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2005-11

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隣りの酔いどれロリおねぇさん (13)

隣りの酔いどれロリおねぇさん (13)

「くぅー。ここんところご無沙汰だったから、なおさら効くなぁ。やっぱ気持ちいいや、セックス」
 ぼくの胸にキスの雨を降らせながら、三島さんはいった。絶対、この人の羞恥心の持ち方は、普通の人とは異なると思う。
 ……いやいや、そういうこと言い出したら、思考形態とか常識とかその他諸々、常人とは異なるか、この人の場合……。今更だが。
「そういや、青年のほうはどうなんだ? 決まった相手はいるのか? 独身だということは知ってるけど」
 ……挿入してから聞くなよ、と、いいたい。やっぱり、この人、いろいろな意味でズレている。
「いってませんでしたっけ? ついこの間、一緒に住んでた女が、出ていったばかりです」
「にひひ」
 三島さんは目をゼリービーンズ型、口を三日月型にして、変な笑い声をたてた。
「そっかそうか。ふられたばかりか。そいつは好都合。じゃなかった、うん、これからおねーさんがたっぷりと慰めてやっからな、体で。
 で、だ。まずは、そろそろ動いてくれないかな、青年。青年が上になっているこの体位だと、こっっちはろくに動けないのだ。もう、遠慮なく、ずんずん来てくれていいから。というか、むしろ、思いっきり乱暴に犯してくれぃ!」
 ぼくは、はぁ、とか、まぁ、とか、ごもごもとした気の効かない返答をしてから、とりあえず、ごく普通に腰を動かしはじめる。実際の所、指だけでもあれだけの狂態を示した三島さんが、実際の性交をしたらどれほどよがり狂うのか、という興味があったのだ。
 ……まあ、なんとなく、「騒がしくなるのだろうなぁ」という、漠然とした予感はあったが。
「んふぅ。んふんふんふぅん」
 案の定、ぼくが動き始めると、三島さんは、不気味な忍び笑いを漏らしはじめた。
「あはぁ。あはぁ。あはぁ。いいぞいいぞ青年。君の若い猛りがわたしの濡れぼそった洞窟を往還する! うはぁ。はぁあ。はぁあ。いい! いい! すっごく、いい! 来るの! 来るの! なんか来るの! あふぁ。あふふ。んふっ! んふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!」
 訂正。漠然と予測していたよりも、ずっと騒がしかった。少なくともぼくは、性交時に自分が感じたことを、歓声と絶叫と笑い声と修辞つきで実況中継する女性とセックスしたのは、初めてのことだった。以下、あまりにも繁雑かつ興ざめなので、三島さんの実況中継は適宜省略することにする。

 多少(というのは、かなり割り引いた表現であることを、あらかじめお断りしておく)の五月蠅いさを別にすれば、三島さんの体は、それなりに具合がよかった。本人は「締まりがいい」という言い方をしていたが、体の大きさに対応して、膣穴のサイズも小さい、という感じなのだが、ともかくも、ぼくのモノにぴったりと張り付いて締め付けてくる感触は確かにあったし、どうやら三島さんは濡れやすいタイプらしく、愛液が潤沢にでて、狭い中での出入りを円滑なものにした。加えて、奥行きが浅くて、ぼくのモノを最後まで収めることができず、根本の四分の一ほどを余したところで、一番奥につきあたり、そこまでいくと、亀頭の先っぽがコツンとなにかにあたるような感触があって、どうしてもそれ以上先には進めなかった。で、そのコツンのところに当たるたびに、三島さんは、声を荒くして、一段、また、一段、と、快楽の深い階梯を昇っていくようだった。
 簡単にまとめると、要するに、三島さんはぼくが一突きするたびに反応を強くして感じまくってたし、ぼくのほうも、三島さんの中の、今までに経験したことのない狭さに、それなりに満足していた。

 その調子で、体位も変えず、十分ほども三島さんを突き続けただろうか? ぼくのほうも、前の彼女が出て行ってからそろそろ一月ほども無沙汰だったので、自覚している以上に溜まっていたのか、じりじりと射精前に感じる、あの、体の一部が熱くなるような感じを、覚えていた。
「行くのか、青年? 行きそうなのか? 中のちんちんが熱くなって震えだしているぞ!」
 それまで盛大に喚き叫んで快楽を貪っていた三島さんは、敏感にぼくの変化をとらえ、察知し、
「行くんなら、ほれ。離れて、外でな」
 でもって、この女は、あろうことか、ぼくの体を絶妙のタイミングで突き飛ばし、その後、お腹を蹴飛ばしさえした。

 で、無理に引きはがされたぼくは、そのまま空中に噴出するように射精し、三島さんの上半身を汚した。

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隣りの酔いどれおねぇさん (14)

隣りの酔いどれおねぇさん (14)

「あなたはとても都合のいい人でした」
 ともかくも、一度目の情交が終わった後、加々見さんは、ぼくの体の上に覆い被さってきて、首元に頭を寄せて、ぼそぼそと囁きはじめてた。
「信頼していた夫に裏切られ、女性として重要な機能に障害を起こし、仕事や人間関係も、大部分、刷新しなければならなかったわたしは、とてもとても疲れていて、今にもポキリと音を立てて折れてしまいそうになるほどに乾いていて、心がどんどん重くなって、でも、立ち止まることができない状態にありました。
 疲れていても、疲れた、と愚痴をこぼす相手にも事欠くわたしの前に、あなたが現れて、わたしがして欲しいと思ったことを次から次へとしてくれました。
 あなたが酔いつぶれたわたしを介抱してくれたとき、わたしは、自分がいかに甘える相手を欲していたのか、ということを自覚して、愕然としました。
 あなたがわたしの肩に触れたとき、わたしは、自分がいかに他人に触れられることに飢えていたのか、ということを自覚して、愕然としました。
 その後、お風呂に入りながら、今まで失ったもの、欲しかったもの、我慢していたものを思い起こしはじめ、すると、とても寂しくなって、一人で泣きました。
 お風呂から上がったわたしに、あなたは汗だくになってマッサージを施してくれました。技術的には拙い、といってもいい行為でしたが、わたしの頑なになっていた部分、凝り固まっていた部分を解きほぐしてくれました。
 実は、あなたの部屋に入るとき、酔っていたわたしは、半ば自暴自棄になっていました。あなたにいいようにされてもいいと、こんなわたしなんか、どういう目にあってもいいと、そんな風に思っていました。
 なのにあなたは、ほとんど面識もないようなわたしにとても優しくしてくれて、そのことがとても意外で、あなたがなにか気を遣ってくれるたびに、わたしになにかしてくるたびに、泣きたいような気分になりました。
 たぶん、あなたにとっては、目の前に困っている人がいたら、親切にするのは当たり前のことなので、あまり意味はないことなのでしょう。でもそんな、あなたにとっては当たり前の親切が、いちいち心に染みいりました。
 そしてあなたは、わたしを抱いてさえ、くれました。あなたが抱いてくれたことで、わたしは、男性とこうした行為をすることに、自分がどれほど飢えていたのか、自覚せずには居られませんでした。
 今夜、たまたまわたしと出会ったあなたという男は、とても優しくて、同時に、とても残酷な人です」
 それまでぼくの首に頭を接して、考え考え、断続的に言葉を紡いでいた加々見さんは、ここで初めて顔をあげて、まともに、ぼくの目を見据える。
「だから、あなたとこういう事をするのは、今夜だけにします。そうでないと、ずるずると甘えて、わたしは駄目になってしまいます。そのかわり、今夜は、……」
 ……もっと、ずっと、いっぱい、抱いていください。

 そういった加々見さんは、泣きながら、笑っていた。

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隣りの酔いどれロリおねぇさん (12)

隣りの酔いどれロリおねぇさん (12)

「だから、今度はこっちに主導権よこせって、青年」
 そういって三島さんはぼくの下からするりと抜けだし、少し距離をとって、大きく股を開いて座り込んだ。いわゆるM字開脚とかいうやつで、三島さんの性器は当然丸見えである。そしてそのまま、ぼくに見せつけるように腰を持ち上げ、自分の指で襞を開いて、奥の方まで見えるようにする。
「ほれほれ。かも~ん。じゃなかった。かみ~ん」
 とかいいながら、淫水がしたたっている女陰を誇示する。三島さんの股間は無毛で、割れ目の中も色素が沈殿しているということもなく、きれいなピンク色だった。
「野獣のように襲ってみろ、青年。
 締まりの良さとやっているときに感じる背徳感は、今までの利用者が口を揃えて賞賛するところだぞ。この小さな穴にそこのいきり立ったちんちんを突っ込んでさっさと試してみろよ、青年」
 もし三島さんが、絶世の美女とまではいかないまでも、十人並みの容姿と実年齢通りの外観を備えていたら、ぼくも躊躇せず、躍りかかっていただろう。……でも…………なぁ……。
「……なんだ、青年。なんでそこで萎える。小さくなる。うなだれる」
 ……いや、外見子供かつ露出度百二十パーセント(なにせ、膣内まで見せているのである)三島さんから、こうも露骨に誘われても、普通引くって……それこそ、ペドフィリアでもない限り……。
 とかいう本心は、本人にはとうてい言えるものではない。代わりに、
「では、お言葉に甘えさせていただきます。襲わせていただきます」
 とだけいって、誇示された三島さんの股間に、逃げる間を与えず、素早く顔を埋めた。
「こら。そっちじゃない! そっちは風呂場で十分やってもらったって。ここまできて焦らすんじゃない、馬鹿。やめろ。ん。感じすぎちゃうだろが、はん、この。やん。じゃなくて、そこに欲しいのは舌じゃなくてお前のちんぽだって。あ。ああ。ん。さっさとわたしを串刺しに、あん、そんなところ舐めるな舌を使うなっ中に入れるなって。あふ。あふぅううぅん。あ。あ。あー!」

 ぼくの経験によると、性行為の最中、感じ始めた女性は、
分類一、静かになる。
分類二、騒がしくなる。
 の、どちらかに、分かれる。三島さんの場合は、明らかに後者だった。

 ぼくが舌と鼻を股間の敏感な部位につっこんで、襞といわず陰核といわずその他の周辺部を問わず、じゅるじゅるとワザと音をたてて攻めはじめる。と、最初こそ抗議していたが、すぐにそれは「あふぅん」とか「はぁん」とかいう矯正に代わり、両手両足を使ってぼくの頭をがっちりと締め付け、そのまま三島さん自身の股間部に押しつけるような姿勢になった。
 そのままの姿勢で、ぶるぶると身震いしはじめてから、ほんの三分間くらいして、三島さんは、
「ん、はぁ!」
 と、のけぞって、ベッド上に四肢を投げ出し、大の字になって、ぼくの頭部を開放した。
 どうやら、再度絶頂を迎えたらしい。三島さんの性感が鋭敏であることは、確かなようだった。

「それではいよいよ、おじゃまいたします」
 大の字に寝そべって、胸を上下させている三島さんの体の上に、ぼくは遠慮なく覆い被さっていく。そして、三島さんを口で攻めている間に再び力を取り戻していた分身を、三島さんの亀裂にあてがい、入り口を少し探っただけで、一気に貫いた。
「……っ!……っ!……っ!……」
 三島さんは、声にならない空気を喉の奥から振り絞りながら、背をそらせ、目を見開いて首を左右に振り、びくんびくん、と、何度も身震いした。
 そして、挿入のショックから立ち直ると、
「これだよ! これが欲しかったんだよ、青年!」
 と、叫んで目尻に涙を溜めた顔をぼくのほうに向け、ぼくの胸板に、いかにも愛おしそうに頬ずりをしはじめた。繋がったまま、両手両足を使って、ぼくの体をぎゅうっと、抱きしめる。
「はっ! この、ちんぽがわたしの小さな穴を無理に埋めて貫いて占拠している感覚! くぅー! いいなぁ、やっぱり! ずっとこれが欲しかったんだよ!」
 さわやかな口調で淫乱極まりない内容を叫びながら、三島さんはぼくの胸にキスを雨を降らせた。

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隣りの酔いどれおねぇさん (13)

隣りの酔いどれおねぇさん (13)

「いいのよ。中に」
 相変わらずぼくの首を抱き寄せたままの加々見さんが、ぼくの限界が近いことを察したのか、耳元に囁いた。
「来て」
 ぼくは返答する余裕もなくしていたので、加々見さんの中に自分自身を埋めては抜く作業にひたすら没頭する。ぼく自身も、ぼく自身が埋まっている部分も、すでに十分に熱を持っていて、ぼくらがさらに高みに上り詰めるのを待ちかまえている。
 もうすぐ、もうすぐ、と、譫言のようにいいながら、ぼくは、加々見さんの両腿を少し持ち上げ気味にし、入りきったときの角度がさらに深くなるように調節する。
 加々見さんは、ぼくの首や背中に回していた手を忙しなく動かしていて、首を振りながら、鼻にかかった不明瞭な発音で、「もう、もう、もう」、と、切れ切れに、言い続けている。もういい加減、限界が近づいてきたことを自覚していたぼくが、さらに動きを早くすると、それが、「もっと、もっと、もっと」に変わり、加々見さん自身も、ぼくの動きに合わせて腰を動かすようになっている。
 ぼくらはベッドの上でもつれ合うようにして、動き合い、動かし合い、蠢き、おののき、汗をかき、汗まみれになり、お互いの肌に息を吹きかけ合い、口を合わせ、舌を探り合い、唾液を交換し、呻き、抱きしめ合い、震えて、最初の終焉を迎えた。
 ぼくは彼女の中心に注ぎ込むと、彼女は悲鳴のような声を上げてぼくの背中をかきむしり、もの凄い力でもぼくの体とぼくの分身を締め上げ、そのまま硬直した。
 ぼくは長々と彼女の中に放出し続け、その後、怖いくらいの静粛が、ぼくらを包み込む。

