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2006-01

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彼女はくノ一! 第三話 (24)

第三話 激闘! 年末年始!!(24)

 翌朝。
「おー。みごとに討ち死にしているなー。青少年たち……」
 どてら姿の羽生譲は、くわえた朝の一服目に火をつけて、炬燵の周辺でごろごろ屍になっている連中をみわたした。
「まあ、若いうちは、それも経験さね……。
 吐きたいやつは、これになー」
 といって、風呂場から持ってきた洗面器を炬燵の上に置く。
「一応、お粥作っておいたからな。食欲出てきたのがいたら、食わせとけ……」
「先生もご苦労さん。まあ、この調子だと、昼頃まで起きられるのいないと思うけど……」
「あと、水分補給用にポカリくらい買っておくといいな。あれは吸収が早いから。熱いお茶なんかもいいんだが、この調子だと、まだ受け付けないだろ……。
 ええっと……転がっているのは、楓と、樋口兄弟、それに、飯島と栗田のバカップルか……才賀や荒野は慣れていそうだが、茅と見た目しょぼいほうの香也が平気だったのが、意外といえば意外かな……」
「茅ちゃんはともかく、うちのこーちゃん、順也さんが強いから……」
「ん? だって、血は繋がってないって話しだろ?」
「いや……うちの先生、結構豪快な人でさ。こーちゃん、引き取られてきた当時のちっこい時から、先生につき合わされているんだ、酒……。
 ここに姿がないってことは、もうプレハブでいつもの通りやっているかな?」

「……なんで、わたくしが……」
「いいからいいから。茅も才賀も、香也君の絵、まともにみたことないだろ? いい機会だよ」
 狩野荒野は、茅を伴い、才賀孫子の背中を押すようにして、プレハブに向かっている。
「……あの分だと、朝食まだ先みたいだし、いい暇つぶしだと思って、つき合ってよ……」
 文句をいいながらも、才賀孫子は本気で抗うつもりはないらしい。基本的に協調性がある性格だし、それに、香也がどんな絵を描くのか知らないのも、事実だった。プレハブいったことは何度もあるが、そこでじっくりと香也の絵を見たことはない。
「……ちょっといいかな?」
 荒野は、断りをいれながらプレハブの引き戸を開く。いつもは声などかけず、そのまま忍び入るのだが……今回は、いつもと違い朝だし、連れもいる。
「……んー……」
 狩野香也は、相変わらず生返事だった。
「……珍しいね。昼間からくるのって……あれ? 他にも人、いるんだ」
「あ。そのままやってていいから。ちょっと、ここいらにあるの、勝手に見させてよ……」
「……んー……」
 一度振り向きかけた香也は、その言葉に素直に従って、描きかけのキャンバスに向き直る。
 荒野はスチール棚に放置されていた絵を、一枚一枚取り出して、二人に示してみせる。茅は、習作やラフ・スケッチも含めて食い入るようにみていたが、才賀孫子は、完成品よりも現在進行形で描いているほうに興味があるのか、ちらりちらりと、背後の狩野香也を気にしている。
「……気になるんなら、もっとちゃんとみたら? 邪魔さえしなければ、特になにもいわれないと思うよ……」
 加納荒野がそういうと、才賀孫子はなにか言いかけて口をつぐみ、何故か怒ったような顔をして、ぷいっ、と横を向くと、そのまま背を向けて、狩野香也の背中に向き直った。そのまま、香也の手元とか、キャンバスのほうに、じっと目を凝らす。荒野も、同じように、描きかけの香也の絵に引き寄せられる。
「……人物……いや、顔……か……」
 そういえば……このプレハブに残っている香也の絵も、ヌード・デッサンなどの例外を除いて、人物画は極端に少ない気がしたが……。
 茅は、荒野が才賀孫子と並んで、香也の背中に気を取られている隙にも、一人で黙々とスチール棚に残された香也の絵を一枚一枚自分で取り出して、瞬きも惜しむように、じっと見つめている。

「……うー……頭痛い……」
 とかいって、もぞもぞ最初に起き出したのは樋口明日樹だった。
「おー。一番手はあすきーちゃんかー。なんか食べたり飲んだりできそう? お粥とポカリあるけど……」
「……むりー……。当分、なんも……」
「んー。先生も、水分は補給しておいたいた方がいいっていってたけどな……。まあ、無理すんな……」
「……狩野君は……」
「うちのこーちゃんは、いつもの通り。プレハブ」

 樋口明日樹がプレハブにいくと、珍しいことに、すでに先客が何人かいて、香也の背中にとりつくようにして、たむろしていた。香也のほうは既に自分の世界に入っていて、明日樹がプレハブに入ったのにも気づいているかどうか、という感じだ。
「……あれ?」
 明日樹は、すぐに香也の描きかけの絵の……変化に気づいた。
「ね」
 狩野荒野が、小さな声で明日樹に尋ねる。
「君、香也君の絵に詳しいでしょ? 彼、人物画、やったことあるの?」
「……ちゃんと色までのせたのだと……多分、これが初めて……わたしの知る限り……」
 この間の同人誌のカラーページがあるが……あれは、香也が自発的に描いたものではない。例外と見なすべきだろう。
「……でも、なんか、タッチのほうも変わってきてないか?」
「うん……わたしも、そう思う……」
 なんというか、全体に艶、というか……従来の香也の絵に比べると、描く対象に、生命力が……込められているような……気が、する。
「……ここ、二、三日で、一番気になったものを片っ端から描いていったら……こんな感じになった……」
 突然、狩野香也が話し出す。どうやら、集中しているように見えても、荒野と明日樹の会話は聞こえていたらしい。
「……まだ全然下書きの、習作だけど……いつもは鉛筆で何度も構図とったりしてから書き始めるんだけど……今回は、そういう構想なしで、片っ端から頭に残っているものを、直接ぶち込んでみた……こんくらいの荒っぽいこと、何度かしないと……多分、今までのぼくの絵は、壊れてくれない……一度根底から壊さないと、先にも進めない……」
 そういいながらも、狩野香也は何かに憑かれたかのように、手を動かし続ける。他の見物人たちは、そんな香也の作業を、じっと見つめている。

「……あすねー……こっちかぁ……って、なんだこりゃあ!」
「へぇ。狩野ってこういう絵、描くんだ。不気味だけど、迫力はあるな……」
「あ! これ、昨日の子供たちや、商店街のお客さんたちなんでは?」
 少し間を置いて、居間に転がっていた急性アルコール中毒たちも、続々と復活してプレハブに集まってくる。

「ぼくは、今まで正面から人と関わることを避けていたからさ……」
 香也の背中は、誰にともなく、いう。
「こんくらいのことをして……も、……たぶん、あんま、変わらないんだろうなぁ……。
 でも、なにもやらないよりは、まし」
 そういいながらも、香也は、いくつもの人の顔をキャンバスの上に書き続けている。同じ顔は一つもない。性別も年齢もまちまちの顔が、顔だけが、次々と香也の筆先から生み出され、完成し、その隣や上に、また新しい顔が描かれる。キャンパスの隅から隅まで、すでに人の顔で埋め尽くされているのに、香也は、まだ、顔を描くのをやめなかった。
 本人もいうとおり、今描いているのは……完成させるための絵を描いている……というよりは、香也なりに、自分の気持ちに整理をつけるための行為なのだろう。

 それでも、香也の背中に集まったギャラリーは、香也の手元を見つめ続けた。

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髪長姫は最後に笑う。幕間劇(一)

髪長姫は最後に笑う。幕間劇(一)

「……あんたが、三島、百合香さん?」
 その男は、待ち合わせ場所に三島百合香が顔をだすのと同時に、そういって近づいてきた。
「……本当に、野呂さんがいった通りだな。前もって話しをきいてなけりゃ、とても大人には見えん……」
 その男は、三島百合香の顔をしげしげと見つめて、肩をすくめて首を振りながら、そういった。
『……初対面の人間に、初っぱなからいう台詞かね……』
 三島のほうは、野呂のいったとおり、「なるほど、とっつきの悪い、変人だな」と、思った。
「……それを確かめるために、こんな場所を指定してたのか?」
「いんや。ここ、知り合いがやっている店でね……」
 渋谷の雑居ビルの中にある、小さなバーだった。
「なにかと融通きくし、他の客を入れる前に、無理いってわざわざ店を開けて貰ったんです。
 まあ、こちらのオーナーにも久しく顔会わせてなかったもんで、ついでに、ってのもありますが……」
「……ついでに、ねぇ……」
「そう、不満そうな顔しないでくださいよ、三島さん。
 ここは奢りますから。
 カウンターで悪いですが、どうぞ、こちらに。なんでも注文してください」
 といっても、その男には野呂経由で、すでに十分な報酬が支払われているはずなのだ。その金額に比べれば、酒の一杯や二杯は、どうということもないはずだった。
「そういじめないでくださいよ、三島さん。
 こっちも、野呂さんの紹介だからこそ、こうしてつき合っているわけだし……そちらさんには関係のない話しですが、こっちも大概にごたごたしていましてね……。ちょっと前のクリスマス、今年は三連休だったでしょ?
 あの時、若いもんの火遊びにちょっくらひっかかっちまってましてね……洒落にならないダメージ受けたばかりで、まだ本調子じゃないもんで……」
「……まったく、近頃の若い者は……」、とか、「……この一件も、野呂さんの口利きじゃなければ、引き受けなかったなかったのに……」、とか、これ見よがしにぶつくさ言いはじめた男の顔は、確かに、憔悴しているようにみえた。
 年齢と職業の、見当がつけにくい男だった。
 三十代、だろうか? くたびれた革のジャケットにボロボロのジーンズとスニーカー、それに無精ひげ。自由業風、ないしは、失業者風の中年……といった風体だが、視線だけが、やけに鋭い。

「……で、さっそくメールに添付された資料、ざっと拝見させて頂きました……。
 わたしのような平々凡々たる人間には信じられないような部分も、若干……いや、ほとんどが、そうか……ですが、ここでは、それらの詮索は、いたしますまい。
 全てを事実、と、仮定した上で、話しを続けます。
 真偽のほどを判断することは、わたしの報酬分に入っていないと思いますし、なにせ、野呂さんご本人の人間離れした部分も、よーく存じ上げているもんでねぇ……」
 とろん、とした、いかにも眠たげな目つきのわりに、それなりに判断力はあるのかもしれない、と、三島は目の前の男を評価しはじめる。
 話し方に、無駄がない。
「……で、渡された資料の内容が全て事実、と仮定した上で、姫の正体を推測せよ、というのが今回のご依頼なわけです。
 整理すると、

 その一、前提。一族、または、六主家の人々、及び周辺に関する情報を、全て事実とする。
 その二、問題。その前提で、姫……茅ちゃん……の正体を推測せよ。

 ……というわけですな……。
 シンプルにこう考えてみると、割と簡単に答えが思い浮かびましたよ……」
 ここで、男は、一息、深々と呼吸をした。

「茅ちゃんは、多分、六主家の特性全てを受け継ぐように合成された、ハイブリットです。

 彼女が生まれたと推測される九十年代、すでに遺伝子改良技術はポピュラーなものだった……。まあ、実際に使われているのは、植物の種籾とかが主ですが……。
 ヒトに使われた例が少ないのは、ほ乳類以上に複雑な生物に、その手の技術を施した際の成功例があまりにも少ないのと……後は、倫理的、ないしは、道義的な問題だけです。
 何年か前、クローン羊がでただけで、あれだけ話題になる世の中ですから……。
 ……おっと、この辺は、三島さんのご専門でしたな……。

 だから、そうしたタブーにあまり関心がなく、かつ、必要性を強く感じていて、実験を続行するだけの財力と、それに、並々ならぬ意欲、ないしは動機をもった集団があった、と、すれば……。
 例えば、交配、という原始的な方法で自分たちの性能を思うように伸ばしてきた、一族、みたいな集団が、ですな……そんな集団が、遺伝子改良、などという魅力的な技術を……手を伸ばせば届く範囲にまで成熟してきた技術を、放置しておくとは……やはり、思えないんです……。
 幾多の失敗をものとせず、不屈の熱意を持って、なりふり構わず試行錯誤を繰り返し続けたとしたら……。
 数年とか、割と短い期間でも、それなりの成果を出せたと思います。

 茅ちゃんは、そのプロトタイプ……の、成功例、なのではないですか?
 人工的に遺伝子を弄くられた人間の生存確率とか、あるいは、特定の因子や能力のみを延ばすようなタイプの遺伝子操作の成功確率とか、その辺を判断する知識は、わたしにはありません。
 が……。
 ……今の技術レベルから類推するに、かなり貴重な成功例、なのでしょうねぇ……。

 それに……茅ちゃんを育てた、といかいう加納仁明氏も……その当時、加納という家の跡継ぎ、と目されていた人物なわけでしょう?
 それだけの大物が、何年もかかかりっきりで、たった一人の子供の教育係になる、っていうんなら……やはり、一族全体にとっても、かなり重要な意味を持つ、プロジェクトだったんだと思います……。
 茅ちゃんの育成……あるいは、『姫』がどこまで使えるのか、見極めることは……。

 その割には、その仁明氏は、その茅ちゃんを、ごくごく普通の子供として教育したようで……その辺りが、腑に落ちないといえば、腑に落ちないんですが……あるいは、仁明氏は、一族の総意に逆らって、茅ちゃんをあえて普通の子として、育てたかった……のかも、知れませんな……」

 その推論は、数日前、野呂良太が開陳したものと、大筋ではまったく同じものだった……。

「……茅ちゃんが発見された当時、性交渉の痕跡があった、というのも……器具を挿入して、卵子を採取したためでしょう。
 茅ちゃんは当時、そこまで成熟していたはずだし……あるいは、一族にとっては、茅ちゃん本体よりも、茅ちゃんの遺伝子情報のほうが、重い意味を持っていた、ということも……充分に、考えられるはずです……」

 言葉を切ると、男は、カウンターの中で開店前の仕込みをしている女性に、空になったグラスを掲げた。
「青子さん、お代わり」

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彼女はくノ一! 第三話 (23)

第三話 激闘! 年末年始!!(23)

 松島楓と才賀孫子は夕方から商店街のクリスマス・ショーに出演する予定だったし、加納茅も、昨日と同じように、乱入するつもりのようだ。茅がいくところには、大抵、荒野もついていく……。
 ということで、昼食に、職員たちと同じ仕出し弁当をとった後、松島楓と才賀孫子、それに加納兄弟の四人が帰っていった。
 加納荒野は帰り際に、香也に向かって「いい経験をさせてもらった」と言い残した。

 香也と樋口明日樹は、残って子供たちの似顔絵を描き続けた。
 多少、経験はあるといっても、対面して、見ず知らずの人間の顔を描いた経験がない樋口明日樹は、はじめのうちは萎縮して、手も滞りがちになり、線も硬くなってしまったが、隣で、マイペースで描き続ける香也との差を子供たちにはやし立てられるようになってからは、奮発して、本領を発揮しはじめた。明日樹は、隣に香也がいることも忘れて、その時描きかけの絵に没頭する。一人、また一人、と、目の前に次々に座る子供たちの顔を見据え、その特徴を素早くスケッチ・ブックに描き写す……。
「……もう、終わり……」
 香也に肩を叩かれて、明日樹は我に返った。
「……もう、一通りいきわたったみたいだし、いい時間だし……帰ろう。送ってく……」
 見渡すと、周囲に群がっていた子供たちは、すでに散っている。短い時間のように思っていたが、すでに日が暮れかかっていた。

「……こんなこと、毎年やってたんだ……」
 帰りのバスの中で樋口明日樹は、香也に、いった。
「……んー……。ぼくのほうは、真理さんのプレゼントのおまけみたいなもんだけど……。ぼく、こんなことくらいしか、できないし……」
 決して、あの施設にいた全員が、香也たちを歓迎していたわけではない。
 それでも、少数ながらも、香也の描いた似顔絵を、数年分保存している子供がいた。明日樹に、競うようにそれを見せにきた子供たちが。
「……わたし、狩野君のこと、なにも知らない……」
 明日樹のその呟きは声が小さすぎて、隣に座っている香也の耳にも届かなかったのか、香也は、何も答えない。

 樋口明日樹を自宅まで送り届けてから帰宅すると、クラッカーで出迎えられた。
「今年のイブは、みんなでこっちで祝おうってことになってな。真理さんとか羽生のねーちゃんに頼まれた」
 出迎えたのは、三角帽子をかぶった三島百合香だった。
「他の連中はマンドゴドラのケーキ持って帰ってるって話しだから、お前は炬燵にでもはいって、もう少しぼけーっとしてろ。そういうのは得意だろ? ん?」
 他の連中、羽生譲、松島楓、才賀孫子、それに加納兄弟が、いくらもしないうちに、どやどやと帰ってきた。
 なんと賑やかな事だろう……。
 香也は、そう思う。
 去年までは、真理と羽生譲、それに自分の三人しかいなかった。それが、いつの間にか住人が二人増え、その他にも、いろいろな人が集まるようになっている……。
「メリー・クリスマぁぁス!」
 飯島舞花と栗田精一も、途中から乱入してきた。
「……なんで、ここに?」
「なんで、って、ここでパーティーやるってメールしてきたの、ソンシちゃんでしょ? 仲間外れにしないでおくれよぅ! ちゃんと差し入れも持ってきたし、樋口にも連絡しておいたから……」
 そういって、飯島舞花はスーパーのポリ袋を掲げる。中には、未成年は飲んではいけないことになっている缶入り飲料が、満載だった。
「おー、でかした! でかいねーちゃん」
 どてら姿の羽生譲は飯島舞花をねぎらう。
「今夜は真理さん、いないからなー。無礼講だ無礼講。留守を預かったわたしが許可する!」
「……おい……いちおー、こっちも、現職の先生なんだが……」
「おー! ミニラ先生もこっちにきてたか。先生は相変わらずちっこくて可愛いな!」
「こら、飯島! 抱くな! 持ち上げるな! 頬ずりするな! 無礼者はエサ抜きの刑だぞ! 絶対、お前、もう飲んでるだろ!」
「硬いこというなよぉ、せんせー! ほーら、高い高い!」
「……ばんわーっす……荒野さん、こっちにいるってねーちゃんから聞いたんですけど……」
「荒野は向こうの炬燵で溶けているの。荒野、炬燵が好きなの」
「わっ! 猫耳だ! 本当に猫耳メイドさんがいたよ! あすねー!」
「……だから、いるっていったでしょ。
 この子、あんたのいう荒野さんの妹さんよ……」
「……ほえぇー……さ、流石は、荒野さん……」
「……なにが、流石なんだか……」
「おー。樋口兄弟もお着きかぁ……。大樹君も柄は悪いが、持ち上げ甲斐のあるちっこい体しているなぁ……高い高い、してやろうか?」
「……飯島舞花ぁ? なんでこんな所に……ってか、あんた、目が据わってるぞ!」
「……んふっ。そういうこという悪い子は、高い高いよりもスープレックス・ホールドのがいいかなぁ……」
「おい、栗田! そんなところで黙って見てないで、飼い主責任でこの巨獣止めろ!」
「……無理。まーねーが簡単に止まるよう人なら、おれも苦労してないって……」
「悟ったような顔して責任を放棄するなぁ!」
「いらっしゃいませ、お客様方。騒いでないで早く中にはいるの。ご奉仕とおもてなしはメイドさんのお仕事なの」
「あすねー! メイドさんだけでなくって、ミニスカのサンタまでいるよ! この家!」
「んー。なんだーこの鼻ピアス君はー? 誰の連れだぁ?」
「あ、羽生さん。この子、大樹っていって、わたしの弟で……」
「あー? 大樹……あれ、大樹、って、明日樹さんと? あ。そういや樋口だなあ、二人、いや、三人とも……ってことは、明日樹さんと未樹さんって……あー。そっかあ……世の中、狭いなあ……」
「あ。荒野さん、おひさしぶりっす。みきねー、荒野さんい会いたがってましたよ。今日は仕事のほう忙しくて来られなかったすけど……」
「あー。今頃は、お店もかき入れ時だろーなー……確かに。この間はお世話になったし、よろしくいっといて」
「妹さんともども、いつか店に来て、って伝言っす」
「あれ? こっちのサンタさんは、才賀さんじゃないんだ……」
「……なんで、このわたくしが、お仕事以外で、あんな屈辱的な恰好をしなければなりませんの?」
「……松島さんは、なんか喜んでいるみたいだけど……」
「あははははは。サンタさんが良い子のみんなにプレゼントなんですよー!」
「……あれ、喜んでいる、ってよりも、酔っぱらっているんじゃあ……」
「……うーん……。くノ一ちゃん、酒に弱いみたいだねぇ……。シャンパン一口であれだけできあがることができるなんて……安上がりなやつだ……」
「つべこべいう前に、一通り面子揃ったさっさとグラス持て、乾杯だ乾杯! で、その後は、無礼講だ!」

 ……メリー・クリスマス!

