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2006-06

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(101)

第五章 「友と敵」(101)

 月曜日。
 週末にどんなことがあろうとも、この曜日になれば以前と変わらない平々凡々たる学生生活を送るため、荒野たちも一学生として登校しなければならない。
 いつものようにマンションの前あたりで適当に集合し、適当に談笑しながらぞろぞろと学校に向かう。

「……バレンタインの売り出しに協力、も、いいけどよ……」
 登校時、合流してきた玉木に、荒野はそういった。
 途中から玉木珠美が合流するのも、もはや恒例になっている。
「……学校側にはどう説明するんだ?
 年末のあれも、顔合わせの時、こってり絞られたぞ……」
「そっか……おおぴらにバイトは……」
 考え込む玉木。
「ああ。
 一回や二回は、大目にみてくれるかも知れないけど……あんまり派手にやりすぎると、睨まれるんじゃないかって……。
 長期的に展開するとなると、それなりの対策はしておいたほうが、いい……」
 戸籍上の年齢でいえば、荒野たちは通常のバイトすら、おおぴらにできない年齢なのだった。
 平穏な生活を望む荒野にしてみても、自分のほうから進んで学校側に睨まれるような真似は、したくなかった。
「うーん……。
 そだね。その辺は、有働君と、対策なんか考えてみるよ……」
「頼む。
 学校のことに関しては、お前らのほうがよく知っている筈だから……」
 一般人として平穏に暮らしながら、地元地域社会に貢献するというのも……実際にやろうとすると、これでなかなか面倒なもんだ……。
 と、荒野は思った。
 実際に動き出せば、それなりの結果を出せることは、年末に実証済み、なのだが……それを行うと、今度は「平凡な一学生」としての枠組みからはみ出す。
 いわば、あちらを立てればこちらが立たず、といった状態なのである。
 玉木は有働と相談してなんらかの抜け道を探してくれるそうだが……。
『……いっそのこと、信用できる職員を作って、そちらと相談しながら進めたほうが、効率的なのかも知れない……』
 そんなことまで考えはじめている、荒野だった。
 少し前までは、荒野は、自分たちの正体を完全に伏せた状態で潜伏することを考えていた。しかし、一族という一般人の枠からはみ出した集団からも、さらにはみ出した茅たちに、安心して暮らせる土地を与えようとすれば……玉木や有働が昨日いった通り、周囲の環境を力づくでも、自分たちの存在を許容するものに変えていくより他、方法はないのではないか……。
 と、荒野は、思いはじめている。

 荒野にしろ、好きで一族の一員として産まれたわけではない。茅だって、自分の意志であのような体質になったわけではない。
 自分たちの責任ではないのに……これから先の長い生涯、下手をすれば一生……こそこそと隠れて暮らす、というのも、考えてみればひどく、馬鹿げたことに思える。
 第一、ここで失敗して、周囲の環境が荒野たちに寛容なものになる前に、荒野たちの正体が露見しても……荒野たちは、別の土地にいって生活の仕切り直しをするだけであって……よくよく考えて見ると、なにもやらないで失敗した時と、あがくだけあがいた上で失敗した時のリスク、というのは、実のところ、あまり変わりばえしないのだった……。

「……あっ……そうだ……」
 玉木との話しが一段落すると、荒野は、今度は楓を手招きした。
「楓。
 ……お前、今度の週末、ちょっとおれに付き合え。
 時間、空けておけ……」
「お。朝から告白っすか?」
 そばにいた玉木のまぜっかえしを、
「……あほ」
 の一言で退け、荒野は楓にいった。
「お前、最近、髪切ってないだろ?
 今度の週末、おれとあの三人とで美容院にいくことにしたから、お前も一緒にどうだ?」
「……あっ……」
 樋口明日樹が、小さな声をあげる。
「みきねーの……」
「そうそう。
 昨日、買い物にいった時、未樹さんにばったりあってさ……。
 その時に、なんかそんな話しになって……」
 楓に「その時は同行する」という言質をとると、荒野は「うん。じゃあ、そのつもりで予約入れておく……」といった。
 まだお店が開いている時間ではないので、休み時間にでも未樹の勤める店に連絡をいれるつもりだった。

 エントランスで上履きに履き替えて荒野たちはそれぞれの教室に向かう。荒野たちは依然としてそれなりに目立つ生徒であり続けたが、何週間もここに通っていれば、それなりに知り合いも増える。
 同じクラスであったり、部活が一緒だったりするそれらの顔見知りに挨拶しながら、それぞれの教室を目指す。
 同じクラスの才賀孫子や樋口明日樹とともに教室に入ると、本田が荒野のそばに寄ってきた。
 少し気が強いところを除けばごくごく普通の生徒である本田は、席が近いというだけの理由で荒野とそれなりに話す間柄だ。
「……ねーねー……加納君」
 その本田三枝は、朝の挨拶もそこそこに、困惑顔で荒野に質問をぶつけてくる。
「昨日……国道のあたりで、バイクに囲まれなかった?」
「……ああ……」
 荒野は別に否定しなかった。
 もともと地元での出来事だし、間接的か直接的かは問わず、目撃者もでるだろうとは、予測していた。
「ガラが悪くて、けたたましい単車、三台に囲まれたけど……」
 荒野は、そう返事をする。
 隠してもしかたがないし……それに、荒野があのバイクに仕掛けたことは、動きが早すぎて一般人の動態視力では認識できなかった筈……だった。
「どうした加減か、そのうち一台がいきなりこけて……。
 で、因縁つけられるのもいやだから、必死になって逃げてきた……」
「……そっか……やっぱり、本当だったんだ……」
「あれ、誰かが……みてたんだ……」
 帰ってからローカルニュースをチェックしても、特に報道された様子もなかったから、死傷者がでるような事故にはなっていないと、荒野は判断していたのだが……。
「うん……。
 わたしのおじさん……実は、警官で……。
 あっ! でも、ドラマとかにでてくるような、そんな格好いい仕事じゃなくて、単なる白バイ警官なんだけど……。
 昨日、パトロール中に、加納君らしい男の子がバイクに絡まれているのをみかけて、助けに行こうとしたら、加納君の隣を走ってたバイクがいきなりこけたって……」
 本田は、うんうんと頷いた。
「……加納君のその髪、目立つから、遠目にも、見当がつくのよね……」
 それから羽田歩は、荒野の耳元に口を寄せ、
「加納君……去年、おじさんに、自転車でスピード違反して、捕まったでしょ? 保護者呼び出したら、何故か三島先生が来て、盛大に引っ掻き回されたらしいけど……」
 世間は狭い……。
 というか、ここのような小さな町では、これくらいの偶然は、始終あるんだろうな……と、荒野は、思った。
「加納君……ママチャリで、八十キロ以上、だしてたんだって?」
 羽田歩の発言は質問の形を取った断定だった。
「事実だが……そのことは、出来れば、内密に願いたい……」
 ごまかすのも無駄だな、と、思った荒野は、真面目な顔で頷く。
「おれ……あんまり、騒がれたくないもんで……」
「知ってる。
 加納君、目立たないように気をつけているもんね……普段から」
 本田は、ため息をついた。
「でも……気づいてる? 加納君?
 その努力、あんまり成功していないから……」
 そういわれてしまえば……。
「……なんとなく、そうなんじゃないかなぁ……とは、思っていたよ……」
 ……荒野にしてみても、殊勝に頷くより他、ない。

 やがて、朝のホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り響き、クラス内にいた生徒は、ぞろぞろと体育館に向かった。
 週始めである月曜の朝は、全校朝礼があるのだった。

[つづき]
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彼女はくノ一! 第五話 (59)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(59)

 到着したばかりの携帯電話をひとしきり弄ると、それなりにいい時間が過ぎていた。テンは、今日の夕方から、徳川篤朗の工場に通うことを約束しており、工場周辺の地図もメールで知らされていた。また、初日、ということもあり、今日だけは三人で一緒に行く約束をしていた。
 三人は、家具がなくがらんとした自分たちの部屋にいったん戻る。
 テンは、そこの隅にある、ぬいぐるみが満載された段ボール箱から、DVD-Rのドライブを取り出して、パーカーのポケットに入れた。
 そのディスクには、テンが夜の空き時間を利用して羽生譲のパソコンで製作した、CADデータを焼いている。データの内容は、三人の予備の六節棍の三面図と、孫子のライフルの部品を漏らさず書き起こしたもので、内容の正確さについて、テンはかなりの自信を持っていたが、この内容や精度如何によっては、篤朗の、テンに対する扱いも変わってくる……ということも、十分に予測できた。
 だから、今までにテンは、何度も細かい部分をチェックして、今日に備えていた。
「……行こうか」
 その割りには、特に気負った風もなく、テンは他の二人の仲間にそういい、玄関を出て、三人で気配を絶って、全力疾走で、篤朗の工場を目指した。

 メールに添付された地図をプリントアウトしたものを広げ、住所を確認した後、テンは、インターフォンの呼び鈴を押した。
 しばらく待つと、作業着姿の中年男が顔を出して、
「来た来た。
 トクから話しは聞いているよ。さ、入った入った……」
 とにこやかに出迎えてくれた。
「……しかし、聞いていた通り、三人が三人とも別嬪さんだな……最近のトクの回りは、一体どうなっているんだか……」
 とかいいながら、その仲元とか名乗ったおじさんは三人をフォークリフトのアームに乗せて、工場の奥の方にある篤朗の事務所にまで案内してくれた。
 三人は、そのおじさんのいう「べっぴんさん」の意味が分からなかったのでこれといった反応はせず、それよりも、フォークリフトのアームに乗る、という得難い体験や、それに、工場内に放置されている、前衛彫刻のような奇怪な形状をしている金属片のほうに、興味を持った。
 そのおじさんは、
「トクのやつは、すぐに帰ってくるはずだから、それまでその中で待っていてくれ……」
 といって、プレハブの中に案内してくれた。
 プレハブ、とはいっても、香也がアトリエとして使用しているような安普請のものではなく、中は普通に清潔な事務用品や応接セットが配置されており、その仲元さんがリモコンで起動してくれたエアコンもいくらもしないうちに室温を快適な状態にしてくれた。
 聞いていた通り、金回りは、かなりいいらしい……という意味を込めて、三人は顔を見合わせた。
 すぐに篤朗からテンに電話があり、「保育園に浅黄を迎えにいってから、そちらに向かうのだ」といわれた。篤朗は、冷蔵庫にあるものをなんでも飲食してよい、と、不必要に尊大な言い回しでいってくれた。
 そこ言葉に甘えて、冷蔵庫にあったペットボトルからジュースを取り出し、流しにあったグラスに注いで三人で飲んでいると、連絡から二十分くらいしてから、浅黄の手を引いた篤朗が姿を現わした。
 浅黄は保育園のスモッグに黄色いカバンと帽子、篤朗は香也たちと同じ制服の上に白衣姿で、例によってあの太った黒猫を頭に乗せていた。その黒猫は、どうやら目を閉じて寝ているらしかったが、それでも器用なことに、篤朗がいくら動いても、頭の上から落ちる、ということがなかった。
「ん? 今日は三人揃っているのか?」
 開口一番、篤朗はそう切り出した。
「ここで働くのは、ボクだけ。
 他の二人は暇だからついてきたんだ……。
 それから、これ……」
 テンは、応接セットのソファから素早く起き上がって、篤朗の目の前に持参したDVD-Rのディスクを差し出す。
「……この中に、ボクがここで初めて作るものの設計図……CADデータが入っている。ちょっと、確かめてみて……」
「……拝見させていただこう……」
 テンの視線は闘志をたたえており、それを受け止めた篤朗も、不適な面構えになっている。

 篤朗は、テンの作成したデータのうち、構造が単純で、採寸の正確さを判断しやすい、という理由で、六節棍のデータを先に検分した。
 三人とも、六節棍は折り畳んで肌身離さず持ち歩いている。
 だから、テンのデータと実物を比較すること自体、なんら問題なかったのだが……。
「……でも、これ、今持っているのとは微妙に変えてあるんだけど……」
 テンはそう説明する。
「では、なぜ、そのような変更を行ったのか、今この場で、説明するのだ……」
 篤朗は、ノートパソコンの画面を覗きこみながら、ことなげにそういう。
「……ええと……」
 テンも篤朗と顔を並べるようにして画面を覗きこみながら、即されるままに説明し始めた。
「……まず、今画面に出ているのは、ガクの分なんだけど、ガク、三人の中では一番力持ちで、いつも六節棍が軽すぎる、って、いっている。
 もともと、ボクらの体格に合わせて誂えたものだけど、ボクら、成長期だし、身長や体重だけではなく、その他のパラメータも軒並み上昇中だから、それを生かしきるすためには、持ち物のほうも、ボクらの性格に合わせてどんどんアレンジしていかなければならない……。
 ガクの場合は、力が強い訳だから、両端だけ少し重い材質に換える。
 ノリの場合、今どんどん背が伸びているところだから、それに合わせて、棍ももっと長くする……」
「その……ガクのだが……両端だけを重い材質に換えるのは、何故なのだ?」
「全部、均一に重くしちゃうと、今度は重くなりすぎ。
 持っているだけならそれでいいけど、実際に奮う時に、体が泳いじゃう」
 テンはガクのほうを指さして、篤朗の注意を促す。
 ガクの体格は、小学生高学年の児童相応だった。
「ノリは、身長も体重も、目下増加中だけど……」
 ここで、ノリがテンの後頭部を無言のまま、はたいた。
「体重も目下増加中」という言い回しに反応したらしい。
「……ガクとボクは、今んところ、そんなに急激に重くなったりしてないから……いくら力が強くても、体重が変わらなければ、重いものを振り回せば、遠心力に動きを制限されちゃう訳で……」
「……で、両端だけを、チタン製に換える、かね……。
 確かに、グラスファイバーよりは、チタンの方が重いし硬いが……それにしても、もっと頑丈な材質の方がよくはないかね?」
 その手の知識に疎い篤朗としては、武器として使用するのなら、もっとどっしりとした重金属のほうがしっくりくるのでは……と、思ってしまう。
 硬くて重い材質の方が、なんか、頼りになりそうだ、と……。
「棍なんて、どうせ、消耗品だよ……。
 それに、軽いものでも十分な加速度が乗れば、相応な破壊力を産む。
 問題なのは、重さよりも速度だよ。特に、持って振り回すタイプの武器は、長時間扱ってもあまり疲労しない重量で、なおかつ、ぶつかった時の衝撃で壊れにくい、という特性が必要で……しなやかで衝撃を逃がしやすい、グラスファイバーを少し壊れにくくしたくらいで、ちょうどいいんだ……。
 あんまり重く作っちゃうと、かえって、邪魔になる……」
 テンは、遠回しに、たかだかグラスファイバーでも、熟練者が扱えば、かなりの破壊力を産む、といっている。
「……ああ、もう!」
 なかなか納得しようとしない篤朗に業を煮やしたテンは、そう叫んだ。
「いいよ!
 今から実例、みせる!
 ノリ、テン、手伝って! これから篤朗に、ボク達の腕をみせる!
 百聞は一見にしかずだ!」

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(100)

第五章 「友と敵」(100)

 随分遅くまで睦み合っていたというのに、翌朝、茅はいつもの時刻に自分で起きた。血色もよく、体調も特に悪いように見えない。
 そのことから荒野は、「茅の身体能力は、予想以上に向上しているのではないか?」という疑問を抱いた。昨日の検査のデータをこちらにも流してもらえないものか、後で三島にでも、相談してみることにしよう……。

 荒野と茅は、いつものようにトレーニングウェアに着替えて外に出る。
 と、マンション前の路上で三人が待ち構えていた。
 三人の姿をみると、茅はいつも以上に荒野のそばに寄り添った。寄り添った、というより、荒野の腕をとって、その腕を抱きしめた。
「……お、おい……茅さん?」
 突然のことに、困惑の声をあげる荒野。
「荒野、茅の」
 そんな荒野の困惑をよそに、茅は、三人を威嚇するような声を出した。
「荒野、あげない……」
 茅に尻尾があったとしたら、髪の毛とともにそれを逆立てていただろう。
 今にも、「ふぅーっ!」といううなり声を上げそうな、剣呑な雰囲気だった。
 荒野は、
『……いきなり、なにを……』
 いいだすのか、という困惑と、
『昨夜のあれは……そういうことだったのか……』
 というふに落ちる感覚とを、同時に味わっている。

 そういえば、昨夜の茅は、「荒野、茅の」という言葉を、うわ言のように繰り返していた。
「……茅……おれ、こいつらとは、別……」
 そんなんじゃないよ……と、続けようとした荒野の言葉は、
「荒野! わかってない!」
 という、いつにない茅の言葉に遮られる。
「こいつら……自分たちの身の安全を保証してくれる、有力者を確保したいと思っているの。
 涼治の保護下に入ったのも、そうすれば、しばらくは安全だから!
 あわよければ、荒野も取り込もうとしているの。
 荒野、涼治よりは扱いやすいと思われているの!」
 荒野は唖然とする。
 荒野にしても、三人組が見た目どおり無邪気なだけの存在ではない……とは、みていた所だが……具体的にそこまで細かい想像を巡らせていたわけではないのだが……その程度のことは十分ありえるだろう、とは、荒野も漠然と思っているのだが……。
 それにしても、荒野が驚いたのは、茅が、珍しく感情をあらわにして、そうした予測を、よりによって三人の目の前で、ぶちまけたことだった……。
 計算も駆け引きもあったもんじゃないし……それ以前に、どうひいき目にみても……茅の推測は、明確な根拠となりうる証拠がある、とは、思えなかった……。
『茅らしく、ないな……』
 と、荒野は思う。
 そもそも、いつも冷静で理知的な茅が、ここまで無防備に感情を露わにすることが、珍しい……。
(多分)見当はずれな非難の的になっている三人組は、呆然と茅の狂態を眺めている。
 三人のうち、テンは、明らかにこの状況を面白がっている表情をしていた。
「……お、おい……茅、さん……」
 荒野は、力無く茅を制止しようとする。
 猛烈な脱力感を、荒野は感じていた。
「……荒野は、茅の! なの!
 誰にも、あげないの!」
 茅はそうまくし立てながら、荒野の首に腕をかけ、強引に下に引き下げ、荒野の口唇を奪う。
 それどころか、両足まで荒野の胴体に巻き付け、ユーカリの木に抱き着くコアラのような体勢のまま、強引に荒野の口を開けさせ、舌を割り込ませる。
『また……よりにもよって……外で、こんな真似を……』
 明らかに茅は、我を忘れている、と、荒野は思った。早朝の、通行人がほとんどいない時刻だからまだいいようなものだが……。
 荒野は、ただひたすら、茅のご乱行が静まるまで、無関係なご近所さんが通りかからないことを祈った。
 参院は、最初のうちは目を丸くして見ているだけだったが、ノリがぱちぱちと手をたたき始めると、ガクとテンまでもが拍手しはじめる。
 三人組が拍手で見守る中、茅の抱擁と接吻は三分以上も続いた。早朝で、他の目撃者がいないことが、荒野にとってはまだしも救いだった。

「いや……二人がらぶらぶだっていうことは、十分に理解できたつもりだけど……」
 荒野たちと併走しながら、テンはそういった。
 口調も表情も、明らかに面白がっている。
「……ボクらがかのうこうやを狙っているっていう、特異な発想は……いったい、どこから出てくるの……」
「……だって……」
 茅は、少しむくれ顔だった。
「昨日……ガク、荒野に色目、使ってた……」
「ボ、ボクが!」
 いきなり名指しされたガクは、驚愕の声をあげる。
「……なんだってこのボクが、かのうこうやなんかに……」
「ガク、昨日、未樹と荒野のこと、妙に気にかけてた……」
 相変わらずむすっとした声で、茅がいう。
「……そういえば……」
 そういってノリが頷きだしたので、ガクは、さらに慌てた。
「しつこく、えっちなことしてなかったか……聞いてた……」
「……ノ、ノリ……」
 ガクが、情けない声を出す。
「……ガクって、強い人が好きなんだよね……」
 テンが、淡々とした口調で続ける。
「この辺で……ガクより強い男の人って、荒神さんとかのうこうやくらいだよねー……確かに……」
「……テ、テ、テ……テェー……ンー……」
 ガクの声が、ますます情けなくなる。
「荒野、あげないの」
 茅は、冷たい声でガクにそういうと、さらに荒野に近づいた。
「……冗談は、それくらいにしておけよ、お前ら……」
 流石の荒野も、不機嫌を隠せず、先程から渋面になっている。
「聞き分けのないガキどもには、お仕置きだぞ……」
 若干の殺気を放ちながら荒野がそういうと、三人がとたんに顔色を変えた。
 三人は、本気になった時の荒野の実力が推し量れないほど、愚鈍ではない。
「……じょ、冗談だから、ほんの冗談!」
 と、テン。
「そ、そうそう。
 かのうこうやになんか、手を出すわけないジャン! うちのおにいちゃんならともかく!」
 と、ノリ。
「……そ、そうだよ……。
 か、かのうこうやなんて……」
 ガクの声にだけ、妙に力がない……。
 テンとノリの顔から血の気が引いているのに比べ、ガクの頬は、ほんのりと赤く染まっている。
 テンは『こ、これは……や、やぶへびってやつ?』と、思い、ノリは『……ガク……趣味、悪い……』と、思った。
「……あやしい……」
 茅は、ジト目で、ガクをみる。
「でも……荒野は、茅のなの。
 ……あげない……」
 ガクは、それに答えず、顔を真っ赤にして、露骨に荒野から目をそらしている。
「い、い、い……いいよ……。
 別に! ……そんなの!」
 ガクは、俯きながらぼそぼそといった。
「そっちこそ……朝からえっちな匂い、いっぱいさせちゃって……いやらしぃ……。
 いやらしぃいんだよ! お前ら!」
 最後にそう叫ぶと、ガクは猛然とダッシュしはじめた。
 慌てて、ノリとテンが、その後を追う。
 茅は、荒野の腕をがっしりと掴んで、荒野がガクの後を追わないようにしている。もっとも、そんなことをしなくとも、荒野は、ガクを追うつもりなどなかったが……。
『おいおい……図星、なのかよ……』
 荒野は他人事のようにそう考えた。
 こういう悩みは、てっきりもう一人の狩野香也の専売特許かと思っていたが……。
 どちらかといえば、そういうことにはうとい荒野にとっては、他人事のようにしか思えなかった。

 どうやら……ガク自身も気づいていなかった漠然とした気持ちを指摘され……ガクも、初めて明確に荒野への気持ちを自覚した……と、いうことらしい……。

 またまた、ややこしいことになりそうだな……と、荒野は思った。

[つづき]
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彼女はくノ一! 第五話 (58)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(58)

 香也たちが学校に行くと、三人はしばらく真里と一緒に家事をして過ごす。島には掃除機や洗濯機等の家電品はなかったので、最初のうちは物珍しさで手伝っていたのだが、一軒家としては部屋数が多く広すぎるくらいの狩野家に手を入れ、快適な状態に維持し続けることが、存外に手間がかかることを理解してからは、積極的に手を貸すようになっている。
 タンスなどの家具の埃をはらい、一つ一つの部屋に掃除機をかけ、廊下にモップや雑巾をかけ、天気のいい日には窓を空けて風を通す……。
 そうした細々とした仕事にかまけていると、時間などあっというまに過ぎて行き、すぐに真里に「休憩しましょう」とお茶に呼ばれる。
 体力に自信がある三人が分担して行っても、なお手に余る仕事を、時折羽生譲が手伝うものの、真里は、それまで一人でこなしていたのだという。
「……コツがあるのよ、コツが……」
 湯飲みを傾けながら、真里はあっけらかんとそういうのだが、三人は畏敬の念を持って真里をみてしまう。
「……家事って、きりがないでしょ?
 完璧を目指さずに、適当な所できりあげること……」
 その十時の休憩が終わると、だいたい買い物にいくことになっている。
 いつのまにか大所帯になっている狩野家は、食材の減るペースが早い。他に用事が無ければ、毎日でも車で乗りつけて、少し余裕を持って大量に買ってくることになる。たいてい、三人も一緒についていって、荷物持ちをさせられる。帰りにちょっと寄り道して甘いものなどを奢ってくれるので、三人は、率先して真里の買い物にお供している。
 真里のお供をすることで、三人は豆かんと蜜豆の味を知った。商店街のはずれに、昔ながらの古風な店構えの甘み所があるのだった。
 買い物から帰ってくると、昼食。この準備も、真里に料理の手ほどきを受けながら、全員でわいわいと時間をかけて作る。
 おかげで三人は、段々と「真里の味」を学習しつつあった。三人は、とももともと島で生活していた時から煮炊きの経験はそれなりにあるわけで、でも、ガスコンロや電子レンジなどの文明の利器を実際に使用するのはこれが初めてだった。そうした、こっちに来てから触れる調理道具になじんでくると、すぐに真里の教えることを恐ろしい速度で学習しはじめる。
 もともと素養があるから、今の時点でもさほど手のかからない料理ならすぐに作れるし、加えて、膨大な、細かいコツやレパートリーも、段々と吸収しつつあった。
 真里は今週末から二十日間ほど家を空ける予定だったが、これなら、留守中の家事に関しては心配することはないな……と、判断した。

 昼食が終わって一息ついた頃、来客を告げる呼び鈴が鳴り、ガクが応対に出る。
 某宅配便会社の制服を着た男が、たっていた。
「……荷物のお届けなんですが……お家の人、だれかいるかな?」
 真里を呼んで、荷物を受け取る。
 それら、三つの荷物は、涼治から三人に送られたものだった。さっそく梱包をほどくと、最新モデルの携帯電話の箱と封筒が出てくる。三つとも同じ中身だった。
 封筒には三人の写真入りの身分証明カード(市役所が発行するもので、戸籍謄本のデータを記載してあり、電子透かしも入っていて、滅多なことでは複製できない構造になっている)が入っていた。
 真里は身分証明カードをしげしげとみる。
 真里はこうしたものを見るのはこれが初めてだった。役所がこういうのを発行している、というのも、今、実物を手にして、初めて知った。
 三人の世帯主はそれぞれ「本人」になっており、現住所は狩野家、一人所帯が狩野家に下宿している、と解釈できる内容だった。そのカードによれば、三人とも香也の一つ年下。単独で世帯主になるには若すぎる年齢だが、その辺は涼治が身元引受人、とかなんとか、うまいぐあいに辻褄を合わせているのだろう。
「真里さん……これ、真里さん宛て……」
 テンが、一通の封筒を差し出した。
 確かに封筒には、達筆な楷書で「狩野真里様へ」と書かれている。荷物に混ざっていたらしい。
 開けて中身を見てみると、三人分の健康保健証が出てきた。
『……なるほど……』
 と、真里は思った。
『……学校に通い出したりすると、対外的には、こういうのが必要な場合も、ある、か……』
 どこまでが偽造でどこまでが本物なのかは真里にはもちろん判断できない訳だが、こうした必要書類が次々に用意されてくるのを間の当たりにすると、
『……手慣れている……』
 んだな……と、思ってしまう。
 三人がこの家に来たのは先週なのに……短時間で準備された割りには、手抜かりや、手順に滞りがない……。