 でもこれは、この長い夜の、ほんの始まりでしかなかった。

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  • 2005/11/15(Tue) 05:19 
  • 隣りの酔いどれおねぇさん 
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  • 隣りの酔いどれロリおねぇさん (11)

    隣りの酔いどれロリおねぇさん (11)

     で、早々に風呂からあがり、体もぼくに拭わせて、その「お姫様だっこ」とやらで、寝室へと三島さんを運ぶ。彼女は軽いので、こういうときは、たしかに助かるけど……いいのか、ぼく……。
     ……だんだんと相手のペースに巻き込まれているような気がするぞ……。
    「なーなー」
     そんなぼくの心中で起こった密かな葛藤も知らず、火照った体をぼくの腕の中にあずけきった三島さんは、すっかりくつろいだ様子でぼくに声をかけた。
    「青年。お風呂ではやられっぱなしだったけど、から、今度はわたしの方が攻める番な。その硬く反り返ったちんこをしっぽりたっぷり咥えさせろな。損はさせないから。おねーさんのテクで目に物をみせてやる」
     妙に勝ち負けに拘る子供っぽい発想を、下品な単語混じりに披露する。そういうのって、「やられっぱなし」とか「番」とか、そういう観点から扱うべき問題でもないような気もするが……あー……三島さん的には、そういう風に考えるのも、なんか理解……は、到底できないけど、「似合う」というか、「らしい」な、とは、思う。
     負けず嫌い、みたいだもんな。かなりの。
    「はいはい。もう好きにしてください」
     と、半ば反射的に答えてから、心中で密かに「しまった!」と、思った。
     そんな言質を与えたら、この先、「この」三島さんがどのような事をしでかすのか、ただでさえ不確定要素が大きいところに、さらに輪をかけて予測不能にしてしまったのではなかろうか……。
    「そんなに不安そうな顔するな、青年。こっちは、ちんこいじくるのやらえっちやらは好きだけど、あんまアブなプレイは趣味じゃないから」
     ……いや、そっち方面ばかりではなく、あなたの存在自体と行動全体が不安の対象なんですけど……。

    「そんじゃ、ま。いただきまーす」
     ベッドの上に降ろすなり、三島さんははいはいをするようにしてこちらに来て、ぼくの腰に巻き付けたタオルを喜々として外して、ぱっくりとぼくのモノを口に含む。
    「……そんなにそれ、好きなんですか?」
    「……ふむ。自分にはない器官だからな。興味を持つのは当然であろう」
     ごくわずかな時間だけぼくのから口を外して、つまらなさそうな口調でそう答えた後、三島さんは再びぴちゃぴちゃとそれをしゃぶりはじめた。
     三島さんが「口と舌が疲れた。だるい」といって、それを離すまで、ぼくは二十分近く、ベッドのそばに裸で立ちつくしていた。

     ……いや、本当……なにをやっておるのだ、ぼくは……。

    「気が済みましたか? じゃあ、そろそろ、本格的に」
    「うん。ふっふふ。青年。こってり絞ってやるからな」
    「風呂場での感じでは、その前に三島さんのがギブアップする可能性が高いのでは?」
    「それはいうな、青年。というか、なんとでもいってろ。すぐに見返してやるから」
     ……やっぱり負けず嫌いだよ、この人。
     とか思いつつ、ぼくは三島さんの体に巻き付けていたバスタオルをとって、小さな体に覆い被さっていった。

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    隣りの酔いどれおねぇさん (12)

    隣りの酔いどれおねぇさん (12)

     加々見さんは終始、漏れそうになる声を押し殺そうとしていたので、加々見さんとぼくの性交は、どちらかというと、淡々と、静かに進行した。
     ……加々見さんの、体温。加々見さんの、汗の匂い。加々見さんの、吐息……。
     静かに、とはいっても、そういった諸々の要素を五感全てを使って探りつつ、愛撫し、舐め、性器を動かしているわけで、ぼくは、頭も体もフルに稼働させ、加々見さん全体を味わい、また、加々見さんを感じさせ、反応させようと躍起になり、加々見さんと重なって、蠢き続ける。
     そんなぼくに、加々見さんは、
    「そんなに一生懸命にならなくてもいいのに」
     と、いう。
    「充分に、感じているから」
     いかんいかん。
     加々見さんの境遇に感情移入するあまり、「なにがなんでも感じさせなければならない」みたいに、変に身構えていたようだ。所詮セックスなんだから、もっとリラックスして、素直に楽しまなければダメだろ、ぼく。とか思いながら、二、三度深く息を吸い込んで、今度は、加々見さんの内部の感触を楽しむように、挿入している性器をゆっくりと動かす。濡れた襞をかき分けるようにして動く感触を、分身を通して感じる。心地よい。
     ふっ。ふっ。ふ。
     という具合に、目を閉じて目を任せている加々見さんの吐息が荒くなる。
     ぼくは身を起こし、腰を動かしながら、加々見さんの乳房を両手で鷲掴みにして、もみしだく。オイルでぬるぬるになっている肌の、弾力のある感触。
    「乱暴にされるのは、好きですか?」
     と、加々見さんの耳元に囁きながら、手にした乳首をつまみ上げる。
    「うっ。ふ。あ、……あ、……あ
     加々見さんは閉じていた口を開け、小さな声を上げ、ぼくの肩を抱いて、自分のほうに引き寄せようとする。
     少なくとの嫌がっているようには見えなかったので、そのまま乳首を指先で摘んで、転がすように弄びながら、加々見さんの口の中に舌を割り込ませて、体全体を揺さぶるようにして、腰の動きを少し激しくする。
     加々見さんは、ぼくの肩に回した両腕に力を込め、さらに、両脚もぼくの胴体に回して、結合している腰を密着させるように、締め上げてくる。
     ぼくも、舌で加々見さんの口の中を蹂躙しながら、オイルに濡れた全身の前面部を密着させたまま、性器で、加々見さんの中心も蹂躙する。体同士が密着しすぎているため、小細工無し、単純に、シンプルな送出入の動きだけしかできなかったが、それでも加々見さんは充分にぼくを感じているようだった。
     口を塞がれている状態なので、加々見さんの鼻から漏れる吐息の熱さで、ぼくは、加々見さんの高揚を推察する。
     オイルまみれの二つの乳房がぼくと加々見さんの体に挟まれて少しひしゃげなから、それでも徐々に激しさを増していく二人の動きに合わせて、複雑に揺れ動いている感触を、ぼくは胸板で感じている。

     ぼくらは密着し、一体化し、同じように高まっていく課程にある、と、実感する。

     ぼくの股間の怒張が、加々見さんの中で、どんどん熱くなっていくのを、感じる。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (10)

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     三島さんは、ぼくに背を向けて、二人ではいるとかなりきつくなる狭い浴槽の縁にしがみつくようにして、肩で息をしている。それを見て、ぼくは、
     
    選択肢イ。三島さんをいたわるように、肩に手を置き、背中をさすった。
    選択肢ロ。ここぞとばかりに、さらに三島さんを責め立てることにした。

     の二種類の選択肢を思いついたが、やはりここは、後者を選択するべきでしょう。今までさんざん迷惑かけられていることだし、悶えている三島さん、普段とのギャップが可愛いし。

     と、いうことで、三島さんの小さなお尻の両側面を両手で挟み、むんず、と持ち上げて、お尻を突き出させる。こうすると、無毛の微かな膨らみにシンプルな線が一本引かれたような三島さんのアソコが丸見えになる。
    「──な……」
    「これから、中に指を入れますからねー」
     驚愕した様子でなにか言いかけた三島さんを無視して、言葉をかぶせるようにして宣言し、おもむろに三島さんのスリットを少しこじ開けて、その中に人差し指一本を差し込む。「んっふ」と三島さんが吐息を漏らす。指に肉がからみついてくるような感触はあったが、内部も、すでに指を動かすのに支障がないくらいには、湿り気を帯びていた。試しに、ちゅちゅっちゅ、と三往復ほど指を動かしてみると、三島さんはいやいやをするようにつきだしたお尻を振り、背中を震わせる。
    「この姿勢だと、体のほとんどがお湯から出ているから、湯あたりしないでしょ? 寒くなってきたら、お湯に入りましょーねー」
     とかいいながら、三島さんの秘処に突き立てた指をさらに動かす。
     三島さんは、指を動かすたびに、「あ。あ。あ。あ。」と、小さな声しぼりだす。
    「やめろぉ! こ、こんな姿勢だと、そちからは丸見えじゃないかぁ!」
     羞恥のためか、ほっぺたを真っ赤にした三島さんが肩越しにこちらを振り返り、震える声でぼくに訴える。もちろん、ぼくはそんな声には取り合わず、
    「いいじゃないですか。三島さん、胸ないし。この丸見えの所しか、見所も、弄り甲斐のあるところもないんですから」
     澄ました声でそう答え、指の動きを早めた。そうすると、三島さんが喉から「ひゃ。ひゃ。ひゃ」みたいに聞こえる声を上げはじめ、体全体がぶるぶると震えだし、傍目にも、ぼくに抗議を続けるだけの余裕が、次第に失われていく。
     ぼくは、しばらく、手探りならぬ指さぐりで、三島さん膣内の、一番反応するポイントを探し出す作業に没頭する。
     そうして見当をつけた場所を重点的に責めはじめると、それまで浴槽の縁に手をかけていた三島さんが「うわぁ」、と叫んだ。
     かと思うと、やおら立ち上がり、「ダメダメダメ。もう止めろ止めろ。馬鹿馬鹿馬鹿。もおうダメダメ」と、仁王立ちになって声を張り上げ、股間から、無色透明の液体を断続的に噴出し始めた。匂いからいっても、出方からいっても尿である可能性は少なく、……。
    「……すげぇー。これが、潮吹きってやつかぁ……」
     ぐったりと崩れ落ちようとする三島さんの背中を慌てて支え、ぼくは呆然と呟く。噂には聞いていたけど、初めて見た。というか、実存する現象だったんだなぁ、とか思っていると、
    「……馬鹿ぁ……」
     ぼくの腕の中でなんとか立っている三島さんが、焦点の合っていない目を、半眼の、とろんとしたまぶた越しに、ぼくのほうに向けて、切れ切れに、ぼそぼそとした、聞き取り難い声で、いった。
    「……いきなり、こんなん……恥ずか……ばかぁ……」
     それから、急にぼくの首に手をかけて、ぐいっ、と、ぼくの顔を引きつけ、
    「こんなことした罰だ、馬鹿! ベッドまでお姫様だっこし連れてけ!」
     真っ赤な顔の半分以上を口にするような勢いで、つばを飛ばして、喚いた。
     至近距離でいきなり大声を出されたので、耳がキーンとして、しばらく聴覚機能が不全に近い状態となる。

     しかし…………お姫様だっこ……………だって?

