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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(129)

第六章 「血と技」(129)

 茅は久方ぶりに「夢のない眠り」についていた。
 一般人とは違い、茅にとっての「夢」とは、あやふやな、突拍子もないイメージの氾濫ではない。何故なら、茅は、代謝系の活動が極端に抑制される睡眠時にこそ、覚醒時にはできないような複雑な思考を行うからだ。思考、計算、シュミレーション……場合によっては、イメージトレーニングを行うこともある。
 茅にとって睡眠に当てる時間とは、脳以外の身体各部を休ませる、という程度の意味しか持たない。
 つまり……茅の場合、通常の睡眠時にも、意識は完全に覚醒している。それどころか、起きている時よりも活発に稼動している。
 だから……シルヴィの薬により、強制的に意識を断たれた茅は、久方ぶりに「夢のない眠り」についていた。
 虚無であり、意識の空白……ではあるが、同時に、茅にとっては数ヶ月ぶりに得たことになる、「気の休まる」時間、でもあった。

「……今の茅の反応で、だいたいのことは推測できたけど……」
 茅の体をベッドの上に運んだシルヴィは、茅が用意したポットから自分のカップにとぼとぼと紅茶を注ぎ、一気に飲み干した。
「勝った負けたで解決する類の問題ではないだけに……って……。
 どうした? コウ。
 そんな呆けた顔をして?」
「……い、いや……」
 荒野はぶんぶんと顔を左右に振った。
「その……茅があんなことを悩んでいたなんて、夢にも思わなくってさ……」
「……それで、ショックだったのか……」
 シルヴィが、面白がっている表情で荒野の顔をしげしげとみる。
「一緒に住んでいても……どんなに仲が良くても、お互いの考えていることは、わからない。
 だから、面白いんじゃないかな?」
 以前そうだったように、シルヴィは簡潔な言葉遣いを続けている。もっとも、この国で再開する前は、シルヴィと荒野は日本語以外の、文法や修辞に男女の差が比較的少ない言語で会話をしていたわけだが。
 それにしても、過剰に女性的だったり外国人っぽい片言を混ぜたりすることがないだけ、現在の言葉遣いの方が、荒野にとっては違和感がないのであった。
 シルヴィだけではないが……姉崎の者には、研究者が多い。姉崎が出資している研究施設も世界中にあるし、人数が多く、頻繁に横の連絡を取っている姉崎の組織形態は、膨大なサンプルデータを集積し、それを分類・分析するような作業に向いていることもあって、昔から言語や語彙の比較、動植物の標本採取などの、いわゆる博物学的な作業は、姉崎のお家芸であるといってもいい。
 事実、それまでさして目だった集団でもなかった姉崎が大きく躍進し、巨大化し、現在のような組織的基盤を整備したのは、航海技術が大きく発展し、文物の移動速度が飛躍的に早くなった大航海時代から帝国主義上等! なノリの十九世紀にかけてからで……だから、姉崎は全世界に根を張っている同胞を持っているし、特殊な、一般にはまだ知られていないような薬物の製法も所持している。
 佐久間のように単独の個人が、極端に優秀な知性を有しているわけではないが、姉崎は、長い時間をかけて地道にこつこつやるタイプの研究者が、昔から多く、姉崎同士で話す際も、今のシルヴィがそうであるように、余計な形容を省いて単刀直入に効率よく情報を交換する。
 荒野もその姉崎の家庭に一時身を寄せていたわけで、そこで「姉と弟」という役割を演じていたシルヴィと荒野の会話も、ともするとぶった切りの単語の羅列になることもあった。
 例えば……こんな具合に、だ。
「完全なコミュニケーションは原理的に不可能、という前提は肯定。
 しかし、そういうことではなく……なんで、おれにではなく、ヴィになんだ?」
 荒野がいう。
「同性ゆえ。
 あるいは、自分の異質さをコウに知られたくはなかった。しかし、いずれは知れる、と踏んで、カミングアウトする機会を伺っていたんだ」
 シルヴィが答えて、うっすらと笑う。
「かわいいじゃないか、茅……」
「同意。
 疑問。何故、今?」
「推測。そろそろ隠しきれなくなる頃だと判断した?
 疑問。カヤに、最近、何か変化は?」
「回答。不明。
 学校でも家でも、さして変化らしい変化はなかったと思うけど……」
「要請。判断材料。
 どんな些細なことでも、いい……」
「回答。
 家では、相変わらず。料理のレパートリーが増え、おれに家事をやらせないようになってきた。
 学校では、予想以上に順調。特に放課後の活動では、他の生徒にかなり頼りにされる存在になっている。
 それ以外に、変化といえば……あっ!」
 荒野は、大きな変化を見落としたことに気づき、小さな叫び声をあげた。
「そういえば……茅……。
 少し前から体を鍛えはじめ……最近では、楓に一族の体術を習いたいとか、言い出すようになっていた……」
「……ふぅ……ん……」
 シルヴィが何か、考え込む表情になる。
「そういう動機は、推測可能。
 だけど……カヤ、そっちの方は、モノになりそうなの?」
「身体能力は、一般人並だけど……」
 荒野は、肩を竦める。
「でも、茅……とっさの際の判断力と行動力は、人一倍、あるから……。
 その辺の脅威については、そこの二人に聞くといいよ。
 いい実例だ……」
 荒野は苦笑いを浮かべながら、酒見姉妹を指差す。
「……そう……ね……」
 シルヴィは思案顔のまま、生返事をした。
「フィジカルな要因は、必ずしも優位を確定的にはしないから……」
 そういうシルヴィ自身、「最弱」と呼ばれる姉崎の一員だ。
 例え身体能力で劣っても、それをカバーする方法はいくらでもある、ということを、身を持って証明している側の人間だった。
「カヤのデータ……もう少し詳細に、検討したくなったわ……。
 それに、本人とも、じっくりと時間をかけて話し合いたくなってきたし……」
 どうやら、シルヴィは……「茅」という存在に、職務を越えた好奇心を抱きはじめたようだった。




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彼女はくノ一! 第五話 (212)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(212)

 香也の分身は楓の愛液と避妊具の合成樹脂と汗の匂いがした。お世辞にもかぐわしい、とはいいかねるが、孫子は躊躇することなく香也に口で奉仕を続ける。勉強家であり同時にまた負けず嫌いである孫子は、香也と関係を持ってからというもの、再度の機会があるまでに、と、それまで縁も興味も持たなかった様々な「教材」に触れ、ひそかに自習してた。最大の動機は、やはり、香也を喜ばせたい、ということにつきたが、楓という競争相手がいる以上、サービスの内容を少しでも充実させて差をつけよう、というのが、孫子の発想である。
 その心掛けについては極めて真摯であったが、その真摯さを発揮する場面が口淫技術である、というのは、明らかにどこか見当違いでもある。が、孫子自身はきわめて真剣でもあった。
 そんなわけで孫子は、ネット上にいくらでも転がっているAVのサンプル映像を参考にして、香也の分身をあれこれの方法で舐めあげ、亀頭に軽く歯を当てたり、舌先で鈴口を刺激したりしている。AVで見た行為を見よう見真似で再現しているだけなのだが、孫子自身がきわめて真剣に取り組んでいるだけあって、それなりに様になっていた。形だけをみれば、どこかの風俗嬢顔負けであり、しかも、「あの孫子が」という普段のイメージとのギャップ、というオプションもついている。予想していなかった刺激に、楓の中でも放たなかった香也の腰がガクガクと震えはじめる。
 香也は、今ではそれなりに性行為を経験している。それにより、粘膜の物理的な刺激にはそれなりに慣れてきていたが……反面、それまでの経験は不意のアクシデントばかりでもあり、こうした雰囲気やシュチュエーションなどのメンタルな刺激にはからきし弱かった。例えば先程、楓の中に放たなかったのは、それまでどさぐさまじりに生で挿入することが多かったので、初めて使用した避妊具が香也の性感を若干妨げていた……ということにも、起因する。
 しかし、今、香也の分身は剥き出しの生身であり、いつもは澄ました顔をして他人を寄せ付けない雰囲気を持つ孫子が香也の前に跪き、頬を紅潮させ、自発的に香也に口で奉仕している……。
 口で奉仕されるのは、香也も何度か経験していた。例えば、楓と最初に関係したときに口でして貰った時は、ねっとりと包み込むだけで生暖かいだけだったし、この間のテンとガクに二人がかりでされた時は、シュチュエーションや雰囲気が刺激的ですぐに放ってしまったわけだが、二人の興味が物珍しい「男性」の反応を探る、という好奇心半分の、いわば遊びの延長であり、香也を喜ばせようという意図は薄く、当然、技術的にも稚拙なものだった。
 ゆえに、それなりに熱意をもって「予習」してきた、孫子のテクには、比肩するところではなかった。
「……いつでも……」
 顔をあげ、香也の逸物を手でしごきながら、孫子がいった。
「好きな時に、達してくださいね。
 何度でも……どこででも、受け止めます……から……」
 聞きようによってはかなり屈辱的な台詞を、孫子は真面目に口にし、その後、
「こ……このまま、お口で続けてもいいですし……し、下の方に、いれても……かまいません……。
 それと……それとは別に、何かして欲しいことがああったら……遠慮なく……おっしゃってくだされば……できるだけ、お望みの通りのことを……」
 と、時折口ごもりながら、付け加える。若干、口ごもった箇所があったのは、命令や指示を出すことこそ多かったが、孫子は、誰かに要望を尋ねる、ということには不慣れだったためと、それに、自分のはしたない欲望を香也に気取られるのではないか、という懸念のためだった。
 楓やその他のライバルたちに差をつける手段として、自分の持てる物すべてを利用して香也との距離を縮めることは、孫子にとっては当然の思考法だ。孫子は、目的を達成するためには手段を選ばない性格であり、最終目的は香也の気持ちを完全に孫子のものにすること。その目標を達成するためには、自分の容色や女のとしての魅力を使用することにもためらわない。さらに、孫子自身の香也に対する欲望(もっと近寄りたい、触れたい、抱きつきたい、それ以上のこともしたい……など等)を実現する、という余禄まである。
 孫子はこれまでに目にした教材によって、男女の欲望の在り方がどれほど多種多様であるのかを学習していたし、香也がどのような性的嗜好を隠し持ていたとしても、全身全霊を込めて受け止めるつもりだった。
「……んー……」
 意外と落ち着いた様子の香也が、孫子と視線を合わせて、うなった。香也は、困ったような表情をしている。
「才賀さん……。
 無理して、ない?」

 その一言で、孫子はフリーズした。
 その場のノリと勢いでやってきた結果、今、ここに存在する現状を、急に、冷静に意識した孫子は……全身を真っ赤にして、両腕を胸の前に交差させて乳房を隠した。
「むむむむ、無理しててなんか……」
 耳たぶまで真っ赤にした孫子が、香也から視線をそらすために顔をうつむき加減にして、答える。
「してして……いませんわ!」
 そういう割には、口がまわっていなかった。
 薬の効き目が前回ほどではなく、香也には、かなり理性が残っていた。
「……今、ぼく……その、かなり……女性が、その……欲しい、状態なんだけど……」
 香也は、孫子から顔を背けて、ぽつりぽつりと語った。
 以前の時とは違い、意識と理性は明瞭に残っているが、欲望の方もかなり滾っている。それは香也の股間をみれば外からも一目瞭然であって……実際、香也は、イッパイイッパイだった。
「か……楓ちゃんにも、また……つい、こんなこと、しちゃったし……。
 で、できれば、その……才賀さんにも……無理にしはじめる前に……ぼくから、離れて欲しいと……」
 香也が普段よりも多弁になっているのは、口を動かすことによって、自分の気を紛らわせ、すぐ目の前にある孫子の裸体を意識をしまいとしているから、だった。
 こうなると……香也の意識が明瞭であることが、孫子にとって良かったのかどうか……。
 案の定、その香也の言葉を聞いた孫子の目に、じわり、と涙が浮かんだ。
「……そんな……」
 孫子は、呆然と呟く。
「わたくし……そんなに……女としての魅力がありませんか?
 楓は相手にできて……わたくしには、指一本……」
 つーっと、孫子の目じりから涙が流れる。
 一度流れはじめると、孫子の両目から、とどめなく涙が流れ続けた。
「……やっ」
 香也は、慌てた。
「やっ。あっ。その……そ、そんな、つもりでは……」
 ごにょごにょと不明瞭なことをいいながら、香也はかがんで孫子の顔を覗き込む。
「……では!」
 孫子は、きっ、と香也を見つめた。
「わたくしに……。
 最低限……今、楓にしたのと、同じことを……してください!」




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(128)

第六章 「血と技」(128)

 茅は、同級生たちに比べても小柄な方で……百四十センチ台、だろう。一方、シルヴィの身長は、荒野とほぼ同じ、百七十前後。
 それだけの身長差があるので、シルヴぃが茅の胸倉を掴んで自分の目の高さにまで持ち上げると、茅の足は地に着かなくなる。
「……なんだなんだ……。
 おにーさん、そっちでなんかあったか?」
 目ざとく異変を見つけた飯島舞花が、こっちに近づいてくる。舞花の声でこちらの様子に気づいた樋口明日樹や柏あんな、佐久間沙織らも、こちらに寄ってくるし、他の一族の連中も、荒野たちに注目しはじめていた。
「いっ……いやっ……なんでもない。
 単なる身内の……そう。兄弟喧嘩、みたいなものだ……」
 荒野は、周囲の連中に聞かせるために、ことさらに声を大きくして舞花に返事をし、シルヴィに向かっては、
「……ここで、つっこんだ話しは、まずい……」
 と囁く。
「……そう……ね」
 シルヴィは、意外に冷静な声で茅の体を降ろし、
「送っていくわ……。
 続きは、マンションで……」
 言葉少なに、そういった。
 人目のない所で……と、いいたいらしい。
「……わかった。
 ちょっと、待っててくれ……」
 荒野も、頷く。
 それから、きびすを返して、学生連中には、「茅の具合が悪くなったから、自分たちは先に帰宅する……」と、告げ、他の一族の者には、「未成年には、あまり飲ませないように」と注意を与えて、帰る支度をする。テンとガクを泊めてくれる、という玉木には、念を入れて例の言葉を述べておくのも、忘れなかった。
 茅は茅で、その間にティーポットを回収している。

「……ってか、お前たちも来ているし……」
 シルヴィの車に乗った荒野は、バックミラー越しに、後部座席に、茅と一緒に乗り込んできた酒見姉妹を認めて、これ見よがしにため息をついた。
「……茅様の護衛をわたしたちに命じたのは……」
「……加納様ご自身なのです……」
 双子はにこやかに答えたが……二人が単なるのぞき見趣味で同行したことは、その表情を見ればあまりにも明白だった。
 詳しい事情を知らない者をみれば、先程の一件は痴話喧嘩に見えなくもないだろうし……実際、そういう下世話な一面も、あることはあるのだ。
「……好きにしろ……」
 結局、荒野は、双子には憮然とした口調で、そう返答した。
 双子との付き合いが今後も続くのだとしたら……やはり、茅のことも、それなりに知っておいてもらった方が、いい……と、思ったからだ。
「……いい?
 出すわよ……」
 運転席のシルヴィが短く伝え、車を出した。

「……いい、カヤ……」
 マンションに通されると、シルヴィはキッチンの椅子にどっかりと腰を降ろし、いらいらとした声を出した。
「もし、いい加減な気持ちでいるのなら……。
 コウは、渡さないから……」
「……それは、荒野が決めることなの……」
 茅はというと、新しいお湯を沸かしはじめている。
 荒野の居心地は……極めて、悪かった。
「……コウ!」
 シルヴィが、今度は荒野に向き直った。
「……カヤは……なんなの?
 コウにとって!」
 シルヴィは単刀直入に、本質を突いてくる。
「今までは……ママゴトみたいなこの生活も、微笑ましいと思って見守ってきたけど……」
 そういって、シルヴィは、ぐるりとマンションの内部を見渡した。
「でも……あなたたちが……本気ではないなら……。
 軽い気持ちでやっているのなら……とんだ茶番だわ!
 それにつきあわされるわたしたちは……道化じゃないの!」
 そういわれた荒野は……二の句が継げなかった。
 確かに……はじまりは、ごく些細な、荒野の「私情」だったはずが……今では、その「私情」を全うするために、多くの人が動き出している。
 学校の連中、この町の人、それに、駆けつけてきた一族の人々……。
「いい加減な気持ちでやっているのなら……こんな茶番、即刻中止すべきだわ……」
 もちろん、それぞれに欲得づくで動いている、という側面もあるのだが……根本に切っ掛けは、荒野がこの土地に居続ける、という決断を下したことにある。
 だから……荒野は、シルヴィの言葉に、反論できなかった。
 確かに……いい加減な気持ちなら……これだけ多くの人に影響を与えているのは……どう考えても……。
「でも……そういう人たち、みんな……」
 茅が、お茶の葉を蒸らし、カップを暖めながら、シルヴィに反駁する。
「荒野が頼んで、動いてもらっているわけではないの。
 荒野が何かを頼んだことがあるのは、楓だけ……。
 その次が、そこの二人……」
 そういって、茅は、酒見姉妹を示した。
「それ以外は……全員、荒野を口実にして、自分のやりたいことをやっているだけなの……」
 それもまた……シルヴィがいっていることが正当であるのと同じくらい、正確な事実なのだ。
 玉木や徳川の動きをコントロールすることは、とうの昔にあきらめている。三人娘も、突発的な非常時などの例外的な時を除けば、もともと荒野のいうことに耳を化すほど素直な連中ではない。孫子も、同様。続々と集まってきた一族の者も……荒野が「来てください」と懇願して誘致した訳ではない……。
「……御旗……あるいは、神輿なら……なんの責任もないってわけ?」
 茅の言葉を受けたシルヴィが、目を細める。
「責任は……取れるかどうかは、わからないけど……。
 少なくとも荒野は、投げ出そうとはしていないの」
「……それなら、いい加減な気持ちで、これだけ大勢の人を振り回していいっていうの!」
 シルヴィが、大きな声を出した。
「……荒野には、問題はないの」
 それまでお茶の準備をしていた、茅が、ポットを抱えて振り返る。
「問題があるとすれば……それは、茅に……なの……」
 その場にいた全員が茅の顔をみて……そして、目を離せなくなった。
 茅は、みんなの視線を集めていることを承知しながら、ポットをテーブルの上に置き、暖めたカップとソーサーを全員の前に配る。
「……茅……。
 毎日、どんどん……変わって行くの……。
 目が覚める度に……世界が、知覚範囲が広がって……。
 過去の事物から、身の回りの人の行動パターンが予測できて……。
 か、茅には……今では、あらゆることが……」
 見え過ぎるの……と、茅は、いった。
 平静な口調を保とうとしながら……茅は、涙を流し続けた。
「……こ、こんなになったら……こんなに、みんなと違ってしまったら……茅、荒野といられない……。
 そう遠くない将来……荒野は、茅のことを怖がりはじめるの……。
 か、茅だって……離れるのは、いやだけど……こ、荒野に嫌われるのは、もっと……もっと……」
 茅は、立ちすくんだまま……静かに、泣き続けた。
「……カヤ……」
 シルヴィが立ち上がり……。
「……ずっと一人で……抱えていたの……。
 コウにも他の誰にも相談せず……」
 そういって、茅を、抱き寄せた。
 茅が、シルヴィの腕の中で頷き、静かに、すすり泣きはじめる。
「……はいはい。
 よく、今まで……我慢してたね……」
 そういって茅の肩を静かに叩きながら、シルヴィは、ポケットから香水瓶を素早くとりだす。
 片手で器用に瓶の蓋をはずし、瓶の口を茅の鼻先に、いきなりつきつけた。
「……はい。
 詳しい話し合いは、後ですることにして……」
 シルヴィがそういう間にも、茅の体がぐらぐらと揺れはじめる。
「今は……お休みなさい……。
 その間に、ヴィは、コウと……今後の事を、話し合って置くから……」
 茅が気を失うように眠りにつくと、シルヴィは茅の体を抱え、荒野に、「……ベッドは、どこ?」と尋ねた。
「……あれが……」
「……姉崎の、薬物……」
 隣の部屋に茅を運んで行く荒野とシルヴィの背中を見送りながら、酒見姉妹がそういって、顔を見合わせる。




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彼女はくノ一! 第五話 (211)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(211)

 香也は依然、孫子が持ち込んだ怪しげな薬の影響下にあったわけだが、以前とは違い、今回はかなり明瞭な意識を保ったままで、目の前の女体を思うさま蹂躙したい、という欲望を亢進させ、その衝動のままに動いていた。
 その「目の前の女体」とは、要するに組み敷いている楓のことで、香也が楓の中を味わうのはこれで何度目かになるわけだが、回数を重ねるに従って、楓のそこの感触が微妙に違ってきているのが、香也にも感じとることができた。最初の時は痛いぐらいにギチギチと締め付けてきたものだが、今回は十分な湿度と適度な力を伴って侵入する香也をやんわりと包み込んでいる感触がする。そして、香也が動く度に敏感に声をあげ、うめき、反応する。楓の反応が面白くて、香也はことさらに腰を、いろいろな角度にうちつけてしまう。
 香也が動く度に、は、あ、ひゃ、などとと声をあげながら楓が反応する。身もだえをし、声をあげる。普段、他人に対する征服欲などかけらも感じたことのない香也が、この時ばかりはもっと楓を思うように動かしたい、という欲望に突き動かされている。楓の中は湿潤を通り越して濡れぼそっており、滑りがよすぎて、避妊具をつけた香也が自身が往復する時、腰を大きく引いた拍子にスポンと音を立てて抜けそうになるくらいだったが、抜けそうになる寸前に、楓の位口のあたりが香也を惜しむようにキュッとしまる。そして、そこから一気に前に押し出し、楓の突き当たりにまで貫くと、楓は悲鳴ににた鳴き声を上げて身震いする。楓が頬を紅潮させて身震いをすると、豊かな張りのある双丘がぶるぶると震える。眼下にそれを認めた香也は、それを、楓の一部をむしゃくしゃにしたい衝動に駆られて鷲掴みにし、力任せに握り潰す。楓がのけぞって、喉の奥から、きゅうっ、と空気を漏らし、香也の手の中の白い乳房に血の気が増してピンク色になる。
「……いやらしい……」
 という、孫子の声が聞こえる。
「……この子、乱暴にされて、喜んで……」
 そういう孫子は、ざくざくと香也が乱暴に動く部分に手をいれて、楓の肉目を指で刺激しながら、冷めた目で反応する楓を観察している。
 一見、冷静なようだが、顔全体が赤みをさしており、目が潤んでいる。
 ……ああ。才賀さんが、欲情している……。
 ということを認識したとたん、香也は、孫子の首を抱き寄せて、その口唇を奪っている。孫子は抵抗をするどころか、まるでそれを待ち望んでいたかのように香也の動きに反応し、大きく口を空けて堅くて熱い舌を香也の口の中に侵入させてきた。
 同時に、香也の腰の動きが早く、激しくなる。
「……駄目。
 駄目駄目駄目駄目!」
 香也の下で蹂躙されている楓が、いやいやをするように首を振りながら、叫ぶ。香也から与えられている快楽をこらえようとしているのか、それとも、孫子と香也が自分の上で口づけを交わすのが不満なのか、にわかには判断できない。
 ただ、この異常な状況に急速に高まってきていることは、確かなようだ。
 香也も、膝立ちになった孫子に半ば縋るような体勢をとりながら、楓の股を抱えて持ち上げ、尻を浮かせ、体重をかけて上から下に押し込むようにして、分身で楓の中を撹拌する。
 そのような体勢になったことで、新たな刺激を受けるようになったのか、楓がそれまでにもまして激しく悶えはじめた。楓は、香也と畳に挟まれた状態で首を振り、慌ただしく表情を変える。楓の白い裸体が、すっかり紅葉色に染まっている。
「……やっ。はぁっ。んっ」
 とかいいながらが、ぱたぱたと落ち着つかなげに手を動かし、首を左右に振る。
 香也は、楓の反応を気にしているのかいないのか、更に激しく楓の中をかき回す。
「……やっ。やっ。やっ……や! や! や!」
 楓は、徐々に、短く、そうとしかいわなくなり、最後に、
「……やぁああぁー!」
 と叫んで、全身からぐったりと力が抜け、寝そべってぴくぴくと痙攣するだけとなった。

 楓が虚脱すると同時に香也も動きを止め、その場にへたり込んで息を整えていたが、今度は孫子がそんな香也に縋り付いて抱擁し、口唇を求める。
 孫子に誘導されるまま、香也は楓の上から身を離し、楓の中に隠れていた香也の分身が、湯気をたてていきり立ったままの姿で姿を現し、ぶるん、と震えた。
「……あいつ……まだいってなかったようだな……。
 若いのに似ず、長持ちする……。
 それとも、思ったよりも回数やっているのかな?」
 三島が、香也の股間の状態を確かめて、そんなことをいいだした。
「……なに、他人事のようにいっているんですか、先生……」
 そういいながらも、羽生の目も、香也の陽物に釘付けになっている。
 楓の愛液に濡れて、避妊具の薄い皮膜に包まれてはいたが、中身の形状はしっかりと確認できた。楓との交情の後が残っているのが、ひどく生々しく感じる。羽生とて、勃起時の香也の分身は何度か目撃しているのだが、その時と比べても一回り逞しくなっているように、見えた……。
 その時、羽生は喉を鳴らしているのだが、自分ではそうとは気づいていない。
「……なんだ、お前さんもアレ、欲しくなったか?」
 三島が、羽生の変化を見透かしたようなことをいう。
「そ、そんな、わけは……」
 反射的に、羽生の口から否定する言葉がでてきた。「……そっか? わたしゃあ、アレ、欲しいけどな……」
 三島はそういって、もぞもぞと尻を動かす。
「ま……今度は、才賀の番らしい……。
 わたしらの順番まで、あの糸目が保つかな……」
 ……本気で生徒とやる気かよ、この先生は……と、羽生の目が点になった。
 それも、一時の激情に流されて、とか、逆に、真剣に相手を思った末に行為に及ぶ……というのではなく、三島の口調には、「もののついでに自分の要求も解消しておこうかな」、といった気楽さが滲み出ている。
 この人にとってセックスは……真剣な物でも深刻な物でもなく、スポーツや他の娯楽と同じく、気晴らしの一種なんだな……と、羽生は、その三島の軽い口調から理解した。
 もちろん、「呆れながら」ということではあるが。

