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髪長姫は最後に笑う。第四章(28)

第四章 「叔父と義姉」(28)

 荒野は放出した後、しばらく茅の上に重なっていた。
「……大丈夫、荒野……」
 茅が自分の上にのしかかっている荒野の髪を優しく指で梳きながら、そういう。
「茅がいるから……荒野は、大丈夫なの……」
 茅にそういわれ、荒野はのろのろと思考し始める。
『ひょっとしておれ……茅に、心配されてる?』
 予想外の荒神の登場によって、かなり動揺していたことは確かだが……。
『……まあ、心配と嫉妬……半々、なんだろうな……』
 未樹との一件で荒野が理解したことだが……茅は、意外に嫉妬深い。それに、荒野の表情を読むのが、巧い。
 ……いずれにせよ、荒野が無防備に不安を表面に出していたために、茅に影響を与えていたことは確かなわけで……。
 ……あー。……もう……。
「……茅は、可愛いなあ……」
 荒野はそういって、茅の髪に指をつっこんで、くしゃりくしゃり、と掻き回す。
 メイドさんがご奉仕……とかいう方法は、ともかく……茅が荒野のことを心配し、気遣ってくれたのは、確かなようだ……。
『……茅に心配けるようじゃあ、いけないな……』
 そう、荒野は思う。
「……今日は疲れたし、汗もかいたから、シャワーでも浴びて早めに寝よう……」
「……ん……。
 でも、その前に……荒野、もう一度キス。それから、抱っこ……」
「……あ。……ああ……」
『なんか、すっかり茅のペースに乗せられているような気がする……』
 そう思いながらも荒野は、茅の甘えを受けて、茅が要求することをすべて実行した。
 結果、浴室でも盛大にいちゃついてしまい、その日の就寝時間はかなり遅れた。

 翌日の朝も、荒野はスポーツウェアに身を包んだ茅に起こされた。
 まだ、夜明けまで少し間がある時刻だった。
『……茅……朝に弱い、というわけでもないのか……』
 あるいは、ここ数日運動量が増えているから、眠りが深くなっているのかも知れない。
 茅は、その日も室内での入念なストレッチと、河原の遊歩道で一キロ往復を数セット、という昨日と同じメニューをこなした。心持ち、昨日よりは余裕がありそうだった。
「よ。今日もやっているね」
 河原から帰ってくる時に、スーパーカブに跨った羽生譲から声をかけられた。
 ここ数日、羽生譲はバイトにかなり力を入れているらしく、かなり不規則な時間に家を出入りしている。女性であるにも関わらず、夜に出て朝帰ってくる日も多いようだ。
「いやぁ。やっぱ、お正月は休む人多いし、人手が足りないんだわ……」
 そんなことをいいながら、羽生譲はスーパーカブを手で押して、狩野家の庭に持っていく。
 狩野家の前で羽生譲と別れ、自分たちの部屋に戻ってから、昨日貰った餅と残っていたおせちで朝食をとっていると、三島百合香が訪ねて来た。
「みやげ。昨日渡しそびれた」
 と、銘菓なんたらとかいういかにも土産物めいた菓子の箱を荒野に押しつけた。
 ついでだからと三島を食後のお茶に誘うと、
「いや、朝飯まだなんだ」
 といいだしたので、三島にはそのままおせちと餅をあてがい、甘い物は別腹の荒野と茅は、早速三島が持ってきた菓子折を開けてお茶請けにする。
「……むぅ」
 包装を解き、箱の中からヒヨコの形を菓子を小皿の上に取り出すと、茅は途端に難しい顔をした。
「どうした、茅? 食わないのか?」
 荒野が自分の分を無造作に取り出し、そのままヒヨコの頭から口に放り込み、食べ出すと、茅はなんともいえない顔をする。
 荒野がお茶を飲んで咀嚼した菓子を嚥下すると、茅は困ったような顔をして、荒野の顔と自分の手前に置かれたヒヨコ型の菓子とを見比べ、荒野になにかいいかけては躊躇う、という動作を繰り返した。
「……うまいぞ。これ……」
 茅の反応を不可解に思いながらも、荒野は、頭の部分が歯形になくなっているヒヨコ型菓子の残りを自分の口の中に放り込み、ゆっくりとあんこの味を味わって噛みしめた後、飲み込み、熱いお茶を啜った。
「甘いし……」
 茅は何故か、泣きそう顔をしていた。
 その茅の顔を見て、箸を止めて成り行きを見守っていた三島百合香が、とうとう吹き出した。
「……荒野、お前、なんで茅が食べるの悩んでいるのか、まるで分かってないだろ?」
「え? 茅、なにか悩んでいたの?」
「これだから……」
 三島が、「菓子は食べたい」しかし「このヒヨコは、可愛い」という茅の葛藤を代弁すると、茅はこくこくと頷き、荒野は軽いカルチャーショックを受けた。
「……だって、お菓子って……食べるために作るもんだろ……」
 その菓子が可愛い形をしているから、食べるのをためらうなんて……荒野にいわせれば本末転倒もいい所の……理解不能な発想であり、思考法だった……。
 荒野が呆然としていると、三島は含み笑いをしながら、
「お前ら、ほんと、いいコンビだな……」
 とかいって、茅に、「携帯のカメラに菓子の姿を納めて、菓子を食べること」、を、提案する。
 しぶしぶ三島の言葉に従った茅は、一旦口にしてみると、そのヒヨコ型菓子が思いの外うまかったっらしく、食後だというのに、立て続けに三つほど平らげた。
 その後、
「三が日を過ぎて、今日からお店が開いているはずだから、一緒にマンドゴドラに行こう」
 と、荒野を誘った。
『まだ食うのかよ!』
 と思わないでもなかったが、荒野にしてみても久しぶりにマンドゴドラのケーキを口にしたいという欲求はあったので、素直に頷く。
 あそこのケーキは、確かに中毒性があると思う。
「商店街に行くなら、わたしも買い物したいから車で送っていくか。
 でも、その前にメシ、最後まで食わせろ。それから、茅の身体検査やるからな……」
 医師免許を持つ三島百合香は、茅の体調管理も「仕事の内」として涼治に申しつけられている。そのため、定期的に簡単な身体検査……といっても、身長と体重の測定に、血液検査と問診程度の物だが……を行って、その結果もレポートに添えて提出していた。

「身長と体重が少し増加しているが……育ち盛りだし、特に異常なことではないな……前の時よりは少し脂肪率が減って、筋肉が増えている……ま。これも誤差に収まる程度の変化だ……」
 一通りの診断を終えた後、三島百合香はそういった。
「……ということで、今回もまったく問題なし、と」
 茅は、相変わらず健康体だ……と、いうことらしい。
「それから荒野。
 お前も、また背が伸びたんじゃないのか?」
 三島百合香は、加納荒野を見上げて、そういった。

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彼女はくノ一! 第三話 (50)

第三話 激闘! 年末年始!!(50)

 そんな松島楓、ぬぼーっとした感じの狩野香也、鼻ピアスの樋口大樹の顔を順々に眺め、
「……勉強と言うことで言うと……こりゃ、わたしら二年生よりも、一年生のが、要注意じゃないかなあ……」
 と、飯島舞花が嘆息し、
「……同感……」
 樋口明日樹も舞花の視線を辿り、最後に狩野荒野の顔をまじまじと注視して、同意を示す。
「……狩野君、さ……美大とか、目指す気ないの?
 専門学校とか行って手に職、というのも悪くないけど……今の時期から計画的にコツコツと頑張れば、充分いけると思うけど……」
 香也の場合、実技に関しては人一倍時間をかけて基礎的な事柄を反復練習しているようなものだから……後は、他の学科のほうに足を引っ張られるのが、問題なのだ。美大に行くためには、その前段階として、ある程度の高いレベルの学校に進学した方が有利である……ということは、いうまでもない……。
「……なぁ、セイッチ……そろそろ、二人っきりで勉強、というのも飽きてきてないか?」
 飯島舞花はそういいながら隣に座る栗田精一の首に腕を廻す。
「まーねー! チョーク、チョーク!」
 そういいながら、舞花に半ば首を絞められかけている栗田精一は、さらに隣に座っている樋口大樹を引き寄せて、その首に腕を廻す。
「そーなりゃ、一蓮托生! 大樹、お前も付き合え! どうせ授業なんてほとんど出てないようなもんだから、ちんぷんかんぷんだろ!」
「こら! 栗田! おれを巻き込むなってーの!」
 栗田精一に引き寄せられた樋口大樹は当所そんな風に抵抗していたが、栗田が耳元で「お前なんか松島さんのついでだっつーの……」と囁くと、ようやく意図を察したのか、おとなしくなった。
「……そこまで言うんなら、しゃーねーなぁ……」
 飯島舞花と樋口明日樹は顔を見合わせて頷きあう。
「じゃ、そーいうことで……。
 新年からみんなで勉強会するから、松島さんも付き合ってね」
 樋口大樹とじゃれ続けている栗田精一から体を放し、立ち上がった飯島舞花は、そういって松島楓の肩を叩いた。
「セイッチ! 飲み物取ってくるの付き合え!」
 訳がわからないまま、いつの間にか「参加することになっていた」形の狩野香也と松島楓は、「え? え?」という顔をして、目をシロクロさせている。

「……で、この飲み物なんだけど……」
 スーパーの袋に満載して舞花たちが持ち帰った缶入り飲料を、樋口明日樹はうろんな顔をして眺めた。
「いいじゃん。せっかくのお正月なんだし。祝杯祝杯。
 今回は弱い人のために発泡酒や度数の弱いカクテル系も用意しました、みたいな……」
「……飯島、将来絶対酔っぱらいの大酒飲みなるよね……」
 樋口明日樹はそう呟いて軽くため息をついた。
 が……。
「……だいたいねー……」
 乾杯をしていくらもしないうちに最初にブレイクしたのは、当の樋口明日樹だった。
「……狩野君はもうちょっと自分の意志をはっきりというべきだと思うの。表にだすべきなの。わかる? 聞いている?」
「……この間のクリスマスの時は一緒になって酔っぱらっていたから気づかなかったけど……」
 飯島舞花はうんうんと一人頷いている。
「……樋口、絡み上戸なんだなあ……」
 ストレスを溜めやすい性格では、ある。
「……香也様香也様……」
 松島楓は泣きそうな声になって、隣に座る狩野香也にそっと耳打ちする。
「わ、わたしも、酔っぱらうと、あんなんなっちゃうんですかぁ……」
「……んー……楓ちゃんの場合は、もっと滅茶苦茶ハイになるというか……」
「……そこ! 人が話している時に仲良さそうにコソコソ内緒話しない!」
 樋口明日樹に座った目線を向けられ、指さされた香也と楓は、ぎくり、と体を強ばらせる。
「……いや、いいですよ。いいですよ。仲よくても……。でもね、狩野君、ちょっとよく考えてくださいね。ここに集まってきている人、なんだかんだいって狩野君の絵が無ければ、多分、今ここにこうして集まっていないんですよ……。
 柏さんの彼氏さんだってそうだし……狩野君の絵には、それだけ、人を動かす力があるのです! わかりますか? その意味、ちゃんとわかってますか?」
 樋口明日樹が香也の襟首を掴んでそういってがくがく揺さぶる。
 香也はなんとか「……う、うん……」と返事をすることが出来た。香也の返事を確認すると、明日樹はぱっと手を放し、いきなり支えを失った香也は、あやうく後ろに倒れ込みそうになる。
「よろしい。
 わかりゃーば、いいんですよ。わかりゃーば……」
 すでに呂律が回りきっていない口調でそう言い放ち、飲みかけの缶の中身を一気に空け、ぷはーっ、と息をついた樋口明日樹は、そのまま次の缶を手にし、プルトップを空けたと思ったら、それも、ぐびぐびと一気に飲み干した。
 さらに次の缶に手を伸ばし、プルトップを空けながら、香也の顔を見据える。
「……で、狩野君……。
 こーんな美少女ばかり侍らせて、さ……。君、これから一体どうするつもりなわけ? こんなかで君が一番好きなの、結局の所、一体誰なん?」
 樋口明日樹の言葉を受け、一瞬にしてその場の空気が凍りついた。
 狩野香也、松島楓、才賀孫子の三名の体が、傍目からわかるくらいに硬直している。香也の隣に座っていた楓は、香也の袖の布地を、ぎゅっと掴んでいた。
『……おれ、さっき、それどこのエロゲですか、っていったけど……』
 姉の言葉がもたらした硬化と効果を目の当たりにして、樋口大樹は、内心で冷や汗をかいた。
『……あれ、撤回したい……家庭内ハーレム状態……実際にあったとしたら……それは地獄だ!』
 地獄、までとは行かないかも知れないが、明日樹の言葉は紛れもない、地雷だった。言い出した明日樹自身からして、明らかに怯えた表情をして香也の返事を待っている。
「……んー……」
 しばらくの沈黙を挟んで、ようやく狩野香也がのんびりとした声を上げる。
「……それ、しばらく前から考えてたんだけど……自分でも、よくわからないんだよね……。その、好きとか一番とかって……多分、ぼくには、そういうの、まだ早いんだと思う……」

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髪長姫は最後に笑う。第四章(27)

第四章 「叔父と義姉」(27)

 茅はしばらくソファの上でぐったりとしていたが、しばらく休憩してから薄目を開けて荒野の硬直に手を伸ばす。
「……おいおい……茅、大丈夫?」
 荒野は半ば呆れながらいった。
「疲れているなら、今日は最後までやらなくても……」
 そういいながらも、荒野の男性は先端が腹につかんばかりに反り返っている。
「……やるの……」
 茅は、荒い呼吸の中からも、そういう。
「荒野……他の人に……荒神に、あげない……」
 荒野は見えない物体に頭を殴られたような気がした。
『……荒神に、って……』
 荒野自身は、荒神の過激なスキンシップを充分に嫌がっているつもりだったが……。
『……まてよ……』
 茅の、性知識は極めて表層的なもので、かつ、かなり偏重がある。
 教科書か百科事典に書かれているような無味乾燥な文献、テレビ番組で放映する程度のラブシーン、それに、羽生譲が所有しているようなマンガ……事に、最後のが致命的で……。
 荒野は、荒神に抱きつかれた荒野を見て、茅が何度か「ぼーいずらぶ」という言葉を呟いていたことを思い出した。「ぼーいずらぶ」とは、つまり、同性愛を題材にしたある種のフィクションのカテゴライズ……と、荒野は理解している。茅も、羽生譲経由でその手の作品に触れている……。
 しかし茅は……そうした同性愛者や同性愛的な傾向を持つ人たちが、社会全般でどういう扱いを受け、どう位置づけされているのか……といった知識をもっているのかどうか……。
 性愛や恋愛に、ノーマルとされるものと、アブノーマルとされるものの、マイノリティとマジョリティの区別があることなどを……茅が理解しているかどうか……かなり、あやしい。
『……やっぱり、茅……アンバランスだよな……』
 荒野は、茅が「荒野を荒神に奪われる」ことを警戒しているのを、ようやく理解する。
「……こんなことしなくても、おれ、茅のほうがずっと好きだよ……。
 茅から、離れないから……」
 荒野が茅の頭を撫でながら、やさしくそう告げると、茅はふるふると頭を振った。
「……違うの……」
 茅は、荒野の男性を握りしめながら、複雑な表情をして、いう。
「……本当に、これ……荒野の……入れて欲しいの……」
 ……最初の動機こそ荒野の推測通りかも知れなかったが、いろいろやったりやられたりしているうちに、本当に発情してしまったらしい……。
 茅もだいぶ回復してきたようだし、荒野の方も充分に刺激されて茅の中を蹂躙したいという欲望をかき立てられていたので、急いで下半身だけ裸になり、避妊具を装着して、先端を、すっかり準備の整っている茅の入り口にあてがう。
 茅も、下半身にはなにもつけず、スカートを大きく捲り上げて、ソファの上で荒野を待ちわびていた。
「……服着たまま……こんな所、こんな恰好でやるの、初めてだなあ……」
 そんなことをいいながら、入り口に先端を接触させた恰好で荒野がじらすと、
「……早く……荒野の……欲しいの……」
 茅が、期待に頬を染めながら、おねだりする。
「茅、なにが欲しいの?」
「荒野の……」
「おれの、なに?」
「…………おちんちん」
 茅が言い終わるのと同時に、荒野は根元まで一気に茅の中に埋める。
 茅が、
「うひぃ……」
 という声を上げて、荒野の肩にしがみつく。悲鳴に似ていたが、明らかに歓喜を示す声だった……。
「茅の中……狭くて、熱い……」
 根元まで入った状態で、ソファの上に茅を組み敷きながら、荒野は茅の耳元に囁く。
「どう?
 茅……おれの、ずっぽり根元まで入れたよ……」
 埋めたまま、左右にゆるゆると腰を揺らすと、茅は顔をのけぞらせて、
「……ぅんっ……んっ……んっ……」
 と鼻息を荒くする。
 茅が顔をのけぞらせたところで、荒野は自分の顔を茅の顔を密着させ、口唇を重ね、舌を茅の口の中に入れ、ゆっくりと撹拌する。
 同時に、すっかり茅の中に埋めた自分自身も、出入りさせるのではなくて、埋めたままで先端で円を描くように、腰を動かす……。
「茅の中に入っているおれの、どう思う、茅……」
 ゆっくり時間をかけて、二カ所同時に茅の中を撹拌してから、荒野は顔を少し放して、茅の耳元に囁きかける。
「茅が気に入らなければ、このまま抜いちゃうよ……」
 囁きながらも、荒野は深く埋めたままの腰部を、ゆらゆらと動かしている。
「……荒野……意地悪なの……んんっ!」
 茅が恥ずかしそうに顔を背けてそういったところで、茅の奥深くまで刺さっていたものを一気に引き抜くと、茅が不満そうな吐息をついた。
「……茅がちゃんと感想いわないと、本当にこのまま抜いちゃうから……」
「荒野、抜いちゃ駄目!」
「入れて欲しい?」
 一気に引き抜いたので、辛うじて荒野の先端が茅の入り口に引っかかっている状態である。
「入れて! 荒野の硬いの、欲しいの!」
 引き抜いた時と同様、急激な動きで一気に茅の中を貫くと、茅は「うはぁ!」と息を吐いて、荒野の体にしがみつく。
「茅、ちゃんとおれのが全部入っているの、感じてる?」
「……感じる……荒野の硬いおちんちん、全部茅の中に入っているの!」
 茅がいい終わると同時に、荒野は、今度は一気に引き抜いて、間髪入れずに、再び、茅の中に元通りに埋める。
 茅は、荒野に貫かれながら、ソファの上で全身を痙攣させていた……。
「……まだ、茅の感想聞いてない……。
 茅、こうされるの、好き? 気持ちいい?
 ちゃんと、言わないと、このまま抜いちゃうよ……動かないよ……」
 再び、深く茅を貫いた状態で、荒野は茅の中で、円を描いた。
「動いて!」
 茅は、荒野にしがみつき、目を閉じながら、絶叫した。
「荒野の硬いの、気持ちいいの! 中で動くと、すごく気持ちいいの!」
 荒野が茅のお尻と太股を両腕で固定して、わざと乱雑に動き出すと、茅は喉を振り絞るように「いいの! いいの!」と声を上げながら荒野にしがみつき、ソファと荒野に挟まれた狭い空間で、じたばたと暴れはじめた。

 その日、二人はほぼ同時に絶頂を迎えた後、しばらくはぐったりと抱き合って、動かなかった……。

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彼女はくノ一! 第三話 (49)

第三話 激闘! 年末年始!!(49)

 羽生譲のスーパーカブのエンジン音が遠ざかった後、残された少年少女たちの間に、しばし沈黙が降りる。白々とした、しかし、決して不快ではない空気の中、つけ放しになっているテレビ番組の軽薄な音声だけが居間に流れる。テレビをみている者は誰もいない。
「……そういや、樋口たち……まだ帰らないのか?」
「うん……帰っても今日は誰もいないし……なんとなく……」
 飯島舞花の問いに樋口明日樹が答える。同学年の二人は以前からの知り合いでもあった。
「両親、今、旅行中だし……未樹ねーは仕事終わった後、打ち上げで飲みに行くっていうし……」
「……まあ、今日は、いつ帰っても同じか……わたしらも、すぐそこのマンションに何故か帰りたくなくなっているしな……」
「……栗田君は、飯島の所によく泊まっているの?」
「んー……うちのとーちゃんもセイッチの所の両親も、こんな小さい時からわたしらの事知ってるかな……信用あるっつうか、他のワケのわからないのとくっつくよりはよほど安心しているというか……」
 自分の話題になって、飯島舞花の隣に座る栗田精一が、照れくさそうにこりこりと自分のこめかみあたりを掻きはじめる。
「……うちの両親、まーねーのとこに通うようになってからおれの成績上がっているんで、なにげに喜んでいたり……」
「だって、ほら……セイッチには、将来稼いで貰わないと……」
 要するに栗田の自習を一年上の飯島が監督している、ということなのだが……飯島舞花は照れもせず、当たり前のことのように、そういう。二人の関係について知っている周囲の者のほうが、かえってどういう反応をすればいいのか困った。
「勉強……春にはもう、三年になるんだよね、わたしたち……」
「……受験かぁ……まあ、大丈夫だろ。学校の勉強なんてアレだぞ。時間をかければかけるだけ成果がでる科目がほとんどだから……筋トレみたいなもんだぞ……」
 この春に三年生になる樋口明日樹と飯島舞花だったが、共に比較的いい成績をとっているのにも関わらず、前者はどことなく悲観的、後者がなんとなく楽観的なあたり、性格が出ている。
「そういや、才賀さんも同じ学年だったな……でも才賀さん、頭良さそう……」
「……全力で挑むだけですわ……」
 話しを振られた才賀孫子は、あでやかに笑った。あでやかな中にも、いかにも不敵な雰囲気を漂わせる、肉食獣じみた笑みだったが……そんな表情も、孫子が浮かべると実に絵になる。
 受験にかかわらず、「やる以上は万全を期し、確実に成果を上げる」というのが、才賀孫子の基本方針だった。
 受験の話題となると、その他の一年生にとっては、まだ、遠い。実感が湧かない……というか、楓や香也、大樹などは、あまりその辺のことを真剣に考えたことがないに違いない。のほほん、とした顔で、他人事のような表情をして、話しを聞いている。
「……そういえば、松島さん……学校のほうはどうなの? 成績とか、いいほうだった?」
 樋口明日樹に話しを振られ、松島楓は視線を泳がせた。
「……ええとぉ……」
 この場に加納荒野がいれば何らかのフォローがあったはずだが、「身元が割れるような言動を取るな」と命じられている楓自身は、極端に素直で、かつ、機転の利かない性格をしている……。
「……わたし、普通の学校って、いったことないんで……その、よく、わかんないです……」
 狩野家の関係者は、加納兄弟や楓の境遇について、あらかじめ話しを聞いている。飯島舞花は、具体的な話しを聞いているわけではないが、「背後に複雑な事情がありそうだ」ということくらいは、荒野の言動から察している。
 そういった予備知識のない樋口兄弟と、舞花ほど察しがよくない栗田精一が、突然なされた楓のカミングアウトに、目を丸くした。
「ちょっと、それ! どういうこと!」
「樋口、大声出さない」
 驚愕の声を上げた樋口明日樹のことを、飯島舞花は、悠然といなした。
「松島さん、怯えているじゃないか……。
 わたしも詳しく聞いていないけど、この家に預けられているくらいだから、松島さんにもいろいろと事情があるんだよ、きっと……。
『普通の学校』にいっていない、っていうのは……あれだ。たぶん、特殊な学校に通ってた、っていうことなんじゃないかな、フリー・スクールみたいな……」
 そういわれた樋口明日樹は、松島楓が狩野香也の上に降ってきた、初対面の時の恰好を思い出し、なんとなく納得する。
『……サーカスの人とかパフォーマンスの人を育てる所にでもいたのかしら……』
 常識人であり、詳しい説明もなされていない樋口明日樹には、松島楓が、初対面の時着ていた服装そのままの「忍者」である可能性を、最初から除外して考えている。
「……で、松島さん……。その普通でない学校では、今までどんなことを習ってきたんだ……」
「……ええっと、ですねえ……」
 樋口明日樹が何事か考え込んでいるうちに、飯島舞花は松島楓との会話を進行させている。
「まず、体術……あと、語学とか、物理とか……」
 楓本来の「仕事」に、これらの知識は必須であった。
 投擲武器や弾丸がどのような軌道を取るのか予測するのに、初歩的な物理の知識は、充分に実用的である。
「……それから、コンピュータのことも習いました……でも、そっちは基礎理論とサーバ・サイドの制御がメインで、パーソナルユースのアプリケーション・ソフトのこととかは、実は全然知らないんですが……」
 要するに、「ハッキングとかクラッキングの仕方だけは教えられている」という事なのだが、楓の言葉の意味を充分に理解した者は、その場にいる人々の中では才賀孫子一人だけだった。
 その他の面々は、「へー」とか、「本当に、特殊な学校なんだな」くらいの感慨しか持っていない。持ちようがない。
「語学と物理が大丈夫なら……」
 飯島舞花は、さらに続ける。
「学校の勉強も、そんなに大変じゃないな……」
 物理が出来る、ということは、数学についても、ある程度の予備知識があるということだった。
「……それはどうかしら……」
 それまで首を傾げていた才賀孫子が、楓の前に、自分の参考書を開いて見せた。
「楓。
 このページに書かれていること、理解できる?」
「……英文の意味はわかりますけど……。
 あの、『関係代名詞』って、なんですか?」
 実用性に重きを置いた楓の語学知識では、日常生活における会話や読み書きには不自由しなかったが……日本の教科書で使用されている、一部の特殊な語彙群は、全く意味不明に映った。
 楓には、英文は読めても、問題の日本語の文章が、まるで理解できない。