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    隣りの酔いどれおねぇさん (11)

    隣りの酔いどれおねぇさん (11)

     加々見さんが早くもグロッキー気味だったので、首筋や耳や乳首にキスをしたり、乳房や腕のあたりを手で撫でたりしながら、刺激を与えることよりも雰囲気優先で、ゆっくりと、小刻みに動く。加々見さんは、かなりご無沙汰だったらしく、性的な刺激を受とめること自体に、とまどっているような節があった。
     でも、ゆっくりと時間をかけて丹念に、小刻みに、オイルに濡れてぬるぬるになった加々見さんの体の表面のそここに肌をこすり合わせたり、息を吹きかけたりしているうちに、先ほどの、性急な上昇とはまた違った、緩やかな高ぶりをかんじはじめているようだった。
     加々見さんの白い肌に徐々に血の気が増していき、呼吸も、熱く、より深くなっていく。
     その変化を見越して、ぼくは、それまで小刻みにしていた加々見さんへの出し入れを、大きなストロークへと変化させる。
     加々見さんが息を吸うのに合わせて、ギリギリ先が抜けるところまで腰を引き、加々見さんが息を吐くタイミングで、加々見さんに奥にまで、突き入れる。最後まで入りきると、加々見さんは眉間に皺を寄せ、「んんんっ」っといううめき声を上げて、ぼくの体に回していた腕に力を込める。
     そういうゆっくりと大まかな送出をしばらく黙々と繰り返している内に、加々見さんのほうもいい具合にヒートアップしてきて、それまで、どこか恥ずかしそうに外していた視線を、ぼくの目にもろに合わせて、なにか懇願するような表情をしたり、それまでおざなりにぼくの体にからめていた腕が、いくらか自由に、ぼくのパーツを、あちこち触るようになってきた。
     そろそろ、かなりほぐれてきたかな、と、判断したぼくは、
    「加々見さん、どういうの好きですか? 体位とか、もっと乱暴にとか、優しくとか、リクエスト、ないですか」
     と、耳元で囁く。
     すると、恍惚とした表情に蕩けかけていた加々見さんは、幾分表情を引き締め、ぼくから目をそらし、ぼくの首筋にかみつこうとしたので、首を反らして、それを避けた。
    「……意地悪……」
     しばらくして、加々見さんはぽつりとそう呟いて、自分の顔を隠すように、ぼくの頭の横に加々見さんの頭を横付けにし、両腕と両脚、四肢を全てぼくの体に巻き付けて、ぎゅう、っと体全体をぼくのそれに密着させた。
    「……いいの……はぁあ! ……このまま……ん! ……もっと…… あん!」
     ぼくが根本まで、奥まで突き入れる毎に、大きく息を吐くので、加々見さんは切れ切れに、「このまま、大きくゆっくりと動いてくれ」という意味のことをいった。
     とはいえ、加々見さんがしがみついてきている状態では、ぼくの行動もおのずから制限を受けるわけで、下に組み敷いた加々見さんがぼくに体を密着させている現在の状態だと、自由に動かせるのは、せいぜい、腰くらいなわけだが。
     ぼくは、両脚でぼくの体に組みついているため、半ば宙に浮くようになっている加々見さんの両腿をしっかりと腕で固定し、加々見さんの中心とぼくの中心を混合する単調な作業に、しばらく没頭した。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (9)

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    「しかしまあ、見事なまでに真っ平らですねー」
     後ろから手を回して、三島さんの胸のあたりをまさぐる。もちろん、触りたいから触った、のではなく、触るほどの膨らみがないことを確認するために触った、のである。微乳というのを見事に通り越して突き抜けた真っ平らぶり。ここまでまったく膨らんでいないのも、珍しいし、いっそ見事だと思う。
    「うっさいなー。いいじゃないか胸の一つや二つ。そんなもん膨らんでいなくったって、別に日常生活に支障はないやい。文句いうのなら、触るのやめろー」
    「文句っつうか、事実の確認をしただけなんですが。
     それに、自分だってこっちのモノを勝手に握ったり弄ったり口にしたりしているんだから、お互い様です」
     っていうか、こうしている今も握って離そうとしないし。
     それから、ふと、先ほど押し倒されて乗りかかられた際に、透けて見えた下着のことを思い出したので、ちょこちょこと指で三島さんの股間を撫でさすってみた。
    「んはぁん」、と、三島さんは、意外に色っぽい声をあげる。
    「そ、そこはデリケートな場所なんだから、いきなり触るなって!」
    「いや、さっき濡れた下着見せつけられたとき、毛がみえなかったなぁ、と思って……って、こっちもつるつるですね。剃っているんですか?」
    「そ、そんなところ剃るか馬鹿! ただ単に生えてこないだけだ!」
    「おお。天然パイパン!」
    「その言い方と、触り方! 思いっきりいやらしいぞ! 青年!」
     なんか声が湿った感じになってきた……ように聞こえるのは、気のせいだろうか?
    「……ひょっとして、三島さん……結構、敏感? 感じやすほうなんですか?」
     面白がって、三島さんの無毛の恥丘を、さらにすりすりと前後にさすってみる。と、
    「うひゃぁ!」
     と、三島さんは、今までの言動から連想するイメージとはまるで正反対の、可憐な声で悲鳴をあげ、
    「そんなこと、まともに答えられるか、馬鹿」
     と、ぼくを罵った。
     ……うーむ……。
     こういう場面ばかりは普段の非常識ぶりに反して、普通の女性のように反応するあたり、三島さんも、なかなか奥が深い……。
    「あれだけしつこく誘ってきたのはそっちでしょう? こういうこと、して欲しかったから、誘ってきたのではないですか?」
     調子に乗って、後ろから耳に息を吹き付けるように問い詰めながら、さらに激しく指を動かす。
     と、三島さんはすぐに腰を浮かして中腰に近い体勢になり、
    「んはぁ! あぁふっ! あふぁっ!」
     と、本格的に鳴き声を上げはじめた。うはは。この人、外見と行動はかなりお子様だけど、反応はしっかり女だ。なんとなく、安堵して、
    「はいはい。ちゃんと肩まで浸かって、あったまりましょーねー」
     といいながら、左手を三島さんの体に回して、半端に立ち上がっていた三島さんの体を、ぐい、と、下に降ろす。もちろん、右手の指で三島さんの股間を刺激しながら、である。
     背中から左手を回して、肩からがっちりと三島さんの体が逃げないように固定し、右手で、こちょこちょと、繊細、かつ、微妙な刺激を、三島さんの股間のスリット周辺に与える。三島さんは可愛い声をあげながら、お風呂のお湯を散らして身もだえし、ぼくの指から逃れようとするのだが、ぼくの左腕が、がっちりと三島さんの小さな体を抑えているので、ろくに身動きもとれず、ただいたずらに、小刻みに体を震わせ、あえぐだけとなる。

     しばらくそうしていると、軽くイったのか、単に体力がなくなって力尽きたのか、それとも、湯あたりしたのか、三島さんの体は、ぐったりとして動かなくなった。

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    隣りの酔いどれおねぇさん (10)

    隣りの酔いどれおねぇさん (10)

     加々見さんは、ごく自然な動作で仰向けになり、全身をぼくの目に晒した。
     湯上がりであることと、ぼくのマッサージとで、多少は血色が良くなっているとはいっても、肌色は紙のようで、ともすると病的に思えるほどに、白い。
     そこだけはふくよかな、半球形の乳房以外の部分は不自然に肉が薄く、骨の形がそのまま浮いて見える所が多すぎる。やはり大病を経て、体調が完全には平復していない、ということなのだろう。
    「こら。そんなにジロジロみないの」
    「いや。見惚れてました」
     軽口を叩いて誤魔化したものの、加々見さんの裸体から、ぼくは、はかなさと痛々しさを感じていた。加々見さんが、どちらかというと小柄な方だったので、なおさら、そう思ったのかも知れない。
     掌にオイルを足し、手足の末端部分から、揉んでいくことにする。
     二の腕や上腕、ふくらはぎや腿、あたりはよかったが、お腹などの胴体部分に手をかけると、加々見さんが大仰にくすぐったがるので、その辺りはオイルを塗り込んで適当に誤魔化す。

     汗だくになりながら、一通りの作業を終えると、加々見さんは、ちょいちょい、と、指でぼくを招いた。寝そべったままの加々見さんの上に、ぼくが、半ば覆い被さるような姿勢になると、加々見さんはぼくの首に腕を回し、
    「はい。ご苦労様。これからは、ご褒美タイムだから、服、脱いじゃいなさい」
     オイルまみれになるわよ、と、いいながら、ぼくの服に手をかける。
     ぼくの服を脱がしながら、加々見さんは、
    「一生懸命肩を揉んでくれたとき、すっごく嬉しかった。誰かになにかやって貰ったこと、って、もう何年もなかったから」
     と、ぽつりと、いった。
     ぼくが服を脱ぐと、下の硬直に手をやり、「わ。ちゃんと女扱いしてくれてる」とか、少し不自然に思えるほど、加々見さんははしゃいだ様子を見せ、それからぼくの体を引き寄せて、抱きしめて、二人してベッドの上で絡み合って、長々と口を重ねた。
     しばらく、上になったり下になったりしながらお互いの体をまさぐっていたが、
    「ね。これ、もういきなり入れちゃっていい?」
     と、ぼくのものを握って加々見さんがいったので、二人とも、準備は充分にできている状態だったし、その場で挿入することにする。
     加々見さんの中は、はじめは締め付けがきつかったけど、侵入して少し動くと、すぐに潤滑油を充分にしたたらせるようになって、ちょうどいいくらいの締め付けになって、前後に動くぼくのものに、執拗に食らいついてきた。
     加々見さんは、ぼくの動きに合わせて、「っふ。んっふ」っと、荒い息をつきながら、ぼくの体にしがみついていたけど、少ししてから、
    「これ。この感覚」
     と、いった。
    「忘れそうになってた」
     そういって、加々見さん自身も、自分で激しく腰を動かしはじめる。
     ぼくは、跳ね回る加々見さんの体を組み敷き、無理に固定して、さらに動きを激しくすると、加々見さんは、「あ。あ。あ」と、細い声を上げながら、口をOの字の形に開いて、喉をのけぞらせ、ぼくの体に回した腕に力を込め、両脚も、ぼくの腰にからみつかせ、ぼくにしがみつきながら長々と硬直し、その後、ぐったりと全身の力を抜いた。
     少し休んだ後、弾んだ息の合間から、
    「そのまま中でいってもよかったのに。わたし、もう、子供できない体だから」
     といったけど、ぼくは、
    「まだまだウォーミングアップです。本番はこれからですよ」
     と答えて、接合したままの部分を、ゆっくりと動かしはじめる。

     実際、加々見さんがこんなにあっけなく達するとは思わなかったので、置き去りにされたような気分だった。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (8)

    隣りの酔いどれロリおねぇさん (8)

    「なあ、青年」
     しばらくして、ぼくの膝の間に入って、体をぼくに預けていた三島さんがもぞもぞと身動きしだし、起きあがって向きをかえて、ぼくの体を這い上がって、顔を近づけてきた。
    「キスするぞ、これから」
     ……あー。なんか、一回なごんじまったからなぁ。
     抵抗しにくいというか、してもどうせ無駄というか、抵抗すればするだけかえって事態を悪化させるだというか、ようするに、色々なことが面倒になってきたので、黙って、三島さんの顔が近づいてくるのを待つ。
     ……こうしてアップでみると、結構可愛い顔しているのに……このけったいな性格さえ、なければなぁ……。
     とか思っているうちに、三島さんの口唇がぼくのそれと、静かに重なる。
     三島さんは当然のように舌を入れて絡めてきて、長々とぼくの口の中を蹂躙した後、ようやく顔を上げた。

    「ゲロ臭い」
    「酒臭い」
     口を離した途端、ほぼ同時に二人でいいあって、声が見事に重なったことに、二人して、笑いあった。

    「風呂。風呂はいろう。今まで気にならなかったが、二人とも酷い匂いと格好のままだ。服も洗おう。上着は無理か知れないが、ワイシャツぐらいならうちの洗濯機で十分だ」
    「はいはい。もうどうにでもしてください。抵抗すんのも、面倒くさくなってきた」
     お互いの脇を肘で小突きあいながら、すくそこの脱衣所まで、ほんの数歩の距離を二人で歩いていく。
    「あー。壁にもべったりとついている」
     ぼくの背中に盛大に吐かれたモノが、だ。そのまま壁にもたれかかっていたので、当然といえば当然だが。
    「なに、それくらいどうにでもなる。最近実入りのいい副業の口があってな。いざとなれば壁紙ごと変える」
    「おーい。地方公務員って、バイト、オーケーでしたっけ?」
    「堅いこというなよ。バイトとはいっても、本業の延長みたいなもんだ。問題児の監視みたいな仕事でな、このマンションに越してきたのも、実はその関連だったり」
    「そういや、その白衣、いつも着ているんですか?」
    「いや、これ、洗濯するためにたまたま持ち帰っていただけなんだが。ほれ、今の時分、朝晩は冷えるだろ。肌寒かったんで、駐車場から部屋に行くまで、たまたま羽織ってただけだ」
    「駐車場……って、あれだけべろべろになってて、自分で運転してきたんですか? 飲酒運転は犯罪です。それ以前に危ないっす」
    「うるせーこの堅物ー。堅くするのはあそこだけにしろー」
    「三島さんの裸なんかみてもなんも堅くなんかなりませんて。うわ。この人、ほんまもんの幼児体型だよ。前も後ろもすってんてんの真っ平ら。服脱ぐとさらに幼く見えるっていうのは、いったいどういうカラクリですか。年齢、二十歳くらいサバ読んでませんか、あなた?」
    「いってろー青年。意外に毒舌だなーお前ー。みてろー。今晩はこってりと搾り取ってやるからなー」
     他愛のない、お馬鹿なやりとりをしながら、二人してさっさと服を脱いでいく。酔いが醒めていない、ということもあるし、お互い、「遠慮してもしょうがない相手」、という認識をもったので、男女というより悪友同士みたいなノリになってくる。
     やっぱりどうも、この人とは、色っぽい方にはいかない運命らしい。

     湯船には、自動給湯で少し熱めのお湯がたっぷりと溜まっていた。
     そこにまずぼくが入り、そのぼくの前に、三島さんが身を滑り込ませてくる。
     ……うーん……。
     やっぱり、親類かなにかの子供を、風呂にいれているような錯覚に陥るなぁ。

    「ほれみろ。やっぱり最初にいった通りになったじゃないか。こうして、一緒にフロに入って洗いあうのが一番合理的であろう?」
     三島さんはぼくの膝の上で得意げにそういって、下に手を伸ばしてぼくのものを握りにかかる。ぼくは、
    「はいはい。良い子はちゃんと肩までつかって、ゆっくり百まで数えるんですよー」
     といって、両肩に手をおいて三島さんの体を沈める。
     と、三島さんは頭を後ろにふって、ぼくの顎にぶつけてきた。

     ……意外に、痛いじゃないか。

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    隣りの酔いどれおねぇさん (9)