 羽生と三島がそんなやり取りをしている間にも、孫子と香也の行為は続いている。
「……んふっ。んふんふんふ……」
 とか含み笑いをしながら、孫子はついばむように香也の口唇を求め、同時に、いきりたったままの香也の分身に手を延ばして、掌で包み込んだり、指先で表面をなぞったりしている。
「……これ……とりかえますわね……。
 わたくしは……直でも……直にしていただく方が、いいのですけど……でも、今日は先生たちも、見ておりますから……」
 そういって孫子は、ちらりと三島と羽生の方を一瞥してから、香也の前にかがみこんだ。
 もともと、孫子は……ひどく大人びた所のある少女だったが……その時の目付きは、完全に、「女」のもので、目があった羽生の方がかえって動悸を早くした。
「……ほい、次のな」
 三島が箱の中から次の避妊具の包みを取り出し、孫子に投げる。
 孫子はそれを受け取った後、一旦、畳の上に置き、香也の前にひざまづいた姿勢で香也についたままのゴムを外しはじめた。
「……んっ……あの子の、匂いが……」
 そういいながら、孫子は、器用に香也のものから避妊具の皮膜をはがして行く。
 孫子の手によって、完全に皮膜が外されると、香也の分身がビクンと上下に身震いした。
 その香也の分身に、孫子が、むしゃぶりつく。
 孫子は、音をたてて香也自身に、口で奉仕しはじめた。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(127)

第六章 「血と技」(127)

「茅は……みんなとは、違うの……」
 周囲はそれなりにざわめいていたのだが……茅のその声は、荒野には、はっきりと聞こえた。
「……カヤ……」
 シルヴィは、ゆっくりと首を振る。
「あなたぐらいの年齢の時は……誰でも……多かれ少なかれ、みんな、そう思うものだよ……」
 つい先ほどまでの片言ジャパニーズではなく、しっかりとした発音だった。
 そのせいか、男性的な雰囲気を発散させている。
「そういうのとは、違うの……」
 茅は、射すくめるような強い目線で、シルヴィの目をまともに見返す。
「茅は……一般人とも、一族とも……違うの」
 茅のほうも、凛とした口調だった。
 シルヴィが示唆したように、過剰な自己憐憫に浸っているわけではなく……事実を事実として告げている、淡々とした口調だ。
「……OK……」
 シルヴィは、肩をすくめた。
「そういうことに、しておこう。
 では、どこがどういう風に違うのか……具体的に、説明してもらえるかな?
 そのつもりで……そんなことをいいだしたんだろう?」
 茅は、無言で頷く。

 一方、荒野は、ある種のショックを受けながら、このやり取りをみていた。
 シルヴィの態度がいきなり男性的になったことに、ではない。むしろ、このシルヴィの方が、以前、荒野が知っていたシルヴィに近い。荒野と兄弟をやっていた子供の頃のシルヴィは、頭の回転が速く決断力もあり、「非ガキ大将タイプ」の、近所の子供のまとめ役だった。
 再開してからのシルヴィは、過剰なまでに「ガイジンらしさ」と「女らしさ」を演出し、外部に印象付けていたようだが……姉崎の一員としてここに来た以上、それなりの擬態はしているだろう思い、荒野はその変化について問いただすこともしていない。
 荒野がショックだったの、シルヴィの変化にではなく……茅が、荒野にではなく、シルヴィにそうしたことを話しだした……という事実について、だ。

「……まず、各種の検査ですでに判明していることからいうと……」
 荒野の動揺に構わず、茅は話しを進めている。
「茅も、他の三人も……五感については、概ね鋭敏だったの……。
 視覚も聴覚も……常人の平均的に知覚できる帯域よりも、かなり大きくはみ出した波まで、拾える。
 嗅覚や味覚については……化学的な感覚については、定量的客観的に検査する方法がないのではっきりとは断言できないけど……そうした味や匂いについても、普通よりもずっときめ細かい部分まで、判別できることができる……」
「……あの三人の中に、ひどく鼻が効くのがいるでしょ?」
 そういって、シルヴィは、茅の言葉に頷く。
「……それは、ガク。
 感覚器の鋭敏さにも、各人の個体差が大きいけど……それでも、わたしたちが感じている世界は……みんなが感じている世界とは、違うの」
 茅は、丁寧に説明する。
「そこまでは、了解した」
 シルヴィが片手をあげる。
「だけど……その程度の個人差なら、一族にも、ざらにある。
 野呂に、時折、目や耳、鼻が、極端に効く者が生まれるのは周知の事実だし……」
「……それだけでは、ないの」
 茅は、シルヴィの言葉をさえぎるようにして、先を続ける。
「茅は……わたしたちは、佐久間の頭脳も、受け継いでいる。
 これも、受容の仕方にかなり個人差があるようだけど……鋭敏な感覚器から刻々ともたらされる膨大な情報と、それを四六時中処理する……できる、頭脳の組み合わせは……」
 結果として、通常の人間が知覚するものとは、まったく違った世界を見せるの……と、茅は告げた。
「……茅が、いくら荒野と一緒にいても……。
 茅と荒野が見ている世界、感じている世界は……まるで、違うの」

 その後、茅が説明したことをまとめると、次のようになる。
 最初に違和感を感じたのは、写真やテレビ、それにCDなどのメディアに一度記録させたものが、茅が見たり聞いたりしたものを、忠実に再現していないことだった。
 はじめのうちは、茅も、そうした用途に使う機械が、技術的に未発達なせいで正確に再現できないのだ、と思い込んでいたのだが……。
 この土地に来て、多くの人間と会いたくさんのその手の機械に触れた後では……茅も、自分以外の大半の人間は、その程度の「大雑把な記録」でも、十分に「リアル」に感じられるらしい、と、気づかないわけにはいかなかった。
 茅のその推測を裏付けたのは、何度か行われた、涼治が用意した「検査」だった。自分が何者であるのか……ということに興味を持っていた茅は、自分の検査データを……三人が合流して来てからは、その分も合わせてコピーしてもらい、自分自身で分析してみた。
 結果は……やはり、自分たちは、他の人間より、かなり緻密に外界を捉えている……という推測を、裏付けるものだった。
 茅の感覚器は、他の人間よりも高精度に、外界の情報を感知している……という事実には、荒野も気づいていたが……。
「……それで……何が問題に、なるんだ……」
 この話題になってから、荒野がはじめて口を挟んだ。
「だって、その……仮にそうだとしても……茅は、茅だろう?」
 荒野は……なんだか、今までに築いてきた茅との関係が、揺らぎはじめたような錯覚に囚われはじめている。
「茅は、茅なの」
 茅はそういって、荒野に向かって頷いてみせた。
「茅は、荒野ではない。
 一般人でもない。一族でもない……」
 茅は……誰とも違うの……と、茅は呟く。
 その表情が……いつもにもまして、読めなかった。
「同じ場所にいて、一緒に住んでいても……茅と荒野とでは、別の世界に住んでいるの」
 荒野は、茅がいうことを……懸命に想像し、理解しようとする。
「……茅……」
 荒野は、うめくようにいった。
「ヴィとのことを承知したのは……おれを、自分から離すためか?」
「それも、あるの」
 茅は、あっさりと頷いた。
「今の時点でも……茅は、みんなと……荒野とも、違うの。
 それに……この先も、まだまだずっと異質なものに変化していく可能性があるの。
 何とか、互いに理解できる範囲内の異質さに留まっているうちは、いいけど……茅の変化がどこまで進むのか、今の時点では、あまり正確な予測は不可能。 だから……茅が、今の茅でなくなった時のために……荒野には、あまり、茅ばかりを見て欲しくないの……」
「……あー……カヤ……」
 シルヴィが微笑みながら、茅に話しかける。
 一見、和やかなシルヴィの微笑をみて……荒野の背筋が、凍った。
 あの微笑みは……ヴィが、本気で怒っている時の……。
「……ふざけるな!」
 荒野の懸念通り、シルヴィは素早く茅の胸倉を掴んで、自分の目の高さにまで吊り上げた。
「……コウが……。
 その程度のことを気にする男だと、本気で思っているのか!」




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彼女はくノ一! 第五話 (210)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(210)

「なんか……想像していたのと……」
「かなり違うってか?
 ま、もともとイレギュラーなヤツらだしな……」
 羽生と三島は炬燵にあたりながら、いつの間にか用意したお茶を啜っていたりする。
 それから三島は、ふと何かに気づいた顔になって、傾けた湯呑みから顔をあげて、羽生の方に顔を向けた。
「……っていうか、お前さん、他人の性行為をこうして間近に見た経験、あるのか?」
「……あるわけないでしょ。
 先生じゃあるまいし……」
 羽生は、若干げんなりとした表情で答える。
「AVとかは、観たことあるけど……」
 羽生は、同人誌の参考にするため、ネット上に置いてあるサンプルファイルなどを集めて鑑賞した経験がある。観ていて興奮したのは最初のうちだけで、すぐに飽きた。基本的に単調な作業にシュチュエーションや服装で若干のアレンジを施し、延々と同じことを繰り返しているだけなのである。一通り、その手のコンテンツの「性質」を見極めた羽生は、体位などを効果的にみせるための構図やアングルなどを研究するために、早送りでみるようになった。
「ま、普通に考えれば、そうだろうな……」
 三島は、羽生の言葉にあっさりと頷く。
「他人がやっているところをこうして見る機会なんざ、滅多にあるわけじゃないし……。
 これも社会勉強だ、じっくり見ておけってぇーの……。
 しかも、これ、3Pだし……」
 とかいって、三島は、いしし、と邪気のない笑みを浮かべる。
 三島のそうした様子をみていると……羽生は、一人でドギマギしているのが馬鹿らしくなってきた。
 目の前で展開されている情景は、やはり、AVで観た、あるいは羽生が漠然と想像していた性行為とは、まるで違った生々しさがあった。三人ともが身近な同居人である、ということを除いても……自分よりも年少の三人が、明らかに快楽を求めて絡み合っている様子は……三人が動物である、という当たり前のことを、否が応でも再認識させてくれる。
「今の所……主導権を握っているのは、才賀か……」
 三島が、呟く。
 その言葉通り、孫子が楓を落ち着かせ、香也の行動をある程度制御している……ように、みえる。加えて、楓にも時折愛撫や言葉をかけて、高ぶるのを手助けしている。
 その様子をみて、三島は、
「……才賀のやつ……見た目の通り、Sっ気があるな……」
 と評したが……羽生は、そんな孫子の落ち着きぶりに、かえって不信感を抱いた。
『……ひょっとして、ソンシちゃん……』
 そうした態度が、孫子の年齢と相応していない……ということもあったが、ほんの数日前まで男を知らなかった孫子が、あそこまで落ち着いていられるのは……。
『……楓ちゃんを落ち着かせようとして……必死になっているんじゃないか……』
 今の時点では、確証はなかったが……あれで責任感が強く、負けず嫌いの気がある孫子が、弱みをみせたくはないために虚勢を張って余裕のあるふりをしている……というのは、大いにありそうだった。
 こうした場面で、そうした虚勢が長続きするとも思えなかったが……。
『でも……いずれにせよ……』
 もうしばらく、見守っていればわかるか……と、羽生は思う。
 不思議と、席を立とうとは思わなかった。
 目の前で展開されている三人の営みは……いやらしい、とか、羽生を興奮させる……とかいうことはなく、むしろ、挙動から伝わってくる、三人の必死さとか切実さが……。
『……せつない……な……』
 と、羽生には、感じられる。
 そのもつれ合いは……三人が三人とも……体全体を使って、すぐそばにいる人間に、自分の存在を必死にアピールし、認めさせようとしている……ように、羽生には、みえた。
 香也は楓を抱えて起き上がり、楓の体を畳の上に投げ出して、その上に覆いかぶさった。孫子は、服を脱いで丁寧にたたみ、その上で香也の背中に抱きつく。
 もはやブラだけしか身につけていない孫子の、肌の白さが目を射た。
 孫子にしなだれかかられたまま、香也は、体を不器用に前後に揺さぶりはじめ、背中にとりついた孫子は、腕を前にまわして香也の服を脱がせはじめた。腰を使いながら、香也は、孫子の動きを助けるように腕を動かし、完全に全裸となる。
『……あっ……』
 と、羽生は思った。
 服を脱いだ香也の背中は、記憶していたよりも肩幅が広く見える。
 背中から抱きついている孫子の肩幅との対比から、なおさらそう思うのかも知れない。
 孫子も今ではブラを外し、全裸で香也の背中に絡みついていた。
『……そっかぁ……』
 と、羽生は納得した。
『もう……こーちゃん……』
 子供じゃあ、ないんだな……と、今更ながらに思った。
 畳みに両手をつき、激しく楓を責めている香也は、確かに、もう子供とはいえなかった。最初のうちこそその動きはぎこちなく感じられたものの、今ではコツを掴んだのか、かなりスムースな動きになっている。組み敷かれている楓は、喘ぎ声をあげる合間に「こうやさま、こうやさま」とうわごとのように繰り返している。孫子は、しばらく香也の背中に張り付いて、香也のうなじに口を這わせたり、髪を手ですいたりしていたのか、そのうちにまた楓の方に手を伸ばしはじめた。
 孫子は後ろから手を廻して香也の股間に手を差し込み、楓との結合部をもぞもぞと指先でまさぐりはじめる。
 敏感な部分に触れたのか、
「……ひゃぁあっ!」
 と、声をあげ、香也の下にいる楓が、大きく体を振るわせた。
 楓の上にいる三人の体が、ぶるん、と震える。
 その反応に味をしめたのか、孫子は香也の背中から離れ、楓と添い寝するような体制で、楓を弄りはじめた。
 最初のうちこそ、横から手を入れて楓の乳房を弄ったりするだけだったが、楓が孫子の愛撫にいちいち反応するため、面白くなってきたのか、徐々に大胆になり、そのうち、楓の耳たぶや乳首を噛んだりしはじめる。
 香也の動きが激しくなって来たこともあり、楓は断続的に大きな声をあげはじめる。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(126)

第六章 「血と技」(126)

「……はぁーい……」
 不意に耳元で囁かれても、荒野はさして驚かなかった。
 気配を消して後ろに立ち、いきなり声をかけて驚かせる、というのは、子供の頃からシルヴィの常套手段であり、荒野にとっては手垢にまみれたやり口でもある。
「……あ、姉崎!」
「……なんでここに!」
 しかし、荒野と同行していた酒見姉妹は、大仰に驚いていた。
「あら……随分ないわれよう……」
 シルヴィは双子を値踏みする目で見据える。
「コウ……なに、この貧相な小娘たち……。
 コウの新しい愛人?」
「……んなわけねーだろ……」
 荒野は、げんなりとした口調で答える。
「酒見純と酒見粋。見た通り、姉妹だ。
 しばらく、下校時限定で茅のボディーガードを頼むことにした……」
「……Oh!」
 シルヴィは、芝居がかった動作で拍手をうつ。
「It's……Sakami Twins!
 Bloody-sistersネ!
 あの、目的のためには悪い方の手段をあえて選ぶ、一族のハナツマミ!」
 明らかに、酒見姉妹を挑発していた。
 しかし、酒見姉妹の方は、俯いて体をぶるぶると小刻みに震わせはするものの、何もいわない。
 先ほどの楓とのやり取りで使い慣れた獲物を破砕された、ということもあるのだろうが、姉妹にとっては未知の人物であるシルヴィの実力を考慮して、あえて耐え忍んでいるのだろう……と、荒野は思った。
 酒見姉妹は、むやみやたらに誰にでも乱暴を働くわけではなく、特に相手が一族の者ならなおのこと、慎重にその実力を見極めようとする計算高い一面もある。
 荒野の知り合いらしい……ということを除いても、姉崎がこの土地に送り込んできたほどの人物なら……姉妹が簡単にあしらえるほどの小者である確率は、極めて低いのであった。
「……こっちは、シルヴィ・姉崎……。
 おれがガキの頃お世話になっていた家で、姉代わりをしていた人でもある……」
 荒野は、俄かに緊迫してきた空気を和らげるため、あえてのんびりとした声をだして姉妹にシルヴィを紹介した。
「例によってあっちこっち嗅ぎまわっているから、どこでばったりと出くわしてもおかしくないけど、お互いに仲良くしてやってくれ……」
 荒野は、「仲良く」という単語を、ことさらに力を込めて発音した。
「……コウ……」
 荒野の言葉が終わるか終わらないかのうちに、シルヴィは後ろから荒野の首に抱きつく。
「……今度の週末の、約束の確認なんだけどぉ……」
 荒野の首と頭に腕を廻して、耳元に囁く。
 茅は、少なくとも表面上は、平然としていたが、酒見姉妹の顔は目に見えてこわばっていた。
『……ヴィ……あんまり、刺激するなよ……』
 荒野が密着しているシルヴィにしか聞こえないような小声で、注意を与える。
『あら……この程度、いつものスキンシップじゃない……』
 シルヴィも、小声で荒野に返答し、その後、大きな声で、ゆっくりと、
「……今度の週末、ヴィの所に泊まりにくるって約束のことだけど……」
 などといいだした。
 じわり、と荒野の掌に汗が滲む。
 酒見姉妹ではなく……標的は、こっちか……と、荒野は思った。
 荒野は動揺を隠すために、心中でゆっくりと数を数えはじめた。
 ……一、二、三……と三つ数えてから、
「……たまにはいいよな、昔の話しをするのも……」
 と、返す。
「子供の頃といえば、おれ、ヴィには、かなり手ひどくやられた記憶しかないけど……そういうのも、今となっては、いい思い出だ……。
 そういうのを一晩語り明かすのも、いいよね……」
 自分でしゃべっていて、いかにも説明的だなぁ……と、荒野は思った。
 荒野とシルヴィがそんなやり取りをしているちに、酒見姉妹は二人でこそこそと内緒話をしていた。パツキン、外人、ナイスバディ、などの単語が漏れ聞こえてきたので、どういうことを話しているのか容易に想像がついた。
 姉妹の想像力について特に幻想を持っていなかった荒野は、それゆえに幻滅することもなかったが……。
「……で、予定の確認、だったよね……。
 金曜日の夜……が、いいかな……」
 荒野はじりじりと追い詰められている気分になりながら、茅に話題を振る。
 別に茅は荒野の秘書でもなんでもないのだが、茅の表情はきわめて読みにくい。だから、言葉をかけてしゃべらせてみないと、実際問題として、現在、どういった感情を抱いているのか推し量ることが難しかった。
「……金曜で、いいと思うの……」
 茅の声は、一応、平坦なものだった。
 少なくとも、感情の高ぶりやブレなどは観測できない。
「でも……なるべく、遅くに……。
 まだ当分……どんなお客さんが来るのか、油断できないから……」
 放課後の時間も、なるべく空けておく方がいい……という意味のことを、茅はいった。
「……All right……understand……」
 シルヴィも、茅の言葉に、頷く。
「カヤ……本当に、いいのネ?」
 続けて……シルヴィが、茅に尋ねた。
 結局……直接、茅の言質を取って置きたかったのだろう……と、荒野は推測する。
「構わないの」
 茅は即答した。
「姉と弟が、会って昔話をする……。
 ただそれだけの、ことなの」
「……Yes……。
 姉崎は、Famliyを大切にする……例えそれが、義理の、仮初のものであっても……。
 カヤも、もう、ヴィのFamliyね……」
「違うの」
 茅は、これも即座に否定した。
「シルヴィと荒野は兄弟でも、茅と荒野は、違うの……。
 だから、茅とシルヴィも、姉妹ではないの……。
 茅は……シルヴィや荒野よりも……この場にいる誰よりも……もっともっと、孤立した存在なの……」






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彼女はくノ一! 第五話 (209)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(209)

「……んんっ……」
 楓が、徐々に腰を沈めて香也の存在を飲み込んでいく。
 香也の首に腕を廻し、口唇では香也の舌を嬲ったままだったので、剥き出しになった楓の腰だけが浮いている形だった。中途半端に先端を茂みの中にいれた香也が、楓の下半身を下から支えて起立しているようにも見える。
「……んふぁっ……。んっ。んっ……」
 鼻息を荒くしながら、楓はしずしずと腰を降ろしていった。
 が、その楓の上に、孫子がいきなり乗りかかる。
「……ふぁ……ふぁぁあっっふぁぁっ!」
 楓は寝そべっている香也の上に覆いかぶさっていたので、慌てて腕に力を込め、自分と孫子の分の体重を軽減しようとしたが、不意をつかれたため制動が間に合わず、いきなり香也を深く銜え込んでしまった。
「……な、何する……」
 二人分の体重を直接、香也の体にぶつけることを危うく回避した楓が背中を振り向き、いきなり自分の背中に乗りかかった孫子を非難しようとする。
 そして、意外なほど近くに孫子の顔があったので、ギクリとしてあげかけた非難の言葉を飲み込んだ。
「……いい……」
 楓の耳やうなじに息を吹きかけるようにして、孫子が囁く。
 孫子の声は、妙に湿っていた。
「……先を……いやいやでも、先を譲って差し上げたのですから……。
 しっかり、香也様を感じなさい……」
 そういいながら孫子は、手を素早く楓の下腹部に廻し、陰毛を掻き分けるようにして、香也との結合部の周囲を指でたどった。
 いきなりもたらされた繊細な刺激に、楓は、「……んひゃぁあっ!」と小さな悲鳴をあげ、また少し、腰が沈み、香也との結合が、深くなる。
「……いやらしい子……。
 こんなに、湿らせて……」
 孫子は、楓の中に進入している香也を、指先でつついて硬さを確認してから、再び指を結合部周辺にさまよわせる。
「そ、そんなに……されたら……」
 楓が弱弱しく抗議する。
「……されたら?」
 楓とは対照的な冷静な声で答えながら、孫子は、楓の肉芽を探り出し、親指と人指し指の間で摘んだ。
「……んっふぁっ!」
 と声をあげて、力の入らなくなった楓は、香也の上につぶれる。香也が完全に「入っている」状態となったわけだが、孫子から予期せぬ刺激を受け続けた楓は、そこまで意識している余裕はない。
「いい? 楓……」
 孫子は、折り重なっている二人の脇に横臥した。
 そして、楓の耳に口を近づけ、息を吹きかけるようにして、囁く。
「以前はどうだったのか、知りませんけど……」
 囁かれる度に耳に当たる孫子の吐息が、こそばゆくて、楓の思考がよくまとまらない。
「……あなたは……もう、一人ではありません……」
 その言葉に楓は、はっとして孫子の方を振り向いた。
「わたくしもおりますし……それに、感じるでしょう?」
 そういって、孫子は、楓の腰のあたりに手を置く。
「……はい……ひゃっ!」
 孫子が、腰に置いた手を楓の股の方に降ろしていったので、楓は、何度目かの小さな悲鳴をあげた。
「……感じやすい……。
 ほら、ちゃんと動かなくては……。
 あなただけではなく、香也様も、感じさせて……」
「……は……あっ! はいっ!」
 楓は、そろそろと腰を動かしはじめ、香也の上にうちつけはじめた。
 それまで、どさぐさまぎれだったり妙に急かされたような慌しい行為しかしてこなかった楓は、ことさらにゆっくりと香也の上で動いて、自分の中に親友している香也を味わおうとしている。
「……はっ……んっ……んっ……」
 緩慢、かつ単調な動きでもそれなりに感じてくるのか、楓の声が、徐々に弾んでくる。
 孫子は、楓が香也を味わっている間に、ごそごそと楓の体に手を這わせ、まず、パジャマ越しにブラのホックを外し、次に楓の前のボタンをすべて外した。
「……こんなに、いやらしい胸をして……」
 孫子はそう囁きながら、ボタンを外した楓のパジャマの前を、はだける。
「……や、やらしくなんか……」
 弱弱しく抗弁しながらも、楓は、香也の上で動くことを止められない。
「いいのよ……そのままで。
 そのやらしい胸で、早く香也様を喜ばせてさしあげなさい……」
 いいながら、孫子は、楓と香也の体の間でたぷたぷと弾む乳房の前に手を差し込み、楓の乳首を指先で摘んだ。
「……ひゃぁっ!」
 楓が、大きく体を振るわせる。
「……ほら……。
 香也様……楓は、ここが感じるみたいですよ……」
 孫子が、今度は香也の耳元に口を寄せた。
「楓を……無茶苦茶にしてみたくはありませんか?
 もちろん……わたくしでも、いいのですけど……」
 それまで、されるがままで反応らしい反応を示さなかった香也は、突如上体を起こして、楓の豊満な乳房にむしゃぶりつく。
 結合したままいきなり香也が姿勢を変えたので、あやうく横転するところだったが、楓と孫子が二人かかりで姿勢を座位に近い形に持ち直す。
 胡坐をかいている香也の膝の上に楓が乗り、その楓の胸に香也は顔をうずめている。そして、普段からを想像もつかない荒々しさで楓の乳首を片方、口に含み、もう片方の乳房を力任せに鷲掴みにして揉みしだいた。
 楓に快楽を与えるため、というよりも、香也の衝動を解消するための行為であることは傍目にも明らかだったが、楓は背をそらして上体を硬直させる。
 鷲掴みにされた乳房の方は痛いだけだったが、歯を立てられた乳首の方は、痛みと同時に切ないような感覚を楓に感じさせている。
 孫子が指摘した通り……乳首は、楓を感じさせるポイントのようだった。
 加えて……楓の中には、相変わらず、硬直した香也が深々と突き刺さっている。
 二人の姿勢が安定すると、孫子は立ち上がり、制服のブレザーをハンバーにかけて、ネクタイを外し、ワイシャツも脱ぎ、スカートも落とす。
 そして、ワイシャツとスカートを畳んで少し離れた場所に重ねてから、ブラ一つを身につけただけの恰好で、香也の背中に抱きつく。
 香也の胴体に腕を廻して抱きつき、頬を香也の背中に密着させ、目を閉じた。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(125)

第六章 「血と技」(125)