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髪長姫は最後に笑う。第四章(26)

第四章 「叔父と義姉」(26)

 茅は荒野の下半身に抱きつくようにして、荒野の男根を舌で愛撫している。口に含んでいるのではなく、アイスキャンディーでも舐めるときのように、丁寧に、表面に舌を這わせる。
 ……やはり、以前よりもうまくなっている……。
 と、荒野は思った。
 荒野の男性を生暖かく湿った舌でくすぐられる感覚は気持ちいいと言えば気持ちいいのだが、無論、それだけでは大仰に呻いたり射精するほどの刺激は得られない。
 この時点では、まだ余裕があった荒野は、
「……茅、もういいよ……」
 といいながら、フローリングの床に座り込んだ茅を立たせる。
 茅は、荒野に逆らわずなすがままにされていたが、足にあまり力が入らない様子で、立ち上がってからもすぐによろけてしまい、荒野が慌てて手を伸ばし、茅の体を支えなければならなかった。
「……へんなの……」
 荒野に体を支えられながら、茅はぼうっと霞がかかったような表情をして、呟いた。
「……頭、ぼうっとして……熱くて……」
 潤んだ目で、茅は荒野を上目遣いに見上げる。
 荒野はぐんにゃりと力が入っていない茅の体をそっとソファの上に横たえ、茅の額に自分の額をくっつける。
 ぼっ、と、茅の顔全体が赤くなり、額の密着している部分から、かなりの熱量を感じた……。
「……確かに、熱いけど……これ、たぶん、体調不良じゃないと思う……」
 なんといっていいのかわからないので、荒野はゆっくりと言葉を選びながら、茅に説明した。
「……茅、こういう状態になれてないだろ?
 要するに、これ……たぶん、茅が……あー。発情……性的に興奮している、というだけのこと……なんだと、思うけど……」
 今の茅は、以前荒野が茅を抱いた時とほぼ同じ状態にある。
 荒野がそう説明すると、茅は、ぷいっ、と顔を背けた。
 ……以前までの時は、経験不足がたたったのか、茅は、あまり自分自身の変化を、自覚する余裕がなかったらしい……。
「……茅、ひとりえっちとか、したことなかっただろ……」
 真っ赤になった耳を荒野に見せて横を向いている茅に、荒野は諭すように説明を続ける。
 最初の時、茅が荒野に語ったことが事実だとすれば……茅の性的な感受性は、ここ最近、急速に成長した、とみるべきだった……。
 だから、茅はまだエクスタシーに至る感覚に対して不慣れだし、興奮した自分、というものにも、まるで慣れていない……。
「……えっちして、興奮してくると、誰でもこうなるんだから……そんなに、恥ずかしがることは、ないよ……」
 荒野は茅の頭を撫でながら、そう諭す。
 知識と経験、見かけの上の成熟と内面の未成熟……。
 ……まったく、「茅」という存在は、とてもアンバランスにできている……。
「どうする? 怖くなったんなら、今日は止めておくか?」
「…………やるの……続けるの……」
 真っ赤になって横を向いたままの茅は、かろうじて聞き取れる程度の小声で、荒野にそう告げた。

「……ご奉仕……」
 といいながら、茅は、ソファの背もたれに腕をかけてどうにか立ち上がり、自分でスカートの中に手を突っ込んで、無造作に両足から下着を抜き取る。
 そして、スカートの裾の両側を指でつまみ上げ、股間の茂みを荒野の目に晒した。
「……ここに……荒野の……ご主人様のが……欲しいの……」
 茅の細い足の付け根にある、面積は小さいが黒々とした三角形のその部分は、わずかに水気を含んでいるように見えた。
「……いいけど……」
 荒野は茅の肩に手をかけて、片手を露わになった茅の股間に伸ばす。
 思った通り、そこはたしかに湿っていて、陰毛をかき分けて茅の内部へと続く襞に荒野の指が触れると、それだけで茅は「うっ」と息を詰めて、荒野の肩に頭をもたれかからせた。
「……ほら。無理しないでソファに座って……。
 今日は、立っていられなくなるぐらいに、指で茅を感じさせてから、入れよう……。
 茅、ここに指を入れたことは、ないだろう?」
 茅の返事を待たず、荒野は茅の体をやさしく後ろに押しやり、座らせる。
 茅のスカートを臍の辺りまで捲り上げ、茅の下半身を剥き出しにすると、しばらくざりざりと指で茅の陰毛を弄び、それから、指で左右に押し広げるようにして、指先を茅の中に入れた。
 その手元をじっと見つめていた茅は、荒野の指先が中に入った途端、なにか感じるところがあったのか、眉間に軽く皺を寄せる。
「……痛い?」
「……痛くは、ない……」
「じゃあ、気持ちいい?」
 その問いには、茅は答えなかった。
 まだ指の第一関節までしか入れてなかったので、第二関節が埋まるぐらいまで押し込み、その深さのまま、内壁の形状を確認するようにスライドさせると、すぐに茅の鼻息が荒くなり、荒野の指が入っている部分から、とろりとした液体が分泌されるようになった。
「茅、気持ちいい? ちゃんと答えないと、やめちゃうよ」
 そういいながら、荒野は指の動きを少し速くする。
 じゅじゅじゅ、という水音がして、そこから透明な液体が、さらに夥しく出てきて、荒野の指を濡らす。
「……荒野……いじわるなの……」
 茅は、知らず知らずのうちに腕に力を込めていて、今では、荒野の肩にしがみつくような形になっている。
「ご主人様に、ご奉仕するんだろ?」
 荒野は、茅の変化には気づかない振りをしながら、今度は、指を根元まで入れたり、出したりし始めた。
 茅は俯いて、口を硬く結んでいる。声を出すことを恥ずかしがっているようだが、俯いた頭がなにかを堪えるようにぷるぷると震えていた。
「……ご主人様は、茅の声が聞きたいなぁ……」
 相変わらずそしらぬ顔のまま、荒野は、さらに激しく指を動かしはじめた。
 指を動かすたびにちゅっぱちゅっぱちゅっぱと水音が大きくなり、茅は目を閉じたまま、ソファの上で背を丸めてぶるぶる震えていたかと思うと、突然、
「……んはぁ!」
 と、大きく息を吐いて、そのままぐったりを全身の力を抜いてソファの上に寝そべり、動かなくなった。

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彼女はくノ一! 第三話 (48)

第三話 激闘! 年末年始!!(48)

 カウントダウンが終わり、「明けましておめでとう」大会が一段落つくと同時に、羽生譲がどてらの中からお年玉の袋を取り出し、以前行った同人誌制作の分け前を参加者全員に配り、その時参加しなかった者たちから顰蹙を買ったりするうちに、いつしか話題が香也のことになり、
「……そういや、狩野も不登校だったんだよな。一学期まで……」
「……んー……一応……」
 香也は、樋口大樹からそういわれた。
 香也にしてみれば、ゴールデンウィークに写生を目的とした無銭旅行の日程が大幅に後ろにずれたのを機に、なんとなく。学校に行ったり行かなくなったりしただけなのだが……香也たちの年齢で、学校に通うことをそのように軽々しく考えられる、という香也の感覚自体、世間的にみれば「かなり、ずれている」のだろう。
 その香也の「不登校」は、もともと「なんとなく、行かなくなった」程度のことで、香也が主体的に登校を拒否したわけではなかったので、大樹の姉、明日樹が香也の家に訪ねてきたことを機に、終わりを告げた。
「前、職員室に呼び出されて説教された時さ、一年にもうひとり不登校のやつがいて……そん時に、カノウコウヤの名前、初めて聞いたんだよな……確か……。
 どっかで聞いたような名前だなあ、と思ってたけど、それでなんとなく覚えてたんだ……」
 樋口大樹は、そういう。
 言い換えれば、今まで同じクラスなったことがない樋口大樹と狩野香也の接点は、本来ならせいぜいその程度で終わった筈……だった。
「……ねーちゃんの友達ってだけなら、この家にくることもなかっただろうけど……」
 大樹がこの家に来るようになったのは、加納荒野が頻繁にこの家を訪れる、と聞いたからだ。
「……あっちのカノウコウヤ君も、話してると普通だけど……結構独特な子だよね……」
 大樹の姉、樋口明日樹は、この場にはいない加納荒野について話し始める。
 明らかに平均的な日本人とは異なる、目立つ風貌……流暢に日本語をしゃべらなければ、あの外見だけで、初対面の日本人はドン引きになるだろう……。
 それと、あの、妹に対する気の遣いようは、やはり異常だと思う……。
 弟と自分の関係を振り返ってみても……荒野が茅を大切にしていることは確かなようだが……それは、家族とか身近な者に対する愛情というのとは、微妙に違うような気がする……。
 壊れやすい貴重品を扱っているような神経質な部分を、樋口明日樹は、荒野の茅に対する態度から嗅ぎ取っている……。
 そんな内容を明日樹がしゃべると、加納兄弟の事情を知っている人々は露骨に視線をそらし、詳しい事情は聞いていないが、なんとなく「なんかあるな」くらいには察している飯島舞花は、
「茅ちゃん、最近まで長期入院してたっていうし……その、長いこと、離れて生活していたせいじゃないか?」
 とか、さりげなくフォローを入れる。
「……それで……。
 あの二人、ジョギングしはじめたみたいですわ……。
 今朝、スポーツウェアの二人が汗まみれでマンションに帰ってきたのを見ました……」
 そのフォローにのっかって、才賀孫子が、今朝、実際に目撃した情報を披露する。
「……そういや加納君、なにかというと『茅のリハビリが』とかいう……時々……」
 香也も、そう付け加える。
 もっとも香也のほうは、話題が自分のことから離れてくれたほうが気が楽でありがたい、という気持ちが強かったからだが……。
「そういや、あの兄弟の両親の話しって、聞いたことないけど……」
 なにげに謎が多い加納荒野について、大樹がさらに聞き込みを続ける。
「保護者はお爺さんで、でもその人はやたら忙しくてあちこち飛び回っているから、今は二人だけで住んでいるって話しだな……。
 こっちでの保護者代わりは、三島先生だっていってた……」
 それに、羽生譲が応じた。
「……そういうのって、アリなんすか……」
 あの年頃の子供だけで世帯を持つ、ということは、通常ありえない……。
「荒野君、うちのこーちゃんと違って、しっかりしているし……」
 羽生譲は、声を潜めた。
「あと、保護者のお爺さんが結構大物らしくてな。あのマンションもお爺さんの持ち物だ……」
「え? うそ!」
 その賃貸マンションに父と二人で住んでいる飯島舞花が反応する。
「……あのマンションのオーナー、あちこちに同じようなマンションとかビルとか持っている、って聞いてたけど……じゃあ、あの兄弟のこと、大金持ち?」
 それから、すぐそばにいる才賀孫子に気づき、
「……あ。もっと大金持ちがここにいた……。
 才賀さんとこに比べれば、この程度、どうってこともないのか……」
「……まーねー……それ、どういうこと……」
「あれ? セイッチ知らなかったっけ? こちらの孫子ちゃん、あの才賀グループの会長の姪御さんだから……粗相のないように……」
「マジっすか?!」
「マジっすか?!」
 栗田精一と樋口大樹の声が、重なる。
「……ど、どうりでなにかと気品あふれる御方だと……」
「大樹、声が震えているし、日本語ヘンになっている。
 それに、心配しなくても、才賀さん、あんたのことなんて眼中に入ってないから、気軽に構えていて、いい……」
 樋口姉が樋口弟を、そうたしなめる。飯島舞花は、何事か隣りに座る栗田精一の耳元に囁くと、栗田の顔色が目に見えて悪くなった。
「……まあ、ソンシちゃんも下々の日常生活を勉強するために伯父様にここに放り込まれたわけだから、普通の友達してればいいと思うよ……」
 そういう羽生譲自身が、孫子に対しては、普段から一番遠慮がなかった。
 ……普段から、平気で「買い忘れた醤油一本」とか、買いにいかせてるし……。
「マジっすか?!」
「マジっすか?!」
 再び、栗田精一と樋口大樹の声が、重なる。
 彼らの感覚でいえば、
『……才賀のご令嬢を使いっぱにするんて……』
 というところだが、羽生譲は、
「くノ一ちゃんがいる時はそっちに振るんだが……いないときは、ソンシちゃんだな……」
 と、涼しい顔をしている。
「……そういや、羽生さん、時々楓ちゃんのこと『くノ一ちゃん』って呼ぶけど、それ、なんで?」
 飯島舞花が指摘すると、羽生譲の視線が泳ぐ。
「……あー。それはだなぁ……。
 あれだ! 楓ちゃん、ザ・ニンジャみたいに身が軽いから!
 ほれ、『くノ一ちゃん』、今ここで、なんか芸やってみ!」
「……えっとぉ……ピンクレディですか?」
 芸というと、咄嗟にそれが思い浮かぶようになっている松島楓だった。
「そっちじゃない。脱ぐほうでもない。
 こう、ぽーんぽーんと……トナカイやってた時みたいに、身軽さをアピールするの、なんかやってみ……」
「……あ。はい」
 立ち上がった楓は、天井の低い居間で足音もたてずにその場で二度三度ととんぼを切ると、見守っていた人々の間から「おおっ!」と、感嘆の声が漏れた。
「な! くノ一ちゃんだろ?」
 羽生譲はにかっり笑って、そういうと、
「お。そろそろお仕事の時間だ……」
 と腰を上げ、外出の支度をし始める。
 東京から帰ってきたばかりだというに、これから朝までファミレスのバイトを入れているらしい……。

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髪長姫は最後に笑う。第四章(25)

第四章 「叔父と義姉」(25)

 狩野家の庭での着物姿の撮影を終え、マンションに帰ってから、荒野は、ソファに腰掛けて、深刻な表情をして考え込みはじめた。

 二宮浩司と名乗っている二宮荒神は、表面上、特に問題なく狩野家の人々の中に入り、に馴染んでいるように見えた。荒神は必要とあればいくらでも暴力的になれる人格だが、改めて考えてみれば、荒野が生まれる以前から一族の仕事を第一線で続けている人物でもあるわけであり、この程度の偽装や潜伏など、できて当然なのかも知れない……。
 そう、荒野は認識を改める。
 思い返してみれば荒野は、「仕事中」の荒神の姿を知らないのだった。
 加えて、あっさりと楓や孫子の同居に同意したことからも、狩野家の人々の順応性、ないしは、おおらかさは、実証されているようなもので……。
 それでも、幼少期一時期ともに寝起きしていた香也は、荒神の非常識な部分を色々と見過ぎているので、なかなか気が休まらないのだった……。

「……荒野、心配?」
「……実は、かなり……」
 着物から普段着に着替えた茅が、リビングに戻ってきた。
「……大丈夫だと思うの……。
 荒神、荒野にらぶらぶ……荒野が困ること、しないと思うの……」
「……茅……その、『らぶらぶ』という言葉を、誤用しているよ……」
 キョトンとした顔をして、茅は首を傾げる。
 そして、ソファに腰掛けている荒野の膝の上に乗り、下から、荒野の首に抱きついた。
「こういうのが……らぶらぶ……」
 茅の顔が、荒野の顔にくっつかんばかりに接近している。
「……そう。
 こういうのが、らぶらぶ……」
「じゃあやっぱり、荒神、荒野にらぶらぶ……」
「いや、あのね……」
 しばらく思案し、言葉で説明するのが面倒臭くなった荒野は、すぐ目の前にある茅の顔に覆い被さり、口唇を重ねた。
 茅は抵抗せず、荒野の首に回した腕に力を込め、自分から口を開けて荒野の舌を誘う。しばらく、荒野と茅はぴちゃぴちゃと音をたててお互いの舌を絡ませ、口の中を貪った。
「……な。
 ……こういうのが、本当のらぶらぶ……」
「……荒野と茅、らぶらぶ……」
「そう。らぶらぶ……」
 そんなやりとりをしながら、荒野は、「……なんて頭の悪い会話だ……」と、軽い自己嫌悪に陥った。
「……荒野……もっと……」
 そんな荒野の思惑も知らず、茅は荒野の膝の上に乗り、頬を紅潮させて荒野に続きをおねだりをする。
 何日かぶりでキスをしたことで、火がついたようだ。
 そのまま、荒野の上体をソファの背もたれに押しつけるようにして、口を重ねてくる。
『……そういえば、何日かやってなかったな……』
 そう思った荒野は、あえて茅のするままにさせていた。
 しばらくぴちゃぴちゃと自分の舌で荒野の舌をなぶっていた茅は、荒野が積極的に動く気がないとわかると、
「むぅ……」
 と、拗ねたような顔をして荒野の上から退き、衣装部屋に入っていった。
『……あきらめたかな……』
 そう思って顔についた唾液を拭いながら荒野がソファの上に座り直していると、一分もしないうちに着替えた茅が帰ってくる。
「……それはなんだ、茅?」
「メイドさんが、ご主人様に、ご奉仕するの」
『……どうしてそういうダメ知識ばかり蓄積していくのか……』
 とか思いながらも、荒野は、呪縛でももされたかのようの動けない……。
 そんな荒野の足下に跪いて、茅は、荒野のジーパンのジッパーを開けて、硬くなりっかかった荒野の分身を取り出す。
「……ご奉仕なの……」
 といって、茅は荒野を口にくわえて、舐めはじめる。
 この前やってもらった時より、たしかにうまくなっているような気がした……。

「……んふっ……荒野の……もうすっかり元気……」
 しばらくして、荒野の股間から顔を上げた茅は、いそいそと避妊具の包装を取り出し、封を切る。
「……なんだ、茅……やりたかったのか?」
「……メイドさんがご主人様にご奉仕なの……」
 そういいながらも、茅は荒野の直立したものにゴムをかぶせようと悪戦苦闘している。今までは荒野自身で着けていたので、茅が着けるのはこれが初めてだった。だから、勝手がわからないのだろう……
「ふうん……ご奉仕ねぇ……」
 荒野には特定のコスチュームに拘ったりするフェティッシュな趣味はあまりない(と、本人は思っている)が、素直に自分の欲望を認めようとしない茅の態度をみていると、少し、いじわるがしたくなった。
「じゃあ、もし、ご主人様が今はやりたくない、っていったら……茅、ここでやめられるの?」
 茅の動きがピタリと止まる。
「……荒野、茅とやりたくないの?」
 茅はぎこちない動きで顔を上げ、泣きそうな顔をして、呟いた。
「……やっぱり、荒神と荒野……らぶらぶ……ぼーいずらぶ……」
「違うっー!」
 荒野は、叫ぶ。
 ……一体、どこからそういう発想がでてくるのか……。
『……茅の友人は、もう少し選んだほうがいいかな……』
 羽生譲や三島百合香の顔を思い浮かべながら、今更ながらにそんなことを思いはじめる荒野だった……。
 荒野は自分がノーマルであることを証明するため、茅を抱きしめて、その場に、床の上に押し倒す。
 メイド服のスカートを捲り上げ、茅の下着を指でまさぐる。そこの布地はすでに濡れはじめていた。
 押し倒された方の茅は、
「メ、メイドさんがご奉仕するの……」
 とか震える声でいう。突如、態度を豹変させた荒野を怖がっているのかもしれない。
『なに、構うものか……』
 と、荒野は思い、
「……ご主人様を愚弄したメイドさんに、お仕置き」
 とだけいって、茅の両足を強引に大きく開かせ、スカートの中に頭をつっこんで、茅の股間に顔を埋める。
 茅の腰は、最初、荒野の愛撫から逃れようと動いていたが、わざと盛大に音をたてて、下着の布地の上から荒野が茅の股間を舐め続けていると、すぐに、その舐められている部分を、荒野の鼻先に突きつけてくるようになる。
「……はっ……んはっ……」
 と、茅が甘い吐息を漏らすようになると、荒野は茅の股間から顔を離し、立ち上がった。
「……メイドさんがそんなに悦んでいるようでは、お仕置きにならないなぁ……。
 ここで、やめようか?」
 荒野がわざと冷淡な声をつくってそう尋ねると、
「駄目!」
 茅は、荒野の太股にすがりついた。
「……もっと、欲しいの……」
 そういって、ジッパーから突き出たままの荒野の男性器にとりつき、その硬直を口で愛撫し始める。

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彼女はくノ一! 第三話 (47)

第三話 激闘! 年末年始!!(47)

 蕎麦をすすって一休みすると、誰からともなく「初詣に行こう」という話しになった。近くの神社まで、だから歩いていくらもないのだが、基本的に人混みが嫌いな香也はあまり乗り気ではなかったが、「茅と楓が振り袖に着替える」というので、少し興味を引かれた。香也は楓が荷物をといた時、ちらりと生地の柄をみただけだが、あれだけ綺麗な生地を実際に人間が纏うとどういう風にみえるのか……というのは、かなり、好奇心をそそられる。
 茅の着物も加納老人から送られたものであるのなら、茅の着物も、楓の着物に匹敵するなのだろう……。
 それを着た二人が並んでいる様子は、かなり、絵になるはずだった。