    隣りの酔いどれおねぇさん (9)

    「なんなら、一緒に入ります?」
     加々見さんは、そんな軽口がたたけるほどには、ほぐれてきた。いい傾向だ。
    「さっきシャワーを浴びましたし、加々見さんと一緒にはいると中でいろいろやって、疲れてマッサージどころではなくなりそうなので、今回はご遠慮します」
     丁重にお断りして、脱衣室から辞して、物置にしているロフトをごそごそと物色する。

     少し前に出て行った彼女は割と熱しやすく冷めやすい人で、いろいろな物を買ってきては、一度か二度、使っただけで後は放置される、みたいなアイテムが、結構残っていた。
     今回役に立ちそうなのは、バスローブ、マッサージ・オイル、アロマテラピー用の香料入りキャンドル、とかいったところか。それらをもって出て、バスローブは入浴中の加々見さんに「出たら、これ着てください」といって、脱衣所に置いてくる。
     キッチンの椅子にどっかりと腰を下ろし、残っていたコーヒーを啜りつつ、一休み。すっかり冷え切っているが、酔いさましにはなる。

    「わぁ。本格的」
     数十分して、頭にタオルを巻き、バスローブを纏った加々見さんは、テーブルの上のマッサージ・オイルの瓶とキャンドルをみて、いった。半ば呆れているのだと思う。風呂上がりの加々見さんは、上気して血色の増した肌に艶がでているようで、普通に立っているだけでも、色っぽかった。
    「全て、出て行った彼女の置きみやげです。どれも、ほとんど使った覚えがありませんが」
     そういって、セミダブルのベッドが置いてあるだけの部屋に案内する。っていうか、ダイニングキッチンではいほうの部屋、ってだけのことなんだが。
    「それじゃあ、失礼して」
     加々見さんは、そういうと、なんの躊躇もせず、するり、とバスローブを脱いだ。下に、下着一枚つけていなかったので、全裸、だった。黒々とした陰毛の茂みも全て、露わになる。基本的には痩せ型。でも乳房だけは大きく前に張り出している。
    「なに、こんな傷物のおばさんの裸、みて面白い? 全身マッサージ、してくれるんでしょ?」
     たしかに、下腹部に大きな手術の後が残っているけど……。
    「いえ、綺麗だったんで、見とれていただけです」
     素直にそう答えると、照れ隠しなのか、加々見さんは「やーねー」といいつつ、ぺちん、と、ぼくの肩を軽くはたいた。

     裸になった加々見さんがベッドの上に俯けに寝そべったので、ぼくはライターでキャンドルに火をつけ、部屋の照明を落とす。リラクゼーション効果がある、とかいうふれこみの、抹香臭い香りが薄暗くなった室内に充満しはじめ、なんだかアヤしい雰囲気になった。ぼくはマッサージ。オイルの瓶をあけ、加々見さんの背中に少し垂らし、掌で、背中全体に薄く延ばす。そして、肩、上腕、肩胛骨の辺りから初めて、徐々に下の方へと、順々に加々見さんの背中をも揉みほぐしていく。
     多少、真似事をやったことがあるとはいっても、ぼくは本職でもないし、きちんとした方法を学んだわけでもない。それでも、時間をかけて丁寧に揉みほぐしていくと、加々見さんは、時折、気持ちよさそうな、艶めいた声を上げてくれた。そういう反応が面白くて、ぼくはさらに丁寧に、力を込めて加々見さんの肉をほぐしていく。
     湯上がりの加々見さんの肌は、上気して温かくなっていたが、ぼくの体温のほうも、慣れない作業、それも、意外に肉体を酷使する重労働のおかげで、すぐに汗だくになった。額に浮かんだ汗が加々見さんの体に垂れないように、時折、そっと拭いながら、ぼくはさらに作業に没頭していく……。
    「はい。もう、充分。後ろは、もういいわ」
     我を忘れて、加々見さんの背中に取り付いているぼくに、加々見さんはそういって、体を起こす。
    「すっごく、気持ちよかった。そのまま寝ちゃいそうになった。同じような調子で。今度は、前の方をお願い。それとも、……」
     全てを晒して、今度は仰向けに寝そべった加々見さんを前に、しばらく躊躇していたぼくの目を正面から覗き込みながら、加々見さんはいった。悪戯っ子のような、笑顔を浮かべている。
    「……マッサージよりも気持ちのいいことまで、してくれるの?」

     そういうようなわけで、それ以降のマッサージは、ほとんど前技にちかいものになった。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (7)

    隣りの酔いどれロリおねぇさん (7)

     胃の腑がぐつぐつと煮えたぎっているような気がした。
     頭も、ぼうっとしてきて、
    「くーすー」→「古酒(?)」→「泡盛(!!)」
     という、単純な知識を反芻するのに、かなりの時間を必要とした。
     三島さんほど悪酔いこそしていなかったが、ぼく自身、今夜はかなり飲んできたのだ。ぼくは元々あまり酒に強いほうではないし、そこに、だめ押しでこんな強い酒を一気に流し込まれたら、足下くらい簡単にふらつく。

    「んっふっふっふっふ」
     仁王立ちになった三島さんは、邪悪な(と、いいきってもいいと思う)笑みを浮かべ、
    「このみにら先生から簡単に逃れられると思うなよ」
     とか、のたもうた。

     ……と、思ったら、そのままぐらぐらと姿勢を崩し、ぺたん、とその場に尻餅をついた。

     ……だってあんた、さっきあれだけ-げーと吐いたばかりじゃないですか……。
     あの状態から、そんなきつい酒口に含んだら、匂いだけでもやられてしまうんじゃないだろうか? それに、口移し、といっても、やはり幾分かは自分でも飲んじゃうだろうし……。
     目的のためには手段を選ばず。ただし、そのためにかえって自爆。
     この人らしい、といえば、あまりにもこの人らしい、展開ではある。
     ……後先考えずに、平気で無茶な真似をする人なんだよなぁ、やっぱり……。

    「……せーねん……」
     三島さんはしばらくそのまま座り込んだ姿勢で俯いていたのだが、何分かしてから、同じように座り込んで、廊下の壁にもたれかかっていたぼくの足を掴み、ずりすりとこっちに這い上がってきた。
     多少はダメージから回復したらしいが、半ば泣き顔で、目尻に涙が溜まっている。
    「……ぎぼぢわるい……」
    「自業自得です」
     ぼくはズキズキと痛むこめかみを押さえながら、即答する。この頭痛の原因は、アルコールのせいばかりではないと思う。
    「だいたいなんですか? そんなに男が欲しいんですか? セックスしたいんですか? ニンフォマニアなんですか、あなたは」
     そのときのぼくの声には、抑えきれない怒気を含んでいたと思う。
    「いや、男性一般や性行為が好き、とかいうよりもだねー……」
     ずりずりとぼくの膝のうえにのっかってきながら、三島さんはいう。
    「わたしを特別扱いしないタイプの男が好きなんだな、わたしは。
     あれだ。青年は、すっげぇー普通の人だろ。怒ったり呆れたり、コッチのやりように、素直かつ結構露骨に反応して表情に出すだろ。
     だからな、つい弄りたくなる」
     よっこらしょ、っと声をかけて、三島さんは壁によりかかっているぼくに、さらによりかかる格好で、重なる。
    「いい迷惑です」
     ぼくがやはり即答すると、「そうだよなぁ」、と、ぼくの顎の下で、三島さんの頭が答えた。
    「……その、三島さんのような体型の方を好む人も、それなりにいるのでしょう?
     三島さんなら、相手に不自由しないのでは?」
    「あー。いるなぁ、割と。そういう嗜好のやつ、割合に多い。少なくとも、一般に思われているほどには、特殊な趣味ではないな。
     でもなぁ。そういう性癖の持ち主というのは、えして、フェティッシュな嗜好として本当に幼児体型を愛好しているんではなくってな。相手が子供か、子供のように小さくて無力な存在だったら自分の思い通りになる、とか、勘違いしている輩なんだな。ま、一種の、支配欲のすり替えだったりする。
     しかも往々にして、ご当人はそのことに無自覚で、自分のほうこそ弱い人間だと思いこんでいる場合が多いから、始末に悪い。
     幼児性愛自体に偏見もっている訳ではないが、わたしみたいなのにアプローチしてくる男どもの大半は、そういう手合いが大半だったな。そういうヤツラとまともな人間関係を築こうとすると……けっこう、気疲れするもんだぞ。
     そこへいくと青年は、ほんとうに、至って普通の若い男だからなぁ」
     三島さんはそういって、
    「イヤなことはイヤだという。抵抗もすれば、喧嘩もできる。
     このちっこいわたしと、自然にそういうことをできる男は、実は少数派だったりするんだな、これが」
     と、付け加えた。

     善し悪しはともかく、現実として、わたしは先天的なこの体型のおかげで、「社会的な意味での女性性」からも阻害されている──と、三島さんはいった。
     そのとき、ぼくからは三島さんの頭のてっぺんしか見えなかったが、三島さんは、意外に真剣な表情をしていたのではないのか、と、想像していた。

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    隣りの酔いどれおねぇさん (8)

    隣りの酔いどれおねぇさん (8)

    「上着は脱いでもらった方がいいですね」
     といいつつ、壁際にあるスタンドからハンガーをひとつとり、加々見さんに手渡す。加々見さんは腰を浮かせて上着を脱いでハンガーにかけ、それをぼくのほうに返す。加々見さんから手渡されたハンガーをスタンドにひっかけ、いよいよ加々見さんの背中に向き直り、肩に手をかける。
     ブラウスの薄い布地越しに、加々見さんの体温を感じた。
    「それでは、いきます」
    「お願いします」
     相変わらず、背筋を伸ばしたままの加々見さんが答える。
     ……うーん。まだ硬いよなぁ……。

     最初から力を込める、ということはしなかった。
     人差し指と中指、それに親指の三本の指にだけ、軽く力をいれて、加々見さんの首の付け根、両脇部分を摘む。他の指は添えているだけ、のような感じで、軽く振動を与えるように、動かす。さほど力を入れているわけでもないのに、
    「はっ。んっ」
     と、加々見さんは、すぐに色っぽい吐息を漏らしはじめた。
     そして、加々見さんの首が、ほんのすこし、前後に揺らぐようになる。加々見さんの首が前のほうに振れると、加々見さんのうなじが丸見えになって、その白さが目にまぶしい。こうしてみると、加々見さん、色白だよな。

     まだまだ、ごく表層の部分を軽くほぐしているだけでもこれほど気持ちよさそうにしているとは……。加々見さん、予想通り、かなり凝っていると見た。
     それでも焦らず、じっくり、力は振動を与える程度に抑え、ぼくは揉む範囲を徐々に広げていく。
     首の根本からはじめて、徐々に外側に向かうにつれ、指の下に感じる加々見さんの温度が微妙に上昇していく。うなじとか、頬とか、加々見さんの肌の後ろから見える部分の、透けるような白い地に、ほんのりと朱色がさしはじめる。

    「もう少し、力を込めていいですか?」
    「お願い!」
     加々見さんは、いつもとの平静さとは打ってかわって、かなり強い語調で即答した。
    「もっと強くして!」
     ……うーん。じらしていたつもりはないのだが、そんなに凝っていたのか……。
     たしかに、指に感じる加々見さんの肉の感触は硬質で、容易にほぐれない、つまり、長期戦になる、ということはすぐにみてとれた。だから、ことさらじっくりとウォーミングアップを施したわけだが、そのウォーミングアップの段階で、これほど反応するとなると、本格的に揉みはじめたら、いったいどうなってしまうのだろう?

