた段ボール箱を床に置くと、その音で、なさらに何人かの生徒が荒野に注目する。
「あ。あの……」
 荒野のほうに駆け寄ってきた堺雅史が、やたらでかい荷物と荒野の顔を見比べて、困ったような顔をする。
「これ……一人で、持ってきたんですか?
 本、ですよね、これ……」
「うん。本」
 荒野は頷いた。
「茅が、昨日のうちに読み終わった分、持っていけって。
 茅、今、ご飯炊いているから。差し入れ第二弾に、おにぎりもってくるって……」
「こ、これ……全部、読み終えて……持ってきたんですか?」
 堺雅史は、さらになんともいえない表情になる。
「今、先輩、軽々と抱えていたじゃない。
 きっと、見かけほど……」
 堺の背後から歩み寄ってきた柏あんなが、段ボールの強度を増すために巻き付けておいたビニール紐に手をかけ、
「んっ!」
 と、動かそうとする。
「……あれ? 全然……。
 ええ……やっ! やっ!」
 少し力を込めても動かない、ということを悟った柏あんなは、今度は渾身の力を込めて、顔を真っ赤に染めて、段ボールを動かそうとする。
「はぁ……駄目……」
 しかし、しばらく試してみてから、ようやくあきらめたらしく、ぺたん、と、床に尻餅をついた。
 そのまま、肩を大きく上下させて、荒い息をついている。
「……これ、全然、重い……。
 ぴくりとも、動かない……」
「当たり前だよう……」
 堺雅史が、首を振りながら、柏あんなに諭すようにいった。
「本……って、紙の束だよ?
 そんなのがこんなにいっぱい、ぎっしりと詰まってたら……かなりの重さに……」
「でも……加納先輩、さっき、軽々と担いでいた! それも、片手で!」
 柏あんながそう指摘すると、遠巻きにして一連のやりとりを観ていた生徒たちがざわめきはじめる。
 柏あんなは、一見して華奢な外観に相違して、幼少時から空手の道場に通っている、根っからの体育会系として有名だった。フィジカルな能力でいえば、そこいらの運動不足な男子生徒は、足元にも及ばない。
「い、いやぁ……これ、コツがあるんだよ……」
 やばいかな……と、思いながら、荒野は、今度は両手で段ボールの紐に手をかけ、わざと、「よっ」というかけ声をかけて、段ボールを肩に乗せる。
「……ほら、最初に勢いをつけて、こうやって肩に乗っけて……後は、重心の問題で……」
 にこやかに、荒野は、なるべくなんでもないことのように思わせるべく、説明を試みる。
「……あと……」
 床にぺたん、と座り込んだまま、柏あんなは、荒野をみあげる。
「それだけの本……一日二日で全部読める、って……」
「……それは……」
 荒野は、段ボールを肩に乗せたまま、少し考え込む振りをした。
「……あー。
 ここだけの話し、なんだがな……。
 茅、少し特殊な……体質、というか、病気、というか……ナントカ症候群、って、難しい病名があるそうだけど、一種の、器質障害なんだ、ここの……」
 そういって荒野は、空いている方の指で、自分のこめかみを、コツコツと叩く。
「……とにかく、一度見たことは、絶対に忘れない、という珍しい体質でな……。
 ここにいる人たちも見かけたことないかな? 茅が、こう、ぱらぱらーって本、めくっているところ。
 茅、あれで書いていることを、視覚的に全部覚えて……後で、暇がある時にでも、頭の中の本を、反芻して読み直したりできるそうだ……」
 下手に全部を隠すより、部分的に本当のことをいったほうが、もっともらしく聞こえるもんだ。
 何人かの生徒が頷いたり、「ああ、あれ……」と呟いたりしている。普段、茅のことを見かける機会が多い生徒たちには、思い当たる節があったのだろう。
「よっ」
 とかけ声をかけて、わざと大仰な動作で、荒野は段ボールを床に降ろす。そして、その上に腰掛けた。
「あの通り、いろいろと変な所があるヤツだし、不審に思うのはよくわかるけど……できれば、茅と、今後も仲良くしてやってくれないかな……」
 にこやかにそういって、柏あんなの顔を覗き込む。
「べ、べつに、そんな……」
 柏あんなは聞き取れない小声で何事か呟き、眼をそらした。
「あ。
 じゃあ、茅ちゃんが長期入院していたのって……」
「うん。
 何分、かなり珍しい体質だからね。
 オマケに、ペーパーテストの心配をする必要もないわけだし……偉い先生たちが、なかなか手放しくれなかったんだ……。
 おかげで、妙に感情表現が下手なヤツになっちゃったけど……」

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彼女はくノ一! 第五話 (82)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(82)

 楓は香也より少し背が低いくらいだが、今、玄関での土間に足を着けている香也は、楓よりほんの少し低い位置にいる。
 目線の位置は、楓の方がやや上、なくらいで、気づけば、楓の顔は、思いがけず間近にあった。
 今更にしてそのことを意識した香也は、かっ、と頬が熱くなるのを感じる。
 同居人、ということで、極力そうした意識は持たないように心掛けているのだが……一旦意識してしまうと、歯止めが効かなくなるおそれがある……と、自覚していた。。
 少し上から見下ろしている楓の顔は、香也の頬が熱くなっているのと同様に……朱に染まっている。
『……そんな、こんなに近くで……何か期待しているような、それでいて怖がっているような表情をされたら……』
 ヤバイ、と、香也は、思う。
 もう一押し、なにか、きっかけがあったら……香也の理性は……間違いなく、決壊する……。

 もともと、楓は、可愛らしい顔立ちをしている。くわえて、メリハリのある体型でもあり……なにかと男の欲望を刺激する要素を備えた外観をしている。
 そんな楓から、不意に引き留められ、「二人きりですね」などと意味ありげなことを言われ、そんな熱っぽい視線を送られたら……普段抑制するように心掛けている、香也の男性の部分が、鎌首をもたげてしまう。
 香也のその部分は、以前味わった楓の「中」の感触を、しっかりと記憶していた……。

「あああ、あの……本当に、ごめんなさい! お邪魔してしまって! これ、離しますね!」
 香也が黙り込んでしまったのをどう勘違いしたのか、楓は香也の服から手を離して、パタパタと手を振った。
 そういって、慌てて、二、三歩後ずさろうとしたのだろう。
 慌てて後ずさろうとして、勢いがあまり、玄関先においていた足拭きマットを滑らせてしまい、それに足元をとられる。
「……きゃっ!」
 と可愛らしい悲鳴を上げてそのまま転びそうになり……。
「……あぶっ!」
……ないっ! ……と、とっさに香也は腕を差し出し、楓の体を支えようとして……。
 失敗し……。

 二人は、玄関先の廊下で折り重なるようにして、倒れ込んだ。
「……えっ……」
「……あ……」
 楓の上に香也が覆い重なっている形で……すぐ間近に……香也の顔と楓の顔を隔てる空間は……十センチもない。
 至近距離、に、なっていた。
「……あっ……あっ……」
 楓が、目を見開いて、あえぐ。
「ご、ごめん!」
「駄目!」
 体を起こそうとした香也の体を、一瞬はやく、楓の腕が捉える。楓は腕を香也の首に回して、ついで、足も、香也の胴体にからませて……熱い体を、香也に密着させる。
 楓の体重を支えきれるほどの腕力を持たない香也は、楓にされるがままになって、床の上で抱擁しあう形となった。
「顔……見ないでくださいね……。
 今、わたし……とてもいやらしい顔、していると思います……」
 香也の目の前に、真っ赤になった楓の耳があった。頬同士が密着しているので、楓も、顔が真っ赤に熱くなっているのが、容易に想像できた。
「……い、一生懸命、ががが、我慢したんですよ、わたし……」
 耳に、楓の吐息がかかる。
 いい匂いがする。
 香也の下にある楓の体は、柔らかいけどしっかりと押し戻してくる弾力もあって……。
「で、でも……香也様……いつも優しいし……。
 こ、ここまできたら……わ、わたしは、どうなっても……」
 楓の声は上ずり、次第に小さくなり、しまいにはごにょごにょと聞き取れなくなった。
「……あっ、あぁ……」
 香也は、呻いた。
 頭に血が昇っている。
 まともな思考が、できない……。
「……か、楓ちゃん!」
 ようやく、掠れた声でそう叫び……楓の、口を塞ぐ。
 いきなり口唇を重ねられた楓は、一瞬目を見開いて驚いた顔をしたが、すぐに目を閉じて、香也のされるがままになった。
 香也の舌がねっとりと自分の口の中を這いずり回る感触を楽しみながら、楓は、香也の首に回した腕に力を込める。
『……羽生さんも……香也様のほうから……してくれるんなら、いいって……』
 楓の、かろうじて残っていた理性的な部分が、そんなことを考えている。
 そう。
 以前の、香也との行為は……多分に勢いに任せたどさくさまぎれのもので……どちらかというと、香也の主体性は無視されていた……。
 でも……今回は……。
『香也様……こんなに……カチカチになって……』
 香也の股間と密着している部分が、そこだけ別の生物のように変容した香也の分身を、感じている。

 堅い。

 香也に口の中を蹂躙されながら、楓は、その香也の分身が密着している部分を、意識にすりよせる。
 そして片手を回して、香也の股間のジッパーを下げはじめた。
『……こんなに……窮屈そう……』
 ジッパーを下げると、下着ごしに、香也の堅くなった部分が指に触れる。
 下着一枚ごしに楓の指先が触れると、香也のそこはぶるんと震えた。
 楓は、自分の上に重なっている香也の体をゆっくりと押し、自分と並んで廊下に尻餅をつくような形に持って行く。
 楓は、自由になった香也の片手を導いて、服の上から自分の胸の上におく。
 楓のここは、平均よりも、大きい。
 男性一般は、この部分の感触を楽しむものだ……と、楓は教えられていた。
 香也の手のひらが、楓の胸を揉みしだく。楓も、どんどん変な気分になってきている。
『……もっと……』
 乳首の先のほうを弄ってほしい……とか考えていることに気づいて、楓は恥ずかしくなってくる。
 照れ隠しに、ジッパーを下げた中にある堅い部分を、指先で、そっとまさぐる。
 下着の上から、指先を何往復かさせると、ようやく香也が、「うっ」と呻いて、楓の口から顔を離し、
「……その……本当に、いいの?」
 と聞いてきた。
「ここまできて……そんなこと、聞かないでください……」
 楓は少しむっとした顔をして答えてから、顔を伏せ、
「ここで、やめたら……かえって、怒ります……」
 と、小さな声で付け加えた。
 そして、顔を伏せたまま、香也のベルトのバックルを外しはじめる。
「ずっと……こうしてくれること……待っていたんですよ……」
 楓の耳は、真っ赤だった。
「……いつ……前のことは間違いだから……なかったことにしてくれ、っていわれるのか……ずっと不安で……香也様、周りに、いっぱい、素敵な女の子いますし……」
 いけないいけない、と思いながらも、楓の口調は愚痴っぽくなっている。
「……んー……。
 でも……」
 一息ついて落ち着いたのか、香也の方も、いつもの調子が戻ってきている。
「……楓ちゃんの方こそ、ぼくなんかには全然、もったいないし……」
「……そんなこというと……怒ります……全然、相手にしてくれなかったのに……」
 楓の声が、小さくなる。
「ずっと……ずっと……不安だったんですから……なんとも思われてないんじゃないかって……」
 そういって、楓は香也の上にのしっかかった。
「やっと……香也様の方から……」
 そういって、香也の服のボタンを外しはじめた。
「もっと……香也様のこと……感じさせてください……」
 香也も、時折楓の首筋などに口唇を這わせたりしながら、楓の服を脱がしはじめる。