 加納兄弟がティーセットを持ちって着替えに一旦マンションに引き上げる。
 楓と女性の何人かも、着つけを手伝いに家の奥に消える。
 香也と樋口明日樹、樋口大樹、飯島舞花、栗田精一の四人が残った。
「……なんだ、樋口は手伝わないのか……」
「あれだけ人数いるし……わたし、着物の着つけなんてできないし……」
「同じ同じ。着物なんて、浴衣ぐらいしか着たことないよ、わたしも」
 ……庶民だからねー、うちらの家。
 その場に残った女性二人は、そう頷きあった。
「……んー……そういや、飯島さんたちって、いつも一緒にいるけど……」
 香也が珍しく、他人に関心があるようなことをいう。
「そ。つき合っている。ってか、知らなかったのか?
 結構有名だと思ったんだがなあ……」
 そういって、飯島舞花は、隣りに座った栗田精一の肩を抱き寄せて、密着した。抱き寄せられた栗田のほうは、顔を赤くしながら「人前でやめろよ、まーねー」などと抗っている。
「わたしらと、一年の柏と堺……この二組は、学校では結構有名だけどな……」
 ……そういわれてみれば、この間の同人誌合宿の時、そんな噂を小耳に挟んだような気もする……。
 その時、香也は気にも留めていなかったが……そうか、堺と柏も、そういう関係なのか……。道理で、仲がいいと思った……。
 昼間来た二人の様子を思い返し、香也は一人で納得した。
「こっちの香也君も、だんだん普通の男の子並になってきたな……」
 そういって、飯島は意味ありげな視線を樋口明日樹に送る。
「……なんでそこでわたしのほうを見るのよ……」
 明日樹のほうは、憮然とした表情を作っていた。

 しばらくして、振り袖に着替えた松島楓が他の女性たちに取り囲まれて戻ってくる。着つけを手伝った女性たちは、楓の着物姿を口々に褒めていた。まったくのお世辞ではない……と思う。赤系統の光沢のある生地に、花とか鳥とか、花札の柄のような画風の微細な染め物がなされたその振り袖は、派手な色彩の割には、しん、と内に秘めた重心を持っているように思え……楓に、よく似合っていると、香也は思った……。
 当の楓は、はにかんだような、照れているような顔をして、香也に、
「どうですか? この恰好?」
 と聞く。
「……んー……似合う……」
 香也が短く答えると、楓はさらに照れたような表情を浮かべ、顔を背けた。耳朶まで、真っ赤になっていた。

 みんなで寄ってたかって楓の着物姿を褒めているうちに加納兄弟も帰ってくる。
 加納茅の着物は、青い地に鯉とか蓮とかが描かれていて、これはこれで茅の雰囲気に合っているように思えた。ときおり、突拍子もない言動をすることがあるが、黙って立ってさえいれば、腰まで届く黒髪の茅は、どこかの令嬢であるかのように、稟とした雰囲気を纏っている。
 楓がどこか柔らかい、人を引き込むような印象を与えるのとは、対照的だった。

 茅と楓の着物姿の絶賛大会が終わると、みなで外出の準備をして、どやどやと初詣に出かけた。旅行かた帰ったばかりの真理だけが残るといい、後の全員で夜の町に繰り出す。
 クリスマス以来、松島楓、才賀孫子、加納茅の顔はこの近辺では知られていて、案の定、道を歩いていると、なんどか他の通行人に指さされたりしたが、十人でわいわい騒ぎながら固まって歩いているのが幸いしたのか、誰に話しかけられることはなかった。今まで海外で過ごしたという荒野は、この人手や初詣、除夜の鐘などの風習が珍しいらしく、しきりに周囲の者に質問をしている。それに、大体飯島舞花が答え、他の者も説明を補足したりしている。その問答は、端で聞いていると漫才みたいでそれなりに面白く、おかげで神社まで、あっという間についたような気がした。
 お参りをすませ、お神籤を引くと、荒野が「大凶を引いた」と騒ぎはじめ、周囲のものたちが「ここに結べば……」などと取りなしている。香也が引いた者は「吉」で、ただし、恋愛運の項目に「異性関係に注意」うんうんと書かれていた。「なにげにあたっているかも……」と香也は思い、先ほど「家内安全」を祈願しておいてよかった、とも、思った。そんなものは気休めにすぎない、とも、思っていたが……。
 飯島舞花と羽生譲と才賀孫子が「大吉」、松島楓、栗田精一、樋口大樹が香也と同じ「吉」、加納茅と樋口明日樹が「凶」で、飯島と明日樹は、「四月から三年で、受験なのに……」縁起がいい、悪いとかしきりにいいあっていた。

 神社から帰る途中、周囲の人々がしきりに自分たちのことを気にしているのに香也は気づいた。そのことを羽生譲に告げると、
「……そりゃあ、まあ……こんだけの美形が団体でぞろぞろ歩いていればなぁ……しかもそのうち、二人は振り袖だし……」
 と、いい。
「ま、そのうちイヤでも慣れるから、あまり気にするな」
 と背中を叩かれた。
 加納兄弟、松島楓、才賀孫子、飯島舞花……それに、羽生譲を加えてもいい。
 この人たちは人目を引くほどの整った容姿で……一人二人が歩いてる程度なら、さほど人目を引かないかも知れないが、団体で歩けば、確かに目立つだろう……。
 と、香也も改めて認識した。
 そして、香也自身……新学期から、そんな人たちと一緒に登校する筈……なのだった……。

 神社から帰ってしばらくするとカウントダウンが始まり、その年は終わった。
 加納兄弟はマンションに帰っていき、両親が旅行に出かけて留守だという樋口兄弟と飯島、栗田のカップルは、真理に引き留められる形で残った。
 彼らを引き留めた真理も、「疲れているから、失礼させていただいて……」と自室に退き、居間に残ったものたちは、だらだらといつまでもどうでもいいようなことを話し続けた。才賀孫子と樋口明日樹が突っ込み、飯島舞花がぼけと突っ込み兼任、ほかの連中がぼけ役、といった案配で、どうでもいい、内容のない会話が、以外に面白く、いつまでも転がっていくのを、香也は炬燵にあたりながら他人事のように眺めていた。

[つづく]
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髪長姫は最後に笑う。第四章(24)

第四章 「叔父と義姉」(24)

「ちょっと、加納!」
 庭に入り、みんなと合流すると、荒野はすぐ孫子に腕を引っ張られて、庭の隅まで連れ込まれた。
「どういうこと? あれって二宮でしょ?
 浩司とか名乗っていたけど……二宮荒神とは、絶対に関わり合うにはなるなって、前々から伯父様に言い聞かされているのですけど……。
 もやは本人、ってことはないでしょうねぇ……」
「……ごめん……」
 荒野は「なんでおれが頭を下げなければならないのだ……」と内心で苦々しく思いつつ、それでも素直に孫子に頭をさげる。
「……その、地上最高に要注意な人物、二宮荒神本人だ、あの人……」
「ちょっと!」
 孫子は小さな抗議の声をあげ、荒野を睨みつける。
「それ、どういうこと?
 あんなトラブルメーカーがこんな近くにいたんじゃあ、気が休まる間がないわ……」
「……その点は、まったくもって同感だが……」
 荒野は沈痛な面もちで事実を指摘した。
「……下手な反抗は、しない方がいい。
 あの人がへそを曲げると、とことんどうしようもないことをしでかす……今の時点で、せっかく本人も大人しくしてくれるつもりになっているようだし……下手に刺激するよりも、このままのほうが……」
「なんだ。やっぱりあれが荒神ってヤツか……この時期に二宮って別人がもう一人来て……とかいったら、そりゃタイミングよすぎだろうとは思っていたが……」
 荒野についてきた三島百合香が、二人の会話に割り込む。
「先生も、くれぐれもあの人を刺激しないでくだくだいさよ……。
 一旦暴れ出したら、自然に落ち着くまで手の着けられない自然災害みたいな人なんですから……。
 頭を低くして、通り過ぎるのを待つのが、あの人の一番いいあしらい方です……」
「自然災害……ハンマユウジロウじゃなくてヴァッシュ・ザ・スタンビートだったか……。
 名前通りのヤツだな……」
「荒神」とは紀記に伝えられるスサノオノミコトの別称であり、そのスサノオノミコトを「暴風雨や雷などの自然災害の神」と解釈する一派もある……。
「……なんでもいいですけど……」
 荒野はいつになく真剣な面もちで、念を押した。
「とにかく、なるべくあの人のしたいようにさせておいてください。
 今のところ、誰かに危害を加えるつもりもなく、平和を楽しむ気分のようですから……」
 その「気分」がいつまで持続するものなのかは、本人のみが知る。
 当の二宮浩司こと二宮荒神は、他のみんなに混ざって杵をふるって餅をついている……。
 荒神の人となりをあらかじめ知っていなければ、実に平和な光景だった。
 荒野は初詣で平和を祈願し、その後に引いた御神籤が「大凶」だったことを思い出す。気のせいか、水月のあたりがキリキリと痛むような気がした。

「……もう何年も車庫の奥に放置してあったもんなんだがな……」
 羽生譲は臼と杵について、そう説明した。
「馬鹿親父の商売がうまくいってて、羽振りが良かった頃なんかは、毎年社員さんの家族とか呼んで、今みたいに餅つきやってたわけよ……。
 ほれ、カッコいいほうのこーちゃんもついてみな。うちのこーちゃんは、みての通り全然腰がはいってないし……」
 二宮浩司こと二宮荒神があっというまに一つ目を一人でつきあげると、杵は他の男性陣にたらい回しにされた。多少なりとも恰好がついていたのは、部活で普段から体を使っている栗田精一くらいなもので、基本的にインドア派の香也と堺は杵の重さに体をがくがくと揺らしており、杵の重さに振り回され、体全体がふらふらしている。樋口大樹は威勢だけはよかったが、やはり杵を扱いきれておらず、腰が入っていないように見えた。
「……じゃあ、初めてなんで勝手が分からないけど、見よう見真似で……」
 香也が交代し、生まれて初めて杵を手にする。
 ずしりとくる、『……一般人は、扱いかねるかもしれない……』と思う重さだったが、香也自身にとっては、この程度はどうということもない。
 香也が杵を振り上げると、餅をひっくり返す役も茅に交代する。茅にとっても初めての作業だろうに、香也のリズミカルな動作に合わせて、茅は器用に蒸した餅米の塊をひっくり返してみせた。二人が黙々と餅をついていると、あまりにも息が合っていた様子だったので、周囲のギャラリーから「おおっ!」と感嘆の声が漏れた。
 荒野たちが動いている間にも、女性陣は、先につきあがった餅を食べやすい大きさに分けて丸めたり、雑煮に入れたり、すりつぶした豆やあんこ、安倍川と合わせたりしている。
「熱いうちに」ということで、できあがった分は、作業の合間にみんなで食べはじめていた。香也と茅も「もうそろそろ交代」と止められ、食べる方にまわる。その間、ほかの男性陣が、へっぴり腰ながらも交代で餅をつきはじめた。

 つきたての餅は、うまかった。

 最終的に三升ほどの餅をつき、その場で食べられなかった分に関しては、加納兄弟、樋口兄弟、柏姉妹&堺、それに三島百合香が分けて持ち帰ることになった。
「……いつもすいませんねぇ……。
 あ。この前、鮭一本丸ごと貰ったんですが、二人では食べきれないんで、今すぐ持ってきます……」
 荒野はそういって、真理に頭を下げる。
「荒野君、荒野君」
 一旦帰りかけた荒野に向かって、二宮浩司こと二宮荒神は、ちょいちょいと手招きをした。
「……長老から、伝言。
 茅ちゃんの晴れ着姿が、みたいって……」

『平和といえば、平和だよなぁ……』
 マンションに帰った荒野は、さっそくキッチンで荒巻鮭を適当に切り分ける。
 小さめに切り分けた分はタッパーにいれて三島へ、かなり大きく切り分けた分は皿に盛ってラップをかけて狩野家に。狩野家のほうは人数がいるから、どうとでも消費できるはずだった。
 茅が自分で振り袖に着替えている間に、荒野は三島の部屋に鮭の切り身を届ける。
 三島は「カメラマンは任せろ」などといいながら、そのまま荒野についてきくる。
 着替え終わった茅と合流し、再び、狩野家に。
 狩野家では、デジタル・ハンディカムを持った羽生譲と、振り袖に着替えた松島楓が待ちかまえていた。
「どうせなら、楓ちゃんの着物姿も残しておこうと思ってな。編集は、任せて」
 羽生譲はそういった。
 背後には、狩野真理、狩野香也、才賀孫子、それに、普段の部屋着代わりなのだろうか、着流しに着替えた二宮浩司こと二宮荒神も控えている。
 真理に鮭を手渡し、そのまま狩野家の庭先で、即席の撮影会となった。
『……加納と才賀、それに二宮が顔合わせて、こんなことやっているのだから……』

 ……どうかこの平和が、いつまでも続きますように……。
 荒野はカメラの液晶画面を覗きながら、初詣で祈ったことを、再度祈願した。

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彼女はくノ一! 第三話 (46)

第三話 激闘! 年末年始!!(46)

 簡単な昼食を済ませ、羽生たちが買ってきた土産の菓子折を開けてお茶などしながら、なんとなく全員で居間に居座ったまま、だらだらと過ごしているうちに、飯島舞花と栗田精一が尋ねてきた。
 飯島舞花が、
「掃除してたら、押し入れの奥から、使ってない蕎麦打ちの道具が出てきたんだけど……」
 と、玄関口で早口でまくしたてる。要するに、それで年越し蕎麦を打って、この家のみんなと食べてはどうか、ということらしい。
「あー。いいんじゃないか? うちのほうも、一食分、手間が省けて助かるし……」
 この家の住人を代表して、羽生譲が答えると、
「……じゃあ、早速材料買ってきます!」
 と、飯島が勢いよくきびすを返そうとする。
「どうせなら、多めに買ってこいなー。
 狩野兄弟とか、あすきーちゃんところにも声かけておくからー……」
 その背中に、羽生譲は、そう声をかけた。飯島の後に続いて、栗田精一が頭を下げながら、「すいませんねー。まーねー、いいだしたら聞かないし、あれで寂しがり屋なもんですから……」とかいいながた、飯島舞花の後を追う。
 一旦マンションの方に消えた二人は、すぐに自転車をこいで戻ってきて狩野家の前の道を通過した。
「……って、いうことだから、ソンシちゃん、茅ちゃんとあすきーちゃんとこに、連絡よろしくな」
「……いいですけど……」
 同性で、年齢が近く、メアドを交換している才賀孫子が、ほぼ自動的にこのような時の連絡係をすることになっている。
 飯島舞花と栗田精一は三十分もせずに買い物から戻り、前後して、加納兄弟と樋口兄弟も集まってくる。
「……なんかクリスマス以来、この面子、固定しちゃっているね……」
 とかいいながら、樋口明日樹は自然に台所に入り込んでお茶を入れる手伝いをしている。何故か明日樹と共についてきた大樹も炬燵に入って、荒野、栗田、香也とどうでもいいようなことを話し込んでいる。大樹と荒野は以前かた面識があり、栗田と大樹は同じクラス、香也と栗田たちは、クラスは違うものの、一年生だ。
 また、栗田と大樹は、現在だけでなく、同じ地元民ということで、小学校の頃から同じクラスになることが多く、仲がよい……と、言い切ってしまうのは微妙だが、お互いのことをよく知っている、腐れ縁的な知り合いだった。共通の知人の近況など、それなりに話題がある。
「……しかしまあ、飯島先輩が、あのまーねーだったとはなー……よくぞ育ったもんだ」
「うーん……そういや大樹も、おれも一緒にまーねーにいじめられてた口だよなー、あの頃は……」
「……それでもでも、いいじゃないか、お前は……。
 その時にフラグ立てて、今ではちゃんとつきあってるんだから……そこいくとおれは……」
「……フラグって……そんなにいい面ばかりじゃないぞ、まーねーのお供は……」
「はい! そんなこといっている暇あったら、セイッチはこっち来て手伝う!」
 いつの間にか二人の背後に忍び寄ってきた飯島舞花が、栗田の耳を摘んで小強引に立たせ、にこやかな表情のまま、台所の方に引きずっていった。
「……まあ、あっちはあっちでいいとして……ワケわかんないのは……」
 樋口大樹は紙の束を炬燵の天板の上に乗っけてぼーっと眺めていた狩野香也を指さす。
「お前だお前! お前のところ、一体どうなっているんだ! うちのあすねーだけじゃなくて、だな。
 こーんなぷに系とか……」
 と、松島楓を指さす。
「こーんな怒った表情が魅力的なおねーさんとか……」
 と、才賀孫子を指さす。
「こーんな年上の美形おねーさんとか……」
 と、羽生譲を指さす。
「こういった方々全員と、同居している……だとぉ……。
 ふざけるな!
 うはうはハーレム状態じゃないか!」
「……あー。少年……」
 羽生譲は、真剣な面持ちで、こほん、と一つ、咳払いをした。
「うちのこーちゃんは、もう一人、血のつながりがない若くて美形な義理母とも、同居しておる。
 さらにいうと、だな……この家には、外見上はとってもロリロリーな、白衣が似合う女教師も、頻繁に遊びに来ておる……」
「それどこのエロゲですか!」
 樋口大樹がさも口惜しそうに叫んで、炬燵の天板を、拳で叩き出す。
「この馬鹿!」
 その樋口大樹の脳天を、背後に立った樋口明日樹が、手にしていたお盆ではたいた。
「他人様の家でなに恥ずかしいこと叫んでるか、この、馬鹿、弟が……」
 樋口明日樹は、大樹が「もう、止めて、勘弁してくれ……」と懇願するまで、ごんごんごん、と、いつまでも大樹の頭をお盆ではたき続ける。すっかり、目つきが座っていた。

 そんなことをしているうちに、楓からメイド服を取り戻した茅がかなり本格的な紅茶を御馳走してくれたりして、すっかりまったりモードになってしまった。
 松島楓は届いたばかりの携帯を取説と首っ引きで弄っていて、周囲の孫子や茅や飯島が、アドバイスしたり番号やメアドの交換をしたりしている。テレビは年末特有の毒にも薬にもならない番組を垂れ流しており、荒野がその番組を不思議そうに眺めている。香也は、堺が持ってきた資料に目を通し終わったのか、スケッチブックを取り出して、資料を見ながらさらさらとシャーペンを走らせはじめる。栗田と大樹は楓の携帯よりもそっちのほうが珍しいのか、香也の手元を覗き込んでいる。
 そのうち、順也の個展に行っていて数日留守にしていた狩野真理の車が帰ってきて、それでは、と飯島舞花が挽いてあった蕎麦粉をこね始める。はじめは物珍しさでその作業をみていた面々も、結局順番に手を出すことになり、こねる者、こねた生地を麺棒で平らに延ばす者、それを切る者、など、自然にローテーションが出来ていった。
 みんなでわいわいやるうちに、何だが予想以上に生蕎麦が出来上がってしまったが、ゆでて皆で食べ始めると、意外に早く、全てなくなってしまった。
 自分たちの手で作った蕎麦は、「……本物の蕎麦って、こういう食べ物だったのか……」という風味が、ちゃんと感じられ、まったくもって蕎麦の味がした。麺の細さが不揃いだったりも、したのだが。

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髪長姫は最後に笑う。第四章(23)

第四章 「叔父と義姉」(23)

「……熱心に男いないかだの見合いするかだのそんな話ばかり出てな……」
 三島百合香は実家のことをそんな風にブツクサ言いながら持ち帰った荷物を自室に運んだ。こっちに戻ってから自室に寄らず、真っ直ぐ荒野たちのマンションに寄ったらしい。荒野たちの部屋のほうが三島の部屋よりも階下にあたり、たしかに合理的な動線ではある。
「……跡継ぎなんか弟で充分だっつーの……」
 そんな三島の話しの合間に、荒野はついこの前、二宮荒神が荒野たちを尋ねてきたときのことをかいつまんで話した。
「……二宮っていうとあれか……滅法強いって、ハンマユウジロウなヤツらだってか?」
「いや、そのハンマユウジロウが何者かは知りませんけどね……滅茶苦茶強い、ってのは、本当です……」
「で、その、年始回りに来たその二宮っての、具体的にどんなヤツだったね? ん?」
「……荒野とらぶらぶだったの……」
「……なにぃ? らぶらぶとなっ!」
「茅のいうこと真に受けないでください。
 ただヤツが、こっちに抱きついて離れようとしなかっただけです……」
「……いや、それはそれで……この間の帽子男といい、お前らの一族って……」
「……面目ない……」
 自分が悪いことをしているわけでもないのに、意気消沈した様子で、荒野はがっくりとうなだれた。
「……いや、いいけど……」
 三島は持ち帰ったスーツケースなどは自室の玄関先に突っ込んだだけで、すぐに鍵をかけ直し、荒野たちに向き直った。
「それじゃ、早速お隣の餅つきとやらにいってみっかね……久々に他のヤツラの顔も拝みたいし……。
 そうだ、荒野。その、二宮のこと、楓たちにも話したのか?」
「……どうしようか迷ったんですけど、何分気まぐれな人だし、当座敵にまわらないのら、触らぬ神に祟り無しって気もしますから、黙っておきました……」
「……そいつ、そんなに強いのか?」
「強いっす。仮に敵対したとしたら、おれらが束になってかかっても、万が一つにも勝ち目はありません。加えて、独自の行動原理で動く、理解しがたい人です。
 とりあえず、こっちの邪魔をするつもりはないってことがわかっただけでも、御の字ってもんです」
「……そんな情けない話し、胸張って断言されてもなあ……」
 そんなことを言い合っているうちに、マンションのエレベータを下り、共用部分の玄関を通って外にでる。
 そこから少し歩くと、すぐにお隣りの狩野家の生け垣に越しに、すでに集合している人々の上半身が確認できた。
 三島が予想していた以上に、人数が多いようだが……。
「狩野家に住んでるヤツラは別として、飯島と栗田もすっかりあそこの常連と化しているな……それに、樋口兄弟、は、まだいいにしても……なんだ。柏姉妹と堺まで来ているじゃあないか……」
「え? あ。本当だ……」
 荒野も、年末の同人誌原稿制作のさいに、柏姉妹とは面識があった。
 柏妹と一緒にいる同年配の少年の顔は、初めてみるはずだが……。
「ま、こういうのは人数いたほうが楽しいからな……誰かが呼んだんだろ……」
 そんなことを言い合い、庭にいる人々に目礼をしながら、狩野家の玄関に回る。いよいよ庭に入ろうとしたちょうどその時、荒野の腰にしがみついてくる者があった。
「会いたかったようっうううっ。こ、う、や、くぅぅん……」
 そんな叫び声を上げながら、荒野に抱きついてきた男はすりすと荒野の背中から肩にかけて、頬ずりしてまわる。
「……ぅわぁっ! な、な、な……」
 珍しく、荒野は動転している。
「なんであなたが、こんなところに!」
 元旦の日、尋ねてきたと時とは、顔つきも服装も体格も変えていたが……まぎれもなく荒野に抱きついてきたその男は、二宮荒神その人だった。
 いきなりこんなことをしでかす人間を、見間違うわけはない……。
『ここではぼく、新年から君たちの学校に赴任する、臨時教師の二宮浩司だから……』
 抱きつきながら、二宮荒神は、荒野の耳元に、そんな不条理極まりない情報を囁く。
『君の遠縁ということで、この家に下宿することになったから、そのつもりで……』
『……荒神さん!
 あんた、じじいを脅したな!』
 荒野も、いきなり抱き合いはじめた他の人々の手前、荒神の耳元に小声で囁く。
『茅ちゃんだけなら放っておくんだけど……。
 こっちにはもう一人、弄り甲斐のある雑種がいるじゃないかぁ……。
 ああいう面白そうな子のことを教えてくれないなんて……荒野君、いじわるだよ……』
 ……楓、か……。
 うかつなことに、荒野は、「強い者」と「強くなる可能性がある者」に対して強い興味を抱く、という、荒神の性向を失念していた。前者は「敵」として、後者については「鍛え甲斐のある者」として、荒神は強い執着と興味を示す……。
 さしずめ、養成所で育った程度で並の六種家クラスの実力を持つに至った松島楓の資質などは……二宮荒神の興味を引くのには、充分だったのだろう……。
『……楓を弄るのはいいですが、壊すところまではやらないでくださいよ……』
 荒野としては、そう釘を刺すのが精一杯だった。
 荒神には逆らえない、ということもあるし、それ以外に、荒神が本気で楓という良質の素材を鍛えたら、一体どこまでいくのか……それを見届けたい、という興味も、ある。
『流石は荒野君、話しが早い。大丈夫。彼女だって新学期からぼくの生徒の一人だ。授業に支障が出ない程度にとどめておくよ……』
 思わず荒野は、がばっ、と、荒神の体から我が身を引き離す。荒野の顔から、完全に血の気が失せていた……。
 荒野は、荒神を指さしながら、ぱくぱくと口を開閉させる。