     とりあえず、リクエストに応える形で、ギアをもう一段アップさせる。
     とはいっても、それまで皮膚あたりまでしか刺激しないようしにしていたところを、もう少し下層の、皮下脂肪に届く程度に力を込めた、というくらいの、本当にささやかに変化をつけただけなのだが……加々見さんの反応の変化は、覿面だった。
     ぼくが肩胛骨の上の、特に硬い感触を感じる部分に、親指に少し力を入れて、をぎゅっと押し当てただけで、加々見さんは、
    「んはぁ」
     と、大きく息を吐いて、上体をのけぞらせて硬直した。
    「あ。痛かったですか?」
    「いい! すごく、気持ちいい!」
     加々見さんは、感極まった、という感じの声でいった。
    「君、うますぎ!」
     そういって、加々見さんは、肩にのせているぼくの手の上に、自分の掌を重ねる。

     ……いや、喜んで貰えるのは嬉しいけど……。
     そういう反応は、こういうところではなく、ベッドの上でこそ、して欲しい。そういう思いも、ふと頭をよぎる。
     それに、ぼくがうまいのではなく、加々見さんの凝りが酷すぎたのだと思う。ストレスの原因には、事欠かないようだったし。
    「……続けます」

     それから十五分くらい、ぼくは加々見さんの肩を揉み続け、加々見さんは大げさなほど反応し続けた。もし声だけを聞いている人がいたら、絶対二人で別のことをやっていると勘違いしただろう。それほど、加々見さんは、ことある毎に嬌声をあげ、痙攣し、悶絶した。いや、比喩ではなく、実際にそんな感じ。
     その証拠に、十五分くらいして、ぼくの手が痙攣して続行不能になった頃には、加々見さんは全身に汗をかき、きれいにセットされていた髪もほつれさせ、ブラウスを肌に貼り付け、肩で息をしていた。
     フォーマルな恰好をした女性が、こういう状態になっていると、妙に艶めかしい。
    「さ。お風呂に入ってきてください」
     ぼくは、肘をテールブルにつけ、前傾姿勢で荒い息をしている加々見さんにいった。
    「……お風呂……」
     俯いていた加々見さんがのろのろと顔をあげて、ぼくを見上げる。ほつれた髪の間からかいま見える、加々見さんの目は、とろん、と、蕩けたような感じだった。
    「もう、お湯、張ってますから。ゆっくりとお風呂で暖まってきたら、今度は全身をマッサージしましょう」
     ぼくが続けて、「出て行った彼女が置いていった、マッサージオイルがあるんですよ」と、囁くと、加々見さんの顔が、ぱぁあ、っという擬音がするのではないか、と、思うほどに、鮮やかに、輝いた。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (6)

    隣りの酔いどれロリおねぇさん (6)

     眼下には、三島さんの濡れた下着がある。問題なのは、これをどうするか、だ。
     大きく分けると、選択枝は二種類になる。

    選択枝A。三島さんの体を引き剥がし、なんにもなかったように自分の部屋に帰って寝る。
     無難、かつ、常識的な選択。ただ、それだけに面白味もない。
    選択枝B。三島さんの誘いに乗る形で、積極的にプレイに参加する。
     正直、三島さん(の、特に体型)は趣味ではないのだが、たしかに前の彼女と別れて以来、ご無沙汰では、あるわけで……。
     もう一つの難点は、このような形で三島さんと関係をはじめるとなると、後々のことが非常に不安になってくるということ……。
     あれ、三島さんの性格と言動、一種独特なものだから、以後も深いつき合いを継続するとなると、苦労をするのは目に見えている。
     今夜、共用部分の入り口で彼女をひろってから、まだ三十分もたっていないと思うが、それでもこれほどまでにいいように振り回されているのである。こういう状態が以後も延々と、半永久的に続くとなると……心身両面において、かなりの消耗を強いられるものと、予測される。

     で、だ。
     彼女を抱くことに、そこまでの意味と意義をみいだせるのか、ぼくは?

     そんなぼくの自問に頓着した様子はなく、三島さんは「おちんちんおちんちんひさびさの活きのいいおちんちーん」とか、例によって奇妙な節回しをつけて歌うようにいいながら、ぼくの性器をもてあそんでいる。歌詞の下品さに反して、その声には、幼子が無心に遊んでいるときのような、透明な響きがあったが。
     そういう無邪気な様子をみていると、彼女にとって性行為自体にはあまり卑猥な意味はなく、単なる遊びの一種なのかもしれない……とか、思えてくる。

     ……性格と言動はあれだけど、少なくとも悪い人では、ないよなぁ……。決して、悪い人では、ないんだけど……。

     ぼくがいつまでも躊躇していると、業を煮やしたのか、三島さんはぼくのを口に含むのを止めて、「むー」と、いかにも不機嫌そうな唸り声をあげはじめる。
    「青年。おねぇさんを可愛がってくれなーい……いいもんね。こうなったら実力行使に訴えちゃうもんね」
     といい、すくっ、と立ち上がって、たたたった、と軽い足音を残して、浴室から姿を消した。
     ぼくは、彼女が姿を消したその隙に、急いで乱れた着衣を直し、彼女の部屋から出ようと、浴室のドアを開ける。あれほど小さい三島さんが、「実力行使」とやらで、仮にも成人男性であるぼくをどうこうできるはずがない、と、高をくくっていたのが、大きな間違いだった。
     ぼくが浴室のドアを開けた途端、浴室に入ろうとしていた三島さんとぶつかりそうになる。
     三島さんのほうは、そうした事態もあらかじめ想定したのか、咄嗟に、ぴょこん、と飛び上がり、ぼくの首に抱きつき、そのまま、自分の口唇で、ぼくの口唇を塞ぐ。
     背中に、なにか硬い感触。それに、重量。
     口の中がカッと熱くなって、背中の重量物の正体に思い当たる。今日、三島さんが抱いていた、一升瓶。
     三島さんが相変わらず口唇を重ねているので、口移しにたっぷりと流し込まれた液体を、嚥下するしかなくなる。嚥下しないと、呼吸できない。
     液体が食道をどくどく下っていく感触。「そこ」が、いちいち熱をもっているように、感じた。
     ぼくがすっかり口の中の液体を飲み込むのを確認して、ようやく三島さんはぼくから身を離す。三島さんが口を離した途端、ぼくの気管は新鮮な空気を求めて痙攣し、ぼくは身を折って、げほげほげほ、と咳き込んだ。
     何故か膝に力が入らなくて、ぼくはその場に膝をつく。
    「んっふっふっふっふ」
     ぼくの前に仁王立ちになった三島さんは、「清酒美少年」というラベルの貼ってある一升瓶を示しながら、勝ち誇ったようにいった。
    「これ、中身、知り合いから分けてもらった五十年物のくーすーだから。度数でいったら五十以上あるはず。本当ならこんなにもったいない使い方したくはなかったんだけどねー。
     流石にこれは効くでしょー」
     そういう三島さん自身も、頬を赤く染めていて、ひっくっ、と、可愛らしいしゃっくりをした。

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    隣りの酔いどれおねぇさん (7)

    隣りの酔いどれおねぇさん (7)

     淹れたばかりのコーヒーを嚥下する。室内の気温は、暖房を必要とするほどでもないが、少し肌寒い。そんな中、熱い液体が食道を徐々に降りていく感触を感じると、体の中心から安堵感が広がっていくような気がする。

     今ぼくの目の前にいる女性は、普段ならあまり公言しないような、自分の境遇を語り終え、笑みを作ろうとして、それに成功していない。なんとも奇妙な、アンバランスな表情を、蒼白な顔に浮かべている。
     ピンと伸ばした背筋と、その凍り付いたような表情とが……彼女の置かれている、否、彼女が自分自身を追い込んでいる場所の、居心地の悪さを、そのまま物語っているようだった。

     基本的に、真面目な、真面目すぎるくらいの、人なのだろう。
     なにもかもを、きっちりと、完璧に、それができなければ、無難にこなそうとして、たいていの場合、それができてしまう程の能力も、持ち合わせている。
     でも、表面的な事務処理を機械的にこなすのと、心理的なジレンマを内面的に整理するのとは全く別の話しで……例えば、「離婚」とかに必要な手続きを推進するための気力や能力と、自分自身が、そこにまで至った過程に対して納得しているのか、ということは、全くの別の問題で……。
     多分、彼女は、常に「よい子」であろうとし、「よい子」であり続ける能力もあり、……それゆえ、自分の内面の、消化不良の、鬱屈した心理と向き合うのが、後回しになり、どんどん鬱屈やストレスを溜めていくのだろう……。

     ……本当に、こんな時くらい、泣き喚いて、取り乱しでもすれば、多少は楽になるのに……。

     コーヒーを飲みながら、ぼくは、今目の前に居る女性に、いったいなにができるのか、ということを考えていた。彼女は、ほとんど面識のないぼくにかなり立ち入ったことを話す所まで追いつめられて/自分を追いつめているわけで……そもそも、記憶をなくすほど泥酔したり、ぶしつけに、ぼくのような他人に、そのような事柄を語ったりすること自体、彼女が無意識に、一種の安全弁を求めている、ということだろうし……。

    「加々見さん」
     ぼくが声をかけると、もちろん、意識して柔らかい声を作ったわけだけど、それでも、硬直して何事か考え事をしていた加々見さんは、ぼくの声を聞くと、ビクリ、と、体全体を震わせて、反応した。
    「よかったら、その、肩を揉ませてくれませんか?」
    「え? あ。ああ」
     ぼくのその申し出が、唐突、かつ、よほど予想外だったのか、加々見さんは、数秒、目をぱちくりさせていた。
    「ええと……その、別にかまいません、けど……」
     まあ、いきなりこんな事をいわれても、普通は驚くわな。でも、メンタルの前にフィジカル。体の方をほぐしたほうが、効率がいい。加々見さんは、加々見さんの体は、良いが覚めてから、緊張してガチガチだった。
    「では、その前に、バスタブにお湯を張ってきます」
     ぼくはことさらゆっくりと立ち上がり、浴室のほうに向かう。といっても、狭いマンションの中、すぐにいって帰ってくるわけだけど。で、加々見さんの後ろに立って、肩に手をかける前に、いう。
    「いや。前の同居人には、よくマッサージしていたんですけどね。ぼちぼち一月くらい、他人の体を揉んでいないので、できれば、練習台になってくださると、ありがたいです。ブランクが空きすぎると、腕が鈍りますから」
    「ええ。ああ」
     加々見さんの声に、少し、柔らかさが戻ってきた。
    「そういうことなら、どうぞ。ご自由に。泊めさせていただく身ですし」
    「それでは、今から肩を揉ませていただきます。が、続けて熱いお湯にゆっくり浸かって暖まってから、全身のマッサージを行うと効果的ですので、是非、そうすることをお薦めします」
    「……はい。おっしゃる通りに。でも、あの……」
     ぼくが加々見さんの肩に手をかけるのと、加々見さんがそう言葉を継ぐのとは、ほとんど同時だった。
    「……その同居人だった方のこと、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
    「つい先頃、ぼくに愛想尽かして出て行きました」
     加々見さんほどドラマチックな展開があるわけでもないし、別に隠し立てするほどのことでもない。

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    となりの酔いどれロリおねぇさん (脱線メタ番外編)

    となりの酔いどれロリおねぇさん (脱線メタ番外編)

     ぼくは濡れた下着を見せつけるようにしてお尻を振っている三島さんを乗せたまま、上体を起こす。なにせ三島さんは、とても軽いので、床に手をついて少し力をこめれば、さして苦労することもなく、その程度の芸当は容易にできる。
    「お? おお」
     三島さんにしてみれば、頭を下にして傾斜していく体制になるわけで、こうなるとさすがにのんびりぼくのをくわえているわけにもいかなくなる。
     ぼくは、そのまま前転しそうなほど前のめりになった三島さんの両脇に手を差し込んで、ひょい、と、持ち上げた。なにせ三島さんは軽いから以下略。
     三島さんの両脇から手を差し込んで、捧げ持つような姿勢のまま立ち上がり、首の後ろを掴んで持ち上げられた猫のごとき姿勢でうなだれている三島さんを、すとん、と床に降ろす。

     呆然としている三島さんには構わず、ぼくは三島さんがはだけた下半身を直し、外に出ていた局部も中に納めて、ジッパーをあげる。
    「なんだお前なんなんだお前!」
     こちらに向き直った三島さんは、猛然とぼくに食ってかかった。
    「ここまで来てそこまでつれない態度はないだろう。ここで喰らいつかなくて、それでも男かエロ小説の主人公か!」

     咳払いを一つ。
    「そういうこというのなら……」
     ぼくは、人差し指を、びっしっイっ! と三島さんに突きつけて、指摘した。
    「こちらに寄せられたコメントみてみなさい!
    『最近年上が多いのですが、またロリ系書いてもらえないでしょうかー。 』
     って、三島さん、あなた、タイトルに『ロリおねぇさん』と冠していながら、ロリキャラとして認識されていないってことじゃないですか!」
     三島さんの顔は瞬時に蒼白になり、背景に歪んだレンダリングの「ガがーん!」とという、立体的なロゴが浮かび上がる。番外編だとこういうありがちかつイージーな心理描写も許される……らしい。
    「貴女の場合、はっきり言って、体型だとか外見とかのスペックより、奇矯な言動のほうが印象大きいんですよ! これでは、エロというよりギャグです。お笑い系です。エロ小説のヒロイン失格ではないですか!
     はっきりって、あなたには『萌え』が足りない!
     このままでは色物キャラ街道まっしぐらではないですか!」
     ここぞとばかり、ぼくはさらに追い打ちをかける。
    「……イロモノ……わたし、イロモノ……」
     よほどダメージが大きかったのか、茫然自失の態になった三島さんは、譫言のようにそういいながら、こちらに背を向けて、背中を丸めてうずくまり、床に人差し指でのの字を書き始める。
    「……いいんだもん……ロリって設定年齢じゃないんだもん……どうみても中、高校生にしかみえないキャラがでてきても『本作品にでてくる登場人物は全て十八歳以上です』って断り書きが冒頭で出くるんだもん……」
     落ち込んだ振りをして、反応する人が限られてくるような微妙なネタを振ってくる。
    「いったい何の話をしているんですか!」

    「児ポ法とメディ倫の無意味な規制の話し!
    『女子高生』は『女子校生』、『中学』ないし『高校』は『学園』というふうに、微妙に歪曲して表現しないといけないことになっているのが大人の事情というものよ!」
    「そんなしょーもないネタで普段使用しない強調フォントを使わないでください!」
     二人して向き合って、怒鳴りあう。我が事ながら、あまり有意義な議論であるとは思えない。
    「……意外にテンション高いっすよねぇ、三島さん。出だしは同時進行しているもう一つの連載と大して変わらないのに、キャスティングが違うだけでここまで別物になるとは……」
    「……生徒たちに『みにら先生』と呼ばれ畏れ敬われておるのは伊達ではないわ……」
     がるるるる。っと低くうなり声を上げてて、三島さんは威嚇するようにぼくを睨む。
     ……なるほど……。
    「みしまゆりか」との語呂合わせもあるのだろうが、小さな怪獣、なのか……。