 真里がそんなことを考えている間に、三人は携帯電話の入った箱を開け、早速、弄りはじめている。
 まず、分厚いマニュアルをパララララ……とめくりはじめるテン。
 マニュアルと首っ引きで、慎重な手つきで本体にバッテリーを収めはじめるノリ。
 同じく、バッテリーを本体に収めようとするが、ノリとは違い、マニュアルもみずに、ジョイント部の形状だけをみてぶっつけ本番で試してみるガク。
「電源は……これ、か……あれ? つかないよ?」
 と、ガク。
「しばらく長押しだよ」
 マニュアルと首っ引きの、ノリがフォローした。
「押し続けるの? あ。ついたついた。
 ……もう使えるのかな? これ?」
「電話はすぐにでも。メールは初期設定の手続きの後……」
 マニュアルを記憶し終えたテンはガクにそう答え、素早い動作で自分の携帯のダイヤルキーを押した。
 一拍おいて、ガクの携帯から呼び出し音が聞こえる。ガクは大層驚いた様子で、
「……わっ。たっ。たっ」
 と携帯でお手玉をはじめる。
「ほら。使える」
 テンは冷静な顔でそういうと、ボタンを押していったんガクの携帯への呼び出しを解除し、今度はノリの携帯の番号をプッシュしはじめる。
「……もしもし?」
 待ち構えていたノリは呼び出し音一つで電話を取った。
「テン、ボクらの番号を、どうして分かったの?」
「箱にシールが貼ってあるじゃないか」
 テンはおもしろく無さそうな顔をして答える。
「それにボクの分の番号は、もうガクとノリの着信履歴に記録されているから、それを登録すればいい」
「……なるほど……」
 納得した顔で、テンの番号をアドレス帳に登録し始めるノリ。
「え? え? え?」
 と、いまだに不審顔なままのガクに、ノリは冷静な声で、
「……着信履歴のみかたと、アドレス帳の使い方は、今から教える……」
 と告げながら、一連の番号をプッシュする。
 ガクの携帯が、鳴った。今度はガクも、戸惑わずに電話を受ける。
「もしもし?」
 しかし、ガクに電話をかけたノリは、即座に通話を切った。
「今の、二番目の着信が、ボクの番号ね……。
 で、まず着信履歴の見方なんだけど……」
 ノリがガクの携帯を手にとって、実地に操作法を実演してみる。実際に操作する所をみて、ガクも、ようやく納得した。
 ノリがガクに、差し向かいで基本的な操作方法を教えている間に、テンは一人で素早く携帯のボタンをプッシュし続けていた。
 それが一段落したのか、テンは、
「そっち……終わった?
 終わったら、今度は、メールとネットの使い方ね……」
 と、テンとノリの方に近寄って、自分用のメアドの登録方を教えはじめる……。

『……面白い子たち……』
 炬燵に入って一連のやり取りを見物していた真里は
、そう思う。
 一見、一番反応が鈍いようにみるガクにしても、一度実演をみれば、即座にその操作法を覚えているようで……自分でマニュアルをみるのを面倒臭がっているだけで、決して愚鈍なわけではない。むしろ、一度見ただけで忘れない、という所から判断して、記憶力はいいほうだろう……。
 と、真里は見る。 
 真里は、携帯電話、という、彼女らにとってほぼ未知の道具を前にした時のそれぞれの反応で、なんとなく三人の性格の違いと分業体勢とが、理解できたような気がした。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(99)

第五章 「友と敵」(99)

 シャワーを浴びて泡を流し、お互いの体をまさぐり合いながら湯船に浸かった後、茅と荒野の二人は体を拭いてベッドのある部屋に移った。
 そこで、大きなままの荒野自身に避妊具をかぶせて、抱き合い、長々と口唇を重ねる。
 常人よりも鋭敏な感覚を持つ茅にとって、荒野との交合は、甘美にすぎる誘惑だった。だから、普段は極力自制するようにしているのだが、時折、その自制が効かなくなる。
 みんなと一緒になって騒いでいる時は、いい。一時であれ、自分の特殊性を、意識から追い払うことができる。
 しかし、そうして騒いでいる時間が賑やかであればあるほど、一人きりに、あるいは、荒野と二人きりになって、しんと静まり返った空間に身を置いた時……反動が、くる。
 いつの間にかそばにいることが当たり前になった少年……荒野の肌に触れて、その存在を確かめたくなる。
 荒野と素肌を合わせると、それだけで、茅は静電気に触れた時のような錯覚を感じてしまう。
 顔を押し付けて、荒野の体臭を肺腑の奥まで吸い込むと、茅は、ものすごくゆったりとした気分になれる。荒野の匂いは、少し仁明の体臭に似ているが、ほんの少し、違う。茅が挑発して興奮して来ると、体臭の違いはさらに大きくなる。
 茅は、荒野の身体の隅々までをまさぐり、その触覚や反応を覚えようとする。
 指で、舌で……その他の部位で、荒野の体を探るのだが……そのような時は同時に、荒野のほうも茅の体に触れているので、より感じやすい茅のほうが、先に我を忘れて荒野にしがみついてしまう。
 嗚咽をあげ、荒野にしがみつきながら、茅は、荒野の愛撫を、必死になって受け止めようとする。
 荒野が触れる箇所すべてが、茅に熱を持たせる。
『……なんで……』
 荒野が触れる場所は、ことごとく気持ち良くなっていくのだろう……。
 快楽に身を任せながら、茅は、そんな疑問を持ってしまう。
 自制しなければ……何度でも、いつまでも求めてしまいそうになって……そんな自分が、茅は怖かった。
「……はぁっ! ……んんっ! ……あっ!」
 荒野が茅の腰を抱くようにして、ゆっくりと茅の中に侵入して来る。
 侵入してきたものの硬さ、だけではなく、茅は、皮膚や耳で荒野の体温の上昇と血流が早くなったことを感知し、「荒野も……感じてくれている」ということを確信し、自分が荒野を悦ばせている、という事実が、さらに茅を高揚させる。
 一度茅の中に深く侵入した荒野は、技巧も何もない、本能に任せた乱雑な動作で腰を動かし、茅の内を蹂躙する。
 荒野に突かれるたびに、茅は白い体を踊らせ、
「……あっ! ふぁっ! ひゃ! ……」
 とかいう鼻声を出してしまう。
 暴れる茅を逃さないように、荒野は茅の両脚をがっしりと押さえ込み、さらに激しく動く。
 荒野は荒野で、茅の肉に割り込み、穿つ感触を楽しんでいる。
 茅のそこに自分を刻印するような激しさで荒野は動き、茅は、内部をかき回される感触に急速に昇り詰める。
 背を弓なりに反らせ、硬直して「……きゅぅ……」と喉から息を吐く。
 硬直した茅の乳首に荒野が甘噛みして歯を立てると、茅は、硬直したまま、ビクンビクンと痙攣したように体を震わせた。
 荒野と結合したまま、茅の体から力が抜ける。

 しばらくして、荒野が茅の体から離れようとすると、
「……まだ……駄目……荒野が、いってない……」
 ゆるゆると起き上がってきた茅が、荒野に両手両足でしがみついてきた。
 確かに、いまだ茅の中に刺さったままの荒野は、硬さを失わずにいたわけだが……。
「……今度は……茅が、荒野を……」
 荒野に手足を絡み付けたまま、茅は重心を変えて、荒野の上に覆いかぶさる。
 ばさり、と、長い髪が茅の顔の前に、帳のように落ちる。その、ほつれた髪の向こうに見える茅の眼光は鋭くて、普段とは違うあやしい光をたたえていた。
 完全に荒野の上にまたがると、茅は「んん!」といううめき声を出した。
 上になるといつもより深く入る分、茅が受ける刺激も大きくなる……ということに、茅は気づいた。
 しかし……。
「……荒野を……」
 気持ち良くする……と、決めていた茅は、荒野の肩に手をついて、自分から、腰を上下に振りはじめる。
 臀部を上下に振ると、結合部から、ず、ず、ず、と茅の中で荒野が摩擦している感覚が伝わってきてくる。その感覚は、重力が加わるためか、持ち上げる時よりも降ろす方がずっと大きくて、おかげで茅は、すっかり腰を下しきった時、荒野の先端がいつもよりも奥のほうまで到達する感触に、病み付きになってしまう。
 当初の「荒野のため」という目的を半ば忘れ、無我夢中になって自分の体を上下に振りはじめる。
 自分の体重を足の力だけで上下させる、という、いわば疑似ヒンズースクワットとでもいうべき動作だった。少し前の茅ならすぐに体力ぎれになった所を、今では、毎朝のランニングが幸いして、いくらかは長く続けられるようになっている。加えて、今の茅は、性交時の多幸感に包まれている。
 荒野は、下から、陶酔した表情で自分の上で動き続ける茅の顔を、見つめていた。
『……女の……顔……だ……』
 経験豊富ではない荒野にしていても、今の茅の表情が、貪婪に自分で快楽をむさぼっている時の表情だ、ということは、分かる。
 荒野自身、今は比較的冷静だが、茅を組み敷いて貪っている最中は、同じような表情をしているのだろう、とも、予測できる。
 だから、そうして荒野を楽しんでいる茅を、卑しいとは、まったく思えない。
 だが……。
『……少しづつ、変わって行く……』
 とは、思ってしまう。

 最初、ここに暮らしはじめた時、荒野は、実質的な、茅の保護者だった。その当時、茅は、何も知らないしできない、無垢な状態にあったが……わずか、あれから三カ月ほどで……様々なことを学習し、今では女の顔をみせて、荒野の上で快楽を貪っている……。
 茅と荒野の関係は、時間が経過するにつれ、その内実は、着実に変化してきている。
『これから……茅は……おれたちは、どれくらい……』
 変わって行くのだろう……と、荒野は思った。
「荒野……ちゃんと、気持ちいい?」
 動きを止め、一休みしていた茅が、荒野にそう尋ねる。
 すでに、風呂場で一度、ここで交わってから一度達している茅は、体力的にはともかく、それ以外の限界には達しにくくなっているらしい。
 その時の茅の、本気で心配しているような表情と、それに、「ちゃんと、気持ちいい?」という質問の仕方のおかしさに、荒野は、ふっ、と笑う。
 すると、茅は途端に「むぅー」と不満顔をになって、ぺてぺち荒野の頬を平手で叩きはじめた。
 荒野は言葉でそれに答えず、下から、茅の体を浮き上がらせんばかりに、突き上げる。最初の内、「あっ! あっ!」と小さく叫びながら成すすべもなく荒野の上で弾んでいた茅は、次第に荒野の突き上げにリズムを合わせて体を動かしだし、しばらく荒野の上で蠢いた末、荒野の避妊具の中に射精するのとほぼ同時に達して、荒野の上に倒れ込んだ。
 荒い息のまま、茅は、そのまま荒野の口唇を求め、長々と口を合わせる。
「……荒野、は……茅の……」
 荒野の首を抱いて、耳元でそう囁いた後、茅は荒野の首筋に口を這わせた。

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彼女はくノ一! 第五話 (57)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(57)

「……んー……。
 だから、遠近法というのは……」
 香也はそういってスケッチブックに数本の線を、しゃ、しゃ、と放射状に描いてみせる。
「同じ大きさの物でも、遠くにあれば小さく見える」
 線の一本の、奥の方に、記号のほうな簡単な人影をひとつ、ぽつんと描く。
「……近くにあれば、大きく見える……」
 次に、線にそって、奥に描いた人影と相似形のものを、幾つか描き加える。
 手前に来るごとに、人影は大きくなる。
「……ごくごく簡単にいうと、そういう技法……。
 詳しいことを言うと、その他に色彩関係の技法とか、なんかもいろいろあるんだけど……。
 ノリちゃんが見たエッシャーの騙し絵は、そういうのを利用してうまく錯覚させるように描いているわけで……」
 ノリは香也の説明を聞きながら、うんうんと頷いている。
「だんだん解ってきた。
 絵、って、いろいろな手法が複雑に入り交じってできているんだ……。
 すごいな……」
「……んー……。
 すごいかどうかは……現代では、手法についてはほぼ出尽くして、主題や文脈が重要視されている流れもあるわけだけど……」
 香也も、自分の得意な分野になると、それなりに多弁であった。
「でも……楽しみで描くのなら、好きなように描けばいい、と、思う……。
 みんな子供のころは、技法とかそんなの関係なしに、好きに描くものだし……」
 自分のために描くのなら、落書きでいいんだよ……と、香也はいう。
「……ボク……島では、そういう、全然ことやったことがなかったから……」
 ノリは俯いて、そういった。
「じっちゃん……そういうの、全然教えてくれなかったし……。
 島を出るまで、印刷された絵やイラストしかみてなかった。
 ……そういうの、写真と同じように、専門の機械でがーっと作るもんだと……人の手で描くものだとは、全然思ってなかった……」
 香也はため息をついた。
 普段は全然意識していないが……こうして話していると……ノリたちが、極端、かつ、特殊な環境で育てられた事を、思い知らされる……。

 香也は、
「……んー……」
 と頭をかきながら唸り声をあげ、プレハブの隅にある段ボールの中から、スケッチブックを何冊かとりだし、スチールに置いてある鉛筆数本と一緒にして、ノリに手渡す。
「これ、自由に使っていいから、好きな時に、好きなように、描いてみて……。
 で、分からないことがあったら、何でも聞いて……。
 こういうのは、習うより慣れろ、だから……」
「……いいの? これ……」
 ノリは、手渡されたスケッチブックと香也の顔の間で、めぐるましく視線を往還させる。
「いいから。たいして、高いものじゃないし……」
 スケッチブックは、羽生譲が紙問屋みたいなところに直接掛け合って、五十冊とか百冊単位でまとめ買いしてくる。狩野家ではそれだけ消費量がある、ということだが、いずれにせよ、そのまとめ買いのおかげで、単価はたかが知れたものになっている。樋口明日樹にもお裾分けしているぐらいで、ノリに渡すことも、別に躊躇う理由はなかった。

 ノリと香也のそんなやり取りを少し離れた場所で見ていた楓と孫子は……普段は感じない、そことはない疎外感を味わっていた。

 ……この二人の間に、入り込む余地は、ないような……。

 ノリがスケッチブックの束と2Bの鉛筆、数本を大事そうに抱えてプレハブを出て行くと、楓と孫子は、期せずして同時に安堵のため息をついた。
 同時に顔を上げ、隣で同じようなため息をついていた人間の存在に初めて気づき、困惑と気まずさが入り交じった複雑な表情で、楓と孫子は顔を見合わせる。

 香也のほうは、背後で楓と孫子がそうした無言のコミュニケーションを交わしていることにも気づかず、淡々と自分の絵に向き直っていた。
 香也にとってその日は、久々に自分の創作活動に専念できた、静かで充実した休日だった。

 翌朝、いつものようにマンション前に集まった面子の中で、茅と飯島舞花がいつもにも増して顔色が良いことに香也は気づいたが、そのことについては、特になにもコメントしなかった。その二人が妙に上機嫌であるのに対し、栗田精一と加納荒野の顔色が若干青ざめていたような気もしたが、これも、気のせいに違いない、と、香也は思った。
「……なぁなぁ、孫子ちゃん……昨日のやつ……」
「……いえ……聞いてみますけど……」
「そかぁ……まあ、また分けてもらえると……」
 その上機嫌の舞花は、孫子だけを隅の方に引っ張って行って、こそこそ内緒話をはじめた。
 二人きりでの内緒話し、というのが、舞花にしては、とても珍しい。
 切れ切れに漏れ聞こえてくる声を聞いても、話の内容は理解できない。
 ただし、二人でこそこそ話しはじめたのを見た栗田精一の顔色が一層青ざめたように見えるのは……香也の錯覚、だったのだろうか?

 いずれにしろ、いつもの面子は三人組に見送られるようにして登校する。途中で玉木珠美も合流し、賑やかに一同に挨拶してから、荒野の腕をひっぱって、ごそごそ二人だけで声を潜めて話し始める。
「……例の件……まずは、バレンタイン……」
「おれはいいけど……才賀と直接……それと、学校側への……」
「……そっか……バイト、とかは大ぴらには……」
「ああ。年末のあれも、顔合わせの時にきっちりと絞られたぞ……」
「……うーん……そっちの予防線も……」
「一回、二回、ならともかく……長期的に展開するとなると対策は……」
「……そだね……有働君とも相談……」
「ああ。学校については、お前らのが……」
 飯島舞花とは違った意味で、玉木珠美の内緒話というのもひどく珍しいように香也は思ったが……これについても、特に声にだしてコメントはしなかった。

 学校に到着し、下駄箱のあるエントランスに来ると、柏あんなと境雅史の二人とばったり出くわした。
 下駄箱は全学年の分が一カ所に集まっているので、タイミングさえ合えば、こうして鉢合わせになることも十分にありえる。今までも、この二人と香也たちの一団が、朝、ここで顔を合わせたことは何度かあったのだが……従来は軽く挨拶するだけだったのに対し、この朝に限って、柏あんなは俯き、堺雅史は視線を宙にさまよわせ、どちらも顔を赤くして、ごもごもと小さな、聞き取れないような声で挨拶らしき言葉を不明瞭に発音した。
 明白に、挙動不審だった。
 香也たちの一団の中の誰かと、まともに目があわせずらい事情とかがあるのだろうか?
 ……と、香也は思ったが、やはりなにもコメントはしなかった。

 香也たちの一団の中から、ずい、と、一人、飯島舞花が歩み出て、柏あんなの前に仁王立ちになる。
 柏あんなが顔をあげ、飯島舞花の顔をまともに見据える。
 しばしの間。
「六回!」
「七回!」
 と同時に叫び、舞花が勝ち誇ったように顔を輝かせ、あんなは悄然とうなだれた。
 後ろの方で孫子が、
「……効果は絶大……」
 とか呟いていたのが耳に入ったが、意味が分からなかったので香也はやはりコメントしなかった。
 荒野は、
「……朝っぱらから、学校で、堂々とそんなこといいあうなよ……」
 と舞花に向かってぼやいた。
 視線を転じると、栗田精一が、樋口大樹に「この、この、この」とといいながら、ヘッドロックをかけられている。
 柏あんなは、堺雅史の手を引いて、そそくさとその場から立ち去った。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(98)

第五章 「友と敵」(98)

「茅って、時々、いきなり……」
 危うく「さかりがついたようになるよな」と、いいかけ、荒野は慌てて、
「……積極的になるよな……」
 と言い直す。
「……いいの……」
 茅は、荒野の体に抱きついたまま器用に手を動かし、荒野の服を脱がしていく。
「荒野は茅のだから、いいの……」
 あっという間に荒野の服を全て剥いだ茅は、正面から全裸の荒野の胸に顔を埋める。目を閉じて、陶酔したような表情をしている。
 茅自身は、まだ服を着たままだった。
「……今度は、荒野が茅を脱がすの……」
 そういわれた荒野は、「……いいけど」と頷きながら、
「でも……少しは離れてくれないと、脱がせられないよ……」
 と続けた。
 茅は、素直に荒野の体を離し、荒野が茅の服を脱がせるのに協力する。
 荒野にしてみて……毎晩のように、全裸で抱き合って寝ているので、羞恥心とかはあまり感じないが、荒野一人だけが裸、というのも、決まりが悪いし……で、茅を裸に剥くことに抵抗は感じない。
「……胸……」
 荒野が服を脱がし、下着だけになると、茅は一言だけそういって、胸を張った。
「また、大きくなってたの……」
『……意外に気にしているんだな……そういうの……』
 とか、思いながら、
「……そーか、そーか……。
 よかったな、茅……」
 気のない返事をしながら、荒野が茅の背中に手をかけてブラのホックを外す。 荒野の素っ気ない反応に、茅は「むぅ」と不自然な声をあげて不満を表明し、荒野の首に腕を廻した。
「だっこ……」
 荒野の首に腕を廻したまま、そういって茅が口唇をとがらしてきたので、荒野は茅の口をつつくようなキスをしてから、「はいはい」といって、茅の最後の下着もはぎ取る。
 そうして全裸にした茅を横抱きにして抱え、風呂場に入ると、茅は荒野の腕から逃げ出すように床に降りたち、荒野の手を引いて、
「今日は、茅が洗うの」
 といいながら、強引に座らせる。
 そして、茅は、自分の体にかなり多めのボディーソープを塗りたくりはじめた。
「あー……茅さん? それ、なにを……」
 やるつもりなのですか……と、荒野が尋ねかけると、
「泡踊り。
 これをやると、男の人が喜ぶと、柏あんながいったの……」
 と答え、泡まみれになった茅が、荒野に抱きついてきた。
 ……茅の周りには、不適切な知識の供給源しかいないのか……とか思いながらも、ぬるぬるの茅に抱きつかれた荒野は、お互いの体をまさぐり合うことに、すぐに夢中になった。茅も同様らしく、濡れた肌を、体のそこここを、かなり激しく荒野の体にこすりつけてくる。いつもの肌の感触とは違った、ぬるぬるっとした、一枚、皮膜をおいてそれ越しに触れあうような感触は二人にとって新鮮で、しばらく二人は、体中を泡まみれにして、夢中になってお互いの体をまさぐりあう。
 しばらくして、茅は、荒野の太股に自分の股間を擦りつけるような体勢になった。
 やがて茅は、がっくりと全身の力を抜き、寝そべってされるが儘になっていた荒野の体の上に倒れ込む。
「……荒野……」
 そうした重なり合った姿勢で、二、三分ほど経過した頃だろうか。
 茅が、うっそりと荒野の耳元に、囁く。
「……茅……こうすぎると……感じすぎるの……怖くなるくらいに……感じるの……」
 性感の鋭敏さを告げる言葉にしては、口調が、真剣そのものだった。
「……こうして、近くにいて、抱き合ったり触っているだけて……」
 茅の手が、荒野の下腹部に伸びて、すっかり硬くなっている荒野の分身を手に取る。
「……荒野の匂い、大きさ、体温……。
 細かい変化、全てを……全てを、はっきりと、知覚できるの……」
 茅が、上から、荒野の目を覗き込む。
 泣き笑いの、表情だった。
『……茅の感じている世界は……』
「怖いくらいに、全てが鮮明で……しかも、全て、忘れることができないの……」
『一般人……いや、おれなんかよりも……ずっとずっと細かい部分まで感じることができて……』
「……茅の中に、膨大な記憶が蓄積されていくの。
 茅の中、こうしている間にも、どんどん、膨れあがっていくの……。
 茅、他の人と……荒野とも、あの三人とも、全然違うの……時間がたつにつれて……前に出来なかったことが、不意に出来るようになって……」
『……そして……。
 今なお、成長中、だ……』
 茅は……変化していく自分自身が……怖いのだろう……。
 荒野は、そう納得した。
「……荒野……」
 茅は、今や完全に泣いていた。
「捨てないで。
 茅のこと、捨てないで。
 何でもするから……これから先、茅がどんな怪物になっても、捨てないで……」
 ぼたぼたと、茅の涙が、荒野の顔に降り注いだ。
「……泣くんじゃない、茅……」
 荒野は茅の顔に手を伸ばし、指先で目の周りの涙を拭った。
「おれは、茅を笑わせるために、ここにいるんだ……。
 おれは一生、茅を守り続ける……」
 荒野が断言すると、茅は荒野の首に顔を埋め、幼子のように声をあげて泣きはじめる。
『……女の子一人、まともに安心させることができなくて……。
 なんのための能力か……一族の技か……』
 荒野は、憮然とした表情で自分の不甲斐なさを噛みしめながら、茅の髪を撫でながら、茅が泣きやむのを待ち続けた。

『おれは……無力だ』
 と、荒野は思った。

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彼女はくノ一! 第五話 (56)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(56)

 今まで観察してきて、楓と香也の関係は、何か自然すぎてかえって不自然な印象を、孫子は抱いている。楓が、時間の許す限り香也の後をつけて回るのはまだしも理解できるのだが、そのことを嫌がりも喜びもせず、淡々と受け止めて、平然と自分のペースを崩さないでいられる香也の心境というのは、孫子には理解できない。
 特に孫子の場合、二人との出会い方が出会い方であったため、あのような光景を見せた後、どうして二人が今のような「仲の良い、しかし、実質は単なる同居人同士」として振る舞い続けることが出来るのか、その心理は想像しかねた。
 楓も香也も、ともに性格的には単純な単純素朴な部類になる。偽装や誤魔化すために、普段から表面的な態度を取り繕っている、という器用な真似が出来るわけもない、と、孫子は観測していた。
 つまり、二人の関係は見た目のとおり、「四六時中そばにいられてもお互いに邪魔に感じない」関係であり、しかも、恋人同士、とはいい兼ねるものの、その距離は、すっごく近しい……。
 そんな二人の様子をみていると、何故か自分が入り込む隙がないような気がして、少し前から孫子もプレハブに入り浸るようになっている。
 孫子に場合は、楓ほど無為な時間を過ごすことに耐性がないので、椅子と本くらいは持ち込むことになるが……そうしてプレハブ入って一緒に過ごしていても、楓も香也も、孫子の存在に関して少しも興味を示す様子がないので、孫子としては極めて歯ごたえがない状態が恒常的になっている……。

 と、いうのが、孫子の視点からみた、現在の、孫子と香也と楓の関係だ。
 よくある三角関係、というのには、あまりにも香也の、他の二人への感心が薄すぎる。加えて、香也と楓の間の空気が、あまりにものほほんとして平穏すぎるのも、孫子には気にくわない。孫子自身が香也のそばにいても、楓にまるで警戒されてない、という現状も、それはそれで張り合がないのであった。

 つまるところ、孫子の三人の関係に対する不満点は、「目下の所、安定しすぎている……」というただ一点に絞られるのかも知れない。
 負けず嫌いで、自分でたてた目標をクリアすることを今までの目標としてきた孫子は、ここにきて……明確な「勝利条件」を、はっきりと決めかねている。