 その後は、ようするにただの宴会が行われたわけで、荒野と茅、それに酒見姉妹の一行は一族の主だった者たちに挨拶してまわり、他の生徒たちは適当に散っていった。誰もが一度は静流のお茶を体験しにいったようだが、それ以外の行き先はバラバラで、顔見知りの放送部員の集まりに合流する者もいれば、愛想のいい一族と打ち解けて話しはじめる者もいる。放送部員たちもいつの間にか散っていて、一族の者とごっちゃになって談笑していたりする。
 この場に集まったのは十代から二十代の若年層が多かったので、年齢が近い気安さで、学生とは混じり易い……ということも、あったのだろう。それに、一族の者も、できるだけこの土地に関する生の情報を欲しがっていたし、学生の方も、好奇心が強かった。
 大方の利害が一致しているので、自然と友好的な空気が生まれ初めていた。
 主だった者に挨拶回りをしながら、荒野は、「くれぐれも、問題を起さないように」という一点だけは、しつこいくらいに注意を与えていた。
 荒野にとって重要なのはそのただ一点だけであり、逆に言うと、何も問題を起しさえしなければ、どんな問題児がやってこようが受け入れる覚悟をすでに決めている。
 例の「悪餓鬼」どもの対策として動員をかける、などという話題は、荒野の方からは一切出すつもりはなかった。正直な所、ある程度戦力になる人手は喉から手が出るほど欲しかったが……それにしたって、あまり「その気」のない者を無理に誘ったとしも、たいした戦力には、なりやしないのだった。
 仮に協力を仰ぐにしても、それは相手の実力と性格、やる気などを、慎重に推し量った上で、じっくりと口説いて行けばでいい……と、荒野は思っていたし、だから、今の時点で初対面からいきなり協力を要請する、ということも、一切しなかった。
 また、そうした荒野の態度は謙虚なものとして、その場に集まった一族の者に、おおむね好意的に受け止められた。

 楓とともに荒野の実力を目の当たりにした一族の者たちは、実際に荒野と言葉を交わしてみると、荒野が一族の実力者にありがちな、独善的でエキセントリックな性格の持ち主ではなく、ごく普通の気さくな少年であることを実感し、一様に安心した。
 なにかと「濃い」実力者に頭を押さえ付け、指示を受ける経験が多い彼らにとって、荒野の「普通さ」、「会話のし易さ」は大きな安心感の源泉となった。荒野と年齢が近い者が大勢を占めることもあり、六主家の跡継ぎという地位にありながら、この土地での「共生実験」を自分の意志で開始した荒野に敬意をもって扱う者も少なくはなく、挨拶回りをするうちに、彼らのうちの大多数が、荒野を、この場での、自分たちのリーダーと目していることも、肌で感じることができた。
『……そういうの、くすぐったいんだがな……』
 とか思いつつ、荒野は、反面、かなりありがたい風潮だ……とも、思っている。
 いざという時、救援に駆けつけてくれる人数は、やはり、多ければ多いほどいいのだった。

 荒野がみた範囲では、この工場内に集まった一族の者は、何種類かに分類ができた。
 まず、戦力外の予備軍的人材が、興味本位に訪れる場合……つまり、「半端組」。
 これは、孫子とテンに接触してきた、佐藤、田中、鈴木、高橋など、素質か本人の修養が足りない、または、年端もいかないため、未だ現場に出ることが許されていない層を指す。
 基本的に一族も、そんな半端者をいつまでも相手にしていられるほどリソースに余裕があるわけではない。だから、「術者としての見込みなし」と判断された段階で、そうした半端な一般人社会へ戻されるシステムになっているので、数的には、微々たるものだった。
 孫子とテンに接触してきた四人は、まだ年齢的も若いし、完全に見限られてはいない……そういう者たちだ、と、荒野はあたりをつけている。
 次に、負傷などをして、一時的に現場から離れているものが、休養と暇つぶしがてらに、こちらの様子を見にきた……という場合、つまり「負傷休養組」。
 今工場内に集結した五十余名のうち、十名強がこれにあたる。彼らは、松葉杖や三角巾を使用している場合が多いので、見分けがつきすかった。
 この層は、負傷をしているわけだから、戦力としてはまるで当てにできないし、傷が癒えれば現場に戻って行く。つまり、入れ替わりが激しい。
 しかし、意見を聞くためのオブバーザーとしては有用な存在になるのではないか……と、荒野は判断し、ゆえに、粗略に扱うことはしなかった。
 さらに、静流や仁木田など、特殊な事情を抱えた者が、ものは試しと移住を思い立つ場合……つまり、「わけあり組」。
 静流は、六主家本流の生まれであり、十分な素質も持ちながらも、その障害故に、存在自体がかなり「特殊」だし、仁木田たち六人は、特殊すぎる体質や技、あるいは、一族の非主流派出身のマイノリティである。
 それぞれ、理由は異るが、仕事を割り振られる機会がかなり限定されている……という事情は、共通している。
 長すぎる待機時間を、できるだけ安心できる環境で過ごしたい、と思うのは、実に自然な心理だと荒野も思った。
 この「理由あり組」は、数の上では少ないが、戦力としては当てにはできる……と、荒野は考えている。
 この土地でうまくやろう……という思惑が荒野と共通していて、士気も高い……という理由も今更だが、それに加えて、実力も十分に持ち合わせている例が多いのが、この「理由あり組」の特徴だった。
 ただ、それぞれに癖のある人達だから、いざ使うとなると、それなりに使い所が難しい……という面も、あったのだが……。
 そうした分類に当てはまらないのが、「とりあえず、様子見」組。
 仕事の合間とかに、気まぐれに立ちよって様子を見にくるやじ馬連中で、これが、人数の上では大多数を占める。
 こうした連中は数が多いだけで、邪魔にもならないかわりに戦力としても当てにできない。
 荒野にとっても、一番どうでもいい層だが、だからといって悪い印象を与えても、荒野にとっていいことがあわけでもない。
 だから、荒野は、一見してそうと分かる者に対しても、特に態度を変えなかった。
 当たり障りのなく、愛想よく人と付き合う、というのは、普段からそうした態度を心掛けている荒野にとっては、特に苦にならない擬態なのである。
 おそらく、荒野と対応した大多数の術者も、荒野のそれが「営業用」の態度であると弁えていたはずだが、だからといってそれが問題視されることもなかった。

 一通り、主だったグループに顔通しを終えると、荒野は、どこからか香ばしい匂いが漂っていることに気づいた。
「……鉄板焼き?」
「あつ。ども」
 荒野が初めて見る……ということは、一族の、若い男が顔を上げて荒野に頭を下げた。
「……ちょうどいい鉄板が転がっていたから、洗って使わせて貰ってます……」
 男は、両手で専用のコテを使い、焼きそばとキャベツを混ぜている所だった。
「それ……焼きそばっていうやつ?」
 荒野が尋ねる。
 食生活のメインが自炊である荒野は、名前と存在は知っているが、実際には食べたことがない、という料理が、実は、かなりある。
 その大半は、軽食とかジャンク・フードの類いなのだが……。
「……加納様。
 焼きそば、食べたことないんですか?」
 酒見姉妹のうち、ジャージ姿の方が、荒野に尋ねる。
「うん。
 おれ、海外が長かったから……」
 頷いて、荒野は、その酒見の片割れに問い返した。
「その……焼きそば、っていうの……うまいの?」
 酒見姉妹は、顔を見合わせる。
「……決して、うまいわけでは……。
 たいていは、油とかソース、ギタギタだし……」
「でも、縁日とか浜茶屋のは、雰囲気でおいしく感じる時もあります……。
 そう……味よりも、雰囲気でおいしく感じるものですね……」
「……なるほど……」
 荒野は真面目な顔をして、頷いた。
「そういう、ものなのか……」
 荒野があまりにも真面目くさってそういうので、酒見姉妹は再び顔を見合わせる。
 相手が荒野でなければ、吹き出していたかもしれない。

 結局、試しに全員で食べてみよう、ということになった。
「……まずい、っていうわけじゃないけど……とりたてて、おしいものでもないなぁ……」
 というのが、荒野の感想だった。




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彼女はくノ一! 第五話 (208)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(208)

 孫子が香也の顔の上に跨がろうとした瞬間、電子音の「メリーさんの羊」が鳴り響いた。
 慌てて香也は手を伸ばし、楓が脱がせたジーンズを引き寄せ、ポケットから自分の携帯を取り出して、耳にあてる。
「……はい。狩野ですけど……。
 あ……。どうも……。
 いえ。いえ。
 ……んー……。
 なんでも、ないです……。
 楓ちゃんも、もう落ち着いて……」
 香也が明日樹に対応している間にも、楓は香也の局部に取り付いて、口で愛撫していて、目線をあげれば、下着を脱いだ孫子がスカートの裾をつまんで、香也に中身がよく見えるように持ち上げている。
 そんなことをされると、香也も思わず目をこらしてスカートの中をみてしまう。
 孫子は、はにかんだような笑みを浮かべ、潤んだ瞳で香也を見下ろしている。

 楓は、ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、と音を立て、香也を丁寧に舐めあげ、亀頭を口に含んだり甘噛みして刺激を与えたりしている。
 楓も、香也しか男性を知らない身だが、男性を喜ばせるための知識は、養成所時代に一通り教えられている。寝技が必要な局面もあるから、養成所にいる女性全てに、一通りの知識が与えられるのだ。楓自身は、身体能力の成績が群を抜いて良かったので、早々にそうした授業を免除されたのだが。
 それでも、楓は、香也を舐めているうちに段々気分がでてきて、もぞもぞとパジャマの尻を動かしはじめていた。

 香也は、戸惑っているように動かないが……それでも、鼻息が徐々に荒くなっている。
 下半身を楓に押さえられ、顔の上に孫子が跨がっている今の状態では、当然、香也は動けない。動けない……が、当然、かなり刺激的な状況ではあるわけで……。
 楓に咥えられている部分はこれ以上はない! というくらいに勃起していたし、鼻から口にかけては、孫子の陰毛と局部が直接接触している。スカートが香也の頭部をすっぽりと覆い、通気がほとんど無いということもあって、香也はむっとするような孫子の匂いをいやがおうでも感じてしまう。
 孫子のイメージにそぐわない動物的な香りを吸い込むうちに、香也の鼻息は、自然、荒くなっていく。
 ここにいたっても、香也は……いまだ自分からは動かず、性衝動を自制しようとしている。
 以前の時もそうだったが……薬品の作用によって自分を失う、というのが、香也には、なんとも不本意だった。

『……ああ……』
 孫子は、香也と接触している部分が徐々に湿ってくるこのを感じ……とても、恥ずかしくなった。
 そうしてじっとしているだけでも、孫子自身から体液が分泌されている……。
『わたくしったら……はしたない……』
 そう思いながら、孫子は、我知らず、
「……す、好きにしてくださって……。
 い、いえ……。
 どうか……好きに……嬲ってください!」
 とか、口走っている。
 という孫子の、媚を含んだ声が聞こえてくると……香也の自制も霧散した。
 両手で孫子の太ももをがっしりと掴み、舌を出して、孫子の下の唇を舐めあげる。
 香也の舌がそこに触れると、孫子が「……ひゃぁあっ!」という声をあげて体全体を震わせた。孫子の匂いがきつくなり、香也の口もとを、孫子自身から出てきた透明な液体が濡らす。
 香也は、本能の赴くまま、音を立てて孫子の液をすすり、舐め上げた。
「……ひゃっ! ふぁっ! んひゃっ!」
 香也の舌の動きに合わせて孫子が声をあげ、体をうち震わせる。
 孫子の腰が、香也との接触面を前後にこするように、動く。
「……んっはぁあぁ……!」
 香也が舌の先で孫子の裂けめを割り、内部に侵入すると、すでにある程度高まっていた孫子は、その場で硬直して軽く達してしまった。
 しばらくして硬直が解けた孫子は、ゆっくりと香也の体の上に倒れ込む……。

 三島に腕を引かれて居間に戻ると、寝そべった香也が楓と孫子に乗り掛かられていた。孫子が香也の顔の上にまたがり、楓は、はだけた香也の下半身に顔を埋めている。
『……うわぁ……』
 と、羽生は心中でうめいた。もちろん、他人の房事を目の当たりにするのは、はじめての経験である。
「……おおっ! 姦ってる、姦ってる!」
 対して、三島の声は特に上ずっていたり擦れていたりすることもなく、きわめて平明な調子で、まるで朝の挨拶でもする時のようなリラックスした調子だった。
「やっぱ、若いもんは、こんくらいでなければな……。
 持て余すほどのリピドーを発散させるためのいい口実ができたんだ、大いに姦りたまえ!」
 などといいながら、ゴム製品の入った箱を折り重なった三人に放る。
「……でも、責任を持てないうちは、避妊だけはしっかりしとけよぉ!」
 とも、付け加えた。
 ……羽生は、だんだん、自分だけがどぎまぎしているのが、馬鹿らしくなってきた。
 ……なんなんだ、このノリは……。
「お前さんも、そんなところに突っ立ってないで、炬燵にでも入ったらどうだ? 寒いだろ?」
 羽生にそういって、三島自身ももぞもぞと炬燵に手足を潜り込ませる。
「……それとも、お前さんも服脱いで参加するかね?」
 平然とそんなことを聞いてくる三島の顔を、羽生はまじまじと見つめた。
「三島さん、あんた……仮にも、教員でしょう?」
 そういいながらも羽生は、三島のいうとおりに、炬燵に入る。
「何、そんなもんは、仮の姿さね……」
 三島は、やけにあっさりと答えた。
「それに……盛ったガキどもに限らず、人間の性欲が簡単に押さえ込めるようなら人類の総人口はここまで増えていないし、できちゃった婚もなかろう……」
 それなりに真理も含んでいるが、投げやりないいようでもある。
「……第一……」
 三島は、三人を指さした。
「もう、こつらには、なにいっても耳にはいっていにだろ……」
 確かに、彼ら三人は、お互いの体をさぐるのに忙しく、羽生や三島の存在は、まるで意識する余裕もない……ように、見えた。

 しばらく、くちゃ、くちゃ、くちゃ……という水音と、三人の押し殺したあえぎ声だけが、響いた。
 楓は、四つん這いになって香也の局部に顔をつけ、恍惚とした顔をして、香也の男性を口にしている。完全に勃起した状態の香也自身が楓の口元に見えかくれている。
 羽生は、その部分に自分の視線が釘づけになりかけたことに気づき、赤い顔をして、慌てて眼を逸らす。
「……なんだ、見ているうちに、なんか変な気分になったか? ん?」
 三島に見透かされたような事を指摘され、羽生の頬はますます熱くなった。
「ま、あの二人が満足して、それでもまだ少年に元気があったら、頼んでみるんだな……。
 ゴムは、十分にあるし……」
 羽生は三島からが視線を逸らして、自分の動悸が収まるのを待った。

 香也の上に倒れ込んだ孫子が、横に転がる。
 その拍子にスカートの裾が捲れあがり、何も身につけていない下半身があらわになる。
「……おおぉー!……」
 と、三島は歓声をあげた。
「すげぇ……太股まで、垂れてきている……」
 三島の言葉通り、孫子の足の付け根から太股まで、透明な液体でぐっしょりと濡れている。
 孫子の抜けるような白い肌と、対象的に黒々とした小さな茂みが、羽生の目を射た。
 茂みも、たっぷりと液体を含んで雫を光らせている。
 孫子は、三島の言葉も耳にはいらないのか、横転した、下半身を剥き出しにしたまま、動かない。
 ただ、目を細めて、空中の一点に視線を据えている。
 その表情が、この少女に似つかわしくもなく、恍惚と弛緩していた……。

 孫子がどいた香也の体の上に、楓が乗った。
 香也の顔を平手で挟み、強引に口唇を合わせ、香也の口を割り、舌を滑り込ませる。
 香也はすぐに反応し、むしゃぶりついてきた楓の肩を抱き返した。
「……んっふっ……」
 蕩けたような笑みを浮かべながら孫子が、半身を起す。
 そして、楓のパジャマに手をかけて、そのズボンを、中の下着ごと、一気に引き降ろした。
「……才賀……。
 入れるんなら、こいつを忘れるな……」
 三島が、箱の中から出したゴム製品を一袋、孫子に放る。
「……ふふふっんっ」
 普段の理知的な表情とは違う、半ば惚けたような表情で、孫子は、三島が投げた平たい袋を受け取り、すぐに封を切る。
「……これ……使ったことは、ないのですけど……」
 そういいながら、孫子は、楓の股間に手をいれて、少し空間を作り、そこから香也の男性を引っ張り出した。その時に孫子の指が敏感な部分に触れたのか、楓が身じろぎをする。
 それに構わず、孫子は、器用に香也の男性に避妊具をかぶせた。
「うまい、うまい」
 三島が、孫子の手つきを褒めたたえた。
「はじめてにしては、上出来だ……」
 いや……そういうところ、褒めるのは……なんか違うんじゃないだろうか……と、羽生は思った。
「……さぁ……」
 孫子は、ゴムで武装した香也の分身を、楓にあてがった。
「香也様に……あなたの存在証明を……たっぷりとしていただきなさい……」




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(124)

第六章 「血と技」(124)

 それ以上、その場で話し合うべきこともなく、全員がぞろぞろと事務所を出て、工場内の宴会に合流した。
 テンとガクは、やはり一族の者の興味を引くらしく、なにくれと声をかけられ、引き留められた。荒野は、慇懃に挨拶や目礼をされることの方が、多い。
「……カッコいいこーや君……。
 いい所の、出……ということなんだよな?」
 そうした様子を見た玉木が、以前、荒野から教えてもらった知識を確認する。
「……いい所……かは、ともかく……六主家……は、おれらの間ではそこそこの権威だからな……」
 荒野は、おもしろく無さそうな顔をして、肩を竦めた。
「……自分で生まれが選べるんなら……今の家は、絶対に選らばないとは思うけど……」
「……なんで?
 こんなに……」
 そういって、玉木は、荒野に頭を下げた人たちの方を、ざっと見渡す。
 玉木や荒野と同年配の者も若干はいたが……大半は、明らかに年上の、社会人の風情だ。大の大人から、こうして頭を下げられる、敬意を表される……ということは、玉木や荒野の年齢では、まずないことで……。
 玉木には、それを面白くは思っていない……という荒野の心理が、まずもって理解できない。
 自分たちの年齢の者の言動が、いい大人たちに影響を与え……場合によっては、平伏さえ、する。
 それの、どこが気に食わないんあろうか?
 ……というのが、玉木の論法である。
「理由はいろいろあるけど……一言でいうと、重いんだ……そういうのは……」
 荒野は、平坦な口調でそう説明をし、
「とりあえず、今は……そんなことよりも、メシ食おう、メシ! みんな、お腹減ったろう?」
 と、すぐに、話題を変えた。
 そういって歩きだした荒野の後ろには、茅と酒見姉妹がつき従っている。
 玉木が、荒野の背負っているものの「重さ」に思い至るのは、もう少し、時間が経過してからのことになる。

 あちこちで声をかけられるテンとガクは、すぐに荒野たちと同道するすることをあきらめ、声をかけられ、勧められるままに食物や飲料を少しづつ頂いては、すぐに別の場所に移る、ということを繰り替えしはじめた。
 一族の者は、どうやら、同郷とか同じ血族で小グループを作って固まって飲食しているらしい。
 その島の一つ一つを、テンとガクは、飛び回りはじめる。
「……彼女たち……すっかり、人気者ね……」
 佐久間沙織が、そいいった。
「……ええ。
 まあ、ああやって、顔を繋いで行くことは、やつらにとってもいいことだと思います……」
 荒野は、答える。
「……テンは、全員の顔を覚えるだろうし……。
 それに、一族にとっては……自分の能力を何の疑問もなく誇示するやつらが……」
 うらやましくて、眩しいのだろう……と、荒野は思う。
 思えば、一族は……他者より秀でた能力を持つ、と内心で思いながらも、その事実をひた隠しにし続ける……という存在だ。
 その存在形態自体に、構造的に、内心の屈折を抱え込んでいる……とも、いえる。
 テンやガクには、そうした屈折がない。素直すぎるほどに、自分たちの異能を、楽しんで使っている。それは、まだ白眼視された経験もなく、自分の手を汚したこともない、無垢な者特有の素直さ、なわけだが……。
 同時に、それは……多くの、現場での経験を積んだ術者が、自らの内にはすでに見いだすことができない資質、でもある。
 テンやガク、ノリたち新種の存在は……彼女らが、存在すること自体が、これまでの一族の価値観を、揺るがせはじめている……と、荒野は、思った。
 テンやガクと肩を並べて談笑をしている、一族の者の晴れやかな顔は、なかなかに「いい」のではないか、とも……。
『……このまま、やつらが、正義の味方でいつづければ……』
 この勢いは、さらに広い範囲にまで、波及することだろう。
 彼女ら、新種と、この土地で実験的に行われている、一般人社会との共栄共存が、成功するとすれば……。
 最悪……か、最善、かは、物事を観測する者の価値観によって異なってくる評価ではあるが……そう遠くない将来、一族は、もはや旧態然とした「一族」としては、存在し得ず……大きな変質を迫られることになる。
 荒野自身には……それが、いいことなのか悪いことなのか、正直よく分からない。
 確かに、自分たち一族は、何百年か、あるいは、もっと長い期間にわたって、汚穢の海に頭の上まで浸かり、本来なら一般人自身が、自分の手で解決しなければならない問題の多くを、時として、荒っぽい方法で解決するための「手段」として、自分たちを位置付けてきた。
 その汚穢は、一般人社会が自然と生み出してきた矛盾が堆積してできたもので、自分たちは、その「一般人社会」というの枠の外にいる。故に、自分たちは、請負仕事として汚穢に浸かっても、その汚れは、自分たちは自身のものではない。自分たちは、金……か、別の対価を貰って、代わりに自分たちの技を売っただけだ……というのが、これまでの一族が掲げてきた、テーゼである。
 もっともこのテーゼも、とうの昔にもはや「建前論」的なものと化しており、丸呑みしてそのまま信じ込んでいる純真な者は、一族の中にはいないのだが……。
 しかし、ここで荒野たちが進行している「共栄共存」が成功すれば、自動的に、一族の存在も衆目の者となり、否応無く、一般人社会のパーツとして取り込まれる。それまで「一般人社会の部外者」として振る舞ってきた一族が、今度は、「一般人社会に取り込まれる」……。
 すると、それまでは、「自分たち以外のもの」、「外部のもの」として冷笑していればよかった汚濁も、「自分たち自身のもの」として、直視しなければならない。
 それまで、「一般人」と「一族」との間に歴然とした一線が存在したのには、やはり相応の理由があって……で、なければ、そんなシステムが、何百年も存続するわけはないのだ。
 それは……「一般人」と「一族」との間に境界を設け、お互いを蔑視する代わりに、営々、臭いに蓋をし続ける、という、それなりに理に適った「仕掛け」であり……しかし、その「一族」が、公然と、「一般人」に混ざって生活をしはじめたとしたら……。
『……保守派の反動も……近いうちに、眼に見える形になるだろうな……』
 荒野としては、そう予測せざるを得ない。
『……しかし……』
 荒野は、思う。
 ただ、茅を……たった一人の女の子が、笑って過ごせる環境を作るために……自分は、とんでもなく大きなものを相手にしはじめてしまったのではないか……と、今更ながらに、思う。
『まったく……そういうの、柄ではないんだがなぁ……』
 荒野は、思わず苦笑いをする。
 社会を変革する、なんて……世間知らずで、向こう見ずで、理想主義者の自称革命家が目指すべき目標だ。荒野自身が辛うじて当てはまる要素は、そのうちのった一つ、「世間知らず」という項目だけだろう。
 革命に成功した「革命家」は、この世には存在しない。大半は、志し半ばで頓死する。そうでない少数の成功者は、成功した途端、「革命家」から「権力者」へ転身する。それは、歴史が証明している。
 そして、荒野は、理想に殉じる革命家も、権力者に成り上がる革命家も、権力者そのものも、指向していない。
 荒野が目下の所、目指しているものは……平々凡々たる一学生だった。




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彼女はくノ一! 第五話 (207)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(207)

「……なんだ、これは?」
 三島が、炬燵の上に置かれた小瓶を見つめて、呟いた。
「超、強力な……媚薬です」
 香也が逃げられないように、片腕を押さえ込みながら、孫子が答える。
「……びっ……」
 羽生が、小瓶を覗き込んで息を詰める。
「なんだって……そんな、ものを……」
「効果と副作用がないことは、実証済み……それに……。
 ようは、楓が……自分自身が、誰かに必要とされている、と、実感できればいいんでしょ?」
「……あっ! そ、そういう、ことか……」
 羽生は、複雑な表情をして、頷く。
「つまり、そいつ飲んでそこの少年にイッパツ決めてもらえば……収まりがつくってか? ん?」
 孫子の意図を察した三島が、笑いながら香也の空いている方の腕に縋って、身動きを封じた。
「……そういうことですわ……」
 孫子も、婉然と笑う。
「もちろん、わたくしも、同席するつもりですけど……」
「……わっ!
 ……さらりと大胆なことをいうなぁ、ソンシちゃん……」
 二人のノリについていけない羽生が、顔を赤らめながら、顔を顰める。
「……まあ、そういうな。
 昔っから、アレは、ヒステリーを収めるための実効的な手段だし……この薬を提供したのは、才賀だ。
 そんくらいの余禄くらいあってもかまわんだろ? うん?」
 三島は、もはやこの状況を完全に面白がっている。
「……それよりも、羽生さんや。
 わたしゃ、ちょっこら隣に帰ってゴム取って来るから、コイツが逃げないようにこっちの腕を押さえろや……」
「……先生……。
 あんた……先生なのに、自分ところの生徒の淫行を手助けするんか?」
 羽生は、もはや呆れ顔である。
「……ガキのやりたい一心を抑える建前論より、避妊や世間様の安全を確保するのが先だっつーの……。
 それとも……お前さんは、この先楓が暴れまわっても、いいってのか? ん? ガキの……それも、やりたい盛りの男のガキの貞操が、そんなに大事なもんか?
 それよりは、ご乱行の一つや二つに目を瞑った方が、なんぼか平和だと思うんだがな……。
 どせ、同じ年頃でも隠れて盛大に盛っているの、ごろごろおるわけだし……」
「……そ、それは……恋人同士で、合意の上でのやるのと、こういう異常なシュチュエーションでやるのとでは……」
 羽生は、しどろもどろになりながら、三島に抗弁しようとする。
「……なんだ、いざとなると意外に方堅いんだな、お前さんは……」
 三島は、平然とそういいながら、素早い動作で炬燵の上に置いてあった小瓶を手に取った。
「……才賀。
 これ、こいつに飲ませればいいのか?」
「ええ。飲ませさえすれば、五分もかからずに、効果が現れます」
 孫子が、にっこりと微笑んで、三島の質問を肯定する。
「一度効きはじめると……回りにいる異性に、飛びかからずにはいられなくなります……」
「結構結構」
 三島は頷きながら、小瓶のキャップを外す。
「才賀……しっかり抑えているよ……。
 今、こいつに飲ませるから……こう、鼻を摘まんで、っと……」
 鼻を摘ままれ、息を詰めた香也が思わず口を開くと、三島はすかさずそこに瓶の口を突っ込んで、大きく傾けた。
「……あの……先生……そんなにいっぺんに服用すると……とんでもないことに……。
 ごく小量でも、十分に効き目はありますから……」
 お膳立てを整えた孫子にしてからが、心持ち、青ざめた顔をしている。
「……なに……。
 才賀。お前さんも、ここまで協力的だということは、大方、おこぼれを貰う算段しているんだろ? ん?
 どうせやるのなら、せいぜい盛大にやろうじゃないか。わたしも、ここんところ御無沙汰だしな……」
 香也がゴクゴクと喉を鳴らして液体を飲み込んだのを確認すると、三島は香也の口から瓶を放し、キャップを閉めて炬燵の上に置く。
「……こんなに……」
 蒼白になった孫子の頬が、期待に赤みをさして来る。
「これは、もう……ただでは済みませんわね……」
 瓶の中身は、半分ほど減っていた。
「……そうかそうか。そんなに凄いのか。それは、楽しみだな……」
 三島は、にししししっと笑った。
 羽生は、狼狽した様子でおろおろとあたりをみわたすばかりである。
 内心では、止めた方がいい……とは、思っているが、羽生は、三島に孫子、という強烈な個性に逆らえるほど弁が立つわけでもないし、強固な信念を持っている訳でもない……。
 そんな時……。
「……何、やっているですか……」
 低い……それこそ、地の底から響いて来るような、楓の声がした。
 振り返ると、パジャマ姿の楓が、ジト目で仁王立ちになっていた。