     そうして三島さんと相対していると、どこからか現れた手がぼくと三島さんの元に小さな紙片を押しつけてきた。
     その紙片に書かれた文字列に目を走らせたぼくと三島さんは、ちらり、とお互いの目をのぞき込み、軽く咳払いをして、この作品を今、読んでいるあなたの方向に向き直る。

    「えー。ただいま入った情報によりますと、今回の更新分は収拾がつかなくなったので、通常の連載分には含まれない『脱線メタ番外編』として処理し、明日の更新分は、昨日の更新分からの直接的な続きとなるそうです。つまり、今回の更新分は、物語的にはなかったこと、ノー・カウントってことで。
     いやー。生放送っていろいろありますねぇ」
     いきなりにこやかになった三島さんが、読者であるあなたに向かってカンペに書かれていた内容を伝える。
     ってか、「生放送」ってなに?
    「それから、『ロリ希望』のコメントをくださった方。今やっている同時連載が終わった後、そのご希望に添いまして、ロリ系ヒロインの連載もってくるそうです。病弱系清楚娘と天然系元気娘が登場予定だそうです。学園物だそうですよ」
     営業用の笑顔を浮かべたぼくも、後を続ける。語尾が「だそうです」の連続だけど、カンペの内容を伝えているだけだからしかたがない。
    「学園物……また、うちの学校使うのかしら? 脇役使い廻しできるし、そうすると、ヒロインの年齢的にも確実に「ろぅ」のほう(参照)になっちゃうわけだし。
     病弱系清楚娘と天然系元気娘、ってことは、『はい(♀)×ろぅ(♂)×ろぅ(♀)』みたいにダブルヒロイン? それとも今やっているみたいな、一日二回更新の同時進行連載?」
    「同時進行連載なら、片方がシリアス系でもう片方がイロモノ系ですかねぇ?」
    「イロモノいうなー!」
    「このブログの中の人は、
    『いやあ。言われてみればバランス崩れているな、最近。
     どうせ次の作品詳細なんかぜんぜん詰めていなかったし、そういうご要望があるのなら、今度はそっち系いきましょか』
     とかほざいています。
     いい加減というか、行き当たりばったりですねぇ。
     なんかご要望とかある方は、遠慮なくコメントとかつけていってみたほうがいいですよ。その場のノリと勢いだけで生きているようなところあるから、うちのブログの中の人」
    「行き当たりばったり、っていうのは当たっているかも。
     なんでも、一日二回更新だとすぐストックがなくなる、っていってた。今回の更新分も、昼休みにPDAにぱこぱこ打鍵して書いて間に合わせているとか……」
    「だから今回、こんなにわやくちゃな内容なんか……。こんな事が何回も続くと、読者逃がすんじゃないかなぁ」
    「こういうメタネタ、好きな人は好きだけど、駄目な人も多いもんねぇ……」
    「……いや、いくら中の人が酔狂でも、こういうのはそうそう頻繁にはやらないとは思うけど……思いたいけど……」
    「それでは今夜はこの辺で」
    「ということで、明日の更新は、昨日の(5)から直接続く(6)をお送りします」
    「繰り返しますが、つまり今回の更新は、物語的には『なかったこと』として扱われる、と」
    「それではみなさん。さようなら」
    「また明晩、お目にかかりましょう」

    [明日の*夜*に続く]
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    隣りの酔いどれおねぇさん (6)

    隣りの酔いどれおねぇさん (6)

     コーヒーの香りが満ちていく中、加々見さんは、
    「……今日、別れた夫に会ってきたんです」
     と、語りはじめた。
     加々見さんとその人とは、職場で出会った。結婚してから、二人で共同経営という形で、小さいながらも事務所を構えた。何年かして、仕事の方が軌道に乗り始めた矢先、加々見さんの体調を崩し、念のため、病院にいってみると意外に大病で、そのまま何ヶ月か入院。退院したら、相手には新しい女ができていて、しかも、妊娠までしていた……。

     そんな顛末を、加々見さんは淡々と、ほとんど声の抑揚をつけずに語り続けた。
     よくある話し、といってしまえばそれまでなのだろうが、当事者にしてみれば、かなり大変なことだったのだろう。
     ほとんど面識のない、ぼくのような男に語ったのも、相談とか愚痴とかではなく、一通りのことを他人にしゃべるだけしゃべって、なにかしら踏ん切りをつけたいのではないか。
     加々見さんのしゃべりぶりは、はなしの内容を考えたら、むしろ怖いくらいに平静で、その平静さというのが、語られる内容が彼女にとって既に「過去のはなし」になっているからなのか、それとも、ことさら平静に振る舞わねば、話している内に自分がどうしようもないほど取り乱してしまう、ということを自覚しているからなのか……。そのどちらとも、判断しかねた。
     その、どちらとも、なのかも、知れないが。
    「今日は、分社化の正式な手続きとか、彼とか会計士さんとかを交えて詳細を煮詰めてきたんです。その後、出資してくれることになっている古い知り合いと会って、飲んで……」
     淹れたばかりのコーヒーを、自分用のマグカップと来客用のカップとに注ぎ、来客用のカップを加々見さんの前に置いた以外、ぼくは、相槌もうたずに、黙って聞いていた。
     加々見さんはコーヒーには手を着けず、相変わらず背筋をシャンと伸ばし、視線を空中のどこか一点に擬っと据えたまま、はなしを続ける。

     一緒に飲みに行った加々見さんの古い知り合いも、比較的最近ご主人と死別したばかりで、ついこの間まではかなり沈み込んでいたこと。でも、今日久々にあったら、かなり元気になっていて、男と別れたばかりの女同士、にぎやかにおしゃべりしながらかなり飲み歩いたこと。久々に記憶をなくすほど飲み、気がついたらマンションの前でぼくに話しかけられていたこと……。
     そんなことをはなし続ける加々見さんの血の気のない、真っ白な横顔を眺めつつ、ときおり静かにコーヒーを飲みながら、ぼくは黙って聞き続けた。
    「こんなとき、女ってダメですね」
     最後にそう締めくくったとき、それまで表情を消していた加々見さんは、笑おうとしているようだった。
    「お酒に飲まれて、あなたにもこんなにご迷惑をおかけして……。
     わたしって……」
     ……弱いですね……。
     そう続ける加々見さんの横顔を眺めながら、ぼくは、
     ──……こんなときぐらい、素直に泣けばいいのに……。
     と、そう思った。

    [つづき]
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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (5)

    隣りの酔いどれロリおねぇさん (5)

     念のために今一度確認しておくと、現在、ぼくの上に跨っている三島百合香さんは、とても小さい。
     頭のてっぺんが中肉中背のぼくの胸より下にくるくらいだがら、身長はたぶん、百四十センチもいっていないだろう。体重も、驚くほど軽い、ということは、今乗りかかられていても感じるし、さっき背負ったときにも確かめたとおり。くわえて童顔なので、初めてあったときは小学生か、せいぜい、中学生くらいにしか思えなかった。
     このあたりにある公立校にお勤めだそうだけど、生徒の中に混ざっても違和感ない……どころか、ヘタすると、生徒よりも若くみえるのではないだろうか?

     そんな幼い風貌の三島さんが、外見に似つかわしくない淫蕩な笑みを浮かべ、ネクタイを掴んで引き寄せるようにして、ぼくのほうに顔を近づけてくる。
    「ん? 青年。こういうのはあまり好みではないか? では、仕切り直し」
     そういって、三島さんは両手の掌で顔を隠す。いつの間にか、ぼくの呼称も「おにーさん」ないしは「君」から、「青年」に変わっているし。
     とか思っていると、ばっ、と、ぼくの首にしがみついてきて、
    「おにいいちゃん!」
     とか、舌足らずな発音で叫んで、耳元に息を吹きかけてくる。
    「みっちゃんねぇ、もうアソコが熱くなって疼いてどうしようもないのぉ。おにいちゃんにいじいじしてほしいのぉ」
     とか、幼い発声を真似て身体をすり寄せてくるのだが、……あー、小学生体型の女性にこういう迫られ方をされてもなぁ……。

    「ふむ。青年にはコッチの属性はないのか」
     後ろ手にぼくの股間に手をやり、そこがまったく反応していないことを確認すると、三島さんは「大学時代の電波男系の学友どもは、これでイチコロだったのに」とかブツクサいいながら、
    「ではこれより、より具体的かつ実践的なアプローチに移行する」
     と宣言したかと思うと、立ち上がって、ぴょん、と、軽く飛び上がって反転し、ぼくの頭のほうに背を向けて、どすん、と、結構な勢いで、ぼくのみぞおちあたりにお尻を着地させる。
     ぼくのほうはといえば、いい加減、馬鹿馬鹿しくなって、三島さんの体を引きはがそうかな、とか思って彼女の腰に手をかけた(三島さんはとても小さくて軽くいので、その気になれば引きはがすのは容易なはず……だった)ところで、そこに勢いをつけて彼女がお尻を降ろしたわけで、完全に不意をつかれた形だった。
     そのとき、慣性とともに彼女の体重を受け止め、肺の中の空気を漏らさずはき出したぼくは、無理に表記すると「うげぇ!」とか「うへっ!」みたいな音を喉から絞り出しているわけだが、そんな事には頓着した様子もなく、三島さんはぼくの股ぐらに顔を突っ込んで、トランクスをずりずり降ろして局部を露出させ、ぐったりしたままのぼくものを口に含んだ。
     三島さんは、ダメージを受けたぼくが抵抗しないことをいいことに、そのまま、両手で睾丸を包み込むようにして刺激しつつ、ちゅばちゅばと音をたててぼくのペニスを口内に含み、舐め上げ、吸い込み、刺激する。
     自称したように、なかなか手慣れた感じがした。三島さんがこういう幼い外観でなかったら、男性にもあまり不自由はしなかったのではないだろうか?
    「お。立ったたった、勃ってきたぁ!」
     しばらくして、ぼくのが段々元気になってきたのを確認すると、三島さんは口を離し、唾液で濡れた竿を手でしごきながら、いった。
    「どうした、青年。この期に及んでもまだ嫌がるかね、ん?」
     と、挑発するような口調でいった。
     とはいっても彼女は、後ろ向きになってぼくの上にのっかって、股間に顔をうずめるような姿勢をとっているわけで、ぼくのほうからは顔をみることはできない。みえるのはせいぜい白衣に包まれた小さなお尻くらいのものだ。
    「よかったら、ほれ、おねぃさんのほうにもやって欲しいなぁ、いろいろと」
     三島さんはそういうと、少し腰を浮かせて、白衣の裾とともにスカートをまくり上げて、小さな下着を丸出しにして、お尻をこっちのほうに突き出して、くりくりと動かす。
     三角形の下着の頂点に、シミのような濡れあとが、できはじめていて、彼女の性器の形が、透けてみえはじめていた。その外観に似つかわしく、ヘアはらしいものはほとんど確認できず、秘裂の形状とその両脇の盛り上がりの形が、かなり明瞭に確認できた。もっとも、無毛なのではなく、剃っているのかも知れないが。

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    隣の酔いどれおねぇさん (5)

    隣の酔いどれおねぇさん (5)

     加々美さんをリビングに案内した後、先刻宣言した通り、ぼくはさっさと風呂場に向かう。
     加々美さんにも当座の着替えにスウェットとポロシャツぐらい出しておくべきだったかな、とか思いつつも、どろどろになったスーツとワイシャツを手早く脱ぎ、ざっとシャワーを浴びる。なにぶん、不快な匂いと感触を一刻でも早くなんとかしたかったので、気が急いていた。
     熱いシャワーが心地よい。
     最低限の汚れを洗い流しただけで、風呂場から脱衣所に移動し、バスタオルでざっと体を拭い、部屋着として置きっぱなしにしてあるものを身につける。汚れたスーツとワイシャツは、しばらく思案した末、とりあえず、洗濯機に放り込んでおく。後で捨てるかも知れないが。不幸中の幸いか、スーツは何年か着古したものだったので、あまり惜しくもなかった。
     バスタオルを首にかけてリビングに戻ると、ピンと背筋を伸ばし、緊張した面もちの加々見さんが座っていた。そして、ぼくの顔をみるなり、立ち上がり、
    「ごめんなさい!」
     と、深々と頭を下げた。顔色はまだ青白いけど、酔いはかなり醒めたらしい。ぼくがシャワーを浴びている間に、メイクも直しているようだった。
    「いやいや。お気になさらず」
     ぼくもなるべく鷹揚に構えて返したつもりだったが、そうした擬態が成功したていたかどうかは、いささか心許ない。
    「それより、風呂、空きましたよ。良かったら、どうぞ。シャワーだけでも。
     それとも、お茶でもいれましょうか?」
     どんな経緯であれ、招きいれた以上はお客である。
    「あ。わたしがやります。コーヒーでいいですね?」
     加々美さんは跳ねるような動作で顔を上げると、こちらが制止する暇も与えず、緊張した、かくかくという動作で、コーヒーメーカーをセットしに向かう。
    「あ。水と豆は冷蔵庫に」
     仮にもお客さんなのだから、遠慮してもらおうかな、とも思わないでもなかったが、せっかく張り切っているわけだし、狭いキッチンであまり面識のない人ともみ合うことの滑稽さを考えて、結局やってもらうことにした。加々美さんは、割合に馴れた手つきでコーヒーメーカーをセットする。