 の、翌日は、ほとんどの者にとって、地獄だった。
 なにせ、自分の適量を知らない者がほとんどだったので、翌朝、狩野家の居間には、急性アルコール中毒患者の群がごろごろとマグロになって炬燵の周囲に体躯を投げ出す羽目になった。

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髪長姫は最後に笑う。 「第三章」登場人物一覧

第三章 「茅と荒野」 登場人物一覧

加納荒野
 「役に立つ」と、茅は思っている。

加納茅
 主人公。

狩野香也
 「絵描き」と、茅は思っている。

狩野真理
 「可愛がってくれる」と、茅は思っている。

松島楓
 「トナカイ」と、茅は思っている。

加納涼治
 「あんまり会ったことない」と、茅は思っている。

才賀孫子
 「サンタ」と、茅は思っている。

三島百合香
 「料理の先生」と、茅は思っている。

羽生譲
 「背が高い」と、茅は思っている。

樋口明日樹
 「眼鏡」と、茅は思っている。

柏千鶴
 「優しいお姉さん」と、茅は思っている。

柏あんな
 「元気な子」と、茅は思っている。

飯島舞花
 「……大きい」と、茅は思っている。

栗田精一
 「……誰?」と、茅は思っている。

野呂良太
 「お調子者」と、茅は思っている。

地元駅前商店街の皆さん
 「世話になりました」と、茅は思っている。

[つづく]
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髪長姫は最後に笑う。第三章(18)

第三章 「茅と荒野」(18)

「荒野が茅を大事にする、というのは、少し違うの……」
 茅がそういうと、野呂良太は怪訝な顔をした。
「だって、荒野は、茅を対等の相棒だといってくれたの。
 だから、荒野が茅を大事にするのなら、茅も同じくらいに、荒野を大事にするの。どちらかがどちらかに、一方的に奉仕したり依存したりする関係ではないの。
 それが、仁明と荒野の、決定的な違いなの……」
 最初、怪訝な顔をしていた野呂良太が、茅の言葉を理解し、徐々にk顔を緩ませる。そして、耐えきれなくなった、といった具合に、頭をのけぞらせ、大声で笑いはじめた。その場にいた全員が、大声で哄笑しはじめた野呂良太を、何事かと注視する。
「いや、そうか! 姫と荒野は対等なのか!
 そうだな! そりゃあ、仁明にも、他の誰にも、できねー芸当だなぁ……」
 そういいながらも、野呂良太は、げたげた笑うことを止めない。
「……なにがそんなにおかしいのか、よくわからないけどさ……」
 自分が笑われている、と思ったのか、荒野は憮然とした顔をして、いった。
「あんたらにとって茅が何者かは知らないけど、おれにとって茅は……小さくて、見ていて危なっかしい、目の離せない女の子……ただ、それだけだよ」
「いやいや! 別にお前さんを馬鹿にしているんじゃないよ、荒野! むしろ、逆だ。全くもって、お前さんは、実に、正しい。
 ……で、涼治のじいさんは、茅のことについてどういってた?」
「茅を笑えるようにするのが、おれの仕事だって。それから、最後の連絡した時は、茅との生活をもっと楽しめ、ともいってたな……」
「なるほど、なるほど……」
 野呂良太は、なんとかこみ上げてくる笑いをかみ殺しながら、一人でうんうんと頷いた。
「加納のじいさんの考えていることが、段々みえてきた。そうか。理にかなっているっていやぁ、たしかに理にかなっている……後は、他の六主家の連中が、素直に納得してくれるかどうかだ……」
「おい! お前!」
 荒野とは別に意味で、三島百合香もムッとしていた。
「なに一人で納得している! もったいつけてないで、詳しく解説してみろって、今すぐ!」
「……おれにいわせりゃ、あんたみたいな人が、未だに、真相、見えていないってぇのが不思議なんだがね、先生……。まあ、いいか。
 今、しゃべれってんなら、しゃべっちまいましょう。
 ただし、これから話すのは、あくまでおれの推測だ。おれは、何年も前に足抜けしてっから、一族の中枢の情報にはアクセスできない。だから、不完全な情報を元にした、なんの裏付けもない、ただの推測だ……」
 そう前置きしてから、野呂良太は、加納茅の正体について、自分の推理を述べはじめた。

「……と、いうところだが……どうだい、先生。
 こう考えると、辻褄が合うだろう?」
「……たしかに、それに近いことは、チラリと考えついたような気がするけど……」
「先生は一般人だからな。なんだかんだいって、一般的な倫理コードに縛られている。こういう発想をする事自体、無意識理に封じているんだと思う……」
「……でも、おれや先生が、今までノラさんのような結論を今まで出すことが出来なかった、っていうのは……」
「荒野、お前は加納の直系、一族内部の……それも、中枢に近い人間だ。先生が倫理に発想を縛られていたように、お前も、その自出故に、一族の特殊性を、普段はあまり特殊だとは感じていないんだよ……。
 まあ、二人して、余計な先入観にとらわれていたってわけだ。
 その点、おれは足抜けしていて、一族のことを外から見ることが出来るし、それに、倫理的な束縛からも、比較的自由だ……。
 あと、おれが、この推論に自信をもっている根拠は……あんたの存在だ、三島先生。
 なんだって、涼治は、あんたなんて部外者をわざわざ引っ張り込んだんだね?」
「……わたしの、本来の専門が……」
「そう。たしか、民間の、ヒトゲノムの解析とか、先天的な遺伝子病の治療法を研究する機関にお勤めだったよなあ、先生……涼治のじいさんに引き抜かれるまでは……。
 じいさん、先生や荒野に、自力で早めに、おれと同じ結論を出して欲しかったんじゃないのかい?
 さて、ご本人はどう思うかね、お嬢ちゃん。
 今のおれの推論、なにかおかしな所はあるかね?」

「おかしな所はないの」
 茅はいった。
「推論はあくまで推論で、証拠はなにもないのだけど……論理的に、おかしな所は、ないの。
 多分……わたしは、姫は……そういう存在だと思うの」

「その推論が、正解だったとしても……」
 荒野はいった。
「なにも、変わらないよ。
 茅は、茅だ。少なくとも、おれにとっては……」

「だからよう……」
 野呂良太もいった。
「涼治のじいさんも『もっと楽しめ』っていったんだろ、お前に。
 荒野、お前も、たった今、いったばかりじゃねぇか。
『茅は、小さくて、見ていて危なっかしい、目の離せない女の子』だって。
 だからそれで、そのままで、いいんだよ。
 目の前に女の子がいりゃあなぁ、正体なんざ関係ねえし、意味もねえんだよ。一人前の男だったらなぁ!」

「早まるなよ、ノラさんとやら」
 三島百合香はいった。
「たしかにお前さんのその推論は、辻褄が合う。だがな、それで、即、正解って決まったわけでもない……」
「涼治のじいさんなら、正解、知ってるはずなんだが……素直に答え合わせしてくれるようなら、最初から荒野に説明しているよなあ……」
「うん。うちのじじいは、正面から聞いても、なんだかんだと、はぐらかすだけだと思う……」
「……やっぱ、もう一人の第三者にご登場願うか……。
 やつがおれと同じ結論にたどり着けば、この推論が正解である可能性は、かなり高くなる……」
「東京にいるとかいう、さっきの名刺の裏に書いたヤツか?」
「それそれ。奴さん、いけ好かない野郎だが、断片的な情報から大筋を掴みだす勘だけはいいからなあ……」

 その夜、荒野は、初めて茅を抱いた。

   [第三章・了]

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彼女はくノ一! 第三話 (22)

第三話 激闘! 年末年始!!(22)

 翌日の二十四日、早朝のうちに狩野真理が旅立ち、それを見送ってから、狩野香也、松島楓、才賀孫子、加納荒野と茅の五名は狩野家の前に集合し、路線バスに乗り込む。香也が幼い頃、一時預けられていた孤児院は市の外れにあり、狩野家からは、バスでも三十分以上かかる位置にある。
「……んー……悪いね。みんなに、荷物持ちさせちゃって……。いつもは真理さんの車でいくから……」
「そんなことは、いいんですけど……」
 バスの中で、才賀孫子は、香也に正面から問いただした。一昨夜の件以来、初めて香也とまともに会話しようとしている。
「こうして協力している以上、ちゃんと事情を説明してくださらないかしら?」
「……事情、っていっても……」
 香也は首を捻る。
「話せること、そんなに、多くはないんだけどね……。その頃のこと、あんま憶えてないんだけど……ぼくの両親が事故で亡くなったらしくて、身よりのなかったぼくがそこに預けられて……そこの職員やっていた真理さんと知り合って、真理さんが順也さんと結婚して、そのとき一緒にお世話になることになって……。
 まあ、ぼくもまだ、小さかったし、ほとんど後付で知ったことばかりなんだけど……。
 本当に、全然憶えてないからなあ……あそこに居た時のこととか……」
「……真理さん、狩野君のお母さんにしては若し、あんまり似てないとは思ったけど……連れ子かなんかだと思ってた……」
「……でも、これくらい、今、普通じゃないかな? 昨日、飯島さんのご両親も離婚してるって、いってたし……。それに、ぼく、恵まれている方だと思う。
 真理さんや順也さん、好きにやらせてくれるし……血の繋がりはないにせよ、それなりにうまくやっていけてるし……」

「ああ。来た来た。香也君。真理さんから連絡貰ったわよ。今年は大勢の友達と来るって。香也君、友達、できたんだね。それも、こんなに大勢」
 バスを降り、施設も玄関口まで行くと、四十年配の女性職員がわざわざ出迎えてくれた。
「背、また伸びたんじゃない? さ。みなさんも、こちらに……」
「あー……どこか、着替える所、貸して貰えませんか? 一人分、サンタの衣装を用意してきたんで……」
「あら、今年は本格的なのね。みんな、プレゼントよりも、似顔絵のおにいさん、楽しみにしているんだけど……」
「楽しみにしているの、小さい子ばかりですよ……。ちょっと育つと、こっちのほうなんか見向きもしないし……」
「そんなもんよ、子供なんて。すぐに大きくなるし、育てば変わるし……。香也君くらいかな? ここにいた時と、あまり変わらないのは……。背は伸びたし、少しはしゃべるようになったみたいだけど……」
「……んー……」
 香也はぼりぼり頭を掻いている。照れているらしい。
 外来者用の待合室みたいな場所でお茶を振る舞われ、一服している間に、松島楓が、普段は才賀孫子が商店街で着用しているサンタの衣装に着替え終えて、出てくる。それを機に、ぞろぞろと施設の中に入る。香也たちを出迎えた女性職員が、
「今年も、プレゼントを持ってきてくださったよー」
 と、あちこちで子供たちに声をかけまわっている。子供たちの反応は様々だった。無関心な者、楓の手から小さな包みをひったくるようにして、すぐ自分の遊びに帰る者、好奇心に満ちた目で香也たちを見つめるもの……。
 今年は、サンタの恰好をしている松島楓に興味を示す子供たちが多く、楓は、すぐに子供たちに囲まれた。
「……いつも、こんな感じなの?」
 香也に、樋口明日樹が尋ねる。
「だいたい。施設の公式な行事ってわけでもないし、大きな子供たちは、たいてい、外に遊びにいっているし……。
 荷物だけ送ってもいいかな……って思わないでもないんだけど……真理さんが、ぼくに、ここのこと、忘れちゃいけないって……まあ、ぼくは、自分に出来ること、するだけだけど……」
 そういって、香也がスケッチブックを取り出すと、廊下の隅にぺたん、と座り込んだ。すると、香也のことをしっている子供たちが、香也のまわりに殺到する。
 香也は、「はいはい。順番順番」とかいいながら、スケッチブックに子供たちの似顔絵を描き始める。ほとんど輪郭線だけできたような簡単な描写で、しかし、顔の特徴は、よく捉えている。相変わらず手が早く、一枚あたり、一分もかけていないのではないか。
「樋口先輩も、やってみますか? これ?」
「……わ、わたしは、狩野君ほど手が早くないし……あっ! あれっ!」
「うわぁ! 楓ちゃん! いくら子供たちが喜んでいるからって、子供でお手玉やっちゃ、駄目!」

 少し離れたところで、松島楓が、三歳くらいの子供を三人ほど順番に空中に放り出し、ジャグリングをしていた。順番に放り投げられている子供たちは結構喜んでいたが、見ている側は、心臓に悪い。

[つづき]
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髪長姫は最後に笑う。第三章(17)

第三章 「茅と荒野」(17)

 人数が多いため、2LDKの荒野たちのマンションでは狭い、ということで、茅のおせち料理を重箱に詰め、全員で、毎度おなじみの狩野家の居間、に移ることにした。

「……しかしお前さん、その恰好……淡いピンクで配色が統一されていないのが、せめてもの救いだな……」
「……おれの前髪、もこもこカールしてませんし、自分で『不死身の……』とか名乗るほど酔狂でもありませんぜ、先生……」
 三島百合香と野呂良太は、なんだか微妙にマニアックな会話を交わしはじめている。
「……先生のほうこそ……資料とかでイメージしてたのは、もっと知的でクールな大人の女性だったのに……実物のほうは……」
 そういう野呂良太は、帽子を脱ぐ。
 二十代後半、といったところか。三十にはなっていないだろう。顔立ちも、取り立てて美男というほどでもないが、それなりには整っている。目鼻の大きさや形が整いすぎていて、かえって印象が薄くなる……そんなような顔立ちだった。
「勝手にいってろって。こっちはずっとこの体でやってるんだ。その手のことはいわれ慣れてるって……で、なんだ。さっきの続きだが、お前さん、茅の正体がどうのこうの、いってたろ? あれ、今から吐く気にはなれないかね? ん?」
「おいおい! ここでかぁ?」
 野呂良太は、炬燵に両手を突っ込んだまま首を回して、そこにずらりと並んだ面々を示す。
 荒野と茅、三島百合香、松島楓……あたりは、まだいいにしても、狩野香也、羽生譲、才賀孫子は、あきらかに部外者である。
 それ以上に……。

「一番、羽生譲! 脱ぎます!」
「おやめなさい! あなたには恥じらいというものがないのですか!」
「そうそう堅いこというなよ、ソンコちゃん……」
「わたくしの名前はソンシです!」
「じゃあ、女子全員集合! みんなでピンクレディやろ。宴会芸はあれでキマリ!」
 外野が、早くも盛り上がり初めていた。とてもじゃないが、突っ込んだ話しをしたくなる環境ではない。

「……話せっていうのなら、話してもいいけどよ……。
 この場で、すぐにかぁ……。
 それにいっとくけど、おれのはあくまで、推測だぜ。状況証拠的に、こうなんじゃないか、って……そちらさんがどうやら、おれがたどり着けた結論にだどりつけなかった、ってのは、確かに驚いたけどよ……」
「……いわれてみれば、別に急いで聞き出す必要もないか……まあ、まずは酒だな……」
 三島百合香も、あっさり引き下がる。いつでも聞き出せる、と思ったのか、それとも、自力でも、いつかは同じ結論に達すると思ったのか……。
「んじゃあ、とりあえず、お前も楽しめ!」
 そういって、手にしていた杯をくいっと煽って、立ち上がり、
「お前らの踊りはまだまだ浅すぎる! お手本を見せてやる!」
 とかいって、アカペラで「UFO」のイントロを歌い出し、それに合わせて踊りだす三島百合香だった。
「……なあ、荒野……」
「わぁ! どさぐさに紛れて未成年に酒勧めてままわらないでください! 羽生さん!
 ……って、なんですか? ノラさん?」
「……お前さんところは、いつもこんな感じなのか?」
「この家、おれんところ、ってわけじゃないんだけど……この家は、まあ、だいたいこんなもんですね。
 あ。これ、食います? 茅が作った昆布しめ。よく味がしみてて、酒に合いますよ」
「あははははは。暑いのです。二番、松島楓、脱ぎます!」
「わぁ! 楓ちゃん! こんなところで脱ぎだしたら駄目! いつの間にこんなに飲んだんだ!」
「……いただこう……。ちょいマジな話しは、また後でな……。
 ん。意外といけるな、これ……」
「それはよかったの」
「お嬢ちゃんがつくったのか、これ。料理、うまいなぁ……」
「茅の料理はわたし仕込みだ。それからな……」
「ん?」
「この子がな、お前のいう、姫ってやつだから」
 三島百合香が茅の頭をぽんぽんと平手で軽く叩くと、野呂良太は、その場でしばらく硬直した。
 そして、ゆっくりと周囲を見渡す。
 メイド服を脱ごうとしている松島楓。それを止めようとしている狩野香也。歌って踊っっている羽生譲。怒りながらも隣でそれにつきあっている才賀孫子……。
 炬燵には、野呂良太と加納荒野が並んで座しており、その側に、加納茅と三島百合香が、立っている……。
「……この子が……姫、だって……」
「……あ。ああ……。
 一族では、そういう呼ばれ方も、しているらしいね……」
「……髪長姫……」
「そう、それ。最近はそんな呼び名、すっかり忘れていたけど……」
「……なるほど……」
 野呂良太の顔が、ゆっくりと、歪む。
「……仁明は隠し、荒野は露にする……。そうか……いや、それが、正解なのかも知れないな……。
 お嬢ちゃん……茅ちゃん、とか、いったか……。
 ちょっと聞きたいんだが、あー、君は、今、幸せか?」
「幸せ、の定義をして貰わないと、答えられないの。
 仁明といた時は、閉じていたけど充足していた。
 荒野といる今は、開いているけど不安定……。
 どちらがいい状態かは、判断が難しいの」
「……頭がいいな、お嬢ちゃん。そうそう。そういうことが、聞きたかったんだ。
 じゃあ、言い方を変えよう。
 お嬢ちゃん自身にとって、今の環境は、満足できるものなのかい?」
「おおむね。
 細かい所で不満点もあるけど、それは環境のせいいうよりも茅自身の肉体的な限界に起因する点が多いの。例えば、茅はもっと多くのものに触れ、多くの事を知りたいと思っているけど、一日に何時間かは睡眠を取らなければ、受け入れた情報を処理する効率が激減する。
 荒野は茅が知りたいものに触れることを手助けしてくれるし、周囲のみんなも適度にフレキシブルな刺激を与えてくる。
 茅自身の肉体的生理的な限界値以外、特に不満に思う点はないの」
「確かに、仁明の所では……学習という点でも、かなり限界があったか……」
「ここは、仁明の所よりも不安定かも知れないけど、図書館もネットもあるの」
「……そう考えると……お嬢ちゃんがここに来たのも、いいタイミングだったのかも知れないな……うん。そうだ。お嬢ちゃんは、あんなちっぽけな廃村で終わるような器じゃないもんな……。
 おい、荒野! このお嬢ちゃん、大事にしろよ!」

[つづく]
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blog紹介 「新セクシーフォト全集」

blog紹介 「新セクシーフォト全集

美しくセクシーな写真集です。
美しくセクシーな女神たちをご鑑賞ください。
“一味”違います。
コーヒーでも飲みながらお楽しみください。
女性にもぜひ観ていただきたいと思っています。

とのことですが、確かに、
“一味”違います。

基本的に、白人美人系の拾いもの写真を整理したブログなんですけど、

1.モデルの質が高い。
2.サムネイルが大きめ。
3.一日一回更新で、エントリ毎に日本語タイトルと収録画像数、通し番号がふってある……など過去ログの整理も行き届いている。
4.アフィリエイトはやっているが、騙しリンクはない。

ということで、かなり良心的、かつ、見やすいブログだと思います。
写真のモデルさんは、金髪率とボイン率が高いっす。

白人系でメリハリの効いた体型の女性がお好きな方は、どうぞ。


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彼女はくノ一! 第三話 (21)

第三話 激闘! 年末年始!!(21)

「わたしずっと山奥にいたから、こんなに人をイッパイ見るのも初めてですし……」
 帰る道すがら、松島楓は、屈託のない笑みを浮かべて、同行した二人にそう語る。彼女にとっては、「トナカイの着ぐるみを着る」ということは、屈辱的であるよりは、むしろ些末な、なんでもないことらしい。
「商店街の人たちやお客さんたちに喜ばれると、素直に嬉しくなるんです。わたしでも、なにか人の役に立てるんだなあ、って……」
 そういう松島楓は、狩野香也や樋口明日樹と同じくらいの年格好の少女に見える。
 が、一月……いや、もう二月近く前になるか、狩野香也の上に、文字通り、降って湧いてきた少女、であり……その現場を、樋口明日樹も目撃している。
「わたし、大人になったら、見ず知らずの他人に、いろいろ酷いことをしなければいれない……そう言い聞かせられながら、育てられてきました。
 だから、今の平和な生活が、すっごく楽しいんです……年明けからは、本当に、学校に通わせて貰えるっていうし……」
 外見上は自分たちと同じようで、言葉も通じるけど……松島楓と自分とでは、育った環境があまりにも違いすぎる……と、樋口明日樹は、感じる。
 松島楓は、帰宅した狩野香也にべったりと張り付いていつ、というようなことを、羽生譲は、以前から、それとなく、樋口明日樹の耳に入れている。たぶん、羽生譲なりの配慮、なのだろう……。
 ……でも、これは……松島楓が狩野香也を頼りにする気持ちは、いわゆる色恋沙汰的なものとは、少し種類が違うのではないか? 樋口明日樹は、そう思わざるを得ない。
 自分の狩野香也に対する気持ちも、また……羽生譲がそうだと言い切るほどには、樋口明日樹自身は……狩野香也に恋愛をしている、という自覚が持てないでいる。
 たしかに、狩野香也という存在は、今では、樋口明日樹にとってかなり大きな存在だ……。しかし、それは、世間一般的にいうところの「恋心」ないしは、いわゆる「異性への関心」なのかどうか……恋愛経験のない樋口明日樹には、イマイチ、断定できない。
 そもそも、下手をすると、香也本人よりも、香也の絵のほうが好きなような気もするし……。
 だから樋口明日樹は、松島楓にも、敵愾心や競争意識は持てないでいる。例えばこれが、同じ狩野家の同居人でも、才賀孫子が香也に接近してきたたとしたら、かなり心穏やかでいられなかった気もするが……。
 現在のところ、樋口明日樹と松島楓との関係は、極めて良好である。

 松島楓は、無邪気に、この日あったことのあれこれを、遂一報告するように同行する二人に話しかける。樋口明日樹は、松島楓の話しに丁寧に耳を傾け、ひとつひとつに相づちをうつ。狩野香也は、松島楓の話しをきいているのかいないのかよく分からない。例によって、ぼーっとした表情をして、歩いている。
 年の瀬が押し迫ってきたその日、夕刻の帰路、三人の様子は、そんな感じだった。

 狩野家に着くと、狩野真理が三人を出迎えた。
「あら、樋口さんも一緒? よかったら晩ご飯、樋口さんもこっちで食べちゃいなさい」
 樋口明日樹の家は兄弟が多い。故に昔から、外で食事をする機会があったら、逃さないようにする癖がついてしまっている。明日樹だけではなく、他の家族も、だいたい、同じような癖がついている。食い扶持が減れば、それだけ、他の家族におかずが余分に回るからだ。これは幼い頃からの習性、みたいなもので、現在では、明日樹の姉は、勤務時間が不規則な職場に就いているし、弟は不良化というより、半ば野生化しているので、夕食の時刻になっても帰らないことが多い。故に、もはや明日樹が外食の機会を好機とすべき理由はないのだが……狩野家のお誘いに限り、明日樹は、だいたい受けることにしている。
 真理の料理の腕が確かだったことと、他の住人や常連の話しが、面白かったからだ。以前は、年上の女性……といっても、姉とは全くタイプが違う羽生譲がいるだけだった。が、現在では、松島楓がいる。才賀孫子がいる。それに、時々、加納兄弟が混ざる。
 ここ最近の狩野家は、以前と比べても、すっかり賑やかになってしまった。

 明日樹たちから少し遅れて、才賀孫子も、加納兄弟と、それに、何故か、飯島舞花とその付属物一名を伴って帰宅してきた。真理が、明日樹にしたのと同じように、夕食を勧める。これほど大勢の人間を招待して、果たして大丈夫なのか、心配になってきたが、真理曰く、「明日からしばらく留守にするから、その分、総菜の作り置きを余分にしていた」ということだった。
「あれ? 樋口? なんでこここに……あ。狩野……そうか、狩野って、ここの狩野、だったのか……すぐ近くなのに、今まで気づかなかった」
 どやどや入ってきた一団の中で、すでに炬燵に入っていた樋口明日樹をみつけた飯島舞花がなにかいいかけたが、すぐに、同じ炬燵に入ってスケッチブックを広げていた狩野香也の存在に気づき、一人で納得して、うんうん、と頷く。
「どうだ。そっちはうまくやってるか?」
 飯島舞花は、樋口明日樹の隣に潜り込み、大きな背を丸めて、炬燵に両腕を突っ込む……振りをして、肘で明日樹の腕を軽く小突きながら、明日樹だけに聞こえるような小声で、囁く。
「そっちほどは、うまくいってないわよ。バカップル」
 明日樹も、飯島舞花に、小さい声で囁き返す。飯島舞花と栗田精一が付き合っていることは、校内でも有名だった。
 身長差がありすぎる、ということと、女性の方が背も高いし、学年が上だし、美人だし……という点で、それなりに目立つ組み合わせ、でもあった。
 栗田との付き合いをカミングアウトするまでは、舞花も結構猫を被っていて、スタイルの良さとか顔とか、外見的な面ばかりが注目されていたが……今では、舞花の、気さく、かつ、ダイナミックな性格のほうも、周知のものになりつつある。