 シルヴィ・姉もいうように、無理矢理にでも香也と関係してしまえば、楓に気後れしなくてすむのか? その後、力づくでも楓や他の女たちを香也から遠ざければ安心できるのか? そんなことで……果たして、香也が、今まで以上の関心を……孫子に、示してくれるのか……。
 現在の、穏やかすぎる関係が決して嫌いではないだけに、どうしても従来の孫子のような強引な手段に訴えることに、孫子は、躊躇いを覚えてしまうのだった。

 孫子自身は……それまで孫子が明確に意識してこなかった「他者との関係性」について、自覚的に気にかけはじめた最初の事例であることを、まだ自覚していない。

 そんなわけで、食事後、例によって一時間前後香也の勉強を楓と二人で見た後、三人は寝るまでの時間、庭のプレハブで過ごすことになる。
 順番に風呂に入りにいったりする以外は三人で過ごすその時間は、いつものように時間までがゆっくりと過ぎているような気がした……。

 今日は珍しく、ほぼ一日中香也のそばにいられた……と、楓は思った。
 週末や休日に茅の護衛役から外されることは珍しいことではなかったが、あの三人までが揃って外出してくれたため、狩野家の中は一日ひっそりとしており、おかげで香也は、ほぼ一日中キャンバスに向かうことが出来た。
 香也の背中を見ながら、
『香也様……こうしてみると、意外に、体力と集中力がある……』
 と、思ってしまう。
 もちろん、楓や孫子などとは、比べるまでもないのだが……それでも、事情が許せばいくらでも絵を描いていられる……というのは、やはり、それなりにスタミナがある証拠だと思う……。
 普段、体を動かす習慣がないから、筋力も瞬発力もないが……プールにいった時、堺雅史などの同級生たちと比較しても、香也の体つきは、十分に成熟した「男の体」だった。
 香也の上半身を思い出し、その意外な逞しさに思い当たると、楓はなぜか照れくさくなり、一人赤面をする。
 幸い、香也は楓に背を向けて描きかけの絵に集中しているし、孫子は、風呂に入っている。
 珍しいことでもなかったが、二人きり、だった。
『なんで……香也様の裸なんて、見慣れているのに……』
 楓は、香也の裸体を見ているだけではなく、抱き合ったりもっと抜き差しならない関係になったこともあるのだが……何故か、この間のプールでの香也、それに翌朝、筋肉痛になった香也をマッサージした時の感触……と、次々と香也の体に関する記憶を連想していってしまい、「今、二人きりであること」を異常に意識して、ひとりで照れている。
 そっと椅子から立ち上がり、香也の絵を覗き込む振りをして、香也の背中にそっと体を近づける。
 絵に集中している香也は、背後から楓が近づいてきたことに、気づいてもいない。楓が香也の背中に覆い被さるような感じで身を乗り出し、楓の吐息が香也の耳にかかるような距離になっても、まだ気づかない。
 楓は、香也の体温が感じられるような錯覚さえ覚えるほどに身を寄せながら、香也の肩に抱きついたい衝動と戦っている。
 基本的に、楓も、香也の創作活動の邪魔はしたくないと思っている。
 楓が、じりじりと身内から湧いてくる衝動と戦っていると、プレハブの入り口がガラガラ音をたてて開き、どかどかと人影が入ってきた。
 楓は、安心したような残念なような、複雑な気持ちで慌ててぴょこんと後ろに一歩跳び下がり、香也と距離を空ける。
「……今、いい……かな?」
 遠慮がちなのは、先頭に立っていたノリだけで、後のテンとガクは遠慮なく中に入ってきて、プレハブの中を珍しそうに物色しはじめる。
「お兄ちゃんが、絵を描いているところ、みたくて……」
 もじもじと恥ずかしそうに身をくねられながら、ノリはそういった。後の二人は、なんとなくノリの後についてきたらしい。
「……んー……。
 いいけど……」
 と、香也は例によって興味なさそうに呟き、すぐに視線をノリから外して、元通りに、また自分の絵に向き直った。
「……ここにいる時は、静かにするのです……」
 楓は、そういう自分の声が、かなり不機嫌に響いていることを自覚した。

 ノリは、プレハブの隅にあったパイプ椅子を持ってきて、香也の隣に陣取り、慣れた手つきで安物のアクリル絵の具をキャンバスに塗りたぐる香也の手元を、真剣に見つめている。
 当初こそ、それなりに神妙にしていたガクとテンの二人は、すぐに大人しくしていることに耐えられなくなり、二人でじゃれ合いはじめたので、早々に楓にプレハブから追い出されることになる。
 ガクとテンと入れ違いに、風呂上がりの孫子がプレハブに戻ってきた。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(97)

第五章 「友と敵」(97)

 三人と三島百合香が部屋を出て行くと、急に静かになった気がした。
『……これで……』
 この週末はなんだかんだと忙しなく、荒野にとっては、たかだか二日間とは思えないほど長く感じた。
『……明日からは、また学校に通うんだよなぁ……』
 潜伏先での一般人としての仮の日常生活と一族の一員としての生活、その往還時にギャップを感じるのは、いつものことだ。
 が、ここのところ……より正確にいうのなら、玉木と有働の二人に、自分たちの正体のことを明かしてからこっち、荒野はそうした自分の二面性に対して、以前よりも多くの疲労を感じるようになってきている。
「荒野……」
 いつの間にか茅がやってきて、ことり、と、荒野の前にティーカップを置いてくれた。
「……疲れている?」
 そういって、首を傾げる。
「……んー……」
 荒野は、もう一人の狩野香也のようなうなり声を上げた。
「……ちょっと、ね……」
 荒野のその言葉を聞くと、茅はとことこと荒野の背後に回り、荒野の肩に小さな手を置いて揉みはじめた。
「荒野……気持ち、いい?」
 茅がそう尋ねる。予想したよりも、握力があった。
「……うぅん……」
 思わず、荒野は、鼻にかかった声で返事をしてしまう。
「気持ち、いい……。
どこで覚えたんだ、こんなこと……」
「先生。
 今日、車、運転してあちこちに引きずり回されたから疲れた。肩揉め、っていわれたの……」
「……そうかそうか」
 三島には後で、軽く焼きを入れておこう、と荒野はそのことを記憶にとどめる。
「ああ……。
 でも、気持ちいいな……この、マッサージ……」
 なんだか年寄りくさいことをいいはじめる荒野。
「肩が凝る、という言い方、日本語にしかないの」
 手を休めずに、茅は、そんなことを言いはじめる。
「夏目漱石が初出。彼の独創的な表現が、慣用句になったの。
 だから、海外の語彙には、このような言い回しはないの……」
「……そういや、マッサージはどこにでもあるけど……肩を重要視する、っていう文化圏も、あんまりないような……」
「荒野……凝ってる……堅い……」
 ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、と、茅は力を込めて、荒野の肩の肉を握る。
 ……少し、痛くなってきた。
「茅……もう、いいよ。ありがとう。だいぶ楽になった。
 なんだか疲れたから、風呂にでも入って、今日は早めに寝よう……」
 荒野はそういって、茅の手を優しく手を払って、立ち上がる。そのまま、風呂場に行こうとする荒野の裾を、茅が掴んだ。
「お風呂、湧いているの。
 一緒に入るの」
 そういって茅は、荒野の背中に抱きついた。
「久しぶり……荒野の匂い……」
「あー……」
 荒野は人差し指でポリポリとこめかみのあたりを掻いた。
 そういえば……ここ二、三日はバタバタしてて、二人きりになれる時間が、極端に少なかったような……。
「ひょっとして……。
 茅……寂しかった?」
 いいながら、荒野は、頬が熱くなっていくのを感じる。
 午前中、未樹にいろいろと言われたから、というのも多少はあったが……それ以上に、「異性」を意識する、ということに、荒野はなれていない。
 相手が、普段から一緒に寝起きしている茅だとしたら……なおさら、改めてこういう雰囲気になるのが、照れくさかった。
「……んっ……」
 茅は、否定とも肯定とも解釈できる一音節の音を喉の奥から発し、荒野の背に顔を埋めたまま、ずりずりと荒野の体を風呂場のほうに押していく。
 荒野も、特に逆らいもせず、茅に押されるまま、脱衣所に入った。

「……お、おい……」
 脱衣所に入ると、茅が荒野の服に手をかけて脱がしだしたので、荒野は慌てた。
「そんなの、一人でできるって……」
 当たり前である。
「駄目なの。荒野、お疲れ。茅がお世話するの……」
 荒野の上半身が下着一枚になると、茅は、再度抱きついて、荒野の胸に頬を密着して、深々と息を吸った。
「……それで、こうやって、荒野の体中に、茅の匂いをつけるの……」
 ……マーキングかよ……と、荒野は心の中でつっこんだ。
「茅……ひょっとして……未樹さんのこととか、ガクがいってたこと、気にしているのか?」
「……それも少しはあるけど……」
 茅は目を閉じて、荒野の胸板にすりすり頬を擦りつけている。
「そんなことより、茅がテーブルを消しても、荒野だけが驚かなかった。茅を、怖がっていなかった……。
 だから嬉しくて、感謝のご奉仕なの……」
『……驚かなかったわけでは、ないんだが……』
 茅がなにかしゃべる度に、胸板に茅の吐息があたって、とってもくすぐったい……。
「……今までのことから考えても、茅ならあれくらいのことはやりかねないかなぁ、とか思ったし……」
「でも、いいの……」
 茅は、荒野の胴体に廻した腕に、力を込めた。
「荒野……茅と一緒に暮らすために、いろいろなことを考えて、苦労している。
 玉木や有働の話しを聞いたのだって、一緒に暮らしている状況を作るため……そのために疲れているんだから、茅が、サービスするの……」
 茅なりの、感謝の印……らしい。
 と、荒野は無理に自分自身を納得させた。

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彼女はくノ一! 第五話 (55)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(55)

 孫子はちらりと横目で時刻を確認してから、そっと自分のスカートの中に右手を潜り込ませる。孫子は、子の家に来るまで、より正確を期するなら、シルヴィ姉崎の薫陶を得るようになるまで、自慰行為には無縁の生活を送っていたが、だからといって、そうした行為に嫌悪感や偏見を持っている訳ではなかった。
 両親の死後、世話になっていた鋼蔵は孫子が望むままに幾人も優秀な各種家庭教師を雇ってくれたし、孫子自身、様々な事柄を学習し、自分の血肉にすることが好きな性分だったので、自分から寝食を忘れるほどに没頭して自身の能力を延ばしていった。
 結果、学校での交友関係を積極的に構築しようともせず、空いている時間はすべて自分の能力や知識を養うことに使っていた。
 つまり、それまで孫子が自慰についての知識は持っていても、自分の身で試みたことがなかったのは、単純にその行為に割くための時間を持っていなかった、という理由による。
 ここに来てから、孫子を取り巻く環境は、大きく変わった。
 鋼蔵にこの家に押し込められた、ということは過剰ともいえる孫子の自己鍛練癖を事実上封じられた、ということであり、加えて、この家の住人やこの家に出入りする人々と多く接するうちに、孫子は世の中にはいかに多種多様な人間がいるのか、ということを思い知ることになる。
 これは、それまでの孫子の生き方を再考するいい契機にもなった。
 濡れた下着ごしに触れた指先を、陰唇の形をなぞるように、縦に動かしはじめる。
 孫子は、「……んっ……」っと、軽く鼻息をつく。
 一度そこに触れて動かしてしまうと、その感触が呼び水となって、今日一日の様々な出来事が思い出させる。
 午前中、縛られたまま、シルヴィの手によって下着の中に入れられたピンクローターの振動……。
「……ふっ……」
 柏あんなと堺雅史の性急な交合……。
「……あっ!」
 飯島舞花と栗田精一によって、孫子に見せつけられるように行われた性交……。
「……ああっ!」
 それら、様々な思い出が孫子の中で奇妙な具合に混合し、孫子の指の動きを加速させる。
「……はつ! はっ!」
 大きな声は出さない。廊下とは襖一枚で隔てられているだけなので、出せない。
 文机の上に半ば突っ伏した格好で、押し殺した呻き声を上げながら、孫子は指で自分自身を慰めながら、記憶の中の柏あんなや飯島舞花を自分と入れ替えている。
 想像の中のパートナーは、もちろん、香也だ。
 孫子は香也の全裸姿も、勃起した姿も、何度か見ているので、想像する材料には事欠かない。
 それどころか……。
「……ん! ……ふふっ!」
 ……香也のいきりたった男根を口にし、暴発したものを嚥下したことさえ、あった。
 そんなことを思い出してしまうと、孫子の指が蠢いている場所からとろとろになった液体が大量に出て来て、孫子の指を濡らす。
 いけないいけない、と思いながら、孫子は、ついつい声を大きくしてしまっている。
 指の動きがさらに大胆なものになり、指先が、硬く勃起した小さな孫子の分身に触れる。
「……やぁっ! ん! ん!」
 大声を出しそうになり、孫子は、慌てて口を硬く閉ざした。
 ……それまで、「観るだけ」で抑制していた孫子の欲望が、孫子の体内で荒れ狂って出口を求めている。
 すでに孫子は十分に登詰ていて、登頂までもう一息、という感触があった……。

「……才賀さん……」
 その時、襖ごしに香也の呼ぶ声がした。
 驚いた孫子は、「うひゃぁ」という頓狂な声をあげ、前のめりになってもたれ掛っていた文机から飛び離れ、畳の上に尻餅をつく。
「大丈夫? なんか声がしたけど……」
「……だだだだ、大丈夫!」
 孫子は、全然大丈夫じゃなさそうな、もろに裏返った声で答えた。
「……ちょ……ちょっと、驚いただけだから……」
 本当はちょっとどころ、の騒ぎでないのは、孫子自身がよく分かっている。
 襖一枚を隔てているため、香也からは孫子の姿は見えない筈、なのに、孫子は慌てて襟元を合わせ、少しほつれた髪をて指櫛で整える。
 もちろん、絶頂近くまで到達していた孫子の性的な高揚は、もはやきれいに静まり返っている。
「……そう……。
 ……んー……。
 ごはん、できたんだけど……」
 孫子の異変に気づいているのかいないのか、香也はいつもののんびりとした口調でそういった。
「あ……はい……すぐ行きます……」
 孫子がそう答えると、
「……んー……じゃあ……」
 といって、香也の足音が遠ざかって行く。
 完全に香也の気配が遠くなったのを確認して、孫子は一人、ため息をついた。
 ……わたくし……なにを……。
 やっているんだろ?
 と、孫子は思った。
 それから気を取り直して、濡れた下着も取り替え、身繕いをしてから夕食の席に向かった。

 孫子が居間に向かうと、夕食の席には、すでに真理、羽生譲、松島楓、香也が揃っていた。三人は、荒野たちのマンションで夕食をとる、という話だった。時間の都合がつく限り全員で食事を囲むこの家の習慣が、どれだけ普遍的なものかは「平均的な家庭生活」から程遠い場所で生まれ育った孫子には判断しかねたが、こうして「その日の出来事」をしゃべりあいながら囲む食卓は楽しい、とは、思っている。
 羽生譲は、朝から夕方まで、ファミレスのバイトに入っていた。
 真理は、数日後に迫った出発に備え、様々な準備をしていたようだ。半月以上、家を空けるとなると、いろいろ心配になることが多いらしい。各種洗剤の備蓄状況、とか、細かい日用の消耗品が気になって、チェック漏れがないのか、家中を歩き回っていた、という。
「……大丈夫ですよ。
 前にも、これくらいの留守はしょっちゅうあったし、別に、問題なかったでしょ?」
 とは羽生譲の弁だが、
「……でもねー……。
 前までは、譲さんとこーちゃんの二人きりだったわけだし……」
 家庭内人口が数倍になっている分、真理も心配の種が尽きないようだった。
「……でも、家事ができる人も増えているし、大丈夫でしょ……」
 対称的に、羽生譲は、楽観的に断言した。
 楓は、例によって一日、プレハブに籠もって絵を描いていた香也に張りついていたようだ。他に用事がない時、楓は、いつもそうしている。
 香也も、特に邪魔をされない限りは、絵を描いている最中にそばに人がいても、気にならないようだ。

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「髪長姫は最後に笑う。」 第五章(96)

第五章 「友と敵」(96)

「……茅、食事中だ。
 テーブルを消したら、メシが食えないだろう……」
 一番落ち着き払っていたのは、荒野だった。
 三島は「これなんのスタンドですか?」とかわめいているし、他の三人は……。
 ノリは、戦々恐々としながらテーブルがある筈の空間に手を延している。ノリの手は、すかすかのなにもない空間をさ迷っているように見えた。
 テンは、いかにも面白そうな顔で、唐突に消失したテーブルと茅の顔を見比べている。
 ガクは……。
「ほら、ガクが六節棍、振り上げている……。
 この単純なのがテーブルを真っ二つにする前に、元どおりにしたほうがいい……」
 荒野の言葉に茅が頷くと、消えた時と同じ唐突さで、元どおりのテーブルが出現した。
 上に乗った皿やどんぶりの配置も、消えた時のままだ。
「な……なにが……なにが、起きたんだ……」
 目を丸くしたままの三島が、どこか力の抜けた声で説明を求めた。
「推測だけど……気配絶ち……に、近いものだと思う……」
 テンが、なにやら考え込んだ顔のまま、そういうと、茅は頷いた。
「近いといえば、近いの……あの疲れる歩き方、ヒトの知覚の盲点を擦り抜けるためのもの……。
 だけど、これは……もっとアクティブ……対象者の死角、嗅覚、聴覚……それに皮膚感覚まで訴える、特殊なシグナルを伝えて……」
 知覚すべてを、狂わせるのだ……と、いう。
「……源吉が、姿を消す時に使うの……」
「……流石は、ニンジャ……。
 幻術……めくらましまで、本当に使うのかなぁ……」
 軽く眉をひそめて三島百合香は嘆息した。
「先生……源吉さんが現れた時、ここにいたじゃないっすか……」
 荒野が、すかさずつっこむ。
「お前ら……頻繁に現れたり消えたりしてるじゃないかよぉ……。
 自分以外の、無生物にもそれができるとは思えなかったんだようぅ……」
 三島は、口唇を尖らせて、そう答えた。
「ま、いろいろ言いたいことはあるだろうが……まずはメシだ。
 ほら、ガクもノリもいつまでもぼさっとしていると、せっかくのご飯が冷めるぞ……」
「……ねー……茅……さん……」
 テンが、ひどく真面目な顔をして、茅に話しかける。
「今の技……ボクにも、使えるかな?」
「可能性について答えるのなら、イエス。
 でも、茅がテンにこの技を伝えることができるのか、という質問なのなら、ノー……。
 テンは、今、茅がなにをやっていたのか、感じ取れた?」
 テンはしばらく考えて、首を振った。
「……茅さん……ただ、そこに座っているように、見えた……」
「茅は源吉が姿を現した時、源吉がそれまでなにをやっていたのか、『見えた』の……。
 源吉……体温分布を微妙に変調させたり、極低周波の音を出したりして……回りの人の知覚を狂わせていたの……。
 茅……その時、見たものを覚えていたので……時間をかけてその記憶を分析し、源吉の、ヒトの知覚を狂わせるシグナルの文法を解析して、今、試してみたの……」
 茅はそういって、ゆっくりと首を横に振った。
「このシグナル……言語とか記号に翻訳不能だから……今、茅がやったことが感知できない人には、教えられないし使いこなせないと思うの……。
 茅、これを、どうしたら『見える』ようにできるのか、までは知らないの。知らないものは、教える事ができないの……」
「……なぁ、茅……」
 今度は三島が、珍しく険しい顔をして、茅に質問をする。
「そのシグナルって……他に、どんなことが……どんなふうに、ヒトの知覚を狂わせるんだ?」
「シグナルが狂わせる、というわけではないの」
 茅は、淡々と答える。
「シグナルは……ヒト個体という情報統御システムにアクセスするためのプロトコル。
 時間をかけることができれば、対象となるヒト固体の情報を、すっかり書き換えることも可能なの……」
「それ……ブレイン・ハッキング……って、ことか?」
 三島が、頓狂な声を出した。
「それで……傀儡操りの佐久間、か……」
 荒野も呆然と呟く。
 知力に秀でる佐久間は、洗脳や大衆操作が得意……。
『……なぁにが、最弱……だよ……』
 使いようによっては……とんでもないことが可能となる大技だ……と、荒野は思う。
「でも、この技も、意外に欠点が多いの……。
 まず、カメラなどの無生物には、効かない。
 次に、短時間の施術では、ごく簡単な錯覚や暗示しか与えられない……。
 周到に準備をしなければ、結局大したことはできない……
 だから、とっさの場合には、大した役には立たない……」
「……なんだかよく分からないけど……」
 六節棍を折り畳んで収納したガクが、椅子に座り直す。
「……テンにも真似できない、ってことは、そうとう難しいことなんだよな……。
 そんな難しいことなら、ボクにわからなくても当然だよ……」
 ガクはあっけらかんとそう言い放って、たべかけのどんぶりを手に取る。
「……お前は、悩みがなさそうで、いいなぁ……」
 思わず、荒野はそう呟いて、ガクに生暖かい視線を送った。
「違うの!」
 ノリが、その荒野の視線からガクを守るように、両手を広げて、荒野の前に立ちはだかる。
「ガク、可哀想な子じゃあ……お馬鹿な子じゃあ、ないんだから!」
「……んなこと、誰もいってないって……。
 ほら、ノリ、さっさと席について、メシ食べろって……」
「嘘!
 かのうこうや、今、ガクのこと、可哀想な子を見る目でみてた! 何もいってなくても、ガクのこと馬鹿にしているの!」
「……あー……。
 もういいから、座ってメシ食えって……。
 ガクは、いい友達を持ったな……」
「ほら! また、馬鹿にしてる!」
 その日の夕食は、そんな感じで賑やかに進行した。

「……って、こういうことなんだけど……お前ら、どうする?」
 夕食後、例によって茅がいれた紅茶とマンドゴドラのケーキをふるまう。三島以外、食後だからといって、マンドゴドラのケーキを逃す連中はいなかった。三島百合香は、どちらかといえば辛党で、空腹時ならともかく、食後の満腹な時にまでケーキを食べる気にはならない、といって、紅茶だけを飲んでいる。
 その席で、荒野は玉木と有働の「地元に味方を作ろう作戦」の概要を説明し、「……後で、他のことにも手をつけるのかもしれないけど……」と前置きした上で、「当面は、商店街の客寄せに協力することになりそうだ」と、告げた。
「……今までのコネと実績があるから……」
 手をつけやすい。と、荒野は説明する。
「ようするに、それ、年末にやったのと同じ、商店街の客寄せパンダになれってこったろ? ん?」
 三島がそういうと、
「年末にも、何かやったの?」
 テンが首を傾げる。
「ああ。やった……」
 荒野は、神妙な顔で頷く。
「……茅と、楓と、才賀の三人が仮装をして、特設ステージの上で、歌って踊ったんだ……」
「そうそう。
 サンタとトナカイ、それに、メイドさんのコスプレしてな、昨日のバーベキューの時にやったろ? あの、ピンクレディーをメドレーで歌って踊ったんだ……」
 三島がそう補足すると、三人の目が点になった。

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彼女はくノ一! 第五話 (54)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(54)

 しばらく、飯島舞花と栗田精一は折り重なってぐったりとしていた。
 が、すぐにのそのそと胸郭を大きく波打たせながら起き上がり、どちらともなく身を寄せ合い、お互いの口唇を求め合う。そうして膝立ちになっている限り、舞花の目線の位置が栗田のそれより若干高い程度で、身長差はあまり気にならない。
 汗に光る肩を抱き合って、口唇をむさぼあって、お互いの体をまさぐりあう。や舞花の手が栗田の下腹部に伸び、相変わらず起立したままの逸物をまさぐり、逆手にしっかりと握りしめる。
「……これ……」
 舞花は潤んだ瞳を伏し目がちにして、栗田の耳元に口を寄せ、掠れた声で囁いた。
「……欲しい……」
 そういって栗田の体を仰向けに転がし、その上に馬乗りになった。
 栗田の上に馬乗りになった舞花は、「んんっ!」と小さく呻きながら、下着の湿った部分を栗田の硬直になすりつける。
 栗田が舞花の最後に残った下着に手をかけて降ろそうとすると、舞花は「駄目……恥ずかしい……」といって、その手を払いのけた。
 まだ、見学者である孫子の視線のことが、意識の片隅に残っていたらしい。
「わたしが、……挿れるから……」
 舞花はそういって、少し腰を浮かせ、栗田自身を掴み、自分の下着を横にずらして、栗田の先端部を赤く充血した自分の陰唇にあてがう。濡れた陰毛の中にちらりとみえた舞花のあそこは、朱色にてらてらと輝いていて、そうしたものをみなれていない孫子の目にはとてもいやらしく思えた。
 栗田の先端を自分にあてがった舞花は、少し腰を沈めると「っふ! んふっ!」っと、なんだかとても艶のある鼻声を上げる。
 栗田の先太りの先端部が完全に舞花の中に飲み込まれると、舞花は「……はぁあぁ……」と満足そうな吐息をついて、ゆっくりと腰を最後まで降ろして、完全に栗田を飲み込んだ。
 舞花は、そのまま上体を降ろして栗田の顔を左右から両手で挟み込むようにして固定し、栗田の口唇を吸いながら、自分の中に入っている栗田の感触を確かめ、楽しむかのように、ゆっくりと腰を上下にスライドさせはじめる。
 舞花に口や舌を吸われながらも、栗田は手を強引に体の間に割り込ませて、舞花の豊かな乳房を揉みはじめた。
 舞花の腰の動きが激しくなり、栗田が執拗に舞花の乳首をつまみ上げる。
 すぐに舞花は「……はぁあ!」と息を吐いて上体を起こし、深く結合したまま、栗田の上で踊り始める。栗田は、舞花の胸を下から鷲掴みにして体重を支え、舞花の動きを助ける。
 栗田の上に馬乗りになった体勢のまま、舞花が髪を振り乱して激しく動き出したので、孫子は、舞花に飲み込まれた栗田自身が舞花の動きに合わせて二人の陰毛の間に見えかくれする様子を子細に目撃することができた。舞花が動くたびに見えかくれする栗田のそれ、それに、二人の陰毛自体も、すっかり舞花が分泌した透明な淫液に濡れている……。
 舞花の撥ねるような律動も、やがて終わる。
 二人はほぼ同時に「うっ!」とか「うわっ!」とかうめき声を重ね、舞花が栗田の上に倒れ込み、そのままピクピクと痙攣したような動きをみせる。
 どうやら、二人同時に絶頂を向かえたらしい……が……孫子は、栗田が舞花の中に直に射精したのかどうかが、気になった。
 ぴったりと密着して寄り添って体を休めている二人は、もちろん、結合を解いた様子もない。また、体を密着させているため、股間の結合部周辺にあふれ出た白濁液を確認することもできなかった。
 二人は、しばらくそうして密着して軽くついばむように口唇を合わせあったり、顔を間近に近づけて親密そうな笑顔を浮かべてほほえみあったりしていたが、呼吸が整ってくると舞花が身を起こして立ち上がり、真っすぐに孫子の目をみて、
「……どう? 参考になった?」
 と、尋ねた。
 股間から透明な液体と白い液体とがしたたり落ちていたが、そうしたことが奇異に思えないほどに柔和な表情を、舞花は浮かべている。
「え……ええ……」
 孫子は、半ば気圧されていた。
 その笑顔から見て取れる舞花の自信……「栗田に」愛されている、と信じきっているところからくる、揺るぎようがない舞花の自負が……そうした相手を盛ったことがない孫子には、眩しくも怖くも感じられる。
「でも、それ……」
 目を伏せて孫子が舞花の股間からフローリングの床にしたたり落ちた液体を指さすと、舞花は、孫子がなにをいいたいのか察し、
「ああ……これ?
 大丈夫、大丈夫。今日は、大丈夫な日だから……」
 そういって舞花は、床にぐったりしたままの栗田の腕を取って、助け起こした。
「……さあ、セイッチ……シャワーでも浴びよう……」
 それを機に、孫子は別れの挨拶をして、そのマンションを辞した。
 なんだか、いろいろな事を学んだ……ような、気がする。