「新年から君たちの学校に赴任する、臨時教師の二宮浩司だから」、「彼女だって新学期からぼくの生徒の一人だ」……。
 あまりにも「ありえない」ので、荒野の脳がスルーしていた残酷な事実を、ようやく荒野が認識する。

「……やだなあ、荒野君。久しぶりに会った親類が同じ学校に勤めることになったからといって、そんなに驚かなくても……」
 三七分け(似合わない)に黒縁の伊達眼鏡(またくもって、似合わない)で、「真面目な好青年」という名の猫を被っている(つもりらしい)二宮荒神を目の前にして……荒野は、文字通り、二の句が継げなかった。

 ……なんだって、「一族最強にして最凶」の戦士が、地方のちっぽけな公立校の産休教師なんてやらなくちゃならないんだよぉ……。

 その頃になって、荒野はようやく、庭先に集まった女性陣、特に、柏姉が「萌え萌えなのです!」などと二人を指さして騒いでいることに、気づいた。

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彼女はくノ一! 第三話 (45)

第三話 激闘! 年末年始!!(45)

 香也がぼーっとした顔をしながら、ちょこちょことシャーペンを走らせていることに最初に気づいたのは、樋口明日樹だった。
 香也のほうを指さして、他の三人の注意を香也の挙動に向ける。香也のほうは、他のみんなが自分に注意を向けはじめたのに気づいておらず、指先だけを細かく動かして、資料の紙に落書きをしている。
「……うまいじゃない」
 不意に耳元で、才賀孫子の声がして、香也は我に返る。
 驚いて顔をあげると、すぐ間近に、孫子の顔があった。
 香也が驚いて硬直している隙に、孫子は、香也の手元の紙を引ったくって、炬燵の天板の上に置く。
 資料の紙に、二人の人物が描かれている。香也たちが通う学校の制服を着た、男子と女子。
「……これが、主人公の転校生でいいの?」
「……んー……多分……」
 資料では、プレーヤーの分身である「転校生」の性別は、最初にプレーヤーが選択できることになっている。
 実のところ、香也は、自分が描いていた者について、あまり考えない。
『学生で、広い範囲に受け入れられやすい容姿を持つ男女』を、とりあえず描いてみただけだったりする。香也の学校の制服を着せたのは、それ以外の「学校の制服」を、香也がよく知らなかっただけだ。
「……でも、やっぱりすごいなあ……その場でちゃっちゃと描けるなんて……」
「ね。ね。狩野君、使えるでしょ?」
 香也にしてみれば「ちょっと描いてみた」程度のラフでも、堺と柏の二人は、香也が大げさに感じるくらいに騒いでいる。
「その場ですぐに描いてみせた」ということで、香也の技能を強く印象づけてしまった形だった。
 堺と柏は、「これ、取り込んで他のみんなにも見せたい」と言い残し、香也が描いたばかりのラフを持って、帰宅の準備をはじめた。
「……んー……でも、まだ引き受けると決めたわけでは……」
 香也が念を押そうとすると、樋口明日樹と才賀孫子が顔を見合わる。
 そして、香也の左右から、
「……まだそんなこといっているの?
 狩野君。これ、狩野君にとってもいい話しだと思うよ……」
「あなたはそれなりの才覚を持っているのです。
 それをあえて使わないというのは、それはもはや罪悪です……」
 等々、と、左右からステレオで香也にいいつのる。
『……君たち、いつの間にこんなに仲が良くなったんだ!』
 と香也が心中で悲鳴を上げていると、
「……先輩たち、よろしくお願いします」
 と、柏あんなが玄関口で頭を下げて境雅史の後を追って去っていった。

 その日、香也はプレハブに戻る気分にならず、炬燵にあたったまま、堺が残した資料に目を通したり、そこから得た印象をスケッチブックに書きつけたりして過ごした。
 樋口明日樹と才賀孫子は、そのような香也を眺めながら学校のことなど談笑し、時折香也のスケッチを取り上げて、短いコメントをつけたりしながら、遅い時間まで居間にいた。
『……なんだか、二人に監視されているみたいだな……』
 と、思わないでもなかったが……香也にとってその時間は、決して不快なものではなかった。
 樋口明日樹は、夕食を孫子と二人で作り、それを食べた後、自宅に帰っていった。

 一夜明ければ、大晦日だった。
 朝食を終えた後、香也が炬燵にあたりながら、昨日に引き続き堺が持ち込んだ膨大な資料にダラダラと目を通していると、東京に行っていた羽生譲と松島楓が帰宅した。
 早速、才賀孫子は、留守中、松島楓宛に届いた荷物を渡す。
 その場で包みを解いて中身を確認した楓は、しばらく黙って顔を伏せていたが、すぐにそれらをぎゅっと腕に抱えて、自室に引き上げた。

 持ち帰った着替えを分けて洗濯機に放り込んだり、土産品の整理などが一段落ついたところで、炬燵に戻ってきた羽生譲が、香也が手にしていた資料に興味を示した。
「……なに、それ?」
 孫子と香也から昨日の出来事の説明を聞きながら、ふんふん頷きつつ、羽生譲はパラパラと資料をめくる。
「骨格がしっかりしていて、細部もよく考えられている。造りが凝っているし、それなりに現実味あるよ、これ……。
 ……素人のこの手の計画って、たいてい自分らにできないことまで盛り込んで計画倒れになるんだけどさ、これ見る限り、この連中、自分らにできることとできないこと、しっかり判断しているから、このゲーム、完成する可能性は高いよ……」
 そういう言い方を、羽生譲はした。
「で、こーちゃん。これ、やるの? たしかに今のこーちゃんにはプラスになる面も多いけど、作業量が作業量だから……やるとなったら、かなり時間食われるよ。
 学校もあるし、こーちゃん自身の絵も描きたいだろうから……合間合間にこの作業やるとしたら、早くて数ヶ月、場合によっては一年以上かかるかと思う……」
 その後、羽生譲は、そう計算した。
 ……それだけ拘束されてもいいのか? と、香也が問われている形だ。
「……んー……でも、やってみたい……」
 そう問われて、初めて、香也は自分の意志を明確にする。
「やり甲斐があるっていうのも、確かにそうなんだけど……ぼく、誰かに頼りにされのるって、初めてだから……」
「……そっか……」
 羽生譲は、香也の頭に手を延ばし、くちゃくちゃと掻き回す。
「じゃあ、協力する。わたしのパソコン、自由に使っていいから。スキャナとか回線使えると、いろいろと便利だろうし……。
 ほれ、決めたんならさっさと……その、柏妹ちゃんのカレシに、電話でもする……」

 香也は即されるままに、堺の携帯に電話をかける。
 電話口の向こうで、堺は何度も繰り返し、香也に礼を述べた。
「もっと詳しい打ち合わせは、新学期が始まってから、学校ででも……」
 最後にそういって、堺は電話を切った。

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髪長姫は最後に笑う。第四章(22)

第四章 「叔父と義姉」(22)

 二宮荒神がマンションから出ていくと、荒野はソファの上にぐったりと体を横たえた。時計を見ると、もうすぐ、午前四時になる……結構話しこんだな、と、荒野は思う。
 対面していて、実に、「疲れる」二宮荒神は、差し向かいで長時間話し込むのには、向かいない相手だ……と、加納荒野はつくづく感じた……。

「荒野、疲れたの?……」
 荒野がぐったりしている間に、振り袖から普段着に着替えた茅がリビングに戻ってくる。
「……この鮭、二人では食べきれないと思うの……」
 テーブルの上には、荒神が残していった見事な荒巻鮭がどーんと一本丸ごと残されていた。
「……そうだな。明日、いや、もう今日か……切り分けて、お隣りでも持っていこう……先生がいれば、先生にも押しつけるんだがなぁ……」
 そういいなが荒野は茅の顔をみて、ふと思いつく。
 考えてみれば、もうすぐ元旦の夜明けなわけで……。
「……茅。
 茅はまだ、海を見たことがないっていってたな……」

「いくよ……」
 防寒着を着込んだ茅を背負った荒野は、一言そういうと、「本気で」疾走をはじめる。
 日が昇る直前、とはいっても、なにぶん元旦の早朝であり、普段よりは人通りが多い筈だ。目撃者を作らないように慎重にルートを選択しながら、基本的に、この前茅が走った川に沿って、下り方向に走っていく。
 荒野が走るのは、一通りのない路地裏であったり、電線の上であったり、民家の屋根や屋上だったりするのだが、どこを走る時も、基本的に速度はほぼ一定で……時速に換算すると、五十キロ前後、になるのだろうか。
 左右の背景がびゅんびゅん音をたてて背後に流れていく。
 早朝の冷気をもろに顔にぶつけながら、荒野の背中にいる茅は声一つたてず、おとなしく荒野の背に張り付いていた。
「……ついたよ」
 荒野が茅を降ろしたのは、湾岸沿いにある倉庫の屋根、だった。
 人目につかないよう、年末年始に営業していない倉庫を選んだのだろう。周囲には、それなりに灯りがともり、トラックも出入りしている倉庫もあったようだが、荒野たちがいる一帯は、灯がなく、しんと静まり返っている。
「ここからだと、初日の出がよく見えるはずだから……日が昇りきったら、今度は海岸ま出てみよう……」
 そういうと荒野は、一度姿を消し、暖かい缶の紅茶を持ってすぐに帰ってくる。
 荒野が飲み物を調達してきて五分もたたないうちに、水平線のほうが徐々に白みはじめ……。
 茅と荒野は二人きりで、日が昇りきるまで、無言のまま、朝日を見つめ続けた。

「……茅、今年もよろしく」
「こちらこそ、よろしくなの」
 完全に日が昇りきると、二人はそういいあい……そして、荒野は再び茅を背負い、倉庫街を離れ、今度は砂浜のある海岸へと向かった。
 初めての海辺で、茅は水の冷たさにもかかわらず、靴と靴下を脱いで足を海の中に入れ、子供のようにはしゃぎまわっている。
 荒野は、茅が飽きるまで、それを見守った……。

 なんだかんだで二人がマンションに帰っると、昼近くになっていた。
 そそくさと作り置きのおせちで食事をすませ、シャワーを浴びて、倒れ込むように、寝る。

 そして二人が次に目を覚ますと、すでに二日の朝で、茅は、見事に筋肉痛になっていた。
 荒野は、茅がむーむーと唸るのにも構わず力を込めてマッサージを施し、その後、熱い風呂にいれたり、食事を用意したりした。
「ま。これも一種の寝正月だな……」
 とか、いいながら。

 正月三日の朝、荒野は茅に起こされた。
 寝ていた荒野の胴体の上に乗り、揺さぶって荒野を起こした茅は、すでにスポーツウェアに着替えていた。
 荒野の上に跨った茅は、
「走るの」
 と、短く催促した。
 ……まだ、筋肉痛が治りきっていない筈だが……。
 そう思った荒野は、室内で念入りに茅のストレッチを行った。
 茅の体のどこが堅いのか知っておきたかったので、「痛いときは素直にそういうように」と念を押して、茅の体中の関節をひとつひとつ確かめながら、折り畳む。荒野は、茅が声をあげる箇所を記憶にとどめ、筋肉の張った部分を、自分の指で確認する。
 室内での時間をかけたストレッチが終わった段階で、茅の息はかなり荒いものになっていた。体も温まっていたので、そのまま外に出て走らせる。
 初日とは違い、その日は河原に出て、一キロくらいの距離を走らせては休憩させる、という方法をとった。河原の遊歩道を、片道一キロ、二往復。計、四キロ相当の距離を茅が走りきったところで、もう一度念入りにストレッチをさせ、マンションに帰る。
 筋肉痛が残る状態で、なお志気が衰えない……というのは、やはりガッツがあるよなあ……と、荒野は茅を評価する。
 あくまで「一般人」のレベルでいうのなら、茅はそれなりのスポーツ少女にも、なれるだろう。

 マンションに帰って茅の体をマッサージしたりシャワーを浴びさせたり食事をしたり茅のいれた紅茶を飲んでくつろいだりしていると、茅の携帯にメールが来た。
「……お隣りで、お餅つきをするといっているの……」
「……餅つき……」
 一瞬、荒野は鸚鵡返しにその単語を反復する。
 ……あれって、一般家庭でやるようなもんだろうか……。
 大晦日の日、なんだか意味ありげに「大人数ならできる」とか言い合っていた狩野真理と羽生譲の顔を思い返す……。
 ……まあ、そういうことなのだろう……。

 再び振り袖を着る、といいだした茅の支度を待っている間にインターフォンがなる。
 出てみると、自分の体よりも大きなスーツケースを床に置き、コート姿の三島百合香が立っていた。

「よう、荒野。たった今、帰ったぞ。
 こっちはなんか動きがあったか? ん?」
 玄関口に立った三島百合香は、そういった。

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彼女はくノ一! 第三話 (44)

第三話 激闘! 年末年始!!(44)

 境雅史が封筒から取り出した紙の束には、四十人以上のゲームに登場する「クラスメイト」たちの詳細なプロフィールと、誰が誰に好意を持っている、とかの関係図、ゲーム内での役割、セリフなど……が、プリントアウトされていた。
「……んー……すごい量……これ作るの、大変だったんじゃあ?」
「はは。こういうの、節操なく作るのが好きな人、何人もいてね……」
 半ば呆れ返った香也がそういうと、境も香也言葉のニュアンスを敏感に嗅ぎ取って、苦笑いした。
 たしかに、膨大な量の「資料」だった。
 おかげで、パラパラと紙の束をめくっているうちに、香也はすっかり興味をおぼえてしまう。
 ……元々香也は、これからしばらくは「人間」を描いていこう、と決めていた所だ。最初から生身の人間を相手にするのはきついが、こうしたフィクションの中の人間なら、練習としてちょうどいいかも知れない……。
 ただ、香也をためらわせたのは、やはり作業量の問題だった。
 名前のある登場人物だけでも四十人以上、そのそれぞれに「立ち絵」と呼ばれる全身像が数パターン、それに、小さなウィンドウに表示される、「顔」の絵が何パターンかずつ……となると、作業量的に、一人でこなすのは難しくなる。
 そのことを境に指摘すると、
「一人では大変、ということは良くわかっているので、狩野君とは別の絵描きも、改めて捜す。
 それから、フリーとして配布する予定だから、明確な締め切りもない」
 とのことだった。
 たしかに、こういうゲームの場合、数人で分担した方が、画風にばらつきが出て面白いかも知れない……。
 東京から帰ってきたら、羽生譲にも相談してみよう、と、香也は思った。
 香也は境が持ち込んできたこの企画にかなり興味を覚えたが、それでもまだ不安がったので、「数日、資料を見ながら考えさせてくれ」と返答して置いた。
 境のほうは、そうした香也の様子になにか感じることがあったのか、それとも、単に門前払いされなかっただけでもマシと考えているのか、あっさり頷いて、
「ねぇ。ぼくもあんなちゃんと一緒に絵を見せて貰っていいかな?」
 と、言い出した。

 それで三人でプレハブに戻ったのだが、香也が絵を描いている背後で、才賀孫子の解説付きで香也の過去の絵が一枚一枚披露され、それを見た境と柏の二人がいちいち声を上げたり、感想を語り合ったりしている……という環境は、まったくもって、香也を落ち着かない気分にさせた。
 もともと、香也は一度集中し出すと周囲の雑音はあまり気にならない性質だったはずが……。
『……いつの間にか、そんな自分の体質も変質してしまったのだろうか?』
 とか、
『……だとしたら、それは、自分のとって歓迎すべき変化なのだろうか?』
 などと、埒もないことばかり考えてしまって、どうにも絵のほうに集中できない……。
 なにより香也が不思議に思ったのは、孫子が香也の絵について、一枚一枚覚えているらしいことだった。たしかに、ほとんどの完成品の隅には、香也のサインと書き上げた日付を入れる習慣があったが……孫子がその日付をそらんじている、というのは、一体、どういうことだろう?
「……こうしてみると、なんか、人の絵が極端に少ない気がする……」
「人物画は、最近になって書き始めたそうです」
 そういって孫子は、クリスマス・イブに書き殴った顔だらけのキャンバスを取り出した。
 境と柏は、様々な顔が一面に埋め尽くす絵を見て、歓声を上げた。
「ほら。まだ、練習段階。狩野君が境君のゲームのお手伝いをするのかどうかはわかりませんけど、仮にやるとしたら、いい練習になるんじゃないかしら……」
「……あ。ヌードまである!」
 柏あんなが、練習で描いた羽生譲の裸体画デッサンのスケッチ・ブックを、目敏く見つけた。
「これ、おねーちゃんの先輩さん……狩野君、あの先輩さんと、そういう関係なの?」
「違う!」
 香也は慌てて背後に振り返り、否定する。
「それ、デッサン! 練習! 絵の世界では、ヌード描くのは、人体の基本なの!」
「……いや、そんなにムキになって否定しなくても……」
 境と柏の二人は、普段はぼーっとして感情をあまり見せない香也がいきなり激しい反応を見せたので、若干引き気味になった。
「……狩野君、わたしく、モデルになってもいいっていいましたけど……こういうモデルは、引き受けませんから……」
 才賀孫子は自分の胸を押さえ、ジト目で香也の顔を見つめている。
「……いや、そもそも頼まないし……」
 香也は、自分の反応に驚く三人の様子を確認して、がっくりとうなだれた。
「……え? 才賀さん、狩野君のモデルやるの?」
 ちょうどその時、樋口明日樹がプレハブに入ってきた。
「母屋のほうにだれもいないからこっち来たんだけど……今日は賑やかだねえ。柏さんたちまでこの家の来るとは思わなかった……」

「……あー。なるほど……素人が作るゲームの絵ねぇ……」
「ええ。テキストとかスクリプト書きはいるんですけど、なかなか絵描きさんが見つからなくて……。
 あんなちゃんから狩野君の事を聞いて、新学期になってから学校で頼もうかとも思ってたんですけど昨日、狩野君とばったりあって……で、早速、頼んでみたんです……」
「で、狩野君、やるの?」
「……んー……まだ決めてないけど、多分……」
「時間はかなりとられるけど、人物画の練習にはなる、か……」 
 五人で一旦居間に戻ると、樋口明日樹が境から詳しい話しを聞き出しはじめた。どうにも気分が落ち着かないので、香也は一緒に移動してきたのだが……。
 こうして、自分のことを他人が目の前で話している、というのも香也はあまり経験したことがなく……香也は、炬燵にあたりながら、かなり奇妙な気分におちいっている。
『……本当……いつの間に、自分の周りは……こんなに、賑やかになってしまたんだろう?』
 そんな感慨にひたりながら、境が持ち込んだ紙の束をパラパラとめくる。
 作成中のゲームの登場人物に関するデータが書き込まれているわけだが……架空の、実在しない人間の、詳しい情報が詳細に書かれているのを眺めていると、香也は、眩暈にも似た気分に襲われる。
『……これがここにある、ということは、ここに書かれていることをひとつひとつ考えて、形にしていった人たちが、実際にいるということなんだよなあ……』
 そして、自分がこのデータに絵をつけ、顔を与えれば、ここに書かれた登場人物たちは、さらに存在感を増していくわけであり……。
 この仕事を引き受ければ、香也は初めて羽生譲以外の人間と、顔も知らない道の人々と、共同作業をする、ということになる……。

「……面白そうだ」
 という思いと、
「……自分にも、できるのだろうか?」
 という思いが、香也の中でせめぎ合っている。

 そうした物思いにふけりながら、香也は、半ば無意識のうちに、たまたま持っていたシャーペンで、その資料の余白の部分に、さらりと人の絵を描いている。

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髪長姫は最後に笑う。第四章(21)

第四章 「叔父と義姉」(21)

 二宮荒神はもう三十路にはいっている筈だが、外見上はせいぜい二十代半ばの青年にしか見えない。身長は、荒野よりも大きい……筈である。ただし、優れた二宮の術者の例に漏れず、荒神も自分の体の各部を自在にコントロールする。流石に骨格までは変えようがないが、不随意筋を調整して顔の印象をがらりと変えたり、皺を目立たなくしたり、顴骨を収縮させ、数十センチ背丈を収縮したりする程度のことなら、造作もなくできる。
 だから、荒神と会う度に、「外見上の」印象はかなり異なっている……。

 しかし……。
「……酷いじゃないかぁ、こうぅやくぅーん……。
 血を分けた肉親に、帰国の連絡もしないでぇ……」
 百七十センチの荒野よりも大きな青年が、荒野にがっしとしがみついて甘えた声をだしながら、いつまでも頬ずりを続けている……と、いうような、奇態な行動様式を持つ人物を、荒野は、荒神一人しか、知らない……。

「……ちょっっちょっちょっ……」
 荒野は荒神の抱擁から逃れようとして、渾身の力を込めて荒神の腕を振り払おうとする。荒野の筋力だって一族の中でも群を抜いている方なのだが……その荒野が渾身の力を込めて振り払おうとしても、荒神の抱擁は一向に緩まない。
「……荒神さん! 再会していきなりこれはないでしょ!
 離して! とりあえず、離して!」
 予期せぬ荒神の来訪と抱擁に、荒野はすっかり落ち着きをなくしている。
「見てる! 茅が見てるから! 誤解するから!」
「……茅?」
 二宮荒神は、荒野を抱きしめる腕の力はそのままに、顔だけを逸らして、傍らでまじまじと二人の狂態を観察している振り袖姿の少女を認める。
「……ねぇやと同じ名……。
 荒野君! この娘、荒野君のなんなの!」

『……この人、茅目当てでここに来たんじゃないのか……』
 荒野は内心で、かなり呆れた。
 現在の荒野の状況について、荒神が詳しく知らない……というのが本当だとすれば……「現在の荒野の居場所」を噂として小耳に挟んだ途端、その真偽や周辺の情報を収集することもなく、すっ飛んできた、ということになる……。
『……いや、この人らしいといえば、らしいか……』

 元々二宮は、血のつながりを重視する。特に荒神にはその傾向が顕著で、身内のものに危害が加えられたり侮辱されたりした場合、もてる能力を全開にして暴れ回る。
 無邪気で、愛憎の幅が大きく、かつ、一度「敵」として認識した相手には、徹底的に、酷薄。一度「身内」として認めた人間にはとことん甘く、「敵」として認定した相手にはとことん容赦がない……。
 二宮荒神とは、そうした矛盾を孕んだ人物で……だから荒野は、二宮荒神にかなりの苦手意識を持ちながらも、なんとなく憎みきれないでいる……。

 その荒神が「ねぇや」と呼ぶ人物とは、すなわち荒野の母のことであり、その母をないがしろにした荒野の父、仁明を、二宮荒神は激しく憎悪している……。
「……そうかぁ……読めてきたよ、荒野君。
 ねぇやと同じ名前を持つその子が……仁明が、荒野君とねぇやをほっぽりだして育てた子なわけだね……」
 二宮荒神は、ことさらに朱い自分の口唇を、長い舌でねっとりと舐め上げるように舌なめずりし、「一族の術者」らしい表情をした。
 そういう凶暴な表情を隠そうともしない荒神と、たった今、締まりのない顔をして荒野に抱きついて頬ずりしていた荒神は、間違いなく同一人物なわけだが……一瞬にして、見た目の印象が、がらりと切り替わった。