 そんな時、突然……。

 玄関が開き……そこで、コート姿の孫子が、家に入りかけた姿勢のまま……棒立ちになった。

 孫子は、口を開きかけたまま、パクパクと開閉して、玄関前の廊下に折り重なって寝そべって、お互いの服を脱がしあう格好でフリーズしている楓と香也を、見詰めた。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(123)

第五章 「友と敵」(123)

 行き帰りの冷たい雨がいささか煩わしかったものの、以前に来たときよりは同行する人数が少なく、また、この悪天候のせいで、プールを利用している人の数も若干少なくなっていることもあり、今回は、泳ぐこと自体をゆっくりと楽しむことができた。以前はなにかと忙しない印象が強かったが、今回はこれといったイベントやトラブルがあったわけでもないのに、以前と同じ二時間があっという間に過ぎ去る。

「……そういや、飯島たちは商店街には行くのか?」
 帰り道、荒野は飯島舞花にそう尋ねる。
 全員、同じ方向に帰るので、来たと時とまったく同じ顔ぶれである。
「うーん……。
 この雨だからなあ……」
 珍しく、舞花は言葉を濁す。
「予報で、今日は雨だっていってたから、買い物は、昨日のうちにやっておいたし……まあ、気が向けば、行くよ……」
 ……ひょっとして、この前、半ば無理矢理玉木に仮装した写真を撮られたのがトラウマになっているのかも知れない……と思いつつも、荒野は思い切って確かめてみた。
「飯島……この間、美容院で撮った写真……ポストカードにして商店街で配られているって……」
『……知っているか?』と聞こうとして、舞花に掌で口を塞がれた。
 いきなり傘を放り出して荒野に組み付いた舞花を見て、他の同行者たちが眼を丸くしている。
 舞花のそうした挙動に慣れているのか、栗田精一だけが冷静に舞花の傘を拾って、背伸びして舞花にさしかけていた。
「……しぃー、しぃー、しぃー……」
 舞花は、荒野の耳元で、こそこそと小声で囁く。
「……せっかく、セイッチの耳に入れまいと苦労しているのに……それを、台無しにするんじゃない!」
 小声であれなんであれ、舞花の声には気迫が籠もっている。
 荒野が、舞花に口を塞がれたままコクコクと頷くと、舞花はようやく手を離してくれた。
「いや……まあ、あれだ。
 こういう天気だし、必要もないのに外をぶらつくよりは……うちで勉強でもしような、セイッチ!」
 無理に元気な声を出して、栗田の背中をかなり強く叩いてから、栗田が持っていた傘を強引にもぎ取る。
 その舞花の背後、舞花からは見えない位置から、
『……なにかと大変だなぁ……そちらも……』
 と、荒野は、栗田に向かって、視線で語った。
 舞花にいやというほど背中を強打されながらも、栗田は荒野の視線の意味を理解し、そっと片眼を瞑ってみせる。
『もう……慣れました。こういうときは、適当に調子を合わせておかないと、さらにややっこしいので……』
 栗田のリアクションを言語化すれば、そういう感じだろう。
 男二人は、無言のまま、互いの心中を察し合い、頷き合う。

『ごく普通のカップル、というのも……』
 荒野は、漠然とそんなことを思った。
『あれでなかなか、大変なんだな……』

 マンションの前で、昼を食べてから玉木たちの手伝いに商店街に向かうというガクとテンと別れ、エレベーターで、別フロアの舞花たちとも別れた。
 自分たちの部屋に帰り、二人っきりになった荒野は、
「今日、これからどうする?」
 と、茅に確認する。
「午後から、学校に行ってみようと思うの。
 パソコン部の人たちが集まっているというから、そちらを覗いてみたいの……」
 という答えが返ってきた。
『……学校休みなのに、それ返上で頑張っているのか……』
 と、荒野は感心した。
「じゃあ……おれもそっちに合流しようかな……。
 あ。
 この前みたいに、差し入れすることを考えておけばよかったな……。
 材料、なんも買ってないや……」
「ご飯は? いっぱい炊けば、おむすびくらいなら……」
「ああ。そういや、この間、美容室の時のも、確かにうまかったな……。
 炊飯器と鍋とで同時に炊けば、それなりの量、作れるか……」
「そっちは茅がやるから……」
 米を磨ぐ準備をしようとする荒野の肩を、茅が叩く。
「……荒野は、先に、これを持っていって……」
 茅はそういって、テーブルの上に揃えて置いてあった、プログラム関係の技術書の山を指さした。
 昨夜、茅はページを一通りめくって、書いてある内容を丸暗記したものだった。

 幾つかの方法を検討した結果、ネット書店の段ボールに詰め込んで持ち運ぶのが一番面倒がなさそうだ、という事になった。雨で段ボールが駄目になることも考えられたので、一冊一冊ビニール袋に入れてから段ボールに詰め込み、皿にビニール紐で縛って、持ちやすいように取っ手をつけた。
 紙の束、であるから、茅にはかなり重たいだろうが、荒野にとってはどうということもない。傘を差しながら学校まで運ぶ、という前提があったから、重量よりも持ちやすさや、せっかくの本を濡らさないための工夫のほうが、問題だった。
 一般人として徒歩で移動しても、ご飯が炊ける間に、一往復は余裕でできるだろう。本を置いてくるついでに、実質何人ぐらい集まっているのかも、確認しておきたかった。

 制服に着替えた荒野は、荷造りしたばかりの本の箱を軽々と持ち上げ、もう一方の手に傘を持ち、
「じゃあ、先に行ってくる」
 と茅に声をかけてから、マンションを出る。

 外は相変わらず、陰鬱な天候で、雨が止む気配はまるでなかった。
『……今日いっぱいは、止まないな……』
 傘を傾けて上空の雲の厚さを図り、荒野は、そう思う。
 秋口に日本についた荒野は、今までの所、天候には恵まれていて、あまり雨に悩まされた、という記憶がない。
 夏場には、かなり蒸す、とは聞いているし、確かに、荒野が知る外地と比較しても、水には不自由しない土地だ……とは、思う。
 消毒液の匂いを気にしなければ、水道水をそのまま飲める……という国は、意外に少ないのだった。
 荒野は、そんなとりとめのない事を思いながら、学校へと急いだ。

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彼女はくノ一! 第五話 (81)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(81)

「おっかえりー!」
 家に帰ると、ガクが元気な声で出迎えてくれ、三人にタオルを手渡してくれる。傘は差していたものの、今日は風が強く、体もかなり濡れていたから、これはありがたかった。
「今、あったかいおうどんできるから、炬燵にでも入っていて……」
 ガクはそういって、三人を居間に通し、お茶をいれてくれる。先程、香也の携帯に「何時頃帰るのか?」というメールが入ったので、「あと、十五分ほどで着く」と返信しておいたのだが……ここまで至れり尽くせりの出迎えがあるとは、思ってもみなかった。
「だって、真理さんに、留守中、家のことを頼む、って、頼まれちゃったもん……」
 人数分のどんぶりをお盆に乗せて居間に運び込みながら、ガクとノリはそういった。
 二人の話しによると、家事も一通り、真理に教えられているという。 
「……ありがとうございます……」
 有働は、思いも寄らず、昼食を御馳走された形で、大きな背を丸めて恐縮している。
「……あ、おいし……」
 一口、口をつけて、うどんの汁を味わった楓が、小さくそういった。シンプルな料理だが、ちゃんと出汁が効いている。それ以上に、暖かいものが胃のなかにしみていく感覚は、冷えきった体に心地よかった。
「……プールは、もういってきたんですか?」
 少し体が暖まって人心地がついた楓は、ガクとテンに、確認のため、そう尋ねる。朝、二人は、「茅と一緒にプールに行く」とかいっていた。今日は学校が休みだし、荒野も一緒だったのだろう。
「うん。いってきた」
「朝一から、二時間、泳いできた」
 二人は、屈託なく答えた。
 家に帰ってきて、メールで香也に連絡して昼食が必要かどうか確認し、冷蔵庫にある材料で、作れる物を作った、というところなのだろう。
「加納君……もう一人の荒野君も、一緒だったのですか?」
 有働も、楓の質問に、そう重ねた。この少年は、明らかに自分より年下であるガクやテンに対しても、丁寧な言葉遣いを崩さなかった。
「うん。一緒」
「それから、まいかおねーちゃんと、おつきのちっこいのも、一緒……」
 おつきのちっこいの、とは、栗田精一のことだろう。たしかに栗田は同年代の少年の中に入ると小柄なほうではあるが……この二人よりは、明らかに、大きい。
「そう。その栗田も、一緒一緒」
 ガクはそういって、うどんの白い麺を威勢よく音をたてて啜った。
 その様子があまりにも無心でうまそうだったので、それを見ていた人々も、同じように無心になって自分のどんぶりに取り組みはじめる。
 しばらく、居間の中に麺を啜る音だけが響いた。