 狩野家に帰ると、そろそろ夕方といっても良い時刻だったが夕食にはまだ間がある、という半端な時刻だった。
 真里は台所で夕食の支度をしており、孫子も手伝おうかと思ったが、「いいのよ。もうすぐ羽生さんが帰ってくるし……」とやんわりと断られた。

 孫子は自分の部屋に戻り、勉強机にしている座卓の前に座る、
 シルヴィから貰った小瓶を取り出して、それを掌で玩ぶ。
 ……確かに絶大な効果がある、ということは分かった……。
 が、それが、一体何になるというのだろう? こんなものを使ったからといって……孫子と香也が、柏あんなと堺雅史の、あるいは、飯島舞花と栗田精一のような……お互いに気を許しあった、親密な関係になれる、という保証は、ないのだ……。
 いや。
 孫子はすでに、楓と香也が関係している現場を、目撃している。
 その上で、香也は、現在、楓とも、適度な距離を置いている……ということから考えれば……無理に肉体関係を結んでも、香也との関係に進展がある、とは、思えない……。
 他の男性一般はどうか知らないが……少なくとも香也は、無理やりにそういう関係に持ち込んだからといっても……あまり、意に介さないタイプらしい……。
 第一、それで進展があると考えるのなら……孫子の力は、香也がよりも、よほど強い。とっくの昔に、二人きりになる機会を作って、強引に香也に迫っている……。

 今日、二組のカップルの行為を実際に目の当たりにして、孫子は、シルヴィのこのクスリを使う意味について、考え込んでしまった。
 シルヴィがいうように、このクスリを使うのが、果たして、正しいのかどうか……。
 それと……本当のところ、孫子は……香也と、どういう関係になりたいのか……。
 孫子は香也の顔を、思い浮かべる。
 不思議な少年だ……と、そう思う。
 非力といえば、あまりにも、非力だ。
 絵を描くこと以外の能力は、同年代の男子の平均値を下回るだろう。
 それに、興味を持つものの幅が、極端に狭くて……いわゆる、「専門バカ」とかいわれるような人種で、容姿だって特にパッとしたものではなく、なにかというと「……んー……」とか唸って言葉を濁すし、決して弁が立つわけでもなく、物静かで……。
 本当……取り柄らしい取り柄、といえば、絵を描くことくらいしかないのに……なんで、あんなのの存在が……こんなにも、気になるのだろう……。
 そんなことをぼんやりと考えているうちに、右手が、スカートの中に入りかけているのに気づいて、孫子は、はっとする。
 今日、見聞して来た内容が、孫子自身の欲望を刺激し……孫子の奥底で燠火のようにくすぶり続けているのを、孫子は自覚した。

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「髪長姫は最後に笑う。第五章(95)

第五章 「友と敵」(95)

 夕食は、ひつまぶしに豚汁、それに漬物に冷や奴、という栄養バランスと満腹感はともかく、あまり上品とはいえかねるメニューになった。
 オーブンで焼いた鰻をテンがきっかり八ミリ幅に刻み、それを、ガクがたれや錦糸玉子とともにご飯とまぜあわせる。その間に、ノリが、豚汁とか冷や奴の準備をし、配膳する。
 全員が食卓につき「いただきます」の一声の後、箸を取ると、荒野とそれ以外の人々の「今日の出来事報告会」になった。丸一日、身体検査を受けていただけ、の人々よりも、荒野のほうが報告すべき事柄が多かったので、先に検査の様子を聞く。
「……一カ所で終わると思ったら、あちこちの場所にたらい回しにされて、予想してたよりもかなり詳しく調べられたな……」
 三島はそう証言した。
 レントゲンや心電図、などの外に、血液の採取も、三分間の反復横跳びの前後、二種類の血液を取られた、という。
「……それ、なにが解るんですか?」
 救急治療などの知識は一通りあるものの、あまり医学に詳しくない荒野は、三島にそう尋ねる。
「いろいろ解るぞ。
 血中酸素消費量とか、乳酸含有量とか、アドレナリンなどの分泌量とか……」
 人数が増えたから、各人のデータを比較するためにも、改めてそういうデータも取り直したらしい。
「それから、全身の輪切りスキャンもされたな……」
 三島の話しによると、現代では、全身の内部走査……身体各部の正確な形状の外に、血流の状態や脳の形まで、かなり細密にスキャンできるらしい。
 もちろん、相応に大掛かりな設備は必要となるわけだが……そんなものは、涼治のコネを使えばなんとでもなるのだろう。日曜日なら、診察の受付をしていない病院も多くある筈だった。
「……それに、筆記試験や体力測定、反応速度のテストまでやった……」
 暗記力や暗算能力、それに、筋力、瞬発力、「合図を出してから、手を上げるまでの時間」まで、計測されたという。
「それは……」
 完全に……性能試験だ。
 荒野はそう思ったが、口に出してはこういった。
「……丸一日、かかるわけですね……」
「こいつらはゲーム感覚で、楽しそうだったがな……」
 三島はそういって、箸を使った。
 それで、帰りに、夕食の買い物がてら、ゲーセンによってクレーンゲームやプリクラをやってきた、という次第であるらしい。
「あとな、一つ、面白い事実が判明したぞ……」
 ノリの背が、一月前に計測した時より、五センチほど伸びている、という……。
 島から出て、野呂良太に一時期、預けられいた時も、三人は簡単な身体検査を頻繁に受けていた、という。
「……うん。
 ノリ、三人の中では一番チビだったけど、島を出てから、急に大きくなったよね」
 ガクとテンもそんなことをいって、頷きあう。
「荒野……ある時期、いきなり体が成長しははじめるのって……お前ら、加納の特性だったよな……」
 一月で五センチ……確かに、いくら成長期とはいっても……一般人としては異常な部類だろう……。
「ノリ……お前、寝ている時、ミシミシいう音、聞こえてくることないか?」
 念のため、荒野はそう確認してみる。
「……うん。そういう音、する……」
 ノリは、珍しく神妙な顔をして、荒野の質問に答えた。
「それ、おれもそうだったから……一月か二月後には……ノリが、三人の中で一番年上にみえるようになっている筈だ……」
 荒野も、ノリの不安を軽減するため、真面目な表情をつくって、そう頷いてみせる。
 その音は、急激に成長する時に、骨や関節部が軋む音だと、荒野は聞かされている。
「茅も……その音、聞いているの……」
 荒野の言葉の後から、茅もそうつけ加えた。
 今、この三人は……同じような年格好に、みえる……。
 しかし、ノリだけではなく、三人とも成長期で、外見の変化が激しい時期だ。時間が立つにつれて、三者三様の変化をみせていくのだろう……。
「……で、お前さんのほうはどうだったんだ?
 さっき、随分といろいろなことがあった、とか、いってたけど……」
 荒野は、三島にそう即されて、今日の出来事を朝から順に話しはじめる。
 未樹に車でこの部屋まで送って貰ったこと、までを話した時、荒野はふと思いたって、三人組に向き直る。
「……おい、お前ら。
 来週の土曜か日曜、空けておけよ。
 みんなで、髪を切りにいくからな……」
 と、宣言した。
 美容院どころか、店で髪を切ってもらった経験のない三人は、なにがなんだかわからないなりに、新鮮な体験ができるということは理解したらしく、わっと歓声をあげた。
『……そうだな……楓にも、声をかけてみるか……』
 楓も、荒野と同じく、この土地についてからこっち、髪を切りにいった様子がない……。
 一人きりで調髪に行くのを億劫に思っていた荒野にしてみれば、楓や三人は、いい道連れだった。
 もちろん、茅も誘っているのだが、こちらはいつもの通り、即座に断られた。茅は今の髪の長さが気に入っているらしく、普段の手入れの時に頻繁に自分で毛先を切り揃えている。
 それから、ショッピングセンターに自転車を取りにいった際、バイクにからまれたこと、商店街の帰りに、玉木と有働と合流して、その後、夕方までこの部屋で話し合った内容なども、かいつまんで話す。
「佐久間の主流が動き出したのかも……」
 という、荒野の疑惑には、好奇心の強い三島とテン以外に興味を示すものがいなかった。
 ガクとノリは、佐久間がどうの六主家がこうの……という話題は、どうもぴんと来ないようだし、茅は、相変わらず表情が読みにくいポーカーフェイスのままだ。
 三人の中でガクだけが、
「佐久間って、どういう事ができるの?」
 と、身を乗り出した。
 佐久間は六主家の中でも徹底した秘密主義の血族で、荒野にしてみても、握っている情報は極端に少ない。
 以前、三島や茅に話した「知力にすぐれ、洗脳や扇動、大衆操作を得意とする」くらいの概略と、「傀儡操りの佐久間」という異名、それに、この間の源吉のエピソードくらいしか、披露することができなかった。
「……そうか……」
 テンは感慨深げに、自分の手を握ったり開いたりして、自分の拳をみつめた。
「ボクの体質……その人達から来たのものなのか……。
 佐久間っていう人達がそういうことができるなら、ボクだって……」
「……まあ、長い年月をかけて習練すれば、不可能じゃないんだろうが……」
 荒野は、その後を引き取って、後を濁す。
 術理ばかりは……後天的な学習がものをいう。生まれつきの素養、ばかりでは、どうにもならないだろう。
「でも、この間、源吉が使った暗示なら、茅にも再現できるの……」
 茅がことなげにそういったので、その場にいた全員が、茅の顔をみつめた。
「……証拠。
 今から、このテーブルを、上に置いている料理ごと、知覚できないようにする……」
 茅がそういい終えるか終えないか、というタイミングで……。
 料理を盛った皿や茶碗が上に乗っていたテーブルは、荒野たちにとって見えない存在になった。それどころか、手をのばしてみてもなんの感触もなく、六人がぐるりと取り囲む椅子の真ん中に、唐突に「なにもない空間」が、ぽっかりと出現した。

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彼女はくノ一! 第五話 (53)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(53)

 孫子は、もはや自分は冷静ではないかも知れない、と思いながらも、舞花と栗田の行為を凝視し続けている。
 目が、離せない。
 椅子に座った栗田の前にひざまずいた舞花が、じゅっ、じゅっ、じゅっと音を立てて頭を上下させている。栗田よりも大きな体格の舞花が背を丸めるようにして栗田に奉仕しているさまは、実際に目の当たりにしてみると、予想以上のインパクトがあった。
 孫子は普段の二人の様子や表面的な力関係をよく知いる。普段、二人の関係でイニシアチブを握っているのはどうみても栗田よりも舞花で、その舞花が、喜々として栗田の性器を口に加えている、と考えると……そのギャップと行動の大胆さとに、見ていて動悸が早まってくる。
「……やっぱり、いつもよりも大きくなっているな……セイッチ……」
 いったん、栗田の膝の上から顔をあげ、栗田の顔を上目使いに見上げた舞花がいかにも嬉しそうに笑いながら、そういった。
 この時の表情にも、普段の舞花からは想像できない艶やかさがあった。
「なあ……今度はセイッチのほうが、わたしにナニカしてくれよ……」
 舞花は鼻にかかったような、甘えた媚態をしめした。
 栗田は、固唾をのんだ。
 同時に、孫子も、思わずゴクリと喉を鳴らしている。
「……じゃ、じゃあ……」
 栗田は、舞花喉をシャツのボタンを、震える手で上から一つづつ外しはじめる。栗田は舞花の顔をから目をそらさないようにしていたが、孫子が一部始終を観察していることを意識している……と、その手の震えが教えていた。
「……なぁ……」
 いくつかのボタンを外し、舞花の豊かなバストの上半分がはだけた所で、舞花はそういって、目を閉じた。
「キス……して……」
 栗田は椅子から立ち上がり、それまですわっていた椅子を乱雑な動作で脇に追いやる。
 そして、膝立ちになって舞花と同じ目の高さになり、少し舞花の顔を眺めた後、意を決したように舞花の首に抱き着いて、口唇を重ねる。
 そのまま長々とキスを続けていた二人は、しばらくするとそのままもつれ合うように床に転がり、はぁはぁとあらい息をしながら、口唇を求め合いつつ、お互いの服を脱がせはじめた。
「ん……だめぇ……」
 上半身のシャツを脱いだ所で、舞花は、普段の舞花からは想像もできないような蕩けるような声でそういい、栗田の胸のあたりを優しく押して、距離を取る。
 栗田もすでに上半身裸であり、加えて、社会の窓前回でいきりたった逸物を丸出しのまま、どこか間の抜けた顔で舞花をぼんやりとみつめかえす。
「約束の通り……胸で、してあげる……」
 そういいながら、背後に手を回して、ブラのホックを外しはじめた。
 フロントホックではなかった。
 舞花の半球形の乳房があらわになる。形もきれいだったし、乳首の色も薄いピンク色だった。
 舞花は、優しく栗田の体を押し倒し、
「な……全部、脱ごうな……」
 と掠れた声で囁きながら、栗田のジーパンのベルトを外しはじめる。栗田も、もはや収まりがつかない所にまで来ているのか、舞花がジーパンを脱がすのにも抵抗しようとはしなかった。
 ベルトのバックルを外すと、舞花は栗田に抱きついて口唇を重ねながら押し倒し、重なり合いながら手探りで栗田のジーパンをずり下げる。栗田も、腰を浮かせるなどして、その動きに協力する。
 全裸になって舞花に覆いかぶさられている栗田の体は、身長こそ低めだったががっしりと厚みのある、筋肉質のラインで、そのシュルエットに「男性」を感じた孫子は、少し、ドキリ、とする。
 そうした硬そうな栗田の上に、女性らしい柔らかなシュルエットを持つ半裸の舞花が覆いかぶさり、うっとりとした表情で目を閉じている栗田の口から首筋、胸元までを、ねっとえりと口を這わせながら、頭を下に進めて行く。その間、舞花の右手は栗田の硬くなった陰茎から睾丸までを指先でそっとたどっている。
 舞花の舌が栗田の乳首、みぞおち、臍……と、どんどんさがっていき、後少しで股間に到達する、という間際に、舞花は上体を起こして膝立ちになった。
「な……」
 昂然と誇らしげに胸をそらし、舞花はすっかり紅潮した顔で、栗田にいった。
「これから、胸でするから……その代わり、セイッチも……な?」
 そういって舞花は、膝立ちのままよたよたと移動し、栗田の頭を両膝で挟む態勢になる。
 そのまま舞花がよつんばいになると、たしかに、舞花の胸のあたりに、栗田の局部がくる。
「……脱がして……」
 さすがに恥ずかしいのか、舞花が、小さな声でそういう。
 栗田が舞花のベルトのバックルに手をかけると、
「あ。全部は、まだ駄目だぞ……し、下着は、残して……」
 舞花は孫子のほうに一瞬視線をむけてから、あわててそう付け加えた。
 その時の舞花の表情に、舞花は、背筋が、ぞくり、とするような感覚を覚えた。
 柏あんなと堺雅史の行為をみた時は、正直、なにがなにやらわからないうちに始まって終わっていた感じだが……今度は、全然違う。
 孫子の方が慣れて来た、ということもあるが……舞花は、孫子にみせるために、情事をことさらゆっくりと進行させているようにみえた。
 まるで、行為の意味と方法を、孫子に教えるかのように……。
『……意図的にやっているのだとすれば……』
 孫子の都合まで予測し、孫子に性行為の実際を教えるために、舞花がわざゆっくりとみせつけているのだとすれば……やはり、なかなかたいしたタマだ……と、揶揄や皮肉ではなしに、孫子は舞花のことを、改めて評価する。その評価が正当なもおであるのかどうかは、ひとえに、舞花が本当は、内心ではどう思っているのか、という点にかかっており……そんなことは、舞花のほうから語ることはないだろうし、孫子の方から尋ねることもないだろう。
 その舞花は、下着は一枚の姿になって、上下逆方向に向かい合わせになって、全裸の栗田の上に覆いかぶさっている。いわゆる、シックスナインに近い体制だが、ポルノ・メディアに詳しくない孫子は、そんな通称など知る由もない。
 舞花は、予告どおり、自分の豊かな双丘で硬直したままの栗田自身を挟み込んでいる。
 その行為が男性にとってどんな意味があるのか、は、孫子は想像するだけに止まる。
 だが、そんな孫子でも、
『……わたくしの大きさでは、できませんわね……』
 とは、思う。それから、
『……楓なら、可能だろう……』
 ということに思い当たり、よりによってこんな時の比較対象に楓を想起する自分に思い当たって、孫子は少しブルーな気分になった。
 舞花が下着を脱ぐことを拒否したので、栗田は下から舞花の股間部を間近に見据えながら、舞花の下着のに、湿って陰毛がうっすらと透けてみえる当たりに、指を這わせていた。
 中央の溝を栗田の指先がたどると、時折、敏感な部分触れるのか、栗田自身を胸に挟んでいる舞花が断続的に「ふっ」とか、「うっ」とか、呻く。
「まーねー……」
 しばらく指で舞花の股間をもてあそんでいた栗田は、やがて、熱に浮かされたような口調で、そんなことをいいはじめる。
「まーねーのここ、なめて、いい?
 っていうか、今すぐ、なめまわしたい……。
 止めても、やる……」
 そういうが早いが、舞花の返事をまたず、栗田は顔の下半分を舞花の股間に埋め、ずびずじゃずじゃ、と、盛大に濁音をたててなめまわしはじめた。
 最初のうち、「あっ! 馬鹿!」とか、「やめっ! ……んっ!」とか、いっていた舞花も、盛大に音をたてて栗田がなめあげているうちに首をのけぞらせ、「あっ!」とか、「あっあっ!」とかいううめき声に変わり、最後には「あーっ!」と尾を引く悲鳴に似た声をはりあげて、栗田の腰にしがみつきながらごろごろ転げ回り、そのままぐったりとして動かなくなった。

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「髪長姫は最後に笑う。第五章(94)

第五章 「友と敵」(94)

 玉木と有働は昼過ぎから夕方の五時頃まで荒野たちのマンションに居座って他愛のないおしゃべりしていた。
「あ。もうこんな時間。
 そろそろ帰って今日話していた企画書、しあげまーす……」
 と玉木が言い出したのを機に、有働も「では、ぼくも」と腰をあげる。
 二人がそろって出て行った後、荒野は干していた洗濯物と布団をとりこんで片付け、シンク回りの掃除をし、そろそろ夕食の準備をするかな、と、考えていた所で、三島から連絡が入った。
 これから、夕食の買い物をしてから帰る、ご飯だけを炊いておけ……という内容だった。久々に、三島が食事の準備をしてくれるという。
 荒野は「あの三人も一緒だろう」と予測し、十合ほど米を研ぎ、炊飯器のスイッチをいれ、ソファに横になり、ぐったりと体を沈めた。
 ひさしぶりに一人で過ごした休日は……今までに潜伏していたいろいろなことが一遍に起こって、降りかかってきて……荒野自身も、頭の中で、良く整理できていない。
 ……茅や先生に、うまく説明できるように……整理しとかなければな……とか、思っているうちに、荒野は目を閉じて、うとうとと微睡みはじめる。

 目を醒すと、体の上に毛布が置いてあり、キッチンの方からは、いい匂いが漂ってくる。何人かの人の気配がした。と、いうことは……。
 荒野は、がばりと身を起こした。
 キッチンでは、三島と茅が指揮を取って三人組を動かし、夕食を準備している最中だった。
 荒野がまどろんでいた間に、みんなが帰っていた。
 そのこと自体は、別に不思議でもなんでもないのだが……。
 同じ室内にこれだけの人数が入ってきて……なおかつ、荒野が、そのことに気づかないまま、寝入っていた……ということこそが、問題だった。
『……おれ……』
 平穏な生活を何カ月も続けるうちに……術者として、鈍ってきているんじゃあ、ないだろうか?
 そんなことを思って荒野が一人で青くなっていると、
「……荒野」
 荒野が跳ね起きたことに気づいた茅がトコトコと歩いてきて、小さなぬいぐるみを差し出した。
「おみやげなの」
 まるっこいデザインの、ネコ「らしい」。
 口元や耳の形と、それに、顔の左右にピンとのびたヒゲから、たぶん、ネコじゃないかな、と、察しがついたが、やたら丸っこくてファンシーなディフォルメが行き過ぎて、荒野にはイマイチ「それがネコである」という確信が持てない。
 大きさは、茅の掌にすっぽり収まる程度……実に、小さい。
「どうしたんだ? これ?」
 荒野が訪ねると、エプロン姿の三島がやってきて、
「それな。茅とテンは目測でかなり正確な採寸ができるって話しだろ? だからな、帰りに買い物ついでにゲーセンに寄ってUFOキャッチャーやらせて見たんだ。
 そしたら……ほれ、思った通り、大漁大漁……」
 三島は、荒野が座るソファの脇から段ボールを取り出し、荒野の膝の上にざらざらと中身をぶちまける。
 段ボール箱一杯分の、ぬいぐるみだった。
 どうやら、荒野が起きたらこうしてぶちまけたくて、あらかじめセッティングしていたらしい。
「……それはいいけど……どうするんだ? こんなに?」
 荒野は不明瞭な声で、そういう。寝起きということもあったが、このような時、なんといっていいのかよくわからない。
「なに、ほとんどあいつらが持って行くってよ。
 やつらの部屋、殺風景だというから、ちょうどいいさね……」
 三島は、キッチンの方で包丁や食材の入ったボールを持って右往左往している三人を指さす。
「……おれ……顔、洗ってくる……」
 荒野は洗面所で、幾つかの小さい紙片が顔に貼りついているのを発見する。
 引っ剥がしてよくみてみると、茅と三島、それに三人がひしめき合って一緒に写っている、プリクラだった。
『……仲がよろしくて、結構なことだ……』
 荒野は、皮肉でもなんでもなく、そう思った。
 そして、鏡をみてべたべたと顔のそこここに貼ってあったプリクラを一つ一つ剥がしにかかる。

 顔を洗ってキッチンを覗いてみると、三島にしては珍しく、あまり手のかからない料理を作っていた。
 冷凍の鰻をオーブンで焼いていて、これがメインらしい。後は、具沢山の豚汁らしきものが鍋にはいって火にかけられており、それと、三島が持ち込んだ漬物を切ったものが丼に山盛りになったものが、すでにテーブル上に用意されている。
 三人がどたどた動いて用意していたのは、どうやら、豚汁と漬物らしい、と、荒野はあたりをつけた。
「……今日のは、随分と、大ざっぱなメニューですねぇ……」
 荒野がそう呟くと、
「そうはいうがな、こいつらがあんまり腹減った、っていうんでな……。
 それに、食うのもどうせこいつらだろ?
 そんな、繊細な味付けをするよりも、手早く作れてボリュームがあるモンのがいいと思ってな……」
 三島がそんなふうに説明すると、荒野も、「そんなもんかもな……」と、納得する。
「確かに……質より量、かもしれませんね、こいつらの場合……」
 荒野が一人うなずくと、
「こんなのこんなの、いうな!」
 と、荒野の前に仁王立ちになったガクがわめいた。
 続けてガクガがこういいだしたので、荒野は内心、ひそかに焦った。
「それより、荒野……茅さんが留守中に、なに女を連れ込んでいるんだよ!」
「お……女?」
 荒野は、どもりそうになるのを、辛うじて堪えた。
「確かに、玉木と有働君が来てたけど……」
「違う! その二人の匂いは知っているの! 解るの!
 その二人とは別の女の人の匂いが、残っている!」
 ガクは少し興奮した様子で、そう断定した。
『……体臭?
 犬並だな、こいつの鼻……』
 そう思いながら、荒野は頷いた。
「あ。ああ……。
 そういや、昼前に少しだけ、未樹さんが来てたけど……。
 その、偶然、ショッピングセンターであってな。ちょうど荷物も多かったし、送ってもらったお礼に、ここで一服してもらっただけで……」
 なんで、なんにも疚しいことがないのに、言い訳じみた口調になってしまうのだろう……と、荒野は、自分でも不思議に思った。
 第一、ガクにこんなことを言い訳しなければならないいわれはない……筈……なのである。
「……本当?」
 ガクが、不審そうに眉を顰めて荒野の顔を睨む。
「そんなこと、お前にウソついてどうするよ……」
 今の状況を段々理不尽に感じてきた荒野も、口唇をとがらせる。
「まあまあ……」
 三島百合香が、間に割って入った。
「……そのへんの詳しい話しは、食事をしてからでも……」
「……ああ。そうだ。
 こっち、今日はいろいろありましてね、茅や先生にも話しておいきたいことが、いくつか……」
 そういって、荒野がテーブルの、自分の定位置につくと、
「……確かに、ここでえっちなことをしたような匂いは、残ってないけど……」
 ぽつり、と、ガクが小さな声で呟く。
 ……それが分かるんなら、最初からそういえよ……。
 と、荒野は思った。

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彼女はくノ一! 第五話 (52)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(52)