 そうこうするうちに、羽生譲も帰宅し、大人数での賑やかな食事となった。
「ああ。そうか。真理さん、明日からでしたっけ? 先生の個展」
「そう。留守中お願いね」
「うす。って、まあわたしは、あんまやることないけど……」
「料理は交代で、ということで……」
「あ。こーちゃんは止めておいたほうがいい。この間やらせてみたら、指切りそうになったし……」
「そういや、楓は料理できるのか?」
「野戦食や、サバイバルなものなら習っていますけど……」
「茅が作ってもいいの」
「あー。そうだな。普段、お世話になっているし、最近は腕も上がってきているし……その代わり、おせちばっかりだけど……」
「ああ、それから……。
 こーちゃん。今年はわたし、いけないけど、いつものプレゼントもちゃんと用意していたから、明日か明後日あたり、お願いね……」
「……んー……わかった……明日、行く」
「なんですか、それ?」
「孤児院。ぼくのルーツ。毎年、ぼくと真理さんとで、行くことになっているんだ。クリスマスの時期に……」
「え?」
「あれ? いってなかったっけ? ぼく、養子。この家の、もらわれっこ」

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髪長姫は最後に笑う。第三章(16)

第三章 「茅と荒野」(16)

『跳べば、それだけ軌道を読みやすいというのに!』
 跳躍した野呂良太に、楓は、六角をまとめて帯状に固定していた紐を緩め、一挙に、投擲する。大量の六角は、段幕となって、空中の野呂良太の身に迫る。
 野呂は、それを予測していた。左手のグローブから、強靱なフィラメントを射出。フィラメントの先端についているアンカーを振り回し、回転しつつ飛来する六角に、当てる。横合いから回転する方向に余分な力を加えられた六角は軌道を反らし、ちょうどビリヤードの玉のように次々と連鎖的に隣接する六角も巻き込んで、周囲に拡散していく。
 結果、六角の段幕の中央にぽっかりと隙間が出来る。
 その、ドーナツ状の中心の、空白部分を、野呂良太は悠然とくぐり抜け、松島楓のすぐ横を通過し、去っていく。
「なかななか楽しかったぜ、お嬢ちゃん」
 楓の脇をすり抜ける際、野呂良太は、そう囁いた。
 優れた動体視力と反射神経を持つ野呂の者の中でも、ごくごく一部の者だけにゆるされる芸当だった。

 一瞬、呆気にとられた楓が振り返った時、野呂良太は、すでに数十メートルの距離を稼いでいた。

「困るなあ、ノラさん……」
 ひた走る野呂良太の耳に、意外なほど近くから、加納荒野の声がした。みると、野呂良太の全力に近い走りに、平然とした顔をして、加納荒野が併走している。
「……戦う気はない、っていいながら、思わせぶりなこといって、大げさな逃げ方するから、なんかみんなやる気になっちゃってるじゃないか……」
 荒野が苦笑いをする、気配がした。
 どうやら、荒野だけは、野呂の「戦意はない」という発言を信じているらしい。少なくとも、表面上は。
「……そんなこという暇あったら、お前の仲間たち止めろってーの!」
 野呂は、怒鳴るようにいう。かなり、自暴自棄な気分になっている。

 野呂にしてみれば、現在の状況は、
『……ちょいと様子見、のつもりで出向いた先で、気がつけば、いつの間にか、敵対する必要もない相手から、追いつめられている……』
 という状態なわけで……このような醜態を晒すことは、野呂良太にしたら、不本意もいいところだ。

「……おれはなぁ、お前一人が相手だったら、完全に逃げ切ってたぞ! 聞いてねーぞ! 荒野! お前に、こんなに仲間がいたなんて!」
 喚きながらも、速度を緩めるつもりはないらしい。完全に荒野を信用しきっているわけではないようだ。
 かなり蛇行しているとはいえ、マンションから、もう五キロ以上は離れたはずだ。 少なくとも、ライフルの射程外には出ているはずだったが……。
「……仲間……仲間……。
 仲間、ねぇ……あいつら、おれの仲間ってことになるのかなぁ……」
 野呂と併走しながら、荒野は腕を組んで考え込むふりをする。野呂の全力に近い走りについてきながら、随分余裕があるやつだな、と、野呂良太は思った。
『……可愛げのないガキだ……』
 と。
「だから、考えるのは後にしろって! まずは、やつら止めてくれって!」
「いや、仲間かどうかいまいち自信がないし、止めても聞く連中かどうかわかんないけど……」
 荒野は、そういって背後に声をかけた。
「……と、いうことだからさ、楓。
 とどめを刺すのは、やめておいてくれないか?」
 慌てて振り返ると、いつの間にか、メイド服が野呂の背後を取っていた。
 ……気配を気取られないまま背後を取られる、ということは、楓は、いつでも野呂良太に致命傷を与えられた、ということであり……野呂良太は、その時まで楓の存在を全く感知できなかったので、知らないうちに背後を取られていたことを知って、ギョッとし、次いで、戦慄を憶えた……。
『……まったく、なんてぇガキどもだ……』
 実は楓は、先ほどの段幕で手持ちの得物を使い果たし、追いついたはいいが、それから手のうちようがなくて途方にくれていたところだった。
 また、荒野のほうも、そうした楓側の事情をだいたいの所は、察知していたのだが……わざわざ、そのことを野呂良太に明かす必要性は、どこにも、なかった。
 そのおかげで、『荒野が、野呂に気づかれないように、今まで背後のメイド服を制していた』のだろう……と、野呂良太は、勝手に勘違いしている。
「……攻撃を止めるのは、いいんですけどぉ……」
 楓はすぐに足を止めて、いった。
「……それよりも先に、帽子の人も、足を止めたほうが、いいと思います……」
『……なに?』
 と、野呂が、楓の言動を、いぶかしく思う間もなく……。
「……おごぉわぁっ!」
 なにか、強靱なものに足をとられた野呂良太は、奇妙な声をあげ、派手にすっころんだ。

「本当にこっちのほうでいいのか、茅ちゃん!」
「大丈夫なの。いい具合にみんなが足止めしてくれたの。もう、追い越しているの」
 羽生譲の乗るスーパーカブの後部座席には、茅が乗っている。
 茅は、上のほうを向き、あちこちめぐるましく視線を走らせながら、羽生譲を誘導した。
「先回り、できたの」
 マンションから五キロほど離れた住宅街の真ん中の、何の変哲もない十字路にスーパー・カブを停めて、降りた。
「……たぶん、少し先で合流して……このあたりに、でてくる筈なの……」
 そういって、マンションの植え込みに落ちていた奇妙な形のグローブ(?)を自分の右手に填めて、手のひらを上に向けて、左手で、手首のあたりをごそごそ触る。
「ぶしゅう。」
 という、どこか間の抜けた音が、グローブから、した。
「……えっとぉ……」
「今、糸……とても細くて強い糸を、この手袋からだしたの」
 羽生譲は、こわごわと、右手を捧げ持っている茅の、腕の先を、まさぐろうとする。
「気をつけて。細すぎるから、素手で触ると、指が切れることがあるの」
 そういわれて、手にマフラーをからめ、恐る恐る触ってみる。
 確かに、細長い糸状のものが、茅の腕の先から電柱の天辺あたりまで、ピン、と張っているのを……マフラー越しに、感じた。
 糸が細すぎて、目では確認できなかったが……。
「……おぅ……すぱいだーまん……」
 納得した羽生譲は、間の抜けた声をだした。
「これから、ここに人がひっかかるの」

 で、野呂良太は、先回りしていた茅のトラップに、見事に引っかかった。
「……おごぉわぁっ!」
 奇声を発し、元はといえば自分のギミックであったグローブを使って張られたフィラメントに足をとられ、それまでの俊敏な身のこなしが嘘のような、無様な恰好で、それはもー、見事なまでに、ど派手に、すっころんだ。
 グローブを外し、手で持っていた茅は、「アタリ」がきた、と、感じた瞬間、ぱっと手を放した。
 グローブは、「すっ飛んで」いく野呂良太に引きずられて、びゅん、と音をたてて飛んでいき、フィラメントをぐるぐと野呂良太の足首に絡みつけた。

 全力に近い速度で走っていた野呂良太の体が、足をとられたからといって、慣性の全てを消失できるはずもなく……野呂の体は、足首の辺りにフィラメントを複雑に絡ませたまま、十メートル以上も、すっ飛んでいく。

「……本当に、ひっかかってやんの……ドリフのコントか、これは……」
 くわえ煙草の羽生譲が、目を点にしながら、呆然と呟いた。
 傍らの茅に視線を落とすと、羽生譲に向かってVサインを作ってくれた。
「……ま、いいけど……おーい。帽子のおっさん! 生きてるかー!」
 帽子のおっさん……野呂良太は、最終的には、元はといえば自分のものだったギミックに足首を縛められた形で、電信柱の上のほうから、だらーん、と、逆さ吊りなってしまった。
 もちろん、こうなってしまっては、思うように身動きも出来ない。
「……一応……」
 不機嫌さを隠しもせず、野呂良太は、うっそりと答えた。
「どうする? ノラさん。まだ逃げてみせる?」
 どこか上のほうから降りてきた荒野が、逆さ吊りになったままの「ノラさん」とやらに、いった。
「……だから、足を止めた方がいい、っていったのに……」
 メイド服姿の松島楓も、降りてくる。
「……おれはなぁ……今、この拘束を解いてもらうよう懇願するのが先か、それとも一服して気分を落ち着けるのが先か、という難問に、取り組んでいる真っ最中なんだよぉ……」
「……あ。そ。じゃあ、ノラさん。その難問の結論が出るまで、一晩でも、そこで考えこんでなよ……。
 さあ、みんな、帰ってメシにしよう。茅、最近料理の腕をめきめきあげてきてさぁ……」
「……わー! ちょっと待った! 荒野! 本気で見捨ててるんじゃねえ!」

「……で、結局、拾ってきたってか……」
 マンションの、荒野たちの部屋に来ていた三島百合香出迎えた。その部屋には、別に、もう二人の人間がいて……。
「……あ、あのぉ……もう、そろそろ……」
「駄目! まだ動かない!」
 ベランダで、ライフルを構えたままの恰好で、狩野香也に身動きを禁じられている、才賀孫子がいた。狩野香也は、才賀孫子の姿を、必死になってスケッチしている。
 どうやら、絵に関することになると、狩野香也は、押しが強くなるようだった。

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blog 「美しい妖精たち」紹介

blog 「美しい妖精たち

世界中の美しい妖精たちの画像を集めました

ということで、白人美少女のヌード写真を集めたブログ。
エロというよりは、アート系です。
モデルの質は、メチャ高で、ほぼ毎日更新。

そのはずで、どうも写真の引用元はほとんど「MET-ART」というけっこう有名なサイトからのものらしい。
ちゃんと、モデル毎にサンプルページへのリンクもはってある。
(各エントリの、
「続きを読む?」→下部の「この妖精をもっと見たい!?」で、
MET-ART」のサンプル写真サムネイル・ページへ飛ぶ)

だけど、この「MET-ART」、有料無料含めてコンテンツが多すぎるから、日本語で書かれた「見本blog」の存在は、けっこうありがたいかも。

きれいな洋ティーンが好きな方向け。


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彼女はくノ一! 第三話 (20)

第三話 激闘! 年末年始!!(20)

『……あ!』
 樋口明日樹は、香也が指先を浮かせて、なにかを描く動作をしているのに気づいた。
 これは、香也がインスピレーションを受けた時の癖で、頭の中でラフ・スケッチかなにかを描いているつもりでも、無意識裡に腕や指先が動いている。イメージ・トレーニングの絵画版、といったところだろうか。
『……でも、人物画のモチーフで、ここまで狩野君が乗り気になったことって、今まではなかったんだけどなぁ……』
 樋口明日樹は複雑な心境で、無意識に腕を動かす香也をみている。
 明日樹にみられている香也は、ステージの上で、何十年も前のチープな歌謡曲を歌って踊っている三人の娘に注がれている。だが、三人の顔や体、動きなどの外見よりも、もっと別のなにかを、三人の姿から探ろうとしているようにも、みえる。
 香也は、網膜に映る具体的な事物ではなく、脳内のイメージを模索しているような、どこか焦点のあっていないような目つきをしていた。さまよい歩く夢遊病者のような目つき、とでもいえばいいのだろうか。
 とろん、としていて……心ここにあらず……といった雰囲気を、香也の体全体が放っていた。
 ……少なくとも、ステージ上の彼女らに、女性的な魅力を感じているわけではないのだ……。
 と、明日樹は、そう、思おうとした。
「……おーい……狩野くーん……起きてるぅ?」
 冗談めかして、香也の目の前で手のひらを振ってみる。
「あ、先輩。ごめん。ちょっと考えごとしてた」
 意外なことに、香也はすぐに反応した。しかし、視線は、ステージの上に釘付けになったままだ。
「ひょっとして、新しいモチーフみつけた?」
「モチーフ……って、わけではないけど……」
 香也は、意外にはきはきと答える。でも、その歯切れの良さが、なんか、いつもぼーっとした印象のある香也らしくなかった。
「あれ、ぼくも、そろそろ模写や技法の練習ばかりではなくて、自分にしか書けない絵を描きはじめる時期なんじゃないかな、って、たった今、思い始めたところ……」
「……あの……この、あの子たちの歌とか踊り、そんなに、いい?」
 才賀孫子の歌唱力とか、松島楓の動きのキレのよさとかは認めるものの……総体的にみると、明日樹には、素人芸の域を出ていないように思えるのだが……。
「……いや、うまい下手、っていう問題じゃなくて……なんていうかな……」
 香也は、しばらく黙り込んだ。
 明日樹に説明するのに適した言葉を、探しあぐねているようだ。もともと、弁の立つ少年ではない。
「なにかを、したり、作ったりすることで……それは、歌でも踊りでも、絵でもいいんだけど……それを目にした人を、動かす……感動、とはいかないまでも……なにか、感じさせる……ことに、ぼくは、今までためらいがあった……」
 ひとつひとつ言葉を探りながら、香也は、自分の考えを、ゆっくりと明確化していく。
 樋口明日樹も、それを真剣に聞く。
「少し前、ある人がぼくの絵をみて、空っぽだね、といって、ぼくも反射的に、空っぽだよ、って答えたんだけど、でも、その人は、空っぽだけど、でも、ぼくの絵にはなんかあるっていってくれて……ぼくは、自分の中になにもない、と、今までずっと思っていて、それを埋めるために絵を描いて、描き初めて、書き続けてきて……でも、空っぽだけど、なんかありそうだていってくれた人がいて……もし、その人がいうように、ぼくの中になんかあったとしたら、ぼくにはもう絵を描き続ける理由がないってことで……ああ。そうじゃないな……」
 香也は、頭を掻きむしる。これほど多弁な香也も、樋口明日樹は、初めてみる。
「……理由があろうがなかろうが、ぼくは絵を描くのが好きなわけで、好きでやっていることに理由をつける必要もない、わけで……でも、最近は、なんかいろいろあったせいか、自分の絵をいろいろな人にみて貰いたい、とか、ぼくの絵から、なんか受け取って貰いたいって気持ち……欲、が、強くなってきて……うん。それだ」
 香也は、ステージの上で歌い続ける三人の少女を指さした。
「……ぼくも、彼女たちがやったみたいに、いつか、自分の絵で、いろいろな人に、なにかを与えたい。
 だから、これからは、人真似ではなくて、ぼくにしか描けない絵を描くための練習を、はじめようと思う」

「……うん」
 契機はいろいろと……それこそ、最近香也が体験した、大小様々な出来事が影響しているのだとは思うけど……香也は、最近、変わった……ように、見える。あるいは、変わりつつある。
 樋口明日樹が出会った半年くらい前の香也と今の香也は違うし、半年くらい後の香也と今の香也も、おそらく同じくらいに違うだろう。
 でも……。
「……いいと思う。それで。
 狩野君は、絵に、もっと自分を出すべきだよ」
 数年先、数十年先まで……とは、いはない。
 ……せめて、あと何年かは、香也の側にいて、香也の変化を見届けてみたい……樋口明日樹は、相変わらずステージを見続けている香也の横顔をみながら、そんなことを考えていた。

 ……なにせ樋口明日樹は、狩野家の関係者以外で、初めて香也の絵に価値を見いだした人間なのだから……。

 盛況のうちにクリスマス・ショーが終わるのを見計らって、樋口明日樹は、香也の腕をとり、ステージの脇の楽屋まで、半ば無理矢理、香也を引っ張っていく。
 珍しく、香也がやる気を出したのだ。そのきっかけとなった人物たちと、改めて対面させれば、もっといい刺激を受けるかも知れない……。
 樋口明日樹は、そう思った。
 当然のことながら、明日樹は、昨夜、狩野家の風呂場で起こった騒動を知らない。だから、なぜ顔見知りの人々に挨拶にいくのを、香也がいやがっているのか、その理由も察することが出来ない。

 二人が顔を見せるとほぼ同時に、すでに私服に着替えていた才賀孫子が「用事があるから」と出て行った。メイド服で乱入した加納茅は、すでに姿を消していた。羽生譲も、表面上はいつもと同じように振る舞おうとしていたが、どことなく、上の空っぽい空気が周囲にまとわりついていて、不自然に顔を反らせて香也の顔をまともにみようとしなかった。
 やはりトナカイの着ぐるみを脱いで私服になっていた松下楓だけが、いつも通りの様子で「一緒に帰りましょう」といってくれた。

[つづく]
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blog 「Mirai 《愛の記録》」紹介

blog 「Mirai 《愛の記録》

例によって、管理人さんの自己紹介から引用。
Mirai(HN)のmarin&skです。
今年で10年目を迎えましたが、喧嘩もした事がない仲の良い夫婦です。
趣味はこれといってありませんが、ハイキング・スポーツ観戦・ドライブにはよく行きます。
何処に行くのもいつも一緒です。
今後、不定期になるとは思いますが、私たち(marin)を見てください。
宜しくお願いします。

とのこと。
ご夫婦でやっていらっしゃる、いわゆる「露出写真」のブログです。

被写体である奥さんが、どの写真の中でもじつにのびのびとリラックスしていらっしゃる。
このblogみてると、「本当に仲がいいんだな」とほのぼのします。

露出やっているわけですから、お○場に行ったり、といかにもそれらしいシュチュエーションもあるんですけど、わたしのお薦めは、「青い空と雲、そして山!」と「同第二弾」の二つのエントリですね。
青空をバックにヌード、というのがなんか決まっている気がします。

自然物と人体の対比、という伝でいうと、「紅葉をバックにしたシリーズ」なんかも、かなり、いい。

たぶん、写真に詳しい人とかにみせると露出がどうのとか難しいこといわれそうな気がしますが、素人が趣味の範疇でやっているヌード写真としては、かなり上品だし、様になっているんではないでしょうか?