「……いやあ、御馳走様でした……。
 おいしかった……」
 最後にどんぶりを傾け、汁の大半をごくごく喉を鳴らせて飲み干した有働勇作は、晴れ晴れとした顔をしてそういった。まんざら、お世辞でもないらしい。
「ぼくは、これからいったん家に帰って、着替えてから学校に行こうと思います……」
 有働は、学校のコンピュータ実習室にパソコン部と放送部の生徒が何人か詰めているで、そちらの様子をみてくるという。
「……それから、商店街の方に顔をだしてみて、なにか手伝えることがあれば……」
 有働も、なにかと多忙なのであった。
「じゃあ、わたしも学校の方に行ってみます……」
 楓も、そういって頷く。
 パソコン部の生徒たちが煮詰まっていたりしないか、心配だった。
「……んー……。
 ぼくは……これ、今スケッチしてきたの、仕上げたい……」
 香也は、そういってスケッチブックを掲げた。
「……で、さっき撮った写真、何枚かコピーしてもらいたいんだけど……」
 香也がそういいだしたので、楓と有働、それに香也は、羽生の部屋に行ってパソコンを立ち上げ、USBケーブルで有働のデジカメと接続し、何枚かの画像データをハードディスクにコピーし、プリンタも立ち上げて、ハードコピーをプリントアウトして、香也に手渡した。
 
 それから、商店街に手伝いに行く、というガクとテン、それに、有働の三人を玄関で送り出すと、家にいるのは香也と楓の二人だけになった。
「……んー……。
 じゃあ……」
 といってスケッチブックと先程プリントアウトした紙を小脇に抱えて庭に出ようとする香也の背を……。
「……え?」
 香也の背中の布地を、楓は、特に意識をしないまま、指でしっかりと掴んでいる。
 玄関で足止めをくらった形の香也も驚いたが、何げなく引き留めていた楓の方も、驚いていた。
「……んー……。
 ……なに?」
 香也が、楓の方を振り返って、首を傾げる。
 ほかに何か、済ませていない用事があったのかな……と、その顔は、本気で不思議がっていた。
「……あ、あの……」
 楓の方も困っている。
 自分が、何故香也の後ろ髪を引くような真似をするのか、分からない……訳では、実はないのだが……無意識リの願望を、自分の体が忠実に反映してしまっていることに、驚いている。
「あの、ですね……」
 楓は、俯いてしまう。
 どうしようか……と、ゴチャゴチャ考えた末、
「め、珍しいですね……二人きりになるなんて……」
 とかなんとかいって、「わはは……」と乾いた声で笑う。
 それから、香也の服を離し、
「ごめんなさい! ひきとめちゃって! 特に用事とかはないです!」
 と頭を下げる。
 楓は、「……なんとなく……今、二人きりなんだなぁ……」と思ったら、不如意に手が伸びて、服を掴んでいた……とかなんとか、口の中でごもごも不明瞭に呟く。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(122)

第五章 「友と敵」(122)

 翌朝、荒野と茅は、いつもの時間に起きてランニングに出かける。三人組も一緒だ。特にノリは、今日の朝、真理と一緒に出かけるというのに、ギリギリまで日課をかえるつもりはないようだ。
 空は、漠然とした不安を抱きはじめた荒野の心情を反映するようにどんよりと曇っていた。茅によると、「予報では、今日は降るといっていたの」とのことだ。
 例の商店街のイベントが、今週末から本格的に始動する、ということだったので、この天気はあまり歓迎されないだろう……と、荒野は、そんなことを思った。

 いつものように河川敷に降り、茅が自分のメニューをこなしはじめたのを確認してから、荒野は三人組に向き直り、尋ねた。
「……な。お前ら……」
 珍しく神妙な顔をしていた。
「その……自分が、だな……。
 そこに存在しているだけで、周りの人に迷惑をかけているのか知れないって、思ったことは……ないか?」
「……それ、ボクたちのこと?
 かのうこうや、ボクたちのこと、そんなに迷惑?」
 最初に反応したのは、ガクだった。軽く眉をひそめている。
「いいや。お前らのことではない。どちらかというと……。
 おれ自身のことだ……」
「なら、いいや……」
 ガクは、明らかに安堵の表情を浮かべた。
「んっとねぇ……じっちゃんが、よくいってた……。
 人間って……人類って、ここまで数が増えちゃったから……ただ、存在しているだけでも、地球の環境に重圧をかけているんだって……。
 人間全員が、ただ生きて呼吸しているだけで、今の環境を壊す原因になっている、迷惑な存在なんだって……」
 荒野が頷くのをみて、ガクが言いかけたことを、ノリが引きつぐ。
「戦争があるのも、人口がここまで増えたのも、環境を破壊するのも……人間が動物の一種で、動物というのは、遺伝子の根底に子孫を増やすようなプログラムが植えつけられているから……そういうのって全て、人間が、本能に突き動かされた結果だって……じっちゃん、いつも、いってた……」
「でも……」
 ノリの言葉を、さらにテンが引き継ぐ。
「じっちゃん……。
 そうやって、戦争したり、環境を破壊したりしても……本当の意味で迷惑を被るのは、人間自身なんだって、そう、いってた……。
 地球の環境は、これまでにも何度も激変している。それこそ、人間がもたらす環境破壊なんて、問題にならないほどの変化を、何度も経験している。
 今の環境や生態系を壊すことで、一番損をするのは、人間自身なんだって……」
「だからね……じっちゃん、誰かに迷惑をかけたと思ったら、すぐに改めろ。
 それは、巡りめぐって自分自身に返ってくるから、って、教えてくれた」
 ガクがいう。
「それから……迷惑をかけていると思っても、相手にとってはたいして負担になっていない場合も多い、ともいってた……」
 ノリが、ガクの結論に補足する。

「……なんというか……」
 荒野は、複雑な顔をして、首をゆっくり左右に振った。
「お前らを育てたじっちゃんって人は……妙に哲学的というか、教養のある人だったんだな……」
 口には出さないが、心の中で「……そして、かなりの変人……」とつけ加える。
 年端もいかない、それも、島から一歩も出たことがない、子供たちにそんなことを言い聞かせていたのだとすれば……これはもう、かなりの「変人」だったのだろう……。
 愛すべき変人、だったのだとは思うが……。

 ともあれ、三人の話しを聞いて、荒野の心はそことはなく軽くなった。
 マンションに帰り、茅と朝食を摂ってから、掃除や洗濯に勤しむ。
 茅は、もう少ししたらプールに行くといっていたから、それにつき合うつもりだった。ノリはすぐにでも真理と出発するといっていたが、ガクとテンも、先週に引き続いてプールに同行するという。
『午前中は、そっちで潰れるとしても……』
 午後には、商店街のほうに寄ってみるかな……と、荒野は思った。

 一通りの家事を済ませ、家を出る前に雨が降り始めた。
「……仕方がない。歩いていくか……」
 そう、独りごちる。
 この間は羽生譲に車で送ってもらったが、歩きで行くとなると、市立のプールまではそれなりに距離がある。
 荒野の場合、距離は別に苦にはならないのだが、雨の中、濡れていく、という部分は、正直あまり気に入らなかった。
 茅が、ガクとテンの携帯に、「雨が降ったから、早めに家を出る」というメールを出して、予定よりも少し早く家をでることにした。
 家を出る支度をしている所に、飯島舞花からメールが入った。
「今週もプールに行くのなら、一緒に行こう」
 という内容だった。当然、栗田精一も同行する、とのことだった。
 水泳部に所属する二人は、冬の間の部活は、陸上トレーニングのみになっていたから、泳ぐ機会は多ければ多いほどいい、という。
 荒野たちが通う学校のプールは、野外に設置された普通のプールで、温水でも全天候型でもないのだった。

「……そうか、ノリちゃんは、真理さんと一緒に出発したのか……」
「うん。朝ご飯の前に……遠いところだから、途中で食べるんだって……」
 全員で傘を差しながら、ぞろぞろと歩いていく。その途中で、飯島舞花とガクがなにやら話し込んでいる。
「ガクちゃんやテンちゃんも……もう、こっちの生活に慣れた?」
「うん。かなり」
 テンが、頷いた。
「トクツーさんはいろいろ教えてくれるし、図書館に行けばいくらでも本は貸してくれるし……いいところだよね、ここ……」
「テンは、勉強熱心だからなあ……」
 ガクは、テンの言葉につけ加える。
「テン……家にいるときも、暇さえあればコンピュータ弄っているし……」
「そういうガクちゃんは、暇な時、なにをしているんだ?」
 飯島舞花がそう尋ねると、ガクは、
「寝てる!」
 と、即答した。

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彼女はくノ一! 第五話 (80)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(80)

 真理とノリ抜きの朝食を終え、居間でお茶を飲んでいると、珍しく香也の携帯が鳴った。
 年末に真理に携帯を買ってもらったものの、知り合いが少ない香也の使用頻度はさほど多くはない。この場にいる人々と、それに、樋口明日樹や荒野との連絡用に使われるくらのものだった。
 当然、携帯のアドレス帳に記憶されているデータ量もたかが知れている。液晶画面を確認しても、アドレス帳に登録していない相手から、ということしか分からなかった。
「……もしもし?」
 とりあえず、出てみる。
『あ。狩野君ですか? 朝早くすみません。有働勇作です』
 有働勇作は、学年が下の香也に対しても丁寧な言葉遣いをする。
『……今日のスケッチなんですが……何時頃から来られますか?』
 そういえば、「今日、行く」ということは約束していたが、詳しい日時は相談していなかった。
「……んー……。
 ぼくのほうは、午前中からでもいいですけど……」
 香也は、反射的にそう答える。
 特になにか用事があるわけでもないし、早くはじめれば、描き上げるまでの時間もそれだけ短縮できる、という計算もあった。
『そうですか。それじゃあ……。
 今からそちらに迎えに行っても、いいでしょうか? 何カ所か案内したいし……。
 もう、朝ご飯は?』
 香也が、「朝食は済ませた。今すぐでも構わない」と答えると、有働は「今日はよろしくお願いします」といって通話を切る。
 通話を切ってあたりを見渡すと、香也以外の住人は、掃除や洗濯、食器の片付けなどを分担してはじめており、その場に居辛くなった香也は、飲みかけの湯飲みを抱えて自分の部屋に移動することにした。
 有働が迎えに来るまで、そこに居るつもりだった。