「……じゃ、わたしゃ……。
 ゴム、とってくるから!」
 軽やかに宣言して、三島は、さっさと玄関の方に向かう。
「この瓶に……見覚えは、ないかしら?」
 孫子は、炬燵の上を指さし、ここぞとばかりに香也の首を抱き締める。
 孫子の胸が自分の顔に押し付けられているのだが、香也は、抵抗らしい抵抗をしていない。
「……そ、それは……」
 炬燵の上に置かれた小瓶を一目みた楓は、戦慄して叫んだ。
「……えっちをしないと、死んじゃう薬!」
 ……なんだよ、それは……と、羽生は、反射的にコケそうになる所を、反射的に自制した。
 根が素直な楓は、以前、孫子が吹き込んだデタラメを、未だに信じ込んでいる。
「……そう。
 香也様……一人で、こんなに、飲んじゃったの……」
 孫子は澄ました顔で、楓をたきつける。
「でも……あなたは、なにもしなくていいわよ……。
 今度は、わたくしがお世話をして差し上げますから……」
 そういって孫子は、炬燵に入っている香也と向き合うようにして……香也の膝の上に、座る。
 香也は、抵抗をしないどころか……あえいで、孫子がこれからすることを、待ち構えているような節さえみられる。
「……んふっ……。
 香也様のここ……もう、こんなに硬くなって……」
 孫子は、着替える暇もなかったので、未だ制服姿である。
 そのスカートをたくしあげて、下着越しに、恥部を、香也の股間に密着させ、楓にみせつけるように、自分の腰を前後に揺さぶる。
 そして、香也の肩の上に両腕を回して、耳元に口を近付け……囁く。
「……ね……。
 このまま、存分に……犯してくださって……結構ですのよ。
 わたくし……んっ……香也様になら、何をされても……はっ……」
 静かに、ではあるが……生地越しに、股間をなすりつけているせいで、孫子自身も、徐々に感じはじめている。
「……なにいっているですか、この女は!」
 そうした様子を目の当たりにした楓は、乱暴な動きで孫子の体をのけて、香也の上に馬乗りになった。
「……はやく、はやく……出さないと危ないというのに!」
 楓は、孫子の薬を、「射精しないと、毒が回って死ぬ」ものだと思いこんでいる。
 押し倒した香也の上体に馬乗りになった楓は、そのまま香也のベルトを外し、いきりたった香也の男性を取り出し、「……まだ慣れてないので、あまりうまくはありませんが……」とかいいながら、口に咥えた。
 そうなると、香也の顔の上に、楓の股間がくる。いわゆる、シック・ナインの体制だった。
 これだけの至近距離であれば、風呂上がりの楓の体臭が、パジャマの生地越しにでも香也の鼻孔をくすぐる。
「……そ、それでいいの……」
 孫子が、香也の上に重なった楓の上に、さらに重なった。
「楓……。
 あなたは……いろいろなことを、我慢しすぎなのです。
 欲しいものは、ちゃんと欲しいといいなさい……」
 楓は、孫子の言葉が耳に入っているのかいないのか……夢中で、香也自身に舌を使っている。
 孫子は、一度楓から身を放して、スカートの中に手をいれて、するりと下着だけを抜き取り、香也の顔の上にまたがった。
「……こ、香也様……見えます?
 これ……こうするの……凄い、恥ずかしいんですのよ……」
 事実、そういう孫子の声は、妙に湿り気を帯びている。

 ……その場にいるのがいたたまれなくなった羽生は、一旦、廊下に出て、少し考えて、テンに電話をかけた。
 まさかこんな現場を……テンやガクに見せるわけにも、いくまい……。
 羽生は、電話に出たテンに、「今夜は帰らない方がいい」と伝える。当然、テンはその理由を知りたがったが……説明する羽生自身でさえ、どうしてこういうことになるのか、よく理解できないのだから……羽生の説明も、自然と歯切れの悪いものになる。
 しばらくの押し問答の後、話し相手が茅に交代したので、羽生はかなり安心して、茅に今までの事情を話した。
 障子越しに、居間の房事の音を聞かせたりも、した。
『……わかったの』
 電話の向こうで、茅は、奇妙に物分かりがよかった。
『あるいは……言葉を尽くすよりも、その方が、いいかも……。
 こちらは、適当に説明をしておくから……今夜一晩は、頑張るといいの……』
 一通り説明をすると、茅はすっかり納得して、そういって通話を切った。
「ナニを頑張れというんだ、ナニを……いや、ナニを頑張れ、と、いっているのか……」とか、「何で、これで納得するかな……」と思いながら、羽生は、しばらく、携帯電話を見つめていた。
「……おし。
 ゴム、とってきたぞ……。
 中はどうなっている? まさか、まだ挿入はしていないだろうな……」
 避妊具の箱を持った三島が、息を弾ませて、玄関から飛び込んでいた。
 そして、羽生に抗う間を与えず、m三島は羽生の腕をつかみ、ずんずんと居間に邁進していった。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(123)

第六章 「血と技」(123)

「まあ……ヒーローとかヒロインに、トラウマや意外な弱点があるのはお約束だし……」
 玉木が、わかったようなわからないような納得の仕方をする。
「なに、意味不明なことをいっている……」
 荒野が、焼き魚の最後の一切れを嚥下して、骨と頭だけがついた串を無造作に投げ、五メートル以上離れたゴミ箱の中に放り込んだ。
「……ストライク、なのだ……」
 徳川が、判定した。
「これくらい……できて当然、か……」
「……それより!」
 ガクがいきなり大声をあげたので、全員が注目する。
「ヒロインは、楓おねーちゃんじゃなくて……ボクたち、シルバーガールズなの!」
 ガクに注目した全員が、どっと疲れた顔になった。
「……はいはい……」
 疲れた全員を代表して、荒野が、答える。
「そっちの段取りは、玉木に頼め……。
 おれたちは……」
 荒野が何かいいかけた時、着信音が響いた。
「……あっ。ボクのだ……」
 テンが、自分の携帯を取り出し、液晶を確認した。
「……にゅうたん? なんだろう?」
 首を捻りながらテンは、その場で通話をはじめる。楓たちと一緒についさっき帰ったばかりの羽生が、このタイミングでかけてくるのだ。急ぎの用件か、楓の件に関係した連絡だろう……と、テンは予測した。
「……はい、テンですけど……。
 はい。はい……。
 え? ええっと……。うん。ちょっと待ってて……」
 テンは、一度携帯から顔を放し、事務所内にいた全員に振り返った。
「あの……にゅうたんが……今夜は、このまま……ボクとガクが、どこかに泊まってくれると助かるっていっているけど……」
「……なんなんだ、それは……」
 全然話しが見えない一同を代表して、荒野が聞き返す。
「ボクにもなんだかよく分からないんだけど……。
 楓おねーちゃんを落ち着かせるためにも、ボクたちは、今晩、帰らない方がいいっていっているけど……」
「……なんなんだ、それは……」
 荒野は、もう一度コピペで同じことをいった。この程度のことで手抜きとはいわないように。
「普通に考えれば……一晩、ゆっくりと……みんなで、楓ちゃんと話し合うとか……」
 柏あんなが、自信のなさそうな声でいった。
「……うーん……。
 羽生さんと香也君だけならともかく……他の二名がなぁ……」
 荒野が、腕を組んで考え込む。
「……あっ。
 三島先生と……才賀さん、か……」
 飯島舞花が、そんなことをいいながら、ポリポリとこめかみを掻く。
「確かに……どちらも、ベクトルは違うけど……。
 ……だし、なぁ……」
 その場にいた全員が、舞花の言葉に「……うーん……」と腕を組んで考え込む。
 三島百合香と才賀孫子、この二人が「常識外れの規格外品」である、という認識は、この場にいる全員が共有しているらしい。
「……茅が、話してみるの……」
 茅がそういってテンに手を差し出す。
 テンは、素直に携帯を茅に手渡した。

「……やっぱり、テンとガクは、今晩はあの家に帰らない方がいいと思うの……」
 茅は数分間、話し込んでから通話を切り、テンに携帯を返す。
「……なにを、たくらんでいるんだ?」
 不審顔の荒野が、茅に尋ねる。
「悪いことは、何も。
 ただ……楓を説得するためには、人数が少ない方がいいから……」
「……本当に……それだけ、か?」
 荒野は、重ねて聞き返す。
 茅の表情は、基本的に読みづらいのだが……荒野には、微妙な表情の違いが、読み取れるようになっている。
 今の茅は、「嘘はいっていないが、カードをすべてオープンしているわけではない」という顔をしている。
「楓を慰めて……新しい……もっと強い絆をつくるの……」
 茅は、どう解釈していいのか、判断に悩むような返答をする。
「心配する必要は、ないの。
 絵描きなら、きっと出来るの……」
「彼……香也君も、関わっているのか……」
 荒野は、さらに考え込む。
 あの場には、孫子も羽生も、いる。
 三島だけならともかく、その二人がいる場で、香也をだしにして、おかしな真似はしないだろう……と、荒野は判断した。
 仮にも孫子がいる場で、香也におかしな真似をできるとも思えない……。
「……香也君が承知しているのなら、まあ……信用するべき、なんだろうな……」
「……才賀さんも、いるし……」
 樋口明日樹も、荒野の言葉に追従する。だけど、口調がいかにも自信なさそうで、なんだか、無理に自分を納得させているような響きでも、あった。
「……樋口先輩……心配なら、香也君のところに、電話して聞いてみたら?」
 柏あんなが、小さな声で提案した。
 あんなには、明日樹の気持ちはよく理解できた。
 普段は、香也のことを「狩野君」と呼んでいるのだが、この場に荒野がいるのと、ほかの人たちに習って、この場では香也のことを「香也君」と呼んでいる。
「そう……ね。
 そうしてみる」
 明日樹は立ち上がって、みんなから少し離れ、携帯を取り出す。
「で……お前ら、外泊するのなら、前みたいに、うちに来るか?」
 明日樹が電話をしている間に、荒野はテンとガクと打ち合わせをはじめた。
「……あっ。泊まるんなら、うちでもいいよ。
 弟と妹も喜ぶし、両親もそういうのは気にしない人たちだから……」
 玉木も、片手を上げてそんなことを言い出す。
 玉木の家にとって、テンとガクはよく買い物に来るお得意さんだし、玉木の弟と妹にとってガクは、「顔に落書きをしたおねーちゃん」だった。
「……ボクは、どっちでもいいけど……」
「でも……いつもかのうこうやのところばかりでも、なんだから……今夜は、玉木おねーちゃんの所にお世話になろうか……」
 テンとガクは、顔を見合わせてそんなことを言い合う。
「……うん。わかった。
 じゃあ、また明日の朝……」
 そんなことをいっているうちに、明日樹が、通話を終えた。
「狩野君……。
 別に、心配するようなことはなにもない、って……。
 声も……普段よりも張りがあって、元気そうに聞こえたくらいだし……」
 通話を終えた明日樹は、そう報告した。
「じゃあ……当面の、楓のケアは……あの人たちに任せてみる、っていうことで……いいのかな?」
 荒野は、いつもより数段自信がなさそうな声で、周囲の者に確認してみた。
 茅だけが、自信ありげに荒野の言葉に頷いている。




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彼女はくノ一! 第五話 (206)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(206)

 その場にへたり込んだ荒野には焼き魚を手にした三島が、膝を突いて泣きじゃくる楓とその楓の肩に手を置き何やら話しかけている香也には、孫子が、それぞれに駆け寄る。
 香也をここまで導いてきた茅は、香也たちの傍から離れて荒野の方に向かった。
 遠目に見物していた玉木や徳川たちは、なんとなく、もう大丈夫だろう……という気分になってくる。
 茅と三島が荒野に向かってなにやら話しかけると、荒野は焼き魚を咥えたまますぐに立ち上がり、とぼとぼと意気消沈した足どりで、事務所が入っているプレハブに向かった。
 同時に、三島が、楓と孫子、香也の三人を連れて、出口に向かう。
 玉木や徳川など、学生一同は、荒野のグループを顔を見合わせて短く囁きあったが、結局、荒野の方を追いかけることにした。
 楓たちのグループは仮にも大人である三島が付いている。それに、詳しい事情を訊くには、取り乱したり興奮したりしている楓や孫子よりは、荒野や茅の方が、まだしも整理された情報が入手できるように思えた。
 これまでの付き合いで、楓や荒野たちの性格や気質も、彼らの間ではそれなりに周知のものになっている。荒野はもとより、茅の冷静さと判断力は、時として異常なほどの冴えをみせる。

 一方、三島百合香に連れ出された楓たちは、三島の小型国産車に押し込められた。押し込められた、というのは、途中で、心配した羽生が合流してきたからだ。
 三島が運転席に、羽生が助手席に、そして後部座席には、香也を中心として楓と孫子が左右にはべる、という形で、乗り込むことになる。
「……どう、楓ちゃん……。
 もう、落ち着いた?」
 助手席でシートベルトを締めながら、心配そうな顔をして、羽生が後部座席をのぞき込んだ。
「……ええ……」
 顔を伏せながら、楓がつぶやく。
「……もう……大丈夫です……」
「荒野のやつには、ガツンといっといたからな……」
 前を向いたまま、三島が、いった。
「茅にも、荒野に説教するようにいっといたし……もう、お前が心配するようなことは、なにもないぞ……。
 なに、寝て起きれば、またいつもの通りだ……」
 そういって、三島は、車を発進させた。

 狩野家の前で乗客を降ろした三島は、車をマンションの駐車場に回してから、徒歩で狩野家に向かう。
 玄関で一声かけてずかずかと居間に入っていくと、羽生と香也が炬燵に入ってぼんやりとしていた。流石の香也も、あのような騒ぎが起こった直後では、いつものように平然と絵を描く気にはなれないらしい。
「楓は?」
「今、シャワーを……ソンシちゃんが付き添ってます……」
 三島が尋ねると、羽生が、ゆっくりとした口調で答えた。
「……すぐに出ると思いますけど……」
 奥から出てきた孫子が、羽生の後を続けた。
「……ったく、加納も……。
 不用意に、あんなことをいうなんて……」
 孫子は、心持ち険しい表情をしながら、炬燵に足をいれた。
「センセ……さっきのは……結局、なにがどうなったら、あんなになったんすか?」
 羽生が、三島に聞き返した。
 声が届かない位置にいた羽生は、当然のことながら、細かい事情までは、まるで理解できていない。
「どうやらな、荒野の馬鹿が、楓に、ものはずみで、お前はもういらない、みたいなことをくっちゃべったらしい……」
 三島は、やれやれといった感じで首を振った。
「加納は……不用意、すぎますわ……」
 下唇を軽く噛みながら、孫子はそう続けた。
「あの子……ただでさえ、卑屈なところがあるのに……」
「……卑屈、って……」
 孫子のいいように、羽生が苦笑いする。
「それはちょっと、大げさにすぎると思うけど……。
 でも、まあ……そうか……。
 最近では落ち着いてきたようだから、気にならなくなってたけど……。
 そうだな……。
 楓ちゃん、来たばかりの時は、妙におどおどしてたし……」
「……んー……。
 そう……」
 香也が、ぼそぼそと、呟く。
「ここにいてもいいかの……とか……すごく、気にしていて……」
「……あの子は……自分の出自がはっきりしないことを、気にしすぎなのです……」
 孫子が、ため息をつく。
「誰から生まれようが……あの子は、あの子自身でしかないでしょうに……」
「……周りに凄いのがごろごろいるから、あまり目立たないけど……」
 羽生は、煙草に火をつける。
「あの年齢で、あんだけしっかりして、頭もよくて……運動神経は、いうまでもない……。
 あんだけ出来すぎた子が、自分に自信を持てないなんて……嫌味といえば嫌味だよなあ……」
 ……ソンシちゃんのようにふんぞりかえっているのも、どうかと思うが……とは、心中で呟くだけにしておき、口には出さない。
「……だから、さ……」
 三島は、ゆっくりと言葉を吐き出す。
「あいつは……楓は……自信がないから、一生懸命いい子でいようとしているわけだろ?
 それこそ、涙ぐましいくらいに……」
「……んー……」
 香也も、一言一言選びながら、ゆっくりと、言葉を吐き出す。
「自信……とか、そういうことじゃなくて……。
 楓ちゃんの場合……自分の居場所を……ずっと、探しているような、気がする……」
「……居場所、かぁ……」
 羽生は、天井に顔を向け、紫煙を吐き出した。
「それいったら……この家にいる人たち、みんなそうじゃん……」
 しばらく、誰もなにもいわなかった。
「……ま……。
 楓に限らず、あの年ごろは、多かれ少なかれ、みんな自意識過剰だろう……」
 三島はそういって、もぞもぞと身動きをした。
「こういっちゃぁ、なんだが……楓の自己憐憫も、ありゃ、裏返しになった自意識過剰だ……」
「そう……なんすけどねぇ……」
 羽生は、がっくりとうなだれる。
「それがわかったからといって……楓ちゃんが抱える根源的な不安が、消えるわけでもなし……」
「……ガキの自己憐憫に、周囲の大人が振り回される、というのも……なんだかなぁ……」
 三島が、ため息をついた。
「問題は……」
 孫子が、冷静に指摘した。
「あの年頃にありがちな心理であろうが、なかろうが……あの子が取り乱して暴れれば……かなりの被害が出る、と予測されることです……。
 今日のも、あの場所で、わたくしや加納がいたから、なんとか押さえることができましたが……」
 孫子が指摘するとおり……楓の能力を考慮すれば……確かに、町中とかで、楓が、何かの拍子に暴れ出したとしたら……。
「……相当の……」
「……被害が、出そうだな……」
 羽生と三島は、想像力を働かせ、揃って息を呑んだ。
「ようは……楓ちゃんに、自信……というか……ここにいてもいいんだ、と、完全に信じ込ませることができれば……」
 羽生が、誰にともなく、ぶつぶつと呟く。
「でも……どうやって?
 いままで、こんだけ、いい人たちに囲まれて暮らしてて……それでも、まだ……なんだぞ……」
 三島が、すかさず突っ込んだ。
「……それについては……提案が、あります」
 そういって、孫子は、炬燵の上に小瓶を取り出した。
 その小瓶をみた瞬間、香也の顔色が、さぁーっと青ざめる。
「自信、というか……あの子に、ここでの絆を、作れば、いいんです……。
 わたくしも……このようなものに頼りたくはありませんでしたが……」
 孫子は、先ほどシルヴィ・姉崎から手渡された小瓶の中身について、手短に説明しはじめた。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(122)

第六章 「血と技」(122)

「……ほれ……」
 荒野がその場にへたりこんで息を整えていると、鼻先にぬっと魚を串焼きにしたものがつきだされた。実にうまそうな香りがした。
「食え」
 三島百合香の声だった。荒野は、振り返りもせず、目の前に差し出された串焼きにかぶりつく。
「……楓たちは……かなり取り乱しているし、もう連れ帰って落ち着かせた方が、いいな……。
 わたしが、車を出す……」
 三島が、そういった。
 振り返ると、香也が泣きじゃくる楓の肩に手をかけ、孫子がその二人に駆け寄っているところだった。
「……ああ。
 お願い、します……」
 荒野は、咥えた串焼きを手にもって一度口から外し、そう答える。
「……茅。
 この分だと、荒野は、まだ何が悪かったのか理解していないみたいだから……お前が、よく言い聞かせておけ……」
 そういいのこして、三島は三人の方に向かう。
「……わかったの……」
 いつの間にか近くに来ていたメイド服の茅が、頷く。
「その前に……。
 酒見純、それに、酒見粋……荒野から、離れるの……」
 茅が睨むと、どさぐさにまぎれて荒野の背中に取り付いていた酒見姉妹が、ぱっと退いた。

 息を整えてから、荒野が立ち上がると……。
「……はぁーい!」
 ……今度は、ヴィかよ! ヴィまで来るのかよ!
 と、荒野は思った。
 厄日かよ、今日は……と。
 いつものように元気よく挨拶したシルヴィ・姉崎は、茅にも目礼してから、用件を告げる。
「……今週末の予定を確認しようと思って、こっちに来たんだけど……」
「……見ての通り、取り込み中だ。
 それに、その程度のことなら、メールか電話でも、十分……」
「だって、こんな楽しいことやっているじゃない。こういう時は、ヴィにも知らせてくれなきゃ、駄目よ。ヴィだけ仲間外れは、なしよ。
 お陰で、出遅れたし、新しく来た皆さんにも、挨拶したいし……」
「……もう……好きに、してくれ……」
 荒野は、疲労の滲み出る声で、答えた。
「おれは……これから、茅からお説教だそうだ……。
 用件は、その後でな……。
 あー、仁木田さん。
 こちら、シルヴィ・姉崎。あの、姉崎の一員だ。
 みんなに挨拶をしたいそうだから、良かったら主要な連中に繋ぎをとってあげてくれ……」
 荒野は、そばにいた仁木田にシルヴィを紹介する。
 別に仁木田が、ここに集まった連中のリーダー格だ、というわけではない。そもそも、この場にいる一族の関係者は、あちこちから集まった烏合の衆で、組織化さえ、されていない。
 しかし、仁木田はここに集まっていた連中の中では比較的顔が広く、同時に、そこそこの知名度もあった。
 シルヴィを紹介する役として、それなりに的確な人選であると思う。
「……姉崎、か……。
 もはや、なんでもありだな、ここは……。
 まあ、わざわざ顔を見せたって事は、ここにいる連中と、事を構えるつもりもないって事だろう……。
 こっちに来な、姉さん……」
 仁木田は素直に荒野の言葉に従い、シルヴィを手招きする。

 荒野と茅が連れだって歩いていき、途中、徳川に「ちょっと込み入った話しをするから、奥の事務所、借りるぞ」というと、徳川は「わかったのだ」と頷き、何故か立ち上がった。
「……なんで……お前まで、ついてくるんだよ……」
「ここは、ぼくの工場なのだ……」
 徳川は、薄い胸を張った。
「……しゃーねーなー……。
 って、他のやつらまで!
 そんな、ぞろぞろと……」
「まーまー、おにいさん、硬いこと、いわない……」
 これは、飯島舞花。
「……だって……普段おとなしくて素直な楓ちゃんが、あそこまで取り乱すのも珍しいと思うし……」
 これは、樋口明日樹。
「……そう。もうわたしたち、友達だもん。
 知るべきことは、知ってた方が……絶対、いいよ……」
 これは、柏あんな。
「まさか、ここまで来て、こっちにだけ秘密ってことは……いわないわよね……。
 加納君」
 これは、佐久間沙織。
「……わたしたち……」
「……あやうく、瞬殺される所だったんですけどぉ……」
 これは、酒見姉妹。
「今更、もったいぶらないで……」
 これは、テン。
「秘密主義、いくない!」
 これは、ガク。
 他に、堺雅史と栗田精一も、当然のような顔をして、ついてくる。
「ま……いいけどな……」
 抵抗しても無駄らしい、と思った荒野は、串焼きの魚を口に咥えて、先に進んだ。

「……言われて見れば、楓のやつ……。
 確かに、そういうことに拘っていたなぁ……」
 茅から一通りの説明を受けた荒野は、そういって、ため息をついた。
「こっちは、楓の負担を軽くしてやろうと思っただけなんだが……」
「伝え方が、悪かったと思うの……」
 茅は、続ける。
「楓……わたしの護衛は、いらない……イコール、ここでの仕事は終わり……楓は、ここから、離れなくてはいけない……みたいに、短絡して……」
「……それで、あのヒステリーか……」
 荒野は、ゆっくりと首を横に振る。
「少し考えれば……今の状態で、おれたちが楓抜きでやっていけないってことくらい……分かりそうなもんなのに……」
「楓は……もともと、自己評価が、低すぎるの。
 それこそ、卑屈なくらいに……。
 荒野が内心でどれほど楓を頼りにしていても……普段から態度に現さなくては、伝わらないの……」
「……あれ……楓ちゃん……加納君たちの基準からいっても、凄いの?」
 話しが一段落した、と判断したのか、樋口明日樹が、口を挟んだ。
「あれは……凄いんだ……」
 荒野は、素直に頷く。
「何十年に一人の逸材だと、思う。
 おれたちの血筋でない所から、いきなり現れて……あそこまで仕上がる例は、珍しい……」
 酒見姉妹も、ぶんぶんと物凄い勢いで首を縦に振る。
「……あの人とは、もう二度と……」
「……立ち会いたくないです……」
「……この二人……酒見姉妹っていうんだけど、一族の中でも、なにかと荒っぽい手段に訴えることで有名なんだ……。
 そんな凶状持ちが、恐れるほどの実力者、っていうことだな……」
 荒野は、地元の一般人学生たちに、分かりやすく説明する。
「……ああ……それで、この二人……」
 舞花がにやりと笑った。
 凶暴な笑いに、見えないこともない。
「一年の方の香也君を、人質に取ろうとしていたのか……」
「……それ、才賀と楓には、まだいってないだろうな……できれば彼を人質に取ろうとしたことは、あいつらの耳にはいれない方が、いい……。
 ……あいつらが、それを知ったら……」
 荒野は、わずかに顔をしかめて、酒見姉妹を指さした。
「あいつら……こいつらを半殺しくらいには、しかねないし……」
 荒野がそういうと、酒見姉妹は、お互いの肩に腕を回して微かに震えはじめた。
 昨夜の件と今日の件で、楓と孫子……あの二人なら、それくらいのことをやっても、おかしくない……と、実感しているのだろう。
「教える、なんて……。
 ……誰にも、そんな暇は、なかったと思うの……」
 茅が、荒野の疑問に答える。
「みんな、忙しかったし……」
 茅の言葉に、周囲の者が、揃って首を縦に振る。
「それじゃあ……その人質の件については、この場にいる人だけの話し、ということで、口外無用な……。
 あー。治安維持のために……」
 荒野の提案に、誰も反対しなかった。荒野もそうだが……誰しもが、これ以上、ややこしい事態を招きたくはないのだ。
 次に、荒野は、酒見姉妹に向き直る。
「……香也君に目を付けたのは、それなりに鋭いと思うけど……見ての通り、彼は、楓と才賀の逆鱗だ。
 最大のウィーク・ポイントであるが、同時に……下手に刺激をすれば、あの二人を劇昂させる……」