     ぽこぽこという、挽いたコーヒー豆にドリップする音を聞きながら、向き合って黙り込んでいるのもなんなので、
    「それで、鍵のほうは見つかりましたか?」
     と、訊ねてみる。
    「いや、すいません。やっぱりなかったです。どこかに忘れてきっちゃったみたいでして……」
     彼女は深々とため息をついた。
    「……駄目ですねえ、わたし……普段はこんな、悪酔いするまで飲まないのに……」
    「いや……まあ……。そういう気分になるときだってありますよ……」
     年上の女性、それも、あまり面識のない、かなりきれい目な人と、二人っきりで正面向き合って、しみじみとそんな会話を交わすのも、滅多にできない経験ではある。まあ、なんといって慰めればいいのか、会話の糸口はなかなかつかめそうにはないのだが。
    「お気になさらず。
     こんなところでよければ、一晩くらいは泊まっていって構いませんので」
    「……はい……そうさせていただけると、助かります」
     うつむき加減の加々美さんは、消え入りそうな声でそう応えた。
     この辺、結構なんにもない場所で、もよりの駅まで十キロ以上ある上、コンビニさえまばらである。かろうじて、少し離れたところにファミレスがあるくらいで、外泊場所となると、かなり離れたところにしかない。
     不便な分、床面積に比べて、家賃も安いわけだが。車をもっているか、この近くに職場があるかしないと、あまり住む気になれないような立地条件だった。

     二人とも言葉の接ぎ穂がみつからず、ポコポコとコーヒーのドリップする音だけが、部屋の中に響いた。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (4)

    隣りの酔いどれロリおねぇさん (4)

    「……ご、ごめんなさ……」
     あたりに酸っぱい匂いが充満する中、嘔吐の切れ目で、三島さんは、謝罪の言葉らしき断片をいいかけるのだが、すぐにこみ上げてくるものに押しな流されて、そのまま、げぇげぇと戻し続けるのだった……。

     ぼくができることいえば、彼女を背中から降ろして、玄関から風呂場までの短い移動させるくらいがせいぜいだった。基本的に、ぼくの部屋と同じような間取りなので、迷うことはなかった。こういうときのしんどさや情けなさは自分の経験に照らせばよくわかっているので、事故とか天災にでくわしたときに近い諦観があった。
     もちろん、自分の背中に吐かれたり、誰かの背中に吐いたり、とかいう極端な経験はないわけですが。今更、彼女を責めてもどうにもなるまい。

     風呂場と隣接するトイレに三島さんを押し込み、便器に顔をつっこむような姿勢にして、しばらく吐くだけ吐いてもらう。戻すだけ戻すと多少は落ち着いたのか、三島さんは顔を上げた。
    「……本当に、ごめんなさい。服はクリーニング……いえ、弁償しますから……」
     みれば、彼女の服もぼくの服も、汚物まみれである。まあ、当然といえば当然なんだが。
     苦しそうにそういう三島さんの顔をみながら、「すこしは正気に返ったかな?」と思った。
     不幸中の幸い、なのは、汚物で汚れたのは彼女の部屋の玄関から洗面所にかけての短い廊下だけで、フローリングだから掃除も比較的楽だろう、ということだ。
    「そういうはなしは、また明日にでも。
     今はとりあえず、シャワーでも浴びてぐっすり寝ましょう。明日はお休みなんでしょ?
     じゃ、そういうことで、さような……」
     ぼくがことさら明るい口調で、「さようなら。おやすみなさい」と逃げ……もとい、別れを告げて、きびすを返そうとした、まさにそのとき、……
     三島さんが、ガッシリと、背後からぼくの腰のあたりに抱きついてきた。
    「ええ。それは、そうなんですが……」
     自分の醜態を恥じ入っているのと、吐くだけ吐いたことでかなり酔いが醒めてきたのか、うつむき加減になってはいるものの、ぼくの腰に回した両腕にはかなり力が籠もっている。じりじりとぼくの体を風呂場のほうに押し戻そうとしている。あんなちっこい体をしているのに、見かけによらず、かなりの力だった。
    「あの。ここまできたら、ですね。ここで二人とも服を脱いで、一緒に体を洗ってさっぱりする、というのが、一番合理的だと思うのですが……」
     と、口調だけはしおらしい、三島さんのお言葉。
    「……はい?」
     思わず、聞き返す。
    「親切にして、そのあげくに反吐まみれになるなんて、とんでもない災難ですねよえ。ええ。でも、ここまできたら毒食えば皿まで。ちゃっちゃと服を脱いで一緒に洗いっこして、ついでにここに一泊していきなさい。是非していきなさい。そしたら、体でお礼いたしますから。たっぷりと。おねーさん、目一杯サービスしちゃうから。それはもう、猛烈に、らぶらぶに」
     そういいながらも、三島さんは、前に回した手で、手探りでぼくのベルトのバックルをちゃかちゃかとはずしにかかる。
    「最近はすっかりご無沙汰だけど、こうみえても経験豊富だし、テクもそれなりのもんだから、ここは据え膳と思って遠慮なくいただいちゃってください!
     っつか、わたしがおいしく君をいただく。
     欲望、肉棒、浴場で欲情、ひっさびっさのー、わっかいおとこー!」
     へんな節回しをつけて歌うようにそういいながら、ぼくの服を手慣れた様子で手早く効率的に脱がせていく。

     あー。えーっと……。その……。
     ぼくの常識の斜め上をいく不測の事態に、ぼくの頭はなかなかついていけないでいる。
     ──ひょっとしてこれって、噂に聞く「逆レイプ」ってやつなのでは?
     ……そんなもん、AVとかの妄想的フィクションの世界のおはなしであって、実際にあるとは思わなかった……。
     ましてや、自分が当事者になるとは……。

    「はいはい。最後に感じさせれば合意だもんねー。んっふっふっふっふ。今夜は寝かせないぞー。ってえか、あんまりぐずぐずしていると、服ごと洗っちゃうぞー」
     ついさっきまでげぇげぇ吐いていたとは思えない元気そうな弾んだ声でそういって、三島さんは、体ごとぶつかるような感じで、ぼくに抱きついてくる。ぼくは、半ば下ろしかかったズボンに足を取られ、その場で尻餅をついた。
     倒れたぼくの体に、向き合うような形で、でん、と腰を据え、三島さんは、しゅる、と、ぼくのネクタイをゆるめて、ワイシャツのボタンをはずしにかかる。
    「酔うとね」
     三島さんは、ぼくの目をまともに見据えながら、意外に冷静な声でそういった。外見に似合わない、大人の、女性の声だった。
    「欲しくなるんだよ。無性に」

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    隣の酔いどれおねぇさん (4)

    隣の酔いどれおねぇさん (4)

     そのときのぼくの顔は、たぶん、ひきつっていたと思う。だけど、対面していた加々見さんの顔は、もともと血色が悪かったところに、さらに拍車をかけて蒼白になっった。
    「……ご、ごめんなさ……」
     嘔吐の切れ目で謝罪の言葉らしき断片をいいかけるのだが、すぐにこみ上げてくるものに押しな流されて、四つん這いになってげぇげぇと戻すのだった。
     ぼくができることいえば、彼女の背中をさするのがせいぜいで、いやまあ、こういうときのしんどさや情けなさは自分の経験に照らせばよくわかっているので、事故とか天災にでくわしたときに近い諦観があった、といえばわかりやすいだろうか、彼女を責める気にはなれなかった。

     しばらく吐くだけ吐いて、多少は落ち着いたのか、加々美さんは顔を上げた。あたりには酸っぱい匂いが充満している。
    「……本当に、ごめんなさい。服はクリーニング……いえ、弁償しますから……」
     苦しそうにそういう加々美さんの顔をみながら、流石に夜中の今すぐどうこうしようとは思わないが、朝になったらここいらを洗い流さなければな、と、ふと思った。別に公衆衛生的にどうこういうというわけではなく、自分の住所の目の前くらいは最低限の清潔さを保っておきたかったからだけど。
    「そういうはなしはまた明日にでも。今はとりあえず、それぞれの家の中にはいって、シャワーでも浴びてぐっすり寝ましょう。明日はお休みなんでしょ?」
    「ええ。それなんですが……」
     加々美さんは自分の醜態を恥じ入っているのと、吐くだけ吐いたことでかなり酔いが醒めてきたのか、うつむき加減になって、そわそわと手をあちこちに動かし、落ち着かない挙動をしていた。
    「あの。さっきから、鍵、探して居るんですけど、どうもどこかに忘れたか落としたかしたみたいで……見あたらないんです」
    「それはそれは」
     そうきいても、ぼくはなんとか笑顔を作っていられたと思う。
    「災難ですねえ。それでは自分の部屋に入れない、と……」
     まさかここで、「おやすみなさい」といって、自分だけ家に入ってぐっすりお休み、というわけにもいかないだろう。もう夜は結構冷えるし、相手は女性だし。
    「それではどうぞ。なにもないところですが、遠慮なく」
     そういって、ぼくは自分の部屋の鍵をあけて招き入れる。
    「一応念のため。
     悪いけど、シャワーは先に使わせてもらいます」
     加々美さんはぼくの胸から下の惨状を再びまじまじと見つめた後、機械的な動作でかくかくとうなずいた。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (3)

    隣りの酔いどれロリおねぇさん (3)

     肩を貸して歩いている最中にも、
    「すいませんねー。おにーさーん」
     とかいいながら、三島さんはぼくの背中にぐにぐにと体を押しつけてくる。でも、その感覚に欲望を刺激されはしない、ということは先ほど述べた通り。
     だって、三島さんの胸は、それはもう見事に真っ平らだったし。まじで小学生並。
     それ以上に、後ろから耳元に酒臭い息を吐きかけられるのがいやだった。
    「いいから。ほら。もうちょっと静かにしていてください」
    「うふふふふ。感じます? 感じちゃいますか?」
     とかいって、ぼくの腕を抱えて、自分の胸の、ほんらいなら膨らんでいる筈の部分に「うりうり」と擬音を口で言いながらなすりつけてくるんだが……しつこい酔っぱらいだ以外の、何者でもない。
     いや……まさかとは思うけど、……ひょっとしてこの人……素面のときでもこんな調子なのだろうか……。

     今更いうまでもないことだが、どうみても、今夜の彼女は悪酔いしていた。
     不自然なほどはしゃいでいたのもわずか数分のことで、なんとかエレベーターの前にまでたどり着く頃には、ガタガタと震えてしてぼくの背中にしがみつくようになっていた。
     静かになったのはいいことだが……あー……ものすごーく、悪い予感がする……。
     なにぶん深夜のことなので、エレベーターには、ボタンを押せばすぐに乗ることができた。
    「……ちょっと、大丈夫ですか? もうすぐで着きますからね!」
    「……大丈夫じゃないかも……」
     彼女は、消え入りそうな小さな声でいってから、自分の口を押さえた。
    「……吐きそう……」
    「ちょ、ちょっと待って! すぐ着きますから!」
     こんな狭い密室で吐かれでもしたら、匂いが充満してかなりイヤな環境になりそうな気がする。それ以前に、おんぶした状態で吐かれたら、二人してあまり想像したくない、かなり壮絶な状態になりうるわけで……。
     幸い彼女は、エレベーターが着く「まで」は、持ちこたえた。
    「はいはい。着きましたからね。ゆっくり行きますからね。おうちはすぐそこですからね」
     背中の彼女をあやすようにいいながら、ゆっくりと進む。といっても、わずか数十メートルの距離なんだが。彼女は返事をする余裕すらないようで、かろうじてこくこくと頷く感触が、背中に伝わった。
    「はい。つきましたよー。鍵。鍵を出して、おうちに入りましょうね」
     彼女はとろんとした目で背後からぼくの横顔をみつめ、ごそごそとポケットを、ついで、白衣のポケットの中を探る。すぐに鍵を取り出すと、ぼくの手に押しつけた。
     その鍵を鍵穴に差し込み、彼女の部屋の扉を開く。
     ──やれやれ、これでやっかいな荷物とおさらばできる、……。
     と、思いつつ、彼女と一升瓶を降ろそうとした、まさにその時、
    「…………めん……い……」
     背後から、よく聞き取れないほどか細い声が、聞こえた。
     ……をい……。
    「……どうしたんですか? ま、まさか……」
     その場で彼女の体を放り出すか否か、一瞬、躊躇したのが、結果として命取りになった。
     彼女は、ぼくの背中におぶさったまま、その場で盛大に戻しはじめたのだ。

     ぼくは、ぼとぼと音と湯気をたて、ぼくのうなじを経由して背中にしたたり落ちていく、彼女の口から噴出された、刺激臭のある液体のぬくもりを、体全体で感じていた。

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    隣りの酔いどれおねぇさん (3)