 それから十五分もしないうちに、有働勇作が香也を迎えに来た。
「え? もう行くんですか?」
 玄関に出迎えた楓が、そんな声をあげる。
「もっと遅い時間だと思ってました!」
 まだ、九時前、だった。
 学校が休みであることを考えると、出かけるのには早い時間である。
 楓は、香也の部屋に香也を呼びに行き、「すぐに支度しますから、ほんの少し待っててください」といって、自分の部屋にとって返す。
 上着を着てスケッチブックを抱えた香也が外に出ると、自転車のサドルに軽く腰掛けた有働勇作が挨拶もそこそこに、「お休みの所、どうもすいません」と頭を下げた。
 香也も挨拶もかえし、「早速……」と、有働がポケットから取り出したA4のプリントアウトを取り出す。
 そこにはこの付近の地図がプリントアウトされており、蛍光色のサインペンで、所々、印が付けられていた。有働の話しによると、その印のついた場所が、この付近の「不法ゴミの溜まり場」であるらしい。
「あ。狩野君……自転車は、ないんですか?」
 香也は首を振った。
 香也は自転車に乗れないわけではないのだが、極端なインドア派でもあり、この二~三年、まるでペダルを踏んでいない。庭に二台ほど、放置されたままの自転車があるにはあるが、錆だらけであり、一度オーバーホールでもしなければ、とても使い物にならないだろう。
「……そうですか……。
 まあ、今日は、この天気ですから……自転車よりも傘の方が必要だとは思いますが……」
 香也の説明を聞くと、有働は頷いて、それから空を見上げた。
「あ……振ってきた……」
 ちょうどその時、ポツリ、と、大粒の雨が有働の顔に落ち、いくらもしないうちに、本降りの雨となった。
 香也は玄関に待避し、有働は自分の自転車を狩野家の庭に置かせて貰ってから、玄関に入ってきて、ショルダーバックから折りたたみの傘を取り出した。
「どうします、狩野君?
 もう少し、降り出すのが遅かったら良かったんですけど……急ぐ要件でもありませんし、今日は、中止にしておきますか?」
 有働は、香也の顔を見て、そんなことをいいだす。
 香也は、
「……んー……」
 といって、しばらく考えてみたが、結局、
「早く片づけたいから……」
 と、そのまま決行することにした。
 香也がそう返事をした時、支度を終えた楓が、ばたばたと玄関にやってきた。

 楓が傘を持ち、香也がゴミの山をスケッチする中、有働は、
「こんな天気の中、どうもすいませんねー……」
 と、しきりにすまながった。有働の性格、というのあったが、この季節に降られると、風も冷たいし、たしかに、体の芯から寒くなる。
 雲が厚いのか、昼間なのに、ずいぶんと暗かった。
 そんな中で、香也は、シャーペンを動かす。
 あくまで感じを掴むためのものなので、最低限の、ごく簡単な線しか描いていないのだが……香也は、目の前の情景に、ある種の迫力を感じ取っており、動かす手が止まらない状態になっていた。
 薄暗い中、自分の住む場所、よく通る道のすぐ近くに……このような混沌とした場所がある、ということを、香也は今まで知らないでいた。
 車輪がとれた三輪車の残骸、かつてはタンスだったらしい木片、布の塊、スプリングが丸見えになったベッドマット、積み上げられたタイヤ、ラジカセ、扉にシールが貼ってある冷蔵庫、雨に濡れるが儘になっているぬいぐるみ……。
 かつて人に必要とされ、使用され、今は誰からも顧みられなくなった物体の数々……の存在感が、香也を圧倒する。
 降りしきる雨と、周囲の薄暗さが、その場所に遺棄された物たちの心情を代弁しているような気持ちにもなって……そういう意味では、この悪天候でさえも、香也の絵とモチベーションを上げる働きをした。

 香也は、有働がかける声にも、手にかかる横殴りの雨にも反応せず、何枚も何枚もスケッチをとり続けた。
 香也がスケッチをしている間、有働も、持参したデジカメで写真を撮っている。
 時折、手を止めた香也が、「それ、貸して」と有働からデジカメを受け取り、一枚とか二枚、写真を撮る。
 どうやら、後で本番の絵を描くときのための参考にする写真らしい。

 二時間半ほどの時間をかけて、三カ所ほどを周り、有働が、
「もう、お昼ですし、この天気ですので、今日はここまでにしておきましょう……」
 といったので、その日のスケッチは終わりとなった。
 香也自身は、まだ物足りないような気分もかなりあったが、一旦手を止めてみると、確かに手はかじかみ、体はどうしようもなく冷えている。
 有働と楓に即されて、香也は自宅に戻った。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(121)

第五章 「友と敵」(121)

 この間見た時は、その「イベント情報」のバナーの先には、孫子の写真が掲載されているのを除けば、あとはイベントの概要が事務的な素っ気ない文章で記載されているだけだった。
 しかし、今荒野が見ているページは、かなり内容が豊富になっている。
 まず、孫子の写真の上にカーソルを置くと、写真の脇に、カーソルが置かれた部分のアイテムの写真と値段、素材などが浮き出す。そこでクリックすると、通販の申し込みフォームのページに移動するのだった。
 昨日のタイアップ企業がどうとかとかいってたのは、こういうことも含まれていたらしい……と、荒野は納得した。協賛だか協力だかをしてくれる以上この程度の販促は、当然だろう……。

 その「イベント情報」のページには、やはり「new」のブリンク文字がいくつも並べられていて、その先のページには、コンテスト期間中、商店街の空き店舗を利用して出店される予定の店舗の広告とか、コンテストにエントリーしてきた人たちの写真やプロフィールのリストのページも、既に準備されていた。
 この、期間限定の出店に関して、服やアクセサリーなどの雑貨、というのはまだしも荒野にも理解できたが、「メイド喫茶」とか「執事喫茶」というあたりになると、完全に荒野の理解を越えていた。前者については、茅がその存在を知ったらいきなりメイド服装備で飛び入りしそうな予感がしたので、向こう側でパラパラ技術書をめくっている茅をそっとみて、即座に別のページに移動する。
 そんなわけで、荒野は、今度はコンテストにエントリーしてきた娘たちの写真がずらずらと並んでいるページに、アクセスしてみた。受け付けを開始してからまだいくらも経っていないのに、すでに二十名以上の応募者がいる。
 今の時点でこの人数だと、まだ二週間も残っている期間中にどれほど人数が増えるのか……。
『才賀のあの趣味って……今の日本では、割りとポピュラーだったんだな……』
 と、荒野は思った。

 本名で応募している者も少しはいたが、大概が一目で偽名とわかるマンガじみた名前でエントリーしている者が多かった。エントリーシートには本名を書き込むことが必須なのだが、個人情報保護の観点からも、それを公開するかどうかは本人の判断に任せている、という。
 エントリーをしてきた人々には、商店街や出店で使用できる、かなり多額にわたる商品割引券も支給するそうで、実際に商店街に足を運んで買い物をすれば、エントリーに必要となる出資分はすぐに取り戻せるようになっている、と、玉木からは説明されていた。
 出場料を徴収するのはあくまでエントリーしてくる人々の本気度を測るためであり、そこから利益を出すつもりはない、という話しだった。あくまで、人を集めるのが目的のイベントであり、コンテストへの出場者も、それなりに本気で取り組んで貰わないと困る……というのが、商店街側の意向でだそうである。

「イベント情報」関連のページを一通り見終わって商店街のサイトのトップページに戻った荒野は、「イベント期間限定サービス中!」というバナーをみつけ、なんとなく嫌な予感に襲われながらもそのバナーをクリックした荒野は、危うく口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
 むせて、どんどんと自分の胸板をたたく。
 何事か、と茅がこちらをみているのにもかまわず、荒野は携帯を取り出して、玉木へ電話した。
『……もしもし? カッコいいこーや君?』
 コール音二回で、玉木は電話をとった。
「おう。おれだけどな……。
 今、商店街のサイトをみているんだけど……この、期間限定お買い物特典のポストカードってのは……なんなんだよ!」
『あれぇ? 話してなかったっけ?』
 玉木の声は平然としていた。
『いくら人が集まっても、こっちにお金を落としてくれないと困るからねぇ……。
 だから、こっちもいろいろな手を考えたのさー!
 こういうイベントに集まる人たちっていうのは、限定物とかに弱いコレクター気質の人が多いから……非売品で、一回、商店街でお買い物してくれるごとに、君達のポストカードをプレゼントすることにしたんだよ……。
 全部で百種類くらいかなぁ……。
 喜べ! カッコいいこーや君のカードは、唯一の男性キャラだから、それだけでかなりのレアカードだぞ!』
「喜べるか!」
 荒野は不機嫌な声で即答した。
「人の肖像権をなんだと思っている!」
『……まぁまぁ……前にもいったように、君達にもメリットがあることなんだから……』
 荒野が不機嫌になっているのを知ると、玉木は宥める口調になった。確かに、その点に関しては、玉木と有働に何度も噛んで含めるように、繰り返し、説明されているのだが……。
「すまん……その、どうしても、こういうのに慣れることができなくて……」
 それまでは、「目立つな。周囲に溶け込め」と教えられてきた荒野である。
『……いいけど……。
 これ、カッコいいこーや君のためでもあるし……もう、大勢の人を巻き込んで動き出している訳だから、腹を括ってくれないと……協力してくれる人たちにも、悪いよ……』
 最後は玉木にそう諭される形になって、電話を切った。

 電話を切った後、荒野は、眼を閉じて、少し考え込んだ。
 玉木は玉木で……というより、商店街は商店街で、このイベントを成功させようとして必至になっているわけで……。
 今回に限り、正論を吐いているのは、玉木の側のようだ……。

「荒野……落ち込んでいる?」
 意外と近い場所で、茅の声がした。
 眼を開けると、いつの間にか、茅が荒野のすぐ傍まで来ていた。
 荒野が顔をあげると、茅はそのまま顔を倒し、荒野の肩に頭を乗せた。
「落ち込んでいる、というか……おれ……このまま、この土地に居つこうとするのが……単なる、おれたちの我が儘なんじゃないのかって……そう、思えてきた……」
 荒野は、無意識裡に漠然と考えていた事を、その場で絞り出すように、ゆっくりと茅に語る。
「玉木にしろ、有働君にしろ……。
 あと、放送部とか、パソコン部とか……商店街の人たちとか、みんな一生懸命にやっているのに……なんか、気づいたら、おれ……おれとか茅と一族とか、自分たちの都合のことしか、考えてなかったし……。
 おれ……今、頑張っている人たちに、なんかしてくれって……いう資格、あるのかな……」

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彼女はくノ一! 第五話 (79)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(79)