 孫子の位置からは見えないが、栗田を羽交い締めにしている舞花の位置からは、栗田の「それ」がいきり勃っているのが確認できるのだろう……と、孫子は予測する。
「はっ、はっ!
 すごい、元気じゃないか! セイッチ!
 いつもより一回りくらい大きいんじゃないのか!」
 背後から栗田に抱き着いている舞花のテンションも、明らかに普段よりもハイになっている。
「孫子ちゃんに見られているんで、いつもより興奮しているのか? えっちだな、セイッチは……。
 ……待ってろぉ……その、パンパンに膨れあがっているの、今、楽にしてやるからなぁ……」
 舞花は片手だけを栗田の股間に延ばして、ジッパーに手をかけた。
 栗田はずっと舞花の拘束から逃れようともがいているのだが、相変わらず、舞花の腕はびくともせず、栗田の体をがっしりと捕らえ続けている。
 舞花がジッパーに手をかけた時、栗田の抵抗は頂点に達したが、じじじじじ……と、舞花が栗田の股間のジッパーを降ろしきると、諦めたのか、急におとなしくなった。
 疲れ、諦め……それに、多分、これから始まることへの期待感が、栗田の抵抗を止めた……と、孫子は解釈する。
 栗田精一の顔を伏せて孫子と目を合わさないようにしていたが、飯島舞花と同じくらいに紅潮し、明らかに興奮で潤んだ瞳をしている。
「いい加減……やめろって、まーねー……」
 それでも栗田精一は、掠れ声でそういった。が、その声は弱々しく、本気で抗おうとは、していない。
「……さ、才賀さんの前で、こんなこと……」
 時折、栗田は伏し目がちに孫子の顔をちらちらとみる。
 この場ですぐにでも欲望を解放したい、という欲求……と……人目を気にする理性とが、せめぎ合っているのを、その複雑な表情から読み取ることができた。
「わたくしのことは、お気になさらず……」
 孫子は、ころころと無邪気な笑い声を上げる。
「先程も、柏さんのお宅で、この目で、クスリの効果を確かめてきたばかりですから……」
 孫子は「この目で」という部分に、アクセントを置いた。好奇心によって、孫子の声も弾み、表情も輝いている。しかしその高揚は、どこか透明感のある、透徹な好奇心であり、下品な欲望を感じさせるものではなかった。
 むろん、孫子にも性欲はある。
 先程、柏あんなと堺雅史の情事を見学した時も、本人は冷静なつもりであったが、後でトイレにいった時、本人も気づかないうちに下着が濡れて重くなっていたのを発見し、ひどく驚いたものだ。
 しかし、どんなに性的に興奮してはいても、基本的根底的な部分で、孫子には、他人の情事を盗み見たいという願望が欠落している。
 舞花や栗田の房事を観察することで結果的に興奮しても、それは所詮「他人の情事」なのであり、孫子自身の性欲とは直結しない。少なくとも、孫子の表層意識では、そういうことになっている。
 だから、好奇心を丸出しにして、平然と眺めることができた。
「……ほら、孫子ちゃんもああいっているしぃ……」
 舞花は、今では、後ろから右手を回して栗田の頭を抱き締め、左手は、栗田の股間の当たりに延ばしている。その体勢だと、舞花の豊かな乳房は、栗田の後頭部に押し付け、押し潰される格好になる。
 クスリが回りはじめているのか、舞花の頬はピンクに染まり、声がねっとりと湿り気を帯びている。
「……セイッチのこれ、出して楽にしような……。
 孫子ちゃんに見てもらいながら、たっぷり気持ちよくさせてやるから……。
 さ、出すぞ……孫子ちゃんに、大きくなったセイッチの……見てもらおうなぁ……」
 もちろん、栗田は「……やめろぉ……」と力無く呟くのだが、背後から舞花にがっしりとホールドされているので、相変わらず抵抗できない。
 舞花は、すでにジッパーを下げきっていた社会の窓に指を突っ込み、下着ごしに剛直に指先をツツツツとはわせて感触を楽しんだ後、孫子に顔を向けて、
「……孫子ちゃん、今、出すから、よく見えるように、もうちょっと近寄りな……」
 といい、悪戯っ子のような表情で微笑んだ。
 孫子は、二人がよくの位置に自分の座る椅子を移動させ、座り直すのを確認して、舞花は栗田の下着をかきわけて、中から栗田自身を取り出した。
 栗田自身は、「ぴょこん」という擬音が似合いそうな勢いで飛び出てくる。栗田のそれは、すっかり反り返っていた。
「……どう、孫子ちゃん……。
 セイッチの……背が小さいわりには、立派だろ……」
 舞花にそういわれ、孫子は記憶にある男性自身と栗田のそれとを比較してみる。とはいっても、孫子は、勃起した男性は、香也のものと、先程みたばかりの堺雅史のものしか知らないわけだが……。
 その誰の持ち物も、孫子の目からは、ゴツゴツしていて血管が浮き出ていて、とても人体の一部とは思えぬグロテスクさを有している、という感想しか持てなかった……。
「……先端が、随分と大きいのですね……」
 孫子の記憶にある二本の男根と比較し、孫子は、栗田の形状をそう評した。
「そうそう。これがね、ズズンと入ってきて、抜く寸前とか、中の襞をめくりあげてね……。
 うん。
 そう、こう、キュン、ってなるんだよね……」
 異常な状況に加え、舞花は、故意に卑猥なことをいって、栗田と、自分をより興奮させようとしている。
 舞花は、もはや抵抗もやめた栗田の体から腕をはずし、栗田の前にひざまずいて、栗田のいきりたったモノに顔を近づける。
 舞花は栗田の「それ」を両掌で優しく包み込む。
「……セイッチはねぇ、この、先っぽの、割れている所を触れると……びくびくってなるんだ……」
 そんな解説するなよぉ……と、栗田が拗ねたようなうなり声をあげる。
「……どうして?
 セイッチ、気持ち良くなりたいんだろ?
 今、セイッチが好きなこと、たっぷりやって、あ、げ、る、からなぁ……」
 舞花は指で栗田をゆるくしごきながら、栗田の鈴口にちろちろと舌先を這わせる。
「……うっ!」っと、栗田がうめく。
「なぁ……セイッチ……。
 これから口で気持ち良くするのと、胸で気持ち良くするのと……どっちをやってほしい?」
 栗田は、露骨に視線を宙にさ迷わせはじめた。
「……く、口で……」
 しばらくして、栗田は顔を伏せて、ぼそり、と答える。
「んふ。
 そうやって恥ずかがっているセイッチ、可愛いぞ……。
 じゃあ、まず最初は、お口でな……」
 いうが早いか、舞花は、栗田の裏筋を、舌先で、下から上に嘗め上げた後、亀頭の根元、いわゆるカリ首のあたりで舌を横に動かし、それからやおらに、ぱっくりと栗田の先端を口に加え、じゅじゅじゅ、と水音をさせながら、頭を上下に降り始めた。
 ……ふー、ふー、ふー……と、なにか耳障りな音がするなぁ、と思ったら、それは、孫子自身の呼吸音だった。
 気づかないうちに、舞花と栗田の行為に、夢中になって見入っていたらしい……と、孫子は初めて自覚する。
 柏あんなと堺雅史の時は、あっという間にはじまってあっという間に終わった、という感覚があったが、今回は、舞花がことさら孫子に見せつけるようにリードしている。
 だから孫子も、自分自身が、先ほどとは違い、今度は、予想以上に自分が興奮していることを、リアルタイムで体感できた。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(93)

第五章 「友と敵」(93)

 一度訪ねてきた舞花がケーキを持ってすぐに帰っていくと、その後、有働と玉木は交互にどこまで本気か判断しかねる「企画案」を次々に上げはじめる。
 その性格に従って、有働は比較的地に足のついた、地味なものが多かった。それでも、「校内で顔と知名度を上げるために生徒会に立候補する」、とか、「地域ボランティアにみんなで参加する」とか、荒野にしてみれば頭の痛くなるような案が多かったが、もう一方の玉木のほうが「楓と孫子、アイドル化計画」とか「女子プロレス団体の旗揚げ」とかだったので、そちらに比べればまだしも穏当にに思えた。
 そうした、ほとんどその場の思いつきに近い企画案が延々と口頭で提出され、主として荒野と有働が「恥ずかしすぎるから、駄目」とか「……それは、現実的ではありません……」とかその場で却下する。
 多少なりとも実行に移すのに問題がなさそうで、なおかつ、効果的であると認められた案件はすぐに幾つかに絞られて来て、そのプランに関しては、茅や楓、孫子などにも協力を求める必要があるため、有働と玉木が一度持ち帰って「企画書」の形にまとめてくる、ということになった。
「まあ……それでも、茅とか楓がいやだっていったら、やらないからな……」
 実行に移した際の必要性と効果を認めながらも、荒野はまだ、そんなふうに付け加えて抵抗することを忘れなかった。
「悪あがきだなあ、カッコいい荒野君は……」
 しぶしぶ、ではあるもの、荒野のほうもそれなりにノリ気になりはじめていて、しかもそれを認めたくないというのが態度にありありと出ているのを感じ取って、玉木はくすくす笑いながら、そういう。
「って、いうか……お前ら、こういうの、本当に効果ある、と、思う?」
 不意に真顔になって、荒野は目の前の二人に尋ねてみた。
「おれらみたいのなのが……多少、人気取りをしたからって……このへんの人たち……本当に、受け入れてくれるのか?」
 意外に真面目な声だったので、玉木と有働は、顔を見合わせた。
「実際の所、やってみなくては、わかりません……」
 玉木に肘でつつかれて、有働が空咳をひとつして座り直し、荒野の目をまっすぐに見つめて、語り出す。
「この、加納君たちの問題は……つまるところ、潜在的な差別問題なのです。
 確かに、自分の身の回りに、自分とは異質の存在が平然と闊歩している……ということに対する悪感情は……個々人により差があります。正直なはなし、そうした恐怖心やそれと裏返しの蔑視を根底からなくすことは、不可能なのです。
 人間とは……何者かを愛する存在であり、それ故に、何者かを差別する存在なのです……。
 例えば……加納君は、茅君と楓さん、どちらのほうを重要だと思っていますか?」
「茅だ」
 荒野は即答した。
 楓のことも決して嫌いではなかったが……そもそも、楓は、茅を守るために派遣された者で、茅と並立する存在ではない。
 そこまで考えて……荒野は、はっ、と目を見開いた。
「一般人は……そういう考え方を、しないのか?」
 ここまで考えて、荒野は、自分自身が、上から押しつけられた役回りを絶対視していることに、改めて思い当たった。
「そういう考え方、というのが、どういうことを指すのかぼくには分かりません。
 が……」
 有働は、頷きながら、荒野に諭すように、語りかける。
「決して嫌いでないない人の間にも、序列や優先順位を作ってしまう……。
 そのような意識を、加納君が一般人と呼ぶ我々は、愛とか差別とか、呼びます。愛と差別は、表裏一体であり……人間が人間である限り、その感情だけを取り除くことはできません。
 だから……差別意識は、どうあがこうが、根絶できません……」
 いつになく、玉木も真剣な顔をして、有働と荒野のやりとりを見守っている。
「でも……差別意識を取り除くことはできなくても……差別的な言動を、法や制度、あるいは、もっと漠然とした雰囲気として抑制していくことは、十分に可能なのです……。
 また、そのような方向に世の中を変えていくことこそ……ぼくら、若い者の仕事なのだと思います……」
 荒野は、有働の言葉をしばらく頭の中で反芻し、それからため息混じりにこうコメントした。
「君は……有働君は……本当に、いいヤツなんだな……」
 自嘲混じりに、そう思ってしまう。
 ここ数年、世の中の汚物処理のような仕事に追われていた荒野は……否応なしに、「自分一人がどう足掻こうとも、この世界には影響はない……」という、ある種の達観と諦観を持ってしまっている。
 同い年、とはいえ、有働に比べれば……荒野の心は、どうしようもなく老いている……。
 そんな荒野の心理を知らず、玉木は、「さっすがぁ、ジャーナリスト志望!」とかいいながら、有働の背中を平手でばんばん叩いていた。

 その後は、単なる雑談になった。
 別名、その場にはいない共通の知人の品評会。その手の話になると玉木の土壇場といってもよい。ここで荒野は二組のバカップルについての校内の噂話を初めて聞いた。
「……こ、校内ので、やっているのか?」
「あくまで、噂だよ、噂。
 なんでも、夏休み明け頃、プールの更衣室でやり始めたのを、あやうく先生に見つかりかかったとか……」
「そういうのって……日本の学校では、普通のことなのか?」
「そんなわけはないです。特別なことだからこそ、噂話になるわけで……。
 真偽のほどはわかりませんが、その噂が出回り始めた頃、あの二人が公然と付き合い始めたのは事実でして……」
「……そういや、一年のほうのバカップルが公然とベタベタしはじめたのも、夏休み明けからだったな……。
 あっちは前々からあやしい雰囲気だったけど、二学期になったらいよいよ本格的にくっついていた……」
「あの二人は……もともと、お隣り同士で、ずうっと小さい頃からの知り合いということでしたから……。
 仲は良かったですし、なんかきっかけがあれば、いつでもああなるような雰囲気でしたよ、もともと……」
「そうそう。
 一学期の初っぱなから一緒に登校してきてね……。
 どっちも可愛い顔しているから、すぐに学校中で話題になったんだけど……」
 そういう話題になると、二人はとどめもなく話しを転がしていく。
 聞く一方になった荒野は、冷めたコーヒーを啜りながら、「自分が退屈している」という状態を楽しんでいた。
 思えば……荒野が、学校の友人と、このような無駄な世間話に興じるのは、これが初めてなのではなかろうか?

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彼女はくノ一! 第五話 (51)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(51)

「え? 才賀さんが?
 その面白いもの、って、才賀さんと関係あるの?」
 向こうの部屋から、栗田が声だけで舞花にそう尋ね返す。
「そうだよ。
 その面白いものって、才賀さんから頂いたんだ……。今、本人から詳しい説明して貰うから、早く着替えてこっちに来い……」
 どうやら栗田は。舞花のマンションに普段から部屋着をキープしているらしかった。
 できあがったコーヒーを三つのマグカップに分けながら、舞花は栗田のいる部屋に向かってそういい、その後、孫子に辛うじて聞き取れる小声で、
「……話してたの、これとこれに入れて。
 わたしとセイッチで、早速、試してみる……」
 とかいいながら、孫子に向かって悪戯っこじみた微笑みをみせ、ウインクして見せた。
 舞花は、薬を二人で服用しながら、詳しい説明を聞くつもりらしかった。
 ぶっつけ本番を厭わず……というあたりが、なんというか、舞花らしい……と、孫子は半ば呆れながらもそう思い……舞花の指示どおりに、二つのマグカップに持参した小瓶の中身を少量づつ、垂らす。
 ジーンズにポロシャツ、というラフな服装になってキッチンに戻って来た栗田精一は、飯島舞花に向かって、
「で……まーねー。
 その、面白いものって……」
 と、早速聞いてくる。
 舞花が孫子の薬のことを、よほど思わせ振りに、しかも正体は明かさないまま、大袈裟に吹き込んでいたらしい……と、孫子は予測する。
「……まあまあ。
 加納のおにいさんからケーキを頂いて来たことだし、これでも食べながらゆっくり詳しい話しを聞こうよ……」
 そういいながら舞花は、自分でいれたコーヒーを、何の躊躇もなくぐびりと一口飲み込んだ。
 その自然な動作に釣られて、栗田精一も自分の手前に置かれたマグカップに口をつける。
 ……良い度胸だ……と、孫子は舞花の行動を評価した。孫子からの断片的な情報で、自分もろとも実験台にするとは、なかなかできることではない。
 先程、柏あんあがやったように、あるいは、今現在孫子がそうしているように、まずは他人で試してから……というのが、普通のやり方だと思うが……。
 好奇心が強くて一刻も早く自分の身で試したかったのか、それとも、栗田精一一人を実験台にするのが忍び難かったのかは分からないが……飯島舞花の方法は、無謀すれすれの危うさがある……と、そこまで考えて、孫子は、はっ、とあることに気づいた。
 ……栗田精一ひとりを実験台にするのが忍び難かったのなら……そもそも、はじめっから薬についての詳しい情報を提示して、二人で「いっせいのせ」で、服用すればよいのだ。
 と、いうことは……飯島舞花の本当の動機は……。
 おそらく、得体の知れない薬を盛られた、と気づいた時の栗田精一の反応を楽しむこと……なのだろう。
 孫子に安全なものだと聞いた上での、いわば、ちょいとした悪戯心なのだが……。
 それはそれで……いいタマだ……とも、思った……。
「……で、孫子ちゃん……」
 飯島舞花は、目の前のモンブランをフォークで切り分けながら、さりげない口調で切り出した。 
「そのクスリって、本当に毒ではないんだよね?」
 毒、という単語を聞いた途端、マグカップに口をつけていた栗田精一は、げほげほと咳き込みはじめる。
「ええ……。
 決して毒などではないのですけど……使い過ぎると健康を損なう、とは、聞いています……。
 特に、殿方の方は、負担が大きいとか……」
 舞花の意図を、だいたい正確に察した孫子は、その意図に沿って栗田の不安を煽るような言い方を、あえてした。
「……過ぎたるは……って奴だな……。
 どうした、セイッチ? 毒じゃないってはっきりしたんだから、そんなに慌てることないじゃないかぁ……」
 飯島舞花は、そういっていかにも楽しそうに笑いながら、栗田精一の背中をさする。
『……この子……意外に、いじめっ子体質ですのね……』
 舞花の楽しそうな様子をみて、孫子はそう評価する。このような面も、今では本当に親しい人にしか見せない、一種の甘えであり媚態でもあるのだろうが……子供のころは、相当なガキ大将だったのでは……。
 そういえば、子供時代の舞花を知るもう一人の証人、樋口大樹が「まーねー」という呼称を使う時、その語調にかすかな震えが必ず交ざっていたような……。あれは、幼少時の恐怖の記憶、だったのか……。
『……栗田さんも……』
 心持ち青ざめている栗田精一の顔をみながら、よくも、この舞花と付き合っていられるものだ、と、孫子は思った。
「……あの、ど、ど、ど……毒じゃないって……」
 完全にびびりが入って来た栗田精一が、どもりながら、孫子に聞いてきた。
「なんだかわからないけど、それ……これに、入っていたんですか!」
 栗田精一は、掠れた声でそういって、自分で口をつけたマグカップを指さした。
「だから、慌てるな、セイッチ……」
 飯島舞花は栗田精一とは対照的に落ち着き払っている。
「いっしょに、同じクスリをわたしも飲んでいる。
 万が一、何かあった時は……死なばもろともだ……」
 舞花のその言葉を聞いた途端、栗田精一は、今にも泣き出しそうな顔をした。
「もう一度、確認しておきます……」
 そろそろ洒落にならないかな……と、思いはじめた孫子は、栗田に助け舟を出した。
「このクスリは、決して毒ではありません。慣習性も、ないです。
 無害であることは、先程、柏さんのお宅でも実証済みです……」
「ああ。先にそっちで試したんだ……。
 で、どうだった? 結果……というか、実際の効果のほどは……」
「効果は、そう、絶大といっていいでしょうね……。
 なにしろ、あのおとなしい堺君が、わたくしの目の前で柏さんを押し倒してそのままお楽しみになったくらいで……」
「押し倒す? お楽しみに??」
 栗田精一は頓狂な声をあげる。
「だぁからぁ……」
 いつの間にか、飯島舞花が栗田の背後に近づいていた。
「面白いもの、っていっているじゃないか……」
 そして、背後から両腕でがっちと椅子に座る栗田の首と胸のあたりをホールドし、栗田の耳元に口を寄せて、ささやく。
「……び、や、く……。
 えっちな気分になるクスリ、だよ……」
 栗田は立ち上がって舞花の戒めから逃れようとするが、もちろん、その動きは、背後からのし掛かるようにして栗田の動きを制している舞花に遮られる。
「……もう、遅いってぇ……二人で飲んでいるんだからぁ……逃げたって火照る体を持て余すだけだぞぉ……」
 舞花はどこか熱を含んだ声で、栗田にそう囁く。
「……ま、まて、まーねー……これ、ちょっと、洒落になんないよ!」
 栗田の声には焦燥と切迫の色が交ざった甲高いもので、ほとんど悲鳴に近い。
「……時間、どれくらいで効きはじめるんだっけ?」
 それとは対照的に、孫子のほうに顔を向けて聞いて来る舞花の声は、極めてのんびりしたものだった。
「五分、と聞いています。堺さんもそれくらいでしたし……そろそろ、効きはじめる筈ですわね……」
 腕時計を確認しながら、孫子もあくまで冷静に答える。
「あ! ああ! わたし、なんかそんな気になってきた!
 セイッチも、ほらぁ、あんなに元気!」
 舞花が栗田の股間のあたりねっとりとした視線をはわせながら、弾んだ声でそんなことを叫びはじめる。

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「髪長姫は最後に笑う。第五章(92)

第五章 「友と敵」(92)

「志しは、ありがたいけどな……」
 荒野は確かに、この少年には珍しく感激していた。が、だからといって、その感情に捕らわれて、判断を見誤ってはいけない、と、自戒する。
「正直……非常に、いいにくいんだが……冷静に、客観的に考えて……そこまでの影響力を……君たちが持てるとは、思えないんだ……」
 確かに、玉木と有働が主導する放送部は、学校の部活とは思えないほどの行動力を持っている、とは、思う。
 しかし、それはあくまで、「学校」という特殊な閉鎖社会の中では、という条件付きでの「破格」であり……その外部の一般社会にまで影響を及ぼすほどの存在ではない、と、荒野は見ている。
 そのことを荒野が丁寧に順を追って説明すると、有働と玉木は顔を見合わせて、頷きあった。
「……普通に考えれば、確かにそうなんですが……」
「カッコいい荒野君は、ひとつ忘れていることがあるよ……」
 有働の言葉を引き取る形で、玉木が断言する。
「今の世の中……可愛いが正義なのさ!」
 荒野の目が、点になった。
「年末、茅ちゃん、楓ちゃん、孫子ちゃんの三人で、年末あれだけの人を集められたの、まさか忘れたわけではないでしょう。それに加えて、今では将来有望なロリッ子が三人も加わっているんだよ! それも、今までの三人に負けず劣らずの上玉揃いが! 彼女らが定期的に商店街に人を集めてくれれば、少なくとも商店街の人達は、君達の味方さ!」
 ……なんてこった……。
 と、荒野は思った。
 経済的な環境の向上に貢献することにより、地元に足場を築く……。
 嫌々に、ではあるが……羽生譲に先導されて、今までやってきたこと、そのままではないか……。
 それを……今度は、荒野たちの長期的な利益のために、自主的自覚的に行え、と、言われているわけで……。
 荒野は、認めたくなかったが……確かに、効果はあるのだ。
 百の言葉を連ねてこちらの窮状を訴えたり、奇麗事を並べるよりも……確実に客足を呼び寄せてくれる招き猫になるほうが……地元には、ずっと、受けがいい筈であり……。
「それに加えて、パブリック・イメージ、というのもあります……」
 有働が、冷静に付け加える。
「普段から地元のために働いているけなげな美少女と、それを襲うとする、得体の知れない他所者……。
 応援したくなるのは、どちらだと思いますか?」
 有働の言葉は一見唐突なようだが……一族がらみの抗争が表面化した際、この地域住民の反応を予測しているのだと仮定すれば……頷けるものが、ある。
 有働は、こういっている。
 来るべき……荒野たちの異常性が周知のものとなる未来に備え、普段から、今以上に周辺に顔を売り、「いいイメージ」を与え続けろ、と……。
 それなりに理に適っているし……「周辺住民を味方にする」という目的にも沿っている……指摘されて見れば、確かに、これ以上はない妙手なのだが……。
『……おれ一人で考えていたんじゃあ、逆立ちしたって出てこない発想だよな……』
 荒野は、自分の考え方や視野が、いかに狭い枠内に捕らわれていたのか、そのことを思い知らされた気がした。
 荒野はそれまで、一族の中ではそれなりに柔軟な発想をするほうだと自認していたが……。
『でも……所詮……』
 それでも、まだまだ料簡が狭かったようだ。
 それまで荒野は……自分たちの正体をひた隠しにし、敵の襲来があれば、これを撃退する……ということくらいしか、考えてこなかった。
 が、一般人の、それも、年端もいかない有働と玉木は……その発想を軽く越えて、「正体がばれても支障がない環境を作り、そのうえで、攻撃してくるものがあれば、堂々と撃退しろ」と、いっている……。
「……年末のイベントはさぁ、それこそ、商店街の人達と羽生さんのお手製でしょ? それでも、あそこまでいったんだよね……。
 でも、今度は……放送部も、それにトクツー君の頭脳や設備も使えるんだよ! 囲碁勝負の実績を考えれば、ネットでの展開も万全だよね!
 メディアと技術力と資本が集中したら、例え君達の一族でも滅多に手が出せない環境が作れるって!」
 玉木が、テーブルの上を拳で叩かんばかりに興奮してまくしたてる。
 その熱気にあてられた、というわけではないが……荒野は、なんとなく楽観的な気分になってきた……。
「……そういわれると……なんか行けそうな気がするけど……。
 とにかく重要なことだから、もうちょっと考えさせてな……」
 荒野はようやく、それだけの言葉を絞り出す。
 今ここにはいない茅の意見を、しきりに聞いてみたくなった。
 実は、考えるまでもなかった。
 今までの経緯からしても……楓と孫子、それに、荒野と茅の顔は、商店街と学校を中心にして、既にある程度知れ渡っている。
 この先……荒野たちの異常性が知れ渡る可能性が有る限り……その知名度を、プラスの方向性に変換するよう、努めるよりほかないのだ。
『市民に愛される忍、を、目指せ……だって?』
 悪い冗談だ、と、荒野は思った。
 半年前の荒野なら、躊躇なく笑い飛ばしたろう。
 でも……今では、気軽に笑い飛ばせない。正体がばれれば、また新しい土地で一からやり直す……というのよりは、よほど、魅力的だった。
 魅力的であるからこそ、荒野は抵抗を感じている。