「……ぼーいずらぶ?」
「ちがーうっ!」
 無表情に、密着したままの二人を見守っていた茅が、ぽつんとそういったことで、荒野は硬直から解け、そう絶叫する。

「……やだなぁ。ぼくが君たちに危害を加えるわけないじゃないかぁ……」
 立ち話もなんなので、荒野は荒神をマンションの部屋の中に通した。荒神がその気になっていたら、そもそも、荒野ごときが太刀打ちできるはずもないのだ。荒野が荒神の存在を関知する間もなく、茅もろとも瞬時に始末されている。
 荒野と荒神とでは、それくらいの実力差がある……と、荒野は認識している。
「荒野君はねぇやの子供で、身内なわけだし、仁明が育てたこっちの茅ちゃんも、養子みたいなもんだろ? だったら身内も同然だよ。
 第一、茅ちゃん自身には、なんの罪もない……。
 結局ね、一番悪いのは、ねぇやをぼくから奪って、その上ないがしろにして見殺しにした、仁明のヤツだよ……。
 ぼくら二宮は、野呂や加納ほど捜し物が得意じゃないから、未だにヤツのことを見つけだせていないけど……まあ、それも時間の問題だね。
 あいつだけは、どうあっても許せない。このぼくが直々にとどめを刺してやるつもりさ……」
 一瞬、荒神の目がぎらりと殺気を帯びたが、すぐに茅がいれた紅茶に口をつけ、
「……うーん。おいしい! 茅ちゃん、紅茶入れるのうまいねぇ!」
 と、いかにも無邪気そうに破顔する。
 圧倒的な「殺戮者・破壊者」としての顔と、情に厚い、いかにも好青年然とした顔をめぐるましく往復して、荒神自身は、そこにあまり矛盾に感じてはいない……らしい。
 ……「一族最強にして、最凶」と噂される二宮荒神とは、そんな人物だった。
「……今日来たのはね、ただの年始回りだよ。
 ほら、ちゃんと正装してきているし、お年賀も持ってきた」
 そうして、自分の着ている紋無しの羽織袴を示し、背中に担いでいた荒巻鮭を、どん、と、一本丸ごとテーブルの上に置く。その軽い衝撃で、同じテーブルの上にあったティーカップとティーポットがかたかた揺れた。
 荒巻鮭は、見事な大きさだったが、なんの包装もされておらず、持ちやすいように荒縄で括られているだけだった……。
 荒神の言葉は本当だろう、と、荒野は判断する。
 もともと荒神とは、一族の者には珍しく、「腹芸」などという細やかか芸当のできる人ではない。知力に劣るわけではないが、圧倒的な破壊力を持っているがために、そうした小細工を必要としない。問題の解決のために、実力で訴えることを良しとし、荒神が実力を行使した際、まともに対抗できる者など、この世に数えるほどしか存在しないのだった。
「……それでぇ、荒野くぅーん。この子と仁明について、君が知っていることをあらいざらい吐いてくれると、叔父さん、喜んじゃうんだけどなぁ……」
 荒神は、目をぎらつかせて、朱い口唇を舐める。荒神の肌は抜けるように白く、黙って立っていれば、色白の美青年、で通る風貌をしている。その、紙のように白い顔の中で、口唇と舌だけが、不釣り合いに、朱い。
 それが、殺意や破壊衝動を堪える時の、荒神の癖だ、ということを、荒野は、良く、知っていた……。
 荒神が本気で暴れ出したら、荒野程度の術者など、束になっても適わない。また、荒神のような厄介な存在は、できるだけ敵に回したくはない。
 それに、手持ちの情報を荒神に渡しても、こちらはさして損害を被らない……。
 そう判断した荒野は、内心で冷や汗をかきつつ、今までにわかっていることと、それに、それを元にした幾多の推測を、順を追って荒神に説明し始めた。

 全てを話し終える頃には、茅がせっかく入れてくれた紅茶が、すっかり冷めていた。
「……ふーん……。
 相変わらず長老たちは、回りくどいことやってんだねぇ……。
 なぁんだ。荒野君の所にくれば、仁明の居場所の手がかりでもあるんじゃないかと期待したけど、無駄足だったなぁ……」
 全てを聞き終えた荒神は、そういって大きく伸びをした。
 彼にとっては「仁明の居場所」を突き止めることこそが第一の優先事項であり、その他の、「茅の正体」などには、あまり興味がないらしい。
「……荒神さん。こっちも情報渡したんだから、そっちも知っていること、話してくれませんか?」
「うーん。ぼく、二宮の長といっても、名前だけだからなぁ……。
 君臨しても統治せず、っていうとかっこいいけど、実質、面倒くさいこと、全部他人任せにしているだけだし……。
 そういう細かい事は、ぼくなんかより弱っちい、他の二宮に聞いてよ……」
 要するに、茅の件に関しては、「荒神自身は関与していないが、他の二宮が関与している可能性はある」と、いうことらしい。
 もともと二宮は、血縁関係を重視する割に、内部での結束は緩く、命令系統などもあってなきが如し。「個々人がめいめい勝手に動いている」というあたり、野呂と共通する性質を持っている。
 だから、尋ねた荒野自身、もともとあまり成果を期待していなかった。

 荒神が「二宮の長」として内外に認められているのは、現在生存する二宮……いや、一族全体の中で、彼が抜きんでた戦闘力を持っている、ということしか意味しない。過去、二宮全体を統制した長がいないわけではなかったが、現在の「二宮の長」である荒神は、そうした支配体制を良しとはしない価値観の持ち主であった。
 だから荒神は、自分以外の二宮がどう動いているのか関心がないし、干渉する気もない。
 荒神の関心事は、もっぱら「自分より強そうな相手と戦うこと」であり……荒野が生まれる前から、一族全体から「最強」と目されている荒神は……もう十年以上も、ひどく退屈している……ということを、荒野はよく知っていた。
「……その点、君の父親の仁明は最高だったなぁ……彼がねぇやを奪っていった時、このぼくが、差し違える所だったんだぜ……」
 荒神は遠い目をして、そんなことを語りはじめる。
 荒神に師事していた頃、荒野が何度も聞いた思い出話で……また、その荒神の話しの中の仁明が、茅と出会うまで、荒野が唯一接することができた「父親像」、でもあった……。
 荒野自身も到底適わない荒神が、現在生存する人間の中で、唯一「対等」と認める、強力な存在……それが、荒野が抱いている、自分の父親へのイメージである。

 一通りの話しを聞き終わると、二宮荒神は急に荒野たちに興味を無くした様子で、「お年玉」といって、剥き出しのままの万札を何枚かづつ、荒野と茅に握らせ、そのままぶらりと、マンションから出て、何処かへと去っていった。

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彼女はくノ一! 第三話 (43)

第三話 激闘! 年末年始!!(43)

 翌日、香也は「とにかく元の、自分本来のペースを取り戻そう」と決意し、相変わらず気まずいままの才賀孫子との朝食を終えると、そそくさと庭のプレハブに向かった。灯油ストーブに日を入れた後、とりあえず、リハビリを兼ねてスケッチブックに鉛筆描きで、思いつくままに昨日、ショッピング・センターで見かけた人たちの全身像を簡単にスケッチしていく。大掃除だとかで数日絵筆を取らない状態だったので、手をならす必要も感じていたので、まずは感覚を取り戻すため、とにかくなにも考えず、出来るだけ早く手を動かす。一体につき五分以上かけず、当然、細部は書き込むことはできず、ぼんやりとした人物像をA4のスケッチブック一面に三体から五体くらい書き続けてページをめくっていくと、鉛筆の芯が紙を滑る感覚に、段々「暖まってきた」という感触を得る……。

 二時間ほどそうして、香也が「かなり調子を取り戻して来た」と自身を取り戻しかけた時、孫子に案内されて堺雅史と柏あんなの二人がプレハブに入ってきた。二人とも、ぎっしりと紙の束の入った封筒を持っており、どうやら、それが昨日話していたゲームの資料、ということになるらしい。
『昨日の今日で、随分と用意がいいな……』
 と、何故かそのままプレハブから出て行こうとしない孫子を含めた三人に折りたたみ椅子をすすめながら、香也は思った。
「……これが、昨日話したゲームのシナリオとか設定書とかになるんだけど……」
 と、香也に封筒を差し出しながら、堺雅史はプレハブの内部をきょろきょろと落ち着きなく見渡している。母屋には入ったことはあってもプレハブの中を見るの初めてになる柏あんなも似たような感じで、スチール棚に無造作に積み上げられた紙やキャンバスの「量」に、半ば圧倒され半ば呆れているような表情をしていた。
「……んー……でも、これだけあると……すぐに全部には目を通せないなぁ……」
 ずっしりと重い封筒を受け取りながら、香也はいった。基本的に面倒くさがり屋な香也は、早くも昨日「話しを聞く」と約束したことを後悔し始めている。
「あ。それ、たまたまあったハードコピーと、昨日、急いでプリントアウトしたものが未整理でごっちゃになっているから嵩張っているけど……未整理で、結構すかすかなんで、実際には、見た目ほどには時間がかからないと思う……」
 堺は、慌てて香也に説明を補足する。
 香也が最初の封筒を開けて中身を取り出してみると、ゲーム内のタイムシートや分岐の示しているらしいチャート、登場人物一覧の箇条書き、その他、断片的なアイデアなどのメモが混在していて、確かに、ぎっしりと文章が詰まっているわけではない。
 しかし、こういうのはある程度予備知識を持っている開発者間で用いられる資料をいきなり持ってこられても、香也にはほとんど理解できそうになかった。
 その旨を香也が伝えると、堺はそういう反応も予期していたのか、
「どこかに使えるPC、あります?」
 といって、上着のポケットからケースに収まった一枚のDVDを取り出した。
「そういうと思って、今まで完成している分、持ってきたんだけど……」
「……んー……パソコンなら、譲さんのと真理さんのがあるけど……」
 留守中に勝手に使って良いのかな? という躊躇いがあったため、香也の返答は歯切れの悪いものになる。
「わたくしのを使って貰っても構いませんわ」
 いきなり、それまで黙って見守っていた才賀孫子が、口を開いた。
「……ねー。
 みんながそっちにいっている間、わたしはこっちに残っててもいいかな? 狩野君、ここにある絵、見せてもらっていい?」
 そんなことをいいはじめた柏あんなを除いた三人が、母屋に向かった。

 その日、香也は初めて才賀孫子の部屋に入った。
 孫子の部屋には机と本棚、それにクローゼットなどの必要最小限の家具しか持ち込まれておらず、機能的ではあったが、同時にどこか寒々とした印象も受けた。
 孫子はノートパソコンを取り出し、机の上に置こうとして、手を止めた。
「……考えてみたら、三人だと、居間でみるほうが都合がいいですわね……」
 そういって、ノートパソコンを持って炬燵のある居間へと向かう。香也と堺も、それに続く。

 炬燵の上でノートパソコンを立ち上げ、堺が持ち込んだDVDをセットすと、自動的にゲーム画面が起動した。
「教室ぼっこ(仮)」という、ゲームのタイトルらしい文字列が中央に大きく表示されていて、その下に、やや小さめの文字で、start、configuration、save、load、と表示されている。
「まだ開発中だから、このタイトルも仮題だし、文字も、フォントを大きく表示させているだけだけど、完成した時はちゃんとしたスタート画面を作るよ」
 そういって、堺は、慣れた手つきで孫子のノートパソコンのキーボードを操作しながら、制作中のゲームの内容を説明しはじめた。堺が「start」を選択すると、黒一色の背景に、白いフォントがずらずらと並びはじめる。


よくある「学校の怪談」が、その学校にも伝わっている……。

 二年B組には、毎年、出席簿に記載されていない生徒が一人、必ず紛れ込む……。

 出席を取っても、点呼をしても、なにも異常はない。
 しかし、教壇から教室を見渡して、指さして数えてみると、明らかに、一人多い。

 その「いるはずのない生徒」が誰であるのか、いくら調べても決して判明することはない……。

 ただ、一年の間に、そのクラスに欠員が出た時のにのみ、その「いるはずのない生徒」は、出現しなくなる……。
 どうやら、欠員分の生徒に成り代わって、普通の生徒として実在しはじめるらしい……。


 堺が何度かエンターキーを叩くと、辛うじて「人間」と判別できる殴り書きの輪郭線が、左右に二つ、出現した。顔にあたる部分は、「へのへのもへじ」が書かれている。
「ね。今のところ人物の立ち絵は、こんな感じ。絵師がなかなか見つからないんで、このままでいくと、シュルエットだけとか、写真を加工して誤魔化すとか、そんな感じになっちゃう……」
 そして堺雅史は、ゲームの概要を説明しはじめた。

「みれば解ると思うけど、基本的な設定は「座敷ぼっこ」のパクリ。
 そのクラスに転校してきた生徒が、情報を集めたり色々な人に話を聞いたりして矛盾点を探したりして、クラスの中にいるはずの「教室ぼっこ」を特定しようとする、一種の推理ゲーム……に、なるのかなぁ……。

 制作者の中にミステリが好きな人や設定作るのが好きな人が何人かいて、わいわい話しているうちに、
『これ、実際に作ったら面白いんじゃないか?』
 ってことになって、ここまで作っちゃったんだけど……。

 ただ、みんな凝り性だから……ほら、この封筒の中身も、ほとんどキャラクターの設定集だし……。
 これだけ登場人物が多いと、流石にヴィジュアル面でもキャラの差別化も欲しくなって、四十人くらいの顔を明確に描き分けられる絵師を捜していたところで……」

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髪長姫は最後に笑う。第四章(20)

第四章 「叔父と義姉」(20)

 同行した十名のうち、松島楓、才賀孫子、加納茅の三名は商店街のクリスマス・イベントで、荒野自身もマンドゴドラのディスプレイに登場しているので、地元ではかなり顔を知られてしまっており、実は、来る途中でも結構指をさされたりしたのだが、大人数でわいわい騒ぎながら固まっているせいか声をかけられたりすることもなく、荒野たちに気づいた人々に遠目にひそひそと囁かれる程度ですんだ。
 本格的に神社の鳥居が見えるあたりまで来ると、人がぎっしりと詰まってのろのろ前進しているような感じになって、荒野たちの存在に気づく余裕がある人も、ほとんどいなくなった。
「……いつもこんなもんなんすかぁ?」
 ゆっくりした速度でもなんとか賽銭箱の方に前進していく群衆の一部になりながら、荒野は一緒に来た人たちに質問する。
「うん。こんなもんだ」
「もう少し近づいたら、適当にお賽銭投げて、おみくじでも引いて帰ろう」
 口々に、荒野に答える面々。
「え? お賽銭、って、神様にあげるお金でしょ? それ投げるって、失礼なんじゃないんですか?」
「……言われてみれば、放り投げたり、投げ入れたりするもんで……畏まって捧げるもんじゃないよなあ、お賽銭って……なんでだろ?」
「何でだか知らないけど……」
 飯島舞花は、少し前で賽銭を投げて柏手を打っている人たちを指さした。
 舞花は、荒野の的を射ているのか突拍子もないのか判断がつきかねる質問に答えるのを楽しみはじめていた。
「見てみろ、おにいさん。ああやってお金放り込んで、手を合わせて、お願い事するのが日本の常識なんだ。
 今年のわたしの場合は、受験だな。特に願い事ないが場合は、自分とか家族の新年の無病息災、とか、無難なことをお願いする」
「……アバウトなんだな……」
「うん。アバウトだ。もう少し近づいたら、自分でも、実際にやってみる」
 祈願を終えた列の前の人々が次々と柏手を打っては左右に分かれてちっていく。これだけ多くの人が狭い場所にひしめいていて、特に誰かに誘導されているわけでもないのに割と秩序だって動いているのが、荒野には、興味深かった。
 神事、ということから連想される厳粛さはなかったが、代わりに、猥雑さ、までは行かない適度な賑わいと活気がある。
 やがて荒野たちも賽銭箱の前まで押し出され、荒野と茅も、周囲の人々の見よう見真似で硬化を放り込んで柏手を打ち、手を合わせて数十秒瞑目した。

『……願い事、かぁ……』
 荒野は「この平和がいつまでも続きますように」と、かなり本気で祈った。

 やがて、賽銭箱の前から離れ、少し密度が薄くなった人混みの中を進みながら、「なにを願ったのか?」という話題になった。
 狩野香也は「家内安全」、羽生譲は「商売繁盛」、樋口明日樹は飯島舞花と同じく「受験」、才賀孫子と樋口大樹と栗田精一が同じく「無病息災」、茅と松島楓も同じく「例年もまたここにお参りにこれますように」。
 最後に荒野が「平和祈願」と真面目な顔で明かすと、何故か、みんなに笑われた。

 荒野にとって、「お賽銭」に比べると、「お神籤」のほうはまだしも分かりやすかった。こうしたジンクスをアイテム化した習慣は、意外と広汎に見られる。
「吉」とか「凶」とかの後に、どうにでも解釈のしようがある文章が書かれているのも、割と「アリガチ」だな、と、思う。星占いとかの文章と同じようなもんだな、と、荒野は納得した。
 全員が籤を引いて、その内容に大げさに一喜一憂したが、どうした加減か荒野だけが「大凶」を引いた。
「まあ、そう気にすることもないさ。こうして枝に結ぶと、良い卦はかなって悪い卦は避けられる、ともいうし……」
「……やっぱり、アバウトだな……」
「うん。アバウトだ、アバウトだ」
 荒野の釈然としない表情を確かめ、飯島舞花は、やはり面白そうに笑った。

 狩野家に帰って、炬燵にあたりながらどうでもいいようなテレビ番組をみんなで見てくつろいでいると、すぐに時間はたち、どのチャンネルでも各地の寺院の鐘を突く映像を延々と流しはじめた。
『なるほど、これが「ジョウヤノカネ」か……』
 と、荒野は納得する。民法も国営放送もいっせいに同じような情景を放映している、ということは、この鐘付きが国民的な関心事なのだろう、と、荒野は解釈した。
 ……なんでこんな退屈な映像を日本国民がありがたがるのか、という肝心の理由の部分は、依然として謎のままだったが。
 テレビ局が積極的に放映している割には、真面目にテレビをみている者はおらず、狩野家の居間にいた面々は、おのおの好き勝手にしゃべったりくつろいだりしている。
 やがて、カウントダウンが始まり、全員が居住まいを正す。そして、午前零時の時報とともに全員が「明けましておめでとうございます」と唱和し、荒野と茅もそれに従った。
「やぁやぁやぁ。明けました明けました。
 ということで、去年頑張ったよい子のみんなに、お年玉」
 そんなことをいいながら、羽生譲はどてらの袖の中から白い封筒の束を取り出し、一つ一つ封筒に書かれた名前を確認しながら、荒野たちに配りはじめた。
 ただし、全員に、というわけではなく、飯島舞花と栗田精一、それに、樋口大樹の分の封筒はなかった。
「ね、ね、ね。おねーさん。
 ……わたしたちの分は?」
 三人を代表して、飯島舞花が質問する。
「……君たちは、うちの同人誌のお手伝い、してくんなかったからなぁ……」
「お年玉じゃないじゃん!」
 その場にいたほぼ全員が、一斉に羽生譲に突っ込んだ。

 その羽生譲は、「お年玉」を配り終えると、「バイト、バイト」とすぐに外出の支度をし始める。
「十二月に休ませて貰った分、一月で挽回しないとなぁ……」
 バイト先のファミレスではかなりの古株である羽生譲は、夏と冬の一時期、自分の都合で長期にわたって仕事を休むことがあるかわりに、それ以外の週末や連休には率先してシフトを入れている。今度の正月も、年末に休んだ分、かなりぎっしりとファミレスの仕事に入る予定だという。
 羽生譲の退去と同時に、荒野と茅も狩野家を辞することにした。他の面々はどうもこのまま泊まるつもりらしい。

 荒野たちが住む部屋の前に、羽織袴姿の男が座り込んでいるのに気づいた時、荒野の背に戦慄が走った。
 荒野には苦手な人間が三人いる。そのうち一人は自分自身の血縁者である加納涼治、もう一人も血縁者で、今、すぐ側に近づくまで、荒野がその存在を察知できなかった人物……。
「……茅、気をつけろ!
 あいつ、この世で一番厄介な人間だ!」
 そういって茅を自分の背に隠す荒野のこめかみに、冷や汗が浮かぶ。
 荒野が今までその気配を感じ取れなかった、ということは、当然、相手は一族の関係者なわけであり、その男は、荒野が知る限り、一族の中でも一番タチの悪い相手だった。
「……それはないなぁ……」
 いつの間にか、荒野に気づかれずにすぐ目前に立っていた、「最強」とも「最凶」とも称されるその人物……二宮荒神は、荒野に抵抗する間も与えず、がばり、と、両腕で荒野の体を抱きしめ、満足そうに目を細め、ずりずりと頬ずりをする。
「……こうぅやくぅーん……会いたかったようぉ……。
 日本に来てたんなら、連絡してくれてもいいじゃないかぁ……」
 荒野の背に、ぞわぞわぞわ、と悪寒が走る。全身に鳥肌が立っているかも知れない。

 そんな荒野の様子にもかかわらず、鼻にかかった声でそんなことをいいながら、いつまでも、荒野に対して頬ずりを続けるその男は……一族の中でも「最も凶暴」とされる「二宮」の現在の長であり、同時に、荒野の母の弟、つまり叔父にあたる。一時期、荒野の体術の師範だった時期もある。ついでに、「荒野」の名前も、彼の名から一字をとってつけられたもので、いわゆる、名付け親にもあたる。

 因縁浅からぬ相手……ではあったが、荒野は、その、二宮荒神という人物を、大の苦手としていた。

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彼女はくノ一! 第三話 (42)

第三話 激闘! 年末年始!!(42)

 香也と柏あんな、それに、柏の連れだった堺雅史という少年の三人は、たまたま目に入った「安くてまずい」と評判のファースト・フード店に入った。
 そこで三人分の飲み物だけ注文し、ボックス席に座る。
「狩野君は、絵を描くのがうまくて早い、って、あんなちゃんから聞いたんだけど……」
「それと、いろいろな種類が描ける」
 自己紹介もそこそこに、堺雅史が香也に問いかけ、柏あんながそれに補足する。
 どの程度のスキルを持っていれば「描ける」と言い切ることができるのか、言葉だけでは判断できない。が、柏あんなとは数日前、ともに同人誌の制作をした仲でもある。香也の実力のほどは目の当たりにしているわけだし、誤解の余地も、そんなにないだろう、と、香也は考える。
「……んー……描ける、といえば、描けるけど……」
 問題は、わざわざ「ちょっと話しがあるから」と香也を引き留めた彼らが、香也になにを期待しているか、今の時点ではわからないことなのだが……。
 香也の答えを聞くと、香也と同じ学年だという堺雅史は、隣に座った柏あんなと顔を見合わせて頷き、
「……実は……」
 と、肝心の用件を切り出した。

 堺雅史はパソコンやネットゲームに詳しく、将来はそっち方面の仕事に就きたいと、今から思っている。その練習のため、独学で簡単なプログラムとかスクリプトを組むことがあり、完成品の幾つかはフリー・ソフトとしてすでに公開している。
「……それで、同じような同年代の素人プログラマの人たちと、ネット上での付き合いも、自然に始まるようになって……」
 チャットやソーシャル・ネットワーキングで連絡を取り合ううちに、なんとなく、「共同で、ゲームでも作らないか?」という話しになって……。
「作ろうとしているのは、簡単な、分岐があるだけのアドベンチャー・ゲームで……」
 スクリプトやテキストを書く者はいても、それに絵を担当する者が、なかなか見つからない、という……。
 ようするに、「その絵を、香也に描いてくれないか?」という、打診、だった。