 ガクが指で触れている先端部は、摩擦でかなりの熱を持っていた。
「……ねえ、テン……これ、金属部分が熱くなっても、本体部分に影響ないかな?」
「一応、熱を遮断する材料は挟んでいるけど……そうだね、グラスファイバー部分は熱に弱いし、断熱の工夫は、もう少し考えて見る……」
 テンは、ガクの疑問に答えて、一人頷いた。
「あと……その他にも、思いついた改良点とかあったら、どんどんいってね。
 ここは材料もあるし、設備も整っている。
 トクツーさんも自由に使っていい、っていってくれたから、いくらでも改良版を再生産できるから……」
 もともと、六節棍は、孫子のライフルに比べれば、よっぽど単純な構造をしている。作ろうと思えば、短時間でいくらでも作れるのであった。
『……六節棍のほうが落ち着いたら……』
 テンは、そんなこと思っていた。
『いよいよ、ボクら専用の武器だ……。
 かのうこうやにも、他の六主家にも頼らないでいられるだけの力を、手に入れる……』

「……前にも話していた通り……」
 その日の夕食前に、真理は背筋を延ばして、同居人一同に話しはじめた。
「……明日から、かなり長期に渡って、この家を留守にします。人数が多くなったので、家事の分担については心配していませんが……。
 くれぐれも、譲さん。
 以前のように、管理責任を放棄することなど、しないように……」
 真理は、年末、いろいろな偶然が重なって、香也と孫子を何日も二人きりにしたことをいっている。
 羽生譲もわきまえたもので、「はっ!」と短く答えて頭を下げる。

 その時の真理の言葉どおり、真理とノリは、朝方、まだ早い時間に、外出用の改まった衣服を身につけて、ワゴン車ででかけていった。
 狩野家の人々は、総出で家の前の公道に出て、それを見送る。
「……あーあ……」
「……いっちゃった……」
 見送ったガクとテンが、そんなことをいいあう。
 物心ついて以来、三人はいつも一緒にいた。
 たかが数日とはいえ、これほど長い時間離れ離れになるのは初めてのこのとであり、まったく不安がないといえば、やはり嘘になる。
 出掛けていったノリの表情に、まったく曇りがなかったのも、気になった。
 ノリの顔は、この土地に来てから初めての経験する遠出と、それに、これからの数日間、写真やコピーでしか見られなかった順也の絵を、間近で、生でいくらでもみられる、という期待に輝いていた。
「……ノリちゃんがいっちゃって、やっぱ寂しい?」
 同じように見送りにでていた羽生譲が、二人に尋ねる。
 ガクは、「……ううん」と首を振り、テンは「少し……」と頷いた。
「……さ。朝ごはんにしよう……」
 羽生譲がそういうと、全員がぞろぞろ家の中に入っていった。

「……というわけで……」
 朝食の卓を囲みながら、羽生譲はその場にいた全員の顔を見渡して、しゃべりはじめる。
「……これから、かなり長期に渡って真理さんが不在なわけだが……だからといって、これをチャンスとむやみにこーちゃんのこと、押し倒したりしないように……。
 特に……そこの二人……」
 そういって、羽生譲は、箸で楓と孫子を指さす。
 楓は顔を伏せて、孫子はあさっての方に顔を背けた。
「……なにも即答しない、ということは、なにかたくらんでいたな……」
 羽生譲は、そっとため息をついた。
「駄目だよー……二人とも……こーちゃんは共有財産なんだから……。
 どうせ襲うのなら、籖引きかなんかで順番を決めてだな……」
「え! 本当!」
「共有財産なの!」
「羽生さん!」
 ガク、テン、香也の三人が、ほとんど同時に叫ぶ。
「めったなこと、言わないでください! この二人が本気にしたらどうするんですか!」
 普段、温厚な香也に似合わぬ剣幕だった。
 よっぽど……これ以上、自分をとりまく人間関係が複雑さを増すのを、警戒しているらしい……。
「……冗談。冗談だよ、こーちゃん……」
 羽生譲は、ぱたぱたと手を振った。
「真理さんに念を押されたから、立場上、こっちも最初に釘を差しておかなければなーって……。
 だから、こーちゃんを押し倒すのは、本当に禁止……。
 ありそうもないけど、こーちゃんのほうが求めてきたら……こっちとしても、なにもいえんけど……」
 普段の言動から察する限り、そういう場合は、真理さんも、とやかくいわないだろう……と、羽生譲は判断する。
 それを聞いて、孫子は、誰にも気づかれないように、ひっそりと笑った。
 孫子には……あのクスリが、あるのだった……。
『後は……二人きりになる機会をなんとか作って……』
 香也の場合、実はそれが難しかったりするのだが、孫子はなんとでもできるだろう、と、思っている。
「……そんで、今日は土曜日なわけだけど、皆さんのご予定は?」
 羽生譲が、その場にいた全員に向かって、そう尋ねる。
 普段はそんなことを詮索する人ではないだが、真理に念を押されたからか、いつもより責任を感じているようだった。
「ボクとノリは、午前中、茅ちゃんに付き合って、プール……」
 テンがそう答え、ガクが頷く。
「……んー……。
 ぼくのほうは、なんか放送部の人たちが描いてもらいたい絵があるからって、その下絵をとるために、近場にスケッチに……」
 香也は、片手をあげる。
「あっ……わたしも、そっちについていきます。
 一度、現場も見ておきたいし……」
「……んで、孫子ちゃんは、商店街で、マスコットガールのお仕事、と……」
 羽生譲がそう確認されると、以前からの約束である以上、孫子としても頷かない訳にはいかないのだった……。
 いつもなら、あのファッションを決めて外出できる、となると、心躍るものなのだが……今日に限って、その高揚は、ない……。
 放送部と行動を共にするから、二人っきりではないとはいえ……楓と香也が一緒にいて、自分だけが別行動をするとなると、孫子の心の底に、釈然としない想いが残るのであった……。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(120)

第五章 「友と敵」(120)

 登校中、玉木珠美と飯島舞花がいつもより多少うるさかったことを除けば、荒野にとってのその日は、極めて平穏な一日だった。
 何事もなく一日に受けるべき授業をすべて済ませ、調理実習室に向かう。
 今日は、部活がある日だった。無断欠席しても特に咎められることはないのだが……最近、料理研究部の部活がある日には、部活動がはじまって二時間もすると、飢えた野獣のような運動部員たちが集まってくるようになっていた。
 料理研の部員は荒野以外、全員女生徒であり、汗まみれになって今にも襲いかかって来そうな運動部員たちの相手を彼女らだけに押し付けるのも気が引けるので、荒野は極力部活を休まないようにしている。

 調理実習室にいくと、料理研の部員たちがひとつのテーブルの取り囲んでなにやら話し込んでいた。
「……どうしたの?」
 荒野が声をかけると、
「あ。加納君……」
 と、顔をあげ、一人の女生徒が代表して説明してくれた。
 運動部にできた料理を提供するかわりに、食材の差し入れを受け入れる……ということを、料理研は少し前から実施していたが、また材料がブッキングしたらしい……。
「……今度は、蜜柑か……」
 段ボールに三つ分か四つ分くらいの蜜柑が、テーブルに山となっていた。ビニール袋や紙袋に入ったものも多い。
「みんな、家で余ったのをそのまま持ってくるから……」
 この間は、餅だった。
 ようするに、家で食べ切れない分を、腐れたり痛んだりするよりは……と持参してくるのだろう。
 だから、季節物の食材は、ブッキングしやすい。
「で……こんなにいっぱい、どうしようかって……。
 蜜柑って、おこたで生で食べるのが普通だから、料理ってみんなそんなに思いつかなくて……」
「……そうだな……」
 荒野は、少し考えた。
「ジェラート……なんてどう?
 運動部のやつら、どうせ、汗だくになってここにくるから、冬でも冷たいもの、喜ぶと思うけど……。
 ミキサーと生クリームくらいは、あったよね……。
 牛乳と、後、氷くらいあった方がいいか……おれ、今、ちょっと走って買ってくるよ……」
 ジェラートの調理法は簡単だ。材料のピュレ作り、クリームとか牛乳と混ぜて冷やし、固まりかけたところで、何度か取り出して撹拌する。
 そのままでももちろん食べられるが、場合によっては氷と一緒にミキサーにかけてもいい。そうすると、飲みやすくなる……。
 本格的に作るとなると、時間をかけて冷やさなくてはならないが、今回はそういう余裕もなさそうだ。ピュレと買ってきた氷や牛乳と一緒にミキサーにかけて砕けば、それらしいものができるだろう。
 荒野はうろ覚えのピュレの作り方をメモにとって他の部員たちに渡し、自分は学校から一番近いコンビニまで買い物にでかけた。

 即興に近い形で作った割には、出来上がったジェラートは、運動部員たちには好評だった。
 適度な甘みがあり、冷たく、喉を潤す。激しい運動の後には最適だ……と、ジェラートを口にした運動部員たちは口を揃えた。
「加納君加納君……」
 そうして集まった運動部員たちの一人、荒野と同じクラスで野球部に所属する嘉島が、ジェラートの入った紙コップを片手に、荒野を手招きした。
 嘉島は、まず自分の携帯の液晶に写ったある映像を荒野にみせ、近寄った荒野の耳に口を寄せて、そっと囁く。
「……これ、君……なんだろうな……。
 美容院で、お客さんにこういうポストカード、配っているって……姉から聞いたんだけど……」
 聞くところによると、嘉島の姉は大学生であり、今日、たまたま立ち寄った美容院で……このポストカードを手渡されたのだという。
 嘉島姉は、一目見て、それが嘉島の話にでてくる風変わりな外見をした、嘉島のクラスメイトだと確信した。
 ケーキ屋の店頭でみられるネコミミ少年の顔、だったのだ。
「ああ。
 ……これ……確かに、おれ……」
 荒野は心持ち青ざめた顔をして、頷いた。
「でも……カットモデルやったの、昨日なのに……対応が、早いなあ……」
「今はねぇ……デジタルデータさえあれば、家庭用のプリンタでも、かなり画質のいいプリントができるんだよ……」
 荒野の反応をみて、嘉島はため息をついた。
 ひょっとすると、荒野に同情しているのかもしれない……。
「それよりも、加納君……その、姉の話によると……。
 その美容院、お客さんとか予約を入れた人に、片っ端からこのポストカードを配っているそうだから……君……いや、君たち……また、ここいらで、顔が知られることになるよ……」
 嘉島の話しによると、ポストカードは、昨夜、カットモデルをやった者、全員の分、用意されているという……。
「……姉と同年配の人たちの間では、割と噂になっているというし……。
 姉は早い時間にいったから、まだ飛び入りで大丈夫だったけど……帰る頃には、二週間だか三週間先まで、予約が埋まってしまったって話で……」
 そのポストカード欲しさに、普段、その美容院を利用していない人たちまでが、いっせいに予約をいれたらしい……。
 なんのことはない。
 荒野たちが、カットモデルをするだけで……その美容院は、強力な販促アイテムを手に入れられたようなものだった……。