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彼女はくノ一! 第五話 (205)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(205)

「……わぁ……」
「……楓おねーちゃんも、孫子おねーちゃんも……マジ切れモードだ……」
 テンとガクは、少し離れた場所で行われている狂態を見物しつつ、そんなことをいいあっている。
 目前では、なんだか、奇妙な事態が進行していた。
 最初は、楓と酒見姉妹の立ち会いだった筈が……楓が逆上し、荒野がそれを止めに入る。孫子が、楓をスタン弾で狙いはじめ、荒野は、この攻撃も、弾いていた。
 見物する一方で介入しない、というテンとガクの態度は、一見して無責任にも見える。
 が、二人は、特にテンは、楓と孫子の闘争に巻き込まれたらどういう目に会うのか、その身を持って学習済みなのである。その時の経験からいっても……迂闊に、手を出さない方がいい……ように、思えた。
「……それはいいけど……二人とも……」
「……うん……底が知れないよね、あれは……」
 我を忘れながらも、的確な動きで、六角を投じ続ける楓。
 とっさに飛び込んで、素手で、背中に酒見姉妹をかばいながら、近距離からの楓の攻撃と孫子の射撃を捌いてしまう荒野。
「あっ……今の、見た!」
「……うん……楓おねーちゃんの六角、蹴り上げて、それでスタン弾を弾いてた……。
 あっ。今、地面に落ちていた、くない、拾った……」
「あれだけ動いてて……まだ、周囲をみる余裕あるのか……。
 ……考えて、見ると……。
 ボクたち……かのうこうやが全力出したところ、今まで、見たことないし……」
「そもそも……武装して、戦うの、見たことないし……」
 テンとガクは、荒野が完全武装して全力で戦ったら、いったいどういうことになるのか……想像し、慄然とした。

「……っち。曲芸だな、あれは……」
 仁木田直人は、舌打ちをする。
「新種を見にきて……それ以上のものを見せつけられるとは、思わなかった……」
 押し殺したような、声だった。
 楓にしろ、荒野にしろ……あれほど自在に体が反応するまでには、どれほどの習練を積まなければならないのか、想像しただけで慄然とする。
 血筋とか、先天的な性能の良さ……だけでは、あの域までは届かない。それは、自分自身で習練を積んで来た者には、容易に理解できる。
 事実……仁木田同様、その様を目の当たりにした術者は、一様に圧倒されて、言葉を失っている。
 加納荒野と松島楓……この二人が、この場にいる者の中でも、突出した能力を持っていることは、これで、一目瞭然となった。この場にいる術者の大半は、二宮か野呂の流れを汲む者で、そのどちらにせよ、「実力」を人物評価の基準にしている。
 荒野の慌てぶりをみても、狙って行ったデモンストレーションではなく、どうやら、純粋に偶発的なアクシデントらしいが……それでも、結果としてもたらされる効果は、同じだ。
 この場にいる術者は……もはや、荒野と楓を、無視できない……。
「……流石は、最強の弟子たちっていうところですかね……」
 息を吹き返した駿河早瀬が、誰にともなく、そう言った。
「ああいう奴らだからこそ……最強も、認めたんだろう……」
 仁木田が、うっそりと答える。
 先天的な素質と、本人の並々ならぬ努力……最低でも、その二つが揃わないと、あそこまでは、届かない。
「……ったく、最近のガキどもは……」
 仁木田のその言葉は、苦笑いを含んでいた。

「……ライフル弾の初速は……銃の種類にもよってまちまちなのだが、時速八百キロを越えるものも少なくない。才賀のライフルに関していえば、この間計測したデータでは、スタン弾使用時の初速は、九百キロ近くだったのだ。実弾よりも重量が軽くなる分、いくらか早くなっていたのだ……」
 そんなことをいいながら、徳川は、撮影したばかりの映像データをノートパソコンに転送、スローで表示させていた。制服を着用した生徒たちが鈴なりになってノートパソコンの画面を覗きこんでいる。
「……くわえて、松島も、比較的近距離から何かを投げている……。ここでちょっと止めるのだ……」
 徳川が、画像を静止モードにした。
「……止めても、ぶれるか……。
 ここの所とか、ここにあるものだな……。形状かららして、奴らが六角と呼称している金属の固まりなのだ。鋳造した鉛を中心にいれ、硬い金属でコーティングしてあるだけシンプルな構造物だが、あの速度で投げ付けられると、相応の凶器となる。
 が……それも、加納が全部叩き落としているようなのだ……」
 徳川は、映像をスローにしたりコマ送りにしたりして、確認している。
「……ライフルと、くノ一ちゃんの攻撃……両方同時に、強制キャンセルしているってか……」
 玉木は、ノートパソコンの映像と、現在の荒野、その両方を見比べて、感心した声を出した。
「……それで、あの……タコ踊りかぁ……」
 孫子のスタン弾や楓の六角は、動きが早すぎて、一般人の目にはほとんど視認できない。銃声などがしたら、相応のパニックになったであろうことは容易に想像できたが、普通にみると、荒野が目茶苦茶に手足を振り回しているだけ……の、ように、見える。
「……ふむ……視認できる範囲でざっと計算すると……松島が六角を投げ付ける速度は、時速に直して、三百キロを軽く超える……。
 加納の奴、あれでよく無事でいられるものなのだ……」
 そういう徳川の声は、呆れているようにも感心しているようにも聞こえる。
「……無事は無事だけど……いい加減、余裕もなくなっているようですが……」
 玉木は、相変わらず踊っている荒野を指さしながら、冷静に指摘する。
「当然なのだ。
 あやつでなければ、とうの昔にボコボコにされてぶっ倒れている所なのだ。
 いい加減、誰かが止めに入らないと……」
「……あっ。
 今、茅ちゃんが乱入……絵描きの方の、香也君、連れてる……」

 メイド服姿の茅が、香也の背中を押すようにして楓、酒見姉妹、荒野が一塊になっている場所に近寄ると、孫子の銃撃がぴたりとやんだ。
 配置としては、酒見姉妹と楓の間に荒野が割り込んでいて、酒見姉妹と楓に向かって、孫子が銃撃を展開し、荒野が、楓の酒見姉妹への攻撃と、孫子の銃撃を忙しく弾いている……という構図の中の、少なくとも、「孫子の銃撃」の部分が、突如消えたことになる。
 楓は、子どものように泣き声を上げながら、六角を投擲し続けることに夢中になっていて、香也が近づいてきた事にも気づかない。
 茅に即されて、香也が、楓になにやら話しかけた。ここからでは、何をいっているのか、聞こえない。
「……音声、拾えない?」
 玉木が、声を上げる。
「無理っす。距離が、ありすぎ。危なくて、近寄れません……」
 放送部員の誰かが、そのあたりの地面を漠然と指さした。
 地面に……夥しい量のスタン弾や六角が、転がっている。それらは、荒野を中心とした半円状に、落ちていた。半円の中心……つまり、荒野に近づくにしたがって、密度が大きくなる。
『……あれ、全部……叩き落としたってか……』
 玉木は、慄然とした。
 スタン弾と六角を合わせて、数百というオーダーである。
 長いように感じたが、時間的には、せいぜい一分間程度……という短い間の出来事だろう。
『……カッコいいこーや君、機関銃の前にいても、生き残れるんじゃないのか……』
 玉木は、漠然とそんなことを思った。
 やがて、香也に声をかけられた楓が、その場に膝をついて泣きじゃくり、事態は収束した。
 荒野も、その場にへたり込んで、荒い息をついている。へたり込んだ荒野に、助けられた形の双子がかけよった。
『……あ。フラグ立ってる……』
 と、玉木は思った。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(121)

第六章 「血と技」(121)

 茅は、一連の騒ぎに気づくのが、遅れた。
 静流と同様、茅も手当たり次第に、その場にいるものに紅茶を振る舞うのに忙しかったから、だ。
 最初のうちこそ、茅のメイド服ばかりが好奇の視線を集めたが、実際に紅茶に口をつけた者が大袈裟に驚いて見せたので、すぐに茅を中心とした人垣ができてしまった。
 あまり身長の高くない茅は、大勢に囲まれると、と途端にその外が見えなくなる。
 そのうちに、荒野の声で「……撮影の準備をしろ……」とかいうのが聞こえて、何事かがはじまったのだ、と、思った。しかし、その時点では、茅はあまり事態を重要視していなかった。
 多少の騒ぎはいつものこと、だからだ。ましてや、ここには荒野がいる。だから、まかり間違っても、たいしたことにはならないだろう……と、茅は、何が起こっているのかわからないなりにも、そう踏んでいた。
 しかし、すぐに、孫子が荒野に詰め寄る、かなり激しい口調の言葉が切れ切れに聞こえてきて、茅の楽観的な考えは、否定された。
 断片的に聞こえてきた孫子の言葉で判断する限り……どうやら、今回の騒動の種を蒔いたのは、荒野であるらしい。
 そうあたりをつけた茅は、さらに詳細な情報を求めるべく、人込みをかき分て、一連の騒動を確保できる位置を求めた。
 人込みをかき分た茅が目撃したのは、動揺しながらも酒見姉妹を追い詰める楓と、必死で応戦している酒見姉妹、その間に割って入っている、荒野の姿、だった。
 一目で、一番の加害者にみえる楓が、一番心理的にも情緒的にも不安定な状態にある……ように、見える。
 酒見姉妹は、楓の猛攻を躱したり捌いたりするのに精一杯で、状況を分析するほどの余裕はないし……荒野は荒野で、孫子にあれだけいわれたのに、いまだに自分の言動のどこが悪かったのか、気づいた様子がない……。
 鈍い……というよりは、想像力が、不足しているのだ……と、茅は、荒野を評価する。
 荒野は……自分の足元を見失う恐れだけ、なかった。自我の形成以前から、「加納の跡取り」として教育されてきているから……楓のように、自分が何者であるのか、悩む必要はない。楓の奥底に常時くすぶっている、明日にも路頭にほうり出されるかもしれない……という、被害妄想的な強迫観念にも、まるで共感できない……。
 確固たる足場があらかじめ用意されていて、そのために身動きがとれなくなることが多い荒野と、逆に、あまりにも脆弱な足場しか持たないことを強烈に意識しているが故に、今の居場所を取り上げられることに、過剰なまでの恐怖心をいただいている楓とは……同じ荒神の弟子でありながら、当人には選択しようがない「生まれ」により、結果として、正反対の性格を有してしまっている。
 所詮……荒野のような、「所有しているのが当然」という出自の者に……楓のような、「何も持たないのが当然」の立場の者の心理を……自然体で、常時想像せよ……ということの方が、どちらかというと、無理な注文だろう。
 そして……。
『荒野は……悪意がないにせよ……楓が一番触れてほしくない部分を、知らないうちに、刺激してしまった……』
 孫子の一連の挙動から、詳しい事情は不明のまま……茅は、そう判断を下す。
 普段、冷静な孫子が、あれほど取り乱し、ムキになるのは……香也か楓のどちらか、あるいは、両方が、大きな意味を持つ時だけなのだ……
 それが、これまでの経緯を観察してきた茅が、下した結論だ。孫子があれほど感情的になる時は、香也か楓、この二名が、なんらかの形で、関与している。
 楓にとって、今の生活を保持するのがなによりも優先される重要事であるように……孫子にとっても、初めて意識した異性と友人は、多分、何があっても失いたくないものである筈で……。
 茅は、現在の騒動を最小の工程で解決する方法を考案し、それを実現すべく、動きはじめる。
 茅がその方法を思いつくまでごく短時間の間に、当然予想されるように、孫子がライフルを持ちだし、スタン弾を乱射しはじめ、騒ぎをより一層派手なものにしていた。
 だから、茅が一人で動きはじめたことに注目する者は、誰もいなかった。

 その頃、荒野は、物理的にはとても多忙であり、かつ、心理的にはとても困惑していた。
 何せ、楓は、泣いている。泣きながら、荒野でなければ捌ききれないような洗練された攻撃を、矢継ぎ早に繰り出してくる。
 物理的な攻撃は、体が反応するに任せておけばいい。荒野の域にいけば、そうした攻撃の捌き方も、脊髄反射的な域に達している。
 だが……泣かれるのは、心底、困った。
『……おれ……なんか、泣かせるようなこと、いったかなぁ?』
 荒野は、この年頃の少年が大かたそうであるように、異性の涙には、滅法弱い。
 そして、自分の言動のどこが楓を刺激したのか、ここにいたっても、自覚を持てないでいる。だから、楓が静かになる効果的な謝り方も、思いつかない……。
『……しかし……参ったな、これは……。
 本当に……』
 しかも、現在の荒野の受難は、楓だけが原因なのではない。
 荒野自身が無邪気にけしかけたから、だが……玉木の指揮で、この場の光景がしっかり撮影されていたりする。
 加えて、五十余人の一族の者の目前で、この醜態を演じている。
 半ば自業自得とはいえ、いい晒し者だった。
 さらに、結果的に、楓の攻撃から酒見姉妹を守っている、という形になった訳だが……先程から、酒見姉妹が、荒野をみつめる視線が、どんどん熱っぽくっなっていく気配などもして……なんか、ちらりと確かめると、二人とも、瞳が潤み出しているし……。
 おまけに!
 孫子までが、ライフルを持ち出して、自分たちに向かって、スタン弾を連射しだした……。
 つまり荒野は、徐々に熱を帯びてくる酒見姉妹の視線を背後に感じながら、泣きじゃくりながら繰り出される楓の猛攻と、容赦なく降り注ぐ孫子のスタン弾を、拾ったくないと自分の四肢で片っ端から弾いている訳である。
 行きがかり上とはいえ、酒見姉妹を守るためにこうしているわけだから、うかつに避ける訳にもいかない……。
 もはや、工場内の視線は、忙しく手足を振り回す荒野に集中している。
 荒野の行動の意味が分からな学生たち一般人には、荒野のめぐるましい動きは前衛舞踏かなにかに見えた。また、意味は分からずとも、荒野の動きが、ものすごく、非常識に早い、ということくらいは、さすがに理解できる。
 荒野の動きが目で追えて、その意味も理解できた一族の者は、一般人とは別の意味で、感嘆の声を上げた。
 これほどの悪条件が重なる中、一歩も退く事なく、数分も現状を維持し続けるのは……一族の基準に照らしても非常識なほどに、高度な身体能力を必要とする。
 流石は……加納の直系……などという声が、ひっそりと囁かれはじめた。
『……んなこと、どうでもいいから……誰かこの場を、なんとか穏便に、収めるよぉ……』
 荒野は、内心でそう叫ばずにはいられない。

「……んー……」
 助けは、意外なところから、来た。
「……茅ちゃん……ここ、進めば、いいの?」
「そう……楓も才賀も、絵描きを傷つけるような真似は、絶対にしないから……。
 進んで、合図したら、さっきいったことを、いって……」
「……んー……。
 ……わかった。
 いわれたとおり、やてみる……」
 その二人の緊張感のないやり取りが……どれほど、荒野を安堵させたことか……。
 茅に背を押されるように前に進んだ香也は、特に気負った様子もなく、とことこと歩いて、孫子の射線上に無造作に踏み入れる。
 孫子の射撃が、ピタリと止んだ。
 次に、香也は、楓の方に向き直り、「……んー……」と、ひとしきり唸った後、おもむろに、
「……楓ちゃん……。
 楓ちゃんがよかったら、だけど……その、うちに、ずっといて、いいから……」
 そういわれた楓は、ボロボロと涙を流しながら、自分の口を押さえ、その場に膝をついて、嗚咽を漏らしはじめた。
 楓の様子を確認した荒野は、全身の力を抜いて、その場に尻餅をつく。
 気づけば……全身、汗まみれだった。
 背後から、加納様加納様と連呼しながら、酒見姉妹が抱きついてくる。
 チラリと確認すると、茅の目が笑っていなかったので、慌てて目をそらした。
「……加納、よぉ……」
 仁木田直人が、へたり込んだ荒野を見下ろしていた。
「面白い見世物だったぜ……。
 お前ら……せーしゅんてやつだなぁ……」
 仁木田は、口をへの字形に結び、むっつり面白く無さそうな顔をして、そういった。
 荒野が返答につまっているうちに、どこからか、パチパチと手を叩く音がどこからか聞こえはじめ、それはあっという間に、割れんばかりの拍手と歓声と化した。
 荒野は、耳まで真っ赤にして、
『……拷問だ……これは……』
 と、思った。




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彼女はくノ一! 第五話 (204)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(204)

「……おーい! 玉木、撮影の準備をしておけ!」
 どこか遠くで、荒野の声が聞こえる。
 あれ? ……と、楓は思った。
 あの子たちが、茅様の護衛をするということは……わたしは……これから、何をすれば……。
「……撮影?」
「これから、いい余興がはじまる!
 しばらくは公開できないだろうが……撮影するだけは、しておけ! それだけの、価値はあるから!」
 周囲が、ざわついているのを感じながら、楓は、自分がひどく動揺していることを自覚した。
 何故……ここまで……考えが、まとまらないのだろう?
 この戦いは、あの双子の実力をみるためのもの……って、加納様は、いっていて……その実力が確かめられたら、あの二人は晴れて、茅様の護衛役……。
 すると……。
『……わたし……自身は……どう、すれば……』
 楓は、一向に明瞭にならない思考をのろのろと働かせ、ようやく、たった一つの単語に思い当たる。
『……お払い箱……なの?』
 楓は、ゆっくりと周囲を見渡した。
 数十名の、見覚えのない顔がいて……その人たちは、一族の関係者だと、いう……。それも、楓のような雑種ではなく、ちゃんとした血筋の者ばかりが、何十人も……。
『……そっか……そう、だよな……』
 こんなにいっぱい……自分よりもしっかりといした人たちが、こんなにも来てくれたのなら……もう、自分なんかの、出る幕はないよな……と、楓は、ぼんやりと思った。
 ぼんやりと立ち尽くしている楓の目の前に、山刀を構えた双子が迫っていることに……はたして、気づいているのか……。

「……加納!」
 楓の様子に異変を認めた孫子は、荒野のそばに近寄り、強引に腕を掴んで、振り向かせた。
「あの子……様子がおかしいですわ!
 あなた……あの子に、何をしたの!」
「……おれも、さっきから楓の様子が変だとは思ったけど……」
 玉木に事の次第を手短に説明していた荒野は、孫子に向かって早口に述べた。
「おれは……あの二人と、腕試しをしてみろ、と……」
「……本当に、それだけ!」
 いつになく、孫子の顔つきが、険しい。
「心配することはないよ。
 あの二人と楓とでは、断然、楓の方が上で……」
「そんなわかりきったことは、誰も聞いていません!
 わたくしは、あなたが、楓に何をいったのかを糺しているのです!」
 斬りつけるような口調で、孫子はいった。
「そもそも……あの二人と楓が、なんで戦わなくてはならないのですか!」
「……一つは、楓の実力を、新参の連中にみせるため。」
 いつにない孫子の剣幕をいぶかしみながらも、荒野は、冷静に答える。
「……もう一つは、あの二人に、今度茅の護衛役をやって貰おうとして……そのために、楓にも、二人の実力を見て貰いたかったから……」
「……それ……楓には、どう伝えました……」
 孫子の目が、すぅっと細まった。
「加納……あなた……。
 これだけ付き合って来て……あの子の気性を、呑み込んでいませんの?
 まさか……あの子にいきなり、理由もつげず……茅の護衛役を解く……とだけ、告げたりは、していませんわよね……」
 怒りをぶちまけている……というより、対面している荒野の愚かさを哀れんでいるような表情になっている。
「……ええと……」
 そう詰め寄られると……荒野にしてみても、自信がなくなってくる……。
「それは……説明……して、いなかったかな?
 おれは、楓にも、普通の学生生活を送って貰いたかった、だけなんだけど……」
「……このっ!」
 孫子は、荒野の胸倉を掴んで、自分の方に、引き寄せる。
「鈍感!」
 あたりに響き渡るような大声で一括した。
「……あの子……下手すると、やりすぎるわよ!」
 そう叫んだかと思うと、孫子は、人込みをかき分けて、姿を消した。
「……なんだ、ありゃ……」
 解放された荒野は、呆然とつぶやきながら、乱れた胸元を手で整える。
「いや……孫子ちゃん……た、正しいかも……」
 震える声で、玉木が、いった。
「……あれ……みて……」

 勝敗自体は、一瞬でついた。
 楓が投じた六角が、酒見姉妹の銃弾すら跳ね返す山刀を、瞬時に粉砕したのだ。
 一発二発が命中した程度では、分厚い金属片がここまで粉みじんになることはない。数発から数十発もの六角が、ごく短時間のうちに、集中して命中しなければ……このようには、ならない。
 それも、一撃一撃に……かなり威力のあるがなければ……。
 と、酒見姉妹は、ここまで考えて、ほぼ同時に顔をあげ、柄だけになった山刀を放りだす。
 瞬時に、モーションさえ見せずに二人の山刀を砕いた化け物が……二人に迫っていた。

「……やべっ!」
 顔をあげた荒野は、尋常ならざる身のこなしで、楓が、酒見姉妹を追い詰めているのを認めた。
「楓!
 ……もう、いい!」
 反射的に叫びながら、荒野は、三人がもつれ合うようにしている場所に、飛び込む。
 酒見姉妹は、二人掛かりで、懸命に、楓を撹乱しようとしていたが……はた目には、楓が、酒見姉妹を嬲っているようにしか見えなかった。

『……なんて……』
 醜態だ……と、荒野は思う。
 実力差を見せつけるだけなら……楓は、酒見姉妹の戦意を喪失するだけでよかった。
 二人の山刀を砕いた時点で、その作業は終えている、ともいえる。
 しかし、楓は……さらに、二人を追い詰め、致命傷を与えずに、じわじわとダメージを与えて続けている。
 武器を取り出せば、手元に投擲武器をたたき込み、逃げようとすれば、先回りして足元を掬う。
 逃げるのも、立ち向かうのも無駄……と、さほど時間をおかずに悟った双子は、二人で連携して、楓の攻撃をかいくぐることに専念した。
 驚いたことに……楓の動きは、酒見姉妹が二人掛かりで行う撹乱にも勝って、俊敏であった。
 最初の数秒で武器を砕かれ、次の数秒で戦意を折られ、さらに次の数秒で、姉妹は、生き残るためには全知全能を尽くさねばならない相手と対峙していることに、気づいた……。
 酒見姉妹は……楓の姿をとった「絶望」と、攻撃をかいくぐり、逃げ切ることで、戦い続ける……。

「……楓! もういい!」
 一瞬で事態を把握した荒野は、楓と双子の間に体を割り込ませた。
 何がきっかけになって、楓をこのような行為に駆り立てるのか……それは、分からない。
 しかし……今の、じわじわと敵を嬲るような戦い方は……平素の楓からは、考えられない……。
 楓は……原因はよく分からないが……常軌を逸している……と、荒野は結論する。
 しかし……楓は、止めに入った荒野もろとも、攻撃を続行した。
「……なっ……なんで、お前!」
 予想外の楓の反応に、荒野は驚愕する。
「……わ、わたしなんて……」
 ようやく、返答らしい返答をした楓の声が、震えていたので、荒野はそれまでとは別の意味で、驚く。
「……どうせ……どうせ……」
 楓は……泣いていた。
「いらない子なんですぅ……」
 楓は、手にしたくないを、素手の荒野に向けてふりあげる。
 と……。
「……このっ!」
 その楓のくないが、何物かに吹き飛ばされた。
「お馬鹿くノ一と、そのお馬鹿な飼い主!」
 みれば……ライフルを構えた孫子が、吠えている。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(120)

第六章 「血と技」(120)