 ゲームに詳しくない香也が「アドベンチャー・ゲームって?」と口を挟むと、「……テキストや絵を表示しながら進む、分岐のある小説みたいな……」と堺が説明しかけ、「分かりやすくいうと、パソコンでやる紙芝居みたいなやつ」と柏が補足した。
 その説明を聞いて、「ああ」と香也は頷いた。そういうのなら、少し前、「同人の参考になるから」、と羽生譲にすすめられて、少しだけやったことがある。
「……一つだけ、途中までやったことがある……」
 香也がやったのは、昭和五十八年、過疎化の進む村に引っ越してきた少年が、分校みたいな小さな学校で楽しいクラブ活動をする……というシュチュエーションから始まるゲームだった。羽生の話しでは、やはり同人として制作されたもので、そのせいか背景が写真を加工したものだったり、絵やテキストも荒削りな部分が目についたりしたが、実際にプレイしてみるとそうした些末な短所はあまり気にかからず、あまりそうした物語に興味を示さない香也でさえ、内容にぐいぐい引き込まれた……。
 ……途中から、話しの進行がどんどん暗くて血みどろな方向にいってしまったので、香也は中断してしまったが……。
 香也がそのゲームの事を話すと、堺もそのゲームのことを知っていて、
「あ。あれは有名だよね。
 あそこまで凄いのはできないし、ぼくたちがやるのは、もっと短いものを考えているけど……」
 堺のはなしでは、テキストとスクリプトは着々と出来上がっているけど、その背景につける絵を担当する人物が、なかなか捕まらない、ということだった。
 それで、香也が目をつけられたわけだが……。
「……んー……でも、パソコン関係の絵はやったことないし、全体でどれくらい描けばいいのかわからないし……」
 香也はそういって、即答を避けた。
 香也は、何年か羽生譲と同人誌を制作している経験から、「まず最初に、全体の作業量を把握する」ということを学んでいる。香也にしてみれば、自分こなせない作業まで、無理に引き受ける必要もないのだった。
「……うん。絵のほうは、線画を貰えれば、こっちで取り込んで着色できると思うんだけど……やっぱりもっと詳しい説明をしないと、わかんないか……」
 今はなんの用意もしてないので、今度改めて、資料をもって説明したい、と、堺は香也にいった。
「……フリーで配布するつもりだから、羽生さんがやっているのみたいに、儲かるわけではないけど……今まで上がっているシナリオみると、かなりいい出来になっているので、資料だけにでも目を通して欲しい」
 堺はそういう意味の事を香也にいってから、「今度、改めて時間作って貰えるかな?」と、香也の目をまともに見据えて、尋ねた。
 香也は、堺の目をみて、「ああ。この人は、本気でいいものを作ろうとしているんだな」と納得し、「実際に引き受けられるかどうかは、わからないけど……」とあらかじめ断りを入れた上で、「冬休み中はたいてい家にいるから、いつでも来て貰えれば……」と、念のため、自宅の電話番号を教えた。香也の家の場所は柏あんなが知っている筈だし、香也は携帯電話を持っていなかった。
「じゃあ、こっちも、もっと準備してから……」
 香也の家を訪ねる、と堺はいった。

 自宅に帰る、という堺と柏の二人とは、ファースト・フードの前で別れ、寒空の下、一人残された香也は、「……帰るか……」と呟いた。二人に捕まったおかげで適当に時間がつぶせたし、他に行く当てがあるというわけでもないのだった。
 すでにどっぷり日が暮れていて、外はかなり寒い。香也は来たときのように歩く気にもなれず、出発する寸前だった自宅方面行きのバスに飛び乗る。
 自宅に戻ると、用意した夕食に手もつけず、炬燵に陣取り参考書を開いていた才賀孫子が待ちか構えていた。
「……遅くなるならなるで、連絡してくれるとありがたいのですけど……」
 参考書から目を上げ、平坦な口調でそういってじろりと睨まれると、内心では「……先に食べててもいいのに……」とか思いつつ、口では、「……んー……ごめん……」とかあやまってしまう香也だった。
 その時、孫子とともに食べた夕食は、香也が緊張していたため、あまり味がよくわからなかった。
 孫子のほうも、いつになく硬い表情をしている香也の様子に気づいているのか、いつも以上に口数が少なく、二人きりの食事は静まりかえったままで進行した。

 その夜、香也は早めに床に入ったが、なかなか寝付けなかった。

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髪長姫は最後に笑う。第四章(19)

第四章 「叔父と義姉」(19)

 実質的に留守を預かっていた才賀孫子によると、楓たちの留守中、楓宛に荷物が二つ届いていた、という。一つは荒野がメーカーの直販サイトで手配しておいた携帯電話、もう一つは、加納涼治から送られてきた、振り袖……。
「あなた、なんだかんだいって、加納から大事にされているんじゃない?」
 孫子は預かっていた荷物を楓にわたしながら、そういった……と、目撃していた。羽生譲は語る。
「くノ一ちゃん、荷物開けてからすぐに抱きしめて部屋に持ってたから、ちらりとしか見てないけど……かなり高そうな生地だったぞ、あれは……」
 楓は、それを初詣に着ていくといって、自分にあてがわれた部屋に戻っていった。
「あー。茅にも送られてきたなぁ……振り袖……。
 茅、こっちも一旦帰って着替えて来ようか?」
 茅が頷いたので、荒野と茅は集合時間を簡単に打ち合わせた上で、一旦自分たちのマンションに帰ることにした。

 約一時間後、振り袖に着替えた楓と茅の姿を見た一同は、「似合う」とか「可愛い」とか「綺麗」とか、口々に称賛し始めた。口調からいっても、まんざらお世辞でもなさそうだ、と、荒野は判断する。
 荒野から見ても、光沢のある布地の和服に着替えた二人の姿は、きらびやかで、予想以上に様になっていて……まるで、普段知っている二人とは、全く別人のようにみえた。
「……ここまで似合うとは思わなかったな……こうなると、髪をセットしていないのが惜しくなる……」
 普段、自分のペースを崩すことがない羽生譲にしてからが、呆気に取られて二人の姿に見入っている。
「……いや、髪なんかどうでも……このままでも、全然問題ないっすよ……」
 荒野は、羽生譲の言葉にそう応じた。
「はは。確かに。
 どうだ。荒野君もこーちゃんも、二人のこと見直したろ?」
「……んー……」
 香也はいつもの通り生返事だったが、二人の姿を目に焼き付けるかのように、視線を二人から外そうとしなかった。
「で、どだ? 茅ちゃんとくノ一ちゃんのほうの感想は?」
「……こんな綺麗な服着たことないですから、もうそれだけで胸がいっぱいで……」
「……この服、動きづらいから、今の茅にはちょうどいいの」
 ……どうやら茅は、今朝の運動で酷使した体のあちこちが、すでに痛み始めているようだった。

 そんなやりとりをしながら、荒野と香也、才賀孫子、羽生譲、樋口明日樹、樋口大樹、飯島舞花、栗田精一の十名は騒がしく夜の町に繰り出した。近所の神社までには、気のせいか、いつも夜より人通りが多く、若干、町全体がざわついているように、荒野には思えた。
「トシコシ」といって、夜通し起きて新年を迎えるのが、日本のニューイヤーの祝い方だと説明された。
 マンションに帰る途中、どこからか鐘の音が聞こえてきた。その音について蕎麦にいる連中に尋ねてみると、「ジョウヤの鐘」について断片的な説明が幾人もの口から同時に返ってくる。
「おれも、茅なみに日本のこと知らないな」と、荒野は思った。
 会話に不自由しない、ということと、生活文化に通じている、ということは、全く別だ、と。
『……茅もそうだが、おれ自身も、まだまだ学ばなければならないことが多い……』
 と。

 その神社は狩野家から歩いて十五分ほどの場所にあった。ほとんど地元の人間しか参拝にいかないような小さな神社だが、それでもすでに人であふれかえっていた。
「……いつもこんなもんなんですか?」
 基本的にこの周辺はこれといった特徴もない地方都市で、その上、繁華街でもない場所にこれほどの人が集まっている、という事実は、荒野を驚かせた。
「……ここに来ている人たちは、みんなこの神社に祭られている神様を信仰している人たちなんすか?」
 幼少時、どの教会に通っているかで人間関係が色分けされるような土地で育った荒野は、そのような解釈の仕方をする。
「……お兄さんは面白い見方をするなぁ……流石は外国育ち……」
 飯島舞花は半ば呆れながらも、
「うーん……中には氏子さんもいるかも知れないけど……信心とか、そういう殊勝な理由でここまで来ている人は少ないと思う……」
「そう。日本の神道は、ちゃんとしたカルトとはちょっと違うような気もしますし……」
 才賀孫子が、後に続ける。
「……『かなわぬ時の神頼み』……厄除けとか、おみくじとか……本気で信じている、というよりは、もっと曖昧で……一種の気休め程度、と、わかった上で来ているわけで……」
「やっぱ、習慣とか行事だよな、感覚的に一番近いのは……」
 羽生譲も、自分なりに説明してみる。
「難しいことはよくわからないけど、要するに、昔っからやってることで、今になってやめる理由も特にないから、ずるずるーっと続けているようなもんで……一種の惰性だと思うよ、初詣とかお正月の行事というもんは……」
「第一、本当の宗教なら、毎年違う神社にお参りに行くような人とか、受験とか厄除けの時だけお詣りに来る、なんてことがあるわけないし……今、ここに来ている人たちの中にも、キリスト教徒として洗礼を受けた人たちや、熱心な仏教徒も、絶対混ざっていると思うし……」
 樋口明日樹も、自分の知識を検索して、荒野に説明をしようとする。
「……わたしたち、キリスト教徒でもないのにクリスマスはお祝いしちゃうでしょ?
 葬式はお寺でやって、結婚式は教会であげる人、なんて、少なくないし……。
 日本って、宗教とかそっち方面に関しては、すっごく寛容……というより、かなーり、いい加減な国なの……」
 そんな説明を聞きながら荒野は、
『……やはり、会話に不自由がなく、いくらコミュニケーションに不自由しなくとも、自分はこの国ではガイジンだ……』
 と、思った。
 いまだに、思わぬ所で自分の「この国への無理解」の証拠を、突きつけられることがある……。

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彼女はくノ一! 第三話 (41)

第三話 激闘! 年末年始!!(41)

 とりあえず香也は、上着だけをひったくるように手にして、逃げ出すように家から外に出た。……いや、実際に、孫子から逃げ出したのだが。
 ここ数日、大掃除にいそしんでいたし、食事に必要なものも含め、必要なものは全て孫子が買いにいっていたので、香也にとっては久しぶりの外界である。
 予想以上に冷たい風に頬をなぶられ、香也は徐々に頭を冷やしていった。

 ……冷静に考えてみれば、あそこで逃げ出す必要も、なかったような……。

 それでもやはり、まだ香也は怖かった。
 孫子が、というより、自分が、他者から好意を向けられる、ということ事態が……。
『……結局ぼくは、まだまだ臆病者なんだろうな……』
 このまましばらく一人で歩いて、頭の中を少し整理してみよう、と香也は思う。そんな作業が、今この時点で、必要な気がしてきた。
 思い返してみれば、最近身の回りが妙に賑やかになって、以前に比べれば一人になる時間が格段に減っている。
『……そう……。
 こんな風に一人で、あてもなく歩くのって、久しぶりだし……』
 あてもなく、と思いながらも、香也はなんとなく、ショッピング・センターのほうに足を向けている。商店街の方は生活必需品はだいたい揃っているが、そのかわり趣味的な物を売る店がほとんどない。ショッピング・センターまで、徒歩で行くには距離があったが、そのかわりマニアックな店舗がテナントとしていくつも入っているし、席数は少ないながらもシネコンも併設されている。国道沿いにあり、商店街以上に広い範囲から客が集まっているので、喧噪に紛れて考え事をするのに向いている。
 それに、家からかなり歩くので、その間、考え事ができる。

『……才賀さん、呆れているだろうな……』
 孫子は別に、例えば、愛の告白とか、そんな特別な事を香也にいったわけではない。彼女の性格から考えても、単純に、お互いにとって合理的な提案をしてきただけだ……と、香也は判断する。
 ただ、「彼女には嫌われている」という思いこみを香也は持っていた。そのせいで、不意に示された好意に、香也がうまく対応できなかっただけで……。
 そう。多分、それだけのことだ……と、思う。

 やはり自分は不器用で、他人とのつき合いに慣れていない……香也は、そう再確認も、した。
 狩野順也と真理、羽生譲、樋口明日樹……それに、松島楓。
 ざっと思い起こしてみても、自分がどうにかこうにかまともなつき合いができている人は、向こう側から香也に対して歩み寄って来て、その上、香也に「合わせて」くれる人ばかりで……。
 だから、香也のような欠落が多い人格でも、なんとかつき合っていけている……。
 こと、対人関係に関する限り……香也は、常に受け身だった。
 誰かが近づいてきても、常に「どうやって距離を取るか」とか、そんなことばかり、考えてしまう……。

 この間風呂場で、裸の羽生譲に抱きつかれながら、
『……刺されないようにしろよ』
 といわれたことを、不意に思い出し、どきりとする。
 この自分が……深い関係を結ぶ対象として他人に選ばれ、また、他人を選ぶ立場にたつ、ということが……本当に、あるのだろうか?
 あまりにもいびつなこの自分が、誰かに必要されることもあまり想像できないし……それ以上に、香也自身が、自分の意志で、誰かを積極的に求める日が来る……ということが、香也には、まず、想像できない。
 香也は、異性うんぬんとかいう以前に、自分には、対人関係面ないしは情緒的な欠落があるのではないか……と、そんなことを思っている。
『……刺されるも、なにも……』
 香也は心中でため息をついた。
『……女性とつき合うとかそういうの、ぼくには向いていないよ、譲さん……』
 香也とて若い男性であり、当然、性欲はある。それを持て余している部分も、ある。
 しかし、それ以上に……香也は、「他人」が怖い。
 異性がどうこう、という以前の問題だと思う。相手が誰であれ、「女性とつき合う」なんて、自分には荷が勝ちすぎる……と、香也は思っている。

『……やはりぼくは、不器用な、臆病者だ……』
 堂々巡りにも似たもつれた思索を展開したあげく、香也がそんなありきたり、かつ、あまり意義のない結論を得た所で、どうにかショッピング・センターに到着した。
 年末のショッピング・センターは家族連れやカップルが多く、香也が漠然と想像していた以上に賑わっていた。ここには香也が時折利用する画材屋もあり、その画材屋に用事がある時は大抵寄ることにしている、洋書も扱っている書店もある。つまり、趣味的だったりマニアックだったりするショップをテナントとして内包しているこのショッピング・センターは、この地域でそれなりの影響力を持つ文化発信地として機能していた。
 いつも香也は、ここで画材を買った帰りに書店に立ち寄り、洋書のイラスト集や写真集などをぱらぱらと立ち読みしてから帰る。その日も、同じようなコースを辿った。
 持ち合わせがなかったので実際に買い物こそしなかったが、画材屋に寄って、東京から帰ったら羽生譲から貰える筈の報酬で買えそうなものを、頭の中でリストアップする。その後、書店に寄って洋書のビジュアルがメインの書籍を適当に手に取り、ぱらぱらとページをめくる。
 が、いつもと違って、ページの上にある絵に対して、一向に興味が湧かない。どうにも集中力が散漫になって、目は紙の上を見ているが、それが頭の中にまで届いてこない感じがした……。
『……やはり、帰るかな……』
 自覚している以上に、今の香也は混乱しているらしい……。
 そう思って手にしていた本を戻し、体の向きを変えようとすると、珍しいことに、誰かに肩を叩かれた。
 極端に知人や友人の少ない香也が、出先で肩を叩かれる、などということは、今までに経験したことがない。
『え?』っと思って振り返ると、そこに、香也と同じくらいの年頃の少年と少女の二人組が立っていた。二人とも可愛らしい顔立ちをしていて、少女のほうには見覚えがあるような気がしたが……人の顔を目に焼き付けるのは得意でも、名前のほうを覚えるのが不得手な香也は、とっさに彼女の名前を思い出せない……。
 ついこの間、何日も一緒にいた相手なのだが……。
「狩野君、今日は一人?」
 彼女……柏あんなは、香也にそういった。
「狩野君のこと話したら、まぁくん……堺君が紹介してくれって……」

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髪長姫は最後に笑う。第四章(18)

第四章 「叔父と義姉」(18)

 狩野香也と羽生譲が車庫のほうに出迎えに行く。真理が今回のような長旅をすることは年に何度かあり、二人ともこうした際の対応に慣れていた。香也と羽生ががらがらとキャスター付きのスーツケースを引きずって玄関口に現れ、その後に真理が続く。
「あら、お客様? それも、こんなに……」
「まーまー、真理さん。詳しい話しは、後々。
 お疲れでしょうからまずはお風呂にでもはいって、ゆるりとくつろいでかぁーさい……」
「それに……なんか、家の中がかなり片づいている気がするんですけど……」
「あー。それねぇ……ソンシちゃんとこーちゃんが、二人で隅から隅まで大掃除してくれたようで……」
「……二人で?
 その……楓ちゃんは?」
 羽生譲が慌てて自分の口を押さえた時は、すでに手遅れだった。真理はがっしりと羽生譲の手首を掴んでいる。
「譲さん。
 あなたまさか……楓ちゃんまで、東京に連れ出したりは……して、いないわよねぇ……仮にも、よそ様にお預かりした年頃の女の子を、こーちゃんと何日も二人っきりに……なんてこと、していないわよねぇ……。
 そうね。お客様も大勢いらっしゃるようだし、ちょっと向こうの方で詳しいお話、聞きましょうか……」
 ……ずるずるずる……。
 羽生譲は硬直した笑顔の狩野真理に引きずられ、奥の部屋へと姿を消した。

「……まあ、あれは、羽生さんの墓穴だな……」
「……んー……そういや、譲さん、真理さんに留守を任されていたんだっけ……」
「自業自得ね」
 口々にそんなことを言い合うギャラリーたち。
「……で、ソンシちゃん。実際の所、どうなの? 何日かこっちのこーちゃんと二人きり暮らしてみて、本当になんか間違いとかなかったの?」
 飯島舞花が水を向けると、
「ありません!」
「ありません!」
 何故か、当の才賀孫子と同時に、樋口明日樹も叫ぶ。
 もう一方の当事者、狩野香也は、ぶんぶんぶん、と激しく首を横に振った。
 全員の視線が、樋口明日樹に集中する。当事者が返答するのはわかるが、樋口明日樹は当事者ではない……はずだった。
「……え……あ……いや。
 狩野君の様子みに来た時、そんな雰囲気じゃなかったし……」
「……ねーちゃん……ひょっとしてそれって……ここん家にに泊まった日のこと?
 いや……ねーちゃんがそれでいいならいいけどさ、こんなぽやーっとしたの、どこがいいの? ってか、こんなのさっさと押し倒しちゃえば一発でケリつくと思うけど……」
「だから! 人前でそういうこといわない!」
 明日樹は弟の大樹のこめかみに両手の拳を添え、ぐりぐりと力を込めて捻りこむ。
「……香也様ぁ……」
 松島楓も、香也のそばに来てすがりついている。
「本当の本当に、あの女にへんなことされてませんかぁ……」
「ないよ、そんなの!」
「してません!」
 今度は、香也と孫子の声が重なる。才賀孫子の目尻がつり上がっている。
「わたくし、あなた方と違って、そんなに殿方の趣味、悪くありませんの!」
「わはは。こっちのこーちゃんはモテモテだなあ。もう一人のこーちゃんは妹一筋なのに」
 さりげなく加納兄弟に対する不穏な印象を煽ってから、飯島舞花は炬燵から出て、立ち上がった。
「さて、そろそろ蕎麦、こねてみようか。初めてだけど、マニュアル通りにやればなんとかなるだろ……」
 ほとんどの者が蕎麦を打つ場面など間近にみたことがないので、物珍しさでぞろぞろついていく。
 飯島の父親が通販で買った、とかいう蕎麦打ちセットは結構本格的で、臼の他に蕎麦粉をこねるための木製のボールも付属していた。もっとも、あくまで「家庭用」なので、臼もボールもそれなりに小さいサイズだったが。
「前々から思ってたけど、どうして男って中高年になると蕎麦を打ちたくなるのかなあ……。
 そんなに蕎麦好き人口って多いと思わないけど……」
「こういうセット買ったはいいけど使ったことない、うちの親父みたいなミーハーなのがほとんどじゃないのか、それって……。
 安直なイメージというか……」
「蕎麦って立ち食いとか、あんまりいいイメージないもんな……打ちたてはうまいって話しだけど、そんな店、滅多に食いにいかないし……」
「つなぎに少し小麦粉入れる、って書いてるなぁ……十割蕎麦って、家庭では無理なんか?」
「さぁ? 試しにやってみれば……」
 わいわいいいながら交代で、蕎麦粉をこねたり、こねた蕎麦粉を棒で伸して細く切ったり、とかいう作業を行う。
「……うーん……ちょっと作り過ぎちゃったかなあ……最初だから、適量がわかんなかった……」
 和気藹々とみんなで作業にいそしんだ結果、蕎麦の生麺が、どーんと山盛りになってしまった。
「……まあ、蕎麦はそんなに腹に溜まらないし、人数もいるから……なんとか、なるだろ……。
 じゃあ、いよいよ茹でまーす!」
 まずは一掴み、ぐらぐら煮えたっぎったお湯に放り込む。一度に大量に麺をいれると、お湯の温度が下がって風味が落ちる……と、マニュアルに書いてあった。
 舞花は適当にゆがいたところで笊に取り出し、流しに待機していた栗田精一に渡した。同時に、すぐに次の一掴みを湯の中に放り込む。
 栗田は一通り水洗いをしてからよく水を切り、用意していた、平皿の上に笊を乗せたものの上に、蕎麦を置く。
「とりあえず、一人前。最初は誰が味見する? 誰でもいいから、延びる前に食べた方がいいよ。どんどん茹でるから」

 できあがった蕎麦は、太さが不揃いだったりしたこともあり、決して「最高ーっ!」と手放しで称賛できる味ではなかったが、「挽きたて、打ちたて、茹でたて」で麺の色つやがよく、ひとくち口に入れただけで、ぷん、と蕎麦の風味が鼻腔に満ちた。程良く歯ごたえがあるのも、いい。
「やっぱ手作りだと、立ち食いやインスタントと全然違うのな」
「当たり前でしょ」
「なんかこう、口に含んだ瞬間、『そばーっ!』って感じがする……」
 全員でそんなことを言い合いながら、茹であがる端から蕎麦をすすっているうちに、若干やつれたようにみえる羽生譲が戻ってきて、少し間をあけて、風呂上がりの狩野真理も居間に戻った。
 そんなこんなで当初こそ「作りすぎたかな?」と思った蕎麦は、あっという間になくなた。

「……うーん……うまかったぁ……」
 羽生譲が自分のおなかのあたりを撫でながら、そんなことをいう。もともと引きずる性質ではないので、先ほどの真理の叱責の後遺症は、あまり見られない。
「……そっかぁ……今年からは、人数結構集められるんだよなぁ……正月、久々にあれやるかなぁ……」
「……あれって?」
「あー。真理さんなら知っているか。車庫の奥の方に放置している、あれ」
「あー! あれね! 確かにあれ、ある程度人数揃わないと、使えないわよね!」
 この家の大人二人がしきりに頷きあっている。
「なんすか、それ?」
「うーん……内緒。
 日本にいなかったカッコいいほうのこーちゃんとかは、多分、未体験だと思う」
「それよりさぁ。そろそろみんなでお参りいこうか? ちょっと早いけど、もうどうせ人、出ているだろうし」
「お参り?」
「初詣。日本の習慣? 風物詩?
 とにかく、年末年始に近場とか有名な神社にいって、一年の無事をお祈りするの」
「……ああ……なんか昔、ニュースとかで見た覚えがあるような……」
「……カッコいいこーちゃんは、妙な所で日本の生活に疎いよなぁ……。
 楓ちゃん。加納さん家のおじいさまから送っていただいたの、早速お披露目するチャンス到来だぜ!」