『カットモデルだけで……これか……』
 帰り道、荒野は少し憂鬱な気分になった。
『……これで……あの仮装の映像まで公開されたら……いったい、どうなるんだろう……』
 少し憂鬱な気分になりながらも、荒野は商店街に足をむける。
 昨夜は、結局、さしいれのおにぎりを食べて済ましてしまったので、今晩はちゃんとした食事にありつきたかったし、また、週末でもあるので、少し余分に買って買い置きの備蓄食量を増やしてもおきたかった。
 商店街のあちこちに、あの格好をした孫子のポスターが貼られている。
 くすんだ色合いの寂れかかった商店街に貼られるには不釣り合いなポスターだ……と、荒野は思ったが、そのポスターに印刷された告知によると、明日から二週間は、コンテストにエントリーした人達のPR期間であり、その間、近郊から、ポスターの中の孫子と似たり寄ったりの格好をした少女たちが大挙してこの商店街に押し寄せてくる、という。
 玉木や羽生の話によると、そうした少女たち目当ての男性客も大挙して押し寄せ、特に週末などはかなりの人手が予測される……ということだった。

 すでに顔見知りになっている商店街の人々は、常連客である荒野には、愛想がよく、たいてい、いくらか余計に商品を包んでくれるのだが、この日は、いつも
にもましてにこやかに荒野を迎え、おまけをつけてくれるのも、普段よりずっと気前がよかった。
 荒野には、商店街の人たちの考えていることが手にとるように分かった。
 年末時の空前の盛況を再現されることを望み、また期待してもいる。
『……本当に、そんなにうまくいくんだろうか?』
 と、荒野は思った。

 マンションに帰って、着替え、米を研ぎ、夕食の下ごしらえを始めたところで、茅が帰宅した。茅は、下校時刻ぎりぎりまで楓やパソコン部の部員たちに混じって、いろいろやってきたらしい。
 茅は荒野と一緒に夕食の支度をしながら、かなり詳細な作業内容まで説明してくれたが、ソフト開発についての予備知識を持たない荒野にとっては、チンプンカンプンな内容だった。

 いつもより早めに二人で夕食を食べ終えると、茅はもはや習慣となりつつある食後の紅茶をいれてくれ、その後、昨日、今日と二日連続で届いたネット書店からの荷物を解きはじめる。
 荒野は、帰りに寄った時の商店街の人たちの態度が少し気になったので、自分のパソコンを立ち上げて商店街のサイトを開いて見た。
 サイトのトップページに『イベント情報』のバナーがあるのは一昨日みた通りだったが、そのバナーの横に「new」という蛍光色の文字が点滅しているのを見つけた時、荒野はかなりイヤな予感に襲われた。

 荒野は深呼吸して、気を落ち着かせてから、そのバナーをクリックする。

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彼女はくノ一! 第五話 (78)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(78)

 その日の昼間の時点では、たまたま美容院の前を通りかかって撮影現場を見かけた人たち以外の口に昇ることもなく、従ってモデルたちも無駄に注目を浴びることもなく、いつも通り平穏な学生生活を過ごすことができた。
 そして、学生として平和に午前中の授業を受け、給食も食べ終えた楓と茅は示し合わして、パソコン実習室に向かう。
 特に待ち合わせなどの約束があったわけではなかったが、昨日はパソコン部の部員たちに宿題を与えるだけ与えて放課後には顔を出さなかった形ではあるし、放送部のブログのほうもチェックしておきたかった。
 昨夜は遅くまで撮影に付き合った関係で、楓も茅も、帰宅後、ネットをチェックする余裕がないまま、就寝している。
 そして、学校内で一番自然にネットに接続できる場所が実習室であり、そこの接続環境をセキュリティ的により強固なものにしたのは、ほかならぬ楓自身だった。当然のことながら、楓は、学校のシステムの管理権限を握っている。

 楓と茅が実習室に入ると、すでにパソコン部の部員たちが数人、集まっていた。楓と茅が入ったのに気づくと、手招きしてパソコンの前に座っていた生徒が立ち上がり、
「ささ。どうぞこちらに……」
 と、二人に座るように勧めた。
「……昨日、ネット書店から本が届いていたけど……」
 パソコンの前に座りながら、茅がいう。
「昨日は、遅くまで用事があったから、まだ読んでいないの……。
 だから、持って来るのは、明日以降になるの」
「いえいえ。いいんです、いいんです……そんなもの、いつでも……」
 その場にいたパソコン部員たちは、そんなことをいって、その場でかぶりをふった。
「……どうぞ、ごゆっくり。
 今のままでも、十分に勉強になりますから……」
 昨日の放課後、茅が作成した部分のコードを点検したパソコン部員たちは、揉み手でもしかねない勢いで頷きあう。
 明らかに畏敬の念を込めて茅のことを見つめている部員も、何人かいた。
「……昨日、帰るのが遅かったから、少し使わせて欲しいの」
 茅がそういって学校の備品であるパソコンを指さす。もちろん、パソコン部員たちは快諾した。
「あ。
 じゃあ、ついでに、昨日、ぼくたちがやった部分も、ついでにチェックしてもらえば……」
 ある部員が、緊張して裏返りかかった声でそういうと、茅は、コクリ、と、頷いた。

 楓は、茅と他のパソコン部員たちがそんなやりとりをしている間に、さっさとブラウザを立ち上げて、昨日、斎藤遥が立ち上げたばかりのブログをチェックする。
 昨日の今日だというのに、エントリー数はすでに五十を越えていて、ずらずずらと放置ゴミの写真と番地を含んだ記事が並んでいる。要するにゴミの写真だから、決して見目よいものではないのだが、これだけ並んでいるとある種の迫力を生じる。
 それに、たかだか一日、それも、この寒空の下に取材に走り回っていた放送部員たちの士気の高さが、十分に伺えた。
「……あ。来てる来てる……」
 ブログのセッティングをした、当の斎藤遥が、いつの間にか背後にいて、楓がみている画面を覗き込んでいた。
「放送部のやつらも、フットワークはいいよね。一日でこれだけの情報を集めるなんて……。
 今、考えているのはねぇ……こうして集まった情報を、地図と連動させるとか……あと、有働さんは、もう少しデータが集まったら、地主さんにインタビューしたり、このゴミを処理するとすれば、どれくらいのお金がかかるのか、業者さんに見積もりを出してもらったりする、って、いってた……」

 斎藤遥と楓がそんなことを話している横では、茅が、パソコン部員たちの書いたコードをチェックし、間違いを指摘し、解説を交えてそれを修正したりしていた。
 斎藤遥との話しが一段落すると、楓も茅にならって、一つ一つ解説しながら、コード上のバグをとっていく。
 結局、今、ここに来ているパソコン部員たちは、技術の習得に熱心なグループなのだろう。茅や楓の説明を聞きながら、頷いたりメモを取ったりしていた。
 こうして、二班に分かれての勉強会が、昼休みを利用して突発的にはじまった形だったが、いくらもしないうちに予鈴がなって、解散しなければならなかった。
 教室に帰る間際に、茅が、
「……今日の放課後にも、顔を出すの……」
 と宣言すると、「助かります」という声が散発的に聞こえてきた。

 楓たちが教室に戻ると、ちょうど教室から出てきた有働勇作、玉木珠美、それに堺雅史と遭遇した。このうち、同じ学年で別のクラスの堺雅史は、柏あんなか香也に用事があってこのクラスに足を運ぶことは珍しくはない。が、二年の有働と玉木が、わざわざ昼休みに出向いて来るのは、珍しいことといえた。
「……なにか、用ですか?」
 楓は、少し警戒しながら、二年の二人に声をかけた。最近は協調して動くことが多くなっているとはいえ、放送部には、それなりにひどい目にあっている。
「……ああっと……」
 楓の視線の強さに負け、玉木が思わず、目をそらす。
「狩野君と、打ち合わせに来ただけです……」
 有働の方は、落ち着いた対応をしてくれた。
「例のゴミ関係で、今週末あたり、主要な溜まり場に香也君を案内しようと思いまして、その約束をもらいに……」
 早口でそう説明すると、
「……午後の授業がはじまるので、これで……」
 と頭を下げて去っていく。

「……今、有働さんとすれ違いましたけど……」
 教室に入ると、楓はさっそく香也の席まで出向いていって、確認する。
「……んー……。
 明日、スケッチする現場に、連れていってもらえるって……」
 香也がそういって有働の言葉を裏付けると、すぐに、五時限目の授業を担当する教師が入って来たので、楓はあわてて自分の席についた。

「ねー……テン。
 これ、長すぎない?」
 ノリは、テンが新しくあつらえてくれた六節棍をふってみて、率直に思うところを述べてみた。
 楓たちが午後の授業を受けている頃、三人は徳川篤朗の工場に来て、出来上がったばかりの新しい六節棍を試していた。
「今はね。
 でも、今のノリの背の伸び方、異常に早いから、すぐにピッタリのサイズになるよ……」
 テンは、そう解説する。
「こっちは……長さは変わらないけど、前よりも重くなった……」
 ガクは、一本の棒状にした六節棍を、ブンブンブン、と、振り回して見せる。
「前にも言ったとおり、両端の部分を、チタンに変えてみた。
 重くなった分、芯材を入れたりして、全体の強度も増している。
 ガクの力を完全に受け止めるほどではないけど、それでも遠心力で壊れるほどヤワでもないから、前のよりは遠慮せずに振り回せると思うよ……。
 ガクが全力をだしても壊れないようなのを作ることも考えたんだけど……それ、作ると、どうしても重くなりすぎて、取り回しに苦労することになる……」
 持ち上げたり、取り扱うための筋力には、三人は不自由していない。問題なのは、三人と、三人が扱う武器との質量比で……あまり重くし過ぎると、振り回せば、三人自身の体が泳ぐことになる。力が強くても、慣性や遠心力を打ち消せるわけではない。
 だから、動きに制限をつけないためには、振り回す武器の重量は、おのずと上限が決まって来る。
「うん。そんな感じがする」
 ガクはテンの言葉に頷きながら、振り回している棍の重みを確かめる。
「前のよりは、ずっとずっしりとくるから……なんか、頼りになる感じだ……」
 そういって、ガクは、近くに立て掛けてあった鉄筋の廃材に向け、棍の先端を一閃する。
 一拍間をおいて、ずずず、と、鉄筋の上部が滑り出し、斜めに切れ目が入っていたことが確認できた。
 ガクによって力任せに切断された廃材は、少し時間をかけて滑り落ち、重い音をたてて地面に落下する。
「……うん。前のよりは、ずっと、丈夫だ……」
 ガクは、チタン製の先端部を指で触りながら、ことなげに、そう言い放つ。
 ノリとテンも、そうしたガクの離れ業を目の当たりにしても、とりたてて驚いている様子がない。適切な道具さえ与えれば、ガクなら、その程度のことは、やすやすとやってみせるであろということを、二人とも、よく知っているのだ。