 効果的なのは理解できたが……それは……それまで荒野の、一族の一員としてのアイデンティティを、根底から否定するアイデア、でもあった。

 そんなことを話している間に食事も終わり、
「まだ食えるか? 食えるなら、ケーキ出すけど……」
 と、荒野が誘う。甘い物に対する食い意地が張った連中が多いので、ケーキは多めに二十個ほど買って来ている。
 玉木も有働も断らなかったので、荒野はマンドゴドラのロゴがはいった包装紙を剥ぎ取り、ケーキを取り出した。それから不意に同じマンションに住む飯島舞花のことを思い出し、
「……ついでだし、声をかけてやるか……」
 と、携帯を手に取る。
 ちょうど暇だったのか、呼び出し音ひとつで舞花は電話に出た。
「玉木と有働が来ているから、一緒にケーキを食べないか」
 と誘うと、
『ああ。ごめん。もう少ししたら、うちにお客さん来る予定なんだ!』
 と即座に断られる。
「お客さん? 栗田君もいっしょでいいぞ」
 荒野が重ねて誘うと、
『セイッチは、家ではお客さん扱いしないなぁ……。
 もう一人、来客の予定があるんだ……』
 舞花は、この少女には珍しく、言葉を濁した。
「……そうか。
 じゃあ、一度こっちに来て、ケーキだけでも持って行け。どうせ余っているんだ……」
 荒野が深く追求せずにそういうと、舞花は、
『うん。そうさせて貰う。今すぐ、取りに行くから……』
 といって、通話を切った。

 三分もしないうちに舞花は荒野たちの部屋にやって来て、
「……おにいさんと、有働君と、玉木、かぁ……。
 なかなか面白い組み合わせだな……」
 と感心し、荒野が取り分けた三人分のケーキの小皿をお盆に乗せてラップしたものを持って、すぐに背を向けた。
 慌てていた、というわけではないが、いつもとは違い、舞花の様子には、どことなく落ちつきがなかった。
 そのことをいぶかしく思いながら、荒野はその背中を見送った。

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彼女はくノ一! 第五話 (50)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(50)

 柏家から退出すると、孫子は狩野家の方向に向かう。
 帰る前に一度隣りのマンションに寄って、飯島舞花に薬を手渡すつもりだった。歩きながら手早く舞花宛にメールを打ち、「これからそちらに向かう」旨、通告する。舞花からはすぐに、「了解。歓迎」という意味の短い返信がきた。
 どうやら、舞花は、今すぐにメールのチェックと返信ができるくらいには、手が空いているらしい。栗田精一も舞花と一緒にいるのかどうかまでは、そのメールには記載されていなかった。
 その辺は実際に舞花のマンションに着いてみればわかることなので、孫子は特に気に留めもしなかったが。
 メールのやり取りをする時に携帯を確認すると、午後三時に近い時刻になっていた。そういえば、今日はまだ昼食をとっていない。
 一旦何事かに取り組みはじめると日常の雑事まで意識が回らなくなる、という傾向が、孫子にはあった。それは、言い方を変えれば人並みは外れた集中力がある、ということなのだが、反面、地に足がついていない、ともいえる。
 孫子にしてみれば、狩野家に住むようになるまでは、数人の使用人が絶えず張り付いて日常の細々とした用事を先回りして片付けるのが当たり前のことだった。そんな環境で育った孫子は、自分が興味を抱けることのみに邁進していればいい、という姿勢が、骨絡みになっている部分もある。
 また、周囲が見えなくなるほどの集中力、は、スナイパーにとしては有利な条件でもあったから、孫子の保護者である鋼蔵も、孫子のそうした性向を「是」とした部分もあった。
 そして現在、孫子が鋼蔵の命を受け、狩野家に下宿しているのは、孫子のそした性向が「行き過ぎた」と鋼蔵が判断したためであり、孫子自身も、たしかに、狩野家に預けられてからこっち、少しづつ変化してきている部分もある。
 孫子自身は、その変化にあまり自覚的ではなかったが。

 マンションに着くと、エントランスで、日曜だというのに何故か学校の制服を着用し、通学カバンを手にした栗田精一とばったりでくわした。
 挨拶を交わしてから、
「あなたも、飯島のところに?」
 と孫子が尋ねる。
 たしか栗田は、昨夜も、例によって、一晩舞花のところに泊まっていると思ったが……。
「ああ。
 ええっと……なんだか知らないけど、まーねー、じゃなくて、飯島先輩、昼頃いきなり一旦帰ってもう一泊する準備してこいっていいだして……」
 栗田精一が飯島舞花に逆らえない、という噂は本当だったらしい、と、孫子は思った。もっとも、そんな力関係は普段の彼らを見ていれば、誰にでも判断できそうなものだが。
「……才賀先輩は、加納先輩の所ですか?」
 今度は、栗田精一が孫子に尋ねる。
 飯島舞花は、玉木や有働のように、荒野から詳しい事情を聞かせれている訳ではなかったが、前後の状況からなんとなく事情を察し、あえて詳しいことを聞かない、という態度を貫いている。
 舞花は、一見大ざっぱにみえて、以外と勘が鋭く、気配りも細やかだったりするのだが、舞花とつきあっている栗田のほうは、逆に意外に鈍感で、ものが見えていない節がある。
 いや。
 栗田のほうが、むしろ、普通……というか、年齢相応、なのか……と、孫子は慌てて思い直す。
 舞花が栗田と付き合っているのは、単純すぎてかえって裏表がない栗田の性格を気に入っているからではないか、と、孫子は考察した。
 舞花自身、感受性が鋭く気を使う性格だから、こういう相手の方がかえって楽なの知れない、と、孫子は思う。
 飯島舞花は、孫子がこの土地に来てから一番親しくしている友人であり、栗田のことはさほどよく知らない孫子でも、舞花の心理については、容易にトレースすることができる。
 確か、舞花の両親は、舞花が幼い頃に離婚していて……舞花の鋭さと気配りは、その幼少時の経験が、培ってきたものなのだろう。
 舞花は……おそらく、親しい人たちが反目したり、仲たがいしたりすることを、極端に恐れている……普段の仕切り屋体質は、そうした心理の反映ではないか……。
 たしかに、そうした舞花にしてみれば、体育会系で心理の裏を読む必要の栗田精一は、一緒にいて楽な筈だった……。

「……なんだ。一緒に来たのか……」
 入り口の扉を空け、孫子と栗田が並んでいるのを見て、飯島舞花はつまらなそうにそういった。
「……セイッチ、驚かせようと思ったのに……」
 どうやら、栗田には事前に孫子の来訪を告げず、いきなり鉢合わせさせて反応を楽しもうとしていたらしい。
 確かに、孫子が舞花のマンションを訪れるのは珍しく、これが初めてだった。特に用事がなかった、ということもあるが、それ以上に週末はたいてい栗田が来ているので、二人の関係を知る者は、気軽に遊びに来にくい、ということもある。
「ええ……。
 下の、エントランスで鉢合わせいたしまして……」
「まあ、いいや。
 とりあえず、はいってよ。
 加納のお兄さんからケーキのおすそ分け貰った所だし、今、お茶いれるから……。
 お茶、というか、コーヒーだけど。茅ちゃんの紅茶飲み慣れていると、ティーバッグの紅茶だすわけにもいかないもんなぁ……」
 舞花の言葉どおり、キッチンの方からコーヒーの香りがただよって来ていた。事前に孫子がメールで知らせていたので、タイミングを図って入れてくれたらしい。
 栗田精一が「お邪魔します」ともいわず、玄関で靴を脱いでズカズカと上がり込む。慣れている、というより、週末毎に泊まりにくる半同棲のような感じだから、他人の家、という感覚がないのだろう。
「……で、まーねー。
 なんなの、その……手に入りそうな、面白いものって……」
 栗田はそんなことを言いながら、奥の部屋に入っていった。
 孫子も、栗田の後を追うようにして舞花のマンションに入って行く。
 荒野たちのマンションとほぼ同じ間取りの2LDKで、孫子と舞花はキッチンのほうに、栗田はその奥の部屋へと向かって行く。キッチンのテーブルの上には、こぽこぽ音をたてて作動しているコーヒーメーカーが置いてあった。
「……それなー……。
 細かいことは、おいおい説明するよ。ちょうど、孫子ちゃんも来てくれたし……」

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髪長姫は最後に笑う。第五章(91)

第五章 「友と敵」(91)

「そういや、お前ら、昼飯食った?」
 自分の住むマンションに入るなり、荒野は玉木と有働にそう尋ねる。なんだかんだで荒野自身の昼食がまだだった。
「いんや。まだだけど……。
 てか、今日は一時間前に起きたばっかだから、まだなんも食べてない……」
「ぼくも、お昼はまだです」
「……玉木は不健全な生活態度を改めた方がいい……」
 荒野はそんなことをいいながら、商店街で買い漁った荷物を手早く収納し、愛用のエプロンを身につける。
「じゃあ、ケーキの前にメシだな。ご飯は炊くのに少し時間がかかるから、麺類でいいか?」
 そう確認してから、上海焼きそばを作り始める。ちょうど、麺や野菜を買ってきた所だし、冷凍庫には剥き身の冷凍エビもあった。
 チンゲン菜を一口大に切り、良く熱した中華鍋に挽肉を放り込み、よく火を通してからとニンニクのみじん切りと冷凍エビ、切ったチンゲン菜も炒め合わせる。それから、ほぐしておいた麺もいれ、全体に火が通ったなというところで、粉末の中華スープの素をお湯にといてスープをいれ、オイスターソースをほんの少し鍋に直に垂らす。それから調理酒を少し多めに入れて、煮立った所で蓋をして少し蒸らす。
 ごく短時間の間に手慣れた動作でそれだけのことをして、出来上がったものを三つの皿に盛ってテーブルの上に配膳とすると、玉木と有働は目を丸くしていた。
「……どうした?」
「荒野君、プロの料理人になったほうがいいよ……」
 玉木は、呆然とそんなことをいう。
「……お前さんが料理をしない、ということは、今の一言でよーくわかった……」
 そういやこいつ、前にも食中毒がどうのこうと言ってたっけ……と、荒野は思い出す。
 ……今後、玉木がなにか食べ物を作った時は、理由を作って口にしないようにしよう、と、荒野は決意する。
「ま、せっかく作ったんだし、冷めないうちに食ってくれ……」
 エプロンを外しながら荒野がそういうと、思い出したように玉木と有働は箸を取る。
 食事をしながら、玉木と有働は昨日の帰り道に語り合ったことを荒野に告げ、荒野の方は、どうやら新たな干渉がはじまったらしいことを、二人に告げる。
 奇しくも、別々の原因から、「この周辺の住人を、完全に荒野たちの味方にする」という同一の目標が導き出されたのを確認しあった形だった。
「お前らがそういうこといってくれるのは、嬉しいけどな……」
 荒野は、玉木と有働の決心を聞いても、感涙にむせぶ、ということはなく、淡々と受け止めていた。
「だけど……そういう大変なことをお前らが実際に出来たとして、だ……。
 仮に成功したとしても、おれたち、お前らに形のあるものでお礼できないぞ……」
 まともな報酬や謝礼は出せない、と、釘を刺した形だ。
「そんなことはありません!」
 普段は大人しい有働が、いったん箸を置いて、荒野のほうに身を乗り出した。
「あ。すいません。大声出して……。
 でも、違うんです。玉木さんはどうか知らないですけど、ぼくのほうは、ちゃんと見返りのことも考えてます。たしかに大変な仕事ですが、絶対、ぼくは損しません!」
「……そうは、いうがなぁ……」
 荒野は、いつもとは違う有働を、まじまじと観測する。玉木にとってもこういう有働は珍しいのか、玉木も目を見開いて成り行きを見守っていた。
「……実際、おれら、君たちにあげられるものないし……。
 それに、おれら、来年三年だろう? 受験とか、そっちのほうで忙しくなるんじゃないのか? 普通?」
「受験」という単語が出ると、玉木の顔は覿面に強ばったが、有働の方は平然としていた。
「成績に関して言えば、ぼくのほうは、ぜんぜん問題ありません」
 有働はそう言い切った。マンドゴドラで玉木が言っていた「成績優秀」というのは、どうやら本当らしい。
「それよりも、です。ぼく、ジャーナリストを目指しているんです。日本の既製のマスメディアに就職したい、とかいうのではなく、本物の、現場の人間に……今現在、どこかで起こっている、報道すべき事件なり出来事なりを、広く伝える人になりたいんです。
 その目の前に、加納君、君たちという特ダネが、不意に現れたわけです……」
 いきなり「特ダネ」扱いされた荒野は、瞼を忙しく開閉させた。
 荒野は……自分たち一族のことを、そんな風に考えたことはなかった……。
「加納君……。
 君は、将来一族から抜ける可能性もある、といいましたね?
 それって、つまり、汚い仕事をそれ以上やりたくないっていうことでしょ?
 それに、茅ちゃんとか、あの子たち……あの子たちにも、そのまま汚い仕事をさせるつもりですか?
 加納君が自分で、そういう仕事を選択するのなら、ぼくらがとやかくいう筋合いではありません。でも、嫌がっているのなら……ぼくらは、君たちがこれから先、そういう仕事に手をつけないでいられるような環境を、整えます……。
 まず、学校とかこの近所から初めて……加納君のような一族の人たちが、身分や自出を偽らずに住めるような場所を、作ります……」
 荒野は瞼に続いて、今度は口をぱくぱくと開閉させはじめる。言いたいことは山ほどあるのだが……なかなか、言葉が出てこない。
「何年かかるかわかりませんが……それが成功したら……たった今からその時までの、加納君たちの記録の公開させてください。
 将来の、取材権独占、というのが、ぼくの見返りです……」
 荒野が金魚よろしく口をパクつかせている間に、有働勇作はそう締めくくった。
 玉木が、「わはははは……」と乾いた笑い声を上げはじめる。
 その笑い声の調子を聞いて、玉木にしても、有働がそこまで大きなことを考えているとは思っていなかったようだ……と、荒野は判断する。
「お前ら……」
 荒野は俯いて目を閉じ、軽く瞼を揉みながら、ようやくそういった。
「……本当に……本気で……。
 いいやつ、なんだなぁ……」
 玉木や徳川篤朗の存在にも驚かされたが……この有働も、地味にみえて、なかなか凄いヤツなんじゃなかろうか……と、今更ながらに、荒野は認識を改める。
「……あったり前だよ……有働君は、わたしが見込んだ子だもん……」
 玉木は、そういって笑い続ける。

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彼女はくノ一! 第五話 (49)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(49)

 孫子が他人の性行為を間近に目撃するのはこれで二度目になる。
 が、一度目の、楓と香也の交合を見た時に感じたぎこちなさが、今の二人からは感じられない。なんだか、やりなれた行為をスムースに処理しているような安心感があった……。
 孫子がそんな感想を心中でしたためている間に、衣服越しに局部を擦りつけるだけでは物足りなくなってきたのか、堺雅史はついに柏あんなのベルトに手をかけた。
 堺雅史はもはや完全に媚薬の影響下にあり、組み伏せている柏あんな以外の存在を意識の外に追い出しているらしい。
 堺雅史がベルトのバックルに手をかけると、当然、まだしも理性が残っていた柏あんなは、弱々しく、ではあるものの、抵抗をした。
 しかし、孫子があんなとまともに目を合わせ、小さく、
「いいのよ、遠慮なさらないで。わたくしのことは、いないものだとお思いになって、存分に」
 といってあでやかな微笑み浮かべたもので、あんなは観念して目を瞑り、雅史のなすがままになった。
 もちろん、孫子の端然たる態度に感じ入って、という理由からではなく、ろくな愛撫もなしに雅史の指があんなの「中」に侵入してきたから、である。
 ベルトを緩め、ジッパーも半分ほど下げた状態で、堺雅史は左手で柏あんなの頭上で柏あんなの両手首を掴み、あんなの両足の間に自分の体を割り込ませて身動きを封じている。そして、こころもち上体は離し気味にして、代わりに半ば開きかけた柏あんなのジーパンのジッパーの中に右手を挿入している。
 雅史に探られる感触で初めてそのことに気づいたが、あんなの「そこ」は、すでになんの準備もなしに、雅史の指の侵入を許すほどに濡れぼそっていた。
 慣れた手つきであんなの内部に侵入させた雅史の中指と人差し指が襞をかき分ける感触。
 あんなは、今まで何度も受け入れてきた行為を孫子という知り合いの前で行っている、という異常なシュチュエーションに対してたまらない羞恥心を覚えながら知らず知らずのうちに、「んんんんっ!」と強い調子の声を上げてしまっている。
 あんなの体は、強引な雅史の愛撫に、明らかに応えようとしていた。
 孫子はハーブティを口にしながら、冷静に二人の様子を観察している。
 好奇心やその他の興奮ももちろん感じているわけだが、それ以上に、もともと孫子の役割はシルヴィに渡されたクスリの効能をこの目で確認することだ。だから、目を反らしてはいけない……と、孫子は自分自身に言い聞かせている。
 そうこうするうちに雅史はキスをしながら、あんなの服をほとんどはぎ取っていた。もはやあんなの上半身を隠す物は辛うじて体にまとわりついているブラだけ、それも、大きく上にずらされて肩のあたりにある状態だから、完全に下着としての機能を喪失している。堺雅史はあんなの股間に手を入れて動かしながら、口やら鎖骨やら胸やらに忙しくキスの雨を降らせている。その際、雅史の体が離れた時に、あんなの未だ色素の沈殿がほとんどない、綺麗な色の乳首が孫子からは覗き見ることができた。あんなの体はいまや全身朱色に染まり、性的な興奮を覚えていることは確実で、時折、ゆっくりと首を左右に振る以外は、抵抗らしい抵抗をしていない。それどころか、雅史の顔が近づいてくると、自分のほうから舌を突き出してキスをねだったり、大股を開いてもぞもぞと雅史の手が入っている場所をもぞもぞと動かしたり、と、明らかに雅史を迎え入れる体勢が整った、という兆候さえ、観測された。
 あんなは、薬剤など使用しなくても一度興奮を覚えると、抑えが効かなくなる性質らしい……と、才賀孫子は観測する。だからといって、軽蔑する気にはならなかったが。相手は見ず知らずの男ではなく、相思相愛の相手であり、だから、柏あんなを抑制する要素は、第三者である孫子がその場にいる、というただ一点のみ、なのである。
 そして、その程度の異常性なら、抑制、ではなく、逆に、性的な興奮を誘導する要素として転換する。
 いわゆる、普段は抑制された被視姦願望の表出、というヤツだが、人間なら誰しも、その程度のアブノーマルな嗜好は潜在的に持っている……ということを、孫子はシルヴィ・姉から学んでいた。いや、半ば強制的に、学ばされていた。
 だから、長々とキスをした後、あんなが完全に理性を失った瞳で、
「もぉ……欲しい……」
 といって、自分から腰を浮かしたのをみても、孫子は特に驚かなかった。
 雅史があんなの求めに応じて下着ごとジーンズをずり下げる。同時に、あんなは雅史の股間部に手をやって、じじじじじ、と、雅史のジッパーをゆっくりと下げ、開いた部分に指を突っ込んで、すっかり元気になった雅史自身を外に出した。
 あんなの下腹部の茂みは孫子自身のものより控え目な面積で、雅史の男性器は体格に似ず、随分大きいように、孫子には思える。とはいっても、孫子は怒張した男性器を見るのはこれで二度目、しかも、一度目は別のこと、屈辱感で意識を占められており、詳しく観察したり記憶したり、という精神的余裕はなかったので、かなり漠然としたイメージしか記憶していない。
 それでも、ひさしぶり、かつ、二度目にみるそそり立った男性器はいかにも禍々しい形状をしている、と、孫子は改めてそう感じた。
 掴んだ雅史自身を自分の茂みに導いているあんなと、ふと目が合い、その瞬間、あんながどこか誇らしげな微笑みを浮かべたのを、孫子は確かにみた。
 しかし、雅史があんなの上に覆い被さり、しずしずと体を沈めていくとあんなも孫子の事など気にしている余裕がなくなる。痛みを堪えるように眉間に皺を寄せ、「んんんんんっ!」と呻き、雅史の腰が完全に沈むと、下から腕を廻してがっしりと雅史の胴体に抱きついた。
 雅史は、そんなあんなの様子には頓着せず、ず、と、一挙動で腰を引く。と、あんなが「ひっ!」と悲鳴に近い声をあげ、雅史の背中に廻した手を蠢かせる。
 この体位、この角度だと、もちろん、孫子からは結合部を望むことはできない。以前、強制的に見せつけられた苦い経験があるので、孫子のほうも座る位置を改めてまで見たいとも思わないが。
 再び、雅史は、腰を打ちつけ、そして、引く。その度に、あんなは、「あん!」とか「ひゃん!」とかいう小さな叫びを上げる。
 雅史の動きが速くなるにつれ、あんなの様子からも余裕がなくなっていく。
 あんなの口から漏れる声はすぐに「あ、あ、あ、あ、あ……」という一続き連なる嬌声となった。それ以外に、雅史が動く都度に、じゃっ、じゃぁ、じゃぁ、という水音がする。
 雅史は口を半開きにして愉悦の表情を浮かべ、黙々と単調な動きを続けている。
 やがて、あんなの声が、
「……あー、あー、あー……」
 という尾を引くものになり、それがさらに、
「……駄目、駄目、駄目っ!」
 に、さらにさらに、
「行くの行くの行っちゃうの……」
 へと変化する。
 どうやらあんなは、自分の言葉で昂ぶっていく性質があるようだ、と、孫子は観察した。
 あんなの昂ぶりに刺激されたのか、忙しくピストンを繰り返している雅史の背中もそれまでにない震えを伴いはじめた。
「……駄目! 中は駄目!」
 雅史の頂点が近いことを敏感に察したあんなは、下から渾身の力を込めて雅史の体を突き飛ばす。
 突き飛ばされてあんなから離れた雅史は、そこだけ露出した肉棒の先端から凄い勢いで白濁液を射出しつつ、尻餅をついた。
 はぁはぁいいながらぐったりと横たわるあんなの裸体に、雅史の射出した精液が降り注ぐ。
 尻餅をついた雅史は、「今し方、自分のした行動が信じられない」といった表情をして、やはり荒い息をついていた。

「……今日は、本当にいいものを見せて貰いました……」
 呆然とした様子で息を整えている二人を前に、孫子は立ち上がって優雅な挙動でお辞儀をする。
「それでは、わたくしは、そろそろおいとまさせていただきます。
 ごきげんよう……」
 そして、孫子はあんなの部屋から出て行った。
 柏あんなも堺雅史も、孫子のほうに顔を向けさえしなかった。
 おそらく、自分たちの気持ちの整理をつけるのに忙しかったのだろう。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(90)

第五章 「友と敵」(90)

 ちょうどいい時間になっていたので、一度家に帰って昼食を済ませてから残りの買い物をしようかとも思ったが、一人でマンションに帰ると、また外出するのが面倒になると思い直し、結局、そのまま商店街に直行することにした。ひなびた商店街、といえども休日にはそれなりの人出がでるので、自転車は商店街から少し離れた適当な場所に停めておき、荒野だけがアーケードをくぐる。
 先週の食生活は玉木がお隣りの狩野家にほぼ日参していた関係で、魚介類を普段の倍くらいは摂取したような気がするから、今日は保存の効く野菜類と肉、それに、最後にマンドゴドラにいってケーキを多めに持ち帰るつもりだった。三人組が一泊したおかげで食料の備蓄はほぼ払拭していたし、今日の検査の帰りに三島百合香やあの三人組がマンションに寄る可能性も十分にあり、その準備もしておいたほうがいい。
 そんな事を考えながら荒野は、立ち寄る店の順番を瞬時に判断し、その合理的な道順に従っててきぱきと買い物を済ませていく。途中、うお玉のおやじさん、つまり、玉木珠美の父上にも呼び止められたが、二、三、言葉を交わした後、「また、明日にでも買いに来ます」と頭を下げて次の店に移る。うお玉の店主は、「今度来たときはおまけするよ」といって荒野を開放してくれた。
 食材のビニール袋を体中にぶら下げたような恰好の荒野は、一度自転車に戻り、荷物を前の籠と後ろの荷台に振り分け、荷台においた物は落ちないように紐でしっかり縛り、マンドゴドラまで自転車を押していく。
 マンドゴドラは商店街のアーケードのはずれから、さらに奥まった、この辺の地理に明るくない人なら、まず間違いなく迷うような場所にあったが、幸か不幸か、その「この辺の地理に明るくない人なら、まず間違いなく迷うような場所」というのが、荒野の通う学校から荒野の住むマンションの通り道上であったりする。
 今日は日曜日の昼間ということで、学校の制服を着た通行人は流石にいないようだったが、マンドゴドラの入り口近くに荷物を満載した自転車を停め、ふと顔を上げると、喫茶室のカウンターに座っている玉木と目が合った。おまけに、その隣には有働勇作まで座っていて、実に幸福そうな顔をしてフォークを手繰っていた。そのごつい外観に似合わず、有働は荒野と同じ甘党らしい。
 荒野は店の中に入り、顔見知りのバイト店員に会釈して、ケーキを二ダースほど梱包するよう頼んでから、喫茶室のコーナーに移動する。目があって、挨拶もなしに店を出る、というのも、ことさら無視しているようで抵抗がある。
「お前ら……いつも一緒だな? つき合ってるのか?」
 カウンターの座席に腰掛けながら、挨拶もそこそこに、荒野は玉木にそう声をかける。
「まっさかぁ……。
 父上からカッコいい荒野君がお店に顔を出したという連絡が入ったので、急いでここにきて、待ち伏せしていたのだよ……」
 玉木はにこやかに笑いながらそう答えた。
「まっさかぁ……って、有働君に失礼じゃないのか? それ……。
 それに、お前の所の店では、知り合いが来る度に家族に連絡する習慣があるのか?」
 荒野は不機嫌な声で玉木に対応しはじめる。
 ……買い物帰りに必ずこの店に寄る、と、読まれている時点で、何気に気まずい。
「だからさ、わたしなんかと有働君じゃ、有働君に悪いっての。
 有働君、見かけによらず、成績優秀スポーツ万能な優等生なんだから……」
「その、見かけによらず、という断りをいちいち入れるのも、失礼だ……」
 何故か玉木が相手だと、漫才風の掛け合いになりがちである。
「で……おれをみたら連絡するように店長さんに頼んでたのは? なんか用事でもあるのか?」
「それそれ……」
 玉木は、ぽん、と柏手を打った。
「特に緊急の要件というわけでもないのだが……荒野君には、話しておきたいことがあってね……。
 実は、昨日の帰りに有働君と話したのだが……」
「……まて……」
 玉木が急に表情を引き締めたのをみて、荒野はいったん玉木の話しを止めた。
「込み入った話しなら、ここよりもおれのマンションに場所を移してからにしよう。
 荷物持ちをやらせてやるから光栄に思うように。おまけに、ケーキの一つや二つ、御馳走してやる……」