観ていて、気持ちがいい写真が多いです。


avies

髪長姫は最後に笑う。第三章(15)

第三章 「茅と荒野」(15)

「本当はお姫様のご尊顔も一目を拝見してみたかったんだがな。
 そこの荒野が怖い顔して睨んでいるし、今日の所は早々に退散するわ……」
 そういうと野呂良太は、一足で背後に跳び、ベランダの手すりを飛び越え……。
「……じゃあなあ、荒野!
 一族とつるんでない調べ屋が必要になったら、いつでも声を掛けてくれや!」
 ……そのまま、空中へと、ダイブする。

 荒野がベランダの手すりに身を乗り出すと、寝そべった姿勢のまま、野呂良太は帽子を軽く持ち上げ、目礼してから、手首をひらめかせた。
 野呂の手首から、なにか透明な細長い物が、非常階段の方向に射出される。多分、ピアノ線とかワイヤー……それに類したものを、手首にでも仕込んでいたのだろう。
 案の定、野呂は、次の瞬間には、その強靱な糸をたどって、非常階段にとりついている。慣れた身のこなしで、ベランダを飛び出してから階段にとりつくまで、わずか、一、二秒ほど、だろうか。
 あのような仕掛けを多数用意し、なおかつ、野呂の脚力が加われば……なるほど、「逃げ足が自慢」とも、いいたくなるだろう。

 だが、荒野は、笑いたくなった。
 今の野呂は、フリーランスであるため、荒野のように一族の情報源に気軽にアクセスできる立場ではない。だから、多少の情報不足は、しかたがないといえば、しかたがないのかもしれないが……。
 それでも、自分の術に溺れ、事前調査と逃走経路を確保する努力を怠ったのは、いいわけのしようもない失態だ……と、荒野は、そう思った。

 荒野が部屋を出るのと同時に、松島楓も俊敏な挙動で、ベランダのほうに向かう。
 茅も、動く。
 2LDKのうち、衣装部屋になっているほうの部屋に向かい、無骨な塊を抱えて、すぐに帰ってくる。
「これ、才賀の!」
 一声、そういって「それ」を才賀孫子に手渡すと、きびすをかえし、
「羽生! 来て!」
 すぐに、荒野が開け放した玄関から、外に出ていった。

 松島楓は、三島の部屋からは階下にあたる荒野たちの部屋のベランダから、文字通り、飛び出していた。
 途中でベランダの手すりに捕まりながら、跳躍を続けあっという間に三島の部屋のすぐ下にまでたどり着く。

 ちょうど、その時……そこから、野呂良太が、空中に身を踊らせた。
『……迂闊な……』
 身一つで、ベランダの手すりを駆け上がってくる、松島楓のような人間が階下に控えていたとは、野呂良太も予測していなかったのだろう。
 しかし……自由落下に身をゆだねる、ということは、容易に軌跡を読める、ということを意味する。敵地でそのような行動を選択するのは、あまりにも慢心がすぎるのではないだろうか?
 野呂良太の不用心さには同情せず、楓は、躊躇なく得物を投擲する。

 非常階段にとりついていた野呂は、予想していなかった下方からの攻撃を、風音で察知した。野呂の者は、「健脚と鋭敏な五感」が自慢なのである。
 野呂良太は、音を頼りに、すんでのところで身をよじって投擲された「六角」をかわす。しかし、とっさのことで全てをかわしきれず、六角の一つが、ワイヤーとアンカー、それにガスによるアンカーの射出装置を組み込んだ特製のグローブをかすめ、野呂の右手からもぎ取る。
 声を上げるいとまもなく、はるか下方に落下していくグローブを見て、野呂は、舌打ちをする。
 組織のバックアップが期待できないフリーランサーの野呂にとって、こうした「特殊装備」を失うことは、かなりの痛手になる。
 それよりも……。
「……六角、だとぉ……」
 無警告で六角を投げつけてくる、襲撃者の剣呑さに、驚愕する。

 六角とは、一族の組織で開発された、投擲用武器の名だ。その名の通り、ずんぐりとした六角柱の形状をしており、天辺と底辺には起伏を与えられている。しかし、手裏剣のように刃はついていない。鉛などの重金属を主体とした合金製で、強靱な繊維を織り込んだ防刃仕様のジャケット越しにでも、相手にダメージを与えることを目的として開発された。訓練された術者が扱えば、防弾ヘルメットくらいは簡単に貫通する。生身の人間に使えば、回転しつつのめり込み、周囲の肉をミンチにしながら下にある骨を砕く。

 つまり、「警告抜きに六角を使う」ということは、
「これから、お前のドタマかち割って脳味噌飛び散らすぞ」
 という強固な意志を伝えているのと、同義である。

 その、凶暴な襲撃者の正体を確認しようと視線を落とし、野呂は、言葉を失った。
 一族の関係者としか思えない俊敏な身のこなしで野呂のほうに向かって殺到してくる攻撃者の姿は……。
「……メイド服、だとぉ……」
 確かに、メイド服を着たままの松島楓が、怒気もあらわに、すぐそこまで迫っていた。
「……って、そんなことに関心している場合じゃないって、おれ!
 やべぇって!」
 あっけにとられている場合ではない。メイド服の襲撃者は、殺気を隠そうともしていなかったし、狙いの正確さと身のこなしで判断する限り、腕は確かなようだ……。おそらく、六主家クラス、の能力の持ち主だろう。
「あんなの」が……荒野のほかに、あんな伏兵がいるとうことは、全くの予想外だった。もはや体裁に拘っている余裕はない。
 もともと、荒野たちと敵対するつもりはなかったし、荒野にもいったが、野呂は、加納以上に荒事が嫌いなのだ。
 三十六計、逃げるにしかず。

 野呂良太は、後ろも見ずに全力での遁走を開始した。野呂の者は、六主家でも最も「速い」、とされる。その野呂の中でも、良太は群を抜いて脚力がある、といわれている。
 その野呂良太が、なりふり構わずに「逃げ」を打てば、追いつけるものはいない……はず、だった。

 野呂良太は、非常階段を全力で駆け下り、途中から、電信柱に飛び移り、電線の上を走りはじめた。通行人や車両がいきかう地上よりも、真っ直ぐに逃げるだけなら、こちらのほうが早い。
 正体不明のメイド服は、執拗に野呂の後を追いすがってくる。
 悪くない速度だ、と、野呂は評価する。
 野呂以外の六主家の者だったら、あっけなく捕らえられていただろう。
 だが、それでもこの時点での野呂は、襲撃者を引き離す自信があった。なにしろ、自分は、当代の野呂で一、二を競う「野呂良太」なのだ。
 さらに、加速……しようと思った矢先、野呂良太は、不意に悪寒を関知する。……微かな硝煙と鉛玉の臭いに続き、微妙な空気の振動、遠くから発射音……などの情報が野呂良太の脳裏に「警告!」を発し、反射的に野呂良太は、電線の上でたたらを踏み、すぐそばの民家の屋根に飛び移る。

 この辺の家は二階から三階建てが多く、近辺で一番背の高い建物が、今し方、逃げ出してきたマンションで……そのマンションから、あきらかに野呂を狙った銃弾が、何発も発射されているのを、耳と目と鼻と皮膚で、感じる。
 肉薄してくる銃弾を視認(シュルエットからみて、ライフル弾だった)し、舌打ちをしながら、気配を絶つ。
 ライフルの射手が一族以外の者なら、これで、標準がつけられなくなるはずだった。
 そんな事をしながらも、野呂は、従来と変わらない速度で屋根を伝わって走り続け、逃げ続ける。後ろからはメイド服も迫ってきており、野呂が速度を緩めれば、即座に補足されてしまうだろう。そのメイド服、楓の投げる六角も、音を頼りにかわし続ける。ライフルのほうは、気配を絶った時点で標準がかなり曖昧になった。ほとんど、当てずっぽうになった、と、みていい。が、メイド服の追跡者の六角の方は、相変わらず正確に野呂の行き先を予測し、投擲されている。正確すぎたため、軌道を予測しやすく、かえって避けるのが楽なほどだ。
『……実戦未経験の優等生、ってところかな?』
 あまりにもマニュアル通りの対応をみて、六角を投げてくる襲撃者の人物像を、そう野呂はそう予測する。
『……さて……どう、あしらいましょうかねぇ……』
 野呂はにまだ、余裕があった。まだ、完全に退路を断たれたわけではない。
 であれば、逃げる算段はいくらでもつく……筈だった。
 そう思って、再度、速度を上げようと思ったその時……。

 野呂のすぐ前の空間を、ライフル弾がかすめていった。
 もう一歩、いや、半歩でも前にでていたら、確実に野呂の胴体に当たっていただろう。
 なぜか、ライフルの射撃手は、気配を絶つ以前より、正確に狙いをつけるようになっていた。

『おしかったの。かすめたの』
 才賀孫子は、いくらスコープ覗いても、獲物の視認ができなかった。
 クリスマス・ショーの時、松島楓が使ったのと同じような技を、使っているらしい。
 しかし、その不利を、茅が携帯電話越しにサポートした。
『高度そのまま。東にコンマ五度修正。三秒後、二、一、ゼロ』
 携帯電話経由の茅の誘導にしたがって、才賀孫子は引き金を引く。

 ……まったく、なんて子なの……このわたくしに、勢子代わりの援護射撃をやらせるなんて……。

 急に標準が正確になったライフルから身を隠すように、野呂は、屋根の上から路地に降りる。遮蔽物をまたいで弾丸を送り込む銃は、まだ開発されていない。
『随分、派手な真似をしてれるじゃないか。この、日本で……。この、町中で……』

「もう、逃げられないのです!」
 足を止めた野呂良太の頭上から、声が聞こえた。
 目線を上げると、両腕を組んで電柱の上に仁王立ちになっている、メイドさんがいた。

[つづく]
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彼女はくノ一! 第三話 (19)

第三話 激闘! 年末年始!!(19)

 狩野家から駅までは、歩くとけっこうかかる。二十分前後か。その間、樋口明日樹は様々なことを香也に語りかける。一見して、一方的にしゃべっているように見えるが、これが、二人が一緒に歩く時の、いつものスタイルだった。おかけで香也は、明日樹の友人たちや家族のことに、妙に詳しくなってしまった。
 基本的に香也は、昔ほどではないにせよ、今でも、人と接することが苦手だ。まず、狩野順也と真理に拾われ、羽生譲と出会い、樋口明日樹にも出会い……と、様々な人々と接しながら、香也は、今の形になった。昔の香也もそうだが、今の香也も、香也自身は、あまり好きではない。
 醒めていて、冷え切って、自分から誰かに働きかけを行おうとはせず……そのくせ、誰かに相手にして貰えると、どこか安堵する……。
 そんな自分の性行が、卑屈に思えてならない。
 だから、羽生譲や樋口明日樹のように、なにくれと自分に働きかけをしてくる存在がいることは、心底ありがたいと思おう。彼女らがいなければ、自分は、もっと自分の内面に引きこもった、偏狭な人間になっていただろう。誰もなにもいわなければ、学校にさえいかず、日長一日絵を描いている今の香也も相当に偏屈だとは思うが、それに輪をかけて、もっと窮屈な人格になっていただろう。

 だから香也は、羽生譲や樋口明日樹が、好きだった。ただ、それが「異性へ向ける好意」であるのかどうか、それは、今の時点では、香也には、判断できない。香也は、同性異性を問わず、本気で誰かに惚れ込んだ、という経験がなかったし……これからも、あるかどうかは、かなり疑わしい……と、香也自身は、思っている。

 昨夜、風呂場で羽生譲と行った会話の残響が、香也の頭の中に谺している。
 そうして物思いにふけってぼーっとして、生返事しかしようとしない香也に、そんな様子もいつものこと、と、割り切っているのか、樋口明日樹は、とつとつと他愛のないことを語る。語り続ける。
 実をいうと樋口明日樹自身も、どちらかというと内省的な面があり、人と話すことは、あまり得意ではない。学校など、大勢で固まって話す時は、率先して発言するよりは聞き役に回る方だし、友人や知り合いの人数も、同年配、同性の少女たちの平均よりは、かなり下回るだろう。
 そんな樋口明日樹が、歩きながら訥々と身の回りの事を香也に話す。香也は、聞くとはなしに聞いていて、時折、「……んー……」とか生返事を返すことがある。
 通学の時になどに、よく見られる光景で、香也は、樋口明日樹との、こうしたなにげない時間が嫌いではなかった。

「……すごい人……」
 駅に近づくにつれて人が増え、段々と前へ進むのが困難になってきた。このローカル駅周辺が、これだけ人であふれかえっているのは、かなり珍しいんじゃないだろうか……。
 少なくとも香也は、駅周辺がこれほど混雑しているところに、行き当たったことがない……。
「……三連休、だからかな? ……それとも、あの二人のおかげ?」
 後者だとしたら、かなり画期的なことなんじゃないか、と、香也も思う。こんな、地元住民にしか、かえりみられない駅に、これだけの人を集めた、というは、なかなか出来ることではない……。
 で、困ったことに、「あの二人」以外の要因、人手の原因となる事柄が、香也にも思い浮かばないのであった……。

 なんとか人垣をかき分けるようにして駅前まで出ようとしているうちに、ショーの始まる時間になった。放送が入り、簡単な羽生譲の司会の後に、才賀孫子が唐突に賛美歌を歌い出す。歌や音楽にあまり関心のない香也にしても、声域がかなり広く、音量豊かな、堂々たる美声、であることは、容易に理解できた。商店街の安物の放送システムを介して伝わってくる「声」でこれほどの迫力があるのだから、生で、目の前で聞いたら、そういう凄い見物……いや、聞き物、に、なるのだろう。
 香也たちと同じように、なんとか駅前にでようと藻掻いていた人々も、一旦足を止め、惚けたように、孫子の歌声に聞き入っている。孫子の歌には、聞いた者の時間を停止させる力があるように思えた。
 孫子の歌が終わるや否や、はやり放送で、

「おーっと! 大変だ! トナカイだ! サンタさんが歌っている隙に、トナカイが、大事な子供たちのプレゼントを持ち逃げしたー!」

 という、羽生譲の声が聞こえた。
 しばらくの間を置いて、

「さぁー。大変なことになってしまいました! 逃げたトナカイを追ってサンタもどこかに消えてしまった! ここで皆さんにお願いがあります。トナカイとサンタは、この商店街のどこかで今も追いかけっこをしています!
 二人を目撃した方はメールで、****、あっと、****、どっと、こっむ、まで、情報をお寄せください! みんなでプレゼントを持ち逃げしたトナカイを追いつめましょう!」

 という「つづき」が入る。なるほど、そういう趣向なのか、と、香也は納得した。なんだかんだいいながら、「トナカイの現在地」として、商店街の店舗の名前を御連呼し続ける羽生譲。どうやら、トナカイは、ちょうどいい時間になるまで、サンタには捕まらないことになっているらしい……。
 とかなんとか思いつつ、人混みをかき分けるようにして、ゆっくりとした足取りで前に進むと、三十メートルくらい先のほうで、「うわぁ、トナカイだ!」とか「トナカイがでた!」とかいう声が聞こえてきた。
 どうやらトナカイは、唐突に「でる」ものらしい……。
「香也様!」
 とか思っていると、やはり唐突に、すごく近くで松島楓の声がした。
 え?
 と振り返ると、すぐ横に、トナカイの着ぐるみをきた松島楓の姿が、立っていた。
「……来てくださったんですね……ゆっくり楽しんでいってください。今は逃走中なので、これで失礼します」
 ぺこりと一礼し、ふ、と、文字通り、その姿が消えた。
「トナカイはどこ!」
 いくらもしないうちに、ミニスカのサンタが強引に人をかけ分けて、近くまで駆けてきた。
「あら、あなたたち。来てたの? トナカイ見なかった?」
 見たけど、すぐに消えた、と告げると、爪を噛んで「……あのお馬鹿が……」とこあ、ぶつくさ呟きはじめた。トナカイに容易に近づけないことが、よっぽど悔しいらしい。すぐに、次のトナカイの目撃地が放送され、サンタの孫子は、「急いでいるから!」と叫んで、また、強引に人混みをかき分けて、その中に入っていった。背中に「がんばれよ!」とか、無責任な野次馬の声援がかかるが、サンタのほうには、それに応える余裕がないようだった。

 どうにかこうにか駅前にたどり着くと、もうエンディングの時間になっていた。本当に凄い人手で、この商店街がここまでにぎわったのは、数年……いや、何十年も前、なのかもしれない……。「人集め」のイベントととしては、充分に性行だろう……。
 そんなことを香也が思っていると、盛大な拍手をうけて、サンタとトナカイがステージの上に立ち、アップテンポな、いかにも軽薄なメロディが流れはじめる。香也はその曲をしらなかったが、「音響とかから考えたら、かなり昔の曲なんじゃあ……」とか思っているうちに、二人はその軽薄なメロディに合わせ、揃って、なんとも奇妙な踊り……多分、その曲の振り付け、を、はじめ、更にしばらくすると、とてもシュールな、意味があるようなないような、変な歌詞を、歌い出した。

 ……シュールといえば、駅前の特設ステージの上で、ミニスカ・サンタとトナカイの着ぐるみの二人が、歌って踊っている状況自体、かなり、シュールなのだが……。

 周囲をみわたしてみると、観客たちは、単純に「イロモノの演し物」として、受容しているようだった。なるほど、「宴会芸」としてみれば、確かに、意外性といい、動きの派手さといい、申し分ないのだろうが……。なにより、歌詞がイロモノでも、孫子の歌は相変わらず聞く者を圧倒する力がこもっていたし、二人の踊りも、ろくに練習していない割には、決まっていた。
 そして、二人が二曲目に入った時、ハプニングが、起こった。

「……おーっと、突如、猫耳メイドさんの乱入だ!

 現在、駅前特設ステージでは、サンタとトナカイと猫耳メイドさんの三人囃子変則編成ピンクレディー・メドレーが行われております。三人とも一糸も乱れぬ見事な踊りっぷり。これは、ナマでみなくては、一生の損です。是非一度、ご覧ください。明日も明後日もやっております……」

 茅、だった。
 なぜか、エプロンドレス・スタイルのメイド服と猫耳をつけた茅が、ステージの上に乱入し、二人と同じように、歌って踊り始めた。すぐに、羽生譲が、茅に自分の持っていたマイクを手渡す。

 駅前で、ピンクレディを歌って踊っている、ミニスカ・サンタと、トナカイと、猫耳メイド……。
「……シュールレアリスム、だ……」
 呆然と、香也は呟いた。
「……シュールレアリスム、だ、ねぇ……」
 香也の傍らにいた樋口明日樹も、呟く。ただしこちらは、半ば本気で感動している香也とは違い、半分以上、呆れかえっていたが……。

 香也は、なんだかよく分からない衝撃を、そのステージから受け止めていた。
 香也にとってそのステージは、手術台の上でミシンとコウモリが傘が出会うくらいには、衝撃的な光景だった。
『……ぼくは、これ以上の衝撃を、観る者に与える作品を、今後、作ることができるんだろうか……』
 香也は、本気でそんなことを考えはじめていた。

[つづき]
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髪長姫は最後に笑う。第三章(14)

第三章 「茅と荒野」(14)

 羽生譲と松島楓は、明日には東京に発つという。
「……それなら今日中に、服、渡すようにしよう……」
 といって、荒野は、いったん自分のマンションに帰った。
 相変わらず手間暇のかかる料理に取り組んでいる茅の背中に詳細を話すと、
「……なら、夕食、みんなで、こっちで摂ればいいの」
 と、作っている最中の自分の料理を指さした。
 どうやら、作りすぎたらしい。
 それでは、と、その旨を連絡しようと携帯をとりだす。加納家の人々は、すぐに「全員で来訪する」、と約束してくれた。「夕食を作る手間が省ける」ともいっていた。何でも、二、三日前から主婦である狩野真理が不在で、女性陣が交代で作っていたらしい。

 夕方、日が暮れる頃にぞろぞろやってきた狩野家の人々は、夕食の時間にはまだ早かったので、まず、メイド服姿の茅が入れた紅茶を堪能し、それから、女性陣が交代でメイド服を身につけはじめた。
 ただし、女性陣の中では、才賀孫子だけが、
「……なんでわたくしが使用人の服を着なければなりませんの……」
 と、強固にメイド服の着用を拒んだが。
 羽生譲は、
「……似合う? 似合う? ウェイトレスの服は仕事先でしょっちゅう着ているんだけどな……。うーん。でも、この年齢になって、こういう恰好すんのもなんだかなぁ……。
 あと、茅ちゃんのサイズだから、わたしだとスカート短かっ!」
 とかいいながらも、結構楽しんでいるようだった。
 松島楓が着た時、
「……胸のあたりが、ちょっときついですぅ……」
 というと、珍しく茅がむっとした表情をみせたのが、荒野には新鮮だった。

 狩野香也は、彼女たちの振る舞いを、ぼけらーっと見物していた。

 ちょうど、そんなことをやっていた頃、三島百合香から呼び出しがかかった。
「荒野か!」
 電話に越しに聞こえてくる三島の声は、珍しく、切迫しているように思える。
「今、ここ、わたしの部屋に、野呂と名乗る男が、入り込んできたぞ!」
 野呂……六主家の一つ。
 荒野は、周囲の人間になにも告げずに、すぐに部屋を後にした。

 外出先から帰ってきた三島百合香は、最初、侵入者の痕跡に気づかなかった。なぜなら、その侵入者は、玄関から入ったわけでも、物取り目的で部屋を荒らしたわけでもなく……ただ、部屋に無断で侵入し、目的のもの以外には目もくれず、触れもしなかったから……そこ……ベランダの手すりの上に、三島百合香の帰宅時にあわせたように突っ立っていなければ、部屋に侵入されたことにすら、気づかなかったろう。

 コートを脱いでハンガーにかけ、デスクの前に座り、パソコンのメイン電源スイッチを入れ、立ち上げたところで、ふと、ベランダのほうに目をやると、そこの手すりの上に、コートにマフラー、ソフト帽の男が立っていた。
「やあ。三島先生。お初にお目にかかります。こちら、野呂良太ってケチな野郎でござんす。
 本日は、まあ、近くに寄ったついでに、ご挨拶に立ちよったまでで……」
 三島と目が合うと、その男は、帽子を片手で、ひょい、と、持ち上げ、滔々とそんな口上を延べはじめた。
 三島は、男から目を離さず、手探りで携帯に登録してある荒野の番号を呼び出し、荒野が出るやいなや、
「今、ここ、わたしの部屋に、野呂と名乗る男が、入り込んできたぞ!」
 と、叫んだ。
 その野呂良太と名乗る男が、どういうつもりで自分の前に姿を現したのか、それは、三島の知るところではない。しかし、一族の関係者を、自分がどうこうできるわけがない、ということだけは、確かだった。
 そして、このマンションには、今の時刻なら、六主家の一つ、加納の直系が、いるはずなのだ。

「……いやあ、先生のレポート、留守中に拝見させていただきましたが、なかなかに興味深い内容ですなあ……」
 エレベータを使わず、非常階段を跳躍し続け、一分のしないうちに荒野が三島百合香の部屋に着いた時……。
「……長年消息を絶っていた仁明が、あんなお姫様を囲っていたなんて、ねえ……やれやれ。本当、油断できない連中ですよ、加納ってのは……」
 ベランダの手すりの上に棒立ちになった、コートにマフラー、ソフト帽の男……野呂良太と名乗った男は、三島百合香に向かって、一方的にしゃべりかけているところだった。
 今の時点で三島が無事、ということは、少なくとも、危害を加える意図はないらしい……。
 油断は、禁物だったが。

「野呂が、なんの用で来た!」
 久しぶりに「荒事」モードになった荒野が、鋭い声で問いただす。
「……おっと、噂をすれば影。加納の跡取り、仁明のご子息のご来場だ。
 覚えているかな、荒野君。おれは、君とは一度、まだ君が幼い頃に、会っているんだぜ……」
「覚えている」
 野呂良太。
 野呂の中でも、当代随一の術者と聞いている。しかし、今は一族の組織から足抜けし、首都圏で、細々と個人営業の「探し屋」をやっている筈だった。もともと独立心の強い野呂は、腕に覚えがある者ほど、一族の機構から「はずれたがる」傾向がある。野呂良太も、そうした「自主的に一族からリタイアした、一族出身のフリーランサー」の一人だった。
「その、ノラさんが、こんな田舎町にいったいなんの用だ?」
「ノラ」とは、「野呂良太」の姓と名前の頭文字を繋げた呼称で……野呂良太は、そう呼ばれることを好む……という、噂だった。
 荒野の手持ちの情報によれば……術者としては一流だが、あえて「根無し草」であることを誇り思うような奇矯な精神の持ち主……それが野呂良太という男、の、一族内部での、一般的な評判だ。ある意味、典型的な「野呂的気質」の持ち主である、ともいえる。
 そういう奇矯な男だからこそ、こうして対面してみると、容易に真意を計りがたい一面も、あるのだが……。