『……ん?』
 荒野は、楓に近づいていく酒見姉妹の姿に気づいた。
『本当……わかりやすいやつらだなぁ……』
 荒野は、心中でひそかに嘆息する。
 酒見姉妹は、孫子に続いて茅にもいいようにあしらわれている。一族の関係者が続々と集まってきている今、自分たちの評価も気にしはじめる、というのは、理解できるのだが……。
『……だからって……』
 楓にとりいろう、という姑息さが、荒野には、好きになれない。
 確かに楓は、孫子や茅に比べれば、くみし易いのかも知れないが……。
 そう思った荒野は、そっと二人の背後に歩み寄る。
「……いいの。わかっている」
「あなた、一族の中では有名人だから……」
「あの才賀や加納の姫よりは、素直な性格らしいし……」
「わたしたちも、できれば、あなたとは仲良くしたいと思っているの……」
「「……最強の二番弟子さん……」」
 案の定、近寄ると、荒野の予想を裏付けるような二人の声が聞こえた。
 楓は、気配を忍ばせて近づいてきた荒野に気づき、二人の背後、つまり、荒野の方をしきりに気にしているのだが、酒見姉妹は、そんな楓の挙動にさえ、気づかない。
「……実に、いい心がけだ……」
 荒野は、ことさら声を大きくした。
「……強いとわかっている楓にとりいって虎の威を借りる狐というかコバンザメ的な利益を得ようとする魂胆は見え見えだが、仲良くしようとという心がけ自体は、実に、素晴らしい……」
 こういって肩をすくめると、周囲の、酒見姉妹のことを直接間接に知っている一族の者たちが、忍び笑いをしはじめる。姉妹の性格については、それなりに知れ渡っており、嫌われる所まではいってないが、揶揄の対象にはなっていた。
 その時、姉妹について予備知識のある者たちがいっせいに漏らした忍び笑いを翻訳して言語化すると「……あいつら、またやってんのか……」ないしは、「あいかわらず、強いのに媚びるのが好きだなあ」とかいうことになる。今日の一件についても、全体的な作戦立案の際、双子がかなり強硬に自分の案を採用させたことは明白であり、その二人の見通しの甘さも、作戦失敗の主要な原因になっている以上……決して、好意的な笑いでは、なかった。
 当の双子は、ビクン、と背中を硬くした後、ひきつった顔をして、そうっと荒野の方に振り向く。
 引き攣った顔をして棒立ちになっている双子に、荒野は、
「……そんなことをしている余裕があったら、お前ら、春になるまで茅の護衛をやれ……」
 と、申し渡した。
「……お前らも、少しは人の役に立てよ……。
 お前ら、他人に自慢できるのは、荒事くらいなものなんだし……放課後、茅が学校を出てから家に帰るまでの時間だけでいいから……時間的な束縛も、それほどきつくない……」
 というのが表向きの理由であり、もちろん、その理由に嘘があるわけではないのだが、ここの所負けが込んでいる姉妹に対して、いい意味での実績を作り、信用をいくらかでも回復する機会を与える……という思惑も、荒野にはあった。
 それから、
『……どうせなら……』
 楓のお披露目も、やってしまうか……と、荒野は、急に思い立つ。
 養成所から、一度もまともな現場につかないまま、ここに派遣された楓については……さまざまな風評ばかりが先行して、一族の中で、実態が知れ渡っていない面がある。
 ちょうど、まとまった人数がいるこの場は、楓の実力を実際に見せるのに、うってつけの舞台でも、あった。
 そこまで考えて、荒野は、酒見姉妹だけではなく、楓までが、何故か顔色を失っていることに、気づいた。
「……楓にも、茅にも……そろそろ、自由に動ける時間を作ってやりたいんだ……。
 楓……しばらく、お前は……自分の思うように、動いて見ろ……」
 楓の様子を訝しがりながらも、補足するつもりで、荒野はそう付け加えた。
 事実、荒野は以前から、余裕ができれば、楓にももっと普通の学生生活を楽しんでもらいたいと思っていたし……手持ちの戦力が大幅に増えつつある今は、以前から思っていたことを実行するいい機会に、思えた。
 の、だが……楓は、どうも、そのことを喜んでいないらしい……と、荒野は、ようやく気づいた。
 何故かは、わからない。その辺は、後で、楓本人に聞いてみるしかないのだが……。
 とりあえず、今は……。
「……そうか、この二人の実力が、不安か……。
 これでも、荒事に限定すれば、それなりにいけるんだけどな、この二人……」
 一人頷きながら、そう続ける。
 実際……近接戦闘だけに限定すれば、酒見姉妹は、それなりの使い手である。
 楓を相手にしても……一分……は、持たないだろうが、数秒から数十秒は、保てる筈で、また、素養がある者が見れば、短時間の決闘でも、楓と酒見姉妹の実力のほどは、推し量れる筈だった。
 楓を、茅の護衛から、一時的に外す……という件については、今の楓の様子をみると、場合によっては前言を撤回することも考えなくてはならなかったが……楓と酒見姉妹の実力を、この場で明示する……ということについては、特に問題になるとも、思えない……。
 だから、荒野は、先を続ける。
「……どうだ?
 楓はこういっているけど、お前ら……自分の実力、この場で、証明してみたくはないか?」
 酒見姉妹は、お互いの顔を見合わせただけで、すぐに「「やります!」」と声を揃え、頷いた。
 この二人については……予想通りの反応だ……と、荒野は思った。
 予想通り、姉妹は……自分たちの評価を挽回する機会を、欲しているのだった。
「と……いうことだ。
 楓、こいつらの相手をしてやれ。しばらく、お前の代わり勤めるのだから、お前自身が直に腕を確かめた方がいいだろ……。
 ……いいか、楓……。
 これは、この場にいる全員に、お前の実力を見せるいい機会でも、ある。
 お前が何者であるのか……ここにいる人たちに、教えてやれ……」
 荒野は、楓の目を見据えて、諄々と言葉をつむいだ。
 楓が……何を躊躇しているのか、いってくれない以上……荒野としては、自分が思うところを語るより他、やりようがない。
「……はい……」
 ようやく反応した楓は、しかし、相変わらず顔面蒼白で、その声も、抑揚がなく、うつろに響く。
「加納様が……そう、いうのであれば……」






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彼女はくノ一! 第五話 (203)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(203)

 見ると、確かに野呂静流の周囲には、人が集まっていた。
 静流のお茶を飲むための、順番待ちになっているらしい。
 静流は、繊毛を敷いてその上に茶釜を乗せ、自分も正座している。対面して静流の点てるお茶を喫しているのが、学校の制服を着ていたり、あるいは、ジーンズやスーツ姿の、いかにもそこいらを歩いていそうな服装の面々であるあたりが、なんとなくミスマッチでおかしい。しかも、その背後は、事実上廃材置き場となっている徳川の工場内であるわけで、なおさらシュールな光景だった。野点を行うのに、これほど似つかわしくないロケーションもあるまい……と、は思うのだが……静流も、お茶を振舞われた側も、そうした瑣末なことにはまるで意に介していないようで、それどころか、静流の前で畏まって正座していた人々が、一口お茶を口にすると、ふっと顔から緊張が消え、安堵の表情になってしまうのが、まるで魔法のようでもあった。
「……宣伝……というより、麻薬に近いよね……あれは……」
「一度味わったら……定期的に買いに行くようになるわよ……」
 背後でそんな声がしたので、ふと視線を向けると……まったく同じ顔に見える少女二人が立っていたので、楓は、目を見開いた。
 一人は学校の制服を、もう一人は学校指定のジャージを着用している。
「……あっ。チーズケーキの人たち……」
 思わず、楓はそう呟くと、二人は、まるで同期でもしているかのように、まったく同じタイミングで顔をしかめる。
「……その言い方、やめてよね……」
「……ちゃんと名前、あるんだから……」
 三島百合香に教えてもらった呼称は、二人は、気に入っていないらしい……と、楓は思った。
「酒見純」
「酒見粋」
 同じ顔をしている二人に名乗られても、楓は、二人を見分ける自信がなかった。
「「……見分けがつかなかったら、酒見と呼んでくれればいいわ……」」
 戸惑う楓に向かって、二人は、同時にいった。
 自己紹介、ということらしい。
「……あっ。わたしは……」
 楓が、自分のことを伝えようとするのを、二人は手で制した。
「いいの。わかっている」
「あなた、一族の中では有名人だから……」
「あの才賀や加納の姫よりは、素直な性格らしいし……」
「わたしたちも、できれば、あなたとは仲良くしたいと思っているの……」
「「……最強の二番弟子さん……」」
 最後に、二人は声を揃えてそういって、なんとなく下心のありそうな笑みを浮かべた。
 楓は……二人の背後に忍び寄ってきていた荒野の存在について……二人に知らせるべきかどうか、迷っていた。
「……実に、いい心がけだ……」
 いきなり、背後から荒野がそう声をかけると、二人はビクン、と数十センチほど飛び上がり、ギクシャクとした仕草で、背後を振り向いた。
 そこに立っている荒野がジト目をしているのを認めて、二人の背中が面白いほど硬直している。
「……強いとわかっている楓にとりいって虎の威を借りる狐というかコバンザメ的な利益を得ようとする魂胆は見え見えだが、仲良くしようとという心がけ自体は、実に、素晴らしい……」
 荒野は、芝居ががった口調でそういいながら、肩をすくめる。
 周囲にいた一族の関係者たちが、こちらで何がおこっているのかを察し、くすくす笑っていることに、楓は気づいた。
「……そこで、だ……。
 お前ら……春に学校がはじまるまで、どうせ、やることがないだろう?」
 荒野はそうお前置きをして、酒見姉妹に、「加納の直系」として、「茅の護衛」を命じる。
「……お前らも、少しは人の役に立てよ……。
 お前ら、他人に自慢できるのは、荒事くらいなものなんだし……放課後、茅が学校を出てから家に帰るまでの時間だけでいいから……時間的な束縛も、それほどきつくない……」
 もちろん、報酬がでるわけではないし、断る自由は、酒見姉妹にもあったが……これだけの一族が集まる場で、確たる理由もなしに、「加納荒野」の頼みを断ったとしたら……一族の社会の中で、二人に対する評価はかなり下落するわけで……。
 実際問題としては、酒見姉妹としては、蒼白になりながらも、ぎこちなく首を縦に振るより他、選択肢はないのであった……。
「……楓にも、茅にも……そろそろ、自由に動ける時間を作ってやりたいんだ……」
 と、荒野はいった。
 その意図は、楓にも理解できたが……楓にとっても、荒野のその指示は、青天の霹靂であった。
「楓……しばらく、お前は……自分の思うように、動いて見ろ……」
 楓は、その、「自由にしてみろ」といわれた経験が……これまでの生涯で、まったく、ない……。
 言葉を失って呆然としている楓の態度をどう誤解したのか、荒野は、
「……そうか、この二人の実力が、不安か……。
 これでも、荒事に限定すれば、それなりにいけるんだけどな、この二人……」
 とかいいながら、一人で頷き、
「……どうだ?
 楓はこういっているけど、お前ら……自分の実力、この場で、証明してみたくはないか?」
 などと、呑気な声で、酒見姉妹をたきつける。
 酒見姉妹は、一瞬、顔を見合わせ、すぐに頷き、「「やります!」」と声を揃える。
 この二人は……少なくとも、自分たちの力量に対して、それなりの自負を持っているらしい……と、楓は、ぼんやりと考える。
 荒野に、「自分の思うように、動いて見ろ」といわれてから、楓の頭は、あまり潤滑に回転していないのだが……。
「と……いうことだ。
 楓、こいつらの相手をしてやれ。しばらく、お前の代わり勤めるのだから、お前自身が直に腕を確かめた方がいいだろ……」
 荒野は、なかなか反応しようとしない楓に向かって、さらに言葉を続ける。
「……いいか、楓……。
 これは、この場にいる全員に、お前の実力を見せるいい機会でも、ある。
 お前が何者であるのか……ここにいる人たちに、教えてやれ……」
 そういう荒野の口調は、むしろ優しいのだが……。
「……はい……」
 楓は、半ば思考が麻痺した状態で、反射的に返事をする。
「加納様が……そう、いうのであれば……」





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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(119)

第六章 「血と技」(119)

 玉木は、それまでの収録した動画を液晶でディスプレイに表示しながら、その映像が実際にはどのような状況下で撮影されたものなのか、淀みない口調で説明しはじめている。編集、加工作業が済んだものは、「シルバーガールズ」シリーズとしてから順次、商店街やネットで放送されていたが、今、この場で表示されている映像は、加工前の素材を編集したもの、であり、いわば、ドキュメンタリー・フィルムを解説つきで鑑賞しているようなものだ。
 その土地が、今、どういう状況下にあるのか、ということを知るには、恰好の判断材料となるもので、だから、荒野がどういうつもりで「公然と、一般人と共存する」という、従来の一族の規範から出てこない選択をしたのか……知りたいと、と思い、自分の意思で集まってきた層にとっては、重要な情報源となる……と、判断されたのか、玉木の周囲に集まった一族の者は存外に数が多く、また、その表情も真剣だった。

 孫子は、玉木とは別に、なにやら一族の者に紙を配って説明をはじめている。
 例の、人材派遣会社の勧誘だろう、と、その様子を目撃した荒野はあたりをつけた。この場に集まった一族の者は、十代二十代の若者が多く、それでもこの土地への転入を考えている、ということは、表向きの職業を持たない者、あるいは、転入前の身分を整理してくる予定の者も多いはずで、そうした層にとっては、孫子が用意する受け皿は、それなりに魅力的なものになる筈だった。
 孫子が立ち上げようとしているのは、人材派遣、それも、特殊技能を特に必要としない単純作業を想定しているようなので、ギャラはさほど高額とは思えない。が、それでも物価が安いこの田舎町でひっそりと暮らすだけならさほど困ることはない。
 それに、転入組の何割かは、少なくとも、一般人社会に完全に溶け込める、という見通しが立つまでは、一族としての仕事を請け負いながら、この土地での表向きの身分を求める……という者が大半の筈である……と、荒野は、予測している。そうした者は、なおさら、経済的に困窮することはないだろうし、場合によっては、いざという時のための相互扶助制度も、考えておくべきかな……とも、荒野は思いはじめている。
 そんな荒野の想念を裏付けるように、孫子の説明に耳を傾けている者の表情も、それなりに真剣だった。
 彼らは彼らなりの事情や思惑があって、それまでの生活をなげうって、ここに来る……という選択をしたのであろうが、そうした選択は、やはり甘いものではなく……成り行きとはいえ、根本のきっかけを作った荒野としても、そうした流入組には、できるだけのことをしなければならない……と、考える。
 この場にいる、あるいは、この後に、この土地に流れ込んでくる一族の者を、この先、「戦力」として当てにしなければならない局面も、十分に想定できる訳で……そうなると、荒野の指示で動いた結果、負傷した、などという時の保障も、あらかじめ考えておかなければならないのであった。
『……人を使う、というのも……』
 これで、気苦労が、多いもんだな……と、荒野は、心中でこっそりため息をつく。
 徳川と孫子の口ぶりだと、近い将来には、経済的な心配はしなくてもいいようになる……ということだったが、その予測についても、そうした方面の知識や経験を持たない荒野は、どこまで信じていいいのか、判断がつかない。
 あの二人には、相応の知識や経験がある筈で、その意味ではそれなりに確かな観測、なのであろうが、いわば出資者にあたる荒野を安心させるためのリップサービスがどれほどの割合で入っているのか、荒野にはよくわからないのであった。

 それ以外に、せっせと料理を準備するグループがあった。
 これは、やはり女性が多く、一族の者と学校の制服を着た少女とが入り混じって、手を動かしながら、笑いざわめいている。三島や羽生、楓や樋口明日樹、飯島舞花、柏あんななども、このグループに含まれている。
 そうしている様子は一族も一般人も大した差はなく、その周辺だけ、荒野の位置からは、会話の内容までは聞こえなかったが、遠目からみていると、そこだけ少し華やいでみえた。

 華やいだ、といえば……茅と野呂静流の周囲も、なんか一種異様な空間を作っていた。
 野呂静流は、繊毛と茶釜を持ち込んで、お湯と火だけ借りて、即席の茶会を開いていた。茶会、とはいっても、本式のものではない……と、思う。少なくとも、静流自身は、相手に対して作法を求めていない。
 静流は、普段着姿で繊毛の上に正座し、慣れた手つきで、用意した真空パックの封を切り、やはり持ち込んだ湯のみに中身をあけ、その上にひしゃくで茶釜からお湯を注ぎ、しゃこしゃこと茶せんでかき回し、対面した相手の前に置く。
 流れるような……というより、いっそ、無造作に見えるほど、自然な挙動だった。
 静流と対面した相手……学生か、一族の者、なわけだが……は、別に強制されたわけではないのだろうが、静流に合わせて正座をしている。
 そして、差し出された湯呑みを手に取り、顔の前に持ってくる……所で、ぴくん、と、眉を上げるか目を見開くか、する。
 香り……が、それまでに知っていた「お茶」と、まず段違いであることに気づくのだろう……と、昨夜の経験から、荒野は予測する。そして、いよいよ口をつけ、一口、口に入れる。途端、口腔から鼻腔に、また、がっと香りが充満し、その濃厚さに驚いて、それ以上、お茶を口にいれたくなくなる。数秒、凍り付いて、ようやく口の中のお茶を飲み下した後、やはり続きも、ちびちびと飲み下すことになる……。
 そうして、たった一杯のお茶を数分かけてようやく飲み下した後、行列を作って待っている者に、座を明け渡す……という光景が、展開されていた。
 お客が立つ際、静流は、「……こ、今度、ここに、お、お店を出しますので、よ、よろしければ、遊びに……」とかいいながら、一枚の紙を渡す。
 静流なりの、挨拶と営業を兼ねた行動、ということ、らしかった。
 少なくとも、そこに行列を作っているのは……静流が、「二宮の直系」だから並んでいるわけではなく、静流いれるお茶が飲みたいから並んでいるわけで……。
『……おれには……。
 今の所、そういうの……ないな……』
 そうした光景を目の当たりにした荒野は、少し考えこんでしまった。
 現在の荒野は……体質にせよ、体術にせよ、あるいは、荒事の経験にせよ……とりあえず、自分の意思によらず、最初から誰かに用意されたり、選択の余地もなく仕込まれたものだけで、構成されている。
 当面は、この土地でうまくやるための努力と、それに例の悪餓鬼どもの対策とで余裕がないが……それらの問題が少し落ち着いてきたら……自分自身の行く末についても、いよいよ本格的に、考えなくてはならないだろう……。
 そうも、荒野は思った。
 一族の……加納本家を継ぐのか。
 それとも、完全に一般人として暮らすのか……。
 そんなことが、果たして荒野に可能なのか……。
 当面の問題を一つや二つ解決したところで……荒野自身の人生は、まだまだ続いて行くのだった。




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彼女はくノ一! 第五話 (202)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(202)

 そのあたりから楓は荒野たちがたむろしている場所から離れ、三島や羽生たちとともに料理を用意するグループに合流する。一度工場の外に出た者たちが、各々持ち寄った食材が揃いつつあり、買って来たり配送された飲み物も回りはじめている。
 刺身など、切り口が味を変えるものに関しては三島が包丁を握った。楓は、キロ単位で購入してきた肉や野菜を適当な大きさに切り、塩胡や椒串を振って串に刺し、という単調な仕事を手早く行った。人数が多い分、食材の量も半端ではなく、忙しく手を動かさないといつまで立っても終わらない、という気がして来た。
 幸い、陸続と増援が駆けつけてきたので、用意された食材は、あっと言う間に
「後は火にくべるだけ」、という形になった。
 楓の学校の生徒も、女生徒はほぼ全員駆けつけたが、それ以上に多かったのは一族の関係者であった。
 一応、術者の端くれとはいえ、養成所育ちの楓は、実は、それまで六主家の血に連なる人間と接触する機会をあまり持たなかったのた。しかし、ここに来てわっと、それも、好奇心を剥き出しにした、自分とあまり年齢が変わらない少女たちに、取り囲まれることになった。
「……あの……間違っていたら、ごめんなさい……。
 あの、あなたが、松島さん? 松島、楓さん?」
 おずおずと、持参のくないを包丁代わりに使いながら、楓と肩を並べた女性が、声をかけてくる。
 楓にしてもその女性にしても、しゃべりながらでも、手の動きは、早い。
「ええ。そうですけど……」
 この場で素性を隠す理由も思い当たらなかったので、楓は、何げなく素直に頷く。
 すると、途端に、楓の周囲を取り囲んだ女性たちが、
「……きゃーっ!」
 と歓声をあげた。
「……加納様のそばにいるから、やはりって思ったけど……」
「あの……長老が秘蔵していたっていう……」
「噂の……最強の……二番弟子……」
「……見えないなぁ……」
「いかにも強そう、なんて外見をしているもんですか……」
「やっぱ、本物は、そうよねー……」
「一見そうみえなくても、いざとなると、強いのが本物で……」
「さっき、わたしたちなんて、あの才賀とたった二人にいいようにあしらわれちゃったしさ……」
 当人である楓をよそに、いっせいにがやがやとおしゃべりをはじめる少女たち。
 顔写真や回状が出回っている訳でもないが、口コミ、という原始的な情報伝播で、楓のことはそれなりに広く広まっているらしい……。
「……はい。手を休めない……」
 あまりのことに呆然としかけた楓に、最初に声をかけて来た少女が、注意をする。
 楓は、いそいそと作業を再開した。
「……あの……」
「……ねーねー。松島さん、楓ちゃん、って呼んでもいいかしら……」
「え……ええ。
 どう、ぞ……」
 自分が注目される、という状況に慣れていない楓は、若干引き気味になっている。
「じゃあ、楓ちゃん……。
 加納の直系……荒野様とは、どういう関係?」
 単刀直入に聞かれた楓は、思わず「ひっ」という声を上げる。
 一つは、楓自身の感覚からしても、自分が荒野とどうこう、というのはありえない組み合わせであるからだし、もう一つは……。
『……茅様とのことは……どこまでオープンにしちゃっていいんだろう……』
 というあたりの判断が、楓にはつきかねたからだ。
 このような時、臨機応変に機転を利かせる、という器用な真似ができる楓では、ない。
「……わ、わたしは……」
 結局、所在なげに視線をそらして、しどろもどろな答え方をするのであった。
「ここ、こ、こ……荒野様は、指示を仰ぐ方であって……個人的にどうこう、というは、あり得ないっていうか、考えられないっていうか……。
 そそそ、それに、わたし、別に、好きな方、いますし……」
 自分自身のことに関してなら、自分の裁量で話しても構わないだろう……と、楓は判断する。
「つまり……楓ちゃんと荒野様とは、そういう関係ではない……」
「もう長いことおそば仕えしているから、何かあったとか思ったけど……」
「結構多いもんね、そういう、一緒に長期間、任務にあたってて、そのままくっついちゃうってパターン……」
 楓の周辺に集まってきた一族の少女たちは、ひそひそ声でそんなことを話し合いはじめる。
『……こ、これは……』
 ここまでくると、楓にも少女たちが、本当は一体何を知りたがっているのか……段々、予想がつくようになって来ていたのだが……。
『この人たちは、つまり……』
「この分だと、楓ちゃんのは方はそういう感じでもなさそうだし……」
「あとは、才賀の……でも、あの子、とっつき悪そうだからどうやって切り出すか……」
「それに、あの二人も……まだ小さいけど、意外にルックスはいいし……」
「加納の因子が入っていれば、すぐに育つかも……」
 ごそごそと、荒野の周囲にいる女性たちを品定めしはじめていたり……。
『……加納、様の……』
 少女たちは、小声でひとしきりそんなことを囁きあうと、お互いの顔を見合わせて、うんうんと頷き合う。
「……加納様の……玉の輿……」
『……ああ。……やっぱり……』
 そうした思考法は、楓にとっては異質なものではあったが……客観的に考えれば、荒野の配偶者になる……というのは、一族の女性にとって、それなりに魅力的な地位をゲットする……ということを、意味する……。
 野呂であれ二宮であれ、六主家の中で、それなりの血筋に生まれてた、年齢の近い女性ならば……チャンスはある……と考えるのも、無理からぬ所で……。
『……加納様ぁ……』
 荒野は、自分がこういう目で見られる、という可能性を想定しているだろうか? いや、今は、そんなことを考えている余裕はないだろうな……とか思いつつ、楓は心中で、思わず、悲鳴を上げそうになった。
「……ちょっとぉっ!」
 突如、楓たちが集まっている場所に、別の女性が飛び込んできた。
「強敵、出現!
 今ついたばかりの野呂の姫様が……」
 静流が、周囲の注目を集めている……と、その女性は、告げた。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(118)

第六章 「血と技」(118)

 仁木田は、孫子と徳川が交互に披露する構想に、若干、気後れを感じはじめたようだ……、と、荒野は観測した。
 話しが進むにつれ、つまり、スケールが大きくなるにつれ、挙動に落ち着きがなくなってくる。仁木田はもとより、他の一族にしても、「表」のビジネス……とれも、これだけの規模のプロジェクトに関わる機会は、そうそうあるわけではない。
 そこで、仁木田は、話題を逸らすつもりか、
「……だが……この工場内をくまなく撮影している……っていうのは……一体、どうしてなんだ?」
 などと話題を変えはじめる
「……はいはいはい!」
 片手を上げながら玉木玉美が勢いよく登場した。
 ここから先の展開が容易に想像できた荒野は、
『……あ。
 仁木田さん、これでますます落ち着かなくなるな……』
 と思った。
 これから玉木の口から出ることは、従来の一族の価値観と、真っ向から対立する。
 荒野でさえ、内心で折り合いをつけるのに苦労したのだ……。
 玉木は、
「……それについては、わたしの担当です!
 説明させていただきます。是非、説明させてください!」
 と前置きして、「シルバーガールズ構想」について、事務所から持ち出した液晶ディスプレイに実物の映像を写しながら説明しはじめた。

 その背後では、佐藤君が迎えにいった羽生譲が野呂静流を伴って工場に入ってきた。呼嵐丸を連れて白い杖をついた野呂静流の姿に気づいた一族の者が、小さくどよめきはじめる。陶然のことながら、野呂本家の直系である静流は、一族の中でもかなり名と顔が知れ渡っていた。
 静流本人は、そんな騒ぎも意に介した様子も無く、羽生とともに三島に合流して、調理の下準備を開始する。
 佐藤君やそばにいた数名が、車に積んできた炭などをおろして工場の奥に運び込んでいた。

「……いや……ちょっと待て……今、気分を落ち着けている……」
 数分後、玉木の説明を一通り理解すると、仁木田は盛大に煙草をふかしながら、玉木の説明を遮った。
「……お前らは、ご近所の平和を守る、正義の味方だ……。
 少なくとも、そうであろうとしている……そこまでは、理解した……」
 顔を俯かせたまま、仁木田は、ゆっくりと話はじめた。
「おれはお前らの保護者でもなんでもないから、そのことの是非は、ここでは問わない。
 また……お前らなら、確かに、大概の悪者なら、実力行使で排除できるだろう……。
 ……だけど……よぉ……。
 なんだって……正義の味方、なんだ?」
 仁木田の絞り出すような口調に、荒野は、
『……ああ。やっぱり、混乱しているな……』
 と、思った。
「その理由は……いろいろあって、話せば長くなるけど……」
 玉木が、「……まず、第一に、今後、悪者退治が本格化すると予測され……」などと、「シルバーガールズ構想」のメリットをとくとくと数え上げ始める。
 一つ、二つと滔々と説明を終え、玉木が三つ目のメリットを説明しようとすると、
「もう、いい!
 ……分かった。
 見かけほど酔狂なわけではなく……すべて、計算づくだとうことが、よく分かった……」
 何かに耐え切れられなくなったように、仁木田が、再び玉木を制する。
「……よう、加納よぉ……。
 お前、ここでとんでもないガキどもとつるんでいるな……」
 仁木田は話しの矛先を、今度は、そばに来て成り行きを見守っていた荒野に向けた。
「実に……面白そうだ。
 しばらくここにいれば、少なくとも退屈だけは、しないな……」
「……ええ」
 やはり……荒野が玉木やテンたちに、やめるように説得するための材料を思いつかなかったように、仁木田も、「シルバーガールズ」計画を廃止に追い込むほどの根拠を思いつかなかったらしい……。
 結果、仁木田は……荒野と同じく、開き直った。
「保証します。
 退屈だけは、絶対に、しません……」
 荒野は、心の底から、そう断言することができた。
 そして、
『……その代わり、気苦労も耐えないけど……』
 と、心中でそっと付け加え、しかもその想いはおくびも表情には出さない。
 仁木田のように経験豊富で陣頭指揮を取ることもできる人材は、急速に人数が膨れ上がっている現状では、実に貴重な存在なのだ。だから荒野は、仁木田と一緒にテンやガクと戦った他の五人も含めて、仁木田も完全に「こちら側」の人間とし味方につけるつもりだった。
 そろそろ優秀な中間管理職も確保しておかないと、現実問題として荒野の身が持たない。