「へぇ……じゃあ、茅ちゃんとあの三人は、留守なん?」
「ああ。先生が、近くの病院だか診療所だかに連れて行っている……」
 有働は無口、というわけではないか、玉木と一緒にいるときは、極力出しゃばらずに玉木にしゃべらせる方針のようだった。
 三人で肩を並べて歩いていても、会話をするのは専ら荒野と玉木だけだった。
 その荒野は、荷物を満載にした自転車のハンドルを手で押し、マンドゴドラで梱包して貰ったばかりのケーキの箱は、有働勇作に持って貰っている。
「なるほどな……あの子たち境遇だと、そういうのもやるのか……」
「じじいの指示でな。
 あの三人のことは知らないけど、茅は今までにも身長、体重、視力、血液検査くらいは定期的にやってたし……。
 今回は、人数が増えたからか、それより少し詳しくやるそうだ……」
「寂しい? 茅ちゃんがいなくて寂しいですか? カッコいい荒野君?」
 ……未樹さんといい、この玉木といい……どうしてそういう話しになるのか……。
 と、荒野は思った。
「学校にいる時は、いつもずっと離れているだろ……。
 それと同じで、特に何ともないよ……あの三人が一緒なら、滅多な事はないだろうし……」
「いやそういう事じゃなくってさぁ……」
 玉木は荒野の顔をまじまじと見て苦笑いをした。
「……なんてのかな……。
 茅ちゃんとカッコいい荒野君、わたしの中では二人で一組なんだよね……。
 イメージ的に……」
 そういわれても……荒野は、どう反応すればいいのか……しばし、考え込んでしまった。

 玉木と荒野の三人で肩を並べてマンションに入ると、飯島舞花と栗田精一の二人とばったり出くわした。同じマンションに住んでいるわけだから、出くわしてもおかしくはなかったが。
 玉木と舞花は出会い頭に「おー!」と小さな叫び声をあげて平手をぱちんと打ち合わせた。
「どうだい、舞花ちゃん? 昨日もお盛んで激しかったか? ん?
 ……って、ミニラ先生の真似」
「似てない。
 おうおう、お盛んで激しかったぞ。なんなら回数いってやろうか? ん?」
「回数はいらん。
 そうかそうか。相変わらず仲がよろしくて結構なことだ。
 で、栗田氏はこれからご帰還か?」
「いったんな。
 今日は、夕方にまた来て明日、こっちから直接登校する予定だが……いったん、着替えを置いて学校の道具とか制服取りに帰らせるところだ……」
 ……周囲公認の学生カップル、というのも、これはこれでやりにくいものなのかも……とか思いながら、栗田精一のほうをみる。
 目が合うと、荒野のいいたそうなことは大方想像がつくのか、栗田精一は何事か悟ったような顔をして、肩をすくめた。あるいは、同性からそのようなまなざしでみられることに、慣れているのかもしれなかった。

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彼女はくノ一! 第五話 (48)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(48)

「ええっと……な、なに?」
 ティーカップを口の前まで持って来た堺雅史は、柏あんながまじまじと自分の顔をみつめているのに気づき、困惑した表情で尋ねた。
「い、いえ! 別に……。
 お味のほうはどうかなぁ、って……」
「どうって……まだ飲んでいないんだけど……」
 堺雅史は探るような目付きであんなの表情を読もうとする。
 態度が、露骨に怪しい。
「そ、それじゃぁ、香りのほうは……」
「……うーん……いつもの、ハーブティだと思うけど……」
 柏あんなの姉、千鶴は、目新しい食材を試すのが好きな関係で、ハーブティも柏家では他の家庭よりもなじみがある。真っ先に、そうした千鶴の好奇心の実験台になるのは、あんなと堺二人なのである。
 堺雅史は、あんなの様子に不穏なものを感じながらも、ぐびり、と、一口ハーブティを嚥下した。あんなの態度に気を取られ、一見関心無さそうな表情の才賀孫子が、時折ちろちろと堺雅史に視線をやり、さりげなく観察していたことにも、雅史は気づいていない。
「……うん。やっぱり、そんなへんな味、しないよ……」
 へんな味、といえば、ハーブティというのは、香りや効能のために喫するもので、もともと味は二の次になりがちなのである。「口に快いハーブティ」というものももちろんあるが、普段、千鶴の実験台にされている雅史にしてみれば、よほどひどい味でなければ「へんな味、しないよ」ということになる。
 事実、今回のハーブティも、「うまいかどうか?」と聞かれれば返答は微妙なものになるのだが、「へんな味」といわれても、取り立てて苦かったり飲みにくかったりするわけでもなく、やはり「へんな味、しないよ」としか、答えようがない。
『なんか……特別なブレンド、とか、だったのかな?』
 いまだに客の孫子をそっちのけで自分のほうを観察し続けるあんなの様子を不審に感じつつ、堺雅史は無理やりそう穏当な解答を用意し、納得することにした。
 もちろん、それは早計な判断というものだったわけだが。

 しばらく、孫子を交えて三人の談笑が続いた。
 やはり共通の知人が話題にしやすく、自然に、飯島舞花や松島楓の話しが出て来る。舞花はあんなと、楓は雅史と同じクラブに所属していて、その二人と孫子は、かなり親しい、といってもよい間柄である。

 五分ほどそんな世間話を続けると、堺雅史がもぞもぞ体を動かし、
「……な、なんか、暖房効き過ぎていない?」
 と、いいだした。
「……そう?」
 柏あんなは素っ気ない風を装ったが、眼光が一瞬だけ鋭くなった。
「じゃあ……ちょっと、温度下げるね……」
 エアコンのリモコンを取り、ぴぴ、っと設定温度を設定し直す。
 さらにしばらくすると、堺雅史の頬がうっすらと朱に染まり、呼吸が若干荒くなって来た。
「まぁ君……大丈夫? 熱でも出て来た?」
 柏あんなはそういって、自然な動作で堺雅史に身を寄せて、額に手を当てる。
 二人の関係をしるものにとっては、ごくごく自然な成り行きにみえたが……柏あんなの体が密着したことで、否応なく体温と体臭を感じた雅史の鼻息がさらに荒くなったのを、孫子は見逃さなかった。
「なんか……熱っっぽいよ……やっぱり……」
 柏あんなはさりげなく堺雅史の前髪をかき分け、自分の額と雅史の額を密着させる。
 すでに自制心が臨界にまで達していた堺雅史は、柏あんなが至近距離に顔を近づけたことで臨界を突破し、がばり、と、あんなの細い肩を抱き寄せて、強引に口唇を奪う。
 柏あんなは、「んんんんんんん!」とうめきながらも、形だけはあらがってみせせる。幼少時から空手の道場に通っているあんなは、華奢な外見に似合わずそれなりの力も体力もある筈で、男性とはいえ根っからのインドア派であり、非力な堺雅史などに抱きすくめられてもすぐに解きほどせる。
 が、意外にも、もみあっている時間は長かった。
 ひょっとすると、柏あんなにしても、普段はおとなしい堺雅史が積極的なアプローチをしかけてくる、それも、孫子という第三者の目前で今まさに行っている、という現在の状況に陶酔しつつあるのかも知れない……と、孫子は冷静に観察した。

 事実、唾液の糸を引いてようやく顔を離した時、堺雅史と違ってシルヴィの薬を服用していない筈の柏あんなの頬も薔薇色に上気し、吐息が弾んでいた。
「……まぁ君、の……ばかぁ……」
 堺雅史の顔が離れると柏あんなは拗ねたような口調でそういったが、どうひいき目にみても、本気で拒絶しているようには見えなかった。
 堺雅史のほうは柏あんなの反応に注意を払う余裕すらないようで、はぁはぁ荒い息をつきながら、柏あんなの胸元にむしゃぶりつく。両腕をきつくあんなの胴体に巻き付けたまま、首筋に口唇をおしつけたまま、力任せに頭を下げたので、あんなのコットンシャツのボタンが弾けてあらぬ方向にとんだ。
「あっ。馬鹿ぁ! 本当に、もう、駄目!
 才賀先輩がみてるっていうのに!」
 柏あんなはそういって拳で堺雅史の背中を叩いたが、雅史の耳には入っていないらしい。
 もちろん、孫子は、冷静に目の前に展開される事態を目撃している。
 大人の男性、というよりは、まだまだ少年らしい線の細さを残した雅史が、外見に似合わない粗暴さをもってな中性的な魅力をもつあんなに自分の劣情を闇雲にぶつけようとする図は……孫子の目にも、どこか、倒錯的に感じられた。
 堺雅史も柏あんなも、どちらかというと小柄で細身なため、まるで少年同士が絡んでいるようにもみえる。
 堺雅史は柏あんなのはだけたコットンシャツの合間に顔をうずめ、鼻と顎であんなのブラをずり下げ、一瞬だけ除いた色素の薄い乳首に食らいついてピチャピチャと盛大に音をたてて嘗めはじめる。それだけでも、あんなの抵抗は覿面に弱まったが、雅史が歯を立て始めると、びくん、と背筋を反らせて、何秒か上体を硬直させた。
 孫子の位置からは子細はみえないが、どうやら、乳首を強く噛まれたらしい。
 いまや、堺雅史は柏あんなの両股の間に完全に自分の体を割り込ませ、あんなの股間に自分のそれをこすりつけながら、腕であんなの上体を拘束し、口で執拗に、中ば以上露出している、血が昇ってきれいなにピンクに染まった柏あんなの肌を責めている。
 柏あんなも時折思い出したように「駄目ぇ……」とか、「先輩が見ているよぉ……」とか小声で呟くのだが、堺雅史の耳には相変わらず届いていないようにみえた。それに、柏あんな自身も雅史の情熱と愛撫に呑み込まれかけているのか、その時折もらす小声も、どんどん小さな、力のないものになっている。
 孫子と目があっても、あんなの目はとろんと潤んでいて、焦点を結んでいないようにみえた。時折思い出したように孫子のことを口に出してはいても、実際に今の柏あんなが孫子のことをどれほど意識に留めているかというと、これは、かなり怪しい。
 堺雅史と柏あんなは、校内でも一、二を争うバカップルであり、その関係も、昨日今日はじまったものではない。いわゆる、幼なじみで、「気心が知れた仲」というやつである。
 だから、か……一度二人の世界に没入しはじめると、周囲のことに気が回らなくなる傾向があった。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(89)

第五章 「友と敵」(89)

 樋口未樹は小一時間ほど共通の知人や世間話に花を咲かせた後、「あ。もうすぐ人と会う用事あるから」といって、あっさりとマンションから出て行った。荒野も、使ったマグカップなどを洗って片付けた後、昼食にもまだいくらか間がある時間だったので、ショッピングセンターに置きっぱなしの自転車を取りに行く。三島の話しでは、今回の検査はかなり本格的なものだから、茅たちが帰ってくるのはかなり遅くなる、ということだった。
 考えてみれば、荒野が一人で過ごす休日、というのもかなり久しぶりなわけで、でも、荒野はこれといった趣味を持たなかったので、一人っきりで羽根を伸ばすいい方法も、これといって思い浮かばなかった。
 この土地に来てからは、多少の心配事には事欠かないものの、代わりに、命に関わるような大事からも遠ざかっている。
 ここ数年……というより、さして長くはない荒野の後半生は、後者のタイプの「大事」の連続であり、非常にスリリングなものではあったが、代わりに、のんびりとした余暇の過ごし方、というのも学習しそびれてしまった。
 もっとも、スポーツや反射神経がものをいうタイプのスポーツは、荒野と一般人とでは土台の性能差がありすぎて、よほど手を抜かなければまともなゲームとして成立しないのだが……。
『チャリンコを取って帰ったら……とりあえず、作るのに時間のかかる、凝った料理にでも挑戦してみるか……それとも、お隣りのプレハブにでもいってみるか……』
 そんなことを、考える。
 こうしてみると、荒野にとって、お隣りのプレハブで香也の後ろ姿を眺めることが、いい気分展開になってくれていることに、今更ながらに気がつく……。
 少なくとも、あそこに居る間は普段気にしている雑事のことを考えずに済む……。

 ショッピングセンターの駐輪場から愛用のママチャリを引き出し、それに跨ってマンションの方に進む。
 ショッピングセンターは、国道沿いにあった。
 平日はそれなりに混み合う国道も、休日になると途端にがら空き状態になる。これは、このあたりにこれといった地場産業というものが存在しないためで、ショッピングセンター前のこの国道も、利用者はほとんど地元住人だけに限られていた。
 それでも、平日休日を問わず、ショッピングセンターの駐車場出入り口の前後はそれなりに混み合ってはいるが、そこから数百メートルも離れると、とたんに閑散とした有様になる。
 車道が空いていると、路肩を走っている自転車の方も走りやすい。
 一年のうちで今前後が一番寒い時期、ということで風は冷たく、ただ自転車をこいでいるだけで鼻が痛くなるほどだが、零下四十度以下の環境下で作戦行動の経験もある荒野にとってはどうというほどのこともない。むしろ、この適度に不快な環境下にあることを実感すると、体のほうが喜ぶ。血が騒ぎ、ついついスピードを出しそうになってしまい、慌てて自粛する。
 楓や三人組に「目立つことはするな」と常々いっている手前、いつぞやのように、自転車でスピード違反をして捕まるわけにはいかないのだった……。

 ……などという荒野の思惑を無視して、わざとマフラーを外してけたたましくエンジン音を鳴り響かせた単車が、背後から、荒野の乗るママチャリに迫ってきた。
 荒野もテレビの報道特集とかちらりと見て、存在だけは知っている、暴走族とか珍走団とかいう奴ららしい。ほとんど過去の遺物と化しているようだが、田舎の方には、まだ希に棲息しているらしい……。
『……そういや、ここも田舎だったな……』
 荒野は、すぐに追い越されるだろう、と、たかをくくっていた。なにしろ、単車と自転車である。速度差が、ありすぎる。
 しかし、その予想は見事に外れ、その、三台ほどの単車は、路肩を走っていた荒野のママチャリの前後、それに右側にぴったりとつけて、つまり、歩道のガードレールと三台の単車で取り囲むようにして、これみよがしにエンジンをふかしはじめた。
 騒音がうるさいし、それ以上に、排気ガスが酷い。
 間近でみてみると、彼らの単車は、スクーターに毛の生えたような非力な排気量のものだった。走りを楽しむ、というより、他人に迷惑をかけることを楽しんでいる、としか、思えない。
『……さて……どうしようかな……』
 荒野は、少し考えた。
 振り切るのは簡単だったが、目立つのは本意ではない。
 よりによって今日は、通学以外の外出には欠かさないニット帽をかぶらずに出てきてしまった。目立つ髪をみれば、遠目にも荒野であることははっきりと分かる……。
『やっぱ……彼らには、勝手にこけて貰おう……』
 三台の荒野に対する害意はもはや明確で、特に荒野の右側につけている単車がぐいぐ車体を寄せて、と荒野のママチャリをガードレールに押しつけようとする。もはや、その単車のハンドルが、荒野の自転車のハンドルに触れあわなんばかりになっている。
『……逃げ場がない、と、思っているんだろうな……』
 単車のライダーがサディスティックな笑みを浮かべているをチラリと確認し、荒野は他人事のように、そう思った。
 荒野が「普通の一般人」なら、たしかにそうなのだろう……。
 荒野は、なんの予備動作もなしに、すぐそこにまで寄せてきた単車のハンドルの下に掌をつっこみ、真上に跳ね上げる。
 一般人には見えないほど、俊敏な動作だった。
 荒野と併走していた単車が、一瞬、とはいえ、ハンドルを大きく取られ、たちまち派手な音をたててこけた。
 荒野の前後を走っていた単車は、なんにもないのにいきなり派手な横転をした仲間に気づき、慌ててブレーキをかける。
 前後、どちらのライダーも、ぽかんと口を開け、間抜けな顔をして、横転した単車を見つめていた。
 予兆もなにもなかったから、なんで仲間がそこで転がるのか、理解できなかったに違いない。
 荒野は、彼らの間をすり抜けて、悠然と走り去った。
『……単車って、ちょいとバランスを崩せば、こうだから……』
 荒野には、何故単車で取り囲んだ程度で彼らが優位を確信できるのか、まるで理解できなかった。
 走っている単車は、それはもう、倒壊しやすいのだが……。

『……それよりも……』
 昨日、プールで羽生譲を取り囲んできた奴ら、それに、今回の単車、と続くと……。
『これ……やはり、佐久間の予告……あるいは、挨拶、なんだろうな……』
 無関係の一般人に暗示をかけて動かす、というのは、「傀儡操りの佐久間」の常套手段だった。
 一回ならともかく、二回も同じようなことが続いた、となると……これは、やはり「佐久間の主流がこちらに干渉を開始した」という合図、なのだろう……。
 佐久間のやり口は、多くの一般人を巻き込む……。
 単なる偶然かも知れないが……覚悟は、しておいたほうが良さそうだ……と、荒野は思った。
 そして、家路を急ぎながら、なるべく無関係の一般人を巻き込まない方法はないものか、と、考えこみはじめた。

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彼女はくノ一! 第五話 (47)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(47)

 シルヴィが用意する薬剤の効果が確かなことは、例の即効性睡眠薬で確認済みでもあった。問題は、そうした薬剤の力まで借りて強引に香也と関係を持つことで、孫子の自尊心がいたく傷つけられる、ということだった。
 誇り高い孫子は、時間さえかければ、姑息な手段を弄せずとも香也をものにできると思っている。孫子の性格だと、むしろ、そうした香也をの主体性を無視した手段に訴えることにには、強い反発心すら、覚えた。
「……でもぉ……」
 シルヴィは孫子の耳元で囁く。
「……カエデは、もうあの子とやっちゃっているんでしょ?」
 それは事実だった。
 孫子が楓や香也と初めてあったその日に、確認している。もっとも孫子は、前後の状況からして、楓のほうから強引に迫って関係を持ったもの、と、見ており、その後現在に至るまでの香也の態度から見ても、楓と香也の現在の関係は、せいぜい、「仲の良い友人」程度のものだと認識している。
 孫子と香也の関係も似たようなレベルである、というのが、かなり不本意ではあったが……。
「……だったら、多少の無理をしてでも、同じ立場に立たないと……時間がたつにつれて、不利になる一方よ……」
 悪魔の、囁きだった。
 孫子は「とても」負けず嫌いであり、なおかつ、楓の存在を、香也と同じくらいに重視している。同年配の同性で、孫子と互角に渡り合うことが出来るのは、今のところ、楓だけなのだ。
 何事につけけ、孫子は楓にだけは遅れをとりたくないと常々思っており、同時に、孫子は、目的のためになら、手段を選ばない一面も持ち合わせていた。
「……その媚薬、使わせていただきます……」
 結局、孫子はそういって、シルヴィから小瓶を受け取る。
 孫子の中で、プライドよりも実益が先行した結果だった。

 シルヴィは、その薬について、幾つかの細々とした注意事項を孫子に説明する。
 ごく少量でも効果がある。
 大量に摂取しても毒にはならない。が、体内に多く取り込めば取り込むほど、効果が持続する時間が長くなる。
 服用してから五分ほどで効果が現れはじめる。
 効果は絶大で、身の回りに異性がいなければ同性に、同性もいなければ動物に、動物もいなければ無生物に遮二無二むしゃぶりつくほどで、事実上、効果が持続する間は、理性など吹き飛ぶほど性的な欲求に突き動かされる。
 薬の効果は男女問わずに発現する。
 男性が服用した時は、効果が持続する間中、立ちっぱなしになること……などなどを、シルヴィは説明した。
「……本当に、毒性はないのね……」
 孫子はそう確認する。最終的には、香也に使用するつもりなのだから、慎重すぎるくらいでちょうど良い。
「その辺は、何百年も使用されてきて、実証済み。
 むしろ……毒性がないのをいいことに、使い過ぎて、ヤリ過ぎて過労死する例のが、多い……。
 中高年には、ヤリ過ぎのほうが毒よね……」

 勿論、得体の知れない薬剤を即座に使用するつもりはなかった。別にシルヴィの言葉を疑う訳ではないが、適量などは、自分自身で確かめたかった。バレンタインまでにはまだ二週間ほどあったし、つまり、時間的に余裕があるわけだし、実際の効果をこの目で確認する意味でも、実験は必要に思えた。
 孫子は、その薬の効果を実験する対象を、頭の中でリストアップする。
 ……ふっ、と、昨日、みんなの前で、堂々と回数を競い合っていた、飯島舞花と柏あんなの顔が思い浮かぶ。
 彼女たちなら試す相手がすでにいるわけだし、しかじかの薬がある、と耳打ちするだけで、実験に協力してくれそうだった。
 孫子は、事前に実験をして効果を試してみるつもりだ、と、シルヴィに明言し、薬を分けるための適当な小瓶を借りることにした。シルヴィのほうは、弟子が提供された情報を鵜呑みにするのではなく、自分で確かめてみる程度の慎重さを持っていることを喜び、孫子が着衣を整えている間に、適当な香水の空き瓶を持ってきてくれた。

 シルヴィのマンションを後にしてから、孫子は、飯島舞花と柏あんなに、思わせ振りな文面で、「しかじかの効能を持つ薬を入手した。試してみないか」といった内容のメールを送る。
「実家のツテで入手したもので、出所はしっかりしている。いわゆる麻薬、合法ドラッグ、覚醒剤の類いではない。毒性も慣習性ない」ということも、追記した。
 いくらも間をおかず、「興味がある」、というような返事がくる。ほかならぬ孫子からの提供された、という点に、二人は信用を置いた。これが例えば、他の同級生から同じような誘いを受けたら、多分、警戒して、二人とも「ノー・サンキュー」と返したことだろう。
 生まれからいっても、性格からいっても、おおよそ才賀孫子ほど、その手のヤバ気なドラッグから遠い存在はない。

 飯島舞花はどうせ家の隣りのマンションに住んでいるわけで、帰りによって届けることにし、柏あんなの分は、「今、暇だからこっち来ちゃえば。ちょうど、まぁくんもいるし……」とのことで、道順を教えてもらって、駅から二十分ほどの柏あんなの家まで出向くことになった。

 表札を確認してからインターフォンのボタンを押すと、すぐに柏あんなが玄関先に顔を出した。ジーンズにコットンシャツという軽装だった。
 あんなに招かれるままに、二階にあるあんなの部屋に上がる。孫子が室内に入ると、
「あれ?」
 といって、先に来ていた堺雅史が怪訝な表情を浮かべて目を丸くする。
「……才賀先輩……なんで、ここに……」
 どうやら、あんなは孫子が来るのを話していなかったらしい。と、いうことは、おそらく薬のことも、堺には話していないのだろう。
「……少し、柏さんとお話がありまして……」
 そう推測した孫子は、堺に向けてにっこりと微笑んだ。
 堺とあんなは、孫子にとって重要なモルモットである。
「えー! そんな、ゆっくりしていってくださいよぉ!」
 柏あんなが大仰に声を張り上げた。
「でも……わたくし、お邪魔じゃなのではなくて?」
「そんなことないです!」
 柏あんなは平手をたてて、ぱたぱたと顔の前で左右に振る。
「ほら、わたしとまぁくんは、昔っからの付き合いだし、いつでも会えるし……あ。今お茶、用意しますから、ゆっくりしていってください!」
 そういって、柏あんなは部屋の外に出ようとした。
「そう……それでは、ご馳走になってばかりもなんですし、わたくしもお手伝いしますわね……」
 そういって、孫子はさりげなく柏あんなの後を追って部屋を出た。
「……先輩、例のブツの話し、本当なんでしょうね?」
 階段を降り、柏家のキッチンに入ると、柏あんなが声を顰めて孫子に確認してきた。先ほどの丁寧な口調ではなく、刑事ドラマかなにかの真似だろうか、わざと低い声を出していた。
「例のブツ、とやらを提供してくださった人によると、それはもう、凄い効き目らしいわよ……」
 孫子は何食わぬ顔をして、シルヴィから聞かされた説明を反復した。
「……本当に、毒でもヤバいクスリでもないんですよね?」
「それについては、保証します。
 使い過ぎた場合、特に殿方のほうは、負担が大きいようですが……」
「なんで……わたしに声をかけてきたんですか?」
「他にも、飯島さんにもお話ししているのですが……いずれにせよ、わたくしには、使う相手もいませんから……」
「……ひょっとして……わたしたち、実験台、ですか?」
「そのような言い方も、どうかと……。
 珍しいものが手に入ったので、使える境遇にある方に、お分けしているだけですわ……」
 孫子がことさらおっとりとした口調でそういうと、柏あんなはしきりに頷いてみせた。
 その程度の裏があると知って、かえって安心したようだ。
 孫子と楓、それに香也の関係については、玉木たち放送部の活躍もあって、最近の学校関係者の間ではほぼ常識と化している。加えて、あんなは楓や香也と同じクラスであり、同じ部の舞花からもいろいろな噂が漏れ聞こえてくる。
「才賀先輩……ハーブティなんか、お好きですか?」
「ええ。独特の香りがする、珍しいものなんか、都合がいいですわねぇ……」
 薬を混合をしても堺雅史に飲ませるのに都合が良い、という意味だった。
 女二人は、キッチンで声を押し殺して、笑い合う。

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髪長姫は最後に笑う。第五章(88)

第五章 「友と敵」(88)

 荒野はペーパードリップでコーヒーをいれ、そのマグカップを樋口未樹に差し出す。マグカップを受け取ろうとした未樹と指が触れそうになり、荒野はあわてて自分の手を引っ込めた。
「……なにやっているの? 荒野君……」
「い、いや……な、なにやっているんでしょうね、おれ……」
 荒野は露骨に動揺している。
 たいていのことは器用にこなすくせに、根本的なところで不器用な面もある荒野だった。
「……別に、そんなにおびえなくとも……取って食いやしないから……」
 未樹は苦笑いをした。
「そうそう。それでさ……あれからもうだいぶたつけど、荒野君、もうあの子、茅ちゃんとはしちゃったの?」
 自分ででいれたコーヒーを飲みかけていた荒野は、盛大にむせ返った。
 しばらくげほげほ咳き込んでから、
「……な、なにを……いきなり……」
 と未樹に聞き返す。
「……まぁたまたぁ……」
 未樹の目がゼリービーンズ型になっていた。あきらかに、荒野の反応を楽しんでいる。
「もともと、寝る時に茅ちゃんが裸で抱きついて来て困るっていうのが、この間の、その……の、きっかけだったわけで……」
 ……確かに、未樹に問われるままに相談したことで……未樹と関係してしまったのだった……。
「……まぁた。そんな顔しないの、荒野君。
 あの時は、その、どちらかというと、わたしのほうから……。
 って、そういう話しじゃあなくて!
 あの時から気になっていたんでしょ? 茅ちゃんのこと。
 それで、今までずっと生活してきて、何にもなかったら嘘なだなぁ……って……。
 いいじゃん。別に隠さなくても。血は、繋がってないんでしょ?」
 荒野は、盛大にため息をついた。
 確かに未樹には、一族関係のことは除いて、茅のことをかなりつっこんだ情報まで話したような気もする……。
 それに、未樹の性格から考えても、ここで荒野が話したことを誰かに言い触らす、ということも、考えにくい。
 未樹もいうように、今更隠し立てする必要も、特にないのだった。
「……ええ……お察しの通り……その、何回か、ですが……やっちゃいました……」
 荒野は、ぼぞぼそと小声で答えた。