「だから、挨拶だって。
 あと……兼、営業ってところかなあ……。
 知ってる? おれ、今、フリーなんだよ。仕事を自分で見つけなくてはならない身分でね。で、いろいろと流れてくる噂をたどってみると、この町がちょっとこれから面白いことになりそうだなぁ、と……。
 で、どうせ仕事するんなら、勝つ側につきてぇーし、その下調べがてら、とりあえず加納の所に挨拶に立ち寄ってみたんだけど……。
 同じマンションでも、荒野の部屋は流石にセキュリティ固くてな、で、こっちの先生の部屋の方にお邪魔してみたってわけだが……いやあ、いきなりビンゴ、だったわぁ……。こんなところで噂のお姫様の正体にぶちあたるとはねぇ……。
 ……おい。荒野。
 お前が仁明から引き継いで抱え込んでいるお姫様、ありゃあ、お前が漠然と想像しているより、よっぽど凄い代物だぞ……。
 長年、仁明が必死になって隠し、他の六主家が躍起になって捜すはずだぜ……」
「……おい! そこのお前!」
 荒野が反応するよりも早く、三島百合香が、語気荒く、野呂良太に詰め寄った。
「その調子だと、お前、茅が何者なのか知っているのか?」
「……おいおい、先生……。
 ……今更、そりゃないぜ……。
 あんたがまとめた、そこのパソコンに入っているレポートとか覚え書きみりゃあ、はっきりと書いてあるようなもんじゃないか……」
 三島の言葉を受けた野呂は、しばらくポカンとした顔をして、あっけにとられていた。
 が、やがて、顔に薄笑いを浮かべて、「やれやれ」といった調子で肩を竦めて首を振る。
「……まさか、本当に気づいてなかったのか? それとも、気づいていない振りをしているだけなのか?
 おれはてっきり、とっくの昔にあたりをつけているもんだと……。
 ……まあ、いいや。
 先生。
 おれでさえ、推測できたんだ。結論を得るためのデータは、とっくに揃っている。
 それでも本当にわからないっていうんなら……そうだな……東京にいる、こいつんところにでもいって、先生のレポートを全て見せてみて、ご意見を伺ってみるんだな。とっつきの悪い変人だが、物事を見通す事に関しては、なかなか勘が働くやつでね……金をはずめば、いくらでも正解を推測してくれると思うぜ」
 と、胸の内ポケットから名刺を出し、その裏になにか文字を書きつけ、ゆっくりと、ベランダの窓の隙間に、差し込む。
「……いいか、荒野。勘違いするんじゃないぞ。
 おれは、今も、今後も、お前とやりあうつもりはない。そもそも野呂は、逃げ足が自慢の……加納以上の、荒事嫌いでな。
 おれがここに来たのは、あくまで営業活動……仕事がほしいからだ。
 この東京の男の連絡先を先生に紹介するのも、おれ個人の人脈をプレゼンテーションするためだからな……」
 荒野を刺激しないように、ゆっくりと後ずさる。
「……それから……そうだな、未来の顧客候補に、もう少しサービスして情報を提供しておこう。
 大御、涼治が、故意に情報をリークしている節がある。
 なにせ、一族を足抜けしたおれの耳にまで『姫』の居場所の噂が入ってくるくらいだからな。当然、他の六主家にも伝わっている……と、みていい。
 仁明が必死に隠していた姫の存在を、なんで今になって公然のものにすんのか……その辺の意図は、おれにも読めないんだが……。
 ……すでに二宮と姉崎は、実際に動きはじめている。
 早晩、この田舎町は……一族のたまり場になるぞ……」

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彼女はくノ一! 第三話 (18)

第三話 激闘! 年末年始!!(18)

 その年のクリスマスは祝日と週末が重なって、世間的にはそれなりに盛り上がったようだが、狩野香也的にはいつもと変わらぬ日々であった。加えて、昨夜から「しばらくプレハブで寝泊まりすること」と狩野真理に言い渡されており、寝袋や毛布を持ち込んでもいたので、食事と風呂、トイレなどの些末な用事以外は、しばらくプレハブに引きこもることにした。
 思えば、この試験休みは、なんのかんのと羽生譲の頼まれ事を片付けるのに思いの外時間を取られ、自分自身の創作活動には、あまり時間をかけていない。クリスマスを越せば終業式の日に一日だけ登校し、そのあと二週間くらいの冬休みに入る。その冬休み期間中に、完全に絵に没頭するための暖気期間として、この三日間は、うってつけなような気がしてきた。
 開き直り、ともいう。

 プレハブに宿泊するようになった初日の夜、最初、寝袋を直に床に置き、その中に入ってから毛布を掛けてみたのだが、思いのほか、床が冷たく底冷えがするので、起きだして、ごそごそと部屋の隅に放置している雑貨の山をかき分け、夏の間に使用しているハンモックと探し出し、その上で、寝袋と毛布にくるまると、なんとか最低限の保温性は確保することができた。
 プレハブ内の唯一の暖房器具、灯油ストーブは、いくら寒くても、就寝時につけっぱなしにする気にはなれない。
『……年末の今でこれだから、寒さが一番厳しくなる二月前後は、一体どうなるのだろう?』
 と、香也は不安に思った。
 それまでに同居人……特に、才賀孫子……の信頼をいくらかでも回復し、早く母屋で寝られるようになるといいが……とか、思いながら、手を伸ばして照明を消そうとすると……。
「……なにをやっているんだ、君は……」
 ハンモックの上で寝袋と毛布にくるまっている狩野香也を、加納荒野が、不思議そうにみていた。

 それなりに言葉を濁して切り抜けようとしても、狩野香也よりも加納荒野のほうが、どういう観点からみても鋭く、かつ、尋問に場慣れしていたので、すぐに「女性とのむにゃむにゃで一時的にここに寝泊まりするハメに」ということが露見してしまい、すると今度は「まさか才賀に手をだしたのか? それともまた、楓のやつが迷惑かけたんじゃあ!」などと問いつめられ、結局終いには、事の顛末を、だいたいのところ、ぶちまけるハメになった。
「……いや、まあ、それは……間が悪いというか……。
 あ、でも、楓との件は、どちらかというと楓のが悪いと思うけど……」
 狩野香也の話しを一通り聞いた加納荒野は、同情とも憐憫ともつきかねる微妙な表情をつくって、狩野香也の顔をまじまじとみつめたすえ、……。
「……そういう話しきくと……おれ、複数の女性を同時に相手にしなくていいだけ、まだしも恵まれているのかも知れない……」
 とか、ぶつぶつ呟きだした。
「……まあ、お互い、女性のことでは、苦労するよな……」
 と、変に共感を込めて、ポンポンと肩を叩かれた。

 狩野香也のほうは、加納荒野の側の事情をほとんど知らないわけだが……それにしても……そういう慰められ方をしても、一向に嬉しくないのは、いったいどういう事だろう?
 加納荒野は「そういうことなら、今夜はゆっくり休むといいよ」と言い残して、その夜は帰って行った。加納荒野がこのプレハブを訪れるのには、いつも確固たる理由があるわけではなかったので、その少年がすぐに帰って行っても、狩野香也はとくに不審に思うこともなく、すぐに眠りに落ちた。

 翌朝は、才賀孫子に起こされた。孫子は「朝食の時間よ」といった後、
「真理さんが、みんなに話しがあるって」
 と、用件だけを告げて、さっさと出て行った。
 松島楓でも羽生譲でもなく、才賀孫子が香也を呼びに来たのは、多分、その真理さんのいいつけのはずで、真理さんにしてみれば、これからも同居生活を続ける以上、香也と孫子にも、それなりに良好な関係を築いて欲しいはずなので、そのための契機をつくために孫子をよこしたのだろう。
 孫子は、あれで礼儀正しい子だし、特に真理のいうことには、けっこう真摯に耳を傾ける。
 のろのろと起きだして洗面所で顔を洗い、食卓……というか、朝食の用意された炬燵につく。香也が最後だった。
「二十五日から三十一日まで……」
 住人全員が揃うと、真理は、朝食前に用件を切り出した。
「……この家を留守にします。急な話ですが、知り合いの画廊に空きが入ったため、順也さんの個展を入れることになりました」
 実際にその個展が行われるのは、二十六日から三十日まで、という話しだが、荷物の搬出入の手配などの準備や撤収などの含めて、早ければ、二十四日の夜にはこの家を出る、という。
「……その間、なにかあったら、年長者の羽生さんの指示にしたがってください」 なにぶん、この家の大黒柱のお仕事に関することなので、異論を挟むことは許されない。
「……だけど、真理さん……わたし、前にもいったけど……今年は、二十八日から三十日まで、東京だから」
 羽生譲は、コミケにいく予定になっていて、そのことはかなり以前から伝えていた。
「大丈夫でしょう」
 狩野真理は、完爾と微笑んだ。
「こーちゃんも、もう、大きいし……この家には、まだ、二人分の女手がありますし……」
 その時の真理の笑顔は、反論を許さない強靱さを、裏に秘めているように思えた。

 ……香也にとって、その日の朝食は、とても味気ないものに思えた。というか、ほとんど味を感じなかった。
 不安、を通り越して、不吉な思いを、ひしひしと、感じる。
 そんな厭な予感を振り払うように、香也は、その日、絵に没頭した。
 午後になって、樋口明日樹がプレハブに訪ねてきた。
「ね。息抜きに、商店街の方、いってみない?」
 樋口明日樹にそういわれるまで、香也は、この家の三人が準備をし、香也も少しは手伝った「クリスマス・ショー」のことを、すっかり忘れていた。忘れたままならよかったが、思い出してしまったら、行かないわけにも行かない。
 樋口明日樹と連れだって、駅前商店街を目指すことになった。

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髪長姫は最後に笑う。第三章(13)

第三章 「茅と荒野」(13)

 帰りに、茅の携帯電話を買うことにした。才賀孫子にいわれるまでもなく、そろそろ持たせようかな、と思っていたところだし、この手の機器の日本で普及度は荒野が漠然と考えていた以上で、普通の学生である飯島舞花にしてからが、普通に友人同士との連絡に使用しているくらいだから……茅が所持していても不自然ではないのだろう……と、荒野は判断する。
 飯島舞花と栗田精一のカップルと、それに荒野自身と、コート姿の茅も含めて、人の多い商店街を、四人でぞろぞろ歩いていく。モバイル・ショップの前であーでもないこーでもないと機種の相談しているうちに、私服に着替えた才賀孫子も合流してきた。結局、孫子が実家で聞いたという、そっちの業界の裏情報の忠告を受け、某社の最新モデルを買うことになった。
 が、
「あー。でも、十八才未満の方ですと、保護者の方の承諾がないとお渡しするわけには……」
 と、ショップの店員にいわれ、しかたなく現物を預けたまま、書類一式だけを持ち帰ることになる。
「残念ねぇ……ねえ、加納。しかたがないから、明日は、あなたのを茅にお貸しなさい」
 一番残念がったのは、才賀孫子である。
 そんな孫子に、茅はいった。
「茅、楓を見つけることはできるけど、楓に追いつくことはできないの……。
 それに、才賀は、楓に勝ちたいんでしょ? 茅に手を借りて、楓を追いつめて、それで満足できるの?」
 なんの感情もこめず、淡々と、事実のみを告げる口調だった。
「……そうね……いわれてみれば、その通りね……」
 孫子は茅に指摘され、一瞬虚をつかれた表情をしたが、すぐに晴れ晴れとした表情に戻った。
「そうね。明日は、明日が駄目なら明後日は、自力であのお馬鹿を追いつめてみせますわ!」
 と、宣言する。

『……勝算があっていっているのかよ……』
 と、荒野は思った。
 才賀孫子は努力家だけど、その場の雰囲気に流されやすく、同時に、間が抜けてもいる……と、荒野は、孫子に対する印象を改めた。

 結局、ショーが続いた三日間、孫子は、楓を捕らえることはできなかった。
 初日に茅が猫耳メイド姿で飛び入りしたことも話題になり、人出だけは日を追うごとに増えたが、それ以外の展開は、初日とほぼ一緒だったといっていい。つまり、茅は、二日目三日目も、猫耳メイド姿で最後の「歌って踊る」部分に乱入して、周囲を多いに湧かせた。
 最終日のラストには、
「わたしたち、普通の女の子に戻ります!」
 という、当事をしる人なら誰もがしっている台詞まで決めて見せた。
 ちなみに、この台詞が誰かの入れ知恵によるものなのか、それとも、茅自身がどこかからか探り当てたものなのかは、不明のままに終わった。

 その「増えた人出」の中には「サンタとトナカイ複数説」を実証しようとした某大学の某サークルの閑人たちがいて、こいつらは、三十人に近い人数と複数のビデオカメラを用意し、商店街の各所に張り込み、二人の動向を細かくチェックした。

 彼らの調査の結果わかったことといえば、
一。サンタもトナカイも、同一の時間に、別の場所に現れたことはない。
二。サンタの移動過程は多く目撃されているが、ゲーム中のトナカイの移動過程の目撃例は、ほぼ皆無。トナカイは、ピンポイントで、現れては消えた。
 しかし、ここが不思議なのだが……トナカイが姿を消している……と、されている時間中も、映像には、とことこ歩いているトナカイの姿が、しっかりと収録されている。
三。トナカイの出没地点と出没時刻を点検すると、一つの目撃箇所から別の目撃箇所への移動は、直線的に移動する限り、特に不自然な速度ではなかった。
 収録されたビデオ映像の中のトナカイも、多少早足ではあったが、不自然な高速度で移動しているわけではなかった。
 という結果が、導き出された。

 トナカイの挙動自体には、不自然な点はない。現に、ビデオカメラには普通の歩速で歩いているトナカイの姿が多数、収録されている。
 ただ、その時、「トナカイの周囲にいた人々の反応」は、あまりにも不自然だった。
 カメラには写っているトナカイの存在を、まったく関知していないように見えるのだ……。
 いや、その調査をした某サークルの面々も含めて、その時、その場にいた人々には、トナカイの存在をまったく認識できない時間が、断続的に訪れた……ということは、確かなようだった。
 現に、彼らが用意したビデオカメラには、トナカイの「あっかんべ」のどアップが、多数収録させられているではないか……。
 彼らが用意したビデオの一部は、一見して撮影中とはわからないよう、盗撮などによく使われるファイバー・スコープなどで偽装れていたのにも、かかわらず、トナカイの「あっかんべ」は、まるで彼らの努力をおちょくるように、全てのカメラに、万遍なく収められていた。
 撮影中は、そのトナカイがカメラに近づいてきたことに、誰も気づかなかったというのに……。

 その結果を得た、その某大学の某サークルの者たちは、頭を抱えたという。

「……まあ、たしかに、釘をさしたとおり、一般人にはできない無茶なアクションはなし、だったけどな……」
 荒野も、頭を抱えていた。
 楓は、たしかに荒野のいいつけは……少なくとも、表面上は……守っては、いるのだ。
 でも、必要以上に人目を引いていることにも、変わりはない……。
 加えて、今回は、茅まで暴走しはじめた……。
 結果として、あの三日間以来、松島楓、才賀孫子、加納茅の顔は、地元では、かなり有名になってしまった……。
『……こんなんでいいのかよ……』
 と、不本意窮まる自体の推移に思い悩む荒野のもとに、どこから噂をききつけたのか、涼治から「茅のピンクレディの映像を、即刻送るように」という連絡が入る。
 こちらはこちらで、すっかり「親馬鹿」ならぬ「じじ馬鹿」だった。

『……たしかに、茅、可愛かったけど……』
「……それからな、前々からいおうと思っていたのだが……」
 涼治は電話で、そんな荒野にいった。
「……お前は、考えすぎだ。もっと今の、茅との生活を楽しめ」

 なんだかんだいって、この土地での友人は増えている。
 この土地に来てから携帯電話のアドレスに追加されたデータはそれなりのものだし、茅も、買ったばかりの携帯電話で、さっそく飯島舞花や才賀孫子などとやりとりをし始めたようだ……。
 と、思って、
『……そういや、楓、携帯もっているのかな?』
 と、初めて、気づいた。少なくとも荒野は、楓の連絡先は、知らされていない。
『……持っていない可能性が大きい……いざというときのために、持たせておいたほうがいいな……』
 その日、ちょうど茅は、朝からメイド服でキッチンの籠もり、おせち料理の練習をしているところだった。
「ちょっと、お隣りにいってくる」
 と茅に言い残して、ジャケットを羽織る。
 楓が不在の場合もあり得たが、それならそれで、ひさびさに庭のプレハブを覗いてみようかな、とも、思っていた。

 まだ日が高い時間なので母屋を訪ねると、羽生譲が出てきて、
「楓ちゃん? いるいる。今、荷物をまとめているところでな」
 と、奥に通された。
「あ。加納様」
 荒野の姿をみとめた楓は、平伏した後、
「……ちょうどよかった。実は、お許し頂きたいことがございまして……」
 普段の楓は結構普通の物言いをするのだが、加納や一族の関係者の前では、身構えるのか、妙に時代がかった物言いをすることがある。
「いいから、普通に話して」
 荒野のほうは、そういうもったいぶった言い回しが、あまり好きではない。
「実は……できれば、この年末、三日間ほどこの家を離れたく……」
「あー。カッコいいほうの荒野君。
 わたしからも、頼むよ」
 羽生譲からも、頼まれた。例の、「なんたらマーケット」とやらに、本を売りに行くのだという。
「いやー。売り子に予定していた子が急遽キャンセルで、人、足りなくなってさー……」
「……この家の方には日頃お世話になっているので、こういう機会に多少なりともご恩返しを……」
 荒野のほうに、異存はなかった。
 今更、楓一人がいてもいなくとも、特に情勢は変わらないと思うし……。
 もっと有り体にいえば、楓一人分、不安材料が減るし……。
「じゃあじゃあ、ついでに。この間、茅ちゃんが着ていたメイド服も、貸して」
 羽生譲は、荒野に、さらにせめ寄った。
「……そっちのほうは……茅に聞いてみないと……でもあれ、茅、かなり気に入っているようだから……借りれるかなあ……」
 とりあえず、聞いてみるだけ聞いてみよう……と、荒野は、その場で茅に電話をかける。
 一緒にいることが多いので、荒野が茅の電話にかけたのは、これがはじめてだった。
「……と、いうことなんだが……」
『……別にかまわないの……』
 茅は、荒野の予測に反して、即座に了承した。

 その結果を羽生譲と松島楓に伝えてから、
「楓、お前、携帯持っているか? 持ってないなら、こちらで用意するけど……」
 と、本題を切り出した。

 楓は、携帯電話どころか、私物をほとんどもっていなかった。
 強いて「楓の財産」ということができるのは、養成所で支給された装備や衣服、それに、この家に着てから貰った衣服……それに、先だって、商店街でのバイトの結果支給された賃金……のみ、で……。
「わかった。携帯は戻ってくるまでに、お前名義のを用意しておく」
 と約束し、
『……楓の扱いも、そろそろ真剣に考えないとな……』
 と、思いはじめた。

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彼女はくノ一! 第三話 (17)

第三話 激闘! 年末年始!!(17)

「……むー……」
 泣きやんでからもしばらくは、羽生謙は機嫌が悪かった。照れ隠し、も、多少はあるのかもしれないが……。
「……こーちゃんの癖に、生意気に……女に恥をかかせやがって……そんで……そのわりには、こんな元気にしている癖に……」
 羽生譲は、あいかわらず、狩野香也のモノを握りしめている。譲のいうとおり、香也のそこは、「あいかわらず」だった。
「……いやあぁ……でも、それは本能というか……自分ではあまりどうにもできないというか……」
 香也の本体のほうは、いきりたった分身とは違って、ほにゃーとした弛緩した雰囲気を取り戻している。
「……ふん……恥、かかせられたお礼に、だなあ……」
 羽生譲は、悪戯っ子の笑いを顔に浮かべ、香也に躍りかかった……。
「……最初の約束通り、こーちゃんには最後まで、出すところまでやって貰おうかぁ!!」
 譲の雰囲気の変化を察知した香也が、逃げ腰になる。
 その背中に、譲がとりつく。腕を前に回し、しっかりと抱きつき、逃げられないように、ホールドする。
 その上で、香也の背中に自分の体を密着させて、後ろから回した手で、香也の分身を握る。足を、香也の股にからめ、身動きを封じた上で、もう片方の手も、香也自身に添え、両手の手で包み込むようにして、わざと乱暴に……香也のものを、刺激し、しごきはじめた。
「……どうだどうだ。気持ちいいか? いいぞ、いついってもいいぞ。イクところ、しっかり観察してやるからな!」
 そんなことをいいながら、がしゃごしょと、香也の局部を刺激し続ける。
 香也のほうにしてみれば、股間の刺激とは別に、背中にべったりと譲の乳房とか陰毛とかの感触も感じているわけで……。
「……あ。あ。あ……」
 加えて、そもそも、それまでの譲るとの行為で受けた刺激も、経験の浅い香也には十分刺激的だったわけで……。
「……やばい……譲さん。やばい……でちゃう! でちゃうよ!」
 それらの蓄積も手伝って、譲に両手で刺激された香也は、短時間で上り詰めていく。まともに立っていられなくなり、壁に手をついて、ようやく体重を支える。
「ええのんか? ええのんか? ここがええのんか?」
 羽生譲は、香也が取り乱したことで、いつものワルノリ気味のテンションを取り戻しはじめ、例の同人活動の課程で知ったベタなフレーズを使いはじめる。
「いいぞいいぞ。ぶるぶる震えているぞ。このままいっちゃえ、こーちゃん。こーちゃんがイクところ、しっかり観察してやるからな! 早くだせ! いっぱい出せ! どぴゅーっと射精しちゃえ!」
 さらに、香也の分身をしごく手を、早める。

 うっとうめいて、香也が壁に向かって盛大に射精するのと、ガラリ、と、音がして、脱衣所へと続く引き戸が開かれるのが、同時だった。

 引き戸の向こうには、才賀孫子が突っ立っていた。
 三人の時間が、しばらく、停止した。
 いや、香也の射精だけは、流石に途中では止まらなかったが。

 これまで堪えていた時間長かったせいか、香也は、いつまでもどくどくと白濁液を吐き続けた。

 香也が射精をし終え、しばらくすると、表情の消えた才賀孫子が、なにもいわずに引き戸を閉める。
『…………うわわわわぁ……』
 香也の顔は、ほとんど、紙のように白くなった。
 ……なんと、なんと……間の悪い……。
 思えば、彼女とは、初対面の時からして、最悪な出会い方をしている……。

「……ち、違うんだ、ゴスロリ子ちゃん。いや、才賀ソンコちゃん!」
「……わたしの名前はソンシです! それに、このような淫行を行う女に軽々しく名前を呼ばれたくありません!」
 とりあえず、同性の羽生譲が、裸のまま浴室を出て、才賀孫子に追いすがる。
 香也は、その場にへたりこんだ。
「……こーちゃんは、わたしを慰めてくれようとして、だな……」
「……その、変な匂いのする手を、近づけないでください! 慰めるにしても、慰め方というものが……」

 外で起きている騒ぎに耳を傾ける余裕もなく、その場にへたりこんだまま、香也は、「……は。は。は……」と、虚ろな声で笑いはじめた。
 二人が盛大に騒ぎはじめたので、その声は、台所で夕食の支度をしていた真理の耳にも、届き……。

「……そう。そんなことがあったの……」
 すぐに、緊急家族会議が開かれることになった。
 会場は居間、出席者は、真理、香也、羽生譲の三名。
 松島楓はバイト先からまだ帰宅しておらず、才賀孫子は「今日の夕食は外で食べる」と怒ったように言い残して、いつもよりかなり早めに外出した。
 四人は炬燵にあたっていて、それぞれの前にお茶がはいった湯飲みが置かれている。
 松島楓が帰宅するまで、数十分の猶予がある。その短い時間で、狩野真理、狩野香也、羽生謙は、早急に当座の結論を出さなければなかった……。
 ようするに、香也の、今後の処遇に関して、だが……。