[つづき]
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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(119)

第五章 「友と敵」(119)

 その日は、いわば、学校帰りに慣れない仕事を長時間やらされた形で、茅はすでにイッパイイッパイだったし、荒野も、肉体的にはともかく、精神的には疲弊しきっていた。だから、帰宅してもろくな会話もせず、ざっとシャワーを浴び、二人してベッドに倒れ込むようにして潜り込み、そのまま眠りにつく。
 そして、いつもより深い深い眠りについて、窓からなされたノックで、荒野は目を醒ました。
 眼を醒ました途端、玄関からではなく窓からやってくる来訪者の存在に緊張しながら、荒野はベッドからそっと離れ、窓から直接自分の姿が確認できないように注意しながら、窓際まで素早く移動する。
 そして、注意深くカーテンを細めに空け、そこでテンと眼があって、一気に脱力した。
 テンは、窓枠のサッシに片手でぶら下がっていた。
「……おい、テン、お前なあ……」
 がっくりと肩を落とした荒野は、カーテンを全開にして、窓を開ける。
「用があるなら、玄関から来いって……朝っぱらからそんなところにぶら下がっているのを誰かに観られたら、絶対、不審に思われるだろう……」
「……い、いや……いつもの時間に出てこないから、どうしたのかなぁ……って……」
 なお文句を言いつのろうとする荒野から、何故か、テンは露骨に眼をそらしている。
「それよりも、その……かのうこうや……早いとこ、なにか着てくれないか?
 そのぶらぶら、見苦しい……」
 そういわれて、荒野は、初めて、自分が全裸であることに思いいたった。
 茅と一緒に寝るときは、いつもこういう恰好なので、荒野にとっては不自然な恰好ではない……の、だが……窓から入ってくる朝の空気は、肌に冷たかった。
 窓から侵入してきた冷気とテンと荒野のやりとりによって眼を醒ました茅も、初めのうちは眠そうに眼を擦っていたが、時刻を確認し、寝坊したことを自覚すると、途端にしゃんと背筋を伸ばし、軽い足を足音を残し、寝室にしている部屋から着替えに出て行った。
 荒野も、テンに「下で待っていろ」と言い捨てて、すぐに茅の後を追う。

 そんなこんなでもはや日課になっているランニングが始まる。
「朝から変な物、見せられた……セクハラ……」
「だから、あれは、お前が窓なんかノックするからだろうが……」
 併走しながら、ぶつくさいっているテンと、それに応じている荒野。
「……やっぱり、荒野、楽しそう……」
 どことなく、冷たい声でポツリという茅。
 笑いをかみ殺しているガク。
 おろおろと狼狽し、みんなの顔を見渡すが、結局はなにもいえないノリ。
 もともと奇妙な組み合わせはあったが、今朝はそれに加えて、全員挙動不審だった。
 橋を渡り、中州の河川敷に降りて、茅が自分で作ったメニューをこなしはじめると、三人は、ポケットから六節棍を取り出して、一対一とか一対二での組み手をはじめる。
 荒野は少し離れた場所でしばらく見物していたが、三人が一息ついたところを見計らって、
「その棍、もうボロボロだな……」
 と声をかけた。
「ああ。そう……」
 タオルで汗を拭いながら、ガクが答える。
「もう、ボロボロ。でも、今日、テンが新しいのくれるって……」
「うん。
 ノリ、明日からしばらく、真理さんと遠いところにいくから……その前に、間に合わせる……」
 テンも、ガクの言葉を裏付けた。
「材料は、トクツーさんがくれた。
 それ以外にもいろいろ、パワーアップ装備は考えているけど、まずは手持ちのものを新調しておかなくてはね……」
「ま……用心深いことはいいことだな……」
 荒野としては、とりあえず、当たり障りのないことをいっておく。
「しかし……そうか、ノリ。
 明日からしばらく真理さんについていくのか……。
 大丈夫か? ガクやテンと、長く離れたこと、ないんだろう?」
「かのうこうや……ひょっとして、ボクのこと、バカにしている?」
 荒野にそういわれたノリは、瞬時にむくれ顔になった。
「ボク、ひとりぼっちが寂しいとか……そんなお子様じゃない!」
「そうかそうか」
 荒野は楽しそうに頷いた。
「寂しくないのなら、一人でいろいろ見て回るのは、いい体験だ……。
 真理さんには迷惑かけるなよ……」
「かけないよ!」
 ノリは、さらにむっとした表情になる。
「しかし……ノリは、真理さんと一緒。
 テンは、なんか徳川と一緒になってごちゃごちゃやっているらしい……」
 荒野は、ガクのほうに視線をむける。
「ガク……お前、一人の時、なにやってんの?」
「本、読んでいる!」
 そういって、ガクは胸をはる。
「図書館から借りてくるのもあるし、羽生さんも、マンガ、いっぱい持っている!」
「ガク、読むの早いんだよ……」
 ノリが、ガクの言葉を補足した。
「制限いっぱい借りてきた本、一日で全部読んじゃう……」
「マンガは、ノリのほうが読むの早いじゃないか……」
 ガクは、照れたような顔をして反論した。
「字の本を読む時より、マンガを読む時のほうが時間がかかる、なんて、ガクくらいだよ……」
 テンが、そんなことをいいだすと、ガクは、少し狼狽えた。
「だ、だって……マンガ、読むの難しいじゃないか! 普通の本は、読む方向決まっているけど……マンガだと、読む順番、時々分からなくなるし……それに、台詞の部分と絵の部分、同時に読むなんて器用なこと、なかなかできないよ!」
 マンガに関しては……ガクは、かなり特殊……というか、異様に律儀な読み方をしているらしかった。
「あのなぁ……ガク……普通、マンガって、てきとーに読み飛ばしても大丈夫なようになっているんだが……」
 荒野とて、日本のマンガに親しむようになってから日が浅いのだが……三島百合香とか羽生譲とか、そっちに造詣の深い人々とつき合ううちに、それなりに読むようになってはいる。
 また、通勤や通学時に読み捨てにされる週刊マンガ雑誌の消費のされ方、などの周辺知識も、それなりに増えている。
「平均的な日本人はな……駅のキオスクで買った雑誌一冊を、五分から十分くらいで読み通して網棚に置いていくとか、降りた駅で捨てていったりするんだぞ……」
「う……嘘っ!」
 荒野がそう説明すると、ガクはかなりショックを受けた顔をした。
「嘘じゃない。
 日本のマンガって……特殊な例外を除いて、そういう読み捨てが前提のジャンクなポップカルチャーなんだそうだ……」
 荒野が、以前、三島から講釈された知識を披露すると、ガクは、眼を見開いた。
 ガクにとって……よほど、衝撃的な事実だったらしい。

[つづく]
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彼女はくノ一! 第五話 (77)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(77)

 途中、才賀孫子と飯島舞花が、かなり大きなボールに、比喩ではなく「山盛り」にしたおにぎりの差し入れに来たり、そのまま飯島舞花が玉木にとっつかまって半ば無理矢理モデルの仲間入りになったりしたのだが、それ以外にこれといった障害も起こらず、一連の撮影作業はスムーズに進行した。
 どうやら玉木珠美は、はじめっから舞花も巻き込むつもりで、「差し入れ要請」のメールを送信したらしい。
 才賀孫子については、本人によれば「……もう、十分に撮影していただきました……」とのことだった。
 その背後で貸衣装だかコスプレ受注生産業者だかの会社の人たちがうんうんと頷いていたから、楓たちの知らないところで、過去、なにかしらの攻防があったのだろう。

 その攻防は、今、飯島舞花の身の上に起こっていて、更衣室代わりにしている奥の部屋から、ともすれば半裸のままでも逃げ出そうとする飯島舞花を、たまたま周囲にいた数人がかりで奥に押し戻す、ということが何度か繰り返されて、撮影の手伝いに来ていた放送部の男子生徒たちの眼を楽しませていた。
 なにかの遊びと思ったのか、舞花の押し戻し作業に三人組が加わりはじめると、とたんに舞花の脱走成功確率が極端に減少した。
 それまでは、体の大きさと普段の部活で鍛えた体力に物をいわせて、組み付いてきた女性たちをまとわりつかせながら、ずりずると前に進むことも可能だったのが、三人組の誰か一人が舞花の腰に組み付いて押すと、途端に押し戻される。
 そうした経緯を経て、不承不承、飯島舞花も即席モデル業として協力することを承諾した。
「……玉木……うらむぞぉ……」
 時折、弱々しくそんなことをいって、玉木珠美のほうを横目で睨んだりするのだが、もちろん、その程度のことで玉木がひるむわけもなく、
「……どうせなら、柏さんところの姉妹もひっくくってくれば良かったなぁ……。
 妹さんのほうはともかく、おねーさんのほうは結構乗り気になってくれそうな気もするし……。
 あ。後、もう一人の狩野香也君も呼んできて、スケッチでも描かせて置くんだった……」
 とかなんとか、ひとしきり身勝手なことを、ぶつくさと呟いている。