 そんなことを話している間に、
「……おーい!
 お前ら、話しに熱中するのもいいが、餌の準備もぼちぼち出来てきたぞー……。
 まだ炭火を起こしたばっかだから、まずは、刺身と乾き物からな……」
 そんなことを言いながら、事務所の方に引っ込んでいた三島が、そこいらにたむろしていた術者を何人か手招きし、紙皿に乗せた刺し身や乾き物を適当に配りはじめる。また、その頃にはショッピング・センターまで買い出しに行っていた一族の者も帰ってきており、箱買いしてきた缶のビールやソフトドリンクを配りはじめていた。
 三島がそう声をかけて来たのを機に、徳川が手際よくガスバーナーを用意し、工場の隅に転がっていたドラム缶を上下半分に焼き切り、空気穴をあげ、内側、上十数センチの余裕を空けて、水平方向に金網を溶接した。
 その金網の上に羽生が持ってきた炭を並べて火を起こし、即席のコンロをつくる。
 三島や羽生を中止として、料理の心得がある人間が数名、集まって、三島が買い出して来た材料を使って、本格的料理を初めていた。
 茅は茅で、メイド服姿で周囲の連中に片っ端から紅茶を振るまい初めていた。茅の素性を知らぬまま、物珍しさに集まった一族の中から、時折、「えっ! この子が……」とか、「……例の……加納の……」というひそひそ声が聞こえてくる。

『……なんだか……なし崩し的に、茅のお披露目にも、なっているなぁ……』
 と、荒野は思った。
 考えて見れば……テンやガク、それに茅の姿を大勢の一族の者の目に晒したのは、これが初めてのことである。それまでは、上層部とか、たまたま機会があった個々人など、ごく限られた範囲でしか、接触していなかった。
『……ま……らしいといえば、らしいお披露目になったか……』
 とも、思う。
 この場にいる者経由で、テンやガクの実力が知れ渡るのなら……たいていの者は二の足を踏んで、勝負を挑んでこない筈であり……その意味で、大勢の術者が見守る中、実力に関してそれなりに定評のある六人を、たった二人で破った、という事実は、テンやガクにとっても、今後有利に働く筈だった。
 無用な争いで、時間と体力を消耗することもない。
 今後、テンやガク、それにノリに挑んでくる者があるとすれば……それは、己の力量をわきまえられない粗忽者か、それとも、三人が束になっても適わないレベルの熟練者になるだろう……。
 荒野がそんなことを考えているうちに、買い出しに行ったついでに適当に注文して来た、とかいう物品を、酒屋が軽トラックを乗り付けて届けにくる。
 料金の清算は、ピザ屋の対応をしたものが、その時徴収した金で行い、すぐに、他の一族の者も集まり、受け取った物品をケースごと担いで運び込みはじめた。

 その後は……宴会、になった。




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彼女はくノ一! 第五話 (201)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(201)

 そのすぐ後に、孫子や徳川、荒野なども合流してきて、「電子的な監視網設置の可能性」を議論するような流れになった。
 テンとガクは「理論的には可能だが、実現させるために乗り越えるべきハードルが多すぎる」という慎重論を述べれば、孫子と徳川が「それらのハードルは、十分に乗り越えることができる」という楽観論をそれぞれに展開する。
 この土地の事情にも、徳川、テン、ガクといった「特殊な人々」についても詳しくない仁木田が、時折初歩的な質問を差し挟んだりしているうちに、ぞろぞろと他の一族も周囲に集まってくる。
 外見的にみれば、「渋いおっさん」である仁木田と、制服姿の孫子や白衣を羽織って黒猫を頭にのせた徳川、それに、子供そのもののテンやガクなどと、真面目な顔で実務的な打ち合わせをしている……というのは、少し客観的に考えて見ると、かなりシュールな図であったが、そのことを不審に思う者は、この場にはいなかった。
 何故ならば、その動機においては千差満別ではあるものの、「この土地の平静を保つ」という目的においては、この場にいる全員が一致するところであり、そのために必要な施策についての詳細が話し合われている、ということも、ほぼ全員が理解していたからである。
 この点についての例外は、徳川の頭上に乗って目を閉じて丸まっている太った黒猫くらいなものだろう。
 孫子と徳川は、テンとガクが開発した、外見から特定個人を照合するシステムは、高度な技術を含み、商業的な意味合いからいっても、利用価値が高い。内部の細かなプログラム類のパテントなども含めると、将来的にかなりの重要な資金源になるうる、という予測を語る。
「……当座、必要な資金は、徳川が負担する約束になっていますが、これは、場当たり的な寄付ではなく、そう遠くはない将来、十分に回収できる見込みのある、投資です……」
「……うちの会社の技術力の宣伝にも、なるのだ……」
 孫子の言葉に、徳川も頷く。
「当座は、試作品のテストとして監視カメラをばらまいて、回線も繋いで、認証プログラムも実際に走らせて見るのだ。もちろん、名目だけではなく、このシステムがどれほど使えるのか、テストも行う……」
「……同時に、才賀系列のセキュリティサービスでも、試用を開始します。そして、一月ほど様子を見て、性能が実証されれば、正式に採用します。させます……」
「……才賀の系列で正式採用されれば、クオリティは、世界レベルで保証されたも同然なのだ。
 そうなれば、マーケット的にも世界を土俵にした勝負ができるし、ハードの方も、様々な使用環境を考慮し、専用のカメラ保護ケースや防犯装置も同時に開発しているし、通信も、無線や有線を選べる。メモリーを組み込めば、録画も可能。電源も、充電式、ケーブルつき、果ては、自家発電式まで選択できるようになっているのだ……」
「……いや。
 その……カメラが資金源になりうる、ということは、十分に、理解できた……」
 仁木田が、どんどん口調に熱が籠もってくる孫子と徳川を手のひらで制する。
「……だが……この工場内をくまなく撮影している……っていうのは……一体、どうしてなんだ?
 ここ……いっちゃあぁなんだが、単なる廃材置き場にしか見えないのだが……」
「……はいはいはい!」
 玉木玉美がよく通る声でそういって、人垣を割って姿を現した。
「……それについては、わたしの担当です!
 説明させていただきます。是非、説明させてください!
 はい! 放送部! きりきり運んでくる!」
 何か、とみれば、放送部の男子が二人掛かりで、えっちらおっちらと液晶モニターを抱えて、その背後にノートパソコンを持った女子生徒がやってきた。モニターからは伸びたケーブルは、女子の持ったノートパソコンと接続されている。
「……これだけの人数いると、それこそプロジェクタが欲しくなるな……」
 玉木は、放送部員たちが液晶モニターとノートパソコンを地面に直置きし、セッティングをする間だそんなことを呟く。
「……はい。再生準備できた? じゃあ、いよいいくか……。
 おほん!
 ぷっちなっ!」
 玉木が合図を送ると、ノートパソコンの上に屈み込んでいた女生徒が、キーボードを叩く。
 工場内に、ロック調の景気のよい音楽が大音量で流れはじめた。
「……はい。
 まだボーカルは収録してませんが、これが、シルバーガールズの、テーマソング。
 それで……」
 玉木が、液晶モニターの中の勇士を、指さした。
「これこそ……我らが正義の味方、シルバーガールズです!
 愛と期待の資金源、兼、マスコットにして、ご近所の守り神!
 行け、行くのだ、シルバーガールズ!
 行って、ご近所の平和を守って、ついでにお客を呼んで来い!」

 しばらく、誰も、何も言わなかった。

「……あー……」
 かなり時間が経ってから、仁木田が、いった。
 完全に毒気を抜かれた表情で、「質問をした以上、なんかしらコメントをしなければ……」と思っているのが、ありありと見て取れる。
「……シルバー……ガールズ?」
 仁木田の横に座り込んでいるテンとガクが、コクコクと首を縦に振った。
「……正義の……味方?」
 テンとガクは、さらに勢いよくかぶりを振った。
「シルバーガールズ、一号!」
 テンが、名乗る。
「同じく、二号!」
 ガクも、名乗る。
「……ええっと……ポーズもつけた方が、いい?」
 名乗った後、硬直している仁木田に向かって、ガクが、おずおずと尋ねた。
「……いや……いい。
 遠慮して、おこう……。
 あ。ここ、煙草はいいのか?」
 仁木田は、誰にともなくそう呟いて、ポケットから煙草の箱とライターを取り出し、そのうちの一本に火をつけて、深々と紫煙を吸い込んだ。
「……いや……ちょっと待て……今、気分を落ち着けている……」
 それから、仁木田は、ゆっくりと大量の煙を地面に向かって、吐き出す。
「……お前らは、ご近所の平和を守る、正義の味方だ……。
 少なくとも、そうであろうとしている……そこまでは、理解した……」
 顔を俯かせたまま、仁木田は、ゆっくりと話はじめた。
「おれはお前らの保護者でもなんでもないから、そのことの是非は、ここでは問わない。
 また……お前らなら、確かに、大概の悪者なら、実力行使で排除できるだろう……」
 仁木田の言葉に、周囲で人垣を作っていた一族関係の者たちが、いっせいにうんうんと頷く。
「……だけど……よぉ……。
 なんだって……正義の味方、なんだ?」
 顔を上げた仁木田は、絞り出すような口調で、そういった。
「その理由は……いろいろあって、話せば長くなるけど……」
 玉木が、仁木田の問いに答える。
「……まず、第一に、今後、悪者退治が本格化すると予測され……そうなると、目撃者も、少なからず現れる筈。
 そのための、予防線……として、前以て、この子たちに、いいイメージを持ってもらう……。
 いわばイメージ戦略なんだけど、これが、一番の目的……」
 玉木が、意外に冷静な声で、人差し指をおる。
「……次に、関連コンテンツ自体を、商品化して、今後のボランティア活動の資金源に、あてる……。
 実際、ボランティア活動にもかなりお金がかかりそうだし、正義の味方の活躍を売って、いいことに使うのはイメージ的にも、いい……。
 ボランティアについては、必要とあれば、また後で別の子が説明します。
 これが、第二……」
 玉木が、中指を折る。
「……さらに、シルバーガールズの姿で、ボランティア活動もやってもらうし、そっちの人集めにも、役立ってもらう……。
 このボランティア活動は、地元住人と溶け込むための方便として、この子たちのみならず、これから、この土地に定住しようとする一族の方々すべてにとって、とても都合がよい場となりうる……。
 そうした方々が知人を増やす、ということだけではなく、地元に役に立つことをしている……という意味でも、重要な意味を持つ。
 これが、第三……」
 玉木が、薬指を折る。
「……それから……」
「もう、いい!
 ……分かった。
 見かけほど酔狂なわけではなく……すべて、計算づくだとうことが、よく分かった……」
 まだまだ続けようとする玉木を、仁木田が制する。
「……よう、加納よぉ……。
 お前、ここでとんでもないガキどもとつるんでいるな……」
 仁木田は、そういって荒野の方に苦笑いを浮かべた顔を向ける。
「実に……面白そうだ。
 しばらくここにいれば、少なくとも退屈だけは、しないな……」
「……ええ」
 荒野も、真面目な顔で頷いた。
「保証します。
 退屈だけは、絶対に、しません……」
 実に実感が籠もった、声であり表情だった。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(117)

第六章 「血と技」(117)

 合理的、か……と、荒野は沙織の言葉を反芻する。
 一族とて……人間の一種であり、生物である。対抗するための方法は、必ずしも武術である必要はない。
 自分の皮膚よりも硬い物で切りつけられれば、皮膚が避ける。鈍器で殴られれば、よくて内出血、打ち所が悪ければ、昏倒したり死傷したりもする。薬物も効けば、感電もする……。
 今回、茅が採用した方法は……相手が来る場所とタイミングがあらかじめ分かってさえいれば、実は、効果的な……それこそ、非力な一般人でさえ、一族の者を取り押さえることが可能な方法であることが、証明された形で……。
 荒野は、視線を逸らして、座り込んでなにやら話し合っている、テンとガク、それに仁木田の方を見る。切れ切れに聞こえて来る単語から判断するに、仁木田は、テンやガクに気配絶ちや幻術の類いがまるで通用しなかったことを、訝しがっているようだった。
 テンやガクは、現在の工場内が、死角がないほどセンサー類で走査されていること、そこで得た情報を選別し、リアルタイムで表示するシステムを自分たちで作り上げたこと、などを仁木田に説明する。
「……機械、か……」
 一通りの説明を聞いた仁木田は、軽く呻いた。
「やはり、お前らは……新種で、新世代なんだな……」
「おじさん、難しく考え過ぎ……」
 テンが、仁木田に、指摘する。
「こんなもん……たまたまあったから使っただけで、単なる道具だよ……」
「……そうそう」
 テンの言葉に、ガクも頷く。
「カメラとかマイクが設置されていない、この工場以外の場所だったら……ボクたちも、もっと苦労したと思うけど……」
「いや……それでも……」
 仁木田は、何かを、慎重に考え込む表情になっている。
「……機械で得た情報をフィードバックする、というのは、現実問題としても……使える手段なんじゃないか?」
 出自が古いからといって、一族が、因習ばかりに縛られた存在である訳でもない。むしろ、便利なものがあるなら、積極的に自分たちの活動に取り込んで行くだけの柔軟さも持っていた。その程度のことさえできないようでは、何百年も「一族」としてのアイデンティティを保持できない、とも言える。
 それが何故今までの、索敵に機械類を活用してこなかったというと……従来の機械では反応が遅すぎて、一族の望むレスポンスが得られず、使い物にならなかっただけの話しだ……。
 しかし、今回、テンとガクが使用したシステムは……仁木田たちの動きを、リアルタイムで捕らえていたのだ。
 そうでなければ、敷島や刀根老人は、テンとガクに破れていない。
「ここ意外の場所で、同じことをしようとすると……」
 仁木田が何を言いたいのか察したテンは、やはり考えながら、慎重に答える。
「理論的には、可能だけど……実現するのは、難しいと思うな……。
 一つは……最初に、大掛かりな設備投資が必要になる、ということ……」
「ようするに……金……の、問題か?」
 打てば響くように、仁木田が答える。
「端的にいうと……それが第一、だね。
 これだけの精度のいいセンサーを高密度で展開する、となると……それだけ、先立つものも必要になる……。
 それ以外に……」
「大規模になればなるほど……システムの負荷も増え、レスポンスが悪くなる……必要な処理能力をどのように確保していくか、という問題……。
 後、情報の移送に無線を使用する場合は、帯域の確保のことなんかも、考えなければならない……」
 ガクが、テンの言葉を引き取る。
「……さっきのは……ボクら専用に、マーキングした標的……今回のパターーだと、赤いひらひらのおねー……さんだか、おにーさんだかはっきりしない人と、そこのおじいさんに絞って、数値や記号として表示させたから、この速度で処理できたけど……こういう表示方法、テンとかボクとか、慣れている人でないと意味が分からないから、他の人も利用するとなるの、インターフェースからしてデザインしなおさなければならないし……」
「インプットもアウトプットも……より詳細な情報を伝えようとすれば、それだけ処理系の負荷が増えるわけで……音声や画像などのデータは、リアルタイムでそのまま扱うとなると、やはり、重いから、太い無線回線を保持する問題とかもでてきて……」
 テンがさらに、続けるていると……。
「……面白そうなお話を、していますわね……」
 その後ろに、いつの間にか、孫子が立っていた。
「わたくしも、最近、つくづく思うのですが……戦闘時の一族の方々の優位、というのは……筋力や反射神経よりも、その姿を秘匿するためのメソッドを伝えている所に、あるのではないかしら……。
 それ以外の表面的な優位性は、実は、火器の使用などによって、十分に対処できる……」
 最初、いきなり話しに割り込んできた孫子を、怪訝な表情で見ていた仁木田は、不意に「……ああ。昨夜、双子をとっちめた、才賀衆の小娘か……」と、詰まらなそうな顔をして呟く。
 孫子が、単身で酒見姉妹二人を相手にして、圧倒した話しは、一族の中でもそれなりに広まっているらしい。
「……で、その才賀の小娘が……おれたちの話しにどういう興味を持っているんだ?」
 仁木田は、小馬鹿にしたような表情で、孫子に話しの先を即した。
「……武器や装備など、十分な用意をしていれば、能力的に劣った者でも、自分より遥かに強い相手に勝てる……という話しを、しています……」
 孫子は、仁木田の表情を意に介さない風で、先を続ける。
「……あなたがたでは、そのままでは……いくら人数を揃えても、ガス弾を使用した連中には対抗できませんわ。向こうは攻撃する時と場所を自由に設定でき、単体での戦闘能力は、ここにいる誰よりも高い、と想定するだけの根拠があるからです。
 が……。
 しかるべき準備を十分に整えて待ち伏せれば……あるいは、なんとかできるかも、知れませんわ。
 先天的な能力の不備を、ツールと組織力によって補うのです……」
「……小娘が、知ったようなことをいう……」
 仁木田は、にやにやと口の端を笑いの形に歪めている。
「で、そのために必要な金は……どなたが、恵んでくださるんで?」
「他人の恵みを当てにする必要なぞ、ないのだ……」
 徳川が、孫子の隣に割り込んできた。
「……必要な資金なら、この先、いくらでも稼げる……。
 それに、工場内に設置したものとは精度においてかなり劣るとはいえ、早期警戒に必要なシステムは、すでに量産体制に入っているのだ。
 後は……出来上がった防犯カメラを、市内の主要箇所に設置するだけなのだ……」
「……新型の防犯カメラ、あるいは、違法駐車の監視カメラの使用試験、という名目で数万個の監視装置を、無料で市内に設置します。
 同時に、同じシステムを、才賀資本の多くの警備会社に売り込みます……」
 孫子が、自信に満ちた表情で、頷く。
 売り込む、とはいっても、売り込み先の企業の多くは、孫子自身が大口の証券を握っている大株主で……ましてや、これから売り込もうとしている監視システムは、従来のものに比べ、性能がいい。
「……このシステムの肝は……データベース内に設定した人物の特徴を記憶し、認識できるということです。
 あらかじめデータベース上に入力した特徴を持つ人物が入ってきたらカメラの視界に入ってきたら、管理者に警報を発し、同時に、別の場所にあるカメラと連動して、その人物の動向を監視します……。
 空港や駅、それに主要なホテルなどに設置できれば、指名手配犯やテロリストの検挙率は、かなり上がることになるでしょう……」




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彼女はくノ一! 第五話 (200)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(200)

「金集めろ、金! 加納の若にばっかり出させるんじゃねーぞ!」
 徳川が適当かつ大量に注文したピザのデリバリーが届くと、一族の者たちはそんなことを言い合いながらさっさと自分たちで会計を済ませ、息を吹き返したというガクやテンのもとに、真っ先にピザと飲み物を持っていく。
 会計をした時、ついでに、追加の注文も、徳川がしたのと同じくらい大量にしていた。
「……なんか、あるんすかぁ?」
 ピザ屋の配達員は新たな注文を受けながら、工場内が大人数でごった返している所を見て、首を捻っていた。
「なんかって、そりゃ……引越しとか……そうだな。とにかく、新たな門出の祝いだ。
 とにかく、この調子で何往復かしてくれ……」
 ピザ屋の配達員がかえって行くのと同時に、三島が玉木と数名の生徒を従えて食材を調達にいく。一族の関係者中から、「おい! 何人か、飲み物買って来い!」とか、声をかけあって、出て行くものがいた。
「はじめて食べたけど……これ、熱々で、おしいね……」
「へぇ……これが、ピザっていうのか……」
 ガクとテンは、差し出されたピザをさっそく貪り、ソフトドリンクで流し込んでいる。
「気に入ったのなら、遠慮せずにどんどんやってください。
 追加も注文しましたし、二宮の者は、強い方には恭順することになっているんで……。
 お二方ともそのお年で……あの六人を相手にあそこまでやれる方は、滅多におりません……」
「何……それをいうのなら、野呂の者も、大方は、お二方の傾きぶりに心服いたしております。
 おのれの力量でおのれの欲望を満たすことこそ野呂の心意気。
 失礼ながら、その恰好から判断しても、お二方は野呂の様子を色濃く継いでおいでのようで……」
 屈強な二十代の若者二人が、座り込んでピザを貪り食っているテンとガクを挟んで、そんな追従をいい合いはじめる。

「……あの、加納様……ひょっとして……」
「ああ……ここにいるの顔見知り意外、全部一族の者だ……」
 そんな様子をみながら、楓は荒野に、おそるおそる確認した。
「お前や才賀とやりあった連中も、合流して来ていると思うけど……」
 あまりにも予想通りの答えだったので、楓は軽くめまいを感じた。
「……で、でも……。
 あの人たちって……敵対していたんじゃあ……」
「本気で敵対する理由も、別にありはしないだろう……」
 荒野は、つまらなそうな顔をして、楓に頷く。
「ただ、こいつらは……自分たちの目で、テンやガクたち新種が、どんなもんか……確かめて見たかっただけだよ……」
 見ると……楓だけではなく、そばで二人のやり取りを聞いていた樋口明日樹や佐久間沙織も、どことなく居心地の悪い表情をしていた。
「確かに……あのお爺さん……。
 テンちゃんやガクちゃんの手当て、してたけど……」
 佐久間沙織は、横目でそっと、今度は敷島丁児や丸居遠野の手当てをしている刀根畝傍老人の様子を伺う。
「身内や自分自身に危害を加えられた、というのなら、別だけど……。
 なんの理由も無く、誰かをつけ狙う、ということをするのは……一族の中には、ほとんど、いないよ……」
 荒野はそういって、大仰に方をすくめて見せる。
「一般人と同じで……ごく少数の病的な者を除いては、ってことだけど……」
 ここで荒野は意味ありげに酒見姉妹の方を見た。
「おれたちは、一般人より大きな力を持っている分、その行使に関しては、慎重なんだ。能力の行使については、原則として、任務……つまり、金になる仕事が、優先される。
 それ以外で……任務以外で、他人に対して自分の能力を開放するのが許されるのは……自分たちよりも強そうな相手にした時だけ……」
「……下克上、上等っていうわけ?」
 飯島舞花が、興味深そうな顔をして、荒野に問い返す。
「……確かに、世代交代の時期を判断する材料にもなっているけど……。
 新しい知り合いを作るプロセスとしても、初めて顔を合わせる人間同士が、手っ取り早くお互いの実力を測るためにも、この程度のじゃれあいは必要なんだ……。
 特に、テンやガクについては、情報がまだまだ少なかったから……。
 それに、ついこの間まで日本にいなかったおれだって、この間、同じような歓迎の挨拶されているし……」
「……この間の、あれ……そういうこと、だったの……」
 柏あんなが、少し驚いたような顔をした。
「そう。
 おれ、名前は知られていたけど、国内では、あんまり顔と実力、知られてなかったから……。
 おれの腕を確かめたかった若いのを糾合した黒幕は別にいるんだけど……一族にそういう気風がなかったら、あそこまで多くの人は、集められなかったろうね……」
 そう説明する荒野の口調は、どこか他人事のようだった。

「……よう」
 顔色の悪い男が、テンとガクを取り囲む人垣を縫って、二人に声をかけた。
「そこに……座っても、いいか?」
 テンやガクから数十分遅れで目を醒ました、仁木田直人だった。
「うん。座って座って……」
 ガクが、即座に自分の横を指差す。
 テンもガクも、リノリウムの上に直に腰を降ろしている。
「おじ……お兄さんも、強いね……」
 テンも、さばさばした表情で、仁木田を歓迎した。
「おれは仁木田という名だが……。
 おじさん、でも、いい」
 仁木田は、むっつりと黙り込んだまま、ガクの隣に胡坐をかく。
「お前らからすれば、おじさん意外の何者でもないからな……」
「それじゃあ……仁木田のおじさんも、食べなよ。冷めないうちに……」
 ガクは、梱包材の上に置かれたピザを指差す。
「おじさんも……あれだけ動けば、お腹すくでしょ?」
「いただくが、な……。
 その前に……教えてもらおう。
 お前ら、何故、敷島の幻術や、刀根の爺さんの居所が、わかったんだ?
 お前らのその奇妙なヘルメットに、どんな仕掛けがしていあるんだ?」
「仕掛けは、仕掛けだけど……そんなに特別なことをやっていたわけではないよ……」
 仁木田の質問に、あっけらかんとした口調で、テンが答える。
「この工場の中には、多数のビデオカメラとマイクが仕掛けられていて……その情報を摘出して、位置情報を割り出してだけ……」
「レーダー……みたいなもんか?」
「……うーん。
 機能としては、似ているけど……もっとインスタントなもんだよ。
 撮影に便利なように、工場内の様子を座標で示すシステムは、前から準備していたし、ビデオカメラやマイクを設置してあったのも、たまたまだったし、ボクらは、この工場内のことは、かなり良く知っている、っていう好条件もあったし……」
「……撮……影?」
 当然のことながら、仁木田は怪訝な顔をする。




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(116)

第六章 「血と技」(116)