 その場で、香也は、今まで隠していた楓との経緯を洗いざらい白状させられた。羽生譲のほうも、前日の夜、才賀孫子が羽生譲市を連れてきたところから初めて、今日の出来事にいたるまで、かなり詳細に真理に説明をした。

「……譲さんの気持ちもわかるけど、せっかく来たんだから、せめて一晩くらい、泊めてあげればよかったのに……」
 真理は譲市に関して、それだけ言及した。
 真理は、順也と親しくしていた譲市とは顔見知りだったし、現在の苦境についてもよく知っている。だから、譲市についても、他にもいろいろ思うところはあったはずだが……譲の手前、それ以上はなにもいわなかった……の、だろう……。

「……それと、こーちゃん。そういうお年頃だというのはわかるけど……。
 うーん。
 やっぱり、こーちゃんがいるこの家に、女の子を二人も預かる、というのは無理だったのかしらねー……。
 ……でも……感慨深いわぁ……。
 あの、こーちゃんが、こんな女性問題を起こすようになるなんて……」
 と、前置きしてから、
「こーちゃんは、しばらく、庭のプレハブに寝泊まりすること」
 と、宣言した。

 当然の事ながら、壁がぺらぺらなプレハブの中は、母屋の中よりはよっぽど居住性が悪い。ことに真夏や真冬は、絵さえ描ければたいていのことには気にならない香也にしても、長時間中にいたいとは思えない環境になる。真冬の夜に、あそこに泊まり込む、などということは……かなりの覚悟を要する。
 で、時期的には、これから寒さがいや増していく季節になるわけで……でも、まあ、妥当な処置ではあるだろう、と、香也も、思った。
 ……ペナルティ、の意味もあるだろうし……それ以外に、才賀さんとか、これ以上むやみに警戒させたくないし……。

「……あと、こーちゃんは誰とおつき合してもいいです。いいですけど、関係を持つときは、ちゃんと避妊をすること。
 その辺の具体的な知識がなければ、ちょどお隣りに、学校の保健室の先生が住んでいらっしゃいますから、相談しなさい……」
 ようするに三島百合香……の、ことだが……あの先生に性的な事柄を相談する気には、香也は、なれなかった。なにせ、初対面の時からして、彼女にはいきなり往復びんたをくらっている。
 別にそう親しくしているわけでないが……三島の人柄については、「端から見ていると面白いが、あまりお近づきになりたくない人物」という評価を、香也は下している。

 そして真理は、それ以上、香也にはなにもいわなかった。
 ようは、「あとは自分で考えて、判断しろ」ということなのだろうな、と、香也は受け取る。
 真理とのつき合いは、羽生譲よりも、長い。
「真理先生」と呼んでいたときから、いつもにこやかな彼女は、実は、結構子供を突き放して、自分の始末は自分でつけさせるタイプの教育者である……ということを、香也はよく知っていた。
 幼少時、香也の反応が他の子と比べ、明らかに鈍いのにも関わらず、専門家の医師が「自閉症ないしは類似の疾患ではない」という診断をくだせば、他の子供と同じようにあつかった。また、香也が不登校に近い状態になっても、特に騒ぐことなくしたいようにさせてくれた。

 その点、真理のスタンスは昔っから一貫している。なにかと香也を構おうとした、羽生譲とは、対局にあるアプローチ法、といえる。

「……譲さん、はぁ……」
 真理は、羽生譲の顔を、悪戯っぽい笑顔で、まともにのぞき込む。
「……どうする? こーちゃんが結婚できる年齢まで育つのを待って、このまま、この家のお嫁さんになっちゃう? そういうのもアリだとは思うけど……」
「……いや、正直、今の時点では、そこまで腹、座ってないです……」
 羽生謙は、がくり、とうなだれた。
「……こーちゃんは好きだし、この先どうなるかはわからんけど……でも、今すぐ、ガチガチにそういう風に決めちゃうほど、では、ないです……」

「……そーね……」
 湯飲みを傾けながら、狩野真理はいった。
「こーちゃんもそうだけど、譲さんも、そんなに焦らなくていいわよ……二人とも、まだまだ、若いんだから……」
 それが、結論みたいなものだった。

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髪長姫は最後に笑う。第三章(12)

第三章 「茅と荒野」(12)

「ちょっと加納!」
 荒野たちがたむろしている場所に、サンタ姿の才賀孫子が駆けつけてきた。
 たった十分間しかない休憩時間に、目立つ恰好のままくるということは……よほど、楓にいいようにあしらわれたのが、悔しいらしい。
「今の、一族の技でしょ! 見切り方、今すぐ教えなさい!」
「無理」
 荒野の返答は、にべもなかった。
「あれ、一応部外秘だし、仮に教えるとしても、修得するに何年もかかる。
 今すぐ教えて、ぱっ、とすぐものにできるような、インスタントなもんじゃない」
 ……だからこそ、術者を育てるメソッドを代々伝えている一族の存在価値とか、アドバンテージが発生するわけで……。
 荒野の返答を聞いた孫子は、いかにも悔しそうに下唇を噛んでいる。
 拮抗している、と思っていた楓との間に、埋めきれない差が存在するのを思い知らされたのが、よほど不本意なのだろう……。

『……努力家、だとは、思うんだけどねえ……』
 孫子だって、直線的なフィジカル・トレーニングだけで、ここまでの能力を身につけているわけで……たとえ、才賀の財力的なやバックアップ血統という要素があったとしても、本人の、それこそ血の滲むような努力が伴わなければ、ここまでの「仕上がり」には至らないはずなのだ……。
 が、
『……一族だって、だてに何百年も技を磨きつけているわけではないしなぁ……』
 とも、思う。
 そう思う荒野自身も、楓がここまでやるとは、思わなかったが……。

 楓が使った「気配絶ち」は、そもそも二、三人とか、少人数を相手にしてどうにかごまかせる、程度の技でしかない。
 理論的には、楓がやったように、人混みの中で使うことも可能なはずだが……それを実現するには、絶えず、多人数の視線の動きを予測し、その盲点を渡り歩く、という……途方もない観察力と集中力、精神力が必要となる。
 現実に楓がやったような、「人混みの中で、自在に自分の存在を他人の意識から隠蔽したり、逆に、意識させたりする」というレベルで「気配絶ち」の術を制御できそうな人間は、一族広しといえど、「じじい」こと、加納涼治くらいしかいないのではないか……と、荒野は思う。
『……単なる、体力馬鹿……でも、ないのか……』
 荒野も、楓に対する認識を改めていた。

「……例えば、な……」
 あまりにも孫子が悄然としているようなので、荒野はもう少し詳細な説明を付け加える気になった。
 孫子が、顔をあげて荒野のほうに顔を向ける。
「……こうやって……」
 孫子が見守る中、荒野の姿がぷっつりと消失した。
「……はい、ここ」
 すぐに、いつの間にか孫子の背後をとっていた荒野に、背中を叩かれる。
「今、おれが、いつ、どうやって消えたか、わかんなかったでしょ?
 こういうの、消えたときの気配がぼんやりと察知できるようになるだけでも、四、五年は楽にかかるんだよね。
 今すぐコツ教えて、なんとかなるよなものじゃないんだ」
 荒野と孫子のやりとりを見守っていた飯島舞花と栗田精一は、いきなり消えたり出現したりした荒野をみて、声を失うほど驚いている……が、ほかの、周囲の人たちは、その異変に気がつきもしなかった。
「……それ、みえちゃあ、駄目なの?」
 唐突に、茅がいった。
「楓のも、荒野のも、見えたけど……その、変な歩き方……こうやって……」
 今度は、茅が、消えた。
「……こう。
 ……むー。この歩き方、疲れるの」
 五メートルほど離れたところに、コート姿の茅が再び姿を現す。

「…………茅、それ、いつ、誰に習った」
 今度は……荒野も、あっけにとられていた。
「習ってないの。今、楓と荒野がやったのを、真似したの……」
「加納!」
 才賀孫子が、鋭い語気で荒野を問いつめた。
「この子、何者!」
「……おれも、常々、それを知りたいと思っているよ……」
「まあ、いいわ……つまり、この子には、楓の気配が読める、ということよねえ……ねえ、この子、携帯電話かPHSもってない?」
 荒野には、孫子がなにを考えいるか、手に取るようにわかる気がした……。
「いいや、まだ。そろそろもたせようかな、と、思っていたところだ……」
「……できれば、今日明日にでも持たせて欲しいわね……じゃあ、わたくしは、最後のステージがあるので……」
 才賀孫子は一礼をして、荒野たちに背を向け、人混みの中に姿を消した。
「……なあ、お兄さん……」
 荒野の肩を、飯島舞花が、ぽん、と、叩く。
「あんたらがごちゃごちゃいっている間に、茅ちゃん、消えているんだけど……」

 ……とてつもなく、イヤな、予感がした……。
 最近の荒野の「イヤな予感」は、的中することが多い。

「さーて、ショーの最後を飾るのは、懐かしの昭和歌謡曲からピンクレディーをメドレーでご覧ください。仲良く歌って踊るサンタとトナカイの二人。歌も踊りもばっちりです。

 ……おーっと、突如、猫耳メイドさんの乱入だ!

 現在、駅前特設ステージでは、サンタとトナカイと猫耳メイドさんの三人囃子変則編成ピンクレディー・メドレーが行われております。三人とも一糸も乱れぬ見事な踊りっぷり。これは、ナマでみなくては、一生の損です。是非一度、ご覧ください。明日も明後日もやっております……」

 荒野のイヤな予感は、やはり的中した。

「……いやあ、本番中にいきなり茅ちゃんが乱入してくるんだもんなぁ……こういうハプニングは大歓迎だけど、いきなりだったんで、流石のわたしも驚いちまったぜ……」
 ステージが終わってから、茅を迎えに行くと、会心の笑みを浮かべた羽生譲が荒野を出迎えた。
「……でも、茅ちゃん。振り付けとか、いつ覚えたんだ?」
 羽生譲がこういう、ということは、茅とあらかじめ示し合わせたわけではない、ということなのだろう。もし、あらかじめ茅と打ち合わせてやったのだとしたら、羽生譲の性格なら、「作戦通りにいった」ことを自慢する筈だ、と、荒野は思った。
「昨日、昼、二人が練習するところをみたの……」

 練習、といっても、小一時間松島楓が歌って踊るのを、孫子が炬燵にあたって見物していただけだ。
「くノ一ちゃん、前に一回みただけで覚えたぞ」
 と羽生譲がうっかり口を滑らせたところ、
「……わたくしも、それでいきます……」
 といって、才賀孫子は、自分自身で練習することを拒み、「見るだけ」に徹した。
 それで、今日、孫子もぶっつけ本番で見事にこなしている、ということは、称賛されるべきだとは思うが……まさか、茅まで、同じ芸当を行ったとは……行うことができるとは……荒野は、ついぞ、思わなかった。
「……加納……この子、本当に、何者?」
「……だから、それ……おれも知りたいって……」

 改めて、荒野は、自分が茅のことをなに一つ知らないのだ、ということを思い知らされた。

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彼女はくノ一! 第三話 (16)

第三話 激闘! 年末年始!!(16)

「……なぁ……こーちゃん……」
 羽生譲は、狩野香也の肩を自分のほうに抱き寄せる。
「……こーちゃんも、男の子だから、自分でする時、あるだろ? ここ、こうやって……」
 抱き寄せて、香也自身を掴んで、ゆくりとしごき出す。
 手による刺激よりも、白い裸体をさらした羽生譲が、自分のほうを羞恥と期待のこもった目でみつめながら、自分のものを握っている……という情景に、香也は頭がくらくらするよな気分になった。羽生譲が自分のモノを握っているすぐ下には、陰毛の茂みもみえる……。

「……こーちゃん、自分でやる時、なに想像してやってる? エロ本とかAVとかは、あんまり見たことないだろ?」
 実際、羽生譲は、香也のその辺の意識にも、興味があった。普段なら、まともに聞けないそんなことも、今なら、聞き出せるような気がした。
「……やっぱ、身近な人、なのか?」
 羽生譲の知る限り、香也は、同年代の知人が極端に少ないはずで……そういうモノや情報をやりとりする相手も、多分、いない。香也は、パソコンも持っておらず、同居している真理や譲のパソコンを使用することも、なかった……。
 想像しようとしても、その想像の元になるイメージも、香也の場合、他の同年代の男の子より極端に少ないような気がしていた。
「……う、うん……自分では、あんま……時々は、あるけど……」
「本当? 時々? 毎日、じゃないの?」
 じゃ、じゃ、じゃ、と、香也のモノを握る手に、少し力をかける。
「……毎日、じゃない。眠れない時とか、たまに……」
「そんとき、想像するのは?」
 刺激し、問いつめているはずの羽生譲のほうが、なんだか香也よりも興奮しているように見える。
「……前は、譲さんとか、真理さんとか……最近は、樋口先輩とか、楓ちゃんも……」
「……そっかぁ……みんな、かぁ……」
 なんだか、羽生譲は、嬉しくなってしまった。自分も香也の妄想の対象になっていたことに、ではなく……。
『……こーちゃんもちゃんと、普通の男の子なんだなぁ……』
 ……幼い頃から見ている香也が、案外普通の発育をしている、という事実が、結構嬉しかったり……。
「……でも、こーちゃん……。てっきりあのまま、あすきーちゃんとくっつくと思ってたけど……これからどうするつもりなんだ? くノ一ちゃんとヤリまくっているんだろ?」
「……ヤリまくってなんか、ないよぅ!」
 香也は、以外と情けない声をだした。
「……楓ちゃんとは、その、二回……だけ……。
 それも、弾みみたいなもので……」
 香也にしてみれば、その楓との二回は、ほとんど事故じみたいなものだと思えている。自分にももちろん責任はあるが、それ以上に不可避な部分が多かった、と……。
「……にしては、随分なついているじゃないか、くノ一ちゃん……」
『……あ。わたし、意地悪になっている……』と思いながらも、羽生譲はさらに問いつめる。
「くノ一ちゃん、こーちゃんが家にいる時は、べったりじゃないか……。あすきーちゃん、あれでかなり気にしてるぞ……」
「……う、うん……」
 香也も、樋口明日樹と松島楓を並べられると、とたんに困惑する……。
「……でも、楓ちゃんは、いろいろと……ぼくに似ている所があるから、ほっとけないというか……」
「……あすきーちゃんが、こーちゃんに好意を持っているのは、知ってるな……」
「……うん……」
 あれだけ、毎日のように送迎されていれば、いくら鈍感で人付き合いが不器用な香也にしても、気づかないわけにはいかない……。

「……まあ、誰とどういうことしようと、こーちゃんのアレだけどさぁ……」
『……今、こーちゃんとこおうしているわたしが、こういうこというかね……』と、羽生譲は、自分でも思っている。
「……こういうところに、こーちゃんのを刺すのはいいけど、自分のほうが刺されないようにしろよ……」
 そういって、握っていた香也のモノの先端を、自分の入り口にあてがってみる。
「……どうする、こーちゃん? このまま腰を降ろすだけで、わたしの中に入っちゃうぞ? 本当に、ここに入れなくない? まだ、初物だぞ?」
 そういって、羽生譲は、狩野香也を挑発した。弾み、ではなく、意外に真剣だった……と、本人は思っている。

 狩野香也は、しばらくじっと羽生譲の顔をじっと見ていたが、突如、がばり、と、羽生譲の体に覆い被さり、抱きしめた。
「……きゃっ!」
 と、羽生譲が、小さな悲鳴を上げる。
「……大丈夫だから……大丈夫だから……」
 羽生譲の体の自由を奪いながら、狩野香也は、彼女の耳元に囁き続ける。
 狩野香也にしてみれば、このように関係を迫られるのは松島楓に続いて二人目、なわけで……。
「……こんなことしなくても、譲さん、この家にいていいから……」
 香也は、基本的に「鈍い」ほうの人間だが、同じようなことが何度も続けば、それなりに共通点を類推することは、できる。
 今の譲は、最初の時の楓と同じで……「香也という男性個人」よりも「狩野家の息子である香也との、確固とした繋がり」を、求めている……ように、思えた。

 あるいは、香也がもっと人生経験や女性との経験を積んでいれば、そうとわかっていても、それを前提として踏まえた上で、肉体を繋げられるのかも、知れない。
 が……正直、今の香也には、そうしたごちゃごちゃとした背景込みで、羽生譲を丸ごと抱え込める自信が、なかった。

「……こんなことしなくても、譲さん、家族だから……この家に、ずっといて欲しいから……」
 抱きすくめられ、耳元で延々と香也にそう囁かれ続け……最初、羽生譲は拒否されたと思い、もがき、香也に罵声を浴びせ……それから、香也がなにをいいたいのか、次第に理解していき……。
「……馬鹿に、すんなよぉ……」
 再び、ぐずぐずと泣き出した。
「……こーちゃんの癖に……鋭いこというなよぅ……こんな時に、変に物わかりのいいこと、いってんじゃねぇよぉ……」
 そんなことを呟きながら、羽生譲は香也の体を抱き返しながら、いつまでも泣き続けた。

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髪長姫は最後に笑う。第三章(11)

第三章 「茅と荒野」(11)

 逃げた楓のトナカイを追って、孫子のサンタまでもがステージを降りると、二人が降り立ったあたりの観客は、予想外の事態にしばらく騒いでいた。その二人は、行く先々で人々に驚愕の声を上げさせつつ、あっという間に視界から姿を消し、どこかに消え去ってしまう。
「……さて、と……」
 羽生譲はマイクのスイッチを切って、あっけにとられて呆然と立ちつくす観客たちに向かって、にこやかに手を振って、悠然と、舞台から降りる。
「……これからが、本番なのだよーん……」
 そういいながら、舞台の先に急遽設置された「放送席」のパイプ椅子にどっかりと座り、机の上に置かれたノート・パソコンがネットに接続していることを確認してから、放送席のマイクをオンにする。

「さぁー。大変なことになってしまいました! 逃げたトナカイを追ってサンタもどこかに消えてしまった! ここで皆さんにお願いがあります。トナカイとサンタは、この商店街のどこかで今も追いかけっこをしています!
 二人を目撃した方はメールで、****、あっと、****、どっと、こっむ、まで、情報をお寄せください! みんなでプレゼントを持ち逃げしたトナカイを追いつめましょう!」

 そう。二人は、単にステージを降りたのではない。物理的にステージを降りることで、商店街中をステージにしてしまったのだ。

「はい。さっそく、目撃情報の第一報が届きました。早いですねー。トナカイはいつの間にか商店街のアーケードの上に乗って、商店街の外方面に逃走中とのことです。サンタさん、トナカイを逃がさないように頑張ってください。目撃情報をくださった富山青果店の方、ありがとうございます。
 第二報です。アーケードの端でサンタさんに先回りされたトナカイは、再び商店街の人混みの中に消えました。サンタさんも後を追ったそうです。なんとか商店街脱出は阻止できたようですねー。情報をお寄せくださったHNゆんちゃん好き好き、さん、ありがとうございます。
 おっと、今度は、トナカイは喫茶円谷に出没いたしました。マスター並びに多数のお客様、情報提供ありがとうございます。サンタさんが店内に入ると同時に、トナカイはコーヒー代を置いて再び逃走した模様……」

 放送席に座っている譲からみると、放送が続くにしたがって、見物客たちの間に、徐々に「今回の趣向」に対する理解が広がっていくのが、実感できる。

「……今度はトナカイ、線路の向こう側で目撃されております。サンタさーん! トナカイ、今、シューズショップ水木の前あたりをうろうろしてますよー!……」

 トナカイとサンタは、まさに神出鬼没、あちらと思えばこちらに現れ、商店街に詰めかけた人々を翻弄する。
「トナカイとサンタは、実は何人も用意されていて、商店街のあちこちに潜伏しているのではないか?」という噂が流れはじめるのも、この頃からだ。
 それくらい、二人の移動速度は、非常識だった。加えて、楓のトナカイに関しては、目撃された場所と場所をつなぐ、移動する過程が、目撃されるていない。不意に姿を現し、不意に消え、また不意に、まったく別の離れた場所に現れる、ということを繰り返していた。
 放送された情報に即されるようにトナカイを追い続ける、才賀孫子のサンタの方は、人混みをかき分けて、息を切らせながら必死に走っていく様子を目撃されているというのに……。

「……やりやがった……」
 その観客の中に混ざっていた荒野は、一人、呟く。
 たしかに、以前のショッピング・センターでの馬鹿騒ぎに比べ、一見地味かもしれないが……楓のやつ、こんだけの大観衆の中で、気配を消しては姿を現す、という真似を、繰り返していやがる……。
 今、楓がやっている「気配を絶つ」という技は、ショッピング・センターの一件で荒野自身がやった、人目を避ける歩法の延長にある。一族が伝える技の中でももっとも基本的、かつ、ポピュラーな技の一つだが、基本中の基本、であるだけに、完全に使いこなすのには、かなりの熟練を要する……そんな技を、楓は、惜しみなく使用して、姿を消していた。
 むしろ、それを追いかける孫子の方こそ、……放送の支援があるとはいえ、そんな術を使い続ける楓に、よく追いつける……と、そうも、思う。
 もっともこちらは、技能もなにもない、体力任せの走り込み、のようだが……まあ、膨大なリソースをあらかじめ用意し、それらを盛大に消尽しながら確実に勝利を得る、というのは、才賀お得意の戦法だ。だから、才賀らしい、といえば、才賀らしいやり方ではあるのだが……。
 方法としては全然洗練されているとも思えないが、実際に「それ」をやってしまえる、孫子の体力も、やはり尋常ではない。
 観客は今のところ、常人離れした二人の移動速度をあまり真剣に疑問には思っていないらしい。あっちからこっちへ、めぐるましく位置を変えるトナカイに向かって、必死になって追うサンタに、声援が飛ぶ。「サンタとトナカイが複数いて、順番にあちこちに姿を現しているのではないか?」という噂が、どこからともなく流れだし、荒野たちがいる場所の周囲でも、公然と囁かれはじめている……。

「……なんか、地味なのか派手なのか、よくわからないイベントだなあ……」
 羽生譲が、刻一刻と寄せられる二人の目撃情報を放送でまくし立てられる中、荒野の側にいる飯島舞花が呟く。
「……同感だ。
 でも、な……」
 荒野が目の前の、たまたま人の途切れた箇所を指さすと、そこにひょっこり、赤鼻のトナカイの着ぐるみを着た松島楓が立っていた。
 荒野なら、楓が消した気配くらいは、なんとか関知できる。
 突如出現した楓の姿をみて、「え?」と、飯島舞花は、目を見開く。
 ……いつの間に、こんなところに……。
「……こうやって、ひょっこり現れて……」
 飯島舞花と顔を見合わせ、白い袋を担いだ松島楓のトナカイは、にこやかに手を振って、背を向ける。
 たぶん、人混みの中に荒野たちの姿をみつけ、挨拶に立ち寄ったのだろう。
 背を向けたトナカイが再び、人混みの中に消えようとしたところ……。
「あ!」
 という、子供の声がした。
 たまたま近くにいた子供が、突然出現した楓に驚いて、もっていた風船を手放したらしい。
 空気よりも軽いガスを詰められたカラフルな風船は、すぐに、大人の手でも届かない高さに昇っていく……。