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彼女はくノ一! 第三話 (40)

第三話 激闘! 年末年始!!(40)

「ええと……今日、二十九日だったけ?」
 大掃除を終えて一息ついた所で、樋口明日樹は携帯の画面を確認した。
「そっかぁ……じゃあ、今日は帰らなくちゃ……両親が今日から旅行に行く予定だから、大樹のご飯作らないと……」
 そういいながらも、明日樹はなかなか腰を上げようとしない。
「なんなら、あなたもこっちに越してくる?」
 孫子が、珍しくそんな話しを樋口に振ってくる。
「そんなこと、できるわけないでしょ。うち、両親とも健在で、こっちにお世話になる理由ないし……。それに……たしかにこの家、居心地がいいけど、でも、それだけだと……なんか違う、とも、思うし……。
 ね。才賀さんの家はお金持ちなんでしょ? いきなりこんな庶民の家に放り込まれて、不自由だと思わないないの?」
「たしかにお金はありましたけど……その、才賀は、かなり特殊ですから……」
 年端も行かない子供にナイフ一本渡して未開地に数十日以上放り出す、などという「教育」を普通にやられている孫子は、曖昧に言葉を濁すしかない。
「これでもわたくし、全然甘やかされておりませんのよ……」
 軽く眉をひそめて肩をすくめる。そんな仕草が気障に映らない風貌を、孫子は持っていた。
 たしかに実家の才賀は何代も続いたお金持ちで、自分はそこの令嬢……に、あたるわけだが……世間一般でいう、いわゆる「セレブ」とか「深窓の令嬢」と同一視されると、かなりの違和感を覚える孫子であった。
「……ふーん……まあ、どんなことろでも、事情はあるか……」
 明日樹は、炬燵の天版に突っ伏して、今度は香也に話しを降る。
「ね。狩野君はどう? この家、やっぱ居心地、いい?」
「……んー……この家、というよりも……」
 香也は、なにをいうにも、大体最初に言いよどむ。
「……真理さんや、順也さんが、好きにさせてくれるから……気楽、ではある……と、思う……」
「順也さん、狩野君に英才教育とかしるんじゃないの?」
「しないしない。
 順也さん、『絵なんて、描きたいやつが勝手に描くもんだ』っていってるよ」
 実際、香也は職業画家である順也に指導とかをしてもらった覚えが、見事にない。
 子供の頃、ちょっと目を離した隙に、香也の描きかけの絵を順也が勝手に完成させてしまった事はあったが……あれは、単純に悪戯だろう。
「うーん。順也さん自身が、子供みたいな人だからなぁ……ぼくと二人して、真理さんの掌の上で遊ばせてもらっている、みたいな感じかなあ、家は……」
 明日樹は、「そうなんだ」と頷いただけで、それ以上この話題には突っ込んだことをいってこなかった。
 しばらく休んで、明日樹は帰っていった。

 孫子と二人残された形の香也は、ひどく気まずく思いはじめた。なにかしら用事や話題がある時はいいのだが、そうでない時に孫子と二人きりになると、香也はかなり緊張する。
「……今日は、もう絵は描きませんの?」
 炬燵にあたりながら参考書を開いていた孫子がいきなりそういったので、香也はビクリ、と、体を震わせる。
「え? あ。うん。ちょっと気が抜けちゃって……それに、時間的にも半端だし……」
 数日前から、香也は「自分の絵の新しい方向性」を本格的に模索しはじめている……が、未だ、具体的な構想は見えてこない。それと、すでに夕方といってもいい時刻であり、今から作業を開始しても、ちょうど集中して頃に夕食を呼ばれることになる。
 だから、「気が抜けて」いることも、「時間的に半端」であることも、決して嘘ではない。
「あなた、少し前に今度は人間を描く、とかいってましたわよね?」
「……う、うん」
「わたくしをモデルにしたい時は、そうおっしゃい。協力できる時は、するから」
「……う、う……ええ!」
 思わず相槌を打ちそうになって、途中から今度は絶叫する香也だった。
「……な、なんで?」
「忘れたとは、いわせませんわ……」
 孫子は能面のような表情になって、すうぅっと目を細める。
「あなた、この間、このわたくしに向かって、『動くな』と命令いたしましたよねぇ……」
「……あ!」
 野呂が来た日、ライフルを構えた孫子をデッサンした……時のことを、香也はようやく思い出した。
「……あ、あれは、珍しいポーズだったから、つい……」
 思い出してみるに、確かに自分は、孫子に向かってかなり強い調子で「動くな」とかいったような気もする……。
「べつに、謝れ、とはいってません。ただ、いきなりあんなことになるよりは、あらかじめ了解をとってからやってもらったほうがいい、と、そういっているのです……」
 孫子は少し頬を染め、顔を伏せたが……これはその時、香也の命令に逆らえなかった自分を恥じている……と、本人は、思っている。
「わたくし、同年輩の人間からあんな強く命令されたの、初めてでしたの……」
「……あぅあぅあぅ……」
 香也はしばらく、傍目にそうとわかるほどガクブルしていたが、すぐに、
「ちょ、ちょっと用事思い出した!」
 とかいって、居間から飛び出していった。

「……馬鹿」
 一人残された孫子は、ぽつんと独り言をいった。

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髪長姫は最後に笑う。第四章(17)

第四章 「叔父と義姉」(17)

「……そっか。大晦日、か……」
 年末、ということは買い物に出れば否が応でも意識させられる。だが荒野は、ここ数日マンション内に籠もりがちな生活をしていたため、具体的な日付に対する感覚がなくなっていたらしい。
「お隣りにみんな集まっているらしいの。
 茅たちも来ないか、って、今、いってきたの……」
「うん。じゃあ、せっかくだし、みんなでにぎやかに年越しするか……。
 ちょっとまって、荷物片づける……」
 荒野が買ってきたばかりの食材を冷蔵庫に放り込んでいる間に、茅は携帯に向かってメールを送信し、ごそごそとティーセットを出しはじめた。
「……それどうするんだ、茅」
「みんなにご馳走するの。荒野はこっちもって……」
 と、ティーポットを荒野に渡し、自分はティーカップと茶葉を入れた箱を持つ。
「ひさびさに、メイドさんなの……」
 ……正直、荒野にも、このあたりの茅のセンスは理解できなかった。

 荒野と茅が狩野家に到着すると、すでに狩野香也、羽生譲、松島楓、才賀孫子、樋口明日樹、樋口大樹、飯島舞花、栗田精一が揃っているという。
 羽生譲はすでに酒気を帯びているらしく、周囲に酒を勧めては諫められたり断られたりしている。今いるのはクリスマスの騒ぎを経験している面子とかなり重なる事もあり、その時酷い目にあった面々はアルコール飲料に対する警戒心が強くなっていた。
「こんくらいつきあってくれたっていいじゃんかよう。凱旋だよ、お祝いだよ」
 楓と一緒に東京から帰ったばかりだという羽生譲は、若干据わった目つきで年少者たちを見渡した後、一人でけらけら笑いはじめた。
 きけば、コミケでの売り上げが、予想を越えて好調だった、という。
「今回はあれだ、なんてったって売り子ちゃんが良かったからなー! 可愛くて愛想いいし……」
「……羽生さん、楓に、なんか派手な真似、やらせなかったでしょうね?」
 荒野が一番気になっていたことを尋ねる。
「そんな暇や余裕、ないない!」
 羽生は自分の顔の前で、ぶんぶん、と立てた平手を扇がせる。
「もー、お客さん、ひっきりなしでなー……。トイレにいく暇もないってくらいで……。いやー……多めに刷っておいたからすぐに売り切れにはならんかったけど、それでもあんなに売れるとは……。
 預かっていた委託の分までうちらの売り上げに引っ張られてバカ売れしちゃったくらいだもんねー……。
 ふはっ。ふははははははははっ!」
 羽生譲はやおら立ち上がって胸をそらし、哄笑しはじめた。
「わが生涯に一片の悔いなぁぁぁしぃっ!」
 ……かなり、売り上げが良かったらしい。
「ええっとですねえ……とにかく、人また人、で、いっぱいいっぱいで、奇妙な恰好をした人も多少いらっしゃって、冬なのにすえたような変な匂い……ではなく、熱気むんむんで、いっぱい写真と撮られたりしました……」
 楓は若干、顔をひきつらせながら、コミケの印象をそう語る。
「それよりも! 東京ってすごいですねぇ! おいしいお店がいっぱい! 中華とか、イタリーとか……」
 売り上げに気をよくした羽生譲は、かなり豪勢に奢りまくったらしい。
「楓……服、返すの……」
「あ! はい!」
 茅に即され、楓はスーツケースからきちんと折り畳んだメイド服一式をとりだして茅の前に置き、畳の上に平伏した。
「どうもありがとうございました! おかげで万事首尾良く運びまして……。
 クリーニングに出してからお返ししようかと……」
 やはり楓は、加納とか一族関係者の前にいると妙にしゃちほこばる傾向がある。
「このままでいいの。すぐ着るから……」
 茅は平伏する楓にあまり注意を向けず、メイド服をとるとそのまますたすたと隣りの部屋に消えた。
 不可解な茅の行動を見守っていた一同が、なにか問いたげな顔をして荒野を注視する。
「茅が、みんなに紅茶を飲ませたいんだって……」
 そういって、荒野は自分が運んできたティーポットを示した。
 茅の奇行に対する説明には、ぜんぜんなっていないような気がするが……とりあえず、その場にいた全員はなんとなく納得する。
 つまり、茅の中では「紅茶を振る舞う」という行為と、メイド服が、かなり強固に結びついているらしい、と……。
 紅茶とメイド、どちらも本場は英国……それもエリザベス朝時代のイメージが強いから、わからないでもないのだが……なぜそ茅がこまで拘るのか? という疑問は、依然として残る。

 荒野が茶器を抱えて台所にいくと、飯島舞花が栗田精一伴って臼を引いていた。
「……なにをやっているんだ? 君は?」
「見て……わからないか。
 蕎麦粉を、作っている」
「蕎麦、ご馳走してもらえるって聞いてはいたけど……そこまで、本格的に……」
「い、いや。このそば打ちセットな。
 うちのとーちゃんが前に怪しげな通販で買ったはいいけど、全然使わないで押入の奥で眠っていたもんなんだ。二人家族だとあまり使う機会なかったけど、年末だし、こんだけ人がいる所でなら、なんかやってもいいかなぁ、って……」
「……いや、そんなに、リキ入れて説明してくれなくてもいいけど……」
「……そっちこそ、その抱えているの……なんだ?」
「ああ。これ? これは……」
 荒野が説明をしようとすると……。
「メイドさんがお茶を、いれるの」
 荒野の後ろに、メイド服に着替えた茅が立っていた。

 家具調大型炬燵にあたっている者全員の前に、暖めた白磁のティーカップに注がれた琥珀の液体が配られる。
 給仕をするのはメイド服姿の、真剣な顔をした茅。
「……いや、紅茶はおいしいけど……畳敷きの日本家屋の室内に、炬燵に、メイドさん……テレビでは懐かしの名曲とかいって演歌のメドレー、って……」
「……なんかすげー異空間になっている気がする……」
「まあ、年末年始のテレビなんてどうせくだらないし。
 特に大晦日なんて、レコ大とか紅白とか格闘とかお笑いとか、ゆるーいのばっかだし……」
「……いやいや。そのゆるーい番組を観ながら普段顔を合わせない人と延々とどうでもいいことだべるのが、日本の正しい年末年始の正しい過ごし方でしょう……。
 家でごろごろ寝正月、っと……」
「そ、そうなのか?」
 日本での生活習慣にあまり詳しくない荒野は、思わず鵜呑みにしてしまいそうになっている。
 そんな荒野をみた飯島舞花は、思わず吹き出した。
「……いや、あながち間違いでもないけどさ。親類が年末年始に集まるような所は、今は少ないんじゃないのかな。
 今は核家族化が進んでいるし、ライフスタイルもばらばらで、年末年始に忙しい人たちも多いし……だから、もっとバリエーションあると思うよ。
 うちなんか、年末年始にとーちゃんいたためしないし……」
「あー。うちも結構、毎年バラバラだなあ……。うちの両親なんかいまだに仲いいから、今年なんか子供放って二人だけで温泉いっちゃうし……」
「そんくらいのが、子供のほうも気軽でいいっすけどね」
「あんたは気軽すぎ! なによこの髪!」
「……だからこれは未樹ねーが……」
「あ。そ! じゃあ、今度未樹ねーに頼んで、大樹を丸坊主にして貰う!」
「ひでぇ!」

 そんなことをいいあっている間に、車庫のほうで物音がした。狩野真理が帰宅したらしい。

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彼女はくノ一! 第三話 (39)

第三話 激闘! 年末年始!!(39)

「え? じゃあ、冬休みになってからほとんど描いてないの?」
 炬燵にあたりながら、樋口明日樹は大仰に驚いている。
「……んー……なんか、いろいろバタバタしちゃって……」
 明日樹が尋ねてきたことで、「ついでに休憩しましょう」ということになり、狩野香也と才賀孫子も炬燵についてお茶を前にしている。
「年末の大掃除くらい……自分の住んでいる場所の手入れをすることくらい、当たり前でしょ?」
 非難されていると感じたのか、才賀孫子は少し強い口調で、そういう。
「いや、そうじゃなくって……狩野君が絵から何日も離れるのって、珍しいから……そうか、描いてないのか……」
 明日樹は香也と知り合って半年くらいにしかならないが……それでも、明日樹は香也が絵を描いている姿ばかり見ているような気がする……。
「……たしかにこの家、大きくて掃除大変そうだもんね……せめて、人数かいれば……」
 といいかけて、あることにはっと気づく。
「……ほかのみんなは?」
 大掃除なのに、他の住人たちが不在であることは……明日樹には、不可解だった。ここ最近、この家は騒がしすぎるくらに賑やかな場所だったはずだが……今は、やけにしんと静まりかえっている。
「……んー。留守。真理さんは順也さんの個展、楓ちゃんと譲さんはコミケで、大晦日まで不在……」
「……そう、みんな留守なの……じゃあ、大掃除も二人っきりでやらなけりゃならないんだ……って!
 ええー! じゃあ、二人きりなの?」
 樋口明日樹は、いきなり大声を上げて、香也と孫子を交互に指さした。
「……そう、なりますわね……」
 孫子は涼しい顔をして湯飲みを傾けている。
「でも大丈夫。おかげさまで、昨日今日の二日間で、手のかかる大変な所はほとんど終わりましたから……」
 畳の返して、家具の移動して裏に掃除機かけて、それで、今日は障子と襖の張り替えでしょ……と、孫子はこの二日間、香也と二人でやってきた作業を指折り数えはじめる。
「後、残るのはは、窓ガラスやサッシ、それに照明器具の拭き掃除と、台所や風呂場周り……要するに、普段でも手を入れている場所を、念入りに掃除し直す程度で……みんなが帰ってくる頃には、充分終わっていますが……」
「……わたしも、手伝います!」
 孫子の平静で余裕綽々な態度になぜかカチンと来た明日樹は、即座に自分の電話を取り出し、家に電話をかけ始めた。
 ……ああ。お母さん。うん。今、狩野さん家。今日明日あたり、こっちに泊まるから。うん。大丈夫。今日の夕方あたり、着替え取りに帰ると思うけど……。
 そんな明日樹の様子に構わず、孫子はやはり涼しい顔で湯飲みを傾けている。この家が孫子の実家ならば遠慮するなり手伝いを断るなりするだろうが……孫子にとってもこの家は下宿先であり、明日樹のお手伝い宣言を無下にしなければならない理由はない。「お好きにどうぞ」、という感じだった。
 香也は香也で、妙に居心地悪くもぞもぞしているだけで、妙に緊張しはじめた明日樹と孫子の間に入り込めないでいる。
「お昼、まだですよね。よかったらわたしが用意しますけど……」
 電話を切ると、樋口明日樹はどこか凄みのある笑顔を見せ、誰にともなくそういった。
「助かりますわ。台所にあるものは、好きに使ってくださって構いませんから……」
 同じくらいに迫力のある笑顔で、才賀孫子も応じる。
『……うわぁぁ……』
 その光景を目の当たりにした香也は、
『樋口先輩、なんか怒っている感じだよ』
 と、内心で戦慄した。
 香也は、このような時に如才なく立ち回れるほど、人間が練れていない。
 このような場合、香也が取り得る唯一の対処法は、嵐が過ぎするまで、頭を低くして、じっと耐えること……。

「ええ? なんで狩野君があやまりにくるの? わたしが自分でやるっていっているのに。この家ではいつも御馳走になっているし、たまにはわたしのほうがなんかする、っていうのもいいじゃん。こういう機会でもないと、そういうこともできないし」
 台所に立った明日樹に香也が頭を下げにいくと、にこにこと笑いながら、明日樹はそう応じた。
「……でも、そうね。こういうことになっている、っていうのを狩野君が連絡してこなかったのは正直、ちょっと寂しい気もしたけど、でも、しかたないよね。
 狩野君、今時携帯も持ってないし。普段からわたしのところに近況報告とかしてくれる間柄でもないし……」
 言葉のわりに、明日樹の笑顔に、みょーな迫力があるのは、決して香也の気のせいではないはずだ……。
『……真理さんが帰ってきたら、携帯のこと相談してみよう……』
 香也は、そう決心する。今まで決定的に交友関係が狭かった香也は、携帯電話の類を所持する必要性を感じていなかったが……最近ではどうも、様子が違ってきているようだし……。

 明日樹は昼食に、冷蔵庫に残っていた冷飯と材料を炒め合わせ、チャーハンを作ってくれた。それと、固形のスープの素を用いた中華風スープに、刻んだネギを浮かべたものを添える。
「うち、家族多いから、こういう残り物を利用する料理、自然と覚えるんだよね」
 とは、本人の談。お手軽だが、うまかった。

 その夜、樋口明日樹は狩野家に一泊し、三人で残りの作業を分担したため、残りの大掃除は大幅にペースアップした。
 おかげで、翌日の昼過ぎには孫子が満足する所まで、作業を完遂することができた。
「これで狩野君、絵に戻れるでしょ?」
 孫子の大掃除終了宣言を聞いた後、明日樹は屈託なく笑いながら、香也に話しかける。
 やはりそれが、明日樹の一番の目的だったらしい。

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髪長姫は最後に笑う。第四章(16)

第四章 「叔父と義姉」(16)

 荒野は特に行き先や目標を決めず、茅に好きなように走らせてみた。茅が今の時点でどの程度の体力や持久力を保持しているのか、漠然と予測はしていても実際に計測してみたことはなかったし、茅自身が良しとするペース、あるいは、どのくらいの時間、ないしは距離を走ったところで休憩を取りたくなるのか、なども茅の判断に委ね、意志や気力まで含めた総括的な茅の能力を、最初に見極めておきたかった。
 そのために最初は、茅に自由に走らせて、様子をみるつもりだった。

 茅は最初から飛ばす、ということをせず、小走り程度の緩めの速度で、車両も通行人の姿もほとんど見あたらない道を走っていく。このあたりはもともと、これといって盛んな産業がない地方都市であり、この時間だと、新聞や牛乳の配達員、それにコンビニのロゴが入ったルート配送のトラック、茅や荒野と同じく、ジョギングやウォーキングの人々、犬の散歩……くらいしか、通行がない。
 おかげで茅は、ほぼ自分のペースを保ちつつ、自由に走ることができた。
 茅の息は柔軟体操の段階からすでに白くなって体温の上昇を知らせていたが、茅は速度をなかなか緩めなかった。フォームも、荒野は心配したほどにはひどくはない。もちろん、一族の走り方ではないが……荒野の目には、マラソンなどの陸上競技のフォーム、の、真似事に映った。「走る」ということが決まってから、ネットで検索をかけて調べたのかも知れない。最初はややギクシャクとした部分もあったが、二十分も走って体が温まってきたのか、それと、体のほうが段々と走ることになじんできたのか、時間がたつにすれて動きから堅さがとれ、しなやかさが増していっているように思えた。
 茅はよく知っているはず道を選ばなかった。
 駅方面へも図書館方面へも行かず、途中まではショッピング・センターにいくルートと同じ国道沿いを走っていたが、橋の所まで出るとそこを堤防上の遊歩道に出て、川の下流方向に走り出す。
 たしかに、河原沿いに走ればほぼ一本道で車や信号に邪魔されず、ペースを保ちやすい。コースやペースまで茅に一任して正解だったな、と、荒野は思った。
 堤防上の遊歩道を、茅は、どこまでも走り続ける。けっして速い速度ではないものの、一時間を越えてもまだペースを崩さないのをみて、荒野は感心した。
 もっと最初から飛ばして三十分も保たずに休憩に入るか、そうでなければ、もっとのろのろした、歩いているのとさほど変わらないような速度で、いつまでも時間ばかりかけるか……そのどちらかになるだろう……という荒野の予測は、見事に外れたことになる。茅は、荒野が予想していた以上に、本気で体力の増強を望んでいる……ということが、わかった。
『……そうなると……』
 荒野は、数日前、茅の自転車の練習に付き合ったことを想起する。
『……時間をかけさえすれば、案外、いいところまでいけるかも……』
 茅は、あれで負けず嫌いで、自分が設定する目標をクリアするまでは、淡々とトライし続ける性格、でもある。運動神経や反射神経も、決して悪くはない……。
『……まあ、その時間がどれだけとれるかが、問題なんだけどね……』
 この辺りは、これから六主家の連中が、どのような目的を持って接触してくるのか予測できない以上、荒野にはなんとも判断しようがない……。

 荒野は、マンションを出てから八十分ほどたった時点で休憩を告げ、茅を堤防上の遊歩道から河原のグラウンドに誘導し、そこでゆっくりと速度を緩めさせ、立ち止まってからもいきなり座り込まないように言いつけてから、自販機に冷たい飲み物を買いに行った。一番近い自販機まで一キロ以上あったが、荒野がひとっ走り行ってくれば、往復で二分もかからない。
 荒野が缶ジュースを持ち帰ってきても、茅はゆらゆらと歩き回っていて、息もまだ整っていなかった。
「そのまま、しばらく歩いていた方がいい」
 汗だくになっている茅の首にタオルを掛けながら、普段運動をしていない茅が急激に運動をしたばかりだから、いきなり止まるとかえって筋肉に負担をかける。
「予想以上に頑張った。初日はこんなもんだろう。あと、息が整うまで歩き回って、水分を補給してから少し休憩。その後で、帰ろう。今日の分は、それでお終い」
『予想以上に』というのは、荒野の本心だった。つい数ヶ月前まで病院暮らしをしていたことを考慮すれば、茅のガッツは本物だ……と、そう思えた。

 ようやく息を整え、足を止めた茅は、荒野が渡した五百ミリリットルの缶ジュースを一気に飲み干して、タオルでごしごしと顔と首の汗を拭った。
 そして、荒野が自分用に買った二本目のジュースも受け取り、それはちびちびと啜りながら、川を指して、
「あれ、海にまで続いているの?」
 と尋ねた。
「こっからだと、ちょっと遠いけど……うん。下流までずうーっと辿っていけば、海にはでるよ。二十五キロ……いや、三十キロはあるかなぁ……」
 荒野はそう答えた。
「茅、海、見たことないの」
 ジュースの缶を両手で抱えながら、茅はそんなことをポツリといった。