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     肩を貸して歩いている最中も、
    「すいませんねー。おにーさーん」
     とかいいながら、加々見さんはしなだれかかってくる。ぐにぐにと体を押しつけられる感覚に、次第に欲望を刺激されたりするわけだが、それ以上に重いし、歩きにくい。
    「いいから。ほら。もっと、ちゃんと歩いてください」
    「うふふふふ。感じます? 感じちゃいます?」
     とかいって、ぼくの腕を抱えて、自分の胸の膨らみをうりうりと押しつける。
     ……素面のときにこういうことあってくれれば、とても嬉しいのだが……。
     どうみても、今夜の彼女は悪酔いしていた。その証拠に、不自然なほどはしゃいでいたのもわずか数分のことで、なんとかエレベーターの前にまでたどり着く頃には、真っ青な顔色をしてうつむいてるようになった。静かになったのはいいことだが……。
     なにぶん深夜のことなので、エレベーターはボタンを押せばすぐに乗ることができた。
    「……ちょっと、大丈夫ですか? もうすぐで着きますからね!」
    「……大丈夫じゃないかも……」
     彼女は、消え入りそうな小さな声でいってから、自分の口を押さえた。
    「……吐きそう……」
    「ちょ、ちょっと待って! すぐ着きますから!」
     こんな狭い密室で吐かれでもしたら、匂いが充満してかなりイヤな環境になりそうな気がする。
     幸い、彼女はエレベーターが着くまでは持ちこたえた。
    「はいはい。着きましたからね。ゆっくり行きますからね。おうちはすぐそこですからね」
     彼女の肩を支えるようにして、あやすようにいいながら、ゆっくりと進む。といっても、わずか数十メートルの距離なんだが。彼女は返事をする余裕すらないようで、真っ白な顔をして、かろうじてこくこくと頷いている。
    「はい。つきましたよー。鍵。鍵を出して、おうちに入りましょうね」
     彼女はとろんとした目でぼくを見上げ、ごそごそとポケットを、ついで、バッグの中をあさりはじめる。鍵をしまった場所を思い出せないのか、長々とあちこちに手をいれて、探っていたが、しばらくして、
    「…………めん……い……」
     と、よく聞き取れない声で囁く。
    「……えーと?」
     いい加減、彼女を支えることに焦れてきていたぼくは、身をかがめて、彼女の両手に手をおいて、彼女と同じ目線の高さで、聞き返す。
    「……どうしたんですか? まさか、か……」
    『鍵、みつからないんですか?』といおうとしたまさにそのとき、彼女は盛大に戻しはじめた。

     ぼくは、ぼとぼと音と湯気をたてぼくの胸を経由して床にしたたり落ちていく、彼女の口から噴出された、刺激臭のある液体を、呆然と見下ろした。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (2)

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     その三島百合香さんを次に見かけたのは、その引っ越しの日から二週間くらいたった、週末の夜だった。ぼくにしては珍しく、職場の同僚と居酒屋で軽く飲んだためぎりぎり終電で帰ってきたぼくは、マンションの共用部分の入り口を塞ぐようにうずくまっている塊を見つけた。はっきりいって邪魔だったので、一瞬、けっ飛ばしてみたい衝動に駆られたが、その物体が「んんんん」とかいう呻き声を上げたので、とりあえずやめておいた。
     近づいて、よくよくみてみると、その物体は、寝ころんで、一升瓶を抱えて丸くなっている三島百合香さんだった。
    「あー。あんた、うちのお隣の、あー。なんとかさんでひょ」
     彼女のほうもぼくに気づいたようで、声をかけてきたが、顔が真っ赤で呂律が回っていない。一応スーツ姿だが、その上に汚れの目立つ白衣をひっかけているから、町中でみかけたら、けっこう危ない人かも知れない。
    「……こんなところでなにやっているんです。三島さん」
    「あのね。開かないの。これが」
     といって、入り口の暗証番号キーを指す。
    「故障ですか?」
    「わかんないけどね、わたしがやるとね、開かないの。この、意地悪!」
     と、突然叫んで立ち上がったかと思うと、何メートルか後退し、「えやー!」と奇声を発して、入り口の支柱に跳び蹴りをかました。もちろん、金属製の支柱を蹴ったところで、ダメージを受けるのは人間のほうである。
     案の定、彼女は、自分のつま先を手でもって、「いてててて」といいながら、地面に横たわり、そのあたりをごろごろと転げ回った。

     ……いくら酔っているとはいえ、大の大人がやることかよ……。

    「ああ。ああ。絶対大丈夫ではないと思いますけど、一応儀礼的にお聞きします。
     ──大丈夫ですか?」
     ぼくは三歩ほどの距離を詰めて、彼女に手をさしのべる。彼女は「いったーい」といいながら、自分のお尻をさすっていた。足を大きく開いているためスカートの中身が丸見えだっただが、彼女の外観も言動も、どうみてもお子さま並だったので、そこにリビドーを感じるということはなかった。っつうか、彼女にはあまりにも色気がなさすぎる。
    「ありがとーおにーさん」
     彼女は、子供のように無防備な笑いを見せ、ぼくの手をとって、よっこらしょ、とかけ声をかけて立ち上がった。
    「ごめんなさいねー。今夜はちょっと酔ってて」
     これが『ちょっと』というレベルですか? と、小一時間ほど問いつめたくなる。
     普通にたっているだけでもフラフラしているのは、酔いと先ほどの跳び蹴りのダメージによるものと思われた。

     フラフラしている彼女の肩を、近くの壁に預けて、ぼくはマンション共同入り口の暗証番号を素早く入力した。あっけなく、ガラス製の自動扉は開いた。
    「あれ。あれれ」
     彼女は目を丸くした。
    「なんでぇ? どうして? ずっるい。わたしがやると開かなかったのに」

    考えられる原因一。酔っぱらった彼女が、間違った暗証番号を押していた。
    考えられる原因二。酔っぱらった彼女は、手元がふらついて正確にボタンをプッシュできなかった。

     そのほかいくらでも原因を予測できたが、それらを列挙してもなんら益があるとは思えないし、かえって彼女を刺激し、逆上させるだけの結果に終わりそうな気がするので、その点には触れず、「部屋まで自分でいけますか?」と、訊いた。
    「いけない。あるけない。おんぶして!
     おんぶしてくれなければ泣いちゃうぞ。わめいちゃうぞ。『レイプされるー』って大声だして、警察にも電話しちゃうぞ」
     ……養護教諭とはいえ、仮にも「学校の先生」がそういう脅迫行為をおこなっていいものでしょうか?

     こんなことで夜中に騒ぎたてられてられるのも馬鹿らしいので、素直に背を向けた。ぼくの背中に乗った彼女は、いっこうに自分自身の体重を支えようとせず、それどころかセックスアピールのつもりなのか、ぐりぐりと胸を背中にこすりつけるような真似さえする。
     そんな平坦な胸こすりつけられても、こっちは肋骨がぐりぐりする感触を感じるだけで、ぶっちゃけ痛いだけです。
     彼女自身は驚くほど軽かったが、ほとんど中身が減っていない「清酒美少年」というラベルの張った一升瓶も同時に持ち運ぶことを強要されたので、むしろそちらのほうで難儀した。

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    隣りの酔いどれおねぇさん (2)

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     その加々見透理さんを次に見かけたのは、その引っ越しの日から二週間くらいたった、週末の夜だった。ぼくにしては珍しく、職場の同僚と居酒屋で軽く飲んだためぎりぎり終電で帰ってきたぼくは、マンションの入り口をけっ飛ばしているスーツ姿の女性をみかけた。近づいて、よくよくみてみると、その女性が、加々見透理さんだった。
    「あー。あんた、うちのお隣の、あー。ナントカさんでひょ」
     彼女のほうもぼくに気づいたようで、声をかけてきたが、顔が真っ赤で呂律も回っていない。
    「こんなところでなにやっているんですか、加々見さん」
    「あのね。開かないの。これが」
     といって、入り口の暗証番号キーを指す。
    「故障ですか?」
    「わかんないけどね、わたしがやるとね、開かないの。この、意地悪!」
     と、突然叫んで、つま先で入り口の支柱をけっ飛ばす。もちろん、金属製の支柱を蹴ったところで、ダメージを受けるのは人間のほうである。
     案の定、彼女は、「いててて」と、自分のつま先を手でもって、片足でぴょんぴょん飛び跳ねた。

    条件一。彼女は相当きこしめしている。
    条件二。彼女は運動には不向きなヒールにスーツ姿である。

     以上の条件が重なって、彼女はそのまま、すってん、という擬音が背後に見えないのが不思議なくらい、見事にすっころんだ。実際にしたのは「どさっ」という、なにか柔らかいものを落としたときにありがちな音だった。
    「ああ。ああ。大丈夫ですか?」
     ぼくは三歩ほどの距離を詰めて、彼女に手をさしのべる。彼女は「いったーい」といいながら、自分のお尻をさすっていた。足を大きく開いているためスカートの中身が丸見えで目のやり場に困ったが、そのことに気づいてはいない様子だった。
    「ありがとーおにーさん」
     彼女は、子供のように無防備な笑いを見せ、ぼくの手をとって、よっこらしょ、とかけ声をかけて立ち上がった。
    「ごめんなさいねー。今夜はちょっと酔ってて」
     一目みればわかります。
     なにげに、普通にたっているだけでもフラフラしているし。

     フラフラしている彼女の肩を、近くの壁に預けて、ぼくはマンション共同入り口の暗証番号を素早く入力した。あっけなく、ガラス製の自動扉は開いた。
    「あれ。あれれ」
     彼女は目を丸くした。
    「なんでぇ? どうして? ずっるい。わたしがやると開かなかったのに」

    考えられる原因一。酔っぱらった彼女が、間違った暗証番号を押していた。
    考えられる原因二。酔っぱらった彼女は、手元がふらついて正確にボタンをプッシュできなかった。

     そのほかいくらでも原因を予測できたが、それらを列挙してもなんら益があるとは思えないので、とりあえず、「部屋まで自分でいけますか?」と、訊いた。
    「いけない。あるけない。おんぶして」
     ……短い交渉の末、肩を貸す程度で、勘弁してもらった。それでも彼女はぐにゃぐにゃとするばかりで、いっこうに自分自身の体重を支えようとしないので、えらく難儀したが。

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    隣りの酔いどれロリおねぇさん (1)

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     ぼくのマンションの隣の部屋は、ここ数ヶ月、空き部屋だった。ぼくの部屋は角部屋で、その隣があいていたわけで、多少物音をたてても文句をいわれる事がない環境にあったわけだが、なにぶん、ぼく自身、つい先頃彼女と別れたばかり。夜中に騒ぐあてすらない、寂しい身の上だった。

     ある日、仕事から帰ると、その空き部屋に、運送業者が荷物を運び入れていた。廊下に置いてある荷物を避けるようにして自分の部屋の前にたち、鍵を取り出そうとポケットに手を入れるたところで、いい加減に草臥れはてた臙脂色のジャージ上下、という、あまりにもラフすぎる格好をした、どう贔屓目にみても十代半ばにさしかかるくらいにしか見えない女性に声をかけられた。その隣に引っ越してきたという女性は、
    「三島百合香です」
     と、名乗った。

     その後、地元の公立校で養護教諭、つまり、「保健室の先生」をしていると聞いて、愕然とした。どうみても子供、さらにぶっちゃていうと小学生にしかみえない外見の彼女は、ぼくよりも年上ということになる。
     ぼくが目を丸くしていると、
    「いやぁ、かなり幼く見えるのか、夜出歩いていると、いまだによく補導されるんですわ」
     そのような反応に慣れているのか、彼女は屈託なく笑って、免許証をみせてくれた。たしかに、彼女の年齢は、ぼくより五歳ほど上だった。

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    隣りの酔いどれおねぇさん (1)

    隣りの酔いどれおねぇさん (1)

     ぼくのマンションの隣の部屋は、ここ数ヶ月、空き部屋だった。ぼくの部屋は角部屋で、その隣があいていたわけで、多少物音をたてても文句をいわれる事がない環境にあったわけだが、なにぶん、ぼく自身、つい先頃彼女と別れたばかり。夜中に騒ぐあてすらない、寂しい身の上だった。

     ある日、仕事から帰ると、その空き部屋に、運送業者が荷物を運び入れていた。廊下に置いてある荷物を避けるようにして自分の部屋の前にたち、鍵を取り出そうとポケットに手を入れるたところで、ジーンズにポロシャツという比較的ラフな格好をした、二十代後半くらいの女性に声をかけられた。その隣に引っ越してきた女性は、
    「加々見透理です」
     と、名乗った。

     引っ越しの作業のためだろうか、かなりラフな服装をしているが、そんな日でもメイクや髪をきっちりとセットしているあたり、「几帳面な人なのだろうな」、という印象を受けた。顔立ちも整っているが、それ以上に挙動や言動の端々にかいま見れる生硬さが、彼女の印象を硬質なものにしていた。
     あとで聞いたところ、彼女はその若さで、小さいながらも会社を経営しているとかで、このマンションを選んだのも、「経営している会社から、歩いて五分の位置にあるから」、だそうだ。
    「どうせ、家族が居るでもなし、寝に帰るだけの場所ですし」
     と、彼女はひっそりと笑った。

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