 そして、トナカイが、跳ぶ。
 なんなく風船の紐をつかみ、着地し、再び、子供の手に握らせる。
 子供の頭を軽くなでて、今度こそ、人混みの中に消える。

「……こういう真似を、さ。あちこちで繰り返されたら……」
 トナカイの姿が完全に消え去ってから、ようやく、どこからともかくパチパチと拍手が聞こえはじめた。
「……それなりに、印象に残るし……恰好も、つくと思うぜ……」

「……トナカイは!」
 その時になって、汗だくになって息を切らせた才賀孫子のサンタが到着した。

 五十分前後続いた逃走劇は、再び特設ステージ前に舞い戻ったトナカイが、ステージ上で大立ち回りした後、サンタに捕らえられる、という形で集結した。遠目にも、捕らえられたトナカイのほうが涼しい顔をしており、トナカイを捕らえた側のサンタのほうが息が荒く、疲労の色が濃いようにみえた。
 打ち合わせ通りの展開で、そして、こういうショーには、こうした予定調和的な終わり方が似合っている、ともいえる。
 楓のサンタが大仰な動作でサンタに土下座して、とりあえずは、幕。
 マイクを手にした羽生譲が再び舞台に出て、サンタを労い、トナカイを軽く叱り、「これより十分間の休憩をいただきます」と集まったv客たちに告げる。

 その後、この日のショーの終わりを飾る、短い一幕があるはずだった。

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彼女はくノ一! 第三話 (15)

第三話 激闘! 年末年始!!(15)

 最初の方こそ、亀頭部にねっとりとナマ温かい舌が触れる、慣れない感触に声を上げたものの、ぴちゃぴちゃ音をたてながら羽生譲が盛大に舐めはじめてみると、その感触にもすぐに慣れはじめた。
「なんだ、こーちゃん。これじゃあ、感じないか?」
 羽生譲は、香也自身を指でしっかりと固定し、口にしたものから顔を放して、反応の薄くなった香也の顔を上目遣いに見上げる。
「……気持ち、いいけど……慣れた」
 少なくとも、指で直に触られるよりは、舌でやってもらったほうが、いい。
「……そっかー……でも、こっちは、かーちゃんがもっと反応してくれないと、面白くないのだな……」
 そういって譲は、二、三度香也自身を手でしごいた。
「……今度は、口で咥えてみるな……」
 いい終えると同時に、パクリと実際にくわえこむ。
『こうして口に入れてみると、大きいなあ、やっぱり……』
 持てあますなあ、とか思いながら、譲は、口にしたものを舌で嬲りはじめる。時折軽く噛んだり、頭を前後に動かし、その拍子に香也のものを喉の奥まで突っ込みすぎて、吐き気を感じたりしながら、しばらく、譲は、香也のものを口で弄んだ。香也のそれはとても硬くて、譲の口の大きさに比べても、大きい。
 奉仕をされている香也のほうは、譲の挙動に応じてそれなりに体を動かしてはいるが、初めての頃のように、劇的な変化をみせることは、なくなっている。

『……うーん……こーちゃんがもっと感じてくれないと、面白くない……』
 譲は、あくまで香也の普段の表情が崩れるとことが、みたいのだ……。
 口を放して、香也に聞いてみる。
「やっぱ、お口、気持ちよくない?」
 譲は、実際に口に出して尋ねてみた。この辺の気兼ねや衒いのなさは、やはり長い付き合いだからこそ、なのだろう。行為は伴わないにせよ、ヌードデッサンをやりあっている関係上、お互いの裸体も、普通に見せ合っている関係だ。
「……んー……気持ちいいけど……すぐ、慣れるし……」
 香也も、譲とこのような行為をしている、という違和感に、徐々に慣れて初めているようだ。最初のほうは、こうした行為をすることで、譲との関係が変容することが、怖かった。でも、譲は、やっている最中も、いつも香也に接するような態度を崩さなかったし……。
「それに、一方的になにかされているのが、その……不公平だと思う」
 ……香也のほうも、それは同じようだった。
 恋人たちの睦み合いのような濃厚な官能性こそなかったが、男女とはいえ、気の知れない友人同士が、戯れにお互いの体をまさぐっている、という感じの、さばさばした雰囲気が、あった。
「……そっかー。こーちゃんもなんか触りたいかー。でも、くノ一ちゃんほど、触りがいのある体じゃないぞー、わたしの。特に胸」
 譲は、立ち上がって香也と正面から向き合い、香也の手をとって、自分の胸に導く。
「……あんま、大きくないだろ……」
 平静を装っているものの、譲のほうもなにか感じるところがあるのか、顔を真っ赤にして顔を伏せ、香也とまともに目を合わせないようにしている。
「……譲さん……」
 香也のほうも、実は、喉がカラカラになっている。
「……その……最後まで、やらないから……それに……」
 楓と違って、譲とまでこのままずるずる関係をもってしまったら、香也は、この先、この家で生活するにあたって、かなり窮屈な思いをするような気がする。俗にいう、「針のむしろ」というやつだ。第一……。
「……譲さん、ずっと、ぼくの家族だから……」
 香也は、立ち上がった譲の肩を、抱き寄せる。
 ……第一、こんな不安定な精神状態の譲をどうこうしようというのは、やはり、どこか間違っていると思う……。
「……うん……」
 答えた譲は、鼻声になっていた。
「……うん……」

 ほんの少し前まで、香也は譲よりずっと小さかった。でも……。
『……いつの間にか、こんなに背ばっかり大きくなっちゃって……』
 今では、譲とほぼ同じ……いや、こうして抱き合ってみると、ほんの少し、譲より高いくらいか、と、思う……。まだ伸びそうだから、すぐに、完全に追い越されるだろう。

「……こーちゃんの気持ちは、分かった……。じゃあ、わたしのほうは最後までやらなくていいから……」
 譲も、香也の腰に手を回して自分のほうに引き寄せ、体を密着させる。そうすると、香也の元気なままのものが、譲の陰毛のあたりに、あたる。
「……こーちゃんのほうは最後まで、出すところまで、しっかり見せろな……」
 譲は、にへら、と笑って、すりすりと密着したままの腰を動かす。
「……こんなにパンパンになっているんだもん、出さなけりゃ、つらいよなー。
 ちゃんと、出すの、協力してやるから……」
 立って抱き合ったまま香也の指を自分の秘所に導き、同時に、自分でも、香也のものを、握る。
「こーちゃんが、こんなんなっているのと同じように、わたしのも、こんなんなっているんだ……」
 香也の顔をみないようにしながら、首に抱きつくようにして、譲は、耳元に囁く。
「……凄い、濡れてるだろ……女の人も、経験なくても……興奮すると、こう、なるんだ……指、動かして……ン……駄目……優しく……いきなり動かされると、痛いから……そこ、他人に触られるの……初めて……ふっ……」
 譲のほうも、香也のものを握った指に力をいれようとしたが……香也にそこを弄られている、と、思うと、指にぜんぜん、力が入らない。香也のほうは、しばらく適当に動かすうちに、徐々に譲が反応する箇所を憶えてきたのか、指の動きが次第に滑らかになっていく。じゅ、じゅ、じゅ……という水音が、弄っている部分から聞こえるはじめようになると、譲の腰が、がくがく動き始める。
 譲の膝から力が抜けはじめたのを確認した香也は、一旦動きを止めて、譲の体を浴槽から引き出し、洗い場の床に座らせる。
「……凄いな、こーちゃん……流石は、けーけんしゃだぁー……」
 ぺたん、という感じで、香也に導かれるまま、両脚を開いて座り込んだ譲の表情は、明らかに恍惚としてる。ぼーっとした表情のまま、譲は、力の入らない腕をどうにか上げ、香也を手招きする。
「……来て、……もっと近くに……」
 触れあえる、所に……。
 座り込んだ譲と向かい合う位置で、目の高さをあわせるようにして、香也もしゃがみ込む。
 その香也の顔をさらに手招きし、手が届くようになったところで、肩に手をかけて、顔を、引き寄せる。
「……こーちゃん……ここだけのはなし……凄い秘密、教えてやろう……」
 譲は、香也の耳元に囁いた。その時の譲は、自分がなにをいいだしたのか、意識できていたのかどうか……。
「……わたしな……自分で、弄るとき……こーちゃんにこういうことされるのを想像しながら……やってた……」

[つづき]
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髪長姫は最後に笑う。第三章(10)

第三章 「茅と荒野」(10)

「……なんか凄いな、本当に……」
「……この辺、お祭りでも、こんなに人来ないよ……」
 時刻は二時半を過ぎた所。駅前の特設ステージで行われる予定の、楓と孫子のショーは三時から五時に予定されている。子供を連れた家族連れへの配慮と、師走で日が落ちるのが早いということ、それに、ショーが終わってから、商店街で買い物をしていって欲しい、という計算もあって、こういう時間帯に設定されたのだろう。
 にも関わらず、駅周辺の道端は、人、人、人……。
 商店街の周辺は、日祝日の正午から五時までは歩行者天国ということで、車両の通行が禁止されてる。それをいいことに、車道まで埋め尽くす勢いで、人間があふれかえっていた。そして、それら人間の密集度は、駅に近づくにつれ、増していく。
 警官ならび民間の警備会社の誘導員はもとより、人手を見込んだテキ屋までが多数道路脇に店を出しており、近隣の飲食店は、この寒い中、店内だけではなく、店頭にも机と商品を引っ張り出し、道行く人々に売り声をかけている。

『……これ、本当……全部、あの二人目当てなのか……』
 だとしたら、「目立つな」という荒野の訓戒は、ひどく滑稽なものとなる……。だって、もう……すっかり手遅れじゃん!
『……あ。いや……多少、顔が売れても……あの異常な運動能力を、人に知られさえしなければ……』
 そのあたりに、荒野は一縷の望みを託した。とはいえ、その手の望みは「お約束」ということで、大抵は、裏切られることになっているのだが。

 人波をかき分けるようにしてなんとか駅前方面に近づいていくと、
「おー。カッコいいのー。こっちこちい」
 と、荒野たちの姿を認めた羽生譲に声をかけられた。
 手招きする羽生譲の誘導に従って、荒野たち四人は特設ステージの舞台裏にたどり着く。そこにはすでに、松島楓と才賀孫子が控えていた。
「……凄いっすねぇ……。この人出……」
 たどり着くなり、そういう。他に言葉が出てこない。
「あはは。実はわたしも、ここまでとは思わなかった」
 そういって頭をかく羽生譲は、ジーンズにダウンジャケット、という、普段の外出着だった。
「なんか、口コミでぱーっと噂、広まってたみたいだねえ。思ってたより。
 地元のローカルテレビ局からも、中継させてくれ、みたいな申し出あったみたいなんだけど、才賀さんところの叔父さんがキッパリ断っわったって。
 ……まあ、芸能界入り目指しているわけではないしな、この子らも。
 あれだ……商店街への人の誘致、という当所の目的は、もう、充分果たしているから……」
 もう、本番五分前になっていた。
「……あとはもう、多少踏み外してもいいから、リラックスしていきましょう!」
 そういうと、まず司会者であるマイクを手に特設ステージに踏み出した。

「……よい子の皆さん。保護者の皆さん。興味本位で見に来た方。たまたま買い物に来た方々。お元気ですかー!」
 マイクを手にした羽生譲は、周囲にひしめく群衆の雰囲気に飲まれることもなく、それなりに堂々としているように見えた。マイクを通した声も、よく通って辺りに響いている。
「さて、三連休の初日、本日よりこれから三日間に渡り、ここ、駅前特設ステージに於いて、駅前商店街謝恩クリスマス・ショーを開催させていただきます!
 さて、本日初日、二十三日は、クリスマス・イブの前日、イブ・イブですねー。
 そこで、本日最初の出し物は、皆様お待ちかねの歌うミニスカ・サンタさん、才賀嬢による賛美歌を皆様にお聞きいただきましょう! 泣いた子も黙って聞き惚れ、異教徒もその場で改宗したくなる神の恩寵、この歌声を、どうぞ静聴しやがれってくださいませませ!
 では、才賀さん、どうぞー!」
 誘導され、ステージの中央に移動した才賀孫子は、物怖じもせず、堂々、かつ、優雅なしぐさでまずは一礼し、それから、そこに置かれていたスタンド・マイクの角度を少し調整して、やおら、歌い始めた。
 孫子が以前の学校で、礼拝の時間に歌っていたものを、アレンジもなにもせずにただ歌うだけ……なのだが、そのまま、雑踏の中で歌い出しても、周囲の耳目を集め、足を止めさせた音量と美声が、今度は、音響システムを介して、商店街中に運ばれる。

 これだけの人数が集まれば、ステージ周辺に居るもの以外は、孫子たちの姿を見ることは出来ない。しかし、商店街の、普段、迷子の呼び出しなどに使われている、あまり高性能ではない放送システムの声が届く範囲内にその時居たものは、誰でも、孫子の歌を聴くことが出来た。そして、孫子の歌声を耳にしたものは、たいてい、動きを止めて、その歌を聴くことになった。

『おしっ! 掴みはおっけー!』
 それまでざわついていた人混みが、孫子の歌が流れるのとほぼ同時に、ぴたりと静まりかえったのを確認して、ステージ上の羽生譲は内心で拳を握りしめた。

 孫子が歌い終わり、やはり優雅に一礼しても、しばらく放心しているかのように、周囲はしーんと静まりかえっていた。
 数十秒を越え、一分を少し越えたあたりで、ようやくパラパラと拍手をする音が聞こえはじめ、一旦聞こえはじめると、今度は、直ぐに割れんばかりの喝采に変化する。
 怒濤のような喝采を負けじと、マイクを手にした羽生譲も声を張り上げた。

「おーっと! 大変だ! トナカイだ! サンタさんが歌っている隙に、トナカイが、大事な子供たちのプレゼントを持ち逃げしたー!」

 白い袋を担いだ着ぐるみ姿の楓が、ステージ中央に立つ孫子と羽生譲の周囲をぐるぐるーっと二、三度わざとらしく周回してから、やおら、ステージから飛び降りて、見物客の中に飛び込んだ。
「お待ちなさい!」
 叫んで、孫子も、客席の中に飛び込む……。

 こうして、ショーは舞台の上からあっけなくはみ出し……あとはもう、二人のアドリブ……というよりは、出たとこ任せのLIVE鬼ごっこ、になっていった。ただし、逃げる楓も、追う孫子も、並の人間ではない。
 例えば、

 いつの間にか喫茶店の中で優雅にお茶しているトナカイ。サンタが見つけて店内に踏み込んでくる。遁走するトナカイ、追うサンタ……。

 といった具合に、文字通り神出鬼没で……楓のトナカイは、商店街のどこにでもいきなり現れ、そして、誰かがその存在に気づくと、途端にサンタが現れて追いかけっこを再開する。
 二人目当てに集まってきた人々は、だいたい、最低一回は商店街のどこかで追いかけっこをする二人を目撃したたが、彼女たちはあっという間に姿を消してしまう。
 そのうち、「二人の代役が何人もあちこちに隠れいるのではないのか?」という噂がどこからか流れはじめ、二人の「目撃情報」が、携帯電話やメールで飛び交うようになったが、司会者である譲も含め、二人がどういう経路を辿って、今現在どこにいるのか、把握しているものは、当事者である、追いかけっこ続ける二人以外にいない、という有様だった。

 それは、「ショー」というには、とても奇妙な代物だった。
 なにせ、特設ステージの上は、オープニングとエンディングのわずかな時間以外、誰もいなくなるのだ。そのくせ、ショーを見に来た人々は、人手が多すぎてステージ近くにいくことができなかった者たちも含めて、どこかしらで、「彼ら」のパフォーマンスを目撃した。
 そう、ちょうど、「トムとジェリー」のドタバタな追いかけっこを間近でみていていたら、ちょうどこんな感じだったろう……。
 追いかけっこを続ける二人に、あっという間に置いてけぼりにされてしまうのだ。
 そして、「ナマで二人をみた」という記憶と、どこからか流れてくる、断片的な、正確かどうか分からない「目撃情報」のみが、「観客たち」にもたらされる……。

 そんな、まったくもって前代未聞の、とても奇妙な「ショー」だった。

[つづく]
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彼女はくノ一! 第三話 (14)

第三話 激闘! 年末年始!!(14)

「……なんかさあ、ソッチのほうでこーちゃんに先越されるとは、思わなかった……」
 相変わらずお湯の中の香也のイチモツを指先で撫でさすりつつ、羽生譲がそういった時、香也は、はじめ、意味がよく分からなかった。
「……あれ、柏の妹ちゃんが、この前『実物とは違う』とかいってただろ? わたし、写真とか以外に、男の実物みたのこーちゃんのだけだし、それだって、こーちゃんがほんの子供の時の事だし……」
『あ。あ。あ。』
 と、次第に、譲がなにを言い出したのか、理解してくる香也。
 そう。香也にとっては「年上のおねーさん」でも、香也にとって、一緒にいる時間が長く思えても……高校を中退してからすぐ狩野家と同居をはじめた譲は……世間一般的に見れば、充分に、若いのだ。

 ……そういえば、香也のモノを辿る指先も、なんか、こわごわと、という感じで、たどたどしい……。
「……こんなこと頼めるの、こーちゃんだけだしぃ……いい機会だし……それに、このままくノ一ちゃんに取られちゃうのも、癪だしぃ……」
 譲は、右手で香也のいちりたったものを弄りつつ、左手を香也の肩に回して、少し、香也の体を引き寄せる。
「……ちょっと……こーちゃんの、コレ……とか……反応、とか……。
 見させて。
 ……それとも、こーちゃん……わたしが……わたしと……こういうことするの……いや、か?」

 至近距離にある譲の顔が紅潮しているのは、決して、湯にのぼせたため、だけではないだろう……。
「……い、いや……じゃあ、ない……けど……」
 香也の思考と体は、硬直しかかっている。それでも、無理矢理、喉の奥から言葉を引きずり出す。
「……譲さん、駄目。もっと、自分、大切にしなけりゃ……」

 香也はすでに、楓と、二回、関係を持っている。
 ただそれは、半ば無理矢理、半ばなし崩し的、なものであり、香也にしてみれば、「そうなってしまった」ことに関して、つまり、自制して楓を押しとどめられなかったことに関して、忸怩たる思いを抱いている。
 決して、楓が嫌いなのではない。
 好きとか嫌いとか、そういうことを思いあう前に、先に体の関係を結んでしまった。
 そのことに関して、少年らしい潔癖さを持って、香也は後悔をしている。
 楓と二回目の関係を持った後、それは同時に、才賀孫子との初見でもあったわけだが、
『……また、雰囲気に引きずられて……やっちゃった……』
 と、かなり落ち込んだ香也は、諄々と楓に自分の気持ちを伝え、説き伏せ、「もう、強引にこういうことをしないこと」と、かなり強く説得した。
 楓はあまり納得した風でもなかったが、いつもぼーっとしている香也がいつになく強い口調でそういったので、しぶしぶ、という感じで、「友達からはじめよう」という香也の提案を承諾し、現在に至る……。

 香也にしてみれば、正直、家庭内にこれ以上、火種を作りたくはなかった。
 家内安全。

「……こーちゃんは、優しいなあ……」
 もちろん、香也とつき合いが長く、楓とも一緒の家に住んでいる長いる譲にしてみれば、二人の雰囲気の変化から、香也のその辺の思惑も、充分に推察する事ができる。
 ……でも……。
「こーちゃんがそうやって狼狽えてると……おねーさん、かえってその気になってきちゃったりして……」
 譲が、さらににじり寄ってくる。
 譲の、硬くなった乳首が、香也の胸板に触れる。
 いつのまにか、表面をたどたどしくなぞっていただけの譲の指は、逆手に、香也の剛直を握っている。力はそれ程でもないが……。
「……こんな、感じなんだ……硬いけど……表面の皮膚はすべすべしている……熱いよ……こーちゃんの……」
 譲の吐息が、香也の頬に、かかる。
 吐息も熱いが、声も、熱っぽい気がした……。

 香也の頭の中では、さっきから警鐘が鳴り響いているのだが、体は硬直して動かない……。

 譲が少し力をいれただけで、充分な大きさになっていた香也のモノの先端が、露出する……。
「……へぇ……これが、『ムケる』ってやつかぁ……」
 譲は、一番身近な異性である香也が、自分を女として意識していることで、性的な興奮を憶えてもいたが、身近な相手である故に好奇心や探求心を感じる余裕も、また、あり……好奇心六分興奮四分、といったところだろうか。
「……もう、ちゃんと大人なんだな……ここ……なんかここから、ヘンな臭いしてくるし……この露出したところ、触るとどうなの?」
 おずおずと、指先で亀頭部に触れてくる。
 うっ、と呻いて、香也は身をよじる。
 譲は、肩に回した腕に力を込めて、香也の体を逃さない。
「……もっと、そっと……」
 香也は、そう伝えるだけで、精一杯だった。
「痛いの? 気持ちいいの?」
「……両方……力、込めないで……」
「……そっかぁ……そっと? そっと?」
 譲はできるだけそーっと表面を触ったつもりだったが、若い香也のその部分は敏感にすぎて、それでも香也は、譲が触れた部分を動かすたびに、ビクンビクンと背中を震わせた。
「……うわぁ……そんなに感じるんだぁ……」
 譲の好奇心に、さらに火がついた。
「ねぇ、これ、舐めてあげようか? 舐めてもらったこと、ある?」
 香也はぶんぶんと首を振る。譲は、経験こそないものの、同人誌に携わった関係から、ヘンな知識だけは豊富である。
「そっかぁ……じゃあ、こーちゃんのをお口でするは、わたしが最初な……」
 香也が止める間もなく、譲は香也の前にひざまずき、両手で香也のイチモツを握って腰を導き、香也を浴槽の縁に腰掛けさせる。
 そして、両手で大事そうに握ったまま、その先端に顔を近づけ……鈴口に狙いをつけて、ぺろり、と、舌を動かした。
 うひゃあ、と、香也が声を上げる。
「……そんなに、いいかぁ……」
 そこからかすかに滲み出ていた白っぽい液体は、なんかヘンな味がしたが、それ以上に、過剰な反応を示す香也が、とても可愛く思えてきて、譲は、さらにいろいろ弄りたくなった。
「じゃあ、舌でいろいろやったあと、お口でしような」
 その部分を口に含む事に関する嫌悪感は、譲は、特に感じなかった。

[つづく]
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髪長姫は最後に笑う。第三章(9)

第三章 「茅と荒野」(9)