 その後は、大変な騒ぎになった。
 まず、茅や香也、三島百合香、飯島舞花、柏あんな、佐久間沙織が、酒見姉妹を引き連れて工場にくる。前後して、楓と孫子を襲った連中も、工場に合流してくる。元からいた放送部員と合わせると、かなりの人数に達した。
 荒野は、徳川と相談してピザのデリバリを注文していたが、それでは全然間に合いそうにない。
「……ピザ屋の他に、出前が効くところは……」
 荒野は、徳川とそんな相談をしはじめる。
「昼間なら、蕎麦屋が一軒あるのだが、この時間では……基本的に、ここいらは住宅地ではないから、飲食店も極端に少ないのだ……」
 徳川は、そういって肩をすくめる。
 その時、折よく、荒野の耳が、
「……餌、足りるのか?」
 とかいう、聞き覚えのある声を拾った。
 振り返ると、三島百合香が、楓たちとなにやら話し込んでいる。
「一応、ピザのデリバリ、頼みましたけど……」
 どうやら三島は、自分と同じことを懸念しているらしい、と、読んだ荒野が、声をかける。
「この分じゃあ……全然、足りませんね……」
「……よっしゃあ!
 玉木、それに、手の空いているの何人か!
 商店街に買い出しに行くから、手伝え!
 玉木は家に連絡して、刺し身用の魚、適当に押さえろ! 捌くのはわたしがやってやる!」
 三島は、元気よく、宣言した。
 三島を中心として、玉木や他の何人かが、バラバラと出口に向かう。
「徳川……ここ、火とか、使える?」
「調理に使える火元は、事務所の給湯設備くらい、なのだ。
 プロパンとか金属加工用のバーナーは、あるが……」
「……んー……」
 香也が、思いがけず、助け舟を出してくれる。
「……うちに行けば、キャンプ用の煮炊きの道具くらいなら、あるけど……」
「……ああ。
 そういや、前に、バーベキューとかやったっけ……」
 香也にそういわれ、荒野は以前のことを思い出す。
「……炭火で焼くだけなら……調理も簡単だし、ちょうどいいか……」
「……羽生さん、もうじき仕事終わるから、メール入れておく……」
 いそいそと携帯を取り出す香也。
「……おーい、誰か! 車、出せる人、居る!」
 荒野が、大声で周囲に呼びかけた。
「……今使うんすか?
 ボロいのでよければ、工場の前に停めてますが……」
 佐藤君が、そんなことをいいながら、荒野の近くに寄ってくる。
「……ちょうどいいや。
 狩野君の家、知っているな。そこの玄関前につけてくれ。
 それで、羽生さんとも合流して、荷物も、拾って来てくれ……」
「……一緒にいくの」
 茅が、荒野の袖をひいて、そんなことをいいだす。
「一度帰って、着替えて、ご奉仕なの……」
「……と、いうことだ。
 佐藤君、茅を乗せて、狩野家に向かってくれ……」
「……了解っす……」
 佐藤君が、上機嫌で答える。
「……なんだか……楽しくなって来ましたねぇ、荒野さん!」
 佐藤君は、出口に向かいながら、そういって荒野の背後を示した。

 テンとガク、それに、二人とやり合った連中も息を吹き返して、他の一族の者とか制服姿の学生とか入り交じって、談笑していた。
 放送部の誰かが気を効かせたのか、事務所からモニターを引っ張って来て、今までに記録されて来た、戦いの数々を映し出し、それを肴にわいのわいの話し合っている。
 香也たち、後から来た制服組もそこに混ざっていた。
「……これ……本当に、合成じゃないの?」
 飯島舞花が、目を丸くしながら、玉木に尋ねる。
「うん。
 これは、まだ加工する前の素材。
 まだなんも手をつけていない……」
 玉木は、何故か誇らしげに胸を張った。
「……どうだ。凄いだろう……」
「玉木が凄い訳じゃないだろ……。
 凄いのは、テンちゃんやガクちゃんで……」
 舞花は、すかさず玉木に突っ込みをいれた。
 樋口明日樹とか柏あんなとかは、驚き過ぎて硬直してしまっている。
 彼らのほとんどが、テンやガクの勇姿を見るのは初めてだった。香也は、例によって、「……んー……」唸っているだけなので、どれほど感銘を受けているのか、外からは判断できない。
 舞花のように、フランクに受け止められる方が、どちらかといえば例外だろう。
「……そっか……。
 昼休みに頼まれたの……これのデザインだったのか……」
 香也が、しばらくしてから、ぽつりといった。
 どうやら、この時になるまで、自分の仕事がどのように使用されるのか、まるで想像していないまま、玉木に乞われるままに、細々としたものを描いて来たらしい。
「……そういや、堺君や栗田君は?」
 舞花やあんなが来ている、ということは、あの二人も来るのではないか……と思った荒野が、尋ねる。
「自転車で後から追いかけて来るから、そのうちつくと思うけど……。
 先生の車、中が狭いのな……」
 荒野は、頭の中で人数を数える。
 酒見姉妹、茅、香也、樋口、柏、飯島、沙織……それに、三島。これでもう九人。タクシーと三島に分乗したとしても、確かに後二人はきつそうだった。
「……噂をすれば……。
 おーい! セイッチ! こっちこっち!」
 舞花が、工場に入って来てきょときょと周囲を見回している栗田精一に、呼びかける。傍らには、堺雅史の姿もあった。
「……そういや……学校で、誰があの凶暴な双子を抑えたんだ?」
 荒野は、話題を変える。
 少し前から、気になっていた所ではある。
「……タイミングからしても……こいつら、おれたちがいなくなってからすぐに動き出す筈だから…….
 迎撃準備とかしている暇、ほとんどなかったと思うんだけど……」
 荒野がそういうと、柏あんなは露骨に視線をそらし、飯島舞花は、こめかみのあたりをコリコリと掻きだした。
「……あー……あれ、ねー……」
 舞花にしては珍しく、言葉を濁した。
「……実は、茅ちゃんが、大活躍で……」
 代わりに、説明を引き取ったのは、佐久間沙織だった。

「……という、具合だったのよ……」
 数分後、沙織からおおよその経緯を聞いた荒野は、その場で頭を抱えたくなった。
「……んー……。
 それ、本当。
 だいたい、そんな感じだった……」
 事件当時、美術室にいた香也も、沙織の言葉を裏付ける。
「……その時の、茅ちゃん……正直、ちょっと、怖かった……」
 樋口明日樹も、少し沈んだ表情で、そう答える。
「いくら、必要で……それが一番いい方法だった、っていわれても……わたし、同じことをやれっていわれたら、できないと思う……」
「……いや、それが普通、だと思う……」
 荒野は、呻くようにそう答える。
「茅は……丸っきり平気、っていうのとは、ちょっと違うけど……それが一番いい方法だと判断すれば、迷う事なく、それを実行するんだ……」
「……みたい、ね……」
 佐久間沙織も、そっとため息をつく。
「テンちゃんやガクちゃん……それに、才賀さんや楓ちゃんも、それぞれに強いけど……茅ちゃんが、一番、何をやり出すのか、想像つかないわ……。
 それに、後になって思い返して見ると……茅ちゃんの方法が、一番合理的な解決法方だったりするのよね……」
 今回の件が、そうだったように……と、沙織はつけ加える。




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彼女はくノ一! 第五話 (199)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(199)

 仁木田が、飛んでいた。
「……ああっ……」
 誰かが、明らかに失望を含んだうめき声を、あげる。
 あるいは……楓自身が、そう声に出していたのかも、しれない……。
 テンやガクのように、先天的な資質に頼る事なく、技を磨き上げることで、ここまで到達した仁木田は……ある意味で、楓の分身のようなものだ……。
 楓も、それに、工場内に居残って戦いの帰趨を身ももっていた一族の者たちも……もとから「特別製」であるテンやガクよりも、仁木田のほうに感情移入していた。
『そういえば……テンちゃんとガクちゃん!』
 楓は、はっとして、テンとガクの方に振り返る。
 二人とも、地面に突っ伏して、ピクリとも動かない……。
 楓は、あわてて二人に近寄る。
 まず、ガクを抱き起こすと、「……うーん……おなか減った……」という声が返ってきた。
 ……こっちは大丈夫そうだな、と、楓は、ガクのをそっと床に横たえる。
 テンの方は、孫子が様子をみていた。
「……薬物を注入された、とかで……それに、腕に、手裏剣も……」
 近寄った楓に、孫子がそう告げて、テンの二の腕に刺さったままの手裏剣を指さした。さほど深く刺さっている訳ではないが……不用意に引き抜くと、出血を促す。
 消毒液や止血処理の準備を整えてから処置した方が、賢明だろう……と、楓は判断する。
「……どれ、わしにも見せてみろ……」
 不意に、背後から、皺涸れた声が聞こえる。
 振り返ると、刀根畝傍が立っていた。
「……娘ども。そう、露骨に警戒するでない。
 勝負はついた。加納の小伜にいわせると、互角、だとよ……ほっ、ほっ。
 どれ。
 こやつは、丸居にしびれ薬を漏られた方の小娘だな。丸居の手の内くらいは、こちらにはお見通しじゃ。この丸薬を水で飲ませておけ。小一時間もすれば、毒も分解する筈じゃ。
 あとは……手裏剣の方じゃが……ふむ。意外と、浅いな。
 小娘。
 今から秘伝の軟膏を塗り付けるから、乾いた布を用意せい。この程度の手当くらいできんで、なんの術者か……」
 楓は、指示を仰ぐように、荒野の方を振り返った。
「……爺さんのいうとおりにしろ。
 もはや、やり合う気はないようだ……」
「小僧……そうし向けたのは、お主であろう……」
 刀根畝傍老人は、苦笑いをしている。
「まったく……口先三寸で、あの場を収めよって……」
 楓がテンとガクに駆けつけている短時間の間に、荒野と刀根老人との間に、なにやら交渉があったようだった。
「……念のため、先生も呼んでおくか……。
 他にも寝ているやつらもいるし……」
 荒野が携帯電話を取り出すと、
「……なに、あれしきのことでどうにかなるようなやわなやつらか。
 しばらく待てば、勝手に息をふき返すわい……」
 刀根老人が、そんなことをぶつくさいいはじめる。
「……この程度ことで医者など……近ごろの若いもんは……わしの若い頃なぞ……」
 うんぬん。
 この手の独り言が多いあたり、立派な老人だった。
「……加納様……」
 楓は、おずおずと言いにくそうに、荒野に進言した。
「ガクちゃんが、その……お腹が、空いたそうで……」
「……デリバリーで、なんかとろう……」
 荒野は、しごく真面目な表情でうなずいた。
「もう、いい時間だし……どうせならついでに、茅も呼ぶかな……。
 ……おおいっ! 徳川!
 この辺で、出前のきく店って……」
「……わたくし、一度学校に帰ります。
 向こうの様子も、気になりますし……」
 孫子がそういって、立ち上がった。
「……あっ!
 じゃあ、わたしも……」
 楓も孫子に続こうとするが、孫子はそれを遮った。
「……ここも、まだまだ騒然としているし……。
 それに、香也様も引っ張ってくるから、あなたはこちらに残りなさい……」
 いわれて、見渡せば……テンとガクの二人は、まだしばらく回復しない。残りの一族は、先程の戦いに気圧されて、完全に毒気が抜かれているように見えたが……だからといって、徳川や放送部員たちの護衛役が荒野一人だけ……というのは、確かに心細かった……。
「……わかり、ました……」
 楓は、釈然としない気持ちを抱えたまま、不祥不祥、といった感じで、頷いた。

 タクシーを呼んで出て行った孫子は、三十後、タクシーと三島の車に分乗して、香也、茅、だけではなく、樋口明日樹、飯島舞花、柏あんな、佐久間沙織……それに、酒見純、酒見粋の姉妹まで伴って、工場に帰ってきた。
 何故か、酒見姉妹は、楓の学校の制服とジャージを着用している。
「……うちの学校に、転校してきたんですか?」
 楓が、酒見姉妹に向かって、不審な表情を隠そうともせず、尋ねる。
「……まさか、この時期に……。
 わたしたち、年齢でいえば、三年生よ。
 三年生が、三学期も半ばを消化したこの時期に転入……なんて、それこそ、不自然でしょ……」
 双子のうち、制服姿の方が、肩をすくめながらそう答える。
「……じゃあ、何故、そんな格好、しているですか……」
 楓の声が、低い。
「……そ、それは……」
 問い詰められると、双子は覿面に狼狽した。
 荒野も、少し前にいっていたが……この姉妹は、非常に、わかりやすい。
「……まあ、そりゃ、アレがナニでな……」
 三島百合香が、意味をなさないことをいいながら、双子と楓の間に割って入る。
「……いろいろあって、こいつらも、この近辺では悪さできなくなったってこった……。
 こいつらが何か悪さをしでかしそうになったら、耳元で、チーズケーキ、チーズケーキと囁いてやるといいぞ。
 いわば、魔法の呪文だな……」
 チーズケーキ、とは、幼児性愛愛好者を指す隠語だったが、その手の知識に疎い楓には、当然のことながら、まるで意味が分からなかった。
 双子はというと、何やら顔色を、青白くしていてる……から、それなりに、霊験あらかたな呪文なのだろう、と、楓は納得した。
「……分かりました。この二人をおとなしくさせる呪文は、チーズケーキ……」
「そう……チーズケーキ……」
 チーズケーキ、チーズケーキ、と連呼しながら、楓と三島は、くすくすと低く声をあげて笑い合った。
「……で、だ。
 今日はまた、随分大勢だが……」
 三島が、工場の内部を見渡した。
 学校の制服を着ている者だけでも対した人数だが……それ以上に、術者が多い。
 楓と孫子が一度ノックアウトした連中も工場に合流してきているから、一族の関係者だけでも五十人以上になる。
「……餌、足りるのか?」
「一応、ピザのデリバリ、頼みましたけど……」
 向こうでなにやら徳川と話し込んでいた荒野が、こちらに向かって叫ぶ。
「この分じゃあ……全然、足りませんね……」
「……よっしゃあ!
 玉木、それに、手の空いているの何人か!
 商店街に買い出しに行くから、手伝え!
 玉木は家に連絡して、刺し身用の魚、適当に押さえろ! 捌くのはわたしがやってやる!」




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「髪長姫は最後に笑う。」 第六章(115)

第六章 「血と技」(115)

「……そっか……」
 そう答えたテンの声は、荒野の予想に反して、笑いを含んでいた。
バイザーの色が濃くなっているので、表情まではわからないのだが……声から予測するのなら、今、テンは、うっすらと笑っているのだろう。
「あのおじさんは……強くはないけど、読みが確かで、確実な手しか打ってこない……そういう、ことだよね?」
 テンがそういう間にも、ガクが、仁木田直人の猛攻にさらされている。
 仁木田直人は、反撃を受けない距離から六角を連投し、ダメージを受けたガクが怯むと、すかさず近寄ってより確実な打撃を加え、再び距離を取る……という地道な連携攻撃を行っていた。
 地道で、他の五人のような派手さはないが……裏を返せば、付け入る隙もない。
『……これが……』
 プロフェッショナルの戦い方か……と、テンは思った。
 不安要素を最小限に押さえ、細かい攻撃を連携させることによって、反撃に必要な隙を作らない。
 そうやって、本来なら自分よりも強い筈のガクを、着実に追い詰めて行く……。
 荒野は、「凡庸なベテラン」という表現の仕方をしたが……。
『……手練れの、職人芸だ……』
 そう、テンは思う。
 仁木田のやり方に必要なのは……冷静な判断力。
 ガクのように、極端に強かったり、ノリのように早かったりする必要もなく……。
『普通の素養を持つ術者になら、誰にでも真似できる……』
 テンは、周囲を見渡す。
 テンとガクと戦うことを諦めた一族の者も……工場内にまだ多数、残っていて戦いの趨勢を見守っている。
 自分たち、新種の特別製と、仁木田のような平均的な、しぶとい術者……彼らが、どちらに感情移入しているのかは……表情をみれば、わかる。
『……だけど……まだ……』
 負けるわけには、いかないのだ……。
 テンは、目を閉じて、深呼吸をし、叫ぶ。
「……ガク!
 立たないで、いい!
 その場で、拳、用意!」
 テンは、猛然と、残りの投擲武器全てを、仁木田に投げつけはじめた。仁木田は軽々と、足捌きだけで、それを避ける。
 それで、いい。
 仁木田を動かすことが、目的の攻撃だった。
「……ガク!」
 叫びながら、仁木田に向かって跳躍。
「……三!」
 仁木田が突進するテンに向かって手裏剣を放つが、テンはそれを避けない。腕でガードし、突き刺さるままにしておく。
 プロテクタは随分前にパージしているから、直接、二の腕に突き刺さった。
 だが……。
『……仁木田は、動いた……』
 それでいい。計算通りだ……と、テンは思う。
 仁木田の直前で、テンは、さらに踏み込んで、体重を乗せて、頭突きをかました。
「……二!」
 打撃そのもの……というより、打撃によって、仁木田を動かす……のが、目的なのだ。
 拳や蹴りよりも、体重を乗せやすい頭突きが、適している。
 案の定、胸板でテンの頭突きを受け止めた仁木田は、驚愕の表情を浮かべながら、よろめいた。
 頭突きの衝撃によって……というより、薬で弱っている筈のテンが、いきなりこんなハイリスクの攻撃をしだしたことに、戸惑っているようだ。
『……大丈夫。
 しびれ薬も、ちゃんと効いているから……。
 これが、最後の……』
 テンは、にやりと笑いながら、仁木田の太もものあたりを目がけて、ハイキックをかます。
『……攻撃!』
 足を取られやすいハイキックは、自分の頭部を危険にさらす頭突きと同じくらい、リスキーな攻撃方法だった。
 テンも……単身であったなら、絶対に使用しなかったろう。
 今のテンには……仲間が、ガクがいる。
「……一!」
 叫んで、テンは、その場に膝をつく。
 もはや……テンには、バイザーの外の世界を知覚する余裕がない。
 最前までの激しい運動で、薬が、全身に回っている……。
『でも……計算どおり、なら……』
 テンは、自分の記憶の中の情報を、もう一度確認する。
 仁木田は……。
「……零!」
 ……ガクの正面に、蹴り飛ばされている筈……だった。

「……ガク!
 立たないで、いい!
 その場で、拳、用意!」
 テンの言葉が聞こえた時、仁木田の執拗な攻撃により、消耗したガクは、膝をついたまま、反射的に身構えていた。
 ……拳……ナックルガード、用意……。
 のろのろと思考しながら、ガクは、左手で、右手首のテンキーを操作する。
 二の腕の周囲から、いくつかの複雑な歪曲を持つ金属板が迫り上ってきて、ガクの拳を包む。
「……三!」
 どこか遠いところから、テンの声が聞こえてくる。
 これを使用すれば……ガクが、全力で拳を振るっても、ガクの拳は壊れない……と、いっていた……。
 ……ガクの力は強いから……そのまま、全力で叩きつけたりするると、骨の方が持たないんだ……これは、その弱点をフォローするための仕掛けだよ……と。
「……二!」
 テンのカウントが続いていることを悟って、ガクは回想から意識を現在に引き戻す。
 そして……拳に、意識を集中し、呼吸を整えはじめた。
 ダメージが、身体のあちこちに蓄積されている。
 全力で拳を繰り出せるのは……あと一回が、限度だろう……。
「……一!」
 ガクは、いつでも拳を、満足のいく形で繰り出せるように、身構える。
 ガクは……テンを、信じきっている。
「……零!」
 ガクは、全力を、右の拳に乗せ……正面に向けて、振り切った。
 感触。
『……成功……かな?』
 成果を確かめる余裕もなく、ガクはその場に倒れこむ。

「……ああっ!」
 失望の声が、工場内のそこここから沸き上がった。
 この戦いを見守っていた、一族の者たちが、思わず漏らした声だった。
 一瞬前まで優勢だった仁木田が、宙を飛んでいる。
 新種に……仁木田が、負けた……。
 それは……仁木田の戦い方を範とする、自分たちの敗北のようにも、感じられた……。
「……よっと……」
 仁木田の体が地面に落ちる前に、荒野が仁木田の体を受け止める。
「……って、気を失っているか……。
 ガクの馬鹿力で思いっきりぶん殴られれば、無理ないな……」
 そんなことをいいながら、荒野は、仁木田の体をそっと地面に横たえた。
「……ダブル……いや、トリプル・ノックアウトだな……」
 荒野がそういって、テンとガクを、指さす。
 二人とも、地面に突っ伏していた。
「あえて判定をくだせば……勝者なし……ってところかな……」
「甘い……。
 ……甘いな、加納の……」
 六人の中で唯一、意識を失っていない刀根畝傍が、前に進み出る。
「それでも、忍びか……」
「それをいうのなら……刀根さんに止めをささなかったテンも、テンに至死性の毒を使わなかった丸居さんも……他の人たちと連携しようとしなかった皆さんも……等しく、甘いんですよ……」
 特に、敷島丁児の幻術や丸居遠野の電撃などは、他の術者との連携により、初めて「生きて」くる。
 単独で使ったところで、いたずらに威かせるだけの代物だった。
 それが、それぞれ個別に、二人に相対した。
「……殺す気でなければ……戦いも、単なるじゃれあいですよ……。
 テンもガクも、それに皆さんも、大いに健闘した……今は、それでいいじゃないですか……」
 荒野がそういうと、戦いを見守っていた一族の術者の中から、パラパラと拍手が沸きはじめる。
「……加納は、口がうまい……」
 刀根畝傍が、複雑な表情をして、顔をそらした。
 テンに手加減されたことを指摘されて、拗ねているのかも知れない。
「口がうまいのは、加納の御家芸ですから……」
 にこやかにそう答えながら、荒野は、
『……どっちも勝たなかった……というのは、ある意味、一番いい結果だよな……』
 とか、思っている。
 テンやガク、新種たちと、他の一族との、本格的な交流の最初としては……まずは、上々のスタートになったのではないか……。




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彼女はくノ一! 第五話 (198)

第五話 混戦! 乱戦! バレンタイン!!(198)

 赤い襦袢を羽織った中性的な顔立ちの人間が、幾人も出現していた。
「……いっくよー!」
 しかし……ガクは、そうした幻影に惑わされることなく、赤襦袢の人物たちを突っ切って、何もない虚空に向かって、六節棍を、振る。
「……うがぁっ!」
 六節棍を振り切る前に……赤襦袢の人が、唐突に出現した。
 その人は、ガクの六節棍によって、文字通り吹き飛ばされていく……。
 気づくと、周辺に乱立していた幻影も、消えている。

「……な、何故!
 何故に、居場所が……」
 青白い顔色の男と一緒に立っていた老人が、動揺した様子で声を上げている。
 青白い顔色の男は、いつの間にか、姿を消していた。
「……そうか……」
 荒野は、きょろきょろとあたりを見渡した後、呟いた。
「一度……機械を通して、見ているんだ……。
 徳川とあいつらが組めば……そういうのも、可能か……」
 話しが良く飲み込めない楓が、荒野に質問しようとした時……。
「名人芸は、通じないよ! おじいちゃん!
 だってボクら……最初から、おじいちゃんのことは、見ていないもん!」
 そういう、ガクの声が聞こえた。
 見れば、ガクとテンは、別々の方向から、老人に向かって、六角を投げつけている。
 老人も、しばらくは、しぶとく二方向から飛来する六角を、くないで叩き落していたが……すぐに、くないを弾き飛ばされ、その場に尻餅をついた。
「……まだやる?
 おじいちゃん……」
 テンが、その老人に、六節棍の切っ先をつきつける。
「わしの……負けじゃ……」
 老人が、がっくりとうなだれた。
「……五人目!」
 テンは、誰にともなく、そう宣言する。

「……残り、一人……」
 荒野も、呟く。
「それを、抜ければ……あいつらも、本物なんだがな……」
「そんなに強い方……が、残っているんですか?」
 楓が、荒野に尋ねる。
「強い、というなら……楓、仁木田直人なんかより、お前の方が、数倍、強い……」
 荒野は、ゆっくりと首を振る。
「仁木田直人は……強い、というよりは……負けないための方法を知り尽くしていて……それを実践するために、骨身を惜しまない……ベテランだ……」
「……ああ……」
 孫子は、荒野の言葉に頷いた。
「そういう、特徴のないタイプの方が……あの子たち、苦戦しそうですわね……」
「……そう。
 仁木田直人は……今までのやつらのように、先天的な特性を持っていたり、何かの術に特化しているわけではない。
 だが……とにかく、自分自身の限界を知っていて、油断をしないんだ……。
 基本に忠実……という意味では、楓……お前に、似ているタイプではあるな……」
 荒野は、そんなことをいって、一人頷いている。
 そして、動きを止めたテンにふと視線を止めて、目を眇めた。
「テンのやつ……そろそろ、薬が回ってきたかな?」

「……あと一人!」
 そう叫んで突進してくるガクを、仁木田直人は、六角の連投で冷静に迎撃した。
 連投、とはいっても、一つ一つ、丁寧に狙いをつけて、効果的な場所を狙って投げつけている。おそらく、残りの弾数も、頭の中では計算に入れているのだろう。
 ガクは、仁木田の六角を、大部分、六節棍ではじいた。
 が……しかし、すべてをさえぎることはできず、足首に直撃を受ける。
 その場に、無様に転倒した。なまじ勢いがついていたため、うつ伏せになったガクは、しばらく動けない。
 仁木田は、素早くうつ伏せになったガクに近寄り、ベルトに手をかけて、ガクの体を空中に放り投げ、何歩か退きつつ、空中のガクに六角を再度、連投する。

 ……なるほど……。
 基本に忠実で、隙がない……と、楓も、納得した。
 自由落下中は、もっとも無防備なる……とは、楓も、養成所時代、いやとなるほど叩き込まれた「原則」である。

 仁木田の六角は、何発か命中し、ガクの手から、六節棍が弾き飛ばされ……ガクは、そのまま、床に激突した。
 仁木田の六角に対処するのに忙しくて、ガクは、受身を取る余裕すら、与えられなかった。
 慌てて跳ね起きようとしたガクに、素早く近寄った仁木田が、顎を一蹴して、また距離を取る。
 頭部に衝撃を受けたガクの上体が、ぐらぐら揺れていて、なかなか起き上がることができない……。

「……ガク!
 立たないで、いい!
 その場で、拳、用意!」
 突如、テンが、声を上げた。
 そして、猛然と、六角やら手裏剣を、仁木田に投げつけはじめる。
 仁木田は、平然と、足捌きだけで、テンの攻撃をかわす。
 テンは、仁木田に向かって跳躍。
「……ガク! 三!」
 仁木田は、空中のテンに向かって手裏剣を放ちながら、何歩か後退する。
 テンは、仁木田の手裏剣を避けようとはせず、二の腕に突き刺しながら、着地。着地と同時に、その勢いを利用して、仁木田向かって頭突きをかます。
「……二!」
 そんな、隙が多く、大雑把な攻撃を、ガクならいざ知らず、テンがするものとは予測していなかった仁木田は、ヘルメットでの頭突きをまともにくらい、よろめいた。
 テンは、仁木田の太もものあたりを、渾身の力を込めて、蹴る。
「……一!」
 テンの蹴りを受けた、仁木田の体は、数メートルほど、飛んだ。
 仁木田自身が自分の足で跳んで、蹴りによる衝撃を相殺した、ということもあるだろう。
 しかし……仁木田は、移動した地点、について、失念していた。
「……零!」
 そこは……ガクの真正面だった。
 テンの指示を理解し、ナックルガードを展開して構えていたガクは、絶妙のタイミングで、拳を突き出す。




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