 横路の一・五倍くらいの時間をかけてマンションに帰り、荒野は茅の下半身を入念にマッサージし、熱い風呂に入れ、そしてまたマッサージをした。動いているときはそうでもなかったようだが、帰ってくつろいだ体制になるとどっと疲れが出てきたのか、茅は、ソファから動けなくなった。
「一応、マッサージはしておくけど……」
 そんな茅のふくらはぎを揉みながら、追い打ちをかけるように、荒野はいった。
「明日辺りは、確実に筋肉痛だな……」
「……みゅう……」
 茅は、そんな変な声を出して答える。
 急激な、長時間の運動。加えて、普段あまり使っていない筋肉も酷使している。下手すると、二、三日はろくに動けないかも知れない、と、荒野は思った。
 体力を使い果たした茅が起きあがる気力がなくしたようなので、その日の家事は荒野が担当した。
 茅はその日一日、ソファの上に寝ころんでうつらうつらしていたり、本を読んだりして過ごした。

 夕方、荒野が筋肉痛用の湿布薬と若干の買い物を済ませて帰宅すると、茅に、「飯島からメールで、今夜、いっしょに蕎麦を食べないかといってきたの」と、告げられた。
 それを聞いて荒野は、今日が大晦日であることを思い出した。

[つづく]
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彼女はくノ一! 第三話 (38)

第三話 激闘! 年末年始!!(38)

 旧弊な造りの平屋であるかわりに、狩野家は敷地も広く、部屋数も多い。加えて、ついこの間まで実質上三人暮らしであったため、全ての部屋の手入れが完全に行き届いている、とはお世辞にも言い難い。時折天気がいい日などに狩野真理が風を通し、簡単な掃除を一通り行う以上の手間はかけられなかった、というのが、今までの実情だった。
 実は、楓や孫子が来る前から、「これだけ部屋が余っているのだから、間貸ししては……」という意見もあったのだが……今時、通常の賃貸ではない「下宿」という形で住宅を求めるニーズがそうそうあるわけでもなく、また、まだ子供である香也以外は真理と羽生譲、という女性が二人いることもあり、で、今までは話しがでるだけで終わってしまった。
 つまり、確かに、孫子の言うとおり、きちんとした手入れを行う機会は、あったほうがいいのだった……。
 空いていた部屋の一つ一つに才賀孫子が入っていき、実質上、狩野香也に「命じて」空き部屋の畳を順番に庭に出して、二枚を向き合わせにし、人の字型に立てかけさせる。たてかけた畳で庭が埋まると、最初に持ち出した畳を布団たたきで叩いて埃を払い、元あった場所に戻す……。
 そのな単純な肉体労働を、香也は一日かけて行った。
 畳、といっても、昔風の畳で最近の賃貸住宅向けの畳よりもサイズが一回り大きくて、重い。一枚抱えて庭へ出すだけだけで、香也は汗だくになる。
「家は、手入れをしなければ、それだけ早く痛みますの」
 そういって香也を即す才賀孫子も、決して自分だけ遊んでいるわけでも楽しているわけでもなかった。
 香也が動いている間に台所や浴室、トイレなどの水周りの清掃、雑巾掛けから、空き部屋以外の、家具の置いてある部屋の普段通りの掃除、それに、食事の用意など、あちこちに忙しなく飛び回って、ともすると香也以上に立ち働いている。
 孫子が自分以上に忙しそうにしていると、香也としても文句をいえる筋合いではない。なにしろ、自分はこの家の昔からの住人であり、にも関わらず、今まで家事はほとんど真理や譲に任せきりで過ごしてきたのだから……。
『……でも、なあ……』
 普段、このようなことをやりつけていない、ということに加え、インドア派で決定的に体力を欠く香也にとって、孫子に要求されたことは、かなりきつい仕事であることには違いなかった……。
 昼食も当然のように孫子が用意し、それ以外に孫子は、三時にはお茶とお茶請けまで用意してくれた。加納茅から大豆を分けて貰ったとかで、孫子手作りの善哉までついていたのだが、これが、普段甘いものをあまり受け付けない香也にとっても、「……かなりうまい」と思える味だった。疲れていたので、体が甘味を欲していただけかもしれないが。
『……なんでも、できるんだな……』
 孫子については、香也は改めてそう思った。
 いつもは香也にきつい顔しかみせようとしない孫子も、香也が唯々諾々ということをきいている限りは、割合普通に接してくれる。
 それとも、二人以外に誰もいないせいで、虚勢を張る必要がない、ということなのだろうか?

 そんなわけで二十七日の香也は、日が暮れるまで畳と格闘して終わった。午前中に加納兄弟が買い物にでるのを庭から見かけ、午後に飯島舞花と栗田精一に「おお。やってるやってる。大掃除?」などと声を掛けられて軽く立ち話しをした以外、特に変わったことはなかった。

 庭に出した畳を全てを元の場所に納めると、すでに日が暮れる時刻で、台所に立っている才賀孫子から「お風呂沸いているから、先入って」といわれる。孫子は昼やお茶の時と同じく、自分が二人分の食事を用意するのが当然と思っているようだ。
 ……たしかに、香也にそっちの方面の才覚を求められても困るのだが……。

 香也にしてみても、くたくたに疲れていたので素直にお言葉に甘えることにする。
 服を脱いでお湯に入るとちょうどいい湯加減で、疲れていることもあってうとうとしはじめると、脱衣所のほうから「早くでないと晩御飯が冷める」と声を掛けられて、はっと目を覚ます。
 慌てて風呂からでると、入浴した時間から一時間以上、ゆうに立っていた。よくのぼせなかったものだ、と、思う。
 驚いたことに孫子は、完成した夕食を前にしても、香也が出てくるまで、箸をつけようとしなかった。
 香也が「先に食べてても……」といいはじめると、孫子は、
「そんなの、待つのが当たり前でしてよ」
 と、何でもないことのようにいう。
「例え二人きりでも、成り行きでも、同じ家に住んでいる間は、家族同然です」
 二人は「いただきます」と唱和してから、孫子が用意した食事を食べはじめる。
 香也が長湯したせいで半ば冷めかかっていたが、味は上々だった。
「それから、今日は母屋の自分の部屋にお泊まりなさい」
 加えて、孫子はそんなことまでいってくれた。
「ただし、わたくしの入浴時や寝室に近づこうとしてきたら、かなり、後悔することになりますから」
 にっこり笑ってそう付け加えることも、忘れなかったが。

 その夜、香也は久しぶりに自分の部屋の自分の布団にくるまり、心地よい疲労と達成感に包まれて、熟睡した。
 その日、香也は、何年かぶりで絵のことを忘れた。

 翌日、孫子に掛け布団をはがされて目を覚ました。週末や連休中、香也は昼頃まで寝ていることがあるのだが、学校に通う平日とまったく同じ起床時間だった。
 顔を洗い終わって居間にいくと、すでに朝食が用意されている。
「まだまだお掃除、残っていますから」
 朝食を食べながら、孫子はそんなことを言いはじめた。まだまだ、香也を解放する気はないらしい。

 その日香也は、孫子と一緒に箪笥などを大型家具を動かしながら、その背後に溜まった埃を掃除機で吸い取ったり、家具に雑巾掛けをしたり……ということして、過ごした。確かに、いくら力があろうとも、大型の家具を移動する、などの作業を孫子一人で行うのは危ないように思えた。
 途中、宅急便の受け取ったり、掃除や洗濯、買い物などの用事で孫子が一時的に離れたりしたが、その日はほどんど二人の共同作業をして過ごし、一日かけて家の中を二人でかけずり廻った。
 夕方になって、
「……明日は、障子とふすまの張り替えを行います」
 と、孫子がその日の作業終了を告げた時、香也は反抗する気力も残っていなかった。箪笥やテレビなのど家具は、畳よりも重い。
 しかし、疲労もあるかわりに、奇妙な充実感と、それに、孫子との間に連帯感ないしは仲間意識のようなものも、香也の中に芽生えつつあった。

 その日、孫子が作ってくれた夕食を、香也は昨日の食事以上にうまく感じた。疲労のせいも、かなりあるのだろうが。

 翌日、樋口明日樹が香也の様子を見にきた時、香也は居間で、孫子が障子紙を張り替えるのを手伝っているところだった。
「……なにやってんの? 狩野君……」
「……んー……お手伝い?」
 香也は、障子紙を押さえながら、玄関から顔を覗かせた樋口明日樹の問いかけに、そう答えた。
 疑問形でしか答えられない、主体性のない自分が、荒野自身、情けなかった。

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はい(♀)×ろぅ(♂)×ろぅ(♀)」  完結記念アンケート 第五回結果報告

はい(♀)×ろぅ(♂)×ろぅ(♀)」 完結記念アンケート、 五回目にして最後の集計結果のご報告でございます。
同アンケートは平静18年1月末日をもって受付を終了いたしました。

おかげさまをもちまして、予想以上に多数の方々にご協力いただきました。
ご協力いただいた方、ありがとうございました。

 それでは今回の累計結果、いってみましょう。

Q1.本作品の登場するキャラクターの中で、お気に入りの人物はいますか?(幾つでも)
 1.千鶴さん   30票
 2.あんなちゃん 25票
 3.雅史くん   13票
(最後だから、項目毎に簡単なコメントつけましょうか。
途中から千鶴さんの票が伸びましたが、あんなちゃん、スタートダッシュが強かった。感触として、あんなちゃん、コアなファンの方多いみたいです(笑)。
雅史くんも意外に票がはいっていますが……彼の場合、「三人全部」とか「あんなちゃんとペア」での投票も多かった。)

Q2.ここ作品の中で一番の加害者は誰だと思いますか?(1つだけ選択)
 1.千鶴さん   41票
 2.あんなちゃん 7票
 3.雅史くん   1票
(この項目で「雅史くん」に投票した方の真意は計り知れない……。
と、思う。)

Q3.ここ作品の中で一番の被害者は誰だと思いますか?(1つだけ選択)
 1.千鶴さん   3票
 2.あんなちゃん 13票
 3.雅史くん   29票
(こちらの結果は、まぁ順当かなぁ……)

Q4.この作品がシリーズ化されるとしたら、どのような形が望ましいと思いますか?(いくつでも)
 雅史くんとあんなちゃんが、いろいろなロケーションやシュチュエーションでやりまくる、一話完結式の連作短編集。
     27票
 千鶴さん、あんなちゃん、雅史くんがどろどろの三角関係を演じる、メロエロドラマ。
     22票
 千鶴さんの、意中の先輩を「手段を選ばず」籠絡するまでの奮戦記。
     7票
 突如帰国した雅史くんのお父さんが次々に養子縁組をして、雅史くんに十人の義理の姉と十二人の義理の妹ができちゃった! という設定のハーレムタイプのエロコメ。
     13票
 雅史くんの目前で突如現れた悪の秘密結社に殺害される千鶴さんとあんなちゃん。雅史くんは復讐を誓い、長く孤独な旅に出る。
     1票
 続編なんんかいらない。
     0票  
(受け狙いの選択肢にも、票を入れてくださる方結構いましたな(笑))

Q5.今後、「悪場所の小径」で扱って欲しいものをお答えください。(幾つでも)
 ロリ
     14票
 女子高生
     14票
 女子大生
     14票
 ばぁにぃがーるだ!
     4票
 メイドさん
     20票
 ふたなり
     4票
 人妻
     14票
 こすぷれもん
     6票
 女教師
     11票
 女社長
     5票
 近親相姦
     10票
 レイプ
     4票
 逆レイプ
     7票
 ひたすら、らぶらぶ&いちゃいちゃ
     29票
 乱交
     10票
 獣姦
     1票
 触手
     4票
(「メイドさん」と「ひたすららぶ&いちゃ」が強かった。
前者は最近のはやり、後者は普遍的なニーズか?)

という結果になりました。
このアンケートの受付はすでに締めきりました。

もう一度、アンケートにご協力いただいた方に感謝を。

髪長姫は最後に笑う。第四章(15)

第四章 「叔父と義姉」(15)

 食後、二人で連れ立って牛丼屋の三軒隣りにあるセルフサービスのカフェに入る。牛丼屋と同じく全国展開しているチェーン点で、こういう店に入るのが初めての茅は、一見ヨーロッパ風しかしその実国籍不明な内装をきょろきょろ見回している。
 荒野は「本日のストレート・コーヒー」を、茅は迷った末、荒野に「甘いのも、紅茶系もあるぞ」と耳打ちされ、結局「カフェモカ」を注文した。
「……甘いけど、苦いの」
 というのが、茅の感想だった。
「いろいろばたばたしてたんで遅れたけど……」
 なにも入れずにマグカップを傾けながら、荒野は対面して座る茅にいった。
「茅も、まだまだいろいろな初めてを体験しなければな……」
 茅はまだ、図書館やマンドコドラ、それに、マンションの隣りの狩野家など、特定の立ち寄り先以外には、一人で出歩いていない。それら特定の立ち寄り先に途中で、多少買い物はしてくるようになったが……それでもまだ「社会経験」が不足している、と、荒野は感じている。
 ここ数日、飯島舞花や才賀孫子などと携帯のメールでやりとりをはじめたように、学校がはじまって友人ができてくると、行動範囲が少しは広がってくると思うのだが……その前にもう少し、茅をいろいろな場所に慣らしておきたかった。
 そうした荒野の意図は、すでに茅に話してある。
「……とりあえず、今日は買い物な。おれは荷物持ちだけするから」
「ん」
 平気で人の三倍ほど食う荒野の分も含め、年末年始分の食料を買いだめするとなると、かなりの荷物になる。この間おせちの材料として買った乾物や豆類がまだ残っていたが、たぶん、それでは足りない。保存のきく米や餅は、少し多めに買ってマンションまで届けてもらったほうがいいか……。
 そんなことを二人で相談しながら「本日の買い物メモ」を作り、そのカフェを後にした。

 それから二時間ほどかけて商店街をうろつき、茅は食材を買っては荒野に渡し、という作業を繰り返した。二人の自転車の篭に荷物が山積みになり、さらにハンドルの両脇にもビニール袋をいくつもぶら下げて、一旦マンションに帰る。
 荒野は当初、荷物を置いてそのまますぐショッピング・センターに赴き、そこの飲食店で昼食をすませる、というパターンも想定していたが、茅が「朝も外食だったし……」といいはじめたので、乾麺をゆでてレトルトのソースをかけただけのパスタに、買ってきたばかりの野菜で作ったサラダで手抜きな昼食とする。
 手抜きではあったが、栄養的経済的な面よりも、茅は「二人で食事を用意する」という過程に意味を見いだしているらしい。
 小一時間、食後のお茶を楽しんでから、今度はショッピング・センターに向かう。肉や魚、野菜などは商店街のほうが安いが、レトルト類や調味料、冷凍食品や缶詰などの工業製品はショッピング・センターのほうが安い傾向があった。そうした安売り商品を狙って買いだめをし、やはり二人分の自転車にぎっしりと荷物を持ち帰ると、結構いい時間になっている。
 持ち帰った荷物を収納し、日が落ちきる前に、と慌てて簡単に部屋の掃除をした。
「明日はもっとちゃんとしような、掃除」
「ん」
 荒野の言葉に、茅が頷く。暦をみれば、今年ももう残り少ない。
「……それと、明日から……」
 ……朝、走りたいの、と、茅はいった。
「……まあ、そのあたりからだな……」
 荒野も、茅が体力をつける自体には、異存はない。茅が自分たち一族の者に対抗できるほどに目覚ましい成長をする、とも期待していないが。

 その夜は、妙に張り切っている茅が「早めに寝て、早く起きるの」といいだしたので、夕食と風呂をすませると、二人してそうそうにベッドについた。
 数日ぶりで、性行為なしで就寝した。

 翌日、つまり、その年最後の朝、荒野は目覚まし時計がなる数十秒前に目をさました。
 目を覚まし、荒野に抱きついて寝息をたてている茅を起こさないようにじっとしていると、すぐに目覚ましが鳴り始め、即座に手を伸ばしてそれを止める。
「……茅、どうする? 走るのやめて、このまま寝てるか?」
 荒野が茅の肩をゆすると、茅は、
「……むー……起きるぅ……」
 といいながら、目を擦りつつ、身を起こした。
『……そういや、茅、朝は弱そうだったな……』
 と、荒野は思い出す。
 目覚まし時計の文字盤にちらりと視線を走らせ、荒野が思っていたよりずっと早い時間に鳴るよう、セットされていたことを知る。
 それだけ茅がやる気になっている、ということなのだろうが……。
「……はいはい。じゃあ、ちゃんと起きて。
 立って、服着て、顔でも洗うかシャワーでも浴びるかして、目を覚まして……」
 再び布団に潜り込もうとする茅の体を引きずりだし、無理に立たせる。
 いつものように全裸なので、茅は寒さに震えていた。それでも目が覚めないのか、いつまでも目の周りを指で揉んでいる。
「どうする? やめて寝るか? 茅がいいはじめたことだけど、やめてもいいんだぞ……」
 荒野がそういうと、
「……むー……やるのー……」
 といいながら、茅は、かなりよろよろとした足取りで、衣装部屋になっている自分の部屋に向かった。
 その隙に荒野は服を着てトイレに入り、ついで、キッチンにいって米を研いで炊飯器をセットする。
 そんなことをしている間に五分ほど過ぎ、「……そろそろ様子を見にいってこようかな……」と思いはじめた時、スポーツウェアに着替えた茅が、あかわらずよろよろした足取りで自分の部屋から出てきた。
「……茅……冷たい水で顔洗うと、多少は目が醒めるよ……」
 荒野がそういって洗面所のほうを指さすと、茅は、
「……うー……」
 と唸りながらも素直に顔を洗いにいった。
 恰好はともかく、腰まである髪は、そのままだと運動するには邪魔そうだった。とりあえず、適当な布で、うなじのあたりで軽くまとめておく。
 そんな感じでなんとか準備を終えて、ようやく二人はマンションの外に出た。
 年末の早朝、外はまだ薄暗く、冷たい空気が肌を差す。
 外に出た途端、茅は両腕を抱えてぶるっと震えた。
「……やっぱり、やめる?」
 荒野がそう尋ねるのは、その朝何度目だろうか?
「……やるの……」
 茅の答えは、やはり変わらなかった。
「そっか。じゃあ、いきなり走ると関節とか痛める可能性あるから、しっかりストレッチやって体を温めてからな……」
 荒野の指示に従って、茅は念入りに屈伸などの準備運動を始めた。
 荒野が、
「もうそろそろいいだろう」
 というころには、早くも、茅の呼吸は早くなっていて、絶え間なく白い呼気を朝の外気に吐き出している。
「……じゃあ、最初は無理せず、ゆっくりと走ってみようか……」
 荒野がそういうと、茅は、リズミカルな足取りで公道に踏み出した……。

[つづき]
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彼女はくノ一! 第三話 (37)

第三話 激闘! 年末年始!!(37)

「……あは。あはは……」
 羽生譲が場を取り繕うように虚ろな笑い声を上げた。
「……まあ、うちのこーちゃんに限って、女の子を押し倒すほどの度胸、ないしぃ……」
「女の子には、しょっちゅう押し倒されているようですが……」
 ぴしゃり、という感じで、才賀孫子が羽生譲の言葉を遮るよ。かつて二度ほど、孫子はその現場を目撃している。
「……あうっ!」
 その当事者の一人でもある羽生譲は、額を押さえてのけぞった。
「……痛いところついてくるなぁ、ソンシちゃんは……。
 だからあれは、前にも説明したとおり、いろいろ事情があって……ついでに、ものの弾みで……」
「そのような説明は、必要ありません」
 才賀孫子は、羽生譲を睨んだ。
「問題は、真理さんから留守を預かったあなたが、責任を放棄してこの家の留守にして、年頃の男女を数日二人きりで過ごさせてもいいのか、ということです」
「……なんだか、こっちはこっちで面白そうなことになってきたな……」
 三島百合香がにやにや笑いながら成り行きを見守っている。明らかに、面白がっていた。
「……いや、たしかに年頃の男女二人きり、というのは間違いないけどさ……」
 羽生譲は、手をおなかのあたりで組んで指をもじもじ動かし、才賀孫子を上目使いに見た。
「……真理さん、そんなに了見狭くないぞ。
 それに、仮に、だよ。
 うちのこーちゃんがソンシちゃんを襲ったとして……そのまま好きにさせるようなソンシちゃんじゃあ、なかろう?」
「当然です! 一秒もかからず沈黙させます!」
 才賀孫子は、かろうじて「永遠に」という一語を付け加えたい衝動を堪える。
「……それと、ソンシちゃんの方が、こーちゃんに迫る心配もなかろう?」
「もっと、あり得ません!」
「じゃあ、二人きりでも全然問題ないじゃないか。間違いの起こる隙なし、だ。
 それとも……」
 羽生譲は、狼狽した様子で成り行きを見守っていた松島楓のほうを「びしぃ!」っと指さした。
「ソンシちゃんもうちらと一緒に来るか? その服着て、どーじんし一緒に売るか?」
 才賀孫子は、羽生譲の指先をたどって、松島楓のほうをまじまじとみる。松島楓は、メイド服のままだった。
『……あの服を着て、コミケで売り子、ですって……』
 才賀孫子の脳裏に、様々な思惑が去来する。
「……っふ。負けたわ……」
 孫子は、そういってうやむやのうちに妥協した。
「……留守は任されたから、明日から二人で東京にいって、せいぜい頑張ってきなさい……」
 孫子は晴れ晴れとした作り笑いを浮かべ、羽生譲にそう宣言する。

「……お前んところって、いつもこんな感じなのか……」
「だからこの家、おれんところってわけじゃないって!」
 すっかり傍観者になっていった野呂良太と加納荒野はそんなことを言い合い、三島百合香は、羽生譲に親指を立てて「ぐっじょぶ! ナイス交渉!」とかいっている。
「それ、おいしい?」
「ん。いける」
 狩野香也は周囲の騒ぎもどこ吹く風と目前の料理を食べ続け、加納茅は自分が作った料理の味が気になるのか、大体全員に味の感想を聞いて廻っている。

「……というわけで、羽生譲以下一名、明日より三日間、気張ってとーきょーでどーじんしを売って売って売りまくるのであります!
 いくぞ以下一名!」
「はい! 師匠!」
 翌朝、そんなことをいいながら、羽生譲と松島楓は早い時間に家を後にした。ホテルにチェックインして荷物を置いた後、軽く東京見物して明日に備えるという。売り物の本は製本所から直接会場に搬入されるので、着替えの入ったスーツケースだけを持っていた。
「わたし、東京行くのも新幹線乗るのも初めてなんですよー」
「そうかそうか。向こういったらなんか旨いもん食いにいこうなー。売り上げがよければ食事もどんどんごーせーにしていくから、そのつもりでー……」
「はい! 師匠!」
 そんなことをいいながら意気揚々と駅に向かう二人を見送ると、狩野香也と才賀孫子の二人が取り残される。
 なんとなく、顔を見合わせるが、香也は孫子かけるべき言葉が思い浮かばない……。
 割と、気まずい。
「……じゃ、そういうことで……」
 香也がきびすを返してさっさとプレハブに引っ込もうとすると、
「お待ちなさい!」
 と、孫子に襟首を掴まれた。
「今日は何日かご存じかしら?」
「……二十七日……」
「何月の?」
「……十二月……」
「そう。十二月、二十七日。年末ですわよねぇ……」
 香也は、孫子がなにをいいだすのか予測がつかず、内心ではかなりビクビクしている。
「……しかも、三十一日まで、この家にはわたしたち、二人きり……。
 これって、とてもいい機会だと思いません?」
 才賀孫子は、極上の笑顔を作って、狩野荒野とまともに目を見合わせた。
「……ということで、これから大掃除をいたします!
 この家、広いし部屋数も多いから、男手は必須!」

 それから五日間、香也は孫子にいいようにこき使われた。
 普段、運動らしい運動をしない香也にとって、かなりハードな日々だった。

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