「……いいか、茅ちゃん」
 しごく真面目な顔をして、飯島舞花はいった。
「『いらっしゃいませ、ご主人様』というのは、メイドさんの発言としては、誤用だ。
『いらっしゃいませ』ということは、迎えたのはお客様、ということであり、ご主人様ではない。
 ご主人様をお迎えるする時は、『おかえりなさいませ』というのが、本当だ……」

『……真面目くさった顔をして、なに下らん無駄知識を茅に入れ知恵しているかな、この大女は……』
 茅がいれてくれた紅茶を啜りながら、加納荒野は思った。
 内心では、ひょっとして、この昨日知り合ったばかりの飯島舞花という少女、三島先生につぐ「茅の無駄知識供給源」になるんじゃないのか、と、戦々恐々している。意図的にこちらを困惑させようとする先生と違い、この少女の場合は、ごく真面目に茅に教えているあたり、かえって始末に悪いような気がする……。
「……うまいな、この紅茶。茅、どこでいれ方、習った。親父がこういうの好きだったのか?」
 そう思った荒野は、露骨に話題をそらそうとする。
 茅は、首を振る。
「紅茶のいれかた、自分で、ネットで調べたの」
 ……まあ、あのあばら屋に、高級な茶器とか茶葉は、不釣り合いか……。
 荒野は、自分が今し方発した質問を自分でも否定した。
 茅は、荒野がよく飲むコーヒーが、飲めなかった。
「苦いの」ということだが、育った環境が環境だから、刺激物に不慣れで、苦手なのかも知れない。「甘い物が好き」というのも、以前は、あまり砂糖などの甘味料にありつけなかった反動なのではないか、と、荒野は推測している。
「そうそう。そういや、さ……」
 飯島舞花は、先ほどまでとは違う、別の話題を自分から振ってきた。「わけあり」といった途端、荒野たちの事情に踏み込んでこないとこからみても、この少女は、みかけよりずっと気配りができる性質らしい、と、荒野は観察する。
「商店街の例のショー、今日の夕方からだろ? どうせなら、みんなでいかないか? どうせ見るんなら、賑やかなほうがいいだろ?」
 どうせ見に……というか、監視に、行くつもりだったので、断る理由はなかった。

 荒野と茅、飯島舞花と栗田精一の四人でマンションの駐輪場に、降りる。舞花はMTB、栗田精一は荒野と同じような、実用本位のママチャリに乗っていた。ショーの時間まではまだ少し時間があるが、少し早めについても、マンドゴドラあたりで時間を潰すつもりだった。茅は一人でひょこひょこ頻繁に顔を出しているようだが、荒野は、この前女の子の一団に取り囲まれて以来、マンドゴドラからなんとなく足が遠のいている。それに、いつも御馳走になってばかりだったので、たまにはお客さんを連れていって、わずかでも売り上げに貢献しよう、という気持ちもあった。
「でもなあ。駅前、今日、結構、人出多いってさ」
 そのようなメールがさっき友達から届いた、と、飯島舞花はいった。

 実際、駅に近づくにつれ、「なんでこんなに人がいるんだ」と思うほどの人垣に阻まれ、途中のコンビニの前で自転車を停めて降りなくてはならなかった。たしかに、クリスマス前後の三連休ではあるが、ターミナル駅でもなんでもないこの駅前は、普段はほとんど地元の利用者しかいない、半ば寂れかかった田舎の駅である……はず、だったが……。
 この日は、駅のほうから出てくる人と、駅の方にいく人の、両方の並がぶつかり合ってごったかえす状態に、なっていた。
「……この辺、休日とかになると、これくらい人がでてくるもんなの? 普段」
 この土地に来てから日の浅い荒野が、地元民の飯島舞花に尋ねる。
「……いいやぁ!」
 飯島舞花は言下に否定した。
「この辺、平日だろうが休日だろうが、連休だろうが、あんまり関係ないよ」
 要するに、「この近辺に住んでいる住人しか利用しない駅」という荒野の印象は、さほど的はずれではなかったらしい。
 そうこうするうちに、人の間を縫うようにして、ようやく駅前商店街の端っこにつく。アーケードの屋根はここまでは届いていないが、商店はぽつりぽつりと点在する、という感じの場所で、その点在する個人商店のうちの一軒が、茅のお気に入りの洋菓子屋「マンドゴドラ」だった。荒野の感覚でも、たしかに、味はよく、マスターもそれなりに腕に覚えがあるからこそ、立地条件にあまり拘らなかったのではないか、と、荒野は思っている。マスターに直に問いただしたわけではないが。

「お。来た来た。最近、どうしてたんだ? 男の子のほうは、ひさしぶりじゃないか」
 いつも接客しているアルバイトの店員たちのほかに、今日はマスターも店先に出ていて、次から次へと大小のケーキを買いにくる客たちを捌いていた。店先には順番まちのお客が、それも、クリスマス・ケーキの予約をしていたお客と、飛び入りのお客の、二種類の列ができており、ずらーっと五十メートルほど伸びていた。マスターと店員たちは、いつものようにお客を店内にいれず、店内にはぎっしりとケーキの入った箱を積み上げて倉庫代わりにし、店先に机をもだして、そこでお客を捌いている。
 見たところ、「てんてこ舞い」という表現がぴったりくるような、忙しさだった。
 いくらクリスマスはかき入れ時、とはいっても、ここまでお客が来ているとは、荒野は予想していなかった。

「みてくれよ、この人!」
 マスターはいった。
「君らのCMも結構評判になってたけどさ、あの、トナカイとサンタ、なんか予想以上に噂、広まっててさ。
 この三日間でファイナルだってことで、県外からもかなり人が集まってきているらしい。
 うちの店なんか、君らの影響との相乗効果で、見たと通りすごいことになっているよ!」
 マンドゴドラのマスターは、ニコニコと笑いながら、荒野たちに怒鳴るように説明した。
 笑いが止まらない、というのは、こういう状態なんだろうな、と、マスターのダイナミックな笑顔をみながら、荒野は思った。
 マンドゴドラの売り上げに対し、そこまで貢献した荒野たちは完全に賓客扱いで招き入れられ、そこだけはガランとしたマンドゴドラの喫茶室に通される。そこのカウンターにつくやいなや、「見ての通りの状態なんで、あんまり相手できないけど」と、マスター自ら、適当に見繕った飲み物とケーキを人数分、運んできて、またすぐに接客にもどっていった。
「……茅。ここでは、コート脱ぐなよ。絶対」
 荒野は、隣に座った茅の耳元に、そう囁く。
 その茅が、ケーキを口にいれて表情を変えるたびに、外に並んでいる客たちが黄色い声を張り上げて喜んだ。外から見ている人たちから見れば、今、自分らの頭上につり下げられているディスプレイに映っている人物と同じ人物が、まったく同じような表情をしているわけで……。
「ご、御馳走になっといてこういうこというのなんだけど……」
 飯島舞花は、荒野にいった。
「なんか、落ち着かないな、ここ」

 荒野も、同感だった。
 四人は早々にマンドゴドラを辞し、駅前の特設ステージへの向かう。
 そのまま出て行くのは怖いので、マスターにひと言断って、厨房のほうにある、店の裏口を使わせて貰って、マンドゴドラを後にした。

[つづく]
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紹介 「人妻の恥ずかしい写真-BLOG」

人妻の恥ずかしい写真-BLOG

写真サイトの紹介で洋物が続いたんで、ちょっと日本人の方もご紹介させていただきましょうか。

私の写真や動画を公開しながら、日々のセックスやオナニーの様子を赤裸々に書き綴っていきます***全部、私本人のオリジナルです***


ということで、どうも素人運営で、写真のご本人さんと撮影者(いると思う。写真のアングルとかから考えても)の数人でやっているんじゃないかな、的なblogをご紹介。
「掲載されている写真が、被写体本人限定」というのは、拾い物全盛の今時かえって珍しいんじゃないでしょうか?

強いていえば、「プロがやっているクオリティの高いのは見飽きた」という方向け……なんだろうな。
プロポーションも微乳系だし、もっと見応えがある写真や映像は、それこそネットに山とあるだろうけど……多分、この被写体の人、ごく普通の方なんだと思う。
「普通の人が自分でここまで露出している」とか、そういう生々しいシュチュエーションに萌えられる方向け。

実は、アフィリエイトへの誘導も結構多いけど、このblogにあるような写真晒してリスク背負っているんだから、この程度はいいんじゃないっすか。

あと、実は、写真は結構真面目に修正入っているけど、動画の方の修正は、かなり甘い。っつうか、きわどいです。



彼女はくノ一! 第三話 (13)

第三話 激闘! 年末年始!!(13)

「お風呂イベント発生!」などといいながら、突如、羽生譲が狩野香也の入浴時に乱入してくることとは、別に珍しいことではなかった。……数年前、までは。

 なにしろ、香也は「笑わない、しゃべらない、反応しない」子供だったし、羽生譲は、そんな香也になにかしらのリアクションを起こさせることに、躍起になっていた時期がある。特に、この家に同居し始めた当所は、名目上は「順也の弟子」ということだったにせよ、それ以外に様々な副次的な事情があり、「なんとか先生の役に立ちたい」と焦っていた時期もそれなりにあって、絵の腕の方にイマイチ自信の持てない譲は、それ以外の、例えば、家庭での活躍に力を入れていた時期があり……その時、よい標的になったのが、つまり、あまり健全な情緒的発育をしているように見えなかった、狩野香也の存在だった。

「んっふっふっふ。こうしてお風呂いっしょするのもひさしぶりだねー。こーちゃん……」

 なにかにつけ、感情表現が極端にうすい子供だった香也も、「年上の、かなりきれいめなおねーさん」にあたる羽生譲から過度の接触を受けたりすると、やはり、照れたような恥ずかしがるような、まともな反応をしめした。その他の時は話しかけても反応しないことがほとんどだったから、特にこの家に同居しはじめた当所、羽生譲はまだ幼かった香也に、なにかにつけてべたべたと「物理的接触」を行った。

「……今年の年末は、ほんとうにご苦労様だったねー。おねーさん、感謝の印に、今日は、お背中でもお流しするー……」
 ねっとりとした口調でそういいながら、全裸の羽生譲が、湯船に浸かっている狩野香也の体の上に覆い被さって、顔を近づけていく。

 羽生譲が「お風呂イベント」と称して香也の入浴時に乱入してきて、香也が慌てたり恥ずかしがったりする反応を楽しむのも、そんなわけで割とよくあることだった……数年前まで、は。
「お風呂イベント」が発生しなくなったのは、ひとつは、そんな小細工を労せずとも、だんだんと香也が譲と会話をするようになったからだし、もうひとつは、香也が成長して、ちょっと混浴もシャレにならない年齢になってきたからで……ようするに、今夜の羽生譲は、充分に様子がヘン、だった……。
「……譲さん、なんかあった?」
 香也は羽生譲に、そういった。
 なにしろ付き合いが長い。というか、羽生譲は、香也が今の人格を形成する上で、かなり影響を受けた人物でもある。香也がこの年齢になっても、まだ、「お風呂イベント」を発生させる、というのは、やはりなんらかの変調がある、と、そう感じた……。
「……わかる、か?」
 ドアップになった羽生譲の顔が強ばり、次いで、目尻に、じわり、と、涙がにじむ。
「……昨日の夜、な……。
 ……馬鹿親父と、あった……」
「……あ……」
 香也は、譲の父親、譲市と直接の面識があるわけではない。しかし、この狩野家、それに譲と、どういう経緯があった人物であるのか、ということは、知らされている。
「あ。あ……」
 まだ少年であり、加えて、人付き合いが苦手な香也は、譲に、なんといっていいのか、分からない。
「……落ち着いて、譲さん……」
 自分の上に覆い被さっている譲の肩に手置いて、そういうのが、精一杯だった。
「……ごめん……こーちゃん……」
 ふわり、という感じで、譲は、香也の上にそのまま抱きつき、肌を密着させる。
「……このまま、泣かせて……あと、泣き顔、絶対みるな……」
 そういって、向き合った姿勢でべったり香也に抱きつき、首を交差させるような姿勢で、静かに嗚咽を漏らしはじめる。

 香也は、真っ赤な顔をして硬直しながらも(正面から向き合いながら、全裸同士で抱き合っているわけで、当然、乳房をはじめとして、譲の体の感触や体温は、まともに伝わってくる。それに、体臭……)、手のひらで軽く譲の肩を叩くとかして、譲が落ち着くのを、待った。
 待つよりほか、為す術がなかった。

 五分もそうしていただろうか。
「……ごめんな、こーちゃん……」
 まだ鼻をぐずぐずさせながらも、譲はなんとか顔をあげ、香也の体との間に、少し隙間をあけた。
「……情けないよな……普段年上ぶってるのに、こーちゃんにこういう甘え方するの……でも……」
 香也は、あまりにも気色のいい感触のする譲の体が離れたことに、半分ほっとしながら、残りの半分は、残念がっている。そして、こんな時でも譲を異性として意識している自分の浅ましさに、自己嫌悪を抱いている。
「……よかったなー……ぼーっとしているように見えても、こーちゃんもちゃんと男の子だ……」
 ……まあ、全裸で抱き合っている相手には、香也が反応していることが丸わかりなわけで……でも、こういうシュチュエーションの時に、正面からそれを指摘するのはどうか、とは、思う……。
「……んっふっふ……本当、よかったよ。こーちゃん、わたしのことも、ちゃんと女として見て貰えているんだ……」
 譲と香也の関係は、ちょっと複雑だ。幼少時から長年同居している、少し年齢の離れた、異性。
 現在の関係と距離感を掴むまでに、かなり時間がかかった……。
「それで、もう使ったの、このでかくなったの。あの、くノ一ちゃんに……。
 ここまできたら、おとなしく白状しちまえよぉ、こーちゃん……」
 そういって、湯に濡れた肩をすり寄せてきて、香也の耳元に、囁く。
 少し泣いて落ち着いたのか、普段の譲のペースに、かなり戻っているような気がする……。
 というか、ぶっちゃけ、「立ち直るの、早すぎ」、と、思わないでもない。

「……なんか、その表情みてると、なにもいわないでも答え分かるような……。
 ……しかしまあ……これをなー……。
 前にみたときは、あんなに可愛かったのに……いつの間にか、こんなに立派になって……」
 譲は、香也の上に覆い被さるようにして、中腰になりながら、お湯の中に手をいれて、香也の、反応している部分を物珍しそうに撫でさすっている。
「……意外だよなー。こーちゃん、ぼーっとしてるし、奥手とかそういう以前、な感じだから、初体験、かなり遅れると思っていたけど……。
 いざとなったら、わたしが筆おろしすのかなーって、比較的最近まで思っていたり……。うん。わたしか、あすきーちゃん……ダークホースが、真理さんだと思ってた……」

 ……しみじみとした口調でいいながら、そんなこころを、微妙に触らないで欲しい……。
 と、香也は思った。

[つづく]
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髪長姫は最後に笑う。第三章(8)

第三章 「茅と荒野」(8)

 制服のお披露目が済むと、茅と荒野の二人は早々に狩野家からに戻り、一旦マンションに戻って制服を脱いでしまいこみ、普段着に着替えてから、再び駐輪車に向かった。
 当初の予定より、なんだかんだで二時間くらい遅れたが、この日は、お節料理の材料と、それに、クリスマス・プレゼントを買うため、商店街より少し遠くなるが品揃えの良い、国道沿いのショッピング・センターに行く予定だった。
 三島から和食の基本をたたき込まれた茅は、「自分の腕を試すために、お節料理に挑戦したい」、と少し前から言いだしていた。お節を材料から作るのには時間も手間もかかるが、和食の基本的な調理方法を全て網羅している、という点では、いい試験材料でもあった。
「あれは、和食の技法を一通りマスターしていないと作れないからな」の三島のなにげない一言に、茅が触発されたらしい。正月まではまだ少し日数があったが、実験やら練習やらも含めて余裕をみると、時期的にもちょうどいいように思えた。
「茅がやる気になっているのなら……」と、荒野も荷物持ちを買ってでた。荒野は、運転自体は問題なくできるが、日本の法律では免許を取得できる年齢に達しておらす、自動的に、自前の足は徒歩か自転車に限定される。書類上は、荒野の妹ということになっている茅も事情は同様で、大量の重い食材を茅一人に運ばせるのは、少し気の毒に思えた。
「クリスマス・プレゼント」はそのついでのようなもので、実は、茅には、まだ買うということさえ、告げていない。

 冷たい風を切るようにして自転車をこぎ、国道に出る。国道沿いに十分ほど延々と自転車をこぐと、この近辺では一番商品が揃っている大型ショッピング・センターにようやくたどり着く。車がないと不便な立地だが、各種店舗が内部にひしめき合い、ここができてから、駅前の商店街の客足がめっきり落ち込んだという。とはいっても、似たような情景は、現在の日本各地で散見されるのだろう。日本に限らず、モータリゼーションが行き着くところまで行き着いた地域なら、世界中どこでも似たようなものなのではないのか、と、荒野は思う。
 予定よりも出発するのが遅くなったので、「たまには、夕食を外食で済ますのもいいな」、と、荒野は思いはじめている。
 普段、自炊することが多いのは、荒野自身が一食につき、人の三倍くらいを平らげる大食漢であることと、マンションの近所にろくな飲食店がないからだった。このショッピングセンター内には、当然のことながら、小綺麗な飲食店も多く軒を並べている。

 あらかじめ茅が用意していたメモに従って、乾物や豆を中心に食材を買っていくと、あっという間に荷物は膨れ上がった。大きなポリ袋を三つ、四つ抱えた時点で、荒野は「今日はこの辺で」と、茅をとどめた。
 重量的には、この数倍は楽に持てるのだが、人通りの多い場所で、あまり大きな荷物を抱えて目立つつもりもなかった。
「足りない分は、また今度、な。
 それより……」
 荒野は、たまたま目についた、少しマニアックな雰囲気の店舗を指さした。
「……あそこで、茅へのクリスマス・プレゼントを買わせてよ」
 その店舗に、毎週日曜日の朝、茅が熱心に視聴している「奉仕戦隊メイドール3」の玩具らしきもの、が、ディスプレイされているのが、たまたま目に入ったのだ。

 荒野の目には「少しマニアックな」くらいにしか写らなかったが、その店は「少し」どころではなく、かなりディープな店だった。
 商品も、マニア向けのフィギュアやトイ・モデル、トレーディングカードなどで占められており、要するに「子供向けの玩具屋」というよりは「大きなお友達向けのショップ」で、商品の一つ一つがハイ・クオリティにできている代わりに、単価も、相応に高かった。
 そんな店に入ってきた若い男女……茅と荒野は、は、いろいろな意味で「場違い」だった。
 ニット帽を被った男のほうが、食材の入った白い大きなポリ袋を多数抱えていたこと(そのような生活臭さは、このような趣味的な店には、まったくもって不釣り合いだ)、男女ともに若く、そして美形だったこと(そもそも、カップルで入る客などほとんどいない店だ。ましてや、「若い、美男美女のカップル」など、皆無といってもいい)、など……。

 もっとも違和感を覚えさせたものは、その会話だった。
「なあ。これなんかどうだ、茅? こんなロボットが、好きなんだろ?」
「これ、最強審神ジャスジャッジスなの。メイドールの前の番組に出てきたやつなの」
「……うーん。そういわれてもなぁ……おれには見分けがつかないし……。
 じゃあ、茅。この店のなかので、なんか欲しいものあるか?」
「この中で欲しいもの……だと、これになるの」
 カップルのうち、長髪の女が指さした商品を確認して、男のほうが、目を見開いてて、驚愕の表情を形作った。

 カップルのうち、男よりも女の方がその手の情報に詳しい、というのは、まあ、いいだろう。少数派ではあるが、確かに、ごくまれには、そういう組み合わせのお客もいる。それ以前の前提として、「カップル客」自体が、極端に少ないのだが。

 しかし、それにしても、そういう彼女の趣味にあまり理解を示さない男というのは、果たしてどういうもんだろうか……。

 彼らの対応にでた店員は、この店に来る多くのお客たちと同様、「彼女」どころか「女性」そのものに縁がないタイプだったので、やっかみ半分、内心で、そう思わないわけにはいかなかった。

 ……それも、こんな可愛い彼女が、自分から「こんな服を買ってくれ」なんていいだすことは、滅多にない。あるわけがない。現実には、あってほしくない。
 そんなことが実際に起こるのは、それこそ、エロゲの中くらいなもののはずだ……。

 そう思いつつも、その店員は、商売用の愛想笑いを浮かべて、それはもう丁寧に、「奉仕戦隊メイドール3 スーパー・ウルトラ・コンプリートになりきりよ(はぁと) ご奉仕セット」をラッピングした。

『……こんな可愛い彼女が、みずからこれを着て、ご奉仕してくれるなんて!』
 という嫉心は、極力心に秘める。ビジネスはビジネスである。

 その表情を見る限り、どうにも、そのカップル、特に男の方は、「かなり本格的な裁縫のメイド服一式」の価値を、まるで理解していないように思えた。

 翌日、飯島舞花と栗田精一は、昨日教えられた部屋に、加納兄弟を訪ねていった。
「……うーん……遊びに来るのは構わないけど、結構留守にすること多いし、居るかどうかまでは保証できないよ」
 といいながらも、昨日、加納の兄は、部屋番号を教えてくれた。
 なに、二人にしてみれば、留守なら留守で飯島舞花の部屋でいちゃつくだけのことなのだ。今までの試験休み期間中、ほとんどそうしてきたように。
 飯島舞花の保護者である父親は長距離トラックの運転手をしており、不在がちだったし、二人の関係は公認のものだったので、仮に父親がいても、あまり問題にはならなかった。

 だが、彼らが訪問したその時、加納兄弟は、たまたま在宅していた。
 しかし、出迎えてきた茅の恰好をみて、二人は絶句することになる。
「いらっしゃいませ、ご主人様……なの」
 メイドだった。
 まごうことなき、「あの」メイドだった。
 世界の趣都、アキハバラにいけば、ダース単位で生息していてチラシを配っていたりする、「あの」メイドだった。

 茅に即され、フローリングの廊下を通ってダイニングに行くと、加納荒野がむすっとした顔をして、ソファに座っていた。
「……お兄さん、いい趣味しているなぁ……」
 飯島舞花がいった。
「いや、おれの趣味じゃないって。てか、お前、わかっててわざといっているだろ? あの服、茅の趣味。昨日あれから、買い物がてらに、クリスマス・プレゼントなにがいいかって聞いたら、茅があれ選んだの。よほど気に入ったのか、昨日からずっと着ている。あのまま外にいこうとするのを、ようやく止めたところだ……」
 加納荒野は、人生の苦渋を一息で表すような、深い深いため息をついた。

 それから茅がいれて、振る舞ってくれた紅茶は、かなり高級な茶葉を使用しているのか、たしかに香り高く、そして旨かった。

 さすがは、メイドさん。

[つづく]
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