「ここには……この三人の子たちとか、今の背の高い子とか……いろいろな体型のモデルさんがいて、しかも全員、ロハで使えるなんて……」
 貸衣装だかコスプレ受注生産業者だかの会社の人は、そういってうっとりとした表情を浮かべていた。
 何パターンかのゴスロリ系の衣装を撮影し終えた後、今度は、モデル全員で、アニメだかゲームだかマンガだかのキャラクターのコスプレをさせられた。
 撮影に協力している人たちはプロ意識を持って接してくれるので、特に問題はないのだが、原色バリバリだったり意味不明に露出度が高かったりするコスチュームをとっかえひっかえ着替えて撮影している様子は、店の外からも丸見えであり、学校や職場、あるいは買い物の帰り道、犬の散歩などなどでたまたま通りかかった人たちが足を止めて、窓越しに美容院の中で繰り広げられている光景を、眼をみひらいて擬死している……ということも少なくはなかった。
 もともと、さほど人通りの多くはない道だったことと……たまたま足を止めた人がいても、すぐに、見てはいけない物をなにかの弾みでみてしまった……といった表情で視線をそらし、足早に美容院の前から去っていくので、人垣ができる、ということもなかった。
『……だけど……』
 明日あたりには、学校とかこの近辺では、確実に噂にはなるだろうな……と、楓はそう思った。

 三人は喜々として次々と着替えては楽しんでいた。茅の表情は、例によって読みにくかった。その他のモデルたちは、撮影用に笑顔を作ろうと努力はしていたが、その笑顔は微妙に強ばっていた。

 そんなこんなで、日付が変わる前に、どうにか衣装会社が用意したコスチュームも底を尽き、撮影作業が終わった。
 撮影作業に従事した人々は、誰もが、疲労と高揚が入り交じった顔をしている。
 が、明日は平日であり、学生たちにも社会人たちにも、かえるべき日常があるので……お開き、ということになった。
 早急に後片付けをし、その夜は解散、ということになった。

「……うぃーっす……」
 翌朝、いつものように登校途中に合流してきた玉木珠美は、その場にいた全員の中で一番憔悴しているように見えた。
「昨日の件……ほんっとうに恨むからな……玉木……あんな恥ずかしい恰好させて……」
 普段よりも数段元気のない声で、飯島舞花はそんなことをぶつくさいう。
 飯島舞花は、玉木珠美に次いで、疲労の色が濃かった。
「昨日の? なに、まーねー?
 昨日、玉木さんと、なんかあったの?」
「なんでもない! なにもない!」
 栗田精一がそう問いかけると、舞花は、この少女には珍しく高圧的な声を出した。
「……あっらー……」
 玉木珠美が面白そうな顔をして、栗田と舞花の顔を見比べる。
「……今さら、隠しても……すぐばれるのに……。
 栗田君、栗田君……これ。
 後で、このアドレスに接続してみなさい。面白いものが観られるから……可愛い彼女の……」
 玉木は、飯島舞花に口を塞がれて、最後まで言い切ることができなかった。
「なんでもない。なんでもない……。
 ほっっとうに、なんでもない……」
 掌で口を塞がれ、もがもが何かいおうとしている玉木は無視し、舞花は栗田に言い切った。
「なんでもないからなぁ……っと。
 その紙、没収……」
 何事か、と玉木を羽交い締めにしている舞花を見上げている栗田の手元から、舞花は、玉木が栗田に手渡した、URLアドレスが記された紙切れを奪い取り、即座にびりびりに破いて、その場に捨てた。

 週明けには、自分たちのポスターが町のあちこちに貼られることになる、とは、この時点では夢にも思っていない、飯島舞花だった。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(118)

第五章 「友と敵」(118)

 実は荒野には、樋口明日樹の不安というのが、かなり容易に想像できた。

 樋口明日樹には、玉木たちへのように、荒野たちの事情を遂一説明しているわけではない。しかし、明日樹は、楓がこの土地に来た初日、楓が香也の上に落下してきているのを目撃している。当然、楓と前後して現れた荒野たちに対しても、かなり不審な目でみている所がある。
 それでも明日樹が、今まで正面から楓や荒野などの出自を問いつめようとしていないのは……多分、はっきりと聞いてしまえば、明日樹を取り巻く今までの平穏な日常の在り方が、足元から崩れ去ってしまう……そんな予感めいた思いを抱いているからではないか……。
 樋口明日樹は、もともと感受性が鋭いほうであるし、玉木たちと違って「普通であること」に対する指向性が強い。
 荒野たちになにかしら普通ではない背景なり事情なりがあることを漠然と察しつつ、根本的な部分には、あえて踏み入れようとはしない……というスタンスを、明日樹は一貫して保持している。

 標準とか平均から大きく外れることを、異常なまでに怖がる。言い方を変えると、危機感を刺激される要素からはあえて目を反らし、「見ないふりをする」。
 これは、荒野が知る限り、少し古風ではあるものの、典型的な日本人の価値観であり処世訓だった筈で……その意味ではむしろ、荒野たちの正体をあけすけに話しても、少しも引く所のない羽生譲や玉木たちのような存在の方が、同質性への指向が強い日本社会では、少数派である、ともいえた。

 その樋口明日樹が、何故、あえて標準的な対応策に反してまで、荒野に意見じみたことをいったのかといえば……香也の存在……しか、理由はない。
 ボランティア云々、は、むしろ口実であり……樋口明日樹にしてみれば、次第に荒野や楓たちと行動を共にすることが多くなっている香也を……以前の通り、自分の元にいつまでも引き留めておきたい、というのが、本音なのではないだろうか?

 しかし……明日樹本人にもいったように、それを決定するのは……あくまで、香也本人の意志、なのであり……。
 さらに、しかし。
 ……かといって、荒野などがどのようにいったとしても、今現在、明日樹が感じている筈のフラストレーションは、軽減することはないだろう……。
 ……松島楓、才賀孫子、加納荒野、加納茅……それに、ガク、テン、ノリの三人も含めて、全員が揃って香也の前から姿を消し、香也と明日樹の周辺が、以前の通りの静けさを取り戻せば……あるいは、樋口明日樹は、心の底から安堵できるのかも、知れない。
 が……ここまで来た以上、当然のことながら、荒野はそのような選択をするつもりは、ないのであった……。

『……面倒だよなあ、いろいろと……』
 授業を受けながらそんなことを考え、荒野は心中でこっそりとため息をついた。
 明日樹の反応は……たまたま周囲にいた荒野たち一族の存在を勘づきはじめた一般人の、典型的な反応、でもある……。
 これから、荒野たちの存在と行動が目立てば目立つほど……荒野たちの存在自体に、苛立ちを感じる者の数も増える筈であった……。
 玉木たちといろいろ画策しているのは、そうした反応への対応策でもあったのだが……。
『佐久間は大……衆操作や心理戦を得意とする……』
 例えばこの先……樋口明日樹や同じ学校に通う生徒たちが、「荒野たちの敵」として立ちはだかってきたとしたら……荒野は……。
『その時は……尻尾を巻いて、逃げるしかないな……』
 ここまで居心地が良い土地を離れるとなると、正直、かなり名残惜しいのだが……たまたまその場に居合わせた、というだけの一般人を、本気で相手にするわけにもいかないのであった……。

 当面の荒野の仕事は……そういう事態に陥らないよう、足場を固めること。
 そのためには、絶えず、先手を打ち続けなければならない……。
『本当……面倒、だよなあ……』
 荒野は、心の中でそう独りごちた。
 一カ所に腰を落ち着かせ、知人増えれば……今度は、その知人が、敵に回ったときの時を、考慮しなければならない……。
 本当……面倒で、やっかいだ……。

 そうやって一人で陰鬱な未来図を想像してばかりもいられないので、放課後、荒野は、気配を消してざっと学校を見回ってみた。自分たち意外の一族の痕跡がないかどうか確認するために、同じクラスの生徒や教師などの動向にも、普段から眼を光らせている。
 三島のいう「ブレイン・ハッキング」を行うことが可能な佐久間相手にそうしたセオリーがどこまで通用するのか甚だ心許ない限りだが……なにもしないよりは遙かにマシに思えたので、荒野は転入してきて以来、定期的にこうして自主的な哨戒任務を行っている。
 もちろん、楓にも普段から注意を呼びかけてはいる。楓の性格を考えれば、荒野が想像する以上に念を入れて周辺のチェックを怠らないでいるのは十分想像できたが……だからといって、自分や茅の身の安全のことまで含めて、他人任せにするほど、荒野は怠惰にはできていない。
 そうした哨戒任務は、いつも通り、「異常なし」という結果に終わったが、身の安全を守るための代償と思えば、そのために必要な時間と労力も、別に惜しくはなかった。

 いろいろと不安になって、予定外の見回りをしてしまったため、下校するのが三十分ほど遅れてしまった。この日は、美容院に行く予定になっていたが、人数の多さを考えれば、どの道、多少の順番待ちの時間が出来るはずであり……この際、レディーファーストでいってもらおう……と、荒野は思い、一旦、マンションに帰って着替えてくることにした。
 それで、荒野が指定された美容院に着いたのは、予定していた時刻よりも四十分ほど遅れていた。
 荒野が到着した時、茅と三人組はすでに髪をセットし終わっていたらしく、撮影作業に入っていた。楓だけが、椅子に座っていいように髪を弄くられている。
 荒野が店内に入っていって、
「……っちーっす……」
 樋口未樹がまっしぐらに荒野のほうにやってきて、がっしりと荒野の二の腕を掴んだ。
「さ、荒野君! こっちこっち!」
 他の、名前を知らない店員さんが、未樹とは反対側の荒野の腕を掴み、ずりずりと引きずるようにして、楓の隣の椅子に座らせる。
「はい、上着をお預かりしまーす!」
 未樹がそういってハンガーをかざす。
 荒野がいそいそと上着を脱いで手渡すと、即座に別の店員の手によって、荒野にポンチョがかぶせられた。
 その時になってようやく、荒野は、鏡の中の三人の風体に異常さに、気づいた。
「……おれ……カットモデル、と、聞いていたけど……」
 その時の荒野の表情は、見事にひきつっていた。
「うん。カットモデルも、やるよ。当然」
 そばにいた羽生譲は、平然と答える。
「……何分、ゴスロリコンテストのほうが、ほとんどノリと勢いでバタバタと決行することになっちまったからね……。
 その関係で、急いで協賛企業探していたら、ちょうどこちちらが……」
「はい。わたくしどもは、貸衣裳の外に、コスプレ関係のオーダーメイドなども手掛けておりまして……。
 コンテスト期間中、商店街の空き店舗をお貸しいただくことを条件に、皆様方にモデルさんを引き受けていただく、ということに急遽、決定いたしまして……」
「お……おれ、聞いてないんだけど……」
 などという荒野の抗議も虚しく、既に髪に鋏を入れられている荒野は、逃げることもできない状態にあった。

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