 荒野は、人前でもあけすけに回数を競い合ったりする飯島舞花や柏あんなよりもずっと、そうしたことに対しては奥手……というよりは、根本的に保守的な価値観を持っている。これは幼少時、預けられていた家庭で、現在の平均的な日本家庭よりも倫理的には厳格に教育されたせいだろう、と、荒野自身は思っている。
 その頃、荒野が預けられていた家庭とは、ようするに姉崎が埋伏のために用意した偽装家族だったわけで、しかし、わざわざ姉が用意するからには、そこには本物以上に本物な「家庭」があった。「女系の姉崎」は、使用する技こそ、性に関するものが多いが……その実、血族や血縁がない義理の親族への帰属意識が強く、ことに、子供の教育には、熱心だったりする。
「姉崎」とは身内への厳格な態度と、「身内の敵」に対する苛烈な態度が正反する集団であり……だからこそ、敵に回すと、かなりこわい。
 全世界規模で血族が散らばっている、ということもあるが、下手をすると、比喩ではなくて文字通り、「末代まで」祟る。
 佐久間と並んで「最弱」とされながらも、それでも姉崎が六主家の一角を占めていられるのは、姉崎の持つそうしたしぶとさと執念深さを、根本的な性質として持っているからだ。
 姉崎を滅ぼそうと思ったら、地球上を丸ごと焼き払わねばならないし、それでも生き残りの姉崎がいれば、数十年かけてでも、必ず、報復行動を完遂する。それは、過去、姉崎に敵対した者の末路をみれば、容易に想像できることで……また、そうした過去の実績が、外部に対して姉を過大に大きく見せている部分もあった。
『……じじいが、幼いころのおれを、一時期姉崎に預けたのも……一種の、保険、なんだろうな……』
 今にして思えば、自然にそう思える。
 義理であれ、一度「家族」として認めた者に対しては、姉崎は、極端に甘くなる。よほどのことがなければ、「敵」とはみなさなくなる。
 また、加納本家直系の荒野とのパイプを強くすることは、姉崎にとっても都合がいい。
 そうやって姉崎は、長い時間をかけて、血の繋がりで自分たちの立場を強化して来た集団なのだ……。

「……やっぱねー……。
 今まで一緒に住んでいて、なんにもないっていうほうが不自然だし……それに、荒野君、茅ちゃんのこと、前からやたら気にしていたし……」
 荒野が物思いに沈んでいる間にも、未樹はそんなことをいいつつ、一人うなずいている。
「ええ。
 ……まあ、そのとうり、なんですが……そんなに、ベタベタとは、していませんよ?」
 荒野は、あわてて未樹の言葉を否定した。否定しようとしても語尾が疑問形になってしまうのが、情けない。
 茅を抱いたのは、数えるほどだし……それに、学校に通うようになってからは、二人で過ごす時間は確実に減っている。
 荒野の主観的には、未樹が勝手に納得しているほど、仲良くはしていない……つもり、だった。
「……ほぉぉぉおぅ……」
 荒野の言葉を聞いた未樹は、目を細める。
「あんだけ見せつけておいて、ベタベタしてないっていうかな、この子は……」
 その未樹の口調を聞いて、荒野は精神的に五歩ほど後ずさった。実際には椅子にすわっていたため、無意識のうちに背を反らせた程度だが……。
「……ケーキ屋さんのCM……」
 未樹は、そういって右手の親指を折る。
「……ほぼ毎朝、学校に一緒に登校……」
 未樹は、右手の人さし指を折る。
「……その前に、早朝らぶらぶジョギング……ここ何日かは、さらに三人のコブつきのようだけど……」
 未樹は、右手の中指を折る。
「……週末には、二人でお買い物……」
 未樹は、右手の薬指を折る。
「さらにさらに、たまーに、学校のお友達と、プールなどにいって集団デート、と……」
 未樹は、右手の小指を折る。
 未樹の右手は、「ぐー」の形になっていた。
「……これだけのことをしながら、まだ君は、そんなにベタベタしていない、と申し開きをするのかね?」
「……ごめんなさい。
 いわれてみると、予想以上に、ベタベタしてました……」
 荒野は未樹にそういって、素直に頭を下げた。
 明日樹に大樹……考えて見れば、未樹は、ニュースソースには、事欠かない。
 ごまかしようが、ないのだ。
「あの……普通の兄弟って……そこまで一緒には、いないもんなんですか?」
 頭をあげてから、荒野は未樹に尋ねてみる。
「おれ……日本のそういう感覚、よく分からないから……」
 尋ねてから、あわててそう付け加える。
「……そっか……荒野君は帰国子女で、茅ちゃんは日本に帰ってきてからいきなりできた妹さん、だったな……」
 未樹も、荒野の言葉にうなずく。
「……荒野君も、少なくとも、茅ちゃんが成人するまでは、むやみに騒がれたくないだろうし……。
 まあ、参考にいっておくと、ある程度大きくなったら、あんまり付き合いないよ、性別の違う兄弟って……。よっぽど趣味が合うとか、性格的に反りが合うとかなら、別なんだろうけど……。
 茅ちゃんの年頃だと、兄弟で一緒にいるより、学校の友達と一緒にいるほうが、多いんじゃないかなぁ……」
 ……そんなものか……と、荒野は思う。
 荒野自身は、一般人のその辺の感覚は、実はよくわからない。
『……この辺も……もう少しいろいろな人に意見聞いて、考えてみる必要があるな……』
 とりあえず、そんなことを、思った。

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彼女はくノ一! 第五話 (46)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(46)

 下着姿の才賀孫子は、ナイロン製のロープによって拘束されており、大股開きの格好で、椅子に縛り付けられている。両手首は首の後ろで、厳重に縛られており、また、足首は、膝を折り曲げ、孫子自身の太ももとぴったりと密着させた状態で、幾重にもロープが巻き付けられている。ロープの色は毒々しい赤だった。ナイロンはそれなりに強靭な化学繊維だが、孫子の膂力をもってすれば振りほどけない、というほどの強度でもない。
 それでも孫子が抵抗しようとしないのは、そうした屈辱的な姿勢をすることによって孫子の羞恥心を煽るのが今回の狙いである、ということを、シルヴィ・姉崎があらかじめ説明されているからだ。シルヴィは孫子になにも強要しない。しかじかの必要があって、こういう行為を行うと説明した上で、それでも孫子が望むのなら、説明した通りのことを実行する。
「……一口に性感といっても……」
 多種多様な快楽があり、そのすべてを極める必要はない。が、肉体的な快楽と精神的な快楽、その二種類の区別くらいできなければ、この先の姉崎の技は教授できない、と、シルヴィは孫子に説明した。
「でも……大丈夫?
 あなた、まだ男も知らないんでしょう? 耐えられる?」
 孫子は毅然としてシルヴィに縛られることを承諾した。

「……どう? 感じる?」
 ……ヴ、ヴ、ヴ、ヴ、ヴ……という鈍い振動音が響く中、シルヴィは椅子に拘束されている孫子に尋ねた。縛られ、身動きを封じられた状態で下着の中にローターを入れられている孫子は、下唇を噛みながら、上目使いにシルヴィの顔を睨むが、なにも言わない。
 孫子は、拗ねているようにも、込み上げてくる声を必死に抑えているようにも、みえる。
「……だめよー……ちゃんと答えなければ……」
 シルヴィはつま先を孫子の股間部にそっと乗せ、下着の中にあるローターを、つま先でそっと転がした。
 孫子が、のどをのけぞらして、「はがっ!」と息を吐く。
『やはり……気丈な子だ……』
 そう思いながら、シルヴィがつま先でローターを転がし続ける、呼吸をあらくした孫子が、息もたえだえ、といった風情で、しかし、凝然と顔をあげ、シルヴィの顔を睨みつけて、答えた。
「……か、感じる……感じて、ます……」
 極力感情を押し殺した声だった。
 必要だから、聞かれたことには答えた……といった態度を崩そうとしない。
「ふん。いやらしい。ついこの間まで自慰もしなかった娘が……」
 そういってシルヴィはつま先でローターを孫子の一番敏感な突起部に固定しながら、リモコンのスイッチを操作して、振動の強度を上げた。

 孫子の体が、びくん、びくんと震える。
 体全体が跳ね上がり、必死にローターから腰を逃そうと動いていたが、シルヴィは足で孫子のそこを押さえ付けて、逃げるのを許さない。のけぞった孫子ののどから、「ふぁっ!」とか「あっ! あっ! あっ!」という声が漏れる。
「……駄目よう……逃げようとしちゃぁ……これも、習練のうち、なんだから……」
 しばらく痙攣したように撥ね動いてから急に静かになった孫子に、シルヴィは重ねて尋ねる。
「……さぁ……ソンシちゃん……。
 どう? こうやって他人にいたぶられるのと、誰もみていない場所で、一人でこの子を使うのと、どっちが気持ちいい……」
 そういいながら、さらにぐりぐりとつま先でローターを孫子の「そこ」に押し付ける。
 一度はぐったりとした孫子が、顔を上げてシルヴィを睨みつけた。
「……今……のほうが……」
「なぁに?  聞こえない。ちゃんと大きな声で、はっきりといって!」
「一人でやるよりも……今のほうが、気持ちいいです!」
「はい。よくいえました! これは、ご褒美!」
 シルヴィは、リモコンでローターの出力を最大にした。
 それまで声をこらえていた孫子が、拘束された白い裸体をできる範囲でくねらせて、吠える。おぉぉぉぉ! という、どこか獣じみた咆哮だった。
「……なに? はしたない。
 そんなに声を張り上げちゃって……。
 そんなに気持ちいいの?
 いじめられて感じてるの?
 いやらしい子……」
 シルヴィがさらにそう罵ると、孫子は自制心を総動員して口を閉ざし、深呼吸して気を静めようとした。
「もう、認めちゃったら? ソンシちゃん、こんなにぬらしちゃうぐらい、いやらしいんだから……」
 シルヴィは、自分のつま先を置いてある部分を、孫子にしめした。
「……ほら……ここ、さっきから、すっごい水がでてきているの……頭では否定しても、体の方は、気持ちいいっていっているの……。
 あんまり嘘ばっかりついていると……こうしているソンシちゃんのビデオ、あの絵描きの子に、見せちゃおうかなぁ……」
「……そんなことを、してごらんなさい……」
 それまでぐったりしていた孫子が、いきなり背筋を延ばし、シルヴィを睨みつける。
「才賀の総力を結集して、あなた自身とあなたの家族を、皆殺しにします……」
 脅す、というよりはもっと冷徹な、淡々と事実を教える声だった。
『……やっぱり……強い子……』
 シルヴィは、そういう感慨を新たにする。
『この子は……折れない。溺れない。
 譲れない一線を持っていて、それを死守するためには、どんなことだってする……』
「……冗談よぉ……」
 シルヴィは急にローターのスイッチを切って、孫子の体から離れる。
 シルヴィが離れると、孫子はほっとした表情をして、自分の身を拘束していたロープを、自分でほどき始めた。先程暴れた際、かなり緩んできていたので、別に難しい仕事ではない。
「……これ以上は……教えることはないわ……。
 男も、知らない子には……」
 シルヴィは、拘束を解いて立ち上がった孫子は向かってバスタオルを投げかけた。孫子の下半身は、孫子の自身が分泌した体液で塗れている。
「だから、これ以上、レッスンを進めたければ、ちゃんと殿方とやってきなさい。相手は誰でもいいんだけど……そうね。あなた自身は、もう心に決めた人がいるみたいだから、これを使うといいわ……」
 バスタオルで身を包んだ孫子に、シルヴィは茶色い小瓶を投げ渡す。
「……これ、なんだと思う?
 一種の媚薬、なんだけど……効果がすごすぎて、それに、理性を麻痺させるから……服用してからしばらくすると、そばにいる人に見境なく抱きついて押し倒しはじめるの……。
 男にも女にも、効果があるわ……。
 もうすぐ、バレンタインで……日本のバレンタインは、女性が男性にチョコをあげる習慣なんでしょ?
 その薬を、せいぜい有効に使いなさい……」

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髪長姫は最後に笑う。第五章(87)

第五章 「友と敵」(87)

 朝食が終わった後も、テレビ局による日曜朝の子供番組攻勢はしばらく続いたので、茅と三人組、それに徳川浅黄は、騒がしいながらもテレビの前に張りついてくれたので、荒野にとってはそれなりにやりやすかった。
 食器を片付け、自分用にコーヒーをいれて一服してから、荒野は、
「茅とその四人はこれから用事あるんだけど……浅黄ちゃんも、もう帰らないとな……」
 と声をかけて、徳川篤朗の所に電話を入れた。もう少しすると、三島百合香が、茅と三人を健康診断に連れていく予定だった。今回は少し詳細に調べてみる、ということで、涼治が指定した病院だか診療所に連れて行く、という。
 電話に出た篤朗は、すぐにタクシーをこちらに廻してくれる、と約束する。交通の便が悪いこの土地で学校、自宅、工場を普段から忙しなく往き来している篤朗は、免許を取得できる年齢でもないので、懇意にしているタクシー会社があり、そこではいろいろと融通が利くのだ、といっていた。篤朗もそうだが、浅黄も顔パスに近い状態なので、迎えが来たらそのまま乗せてくれればいい、と言われた。
 約束の時間の三十分ほど前に三島百合香がマンションにやってきた。
「なんだ、お前らも来ていたのか……呼ぶ手間が省けたな」
 三人組の顔を見て、三島百合香はそういう。朝食は済ませてきた、という三島に、荒野はコーヒーをふるまった。いつもなら率先して紅茶をいれている茅は、いまだテレビにかじりついている。
「なんだかね。浅黄ちゃんも含めて、お友達って感じです」
 荒野も、苦笑いをしながら答える。
「仲が悪いよりはいいほうがいいだろ? ん?」
 両手で抱えたマグカップを顔の前に置きながら、三島はそういう。

 そのうち、タクシーが迎えに来て若干の手荷物とともに浅黄を連れていき、その後、三島に率いられて茅と三人組も出て行った。三島の小型車で、指定された場所に向かうという。後ろ姿をみていると、あまり年齢の変わらない子供たちがぞろぞろ歩いているように見えた。
「……まず、掃除と洗濯……」
 後に一人残された荒野は、今日、やるべきことを指折り数えはじめる。
「……その後、買い物……」
 まるで主婦だな、と、自分でも思う。
 ようは、いつもの週末、茅と二人で行っていることを今日は一人でやらなければならない、というだけのことで……。
 そう考えると、いつの間にか「二人暮らし」に慣れきっている……そんなことを思いながら、荒野はマンションの中に散らばった小物類を片付けはじめた。浅黄や三人が泊まったこともあって、定位置にある筈の小物類が、あちこちに散らばっている。
 その後、洗濯機を廻しながら掃除機をかけ、手早く外出の支度をする。買い置きの食材も随分消費してしまったから、その分も、補充しておかなければならない……。

 自転車でショッピングセンターに乗り付けると、食料品売り場に直行する。
 レトルト類はあまり使用しないが、冷凍食品とか調味料、それにカレーのルウなど、自分では作れない食材をまとめて買う。
 ついつい、茅と二人の時の要領で買ってしまい、レジを通してから、
「これ……どうやって、家まで持って帰ろう……」
 と、軽く考え込んでしまう。
 荒野は、食材がパンパンに詰まったビニール袋を体中にぶら下げているような恰好になっていた。重さ的には別に問題ないのだが、通りかかった人の注目は、十分に浴びている。
 これで自転車に乗ったら、それこそ曲芸の部類だろう。
『……しかたがない。いったん歩きで帰って、もう一度、自転車を取りにくるか……』
 今のままでも十分目立つのだが、それでも「曲芸」よりは、幾分マシだった。
『本当におれ……二人でいることに、慣れていたんだな……』
 そんなことを思いながら店の外に出て、のしのし歩いて行こうとすると、
「……荒野君、そんな恰好で、なにやっているの?」
 と、声をかけられた。
「ひさしぶり。
 いつも……というよりも、昨日も、うちの妹とバカ弟がお世話になっているようだけど……。
 昨日のバーベキューは、わたしも行きたかったんだけど、お店の都合でどうしても抜けられなくて……」
 樋口未樹、だった。
「ども……お久しぶりです」
 荒野は律儀に頭を下げる。
 未樹とはあれから一度も顔を合わせたことがないわけで……荒野としては、どんな顔をして未樹と話したらいいのか、判断がつかない。
 よって、当たり障りのないように、若干、丁重な言葉遣いを心がける。丁寧な言葉遣いをしても、自分の薄情さには変わりはないのだが……。
「いやぁ……ちょっと、買いすぎちゃって」
 荒野は肩をすくめてビニール袋を揺すって、そう答えた。
「あはは……ちょっと、ねぇ……これが……」
 荒野の反応に、未樹は快活に笑った。荒野に対して含む所がある表情ではなかったので、荒野は安心する。
「いいよ。今日は時間あるし、車に乗せてあげる。
 その代わり、こんどちゃんとうちのお店に来ること!
 ……この長さ、もう校則違反でしょ?」
 未樹は荒野の両手がふさがっているのをいいことに、伸びすぎた荒野の髪を遠慮なく指で摘んでみせた。
 確かに、なんとなく髪を切りに行きそびれていたので、結構な長さにはなっているのだが……。
「……いいですけど……」
 荒野は少し考ええる。
 茅は、自分で毛先を切りそろえているらしい。孫子も、行きつけの美容院がすでにある。しかし、楓は、荒野が知る限り、ここに来てからまともに切っていない。それに、あの三人組も、勿論……。
「その代わり、おれだけじゃなくて、もう何人か追加で、予約できます?」
 ……決して、一人だけでいくのが気恥ずかしいからではないぞ、と、荒野は自分に言い聞かせていた。

「へぇ……相変わらず、きちんと片付いているね……。
 でも、前に来たときよりは、生活感が出てきている……かな?」
 車で送ってもらった後、久しぶりにマンションに通された樋口未樹は、珍しそうにあたりを見渡して、そう感想を述べた。
 たしかに、掃除をしたばかりの部屋は片付いていて、ベランダには洗濯物と布団が干してある。
「……ちょっと待ってくださいね。今、コーヒーでもいれますから……」
 荒野は買った食材を冷蔵庫や棚の中に整理して収納しながら、そんなことをいう。
「茅がいれば、紅茶でもいれてくれるんですけど……」
「あ。茅ちゃん、留守なんだ……」
 未樹にそう聞き返されたことで、荒野は「しまった!」と思った。
「……ええ、ちょっと、用事があって出ていて……」
 ここにきてようやく、荒野は、今、未樹と二人きりであることに気づいた。

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彼女はくノ一! 第五話 (45)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(45)

 一時を少し過ぎた頃、楓が昼食ができた、と、呼びに来たので、荒野はそれまでに仕上げたキャラクター案のラフ画を楓に手渡し、
「これ、今日の分。後で、アップしておいて……」
 と告げる。これだけでも、意味が通じた。
 楓は、今だにコンピュータに向かうことに苦手意識を持っている香也が、書き上がった絵のアップロードや他の制作者たちの意見をまとめてプリントアウトし、香也に渡す、などのゲーム製作にかかわる際のアシスタント的な役割を請け負っている。

 居間には三人組も孫子の姿も、朝からバイト出ている羽生譲の姿も見えず、楓と真理と香也の分だけの食事が炬燵の上に用意されていた。親子丼にお吸い物、だった。お吸い物は、どうやら袋入りインスタントのようだったが、休日の昼食が簡単なものになりがちなのは今にはじまったことではないし、香也も特に味に拘るタイプでもないので、いつものように「いただきます」と唱和してから黙々と箸を動かす。
「……どう? こーちゃん? これ?」
 真理が、なにやら子細ありげな表情をつくって香也に尋ねた。
 これ、といって、盛っていたどんぶりを軽くあげているところをみると、どうやら、親子どんぶりの味について聞きたいらしい。
「……んー……」
 香也は、例によってもごもごと口ごもってから、
「どうって……普通に、おいしいと思うけど……」
 そういってから香也は、
『そういや、真理さん……どんぶり物は滅多に作らないよな……』
 と思い当たった。
 案の定、楓の顔が、ぱぁーっと明るくなった。隣に座っていた真理が、楓の脇を肘で軽くつついている。
「……これって、ひょうっとして……」
 香也が、真理と楓の顔を交互に見ながら質問する。
「そう。今日は、楓ちゃんが、一人で作ったの……」
 香也が楓のほうをみると、楓は、恥ずかしそうな顔をして目を伏せた。
 香也は、「……なんか……昔のホームドラマみたいな……」と思った。

「……でね、ノリちゃんに順也さんの作品のコピーとか写真見せたら、なんか興味持っちゃってね……」
 朝食の席では、もっぱら真理がしゃべっていた。香也はもともと口数の多いほうではないし、楓も人の発言を遮ってまでしゃべりたいことがあるわけではない。真理は、ノリが順也の仕事に感心を持ってくれたのが、純粋に嬉しかったらしい。
「……ノリちゃん、力持ちだし、学校がはじまるまで特にやることもないようだから……」
 ひょっとすると、真理の個展巡業に、ノリを連れて行くことになるかも知れない、と、真理はいった。ノリは乗り気だが、まだ、三人組の他の二人、ガクとテンの意志を確認していないため、どうなるかは分からないが……二人が、ノリと二週間ほど離ればなれになることを承知すれば……真理は、ノリをつれて、この家を長期間空けることになる。
 そう聞いても、香也は特に感銘を受けなかった。
 あの三人はどうやら……本当に、小さな頃から一緒にいたようだが……それでも、いつかは離ればなれになる時が来るわけで……。
 他の二人が承知すれば、ノリにとっては別の土地を知るいい機会になるのではないか……と、香也は思う。
 そう思う香也にしてから、この近所と学校くらいいしか、よく知らないのだが。

 香也たちが昼食を食べている頃、孫子は駅近くにあるマンションの一室にいた。
 十五階建て、セキュリティ完備、その代わり、賃料もこの辺の相場の五割増し……という、土地柄に似つかわしくないコンセプトのマンションで、建造当初から近所の噂話では「どういう職業の人が、あんなマンションに入居するんだろう……」と囁かれていた。
 その噂通り、実際に建物が出来てみても、入居者は半分も埋まらず、設備や普請が平均よりも立派な物だけに、閑散とした様子がかえってどうしようもない空虚さと荒廃とを感じさせる……という次第になった。
 まだ新築であり、日曜だというに、「家族向け物件」をうたったそのマンションは、深閑として人の気配を感じさせない。
「んんっ……ふぁっ……はぁ。はぁ。はぁ……」
 そんな、周囲のいかにも田舎じみた雰囲気に馴染まない真新しさを誇示するマンションの一室で、孫子は、油断すると喉の奥から漏れそうになる甘い吐息を堪え、息を整える。
 なかなか、落ちない。
 と、孫子の性感帯を医師に似た冷徹さで嬲り続けるシルヴィは、思う。
 孫子に、自分の持っている技能を教えようと思いついたのは、シルヴィ・姉のほうだった。孫子は、素質……というより、それまでの経歴で伸張させてきた肉体的な能力に加え、なにより、モチベーションが高かったのので……通常なら習得に何年もかかるような技能も、通週間でおぼろげに初歩をマスターして、シルヴィを驚かせた。
 六主家共通の基本技の原理は、一通り教えた。後は……いかに使いこなすか、という応用の問題で、こればかりは経験と個人差が物を言う。一石一長に教えられるものではない。事実、孫子は、「気配絶ち」をある程度見切ることはできるようになったが、自分では「気配絶ち」を使うことができない。
 ある程度理論を理解している、ということと、自分で実戦してみせる、ということは、また別で……その「見切り」、にしても、例えばあの荒神の神業に近い(なんといっても、「声はすれども姿は見せず」を、同じ術者に対して平然と行ってしまうレベルなのだ!)「気配絶ち」には、通用しないだろう。
 だから、後は、そうした基本的な知識をいかに効果的に使用するか、という応用……の、問題に、なってくる。
 そう。
 本当の問題は、そこから先、なのである。
 六主家の基本技……以上の事、となると、後は、「六主家独自の技」に、なるわけだが……シルヴィの所属する「女系の姉」の技は、多く、性にまつわるものになる。
 他に、本草学から錬金術までの知識体系を総動員した各種薬物の製造と使用……なども、「姉特有の技」なのだが、こちらの方はおいそれと部外者に教えられる性質のものではないし、仮に、そうした禁忌がなくとも、概要を伝えるだけでも何年もの月日を要する。
 だから……当面、すぐに孫子の役に立ちそうな「技」となると、必然的に「性」に関わるものになり……聞けば、孫子は、まともな男性経験すら、ないという……。
 シルヴィは、無理強いしてはいない。むしろ、「これ以上は……」する必要はないのではないか、と、孫子向かって忠告したくらいだ。
 しかし、孫子は、シルヴィの制止に、首を縦には振らなかった。
 だから、今、孫子は……シルヴィの閑散とした、生活感のない住居で、白昼だというのに全裸になって、頑丈な縄で四肢を拘束され……シルヴィに、体中の性感帯を刺激されながら、身内から湧きだしてくる快楽に耐えていた。
 そうされながらも孫子は、屈辱にも折れず、快楽にも溺れず……気丈さを、保っている。
『……強い子だ……』
 と、シルヴィ・姉は、思う。
 しかし、この強さ故に……この子は、この先、かえって苦難を背負うのではないのか……。
 そんな思いが、シルヴィの脳裏をかすめた。
 そんな感慨を抱きながらも、シルヴィは、孫子から快楽を引きだそうと、冷静に手を動かし続けた。

[つづき]
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